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JP3738522B2 - 電子ビームによる蒸発方法 - Google Patents
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JP3738522B2 - 電子ビームによる蒸発方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空中において蒸着材料を電子ビームで蒸発させる電子ビームによる蒸発方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、投光機の反射板等に薄膜を形成する際に、真空中においてるつぼ内に給材された蒸着材料を電子ビームで加熱・蒸発させて、反射板に蒸着させる方法が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
真空中において、るつぼ内に給材された蒸着材料を電子ビームで蒸発させる方法では、特に、蒸着条件などの理由で蒸着材料の蒸発量が非常に少ない場合、蒸着材料の消費量が非常に少なく、電子ビームのビーム出力も低いので、全ての条件が不安定になりやすい。
【0004】
また、グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料を使用する場合、通常の自動給材機構では、蒸着材料の蒸発によって蒸着材料に形成された凹部に次回蒸発させる蒸着材料を給材し、摺り切ったり、振り落としたりして、蒸着材料の給材量を調整していたが、蒸着材料の蒸発量が少ない場合、蒸着材料に非常に小さい凹部しか形成されないので、蒸着材料を給材できる量が減少する。さらに、るつぼの中央に蒸着材料が溜まる凹部が無い場合、給材された蒸着材料がるつぼ内の周縁にまで広がってしまう。電子ビームはるつぼの略中央に当たり、るつぼの周縁部にはあまり強く当たらないため、蒸着材料の熔融が不完全になることがあり、完全に熔融していないグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料が突然熔け出すと、熔融液が跳ね散る所謂スプラッシュと呼ばれる現象が発生しやすく、熔融液が製品に跳ねて不良の原因になるという問題があった。
【0005】
ところで、蒸着材料が蒸発する場合、蒸着材料が熔融した熔融液の表面から、熔融液のほんの一部分が蒸発するだけなので、蒸着材料の蒸発量に比べて遙に大量の熔融液が溜まる池を設ける必要がある。すなわち、蒸着材料の消費量(蒸発量)は熔融液の量に比べて非常に少ないので、蒸着後に殆どの熔融液が残り、溶融液が固まって大きな熔融塊が形成される。この熔融塊はグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料よりも高出力の電子ビームを当てなければ再熔融せず、特にSiO2 などのように非常に再熔融しにくい蒸着材料の場合、蒸発不能となることもある。
【0006】
ここで、この熔融塊を高出力の電子ビームで熔融し、次回の蒸着時の蒸着材料とすることもできるが、この作業を繰り返し行うと、高出力の電子ビームが熔融塊の深くまで到達し、熔融液が全体に浸透するので、熔融塊が急速に成長してるつぼの中身全体が一つの熔融塊となる。このように大きな熔融塊が形成されると、その熱容量と熱伝導率が非常に大きくなるので、電子ビームの熱を水冷るつぼに逃がしてしまい、熔融塊が全く熔融しなくなる。このように、蒸着材料の蒸発条件が急速に悪化し、蒸発不能に至る傾向があるという問題があった。
【0007】
一方、グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料は安価で、自動給材機構で給材するのに好適であるが、電子ビームのビーム出力と熔融レベルとの関係が非常に敏感になるという問題がある。例えば、図4に示すように、電子ビームのビーム出力が僅かに強いだけで、るつぼ1内に給材された蒸着材料3をるつぼ1の底まで容易に掘り進むということがある。この時、蒸着材料3の蒸発によって形成された凹部7がるつぼ1の底にまで達すると、蒸着材料3の蒸発する方向が異常になり、るつぼ1の底から発生する不純物によって、蒸着材料3が汚染されるという問題もあった。なお、6は熔融液が固まってできた熔融塊である。
【0008】
一般に、SiO2 などの蒸着材料を電子ビームで蒸発させる場合、蒸着材料が熔融した面積と熔融液の液量とを一定に保たなければ蒸発速度が不安定になるが、上述のようにグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料は熔融状態がなかなか安定しないので、蒸着材料の蒸発量が少ない不安定な条件下では、グラニュール状或いは顆粒状の蒸着材料を使用しにくかった。
【0009】
このような問題を解決するために、図5に示すように、略中央にタブレット状の蒸着材料9を収める凹所8aが形成されたライナー8をるつぼ1内に載置し、ライナー8に収められた蒸着材料9を電子ビームで蒸発させる方法が提案されている。この方法では、ライナー8が熔融液の容器として働くとともに、電子ビームが蒸着材料9を付け抜けて、るつぼ1に達する凹部が形成されるのを防いでいるので、蒸着材料9の蒸発を安定させる事ができるが、ライナー8は高融点材料から形成しなければならず、高融点材料は概して加工しにくい材料であるので、ライナー8の加工費が非常に高価になるという問題があった。また、ライナー8を蒸着材料9と異なる高融点材料から形成すると、不純物が混入する原因となるという問題もあった。一方、ライナー8を蒸着材料9と同一の材料で形成すると、ライナー8が蒸着材料9とともに熔融することがあり、ライナー8の消耗が激しいという問題もあった。さらに、タブレット状の蒸着材料9はその上部だけを使用し、蒸着後は丸ごと捨ててしまうため、蒸着材料9の無駄が多いという問題もあった。
【0010】
また、蒸着材料の熔融状態に応じて、電子ビームのビーム出力を都度調整し、常に最適の蒸発条件で蒸着材料を蒸発させる方法も理論的には可能であるが、熔融状態の検出が難しいこと、また、蒸着材料を突き抜けてるつぼの表面に達する凹所が形成されるのを防止できないこと、毎回蒸発条件を変化させる必要があること、などの理由から現実的には不可能である。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、請求項1乃至5の発明の目的は、蒸着材料を安定して蒸発させることができる安価な電子ビームによる蒸発方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明では、上記目的を達成するために、真空中において蒸着材料に電子ビームを照射して蒸着材料を蒸発させるにあたり、蒸着材料と同一の材料で形成されたベースであって、蒸着材料よりも高密度で熱容量が大きく形成された上記ベースをるつぼの底に敷き、ベースの上から粒状の蒸着材料を載せ、蒸着材料を電子ビーム法で蒸発させることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、電子ビームのビーム出力をベースが大幅に熔融しない程度のビーム出力とし、ベース上に載せられた蒸着材料を電子ビームで熔融することにより、ベースの上面付近を底とする凹部を形成し、次回から該凹部に適量の蒸着材料を給材して、蒸着材料を蒸発させることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、ベースの消耗を低減するために常に電子ビームのビーム出力をベースが大幅に熔融しない程度のビーム出力とすることを特徴とする。
請求項4の発明では、請求項1、2又は3の発明において、給材された粒状の蒸着材料が1回の蒸着で全て蒸発するように蒸着材料の給材量及び蒸発条件を設定したことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明では、請求項1、2、3又は4の発明において、蒸着開始前に蒸着時よりも大きなビーム出力でるつぼ内の蒸着材料を蒸発させ、次回蒸着時に蒸着材料を給材するための凹部を蒸着材料に形成することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
本実施形態の電子ビームによる蒸発方法を、図1乃至図3を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、るつぼ1の底にベース2を敷き、ベース2の上からるつぼ1内にグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3を給材する。次に、るつぼ1内の内容物を、蒸着材料3を蒸発させるのに必要なビーム出力よりも大きく、ベース2を大幅に熔融しない程度の出力範囲の電子ビームで熔融し、ベース2及び蒸着材料3の上方に中央部が窪んだ熔融塊4を形成する。この時、熔融塊4の表面にはベース2の上方付近を底とするクレーター状の凹部5が形成され、次回蒸発時には、図3に示すように、凹部5に蒸着材料3’を給材し、凹部5上の蒸着材料3’を電子ビームで蒸発させる。
【0018】
ここで、ベース2は蒸着材料3と同一の材料からなり、グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3よりも密度が高く、且つ、熱容量が大きくなっている。なお、高密度で熱容量が大きいものとしては、例えば蒸着材料3よりも比較的形状の大きな塊や粒子なども含まれる。そして、氷が雪よりも溶けにくく、大きな氷が砕いた氷よりも溶けにくいように、蒸着材料3よりも高密度で熱容量の大きいベース2は、グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3よりも熔融しにくくなっており、ベース2を熔融させるためには大出力の電子ビームが必要になるので、電子ビームによる蒸発によって、ベース2を貫通する孔が形成されることはない。したがって、蒸着材料3及びベース2を突き抜けて、るつぼ1に達する孔が形成されることはないので、突き抜け防止をあまり考慮せずに、蒸着材料3の熔融条件を自由に設定することができる。
【0019】
なお、ベース2は、るつぼ1の中央部のみをカバーすれば良く、るつぼ1より十分小さいものでよい。ベース2は円板状のものが好ましいが、るつぼ1内に収まれば、どのような形状でもよい。また、性能は多少低下するが、ベース2の厚さを調整しやすいように、厚みの薄いベース2を複数枚積み重ねてもよいし、蒸着材料3に比べて粒子の相当大きいグラニュール状のものや、破片状のものをるつぼ1の底に敷いてもよい。また、ベース2の加工精度や表面形状は特に精度を必要としないので、ベース2を安価に製造することができる。
【0020】
従来の蒸発方法では、蒸着材料3の容器として高価で精密なライナーを使用していたが、本実施形態では、蒸着材料3の熔融液が固まった熔融塊4を、次回蒸着時に蒸着材料3’を給材するための容器として使用している。なお、ベース2は、ベース2上に熔融塊4を形成するための台の役目も果たしている。
初回蒸着時に熔融塊4を形成する際は、電子ビームのビーム出力を蒸着材料3を蒸発させるのに必要なビーム出力よりも大きく、ベース2が大幅に熔融しない程度の出力範囲としているが、このビーム出力は実用的には通常の蒸着条件を含んでいるので、特に工程を設ける必要はなく、1回目の蒸着を行えばよい。そして、初回蒸着時に形成された凹部5は2回目以降の蒸着時には蒸着材料3が熔融した熔融液の容器としても働き、熔融液の蒸発面積などを決める役割も有する。
【0021】
2回目以降の蒸着時には、凹部5に蒸着材料3’を給材し、凹部5上の蒸着材料3’を電子ビームで蒸発させる。初回蒸着時には、蒸着材料3の蒸発と凹部5の形成が同時進行するが、熔融しにくい熔融塊4がないので、蒸着材料3の蒸発は常に安定しており、蒸着材料3の蒸発については何の問題もない。この時、もしベース2が無ければ、蒸着材料3の蒸発によって形成される凹部5の深さが安定せず、しばしばるつぼ1の底に達する凹部5が形成されてしまうが、ベース2をるつぼ1の底に敷くことにより、凹部5を安定的に形成することができる。また、2回目以降の蒸着時には、ベース2上に形成された熔融しにくい熔融塊4で電子ビームが止まるので、ベース2の堀込みは発生せず、ベース2が消耗することはない。すなわち、ベース2は初回蒸着時のみ凹部5の突き抜け防止用及び給材用容器となる熔融塊4を形成するための台として働くが、2回目以降の蒸着時には、ベース2まで熔融が及ばないように蒸発条件を設定し、特別な条件変動がない限りベース2は特に機能していないので、従来使用されていたライナー8のように常に熔融液の容器となるものとは異なっている。
【0022】
ところで、グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3は熔融開始と共に粒子間の空隙がつぶれ、蒸着材料3の体積が急激に減少するので、初期の体積と比較して熔融液の量が非常に少量となる。つまり、蒸着材料3の蒸発によって形成される凹部5の大きさは、主として蒸着材料3の粒子間の空隙がつぶれることに依存しており、蒸着材料3の蒸発量にはあまり依存していない。特に、初期の熔融では、蒸着材料3が熔融した熔融液は、熔融液の下の蒸着材料3の粒子間の空隙にしみ込んでしまう。
【0023】
このため、図1に示すように、初回蒸着時には大きな凹部5が形成される。一方、2回目以降の蒸着時には熔融液のしみ込みが殆どないので、蒸着材料3が蒸発する条件が同じでも、初回蒸着時に続いて凹部5の堀込みが進むことはなく、凹部5の深さが安定し、凹部5に給材される蒸着材料3の給材量とその蒸発量が安定する。
【0024】
また、2回目以降の蒸着では、凹部5一杯に給材されたグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3’を熔融しても、凹部5の容量に比べて少量の熔融液しか発生しない。この熔融液を都度蒸発しきるのが理想であるが、実際には各種の条件のばらつきで、多少の液面変動は避けられない。しかしながら、蒸着材料3’の蒸発量に比べて凹部5の容量は遙に大きいので、熔融液の液面変動は凹部6の底での上下に過ぎず、凹部5が埋まるようなことはなく、蒸着材料3’を安定的に蒸発させることができる。
【0025】
本発明では、熔融塊4を蒸発源とせず、凹部5に給材されたグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3’を蒸発源としているので、電子ビームのビーム出力を大きくする必要がなく、熔融液の溜まる池は浅く、熔融液が冷えて固まった熔融塊4が成長することはない。また、るつぼ1の周縁部の底のほうでは、蒸着材料3はグラニュール状又は顆粒状のままなので断熱性が高く、蒸着材料が熔融しなくなるというようなことはなく、蒸着材料は少ないエネルギーで効率良く、条件変動なく蒸発する。
【0026】
また、蒸着材料3の蒸発量が微小な場合、一般に自動給材機構の機械的制御が微妙過ぎて安定しないが、グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3では蒸発量に比べて体積が大きくなるので、自動給材機構の機械的制御を比較的容易に安定させることができる。
一方、タブレット状の蒸着材料を使用する場合、蒸着材料の蒸発量に関係なく、タブレット状の蒸着材料を毎回1個まるごと交換しなければならず、蒸着材料が無駄になるが、本発明では、毎回グラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3を適量給材しているので、蒸着材料3の無駄を減らすことができる。
【0027】
ところで、電子ビームは必ずしも安定しておらず、電子ビームの照射位置が変動したりする。ライナーを用いる場合、ライナーはタブレット状の蒸着材料を収める凹所を囲むような形状に加工されているので、ライナーの周縁部に電子ビームが当たると、周縁部が蒸着材料と熔着して破壊するが、本発明では、蒸着材料3の蒸発によって形成される凹部5が移動するだけで、ベース2は露出していないので、ベース2が消耗することはない。また、ライナーを用いる場合、ライナーの大きさと電子ビームの設定とを予め調整しなけらばならないが、本発明では凹部5の大きさは電子ビームの設定によって自律的に決まるので、調整する必要がない。
【0028】
さらに、本発明ではベース2と熔融塊4とは中央部で触れるだけで、図2に示すように、るつぼ1の周縁部では熔融塊4の下に熔融していない蒸着材料3が残る。この熔融していない部分は断熱性が高く、るつぼ1の側面に熱が逃げにくくなる。また、ベース2と熔融塊4とが熔着している場合でも、その界面の熱伝導率が良くないため、ベース2側に熱が伝わりにくくなり、べース2の熱はるつぼ1の底へ逃げやすくなる。したがって、蒸着材料3を高効率で加熱するとともに、ベース2が破壊されるのを防止することができる。
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1において、蒸着材料3’の容器として働く熔融塊4の状態を蒸着材料3’の蒸発が安定するように一定条件に保つために、以下のような制御を行った。
【0029】
本実施形態では熔融塊4を蒸発源とせずに、低出力の電子ビームで安定して熔融するグラニュール状又は顆粒状の蒸着材料3’を蒸発源としている。そして、蒸着材料3’の蒸発を安定させるために必要な大量の熔融液をつくるため、蒸着材料3’の実際の蒸発量よりも多めに蒸着材料3’を凹部5に給材する。この蒸着材料3’を単に熔融して蒸発させると、熔融した蒸着材料3’の残りによって熔融塊4が成長し、やがて蒸着材料3’の給材や蒸発が不能となるので、本実施形態では新たに給材した蒸着材料3’をその都度蒸発しきっている。
【0030】
ところで、投光機の反射板等に薄膜を成膜するための蒸着機には、一般に膜厚制御用のシャッターが設けられており、蒸発した蒸着材料3’を反射板に蒸着させるか、シャッターで妨げて消費してしまうかは自由に選択できる。
蒸着終了後に蒸着材料3’の余剰分を蒸発させる作業を行うと、余剰分を蒸発させるのに要する作業時間が長くなるので、本発明では蒸着前に余剰分を蒸発させる。どのような蒸発方法でも、蒸着材料の熔融開始から熔融状態の安定までには一定の時間を要するので、その間に電子ビームのビーム出力を高くして、蒸着材料3’の余剰分を蒸発させれば作業時間の無駄はない。余剰分の蒸発後、電子ビームのビーム出力を蒸着時の出力に下げて蒸着材料3’の蒸着を開始し、凹部5の底に残った熔融液で実際に蒸着を行う。
【0031】
ところで、蒸着材料3’の余剰分は蒸着分よりも圧倒的に多いので、余剰分の蒸発量の微妙な変動で、熔融液が使い尽くされ、蒸着中に熔融液が枯渇するのではないかという疑問が持たれるが、以下のような理由で蒸着終了前に熔融液が枯渇するようなことは無いと判明した。
すなわち、蒸着材料3’の余剰分を蒸発させた後は、熔融液の容器として働く熔融塊4の表面が熔融液で十分に濡れているので、熔融液の層の厚みは薄くても、熔融液で濡れている部分の面積は広いので、熔融液が蒸発する効率は高く、安定的に蒸発させることができる。また、熔融塊4の表面が熔融液に十分触れている場合は、熔融液の影響で熔融塊4も比較的熔融しやすくなっており、また、蒸着開始時に電子ビームの出力を大きくしているので、熔融塊4の表面もわずかに熔融する。したがって、凹部5に給材された蒸着材料3’の熔融液に熔融塊4が熔融した分が加わって、熔融液の量が少し増えるので、蒸着終了までに熔融液が枯渇することなく、新たに給材した蒸着材料3’を蒸発しきることができる。
【0032】
このように、電子ビームの制御条件を所定の条件に調整しておけば、常に、蒸着材料3’の給材量と蒸発量が略等しくなり、微妙な誤差は摺り切り式の調整で補正されるので、蒸着材料3’の増減をぼぼ無くすことができる。
【0033】
【実施例】
次に本発明の実施例をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、石英ガラスの丸棒を切断し、直径25mm、厚さ6mmのベースを形成する。このベースを、最上部の直径が35mmで、深さが15mmのるつぼの底に敷き、その上から粒径約1mmのグラニュール状の石英(蒸着材料)を厚さ10mm程度給材した。
【0034】
事前の実験によって、SiO2 の蒸着に好適な蒸着レートを実現するためのビーム出力値の最適値を求めておいた。まず、ビーム出力の最適値の25%増しの値まで約10秒間でビーム出力を上げ、約10秒間、ビーム出力を保持して熔融すると、蒸着材料の中央部に凹部が形成される。その後、ビーム出力値を最適値まで下げて、蒸着機のシャッターを開き蒸着を開始すると、数十秒程度で従来と同様の所望のSiO2 蒸着を行うことができた。
【0035】
SiO2 の成膜を行う場合、グラニュール状の蒸着材料を注ぎ足す従来の方式では、20バッチくらいから、蒸着レートが低下していたが、本実施例では、蒸着材料の給材量を予備実験で求めた凹部の容量一杯分に設定し、その後、同じ制御条件で、蒸着材料を給材しながら蒸着を繰り返すと、凹部の深さは5〜8mm程度に安定した。また、120バッチまで繰り返して蒸着を行ったが、蒸着材料の蒸発は安定し、問題なく所望のSiO2 蒸着を行うことができた。
【0036】
一般に、蒸着材料の容器となる熔融塊は蒸着材料などの汚れが混入して、汚染され寿命となる。つまり、容器の耐久性は十分であるが、装置の構造や使い方によって寿命が決まる。したがって、通常の蒸着状態では、容器自体の寿命が装置の清掃間隔を上回り、清掃毎にるつぼの中身を新しくすることによって、全く問題ないことが判明した。たいていの場合、後述するように容器となる熔融塊を廃棄して、グラニュール状の蒸着材料を載せ直すだけで良く、ベースは再使用することができる。
【0037】
熔融塊からなる容器とベースとの接触状態は、同一条件でも多少のばらつきがあり、両者が接触していない場合や、両者が接触している場合、さらには、熔融塊が多少ベースに食い込んでいる場合があった。両者が接触していない場合、本発明の機能を果たしていないようであるが、ベースを設けているために、電子ビームのビーム出力の自由度を大きくすることができる。また、このような状態ではべースの消耗がなくなり、むしろ理想的である。通常は、両者が軽く溶着している場合が多いが、このような場合、鏨状の工具で軽く叩けば、特に技能を要することなく、両者が剥がすことができる。また、ベースには殆ど傷が発生せず、反復して使用することができる。また、熔融塊が多少ベースに食い込んでいる場合でも、同じ作業で剥がすことができる。ベース表面は多少凹んでも、機能上特に影響はないので、ベースが相当傷んでも反復して使用することができ、ベースが二つに割れたくらいであれば、合わせて使用することもできる。
【0038】
ベースは平均して500〜1000回程度の蒸発に使用できる。熔融塊とべースの剥離に失敗してベースを壊したときが寿命であり、蒸発異常の発生によってベースの寿命が来たわけではないので、生産上の問題とはならない。
なお、どのような条件下でも、ベースと熔融塊からなる容器は、電子ビームの照射域の略中央のみで接触しているので、両者が食い込むような条件でも、その直径は10mm以下であった。つまり、電子ビームをるつぼ中央辺りに照射されるように適当に調整しておけば、電子ビームがベースからはみ出すことはない。
(実施例2)
表面を研磨加工していない石英ガラスの厚さ4mmの板をレーザーにて切断し、直径20mm、厚さ4mmのベースを形成した。これを最上部の直径35mmで、深さ15mmのるつぼの底に敷き、その上から粒径1mmの石英グラニュールを厚さ10mm程度載せた。これを実施例1と同じ蒸発条件で熔融、蒸発すると、1回の蒸着で、ベースの上に厚さ4mm前後の熔融塊を底とするクレーター状の凹部が形成される。その後は、自動給材装置で適当な給材量を凹部に給材して蒸発させれば、凹部の容量、底の厚さとも略安定し、蒸着材料を安定して蒸発させることができる。
【0039】
なお、特性等は実施例1と略同じであるが、ベースの厚みを薄くした結果、凹部の深さが深くなるので、蒸発状態をさらに安定させることができた。ただし、ベースの板厚が薄いので、ベースと熔融塊とを剥がす際に、ベースが割れやすくなった。また、丸棒を機械的に切断するよりも、表面を研磨処理していない石英ガラスをレーザー加工するほうが材料費、加工費ともに安価になるという利点がある。
(実施例3)
本実施例では、実施例2で用いた表面を研磨加工していない石英ガラスの板を破壊し、その破片のうち実施例2と同じるつぼの底に収まるものをベースとして使用した。そして、その上に粒径1mmの石英グラニュールを山盛りになるまで載せ、これを実施例1と同じ条件で蒸発させた結果、全く安定して蒸発させることができた。
【0040】
なお、特性等は実施例2と略同じであるが、加工費がかからない点ですぐれている。ただし、破片から適当なものを選ぶので、作業効率が悪い。
(実施例4)
本実施例では、実施例3で砕いた破片のうち比較的細かく砕けたものを、実施例2と同じるつぼの底に厚さ8mm程度になるように敷き、突き固めてベースとした。その上に粒径1mmの石英グラニュールを山盛りになるまで載せた。
【0041】
これを実施例1と同じ蒸発条件で熔融、蒸発させると、1回目の蒸着で粒径1mmの石英グラニュールは殆ど石英ガラスの破片の空隙にしみ込んでしまい、中央部が窪んだクレーター状の凹部が形成された。その後、自動給材装置の給材量を適当な値に保てば、数回の蒸着によりるつぼの口から7mmくらいのところで熔融液の液面が安定し、蒸着材料を安定して蒸発させることができる。
【0042】
なお、特性等は実施例3と略同じであるが、ベースが少し弱く、熔融液の液面変動が大きく、電子ビームのビーム出力等の許容条件が狭くなっている。また、本実施例では、ベースの加工が一切なく、ベースを安価に製造できるメリットがあるが、ベースとなる石英ガラスを、水冷るつぼの底に密着して冷却されるように隙間なく詰め込むのに多少の技能が要求される。
(実施例5)
粒径5mmの石英グラニュールを、ベースとして実施例1と同じるつぼの底に厚さ13mmまで敷いた。その上に粒径1mmの石英グラニュールを山盛りになるまで載せ、薬匙で軽く叩き突き固めた。
【0043】
これを実施例1と同じ蒸発条件で熔融、蒸発させると、1回目の蒸着で粒径1mmの石英グラニュールは、粒径5mmの石英グラニュールからなるベースの空隙に全てしみ込んでしまい、粒径5mmの石英グラニュールも一部が熔融して、るつぼの口から10mmくらいまで窪んだクレーター状の凹部が形成された。その後は、自動給材装置で蒸着材料の給材量を適当な値に保てば、数回の蒸着で、るつぼの口から7mmくらいまで熔融液の液面が上がり、蒸着材料を安定して蒸発させることができた。
【0044】
なお、特性等は実施例3と略同じであるが、ベースが少し強く、蒸発状態がより安定する。
(実施例6)
厚さ3mmの石英ガラスの板をレーザーにて切断し、直径20mm、厚さ3mmのベースを形成した。このベースを実施例1と同じるつぼの底に2枚密着させて重ねて敷き、その上に粒径1mmの石英グラニュールを厚さ10mm程度に載せた。これを実施例1と略同じ蒸発条件で熔融、蒸発させた結果、蒸着材料を安定して蒸発させることができた。
【0045】
なお、特性等は実施例1と略同じであるが、実施例2よりも電子ビームのビーム出力等の許容条件が狭く、稀に、上の1枚を電子ビームが貫通することがあったが、2枚目のベースとの界面で電子ビームは止まっていた。このような場合、1枚目のベースに開いた孔には熔融液が流れ込んで埋まり、上下のベースが熔着し、一体化してベースの破壊を防ぐ働きがあることがわかった。
【0046】
また、このべースを1枚だけ敷いて使用しても、特性等は実施例1と略同じであり、電子ビームが突き抜けることはなかった。これはベースの下にある水冷るつぼで直接冷却されるからである。このことから、実施例1と合わせてベースの厚みを3種類に調整できるようになった。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の発明は、上述のように、真空中において蒸着材料に電子ビームを照射して蒸着材料を蒸発させるにあたり、蒸着材料と同一の材料で形成されたベースであって、蒸着材料よりも高密度で熱容量が大きく形成された上記ベースをるつぼの底に敷き、ベースの上から粒状の蒸着材料を載せ、蒸着材料を電子ビーム法で蒸発させているので、電子ビームで蒸着材料を蒸発させる際に、ベースが電子ビームによる堀込みを防いでいるので、電子ビームのビーム出力を自由に設定できるという効果がある。また、ベースは蒸着材料と同一の材料で形成されているので、ベースが熔融しても熔融液を汚染することがなく、また、加工精度や表面形状に精度が要求されないので安価に製造できるという効果もある。さらに、蒸着材料に粒状のものを使用しているので、タブレット状の蒸着材料を使用した場合に比べて、蒸着材料のコストを低減できるという効果もある。
【0048】
請求項2の発明は、電子ビームのビーム出力をベースが大幅に熔融しない程度のビーム出力とし、ベース上に載せられた蒸着材料を電子ビームで熔融することにより、ベースの上面付近を底とする凹部を形成し、次回から該凹部に適量の蒸着材料を給材して、蒸着材料を蒸発させているので、蒸着材料の給材量や蒸着材料の蒸発量が安定し、蒸着材料を安定して蒸発させることができるという効果がある。さらに、蒸着材料を安定的に蒸発させることにより、蒸着材料の蒸着によって形成される薄膜の品質を安定させることができるという効果もある。また、初回蒸着時にベース上に蒸着材料の熔融液が固まった熔融塊を形成し、2回目以降の蒸着では電子ビームが熔融塊で止まるので、ベースが消耗することがなく、ベースを繰り返し使用できるという効果もある。
【0049】
請求項3の発明は、ベースの消耗を低減するために常に電子ビームのビーム出力をベースが大幅に熔融しない程度のビーム出力としているので、ベースの消耗を低減して、ベースを繰り返し使用できるという効果がある。
請求項4の発明は、給材された粒状の蒸着材料が1回の蒸着で全て蒸発するように蒸着材料の給材量及び蒸発条件を設定しているので、新たに給材した蒸着材料の余剰分を全て使いきることによって、熔融塊が成長するのを防ぐことができ、熔融塊の成長によって蒸発不能になるのを防止できるという効果がある。
【0050】
請求項5の発明は、蒸着開始前に蒸着時よりも大きなビーム出力でるつぼ内の蒸着材料を蒸発させ、次回蒸着時に蒸着材料を給材するための凹部を蒸着材料に形成しているので、蒸着時よりも大きなビーム出力で大きな凹部を形成することができ、この凹部を給材用に使用することにより、蒸着材料の給材量や蒸発量を安定させることができ、蒸着材料を安定的に蒸発させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の電子ビームによる蒸発方法の一工程を示す説明図である。
【図2】同上の別の工程を示す説明図である。
【図3】同上のまた別の工程を示す説明図である。
【図4】従来の電子ビームによる蒸発方法を説明する説明図である。
【図5】同上の別の電子ビームによる蒸発方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 るつぼ
2 ベース
3,3’蒸着材料
4 熔融塊
5 凹部

Claims (5)

  1. 真空中において蒸着材料に電子ビームを照射して蒸着材料を蒸発させるにあたり、蒸着材料と同一の材料で形成されたベースであって、蒸着材料よりも高密度で熱容量が大きく形成された上記ベースをるつぼの底に敷き、ベースの上から粒状の蒸着材料を載せ、蒸着材料を電子ビーム法で蒸発させることを特徴とする電子ビームによる蒸発方法。
  2. 電子ビームのビーム出力をベースが大幅に熔融しない程度のビーム出力とし、ベース上に載せられた蒸着材料を電子ビームで熔融することにより、ベースの上面付近を底とする凹部を形成し、次回から該凹部に適量の蒸着材料を給材して、蒸着材料を蒸発させることを特徴とする請求項1記載の電子ビームによる蒸発方法。
  3. ベースの消耗を低減するために常に電子ビームのビーム出力をベースが大幅に熔融しない程度のビーム出力とすることを特徴とする請求項1又は2記載の電子ビームによる蒸発方法。
  4. 給材された粒状の蒸着材料が1回の蒸着で全て蒸発するように蒸着材料の給材量及び蒸発条件を設定したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の電子ビームによる蒸発方法。
  5. 蒸着開始前に蒸着時よりも大きなビーム出力でるつぼ内の蒸着材料を蒸発させ、次回蒸着時に蒸着材料を給材するための凹部を蒸着材料に形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の電子ビームによる蒸発方法。
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