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JP3561519B2 - 新規ペプチドおよび免疫賦活剤 - Google Patents
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本発明は、新規ペプチドおよびこのペプチドを有効成分とする免疫賦活剤に関する。
ラクトフェリン(LF)は、乳中に存在する鉄結合性の蛋白質として知られている。乳以外の種々の分泌液中にも存在し、関節腔内や血清などにも存在し、鉄と結合して溶液中の鉄イオンを奪うことで抗菌作用を示す。また、ラクトフェリンは抗菌活性の他に、ウイルスに対する結合性や老化防止効果を有するなどの活性が知られている。また、ラクトフェリンのアミノ酸配列の一部分に、鉄結合性と異なる抗菌活性があることが確認されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このようにラクトフェリンには種々の活性が存在している。ラクトフェリンは、牛乳から大量に調製する方法が開発されている。例えば、ラクトフェリンに対して親和性を有する架橋型ポリサッカライドの硫酸エステルを用いて乳からラクトフェリンを回収する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。このようにして得たラクトフェリンを用いることによって幾つかの新しい生理作用や詳細な構造が判明している。このようなラクトフェリンの構造と生理活性については島崎らが総説で説明している(例えば、非特許文献1参照)。また、ラクトフェリンが末梢血、特に好中球の貪食能を活性化し、免疫を向上させることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、ラクトフェリン由来のペプチドがリンパ球のマイトージェン活性を誘導し免疫機能を賦活化することは知られていない。
本発明者らはラクトフェリンを酵素分解処理に付すことにより、ラクトフェリンの構造中に存在するペプチドの生理活性を検討してきた。ラクトフェリンの構造中に存在する特定のペプチドが、抗HIV活性や、抗HTLVに対して作用し感染を抑制することを確認し、特許出願を行った(例えば、特許文献5及び6参照)。さらに、ラクトフェリンの酵素分解物について詳細に検討を行った結果、ラクトフェリンのアミノ酸配列中に存在する特定のペプチド構造を含むペプチドが、強いリンパ球のマイトージェン活性を有していることを見いだし、その作用について検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
特開平5−78392号公報 特開平5−148296号公報 特開昭63−255300号公報 特開平5−178759号公報 特開平7−69915号公報 特開平7−206701号公報 島崎敬一他、バイオサイエンスとインダストリー,Vol.51, 25-27,1993
本発明はウシラクトフェリンのアミノ酸配列中に存在し、マイトージェン活性を有する新規ペプチドを提供することを課題とする。またこのようなペプチドを有効成分とする免疫賦活剤を提供することを課題とする。さらにはこのペプチドを有効成分とするサイトメガロウイルス感染防御剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、ラクトフェリンの生理活性について検討を行った結果、ラクトフェリンの酵素分解物中に、強いマイトージェン活性と、強い抗腫瘍活性を有することを見いだした。
ラクトフェリンをペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン(いずれもシグマ社製)を用いてラクトフェリン/酵素=100/1で37℃、1時間インキュベートした。インキュベート後、ペプシン分解物の反応液を中性に戻し、その他は80℃で5分間加熱することで反応を停止させた。生じた沈殿を遠心分離により除去し、上清を凍結乾燥してラクトフェリンの酵素分解物の粉末を得た。この酵素分解物を試料として以下の実施例に記載した方法でリンパ球の幼若化および抗腫瘍活性を測定したところ、これまで報告のない強い活性を有することを見いだした。この活性測定結果を下記の表1及び表2に示した。
Figure 0003561519
Figure 0003561519
このようにラクトフェリンの酵素分解物には強い免疫賦活作用とこれによると推測される強い抗腫瘍効果が存在することが確認できた。
本発明者らは、さらにラクトフェリンのアミノ酸配列中に存在するペプチド構造に関して検討を行った結果、マイトージェン活性を発揮するに必須の構造を初めて解明した。
本発明により、マイトージェン活性を有する新規ペプチド、及びその製造法、更に、このペプチドを有効成分とする免疫賦活剤、サイトメガロウイルス感染防御剤が提供される。
本発明のマイトージェン活性を有するペプチドはペプチド配列中に、次のアミノ酸配列を有することが必要である。
すなわち、ウシラクトフェリン由来のペプチドの場合、次の配列〔I〕を含むペプチドである。
Ala-Pro-Arg-Lys-Asn-Val-Arg-Trp-Cys-Thr-Ile-Ser-Gln-Pro-Asp-Ser-Phe-Lys〔I〕
ウシラクトフェリンの全アミノ酸配列はすでに決定されている(P.E. Mead et al.,Nucleic Acid Res., Vol.18, 7167, 1990)。このペプチドはウシラクトフェリンのアミノ酸配列の1−18番目のアミノ酸配列に相当しており、この配列からなるペプチドは、本発明に包含されるものである。以下、ウシラクトフェリン由来のペプチドのアミノ酸配列はこの文献に従い、Ala を1番目として、アミノ酸配列の番号で記載する。
このアミノ酸配列を含むペプチドの例として次の配列〔II〕のペプチドが例示出来る。
Figure 0003561519
このペプチドはウシラクトフェリンの1−51番目に相当している。またこのペプチドのSS結合は還元状態のSH基となっていてもよい。
配列〔I〕および配列〔II〕は、N末端アミノ酸1〜3残基が欠失していてもよい。すなわち、ウシラクトフェリン2−18番目、3−18番目、4−18番目、またはウシラクトフェリン2−51番目、3−51番目、4−51番目のアミノ酸配列に相当するものであっても良い。
これらのペプチドはもとの蛋白質と比べて低分子であり、投与にあたって抗原性は低くなっているという利点がある。
本発明のペプチドを調製するには、通常のペプチド合成方法が採用できる。ペプチド合成方法としては固相合成方法が一般的であるが、この固相合成方法は「泉谷他著、ペプチド合成の基礎と実験(1985年丸善刊)194〜233頁」などに開示された方法を挙げることができる。またこれ以外の方法であっても良い。
また、ウシラクトフェリンをプロテアーゼによって酵素分解し、クロマトグラフィーにより分取することもできる。また酵素分解に付するためのラクトフェリンは、ウシの乳から容易に回収することができる。例えば上述した特開昭63−255300号公報に開示されたラクトフェリンに対して親和性を有する架橋型ポリサッカライドの硫酸エステルを用いて、乳から回収することができる。
ラクトフェリンの酵素分解に用いる酵素としては、蛋白質の酵素分解に通常用いる酵素であれば、いずれも使用可能である。このような酵素としてはペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパインなどを例示することができる。またこれ以外の酵素であっても使用することが可能である。
このようにして得られた酵素分解物から常法によりクロマト処理することによってこれらのペプチドを採取することができる。
また、他の通常のペプチド製造法に従って製造してもよい。
本発明のペプチドはリンパ球の幼若化を誘導し、抗ウイルス作用、特にサイトメガロウイルスに対して感染防御効果を示す。
本発明のペプチドは単独で投与することができるし、または、安定剤、賦形剤などの製剤化に通常用いる添加剤を使用して製剤化することもできる。
本発明のペプチドは、食品や家畜飼料に添加して投与することができるし、医薬品、化粧品などの用途に使用することもできる。医薬品として用いる場合には経口、注射、座剤などの投与形態で用いることができ、通常成人1日当たり0.1〜5g程度を投与することで、免疫賦活作用や、ウイルス感染防御効果を期待できるものである。
また本発明ペプチドは、経口投与においては毒性を示さないし、また経静脈投与においても、物理的に投与可能最大投与において死亡動物が出現しない安全な物質である。
以下に実施例を示し、さらに本発明を詳細に説明する。
(ラクトフェリン(以下LFと記す)の酵素分解物の調製とマイトージェン活性ペプチドの単離)
特開昭63−255300号公報に記載の方法で牛乳から調製したLFを原料としてペプシン(シグマ社製)酵素分解処理を行った。LF/酵素=100/1の比率で、37℃、1時間インキュベートした。インキュベート後ペプシン分解物は反応液を中性に戻し、その他は80℃で5分間加熱することで反応を停止させた。生じた沈殿を遠心分離により除去し、上清を凍結乾燥してLFの酵素分解物の粉末を得た。この分解組成物をTSKゲルG300SWカラム(21.5mm×300mm:東ソー製)2本を直列につないだカラムを装着したHPLCに付し、分離を行った。溶出は0.015MのNaClを含む1mMリン酸緩衝液(pH7.4)を溶出液とし、214nmの吸収を測定した。このゲル濾過パターンを図1に示した。
分離した各フラクションのリンパ球幼若化活性を以下の方法により測定した。C3H/HeNマウス脾臓細胞を採取し洗浄した後、牛胎児血清10%を含むRPMI1640培地に浮遊させた。脾臓細胞を5×10/ウエルになるよう96穴マイクロプレートに分注し、これに試料を最終濃度がそれぞれ1μg/ml、10μg/ml、100μg/mlとなるよう添加した。対照ウエルにはコンカナバリンA(最終濃度1μg/ml)、リポポリサッカライド(最終濃度100μg/ml)を加え、37℃ 48時間 5%CO条件下で培養した。培養後、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)2,5−ジフェニル−2Hテトラゾリウムブロマイド(以下MTTと略記)液10μl を添加し、更に3時間培養後、生じたMTTフォルマザンをELISAリーダーを用い、562−595nmで吸光度を測定した(以上の方法はMed. Immunol, 12, 411 (1986)に開示された方法に準じた)。結果は10ウエルの平均値とし、マイトージェン活性比(S.I.)は、次の式に基づいて計算した。
S.I.=(試料ウエルの平均吸光度)/(対照ウエルの平均吸光度)×100
各フラクションのS.I.値を表3に示した。
Figure 0003561519
各フラクションの内、特に活性の高かったフラクション7について再度HPLCによりその溶出位置を測定し、以下に示した合成ペプチドと比較した結果、このフラクションの溶出時間はウシLF1−18と一致した。またこのフラクションのアミノ酸配列を分析したところウシLF1−18の配列を有することが確認できた。
(活性ペプチドの化学合成)
実施例1で確認したペプチドおよびそのアミノ酸配列を含むペプチドの合成を行った。本実施例ではウシLF1−18、ウシLF1−51の合成例を示した。本明細書に記載したこれ以外のペプチドの合成も、本実施例に準じて合成した。
(1)ウシLF1−18の合成
ペプチドシンセサイザー431A(ABI社)により、パラヒドロキシメチルフェノキシメチルポリスチレン(HMP)樹脂を用い、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基をアミノ末端の保護基として0.25mmolスケールで直鎖保護ペプチドを合成した。得られたHMP樹脂結合保護ペプチド1455mgをフェノール、1,2−エタンジチオール、チオアニソール存在下、トリフルオロ酢酸(TFA)によりペプチドのHMP樹脂からの切り離しと保護基の除去を同時に行った。減圧濃縮によりTFAを除去した後、エチルエーテルで粗ペプチドを結晶化させ、これを5%酢酸に溶解し凍結乾燥を行った。得られた直鎖粗ペプチド500mgは、HPLC〔カラム:オクタデシル4PW(21.5×150mm,東ソー社),溶出:0.1%TFAを含む水−アセトニトリルにてグラジエント溶出〕により精製し、直鎖精製ペプチド365mgを得た。得られた精製ペプチドの純度は、HPLCによる分析の結果98%であった。
(2)ウシLF(1−51)、〔19Cys(Acm),36Cys(Acm) 〕ウシLF(1−51)および〔CysSH,19Cys(Acm),36Cys(Acm),45CysSH 〕ウシLF(1−51)の合成
ペプチドシンセサイザー431A(ABI社)により、パラヒドロキシメチルフェノキシメチルポリスチレン(HMP)樹脂を用い、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基をアミノ末端の保護基とし、20Cys および37Cys のSH基をアセトアミドメチル(Acm)基で保護して0.25mmolスケールで直鎖保護ペプチドを合成した。得られたHMP樹脂結合保護ペプチド2337mgをフェノール、1,2−エタンジチオール、チオアニソール存在下、トリフルオロ酢酸(TFA)によりペプチドのHMP樹脂からの切り離しと保護基の除去を同時に行った。減圧濃縮によりTFAを除去した後、エチルエーテルで粗ペプチドを結晶化させ、これを5%酢酸に溶解し凍結乾燥を行った。得られた直鎖粗ペプチド970mgは、HPLC(カラム:オクタデシル4PW(21.5×150mm,東ソー社),溶出:0.1%TFAを含む水−アセトニトリルにてグラジエント溶出)により精製し直鎖精製ペプチド〔CysSH,19Cys(Acm),36Cys(Acm),45CysSH 〕ウシLF(1−51)を得た。得られた精製ペプチドの純度は、HPLCによる分析の結果82%であった。このペプチドをフェリシアン化カリウム存在下、空気酸化によりCys,45Cys にS−S結合を形成させ、さらにHPLCにて精製することで、純度90%の〔19Cys(Acm),36Cys(Acm) 〕ウシLF(1−51)390mgを得た。さらにこのペプチドをヨウ素処理し、Acm基の除去とS−S結合の形成を同時に行い、HPLCで精製することでウシLF(1−51)576mgを得た。HPLCによる分析の結果、このペプチドの純度は88%であった。
(合成ペプチドのリンパ球幼若化活性の測定)
実施例2で得られた合成ペプチドのリンパ球幼若化作用を測定した。
測定は実施例1に示した方法に従った。測定結果を下記の表4に示した。
各合成ペプチドはいずれも強いS.I.活性を有していた。
Figure 0003561519
(合成ペプチドの抗腫瘍効果の測定)
実施例2で得られた合成ペプチドの免疫賦活効果を確認するため、腹水型腫瘍の増殖抑制効果を指標として実験を行い、免疫マーカーの変化を観察した。
BALB/c雄マウス(1群10匹)に10〜10個の腹水型腫瘍細胞(Meth A 細胞)を腹腔内に移植した。腫瘍移植当日より、隔日に5回にわたり合成ペプチドを腹腔内に投与した。またポジティブコントロールとしてムラミルジペプチド(MDP)3mg/kgを同様に投与し、さらにネガティブコントロールとしてカラギーナンを同様に投与した。
腫瘍移植から20日後のマウスの生存率を表5に示した。サンプルについては0.005g/体重kg以上の投与量で腫瘍増殖抑制効果が認められ、特に合成ペプチド投与群では0.05g/体重kgの投与でマウスの死亡は全く認められなかった。またペプチド投与動物のNK細胞が活性化されていることが確認された。NK細胞活性化の測定は、マウスの脾臓細胞をエフェクター細胞として、標的細胞に51Crをラベルした腫瘍細胞(YAC−1)を用い、100:1の割合で混合し、遊離した51Crの量からNK活性値を測定した。本発明物質投与動物のNK活性値は、コントロールと比べて有意に高値を示していた。
Figure 0003561519
(合成ペプチドによるサイトメガロウイルス感染防御効果)
ウシLFの各種合成ペプチドを調製し、このペプチドのサイトメガロウイルス感染防御効果を確認した。
実験動物として、SPF−BALB/cA雄、4週齢を1群5匹として用いた。このマウスに、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)Smith株のマウス唾液腺を10回以上通過したものを感染させて、その延命率を求めて判定を行った。
ウイルスの感染は1×10PFU/マウスの濃度で腹腔内に接種して行い、感染と同時に各ペプチドのPBS溶液を腹腔内に0.25、0.125、0.025、0.005g/k g(体重)で投与した。また生存動物は解剖を行い、脾臓を摘出し、脾臓細胞のNK細胞活性を測定した。
結果を表6に示した。
Figure 0003561519
本発明のペプチドはウシLFのN末端側に活性が存在することが確認できた。またこの活性はN末端から3残基まで削除しても、影響がないことが確認できた。さらに本発明ペプチドを投与した動物はいずれもNK細胞活性が上昇していた。この活性もサイトメガロウイルスの感染防御活性と一致していた。
本実施例は、本発明ペプチドを製剤化した例を示す。
(1)錠剤
乳糖 170g、馬鈴薯澱粉 5g、実施例2で合成したウシLF1−18 20g、ステアリン酸タルク 5gを混合し、常法により打錠し、ペプチド100mgを含有する1gの錠剤を200個製造した。
(2)注射剤
100ml中にマンニトール 5g、実施例2で合成したウシLF1−18 100mg、ヒト血清アルブミン 100mg、カプリル酸ナトリウム 2mgを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注し、凍結乾燥し密封した。
ウシラクトフェリンのペプシンによる酵素分解物のHPLCパターンを示す。図中の↓印のピークに本発明のペプチドが存在する。

Claims (6)

  1. 次のアミノ酸配列〔I〕で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    Ala-Pro-Arg-Lys-Asn-Val-Arg-Trp-Cys-Thr-Ile-Ser-Gln-Pro-Asp-Ser-Phe-Lys 〔I〕
  2. アミノ酸配列〔I〕のN末端のアミノ酸残基が1〜3残基欠失したものである請求項1記載のペプチド。
  3. 次のアミノ酸配列〔II〕で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    Figure 0003561519
    但しS−S結合は還元状態のSH基となっていてもよい。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする免疫賦活剤。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とするサイトメガロウイルス感染防御剤。
  6. ウシラクトフェリンを、プロテアーゼにより酵素分解し、酵素分解物から請求項1〜3記載のいずれかのペプチドを採取することを特徴とするペプチドの製造法。
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