JP3606077B2 - 耐傷付き性に優れた高加工性塗装鋼板とその製造方法 - Google Patents
耐傷付き性に優れた高加工性塗装鋼板とその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、傷つきにくく、耐久性と意匠性に優れ、特に屋内・屋外建材用途に最適の塗装鋼板とその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
めっき鋼板に予め塗装が施してあり、加工後に塗装の必要がない塗装鋼板 (プレコート鋼板) は、屋内や屋外の建材用途に従来から広く使用されている。建材用の代表的な塗装鋼板としては、塗装に使用する樹脂種による分類で、カラー鋼板とも呼ばれているポリエステル系、高耐候性を特徴とするフッ素系、厚膜で耐食性と耐久性に優れた塩化ビニル系等が挙げられる。これらの塗料の下塗り (プライマー) としては、エポキシ系樹脂塗料が一般に利用されている。
【0003】
ポリエステル系塗装鋼板は、分子量3000〜5000程度のポリエステル樹脂を主成分とし、架橋剤を含有する焼付け架橋型塗料をおよそ15μm程度の塗膜厚みで塗装したものである。安価であるが、塗膜厚みが小さいため、傷つきを生ずると傷部から発錆が起こり、耐食性が不十分である。また、加工性も満足できるとはいえない。
【0004】
代表的なフッ素系塗装鋼板は、ポリフッ化ビニリデンとアクリル樹脂を主成分とする塗料を塗装したものである。この塗装鋼板は、耐候性に非常に優れているが、塗膜厚みが下塗り (プライマー) +上塗り (トップコート) の合計でも約25μm程度と薄いため、上と同様に傷部から錆が発生しやすい。また、フッ素系樹脂塗料は高価であるので、経済的にも不利である。
【0005】
塩ビ鋼板と略称されるポリ塩化ビニル系塗装鋼板は、熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニル(PVC) のゾル塗料(プラスチゾル) を約 150〜300 μmの厚みに塗装したものである。ポリエステル系やフッ素系の塗装鋼板に比べて塗膜厚みが非常に大きいので、傷つきを生じても傷が素地まで達しにくいため、優れた耐食性を示す。また、塗膜が熱可塑性であり、しかも可塑剤を使用するため、加工性にも優れており、例えば折り曲げ加工であれば密着曲げ (0T 180°曲げ) も可能であるので、建材用として広く利用されてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、ポリ塩化ビニル樹脂の使用が困難になりつつあり、塗装鋼板でも事情は同じである。
【0007】
その一つの理由は、ポリ塩化ビニルの廃却時におけるダイオキシン発生に対する懸念である。廃却が高温で行われる場合には、樹脂が完全に分解するため問題はないと考えられているが、焼却炉温が低い場合には有害物質の発生を招きかねない。
【0008】
もう一つの理由は、ポリ塩化ビニル樹脂中に含まれる可塑剤による環境汚染の可能性である。ポリ塩化ビニル樹脂には、加工性の向上のために一般に可塑剤が添加されている。一般的な可塑剤はフタル酸ジオクチル(DOP) 、フタル酸ジブチル(DBP) 等で代表される高沸点溶剤であるが、これらは徐々に塗膜から揮発すると考えられる。こうして揮発した可塑剤が人体に与える影響は、現状では明確ではないものの、このような物質を使わない塗装鋼板が市場では求められるようになってきている。
【0009】
本発明は、膜厚150 μm以上というような塩ビ鋼板ほどの厚膜樹脂塗装を必要とせずに、塩ビ鋼板の持つ耐食性や耐傷つけ性に優れ、かつ加工性も良好という長所を具備し、しかも環境汚染の可能性が低い、耐久性に優れた塗装鋼板を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
耐食性の高いプレコート鋼板として、特開平10−130572号公報には、特定の脂環式ジアミンと特定のポリイソシアネートをε−カプロラクタムでブロックしたブロックイソシアネートとからなる樹脂系を下塗り塗料として使用し、上塗り塗料としては、ポリエステル樹脂成分と特定のブロックイソシアネートを含んだブロックイソシアネート成分とからなる樹脂系を使用した塗装鋼板が提案されている。
【0011】
上記の下塗り塗料は尿素結合を含んだ樹脂層を形成し、上塗り塗料はウレタン結合を含んだ樹脂層を形成するので、上記の塗装鋼板は、下層が尿素樹脂、上層がポリウレタン樹脂からなる2層塗膜を持つ塗装鋼板である。下塗り塗料が厚膜化が可能であるため、厚膜の塗装鋼板を製造することができ、加工性も良好である。しかし、本発明者らが試験してみたところ、この塗装鋼板の耐食性がなお十分ではなく、特に傷が母材まで達してしまった場合や切断端面における錆発生を防ぐことができず、塩ビ鋼板に比べて耐食性や耐湿潤性が大きく劣っていることが判明した。
【0012】
本発明者らは、樹脂膜厚が100 μm以下でも、塩ビ鋼板に匹敵する高い耐食性、耐湿潤性および耐傷付き性を備え、加工性が良好で、意匠性も付与することができる塗装鋼板を開発すべく検討を重ねた結果、次の手段が有効であることを見いだした:
1) 熱硬化性樹脂または架橋剤を含有する熱可塑性樹脂を主成分とする焼付け架橋型塗料を用いて塗装を行い、塗装を下塗りと上塗りの2回以上行って、少なくとも30μm、好ましくは40μm以上の合計膜厚とすると、耐傷付き性が著しく向上する;
2) 下塗り塗料にクロム酸塩系防錆顔料を添加して、傷部耐食性を強化する。下塗りの膜厚を通常のプライマーより厚くすると、クロム酸塩系防錆顔料の添加量が少量でも有効である;
3) 上塗り塗料として、加工性に優れたポリウレタン系および/またはポリエステル系塗料を使用する;
4) 上塗り塗料にアクリルまたはナイロン等の熱可塑性樹脂ビーズを少量添加すると、塗装鋼板に意匠性が付与されると同時に、耐摩耗性が高まって傷がさらにつきにくくなる;
5) 下塗りと上塗りのいずれの塗料も、焼付け温度を適切に選択すると、性能、特に加工性と耐傷付き性が向上する。
【0013】
本発明は以上の知見に基づいて完成したものであって、
「塗装前処理が施された亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板の片面または両面上に、5〜50wt%のクロム酸塩系防錆顔料を含有する厚み10〜80μmの焼付け架橋型の第1樹脂塗膜層と、その上の防錆顔料を含有しないポリウレタン系および/またはポリエステル系塗料から形成された厚み15〜60μmの焼付け架橋型の第2樹脂塗膜層とを有し、この2つの樹脂塗膜層の合計厚みが30〜100 μmであることを特徴とする、耐傷付き性に優れた高加工性塗装鋼板」である。
【0014】
この塗装鋼板の第2樹脂塗膜層に平均粒径1〜50μmの熱可塑性樹脂ビーズを 0.5〜10wt%含有させることにより、意匠性を付与することができる。第1樹脂塗膜層は、好ましくはポリアミンとポリイソシアネートの反応生成物からなる尿素樹脂、メラミン樹脂で架橋した高分子量飽和ポリエステル樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる。
【0015】
本発明の塗装鋼板は、塗装前処理が施された亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板に、塗料中の不揮発分合計量に対して5〜50wt%のクロム酸塩系防錆顔料を含有する焼付け架橋型樹脂塗料を塗布して最高到達温度 180〜240 ℃で焼付ける工程、その後でポリウレタン系および/またはポリエステル系の焼付け架橋型樹脂塗料を塗布して最高到達温度 200〜240 ℃で焼付ける工程、を含むことを特徴とする方法により製造することができる。使用するポリウレタン系および/またはポリエステル系塗料は、上記のような熱可塑性樹脂ビーズを不揮発分合計量に対して 0.5〜10wt%の量で含有することが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の塗装鋼板では、母材として耐食性に優れた亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板を使用する。亜鉛系めっき鋼板とは亜鉛めっき鋼板と亜鉛合金めっき鋼板を含む意味であり、同様にアルミニウム系めっき鋼板はアルミニウムめっき鋼板とアルミニウム合金めっき鋼板を包含する。
【0017】
このようなめっき鋼板の具体例としては、これらに限られるものではないが、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、溶融5%Al−Zn合金めっき鋼板、溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板等が例示される。
【0018】
母材のめっき鋼板は、耐食性と塗膜密着性の向上のために、常法に従って塗装前処理 (即ち、下地処理) を施しておく。この塗装前処理は、クロメート処理やリン酸塩処理 (代表的にはリン酸亜鉛処理) といった化成処理が一般的である。クロメート処理は、電解型や反応型クロメート処理も可能であるが、作業効率の点からは塗布型クロメート処理が好ましい。
【0019】
塗装前処理は従来と同様に実施すればよく、その付着量も従来と同様でよい。目安として、クロメート処理の場合はCr金属換算で20〜80 mg/m2程度、リン酸亜鉛処理では 0.3〜1.2 g/m2程度である。塗装前処理は市販品を利用して、その指示通りに行うことができる。
【0020】
塗装前処理しためっき鋼板に、ポリ塩化ビニルのような熱可塑性樹脂塗料ではなく、焼付け架橋型塗料を少なくとも二回塗装する。下塗り塗料としては、クロム酸塩系防錆顔料を含有する塗料を使用し、上塗り塗料としては防錆顔料を含有しないポリウレタン系および/またはポリエステル系塗料を使用する。
【0021】
好ましい下塗り塗料の例は、特開平10−130572号公報に開示されているような、ブロックイソシアネートとポリアミンとを含有する尿素樹脂系の塗料である。この塗料は厚膜塗装が可能であり、1回の塗装で支障なく形成できる膜厚が通常の塗料では20μm程度であるのに対し、40〜60μmといった厚みの塗膜をワキを発生させずに形成することができる。ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤と反応させてブロックしたブロックイソシアネートを使用するのは、塗料を1液型とするためである。
【0022】
この塗料は、加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基 (−NCO) が再生し、これがポリアミン中のアミン基 (−NH2) と反応して尿素結合 (−NHCONH−) を形成することにより重合する。従って、焼付けにより生成した塗膜中の樹脂は、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応生成物からなる尿素樹脂である。しかし、この尿素樹脂の塗膜だけでは、耐食性が十分に確保できず、母材まで達した傷部や端面での錆発生を防ぐことができない。そのため、本発明では、この下塗り塗料にさらに防錆顔料を含有させる。
【0023】
本発明で下塗り塗料に用いるブロックイソシアネートは、1液型のポリウレタン系塗料に開発されたものであり、ポリイソシアネートを適当なブロック剤と反応させることにより得られる。ポリイソシアネートは芳香族系と脂肪族系に大別され、芳香族系は反応性に優れ、脂肪族系は耐候性に優れ、黄変しにくい。そのため、一般にポリウレタン系塗料では、耐候性に優れた塗膜を形成できる、脂環式も含めた脂肪族系ポリイソシアネートが主に使用され、1液型塗料の場合も脂肪族系ポリイソシアネートをブロック剤と反応させたブロックイソシアネートが主流である。
【0024】
しかし、本発明で下塗り塗料に使用するブロックイソシアネートは耐候性を要求れないので、脂肪族系のものでもよいが、反応性に優れた芳香族系ポリイソシアネートの方が密着性に優れた塗膜を形成できるのでより好ましい。本発明で使用するのに適したポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネートが例示される。中でもトリレンジイソシアネートが性能と経済性から好ましい。
【0025】
ポリイソシアネートは単量体ではなく、プレポリマー、アダクト (トリメチロールプロパン等の付加体) 、イソシアヌレート体、およびビウレット体といった誘導体も使用できる。また、2種以上のポリイソシアネートまたはその誘導体を組合わせて使用してもよい。
【0026】
ポリイソシアネートのブロック剤としては、厚膜可能とするため、ブロックイソシアネートからブロック剤が解離する温度である解離温度が150 ℃以上のものが好ましい。解離温度が150 ℃より低いブロック剤 (例、解離温度120 ℃のクレゾール、解離温度140 ℃のメチルエチルケトンオキシム) を使用したブロックイソシアネートは、塗装後の焼付け時にワキ (気泡) が発生し易くなるため、厚膜塗装が困難となることがある。解離温度が高すぎると、焼付け温度を非常に高くしたり、或いは焼付け時間を長くする必要があるので、解離温度は200 ℃以下、特に180 ℃以下であるのがよい。好ましいブロック剤の例は、解離温度が170 ℃であるε−カプロラクタムであるが、解離温度が150 〜200 ℃、特に 160〜180 ℃である他のブロック剤も使用できる。
【0027】
ポリイソシアネートとブロック剤との反応は従来と同様でよく、一般には溶媒中でポリイソシアネートに当量ないしやや過剰のブロック剤を加熱下で反応させることにより行われる。ブロックイソシアネートは数平均分子量が1000〜4000の範囲内のものが好ましい。ブロックイソシアネートはさまざまな製品が市販されているので、市販品から適当なものを選択して使用することができる。
【0028】
下塗り塗料に用いるポリアミンも、脂肪族 (脂環式を含む) 系と芳香族系のいずれでもよいが、好ましいのは脂環式ポリアミンである。脂環式ポリアミンは、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものを使用することができる。具体例としては、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、ジアミノシクロヘキサン類、ビス(4−アミノシクロヘキシル) メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル) スルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどがある。最も好ましいのは3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンである。ポリアミンも1種または2種以上を使用できる。
【0029】
下塗り塗料中におけるブロックイソシアネートとポリアミンの配合割合は、イソシアネート基/アミノ基のモル比が 0.6〜2.0 の範囲内となるようにすることが好ましい。このモル比はより好ましくは 0.8〜1.2 である。
【0030】
ブロックイソシアネートとポリアミンとを含有する塗料は、厚膜塗装が可能であるので塗装鋼板に適しているが、それだけでは深い傷や切断端面等における耐食性が不十分である。そのため、本発明では、この塗料にさらに防錆顔料を添加して、この塗料を下塗り塗料 (プライマー) として使用する。
【0031】
防錆顔料としては、防錆性に優れたクロム酸塩 (クロメート) 系の防錆顔料を使用する。具体例としては、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、クロム酸カルシウムなどが挙げられ、やはり1種もしくは2種以上を使用できる。
【0032】
クロム酸塩系防錆顔料の添加量は、塗料中の不揮発分合計量 (ブロックイソシアネートのブロック剤部分は不揮発分に含まない) に対して5〜50wt%の範囲内とする。これより少量では、切断端面等の耐食性が確保できず、これより多量では加工性が低下し、塗膜の二次密着性 (長期密着性) も低下する。クロム酸塩系の防錆顔料が50wt%以内であれば、防錆顔料の添加による加工性への悪影響はほとんどなく、耐食性を著しく向上させることができる。この防錆顔料のより好ましい添加量は20〜40wt%である。
【0033】
下塗り塗料は、適当な溶剤にブロックイソシアネートとポリアミンを溶解させた樹脂液に、防錆顔料を添加して均一に分散させることにより調製することができる。溶剤は一般に有機溶剤が使用され、例えば、トルエン、キシレンなどの炭化水素系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、セロソルブ類などのエーテル系、ならびにメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン系の溶剤が例示される。
【0034】
下塗り塗料は、上に詳しく説明した尿素樹脂系塗料が厚膜塗装が可能であることから特に好ましいが、他の焼付け架橋型の塗料、例えば、エポキシ樹脂系塗料、架橋剤を含有するポリエステル樹脂系塗料なども使用できる。その場合には、使用する塗料に不揮発分合計量に対して1〜50wt%のクロム酸塩系防錆顔料を添加する。ポリエステル樹脂系塗料は、防錆顔料の添加を別にすれば、後で上塗り塗料に関して説明するポリエステル樹脂系塗料と同様のものでよい。エポキシ系塗料は、従来より塗装鋼板に使用されているものを利用することができる。
【0035】
尿素樹脂系以外の下塗り塗料、例えば、エポキシ樹脂系またはポリエステル樹脂系塗料を使用する場合、1回の塗装でワキを発生させずに形成できる塗膜の厚みは20μm程度であり、尿素樹脂系に比べて下塗り塗膜が薄くなる。そのため、塗装鋼板に存在するクロム酸塩系防錆顔料の量が少なくなり、塗装鋼板の耐食性が不足する場合がある。その場合には、下塗り塗料を2回以上塗装して厚膜化してもよいが、1回の塗装で得られる20μm以下の薄膜でも、防錆顔料の含有量を例えば25〜50wt%、好ましくは30〜50wt%と多めにすれば、必要な耐食性を確保することができる。従って、下塗り塗料への防錆顔料の添加量を、下塗り塗膜の膜厚が小さいほど多くするというように調整すれば、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂を下塗り塗料に用いても、塗装鋼板に十分な耐食性を付与することができる。
【0036】
下塗り塗料に場合により添加してもよい任意成分としては、塗膜物性の調整やコスト低減を目的として添加される体質顔料 (例、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタニア等) がある。体質顔料を添加する場合、その添加量は、塗料中の不揮発分合計量に対して20wt%以下、特に10wt%以下となる範囲内で添加することが好ましい。下塗り塗料にはさらに、消泡剤、顔料分散剤、タレ防止剤、レベリング剤、シランカップリング剤などの各種添加剤、およびポリイソシアネートとポリアミドとの反応に対する触媒 (例、有機スズ化合物) を少量添加してもよい。
【0037】
この下塗り塗料を、塗装前処理が施された母材のめっき鋼板に塗装する。塗装は、ロールコート、カーテンフローコート、スプレー塗装などの任意の適当な方法で実施できる。コイル状の鋼板に連続塗装する場合にはロールコートが一般的である。塗装は10〜80μmの塗膜厚みが得られるように行う。塗膜厚みが10μmより小さいと、傷つきによる錆発生を防止できなくなり、80μmより厚膜にすると加工性が低下する。この塗膜厚みは好ましくは20〜60μm、より好ましくは30〜50μmである。
【0038】
1回の塗装で必要な膜厚にならない場合には、下塗り塗料を2回以上塗装してもよい。その場合、同じ下塗り塗料を使用してもよく、或いは最初にエポキシ系、次にポリエステル系というように、別の下塗り塗料 (いずれもクロム酸塩系防錆顔料を含有) を使用してもよい。
【0039】
下塗り塗料の塗装後の焼付けは、最高到達温度が 180〜240 ℃となるように行う。この温度範囲の場合、焼付け時間は30〜70秒の範囲とすることが好ましい。これより低温では、樹脂の硬化が不十分となり、所望の膜特性を得ることができない。一方、240 ℃より高温に加熱すると、樹脂の分解を生ずることがあり、加工性をはじめとする膜特性が劣化する。好ましい焼付け温度 (最高到達温度) は 200〜220 ℃である。
【0040】
下塗り塗料として、上述した尿素樹脂系塗料を使用した場合、焼付けにより、塗膜中のブロックイソシアネートからブロック剤が解離し、生成した遊離のポリイソシアネートがポリアミンと反応して尿素樹脂になる。従って、形成された下塗り塗膜 (第1層塗膜) は、ポリイソシアネートとポリアミンとの反応で生成した尿素樹脂中に、クロム酸塩系防錆顔料が分散した構造のものとなり、塗膜中のクロム酸塩系防錆顔料の量は5〜50wt%の範囲である。下塗り塗料がエポキシ系やポリエステル系の場合も、架橋硬化した樹脂中に防錆顔料が分散した下塗り塗膜が形成される。
【0041】
この下塗り塗膜の上に、防錆顔料を含有しない上塗り塗料を塗装して焼付けることにより上塗り塗膜 (第2層塗膜) を形成する。上塗り塗料としては、加工性に優れたポリエステル系またはポリウレタン系の樹脂塗料を用い、15〜40μmの厚みの塗膜とする。また、下塗り塗膜と上塗り塗膜の膜厚の合計が30μm以上、100 μm以下となるようにする。下塗りと上塗りの合計膜厚がかなり厚膜になるにもかかわらず、密着曲げ可能な優れた加工性を持つ塗装鋼板になる。使用するポリウレタン系塗料やポリエステル系塗料は、市販品でもよいが、既知の方法で調製してもよい。
【0042】
ポリエステル系塗料は、前述したように、従来より塗装鋼板の上塗り塗料として使用されている。塗装鋼板用の塗料に使用されるポリエステル樹脂は、一般に高分子量の飽和ポリエステル樹脂 (即ち、熱可塑性ポリエステル樹脂) に架橋剤を含有させることにより焼付け架橋型としたものである。架橋剤としては、ポリエステル樹脂が末端OH基を有する場合にはメラミン樹脂が、末端COOH基を有するポリエステル樹脂の場合にはエポキシ樹脂を使用することができる。好ましいポリエステル系塗料は、OH基含有飽和ポリエステル樹脂に架橋剤としてメラミン樹脂を配合したものであり、特にアルコール変性したメラミン樹脂を架橋剤とするものが好ましい。
【0043】
飽和ポリエステル樹脂は、それぞれ1種もしくは2種以上の飽和脂肪族 (脂環式を含む) または芳香族ジカルボン酸 (例、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等) と、グリコール (例、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、 1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、 1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、 1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン等) とを重縮合させて得られる線状ポリエステルでもよく、或いはさらに3価以上のカルボン酸 (例、トリメリット酸等)および/または3価以上のアルコール (例、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等) を共重合させた分枝状ポリエステルでもよい。
【0044】
上塗り塗料に用いる飽和ポリエステル樹脂、特にメラミンで架橋させる飽和ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が5000〜20,000、好ましくは8000〜15,000、水酸基含有量が 1.0〜4.0 wt%、好ましくは 2.0〜3.0 wt%、ガラス転移温度が−30℃〜0℃のものが好ましい。それにより、加工性と耐傷付き性が共に良好な塗膜を形成することができる。なお、ポリエステル系塗料を下塗り塗料に使用する場合も、ここに説明したのと同様のポリエステル系塗料でよいが、下塗り塗料とする場合には所定量のクロム酸塩系防錆顔料を添加する。
【0045】
ポリウレタン系塗料は、ポリイソシアネートとポリオールとを含有する塗料である。ポリウレタン系塗料も、ポリイソシアネート成分をブロック剤と反応させてブロックイソシアネートの形で含有させることにより、1液型の塗料とすることが好ましい。
【0046】
ポリイソシアネートとしては、上塗り塗料であるので、耐候性に優れ、黄変しにくいポリウレタン塗膜を形成することができる、脂環式も含めた脂肪族系ポリイソシアネートが好ましい。このような脂肪族系ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネートは、プレポリマー、アダクト、イソシアヌレート体、ビウレット体などでもよい。
【0047】
特に好ましいポリイソシアネートは、加工性に優れた塗膜を形成できる水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートである。しかし、このポリイソシアネートはかなり高価であるので、他のポリイソシアネートを併用してもよい。その場合、ポリイソシアネート中の少なくとも20wt%を水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートにすると、加工性に優れた塗膜を得ることができる。上塗り塗料におけるポリイソシアネートのブロック剤は、解離温度が150 ℃付近のものが好ましい。
【0048】
ポリウレタン系塗料に用いるポリオール成分としては、ポリエステルおよびポリエーテル (例、多価アルコールを開始剤としてエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを開環重合させたもの) が一般的であり、本発明でもそれらの1種もしくは2種以上を使用できる。
【0049】
好ましいポリオール成分はポリエステルである。このポリエステルは、前述したポリエステル系塗料に用いるポリエステル樹脂と同様でよく、上と同様に、重量平均分子量が5000〜20,000、特に8000〜15,000で、水酸基含有量が 1.0〜4.0 wt%、特に 2.0〜3.0 wt%、ガラス転移温度が−30℃〜0℃のものを使用することが好ましい。
【0050】
本発明における上塗り塗料として特に好ましいのは、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートを適当なブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートを少なくとも20wt%以上含有するブロックイソシアネートと、ポリオール成分として上記の好ましいポリエステル樹脂、とを含有するポリウレタン系塗料である。ポリウレタン系塗料におけるイソシアネート基/水酸基のモル比は 0.6〜2.0 、特に 0.8〜1.2 の範囲内とすることが好ましい。また、上記の好ましいポリエステル樹脂をアルコール変性したメラミン樹脂で架橋する種類のポリエステル系塗料も上塗り塗料として非常に好ましい。
【0051】
上塗り塗料には、アクリル樹脂やナイロン等の熱可塑性樹脂からなる平均粒径1〜50μmの樹脂ビーズを、不揮発分合計量に対して 0.5〜10wt%の量で含有させることが好ましい。それにより、塗膜表面に凹凸ができ、低光沢化の落ちついた外観となるため、塗膜の意匠性が向上する。さらに、この表面凹凸により塗膜の耐摩耗性が向上し、傷つきにくくなる。樹脂ビーズの平均粒径は好ましくは3〜20μmである。樹脂ビーズの添加量は好ましくは1〜5wt%である。この添加量が多すぎると、加工性の低下が顕著となる。
【0052】
上塗り塗料は、上記以外に通常は着色顔料を含有する。溶剤や他の成分 (例、体質顔料、他の樹脂、各種添加剤) は下塗り塗料について説明したものと同様でよい。上塗り塗料は防錆顔料を含有していないので、体質顔料は不揮発分合計量に対して60wt%までの量で添加することができる。
【0053】
上塗り塗料も、下塗り塗料と同様の方法で塗装できる。塗装は、塗膜厚みが15〜40μm、好ましくは20〜30μmとなるように行う。上塗り塗膜が薄すぎると、耐傷付き性が低くなる上、着色困難となり、耐食性や耐候性も不十分となる。上塗り塗膜が厚すぎると加工性が低下する。
【0054】
上塗り塗料も、必要であれば、2回以上の塗装を行って所定の膜厚の塗膜を形成してもよい。特にポリエステル系塗料は、1回の塗装では膜厚20μm程度とすることが好ましいので、場合によっては2回の塗装が必要となる。ポリウレタン系塗料は1回でも40μm程度の膜厚を塗装できる場合がある。2回以上塗装する場合、使用する塗料は同じものでも、別のものでもよい。例えば、最初にポリエステル系塗料、次にポリウレタン系塗料を使用して塗装してもよい。ポリエステル系塗料とポリウレタン系塗料を併用する場合には、耐候性がポリエステル系塗料より良好なポリウレタン系塗料が最上層となるように、最初にポリエステル系塗料を使用することが好ましい。なお、熱可塑性樹脂ビーズを使用する場合には、最後に塗装される上塗り塗料だけに添加すればよい。
【0055】
上塗り塗料の塗装後の焼付けは、最高到達温度が 200〜240 ℃、好ましくは 220〜240 ℃の範囲で行う。焼付け時間は、温度にもよるが、40〜90秒の範囲内が好ましい。それにより、好ましくは熱可塑性樹脂ビーズを含有している、ポリウレタン系および/またはポリエステル系の上塗り塗膜が形成される。
【0056】
こうして製造された本発明の塗装鋼板は、鋼板上に、下から順に、▲1▼亜鉛系またはアルミニウム系めっき層、▲2▼下地処理 (塗装前処理) 層、▲3▼クロム酸塩系防錆顔料を含む第1樹脂塗膜層 (下塗り塗膜) 、▲4▼樹脂ビーズを含有していてもよい、ポリウレタン系および/またはポリエステル系の第2樹脂塗膜層 (上塗り塗膜) 、という被覆層を持つ構造となる。このうち、▲3▼と▲4▼の樹脂塗膜層は、それぞれ2層以上の樹脂層から形成することもできる。
【0057】
下塗り塗膜 (第1塗膜層) と上塗り塗膜 (第2塗膜層) の合計厚みは30μm以上、100 μm以下とする。この合計厚みが30μm未満では塗装鋼板の耐傷付き性が低く、例えば、ハンドリング時にめっき素地に達するような傷がつき易くなり、耐食性も低下する。これに対し、合計厚みが30μm以上になると、塗装鋼板の耐傷付き性が著しく向上し、特に40μm以上では、塗膜厚みが150 μm以上と厚い塩ビ鋼板に匹敵するか、それ以上の優れた耐傷付き性が得られる。合計膜厚が100 μmを超えると、加工性に悪影響が見られるようになる。塗膜の合計厚みの好ましい範囲は40〜80μmであり、より好ましい範囲は40〜60μmである。
【0058】
焼付け架橋型の樹脂塗膜を有する塗装鋼板に関して、ダイヤモンド針による荷重下での引っ掻き試験での傷付き試験による耐傷付き性と膜厚との関係はこれまでほとんど検討されてこなかった。本発明者らは、この点について検討した結果、塩ビ鋼板よりずっと小さい膜厚で優れた耐傷付き性を得ることができることを見出した。これは、塩ビ鋼板が、柔らかい可塑剤を含有する熱可塑性樹脂塗膜であるため、引っ掻き傷が入りやすいのに対し、焼付け架橋型の塗膜では塗膜がより硬いので引っ掻き傷が入りにくく、ある程度の厚みがあれば、めっき鋼板素地に達するような深い傷が入るのを防止できるためであると考えられる。
【0059】
なお、本発明の塗装鋼板は上記の第1塗膜層 (下塗り塗膜) と第2塗膜層 (上塗り塗膜) に加えて別の樹脂塗膜層を有していてもよい。例えば、最下層として、防錆顔料を含有しないプライマー (例、エポキシ系プライマー) の薄膜 (例、厚み10μm以下、普通には5μm以下) を第1塗膜層の下に形成してもよい。このプライマー塗膜にクロム酸塩系防錆顔料を含有させることもできるが、こうして防錆顔料を含有させたプライマー塗膜は、本発明では第1層塗膜の一部となる。また、防錆顔料を含有する第1層塗膜と、ポリエステル系および/またはポリウレタン系の第2層塗膜との間に、防錆顔料を含有しない他の樹脂塗膜層 (ポ
リエステル系またはポリウレタン系以外の) を介在させることも可能である。
【0060】
上述した少なくとも2層の樹脂塗膜は、母材のめっき鋼板の両面に形成してもよいが、通常は片面のみに形成する。その場合、反対側の面は、めっき面のままか、下地処理のままでもよく、或いは他の樹脂系塗装を施してもよい。
【0061】
本発明の塗装鋼板は、焼付け架橋型の樹脂塗膜を30μm以上の膜厚で有しているため傷がつきにくく、さらに下塗り塗膜に添加した防錆顔料により切断端面の耐食性にも優れており、仮に母材に達する傷がついても錆を生じにくい。さらに、上塗り塗膜が耐候性と加工性のバランスに優れた塗膜であるため、密着曲げ可能な優れた加工性も確保される。従って、この塗装鋼板は、特に屋内で使用される各種建材 (例、パーティション) や家電製品に有用であるだけでなく、屋外建材 (例、屋根材、壁材、シャッター) や屋外家電製品 (例、エアコン室外機、自動販売機の外板) にも十分に使用できる。もちろん、建材、家電製品以外の他の用途にも適用可能である。
【0062】
【実施例】
[実施例1]
溶融亜鉛めっき鋼板 (板厚0.6 mm、めっき付着量は片面90 g/m2)を母材として使用し、脱脂処理後、その両面に市販の処理液を用いて燐酸亜鉛処理 (付着量は片面1g/m2) を施した。
【0063】
下塗り塗料は、ポリアミン (BASF製ラロミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン) とブロックイソシアネート (住友バイエルウレタン製デスモジュールBL1100、解離温度170 ℃のε−カプロラクタムでブロックされたトリレンジイソシアネート) を、アミノ基とイソシアネート基のモル比が1:1.2 となるような割合で溶媒のシクロヘキサノンに溶解し、得られた樹脂液に、不揮発分合計量に対する含有量が表1に示すようになる量で、防錆顔料のクロム酸ストロンチウムまたはクロム酸亜鉛 (いずれもキクチカラー製) を、5wt%の体質顔料のシリカと共に添加し、ガラスビーズを使用して均一に分散させることにより調製した。
【0064】
上記の前処理した溶融亜鉛めっき鋼板の片面に、この下塗り塗料をバーコータにより塗膜厚みが40μmになるように塗布し、表2に示した最高到達温度で約60秒間の焼付けを行って、下塗り塗膜を形成した。
【0065】
この下塗り塗膜の上に、上塗り塗料としてポリウレタン系塗料をバーコータにより塗膜厚みが20μmになるように塗布し、表2に示した最高到達温度で約60秒間の焼付けを行って、上塗り塗膜を形成し、塗装鋼板のサンプルを作製した。
【0066】
使用したポリウレタン系塗料は、ポリエステル樹脂 (住友バイエルウレタン製アルキノール2013、重量平均分子量8000、水酸基含有量3wt%、ガラス転移温度−20℃の線状飽和ポリエステル樹脂) と、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートをε−カプロラクタムでブロックしたブロックイソシアネート (住友バイエルウレタン製スミジュール2117) とを、固形分重量比で1:0.2(イソシアネート基/水酸基のモル比=1.5)の割合で混合し、さらに白色顔料を兼ねた体質顔料として酸化チタン (石原産業製R930) を樹脂固形分と同重量、およびアクリル樹脂ビーズ (平均粒径5μm) を樹脂固形分に対して1wt%添加して分散させ、溶媒 (ソルベッソTM150)で適宜希釈することにより調製した。
【0067】
得られた塗装鋼板について、下記の性能を評価し、それらの試験結果も表2に併記した。比較のために、市販の塩ビ鋼板 (膜厚:約200 μm) についても同様に試験した。
【0068】
(1) 加工性
塗装面を外側にして23℃で 180°曲げ加工を施し、曲げ部におけるクラック発生有無を10倍ルーペで観察し、クラックが認められない最小の板挟み枚数 (T、0Tは密着曲げ) で評価した。2T以下が良好である。
【0069】
(2) 耐食性
JIS Z 2371に規定される塩水噴霧試験を使用した。試験片にめっき鋼板素地に達するクロスカットを入れてから、500 時間の塩水噴霧を受けさせ、カット部からの塗膜膨れ幅 (最大値) を測定した。この膨れ幅が2mm以下であれば耐食性は良好である。
【0070】
(3) 耐湿潤性
めっき鋼板素地に達するクロスカットを入れた試験片を、50℃−RH98%以上の湿潤雰囲気に1000時間曝露した後、クロスカット部の錆発生により膨れた塗膜膨れ幅 (最大値) を測定した。この膨れ幅が2mm以下であれば耐湿潤性は良好であり、耐候性に優れているといえる。
【0071】
(4) 耐傷付き性
ダイヤモンド針を用いて、試験片の塗膜面に引っ掻き傷を入れることにより評価した。ダイヤモンド針の荷重を変化させて、約1cm/sの速度で針を移動させ、塗膜が剥離してめっき鋼板素地が露出する限界の荷重で評価した。この荷重が大きいほど塗膜が強靱で剥離しにくいことを示す。この荷重が 100g以上であれば耐傷付き性が良好である。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表2からわかるように、約 200μmの樹脂塗膜厚みを有する市販の塩ビ鋼板は、加工性、耐食性、耐湿潤性が良好で、耐傷付き性も 120gと良好であった。これに対し、実施例の塗装鋼板は、上下の樹脂塗膜厚みの合計が60μmと薄いにもかかわらず、焼付け温度を適切に選択した試験No.1〜9 では耐傷付き性が 150gと塩ビ鋼板より優れた性能を示した。また、本発明例の塗装鋼板 (即ち、焼付け温度を適切に設定し、かつクロム酸塩系防錆顔料の配合量も適切であった場合) は、加工性が0〜1Tと非常に良好で、耐食性と耐湿潤性も良好であり、市販の塩ビ鋼板と遜色ない性能を示した。
【0075】
しかし、クロム酸塩系防錆顔料を添加しないと、耐食性が著しく劣化し、耐湿潤性が低下した。また、クロム酸塩系防錆顔料の添加量が50wt%を超えると、加工性が劣化した。一方、下塗り塗料か上塗り塗料の焼付け温度が低すぎると、加工性が低下し、耐傷付き性も低下して、良好ぎりぎりの性能となった。下塗り塗料か上塗り塗料の焼付け温度が高すぎても加工性が低下した。
【0076】
[実施例2]
溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板 (板厚0.6 mm、めっき付着量は片面120 g/m2) を母材として使用し、脱脂処理後、その両面に市販の塗布型クロメート処理液を用いてクロメート処理 (付着量は金属Cr換算で40 mg/m2) を施した。
【0077】
下塗り塗料として、実施例1の表1に示したサンプルCの塗料を使用し、これをバーコータを用いて、クロメート処理した母材めっき鋼板の片面に、塗膜厚みが40μmになるように塗布し、最高到達温度210 ℃で約60秒間の焼付けを行い、下塗り塗膜を形成した。
【0078】
その後、添加する樹脂ビーズの種類と量を表3に示すように変更した以外は実施例1で用いたのと同じポリウレタン系塗料を、塗膜厚みが約20μmになるようにバーコータで塗布し、最高到達温度240 ℃で約60秒間の焼付けを行い、上塗り塗膜を形成した。樹脂ビーズとして用いたのは、実施例1で用いたのと同じアクリル樹脂ビーズまたはナイロンビーズ (平均粒径10μm) である。
得られた塗装鋼板の各性能を実施例1と同様に評価し、その結果を表3に併記した。
【0079】
【表3】
【0080】
上塗り塗膜が樹脂ビーズを含有していないサンプルNo.1に比べて、樹脂ビーズの含有により耐傷付き性が向上することがわかる。但し、樹脂ビーズの添加量が10wt%を超えると加工性が低下した。
【0081】
[実施例3]
溶融亜鉛めっき鋼板 (板厚0.6 mm、めっき付着量:片面120 g/m2) を母材として使用し、実施例1と同様に下地処理を施した。その後、表4に示す組合わせの樹脂と膜厚で、2層または3層の塗膜を有する塗装鋼板を、実施例1と同様にして作製した。使用した塗料と焼付け温度 (かっこ内) は次の通りである。なお、顔料やビーズの含有量は不揮発分合計量に対する割合である。
【0082】
下塗り塗料
▲1▼エポキシ系塗料:日本ペイント製NSC 610 (210℃)(防錆顔料のクロム酸ストロンチウムを30wt%含有) 、
▲2▼ポリエステル系塗料A:大日本インキ製PB20P (210℃)(防錆顔料のクロム酸ストロンチウムを35wt%含有) 、
▲3▼尿素樹脂系塗料:実施例1の下塗り塗料サンプルCと同じ(210℃)(防錆顔料のクロム酸ストロンチウムを20wt%含有) 、
上塗り塗料
▲1▼ポリエステル系塗料B:大日本インキ製SRF−05 (230 ℃) 、
上塗り塗料
▲1▼ポリウレタン系塗料:実施例1の上塗り塗料と同じ(230℃)(アクリル樹脂ビーズを3wt%含有) 、
▲2▼ポリエステル系塗料C:大日本インキ製SRF−05 (230 ℃)(ナイロン樹脂ビーズを3wt%含有) 。
【0083】
表4に示した中間層塗膜のうち、防錆顔料を含有するポリエステルAの塗膜は本発明の下塗り塗膜 (第1層塗膜) の一部を構成する。この場合、下塗り塗膜は、下層が表4の第1層塗膜、上層がこの中間層塗膜という2層からなる。一方、表4に示した中間層塗膜がポリエステルBからなる場合、この中間層塗膜は本発明の上塗り塗膜 (第2層塗膜) の一部を構成する。この場合の上塗り塗膜は、下層がこの中間層塗膜 (樹脂ビーズなし) 、上層が表4の第2層塗膜 (樹脂ビーズ入り) という2層からなる。
【0084】
得られた塗装鋼板の加工性、耐食性、および耐傷付き性を実施例1と同様に評価した結果を表5に示す。また、合計塗膜厚みと耐傷付き性との関係を図1に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
表4、5および図1からわかるように、各種塗膜の組合わせにおいて塗膜厚の大きいものほど、素地貫通する場合のダイヤモンド針荷重が大きくなり、耐傷付き性が向上する。100 g以上の荷重で引っかいても大丈夫とするには、30μm以上の合計塗膜厚みが必要である。合計厚みが40μmになると、表2に示した塗膜厚みが約200 μmの塩ビ鋼板と同レベルの耐傷付き性が得られ、合計厚みが45μm以上では、塩ビ鋼板より薄膜であるにもかかわらず、耐傷付き性が塩ビ鋼板よりさらに向上する。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、焼付け架橋型塗料を用いて少なくとも二回の塗装を施した塗装鋼板において、下塗り塗膜にはクロム酸塩系防錆顔料を含有させ、この塗膜厚みを10μm以上と、通常のプライマーより厚くし、上塗り塗料は加工性と耐候性のバランスに優れたポリウレタン系および/またはポリエステル系塗料を使用することで、良好な加工性を維持できる程度の膜厚で、従来の塩ビ鋼板と同程度またはそれよりさらに優れた耐傷付き性を有する塗装鋼板を得ることができ、耐食性や耐湿潤性も塩ビ鋼板と同レベルを確保できる。また、上塗り塗料に熱可塑性樹脂ビーズを含有させることにより、表面に凹凸を付与して意匠性を付与し、耐傷付き性をさらに向上させることができる。
【0089】
従って、本発明は、塩ビ鋼板のような環境上の懸念がなく、かつ塩ビ鋼板よりかなり薄い塗膜厚みで、塩ビ鋼板と同等ないし、耐傷付き性についてはさらに優れた性能を持つ塗装鋼板を提供することができ、塗装鋼板の性能向上と環境問題の懸念解消に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の結果を塗装鋼板の上下の塗膜の合計厚みと耐傷付き性との関係として示すグラフである。
Claims (5)
- 塗装前処理が施された亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板の片面または両面上に、5〜50wt%のクロム酸塩系防錆顔料を含有する厚み10〜80μmの焼付け架橋型の第1樹脂塗膜層と、その上の防錆顔料を含有しないポリウレタン系および/またはポリエステル系塗料から形成された厚み15〜60μmの焼付け架橋型の第2樹脂塗膜層とを有し、この2つの樹脂塗膜層の合計厚みが30〜100 μmであることを特徴とする耐傷付き性に優れた高加工性塗装鋼板。
- 第2樹脂塗膜層が、平均粒径1〜50μmの熱可塑性樹脂ビーズを 0.5〜10wt%含有する、意匠性に優れた請求項1記載の塗装鋼板。
- 第1樹脂塗膜層が、ポリアミンとポリイソシアネートの反応生成物からなる尿素樹脂、メラミン樹脂で架橋した高分子量飽和ポリエステル樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる、請求項1または2記載の塗装鋼板。
- 塗装前処理が施された亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板に、塗料中の不揮発分合計量に対して5〜50wt%のクロム酸塩系防錆顔料を含有する焼付け架橋型樹脂塗料を塗布して最高到達温度 180〜240 ℃で焼付ける工程、その後で防錆顔料を含有しないポリウレタン系および/またはポリエステル系の焼付け架橋型樹脂塗料を塗布して最高到達温度 200〜240 ℃で焼付ける工程、を含むことを特徴とする、請求項1記載の塗装鋼板の製造方法。
- 前記ポリウレタン系塗料および/またはポリエステル系塗料が、平均粒径1〜50μmの熱可塑性樹脂ビーズを不揮発分合計量に対して 0.5〜10wt%の量で含有する、請求項4記載の方法。
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