JP4387579B2 - 脂肪族ポリエステルの製造方法およびデンプンの資源化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族ポリエステルの製造方法およびデンプンの資源化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の汎用プラスチック製品は、石油資源から合成された高分子化合物である。すなわち、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリカーボネート等の高分子化合物は、いずれも石油を原料にして合成されている。しかしながら、石油は有限な資源であり、いずれ枯渇することが予想される。従って、石油に代わる新たな原料、すなわち、再生可能な原料から汎用プラスチック製品を製造する技術が強く望まれている。
【0003】
一方、デンプンはD−グルコースが脱水的に重合した高分子化合物であり、セルロースとともに重要な多糖類である。デンプンはジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ等から製造され、その全世界における生産高(トウモロコシの収穫量)は約4〜5億トン/年であり、天然資源中で最も多く生産され、再生可能な資源である。もしデンプンから汎用プラスチック製品を製造することができれば、石油に代わるこれからの新しい資源として非常に期待できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、デンプンを原料とする脂肪族ポリエステルの製造方法、および、デンプンの資源化方法を提供することを目的とする。
【0005】
【発明を解決するための手段】
本発明者は、将来の石油資源枯渇に備えて新規な技術開発が必要であるとの認識に鑑み、精力的な研究開発を重ねた結果、石油に代わる原料としてデンプンに着目し、デンプンからグルコースを経て得られるカプロン酸を用いて脂肪族ポリエステルを合成できることを見出し、本発明をなすに至った。そしてこのことは、デンプンを出発原料として高品質なプラスチックを得るというデンプンの効率的な資源化の確立に道を開くものである。
【0006】
上記の目的を達成することのできる本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法の一実施態様は、下記式(I)
【0007】
【化5】
【0008】
(式中、nは5〜10000の整数を示す。)
で表わされる脂肪族ポリエステルの製造方法であって、
(i)デンプンを加水分解してグルコースを得る工程、
(ii)該グルコースを酸化してグルコノラクトンを得る工程、
(iii)該グルコノラクトンを還元してカプロン酸を得る工程、
(iv)該カプロン酸を塩素化して6−クロロカプロン酸を得る工程、
(v)該6−クロロカプロン酸を環化して下記式(II)
【0009】
【化6】
【0010】
で表わされるε―カプロラクトンを得る工程、および
(vi)該ε―カプロラクトンを開環重合する工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法の他の実施態様は、下記式(I)
【0012】
【化7】
【0013】
(式中、nは5〜10000の整数を示す。)
で表わされる脂肪族ポリエステルの製造方法であって、
(i)デンプンを加水分解してグルコースを得る工程、
(ii)該グルコースを酸化してグルコン酸を得る工程、
(iii)該グルコン酸を還元してカプロン酸を得る工程、
(iv)該カプロン酸を塩素化して6−クロロカプロン酸を得る工程、
(v)該6−クロロカプロン酸を環化して下記式(II)
【0014】
【化8】
【0015】
で表わされるε―カプロラクトンを得る工程、および
(vi)該ε―カプロラクトンを開環重合する工程を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、上記の目的を達成することのできる本発明のデンプンの資源化方法の一実施態様は、
(i)デンプンを加水分解してグルコースを得る工程、
(ii)該グルコースを酸化してグルコノラクトンを得る工程、
(iii)該グルコノラクトンを還元してカプロン酸を得る工程、
(iv)該カプロン酸を塩素化して6−クロロカプロン酸を得る工程、
(v)該6−クロロカプロン酸を環化して下記式(II)
【0017】
【化9】
【0018】
で表わされるε―カプロラクトンを得る工程、および
(vi)該ε―カプロラクトンを開環重合して下記式(I)
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、nは5〜10000の整数を示す。)
で表わされる脂肪族ポリエステルを得る工程を有することを特徴とする。
【0021】
また、上記の目的を達成することのできる本発明のデンプンの資源化方法の他の実施態様は、
(i)デンプンを加水分解してグルコースを得る工程、
(ii)該グルコースを酸化してグルコン酸を得る工程、
(iii)該グルコン酸を還元してカプロン酸を得る工程、
(iv)該カプロン酸を塩素化して6−クロロカプロン酸を得る工程、
(v)該6−クロロカプロン酸を環化して下記式(II)
【0022】
【化11】
【0023】
で表わされるε―カプロラクトンを得る工程、および
(vi)該ε―カプロラクトンを開環重合して下記式(I)
【0024】
【化12】
【0025】
(式中、nは5〜10000の整数を示す。)
で表わされる脂肪族ポリエステルを得る工程を有することを特徴とする。
【0026】
なお、ε―カプロラクトンは分子内環状エステル構造を有する化合物であり、工業的にはシクロヘキサノンを酸化して得る方法がよく知られている。また、ε―カプロラクトンは容易に開環重合して脂肪族ポリエステルを与えることが知られている(特開平11−158172号公報)。しかしながら、デンプンを原料としてε―カプロラクトンを合成し、これから脂肪族ポリエステルを得た例は本願発明者以外は未だ見出していない。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、
(i)デンプンを加水分解してグルコースを得る工程、
(ii)該グルコースを酸化してグルコノラクトンまたはグルコン酸を得る工程、
(iii)該グルコノラクトンまたは該グルコン酸を還元してカプロン酸を得る工程、
(iv)該カプロン酸を塩素化して6−クロロカプロン酸を得る工程、
(v)該6−クロロカプロン酸を環化してε―カプロラクトンを得る工程、および(vi)該ε―カプロラクトンを開環重合して上記式(I)で表わされる脂肪族ポリエステルを得る工程
の各工程を経ることにより行われる。
【0028】
デンプンから脂肪族ポリエステルを合成する方法の確立によって、デンプンの資源化への新たな道筋を開くことができる。その点で本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、同時に有用なデンプンの資源化方法でもある。
【0029】
以下、上記の工程(i)〜(vi)の各工程について説明する。
工程(i)(デンプン→グルコース)
デンプンからグルコースへの変換は、例えば、硫酸などの希酸による加水分解方法、アミラーゼ・マルターゼなどの酵素による加水分解方法、あるいは、超臨界水による加水分解方法等が挙げられる。デンプンからグルコースを得る工程は、酸による加水分解であることが好ましい。その反応条件は公知の方法に従い、適宜決めればよい。
工程(ii)(グルコース→グルコノラクトンまたはグルコン酸)
グルコースからグルコノラクトンへの変換は、グルコースを臭素酸化する方法やグルコース酸化酵素であるノタチンを用いる方法等が挙げられる。グルコースからグルコノラクトンを得る工程は、臭素酸化であることが好ましい。その反応条件は公知の方法に従い、適宜決めればよい。
【0030】
グルコースからグルコン酸への変換は、臭素と濃硫酸とを用いた酸化反応、具体的には臭素を飽和させた硫酸中でグルコースを酸化、加水分解して得る方法、グルコース溶液の電解酸化による方法、あるいはペニシリウム属の細菌を用いたグルコン酸発酵による方法等が挙げられる。グルコースからグルコン酸を得る工程は、臭素と濃硫酸とを用いた酸化反応であることが好ましい。その反応条件は公知の方法に従い、適宜決めればよい。
工程(iii)(グルコノラクトンまたはグルコン酸→カプロン酸)
グルコノラクトンまたはグルコン酸からカプロン酸への変換は、これらをヨウ化水素酸と赤リンで還元する方法が挙げられる。この際、グルコノラクトンまたはグルコン酸の水酸基のみが還元されることが望ましい。
【0031】
還元に用いる赤リンの量は、グルコノラクトンまたはグルコン酸に対して1.8〜2.4当量が好ましい。還元に用いるヨウ化水素酸は、濃度50〜60質量%が好ましく、グルコノラクトンまたはグルコン酸の重量に対して40〜60倍の重量を用いるのが好ましい。グルコノラクトンまたはグルコン酸と赤リンをヨウ化水素酸中で約20時間程度還流を行えば、還元反応が完了する。そして、この反応混合物を濾過し、その濾液をエーテル抽出した後、5質量%程度の亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、溶媒のエーテルを留去して減圧蒸留すればカプロン酸が得られる。
工程(iv)(カプロン酸→6−クロロカプロン酸)
カプロン酸から6−クロロカプロン酸への変換は、塩素と濃硫酸とを用いた塩素化反応、具体的にいうとカプロン酸を濃硫酸中で塩素と反応させて塩素化する方法が好ましく挙げられる。その反応条件は公知の方法に従い、適宜決めればよい。
工程(v)(6−クロロカプロン酸→ε−カプロラクトン)
6−クロロカプロン酸からε−カプロラクトンへの変換は、水酸化ナトリウム水溶液を用いた環化反応、具体的にいうと6−クロロカプロン酸を水酸化ナトリウム水溶液中で煮沸する方法が好ましく挙げられる。その反応条件は公知の方法に従い、適宜決めればよい。
工程(vi)(ε−カプロラクトン→脂肪族ポリエステル;開環重合)
本発明では、通常、触媒の存在下、水酸基を有する化合物を開始剤とするε−カプロラクトンの開環重合によって脂肪族ポリエステルを合成する。開始剤はカプロラクトンを開環するために使用し、触媒はこの開環物とインターラクションして重合を促進する。
(重合触媒)
本発明では、ε−カプロラクトンの開環重合に際し、重合触媒としては、公知の開環重合触媒を用いることができる。例えば、二塩化スズ、四塩化スズ、テトラ-n-ブトキシゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ-n-プロポキシアルミニウム、トリ-iso-プロポキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、トリ-iso-ブトキシアルミニウム、塩化アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、ジ-iso-プロピル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、塩化亜鉛、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラ-t-ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラメトキシジルコニウム、テトラ-iso-プロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、テトラ-iso-ブトキシジルコニウム、テトラ-t-ブトキシジルコニウム等を用いることができる。また、これらは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0032】
重合触媒の使用量は適宜決めればよいが、通常、ε−カプロラクトンと重合開始剤の合計量に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.05重量%以上または5重量%以下である。
(重合開始剤)
本発明では、ε−カプロラクトンの開環重合に際し、重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、各種ブタノール、フェノール等のモノオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等のジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール等のポリオールを用いることができる。また、これらは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0033】
本発明で使用する重合開始剤とε−カプロラクトンとのモル比は、目的とする脂肪族ポリエステルの重合比に応じて適宜選択することができる。重合開始剤とε−カプロラクトンとのモル比は、通常、1:1〜1:5000、好ましくは1:1〜1:2000である。
【0034】
ε−カプロラクトンの開環重合は、ε−カプロラクトンに重合触媒と重合開始剤とを添加して不活性ガスの存在下、あるいは、減圧下で重合反応させる。ε−カプロラクトンの開環重合は、簡便さから、窒素雰囲気下の常圧で行うことが好ましい。
【0035】
ε−カプロラクトンの開環重合の反応温度および時間は、任意に選択できる。反応温度は、十分速い反応速度が得られるので50℃以上、特に100℃以上が好ましく、酸化反応による脂肪族ポリエステルの着色や生成する脂肪族ポリエステルの分解反応等がほとんど発生しないので200℃以下、特に180℃以下が好ましい。反応時間も任意に選択でき、生成する脂肪族ポリエステルの品質に影響を与えない範囲で行うことができる。
【0036】
ε−カプロラクトンの開環重合は、溶媒中で行うこともできる。溶媒は、ε−カプロラクトン、重合触媒、重合開始剤と反応しない不活性溶媒であり、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素を用いることが好ましい。これらの溶媒は、実質的に無水のものが好ましい。反応温度は、通常、0℃から溶媒の沸点以下であり、好ましくは0〜100℃である。
【0037】
ε−カプロラクトンの開環重合によって得られる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で1000以上、特に30000以上が好ましく、ポリスチレン換算で1000000以下、特に500000以下であることが好ましい。
【0038】
このようにして得られる本発明にかかる脂肪族ポリエステルは、重量平均分子量や含まれる官能基等を変化させることによって、産業上の多くの分野で利用することができる。例えば、グリコールを重合開始剤とした重量平均分子量1000〜5000の脂肪族ポリエステルは、水酸基を有することを活かして、ポリウレタンの原料や塗料等の材料として非常に有用である。さらに、重量平均分子量が50000を超える脂肪族ポリエステルは、実用的な機械的強度を持ち、プラスチック成形品、フィルム、ホットメルト接着剤等に用いることができる。成形加工法としては、例えば、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、注型法、金型を用いたトランスファーなどがある。
【0039】
また、本発明によって得られる脂肪族ポリエステルには、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂成分、ゴム成分、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、核剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを配合することができる。その配合割合は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
デンプン(和光純薬工業製)500重量部を水4500重量部に投入し、加温しながら溶解させた。ここへ3mol/l硫酸5000重量部を加え、80℃で5時間攪拌して反応させた。反応終了後、無水炭酸ナトリウムを加えて水溶液を中和した後、イオン交換樹脂カラム(オルガノ社製、アンバライトIR−120B)を通過させ、溶媒を留去した。そして、反応混合物を分離精製してグルコース300重量部を得た。
【0041】
Bruker製FT−NMR DPX400を用いて、合成したグルコースの13C―NMR(100MHz、内部標準DMSO-d6)を測定した。その化学シフトδ(ppm)は以下の通りであった。
グルコース:13C―NMR(100MHz、DMSO-d6)δ/ppm
α型:92.12、73.04、72.29、71.80、70.58、61.20
β型:96.79、76.70、76.59、74.78、70.30、61.00
12%炭酸バリウム水溶液8000重量部に二酸化炭素を飽和させた後、ここへ臭素330重量部とグルコース300重量部とを加え、25℃で30分間攪拌して下記化学式(III)で表わされるグルコノラクトン250重量部を得た。
【0042】
【化13】
【0043】
合成したグルコノラクトンの13C―NMR(100MHz、内部標準DMSO-d6)を測定した。その化学シフトδ(ppm)は以下の通りであった。
グルコノラクトン:13C―NMR(100MHz、DMSO-d6)δ/ppm
171.88、81.23、73.79、71.43、67.82、60.14
赤リン87重量部とグルコノラクトン250重量部とをヨウ化水素酸(55質量%)12000重量部に加え、130℃で20時間加熱還流を行った。そして、反応混合物を濾過し、その濾液をエーテル抽出した後、5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。溶媒のエーテルを留去後、減圧蒸留してカプロン酸147重量部を得た。
【0044】
合成したカプロン酸の13C―NMR(100MHz、内部標準CDCl3)を測定した。その化学シフトδ(ppm)は以下の通りであった。
カプロン酸:13C―NMR(100MHz、CDCl3)δ/ppm
180.78、34.24、31.36、24.49、22.42、13.90
塩素を飽和した90%硫酸1000重量部にカプロン酸147重量部を加え、25℃、6時間反応させて6−クロロカプロン酸95重量部を得た。
【0045】
合成した6−クロロカプロン酸の13C―NMR(100MHz、内部標準CDCl3)を測定した。その化学シフトδ(ppm)は以下の通りであった。
6−クロロカプロン酸:13C―NMR(100MHz、CDCl3)δ/ppm
180.18、44.69、33.93、32.25、26.36、23.98
6−クロロカプロン酸95重量部を当量の水酸化ナトリウム水溶液と煮沸してε−カプロラクトン69重量部を得た。
【0046】
合成したε−カプロラクトンの13C―NMR(100MHz、内部標準CDCl3)を測定した。その化学シフトδ(ppm)は以下の通りであった。
ε−カプロラクトン:13C―NMR(100MHz、CDCl3)δ/ppm
176.23、69.30、34.56、29.35、28.93、22.98
ε−カプロラクトン69重量部を窒素雰囲気下、155℃まで加熱し、ここへ重合触媒としてトリ-iso-プロポキシアルミニウム0.21重量部、重合開始剤としてジエチレングリコール0.41重量部を添加し、開環重合して脂肪族ポリエステルを得た。重合時間は10時間であった。得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量はポリスチレン換算で30万で、平均重合度は2630であった。
【0047】
合成した脂肪族ポリエステルの1H―NMR(400MHz、内部標準CDCl3)、13C―NMR(100MHz、内部標準CDCl3)を測定した。その化学シフトδ(ppm)は以下の通りであった。
脂肪族ポリエステル:1H―NMR(400MHz、CDCl3)δ/ppm
1.36〜1.42(2H、m)、1.61〜1.69(4H、m)、2.31(2H、t)、4.06(2H、t)
脂肪族ポリエステル:13C―NMR(100MHz、CDCl3)δ/ppm
24.59、25.54、28.36、34.12、64.16、173.56
以上の測定結果から、目的の脂肪族ポリエステルが合成されたことを確認した。
(実施例2)
実施例1と同様にして得たグルコース300重量部を臭素で飽和させた27Nの硫酸2500重量部中で酸化、加水分解して下記化学式(IV)で表わされるグルコン酸290重量部を得た。
【0048】
【化14】
【0049】
赤リン100重量部とグルコン酸290重量部とをヨウ化水素酸(55質量%)14000重量部に加え、130℃で20時間加熱還流を行た。そして、実施例1と同様の後処理を行い、カプロン酸155重量部を得た。
【0050】
塩素を飽和した90%硫酸1000重量部にカプロン酸155重量部を加え、25℃、6時間反応させて6−クロロカプロン酸100重量部を得た。
【0051】
6−クロロカプロン酸100重量部を当量の水酸化ナトリウム水溶液と煮沸してε−カプロラクトン73重量部を得た。
【0052】
ε−カプロラクトン73重量部を窒素雰囲気下、160℃まで加熱し、ここへ重合触媒としてジ-iso-プロピル亜鉛0.22重量部、重合開始剤として1,4−ブタンジオール0.44重量部を添加し、開環重合して脂肪族ポリエステルを得た。重合時間は10時間であった。得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量はポリスチレン換算で25万で、平均重合度は2190であった。
【0053】
また、1H―NMRと13C―NMRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られ、目的の脂肪族ポリエステルが合成されたことを確認した。
(物性評価)
実施例1および2で合成した脂肪族ポリエステルを用いて各種物性評価を行った。その結果を表1に示す。また、参考例1として、セルグリーン(ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトン系プラスチック、P-H7)を用いて比較検討を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
以上の結果から、実施例1および2で合成した各々の脂肪族ポリエステルは、参考例1の強度および伸度に優れたダイセル化学製の脂肪族ポリエステル(P-H7)と同等もしくはそれ以上の物性を有しており、従来公知の石油由来のプラスチック成形品の代替品として十分に利用できることが分かる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、デンプンからグルコースを経て得られるε−カプロラクトンを開環重合することによって脂肪族ポリエステルを製造することができ、その機械的強度等の物性も充分であり、プラスチック成形品として利用することができる。さらに、このことは、石油の代替にデンプンを出発原料として高品質なプラスチックを得るという、デンプンの効率的な資源化の確立に道を開くものである。
Claims (20)
- デンプンからグルコースを得る工程が、酸による加水分解であることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコースからグルコノラクトンを得る工程が、臭素酸化であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコースからグルコン酸を得る工程が、臭素と濃硫酸とを用いた酸化反応であることを特徴とする請求項2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコノラクトンからカプロン酸を得る工程が、ヨウ化水素酸と赤リンとを用いた還元反応であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコン酸からカプロン酸を得る工程が、ヨウ化水素酸と赤リンとを用いた還元反応であることを特徴とする請求項2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- カプロン酸から6−クロロカプロン酸を得る工程が、塩素と濃硫酸とを用いた塩素化反応であることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 6−クロロカプロン酸からε−カプロラクトンを得る工程が、水酸化ナトリウム水溶液を用いた環化反応であることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- ε―カプロラクトンを開環重合する工程が、重合触媒と重合開始剤とを用いた開環重合であることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- デンプンからグルコースを得る工程が、酸による加水分解であることを特徴とする請求項11または12に記載のデンプンの資源化方法。
- グルコースからグルコノラクトンを得る工程が、臭素酸化であることを特徴とする請求項11に記載のデンプンの資源化方法。
- グルコースからグルコン酸を得る工程が、臭素と濃硫酸とを用いた酸化反応であることを特徴とする請求項12に記載のデンプンの資源化方法。
- グルコノラクトンからカプロン酸を得る工程が、ヨウ化水素酸と赤リンとを用いた還元反応であることを特徴とする請求項11に記載のデンプンの資源化方法。
- グルコン酸からカプロン酸を得る工程が、ヨウ化水素酸と赤リンとを用いた還元反応であることを特徴とする請求項12に記載のデンプンの資源化方法。
- カプロン酸から6−クロロカプロン酸を得る工程が、塩素と濃硫酸とを用いた塩素化反応であることを特徴とする請求項11または12に記載のデンプンの資源化方法。
- 6−クロロカプロン酸からε−カプロラクトンを得る工程が、水酸化ナトリウム水溶液を用いた環化反応であることを特徴とする請求項11または12に記載のデンプンの資源化方法。
- ε―カプロラクトンを開環重合して上記式(I)で表わされる脂肪族ポリエステルを得る工程が、重合触媒と重合開始剤とを用いた開環重合であることを特徴とする請求項11または12に記載のデンプンの資源化方法。
Priority Applications (4)
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