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JP3877552B2 - 金属部材の製造方法 - Google Patents
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JP3877552B2 - 金属部材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に皮膜が形成された希土類金属部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Nd−Fe−B系永久磁石に代表されるR(希土類金属元素)−Fe−B系永久磁石は、Sm−Co系永久磁石に比べて、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気特性を有している。従って、特に、R−Fe−B系永久磁石は、今日様々な分野で使用されている。
近年、希土類永久磁石が使用される電子業界や家電業界では、部品の小型化やダウンサイジング化が進み、それに対応して、磁石自体も小型化や複雑形状化の必要性に迫られている。
【0003】
ところで、希土類永久磁石は、大気中で酸化、腐食されやすいRを含むため、通常、表面処理が施される。こうした表面処理を行わずに使用した場合には、わずかな酸、アルカリあるいは水分などの影響によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁気特性の劣化やばらつきを招くことになるからである。しかも、錆が発生した磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合には、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
希土類永久磁石に限らず、希土類金属元素を含む基材は酸化しやすく、これを抑制するために種々の防錆方法が施されてきた。例えば、ZnあるいはSn金属皮膜による防錆方法として、めっき法(例えば、特開平1−231303号公報,特開平1−321610号公報)、Snアルコキシドを用いた樹脂被覆(特開平4−353007号公報)、バレルによるZn,Sn膜の被覆(特開平12−031962号公報)が知られている。
しかしながら、めっき法の場合、めっき液またはめっき液の残存によって希土類金属が腐食してしまうことがある。また、Snアルコキシドを用いた樹脂被覆は密着強度が低いという欠点を有しており、密着強度を上げるためには成膜時の温度を上昇させる必要がある。ところが、成膜時の温度を上昇させると、希土類金属の酸化が懸念される。
【0005】
また、ボンド磁石の表面全体に導電性を付与し、その導電性を利用してめっきを施すことにより妨錆することが、特開平5−302176号公報、特開平7−302705号公報および特開平10−226890号公報に記載されている。
しかし、いずれの方法も樹脂やカップリング剤などの第三の成分の粘着性を利用して金属粉末を磁石表面に付着させるものである。このような方法では、第三の成分を必要とすることから、コストの上昇を招く他、導電層を磁石表面全体に均一に形成することが困難になるので、結果的に高い寸法精度での表面処理が困難になる。また、未硬化樹脂の硬化工程などが必要となるので製造工程が煩雑になる。さらに、金属粉末の付着手段として、スチールボール、銅製ボール、ステンレスボール、アルミナ製ボールなどの媒体を用いた場合、ボンド磁石の割れや欠けを招いてしまう恐れがある。
【0006】
特開平9−205013号公報に記載の方法によれば、樹脂やカップリング剤などの第三の成分を用いずに磁石表面の空隙部に金属粉末を充填することが可能となる。しかし、この方法は、本来的に磁石表面を構成する磁性粉上に金属粉末を付着させようとするものではない。従って、磁性粉上に金属粉末が付着しても、その付着力は必然的に弱いものなので、磁性粉上に金属粉末を強固に付着させることはできない。また、この方法では、磁性粉上に弱く付着した過剰の金属粉末を洗浄により除去する工程が必要になるので、製造工程の煩雑化を招く。
そこで本発明は、樹脂やカップリング剤などの第三の成分を用いることなく、しかも磁気特性を低下させることなく、希土類金属を含む基材上に耐食性皮膜を形成することができる手法の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸化などがされていない無垢な金属表面(新鮮表面)が引き起こす特異な表面化学反応であるメカノケミカル(mechanochemica1)反応に着目し、種々の検討を行った。その結果、金属微粉を高圧ガスの混合流体として噴射することにより希土類金属表面に形成された皮膜の密着強度が向上すること、および金属微粉を高圧ガスの混合流体として噴射することにより噴射による反応部分が表面近傍で押さえられるため、内部の温度上昇が起こらないことを知見した。すなわち、本発明は、ガスアトマイズ法により作製された、平均粒径30〜150μmの球状の金属粉末を高圧ガスの混合流体とする工程と、混合流体を、希土類焼結磁石表面に噴射ノズルから3〜10kg/cm の噴射圧力で噴射することにより、噴射された金属粉末をメカノケミカル反応によって希土類焼結磁石の表面に密着させて膜厚が1.5〜20μmの皮膜を形成する工程と、を備え、皮膜がその表面に形成された希土類焼結磁石は、5wt%、35℃の塩水噴霧を24時間継続した時点で発錆が生じないことを特徴とする金属部材の製造方法である。
【0008】
本発明の金属部材の製造方法において、Cu,Fe,Ni,Co,Cr,Sn,Zn,Pb,Cd,In,Au,Ag,Alのうち1種または2種以上から構成される金属粉末を用いることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は希土類金属元素を含み、かつその表面に金属相が露出している基材と、前記金属相にメカノケミカル反応によって密着した金属粉末から構成される前記基材の表面を覆う皮膜と、を備えたことを特徴とする金属部材を提供する。
本発明の基材としては、希土類金属元素を含む材料を広く包含する。最も典型的な例としては希土類金属元素を含む金属材料、より具体的な例としては所定組成の粉末を焼結させた希土類焼結磁石を本発明の基材とすることができる。希土類焼結磁石としては、Nd−Fe−B系焼結磁石に代表されるR−Fe−B系焼結磁石、Sm−Co系焼結磁石に代表されるR−Co系焼結磁石などが挙げられる。
【0011】
以下、希土類焼結磁石を基材とする場合について説明する。
焼結磁石の原料となる磁性粉は、希土類永久磁石合金を溶解し、鋳造後に粉砕する溶解粉砕法、一度焼結磁石を作成した後、これを粉砕する焼結体粉砕法、Ca還元にて直接磁性粉を得る直接還元拡散法、溶解ジェットキャスターで希土類永久磁石合金のリボン箔を得、これを粉砕・焼鈍する急冷合金法、希土類永久磁石合金を溶解し、これをアトマイズで粉末化して熱処理するアトマイズ法、原料金属を粉末にした後、メカニカルアロイングにて微粉末化して熱処理するメカニカルアロイ法などの方法で得ることができる。
以下に、焼結体粉砕法、直接還元拡散法、急冷合金法、アトマイズ法、メカニカルアロイ法の概要を示す。
【0012】
(焼結体粉砕法)
所要のR−Fe−B系合金を焼結し、再度粉砕して磁性粉を得る方法である。例えば、出発原料として、電解鉄、Bを含有し残部はFeおよびAl,Si,Cなどの不純物からなるフェロボロン合金、希土類金属、あるいはさらに、電解Coを配合した原料粉を、不活性ガス雰囲気下、高周波溶解などで合金化し、スタンプミルなどを用いて粗粉砕、さらに、ボールミルなどにより微粉砕する。得られた微粉末を磁界下または磁界をかけずに加圧成形し、非酸化性雰囲気である真空中や不活性ガス中で焼結し、再度粉砕して、平均粒度0.3〜100μmの微粉末を得る。この後、保磁力を高めるために、500〜1000℃で熱処理を施してもよい。
【0013】
(直接還元拡散法)
フェロボロン粉、フェロニッケル粉、コバルト粉、鉄粉、希土類酸化物粉などからなる少なくとも1種の金属粉および/または酸化物粉からなる原料粉を所望する原料合金粉末の組成に応じて選定し、上記原料粉に、金属CaあるいはCaHを上記希土類酸化物粉の還元に要する化学量論的必要量の1.1〜4.0倍(重量比)混合し、不活性ガス雰囲気中で900〜1200℃に加熱し、得られた反応生成物を水中に投入して反応副生成物を除去することにより、粗粉砕が不要な10〜200μmの平均粒度を有する粉末を得る。得られた粉末は、さらに、ボールミル、ジェットミルなどの乾式粉砕を行い微粉砕するのもよい。また、所要組成の3μm以下の微粉砕粉を、磁界中配向成形した後、解砕し、さらに800〜1100℃で熱処理した後、解砕することにより、高保磁力を有した磁性粉を得ることができる。
【0014】
(急冷合金法)
所要のR−Fe−B系合金を溶解し、ジェットキャスターでメルトスピンさせて20μm厚み程度のリボン箔を得てこれを粉砕した後、焼鈍熱処理し、0.5μm以下の微細結晶粒を有する粉末とする。また、上記のリボン箔から得た微細結晶粒を有する粉末をホットプレス・温間据え込み加工して、異方性を付与したバルク磁石を得て、これを微粉砕するのもよい。
【0015】
(アトマイズ法)
所要のR−Fe−B系合金を溶解し、細いノズルより溶湯を落下させ、高速の不活性ガスまたは液体でアトマイズし、これをふるい分けまたは粉砕後、乾燥または焼鈍熱処理して磁性粉を得る方法である。また、上記の微細結晶粒を有する粉末をホットプレス・温間据え込み加工して、異方性を付与したバルク磁石を得て、これを微粉砕するのもよい。
【0016】
(メカニカルアロイ法)
所要の原料粉末を、ボールミル、振動ミル、乾式アトライターなどにより、不活性ガス中で、原子レベルで混合、非晶質化し、その後、焼鈍熱処理して磁性粉を得る方法である。また、上記の微細結晶粒を有する粉末をホットプレス・温間据え込み加工して、異方性を付与したバルク磁石を得、これを微粉砕するのもよい。
【0017】
このような方法の他には、特に、溶湯急冷法(特許第2665590号公報参照)によって板厚方向に成長させた柱状結晶組織を有する合金薄板を粉砕することで得られる磁性粉を用いることによって、高磁気特性の焼結磁石を得ることができる。また、R−Fe−N系焼結磁石を構成する磁性粉は、希土類永久磁石合金を粉砕し、これを窒素ガス中またはアンモニアガス中で窒化した後、微粉末化するガス窒化法などの方法でも得ることができる。
【0018】
なお、焼結磁石は、公知の粉末冶金法を採用することで容易に得ることができる。 異方性の付与は、磁気的異方性を有する磁性粉を磁界中配向成形することで実現することができる。バルクや磁性粉に対して磁気的異方性を付与する方法として、急冷合金法によって得られた合金粉をホットプレスなどにより低温で焼結し、さらに温間据え込み加工によって磁気的異方性を付与したバルク状磁石体を粉砕する温間加工・粉砕法(特公平4−20242号公報参照)、急冷合金法によって得られた合金粉をそのまま金属製容器に充填封入し、温間圧延などの塑性加工によって磁気的異方性を付与するパック圧延法(特許第2596835号公報参照)、合金鋳塊を熱間で塑性加工し、その後に粉砕して磁気的異方性を有する磁性粉を得るインゴット熱間加工・粉砕法(特公平7−66892号公報参照)、希土類永久磁石合金を水素中で加熱して水素を吸蔵させた後、脱水素処理し、次いで冷却することによって磁性粉を得るHDDR法(特公平6−82575号公報参照)などを採用することができる。なお、磁気的異方性の付与は、上記の原料合金と異方化手段の組合せに限られるものではなく、適宜組み合わせることができる。
【0019】
上記の方法により得られる磁石または磁性粉は、例えば、R−TM−B系(R:Yを含む希土類金属元素の1種あるいは2種以上、TM:Feを主成分とする遷移金属元素、B:ホウ素)のものとすることができる。このR−TM−B系の磁性粉は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は1〜100μm程度であることが好ましい。さらに通常、体積比で1〜50%の非磁性相を含むものである。
【0020】
さて、本発明におけるR−TM−B系の磁石の組成は、5.5at%≦R≦30at%、42at%≦TM≦90at%、2at%≦B≦28at%であることが好ましい。
ここで、希土類金属元素RはYを含む希土類金属元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,YbおよびLu)の1種または2種以上である。好ましくは、Nd,Pr,Ho,Tbという軽希土類金属元素を主体として、あるいはNd、Pr等との混合物を主体とする。希土類金属元素Rの量が5.5at%未満では、α−Feと同一構造の立方晶組織が多くなるため、高い保磁力Hcjを得ることができない。一方、希土類金属元素Rの量が30at%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度Brが低下する。よって、希土類金属元素Rの量は5.5〜30at%とする。なお、希土類金属元素Rとして2種以上の元素を用いる場合、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることができる。
【0021】
Feを主成分とする遷移金属元素TMは、基本的にFeと不可避の不純物とからなる。遷移金属元素TMが42at%未満になると残留磁束密度Brが低下する。一方、遷移金属元素TMが90at%を超えると保磁力Hcjが低下してしまう。よって、遷移金属元素TMの含有量は42〜90at%とする。また、遷移金属元素TM中のFeの一部をCoまたはNiで置換することにより、磁気特性を損なうことなく温度特性を改善することができる。但し、Co置換量がFeの50%を超えると磁気特性が低下するため、Feの一部をCoで置換する場合にはCo置換量を50%以下とする。Feの一部をNiで置換する場合にはNi置換量をFeの8%以下とする。Ni置換量が8%を超えると磁気特性が低下するためである。
【0022】
またホウ素Bを2〜28at%とする理由は以下の通りである。すなわち、ホウ素Bが2at%未満の場合には菱面体組織となり高い保磁力Hcjを得ることができない。但し、ホウ素Bが28at%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、残留磁束密度Brが低下する傾向がある。したがって、上限を28at%とする。また、ホウ素Bの一部をC,P,S,Cuのうち1種以上で置換することにより、生産性の向上および低コスト化を実現することができる。この場合、置換体は全体の4at%以下であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明の磁石において、R,TM,Bの他、不可避不純物としてNi,Si,Al,Cu,Ca,O,C等が全体の3at%以下含有されていてもよい。
また、保磁力Hcjの向上、耐食性の向上、生産性の向上、低コスト化のためにCu,S,Ti,Si,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Al,Sb,Ge,Sn,Zr,Hf,Ca,Mg,Sr,Ba,Be,Ga,Bi,Niのうち、1種または2種以上を原料粉末に添加含有して磁性粉とすることができる。具体的には、Cu:3.5at%以下、S:2.5at%以下、Ti :4.5at%以下、Si :15at%以下、V:9.5at%以下、Nb:12.5at%以下、Ta:10.5at%以下、Cr:8.5at%以下、Mo:9.5at%以下、W:9.5at%以下、Mn:3.5at%以下、A1:9.5at%以下、Sb:2.5at%以下、Ge:7at%以下、Sn:3.5at%以下、Zr:5.5at%以下、Hf:5.5at%以下、Ca:8.5at%以下、Mg:8.5at%以下、Sr:7at%以下、Ba:7at%以下、Be:7at%以下、Ga:10at%以下、Bi:5at%以下、Ni:8at%以下、のうち1種または2種以上を原料粉末に添加含有させることができる。但し、この場合、添加量は総計で10at%以下とすることが好ましい。
【0024】
本発明の効果は、磁石の組成、結晶構造、異方性の有無などによって異なるものではない。従って、R−TM−B系焼結磁石に限らず、上述のいずれの焼結磁石においても目的とする効果を得ることができる。
【0025】
以上では、焼結磁石について説明したが、本発明はボンド磁石についても適用することができる。つまり、ボンド磁石の表面に露出している磁性粉と後述する金属粉末とがメカノケミカル反応を生ずることにより、マクロ的にみると、ボンド磁石に対する皮膜形成を可能にする。希土類系ボンド磁石としては、種々の組成のものや結晶構造のものが知られているが、これらすべてが本発明の対象となる。例えば、特開平9−92515号公報に記載されているような異方性R−Fe−B系ボンド磁石、特開平8−203714号公報に記載されているようなソフト磁性相(例えば、α−FeやFeB)とハード磁性相(NdFe14B)を有するNd−Fe−B系ナノコンポジッ卜磁石、従来から広く使用されている液体急冷法により作成された等方性Nd−Fe−B系磁石粉末(例えば、商品名:MQP−B・MQI社製)を用いたボンド磁石などが挙げられる。また、特公平5−82041号公報記載の(Fe1−xRx)1−yNy(0.07≦x≦0.3,0.001≦y≦0.2)で表されるR−Fe−N系ボンド磁石などが挙げられる。
【0026】
次に、基材上に皮膜を形成するための条件、すなわち、皮膜形成用の金属粉末に求められる条件、皮膜形成用金属粉末の噴射条件について説明する。
【0027】
(皮膜形成用の金属粉末に求められる条件について)
粉末サイズは、平均粒径として10〜500μm程度が望ましい。粉末の平均粒径が10μm以下では粒子の持つエネルギーが低いため、試料表面への十分な被着を得ることが困難である。一方、粉末の平均粒径が500μmを超えると、存在する粗大粒子が、試料表面への衝突によっても十分に反応しない。つまり、緻密な皮膜を得ることが困難となり、防錆能力が低下する。また、平均粒径が500μmを超える大径粒子では、試料表面に被着し難いばかりでなく、被処理物に歪み(ダメージ)を与えうるため、好ましくない。したがって、粉末サイズは、平均粒径として10〜500μm程度とする。粉末サイズは、より好ましくは平均粒径20〜350μm、さらに好ましくは平均粒径30〜150μmである。
粉末形状は特に限定されるものではないが、球状粒子が好ましい。著しく扁平状の粒子は、噴霧によっても不安定な飛行となり、皮膜形成効率(堆積効率)が低下するため好ましくない。
上記した金属粉末の作製方法としては、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、粉砕法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法によって得られた金属粉末を用いる。なお、粉砕法によって得られた金属粉末を用いる場合には、皮膜形成効率が低下するため、使用前に熱処理等によって金属粉末の内部歪みを低減することが好ましい。
【0028】
皮膜形成のための金属粉末としては、Cu、Fe、Ni、Co、Cr、Sn、Zn、Pb、Cd、In、Au、Ag、Alなどの金属粉末またはこれらの合金粉末を用いることができる。この中で、Sn、Zn、Pb、Cd、In、Au、Ag、Alはヴィッカース硬度値が60以下であって展延性に優れるため、皮膜形成のための金属粉末として好適である。なお、ヴィッカース硬度は、材料の硬さを示す指標の一つであり、その測定試験は、例えば、ヴィッカース硬度試験器(JISB7725)を用いたヴィッカース硬度試験方法(JISZ2244)に基づいて行うことができる。
また、皮膜形成のための金属粉末としては、融点が450℃以下の金属成分を含むもの、例えば、Sn、Zn、Pb、Cd、Inの金属粉末またはこれらの合金粉末を用いることができる。融点が450℃以下、つまり融点が低い金属成分を含む金属粉末を用いることによって、希土類金属元素を含む基材の温度上昇を抑えることができ、酸化を効果的に抑制することができる。
【0029】
金属粉末は、上記の各々単一の金属成分からなるものであっても、二種以上の金属成分を含有する合金からなるものであってもよい。また、これらの金属成分を主成分とし、他の金属成分を含有する合金からなるものであってもよい。このような合金を用いる場合、要求される展延性などに応じて適切な金属成分の組み合わせを選定することが望ましい。なお、金属粉末は、工業的生産上不可避な不純物を含有するものであっても差し支えない。
【0030】
(皮膜形成用金属粉末の噴射条件について)
噴射条件は、噴射圧力、ノズルと素体との距離、噴射時間、被処理物の量等により、目的皮膜厚みに対し選定される。具体的には噴射圧力を3〜10kg/cm2、ノズルと素体との距離を5〜30cm、噴射時間を1〜20分程度とすることができる。噴射時間が短い場合(具体的には噴射時間が1分未満であるような場合)、被処理物全体への皮膜形成が十分でなく、むらが生じ易い。噴射時間を長くすることによって膜厚を厚くすることが可能であるが、長時間の噴射(具体的には噴射時間が20分を超えるような場合)は生産性の低下を招くため有効ではない。
次に、膜厚制御の方法について述べる。皮膜の厚みは、用いる原料粉の種類(元素種、粒径、製造方法等)、ノズルと素体との距離、噴射圧力、噴射時間によって制御される。例えば、用いる原料粉の種類に応じて噴射圧力を選定し、この噴射圧力を一定とした状態で噴射時間を制御することによって、皮膜の厚み、すなわち膜厚を任意に制御することが可能である。
なお、多数の試料を処理する場合には、噴射ノズルを振幅させる、試料容器を回転させるなどの方法を適宜用いることができる。
【0031】
上述の通り、本発明では、金属の新鮮表面が引き起こす特異な表面化学反応であるメカノケミカル反応を利用して、希土類金属元素を含む基材表面を構成する金属上に、金属粉末からなる皮膜を効率よく形成させる。メカノケミカル反応によって形成された皮膜は、希土類金属材料表面を構成する金属上に強固にかつ高密度に形成されているので、手で表面を擦った程度では除去することができない。従って、皮膜形成後の洗浄工程など、電気めっき処理等の2次処理を完了するまでの種々の取り扱い時に皮膜が脱落することはない。
【0032】
このようにして基材表面全体に皮膜が形成された希土類系金属材料に対しては、公知の電気めっき処理などを行うことが可能である。しかも、表面上に高い膜厚寸法精度でめっき皮膜を形成させることができ、希土類金属材料の寸法精度向上を図ることが可能となる。
例えば、めっき皮膜を有するリング状磁石をモータに利用した場合、磁石自体の磁気特性を最大限に活用でき、エネルギー効率の向上を図ることが可能となる。また、モータの小型化を図ることも可能となる。なお、いずれの金属粉末からなる皮膜であっても、その表面にめっき皮膜を形成することは可能である。
【0033】
また、メカノケミカル反応によって形成された金属粉末からなる皮膜は、希土類金属材料表面を構成する金属上に強固にかつ高密度に形成されているので、皮膜自体が希土類金属材料の発錆を防ぐ効果を有する。
高い耐食性を付与するためには電気めっき処理などを行う必要があるが、部品の製造完了時までの耐食性が保証されていればよいような材料(樹脂埋め込み型モータ用磁石など)に対しては、金属粉末からなる皮膜自体が、材料の防錆層として有効に機能する。例えば、Al微粉からなる皮膜は、その表面に酸化皮膜を形成し、防錆作用も発揮する。
【0034】
さて、金属粉末からなる皮膜上には、めっき皮膜の他にも種々の耐食性皮膜、例えば、金属酸化物皮膜や化成処理皮膜を形成することが可能である。該皮膜は、材料表面全体に均一にしかも強固に形成されているので、高い膜厚寸法精度での皮膜形成が可能となる。以下、金属粉末からなる皮膜上に金属酸化物皮膜を形成する方法、金属粉末からなる皮膜上に化成処理皮膜を形成する方法について順次説明する。
【0035】
(金属粉末からなる皮膜上に金属酸化物皮膜を形成する方法について)
金属酸化物皮膜を形成する方法としては、CVD法、スパッタリング法、塗布熱分解法、ゾルゲル成膜法など公知の方法を用いることができるが、ゾルゲル成膜法により金属酸化物皮膜を形成することが望ましい。ここでゾルゲル成膜法とは、金属酸化物皮膜を構成する金属化合物の、加水分解反応や重合反応などによって得られたゾル液を、材料表面に塗布した後、熱処理することによって皮膜形成を行う成膜法をいう。ゾルゲル成膜法に使用されるゾル液は比較的安定であり、皮膜形成を比較的低温で行えるので、高温下における基材(例えば希土類永久磁石)自体の磁気特性への影響を回避できる等の利点がある。金属酸化物皮膜は、単一の金属酸化物成分からなる皮膜であってもよいし、複数の金属酸化物成分からなる複合皮膜であってもよい。金属酸化物皮膜は、膜厚が0.01μm以上であれば優れた耐食性を発揮する。膜厚の上限は特段限定されるものではないが、材料自体の小型化に基づく要請から、10μm以下、望ましくは5μm以下が実用面において適した膜厚である。
皮膜を形成する金属成分と同一の金属成分を含む金属酸化物皮膜を皮膜上に形成した場合(例えば、Al微粉からなる皮膜上へのAlを含む金属酸化物皮膜の形成)、両者の界面での密着性がより強固なものになる点において都合がよい。
【0036】
ゾルゲル成膜法を用いる場合、ゾル液は、金属アルコキシド(アルコキシル基の一部をアルキル基などで置換したものであってもよい)などの金属化合物、硝酸や塩酸などの触媒、所望する場合はβ−ジケトンなどの安定化剤、水などを有機溶媒中で調整し、金属化合物の加水分解反応や重合反応などにより得られるコロイドが分散した溶液を用いる。また、ゾル液には無機質微粒子などを分散させてもよい。ゾル液の塗布方法としては、ディッブコーティング法、スプレー法、スピンコーティング法などが挙げられる。ゾル液塗布後の熱処理は、特に、ボンド磁石に適用する場合、ゾル液中の有機溶媒の沸点や磁石の耐熱性などを考慮して80〜200℃で行うことが望ましい。なお、通常、熱処理時間は1分〜1時間である。所望する膜厚を有する皮膜を得るために、塗布と熱処理を繰り返して行ってもよいことは言うまでもない。
【0037】
(金属粉末からなる皮膜上に化成処理皮膜を形成する方法について)
化成処理皮膜を形成する方法としては、クロメート処理、リン酸処理、リン酸亜鉛処理、リン酸マンガン処理、リン酸カルシウム処理、リン酸亜鉛カルシウム処理、チタン−リン酸系化成処理、ジルコニウム−リン酸系化成処理などの公知の方法を用いることができる。Al微粉からなる皮膜の耐食性を向上させる場合には、クロメート処理、チタン−リン酸系化成処理、ジルコニウム−リン酸系化成処理などが望ましく、とりわけ、処理液や皮膜の環境への負荷が小さい、チタン−リン酸系化成処理、ジルコニウム−リン酸系化成処理が望ましい。
【0038】
チタン−リン酸系化成処理を行う際の処理液は、フルオロチタン酸などのチタン化合物、リン酸や縮合リン酸、上記のフルオロチタン酸やフッ化水素酸などのフッ素化合物などを水に溶解して調整する。磁石表面への処理液の塗布方法としては、ディップコーティング法、スプレー法、スピンコーティング法などが挙げられる。処理液を塗布する際の処理液温度は20〜80℃、処理時間は10秒〜20分が望ましい。処理液塗布後の乾燥温度は、特に、ボンド磁石に適用する場合、50〜200℃、乾燥時間は5秒〜1時間である。ジルコニウム−リン酸系化成処理を行う場合、チタン−リン酸系化成処理の方法に準じればよい。形成される皮膜中には、チタンやジルコニウムが磁石表面1m2上に形成される皮膜あたり0.1〜100mg含有されていることが望ましい。
【0039】
【実施例】
以下本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
11.7at%Nd−2.4at%Dy−6.1at%B−bal.Feの組成を有する鋳造インゴットを得た後、粗粉砕、微粉砕、焼結および熱処理の工程により、焼結磁石を得た。この焼結磁石は、直径12mm×厚さ2mmの寸法を有している。この焼結磁石の磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.27T、保磁力Hcjが1695kA/mであった。
一方、上記焼結磁石への皮膜形成用金属粉末として、表1に示す4種類(Sn,Zn,Al,Cu)の金属粉末を準備した。なお、これら金属粉末は、ガスアトマイズ法によって製造したものであり、球状の形態を有している。金属粉末の平均粒径は表1に示すように、Sn:40μm,Zn:60μm,Al:30μm,Cu:50μmである。なお、金属粉末の平均粒径は、原料粉のSEM観察によって求めた。
【0040】
以上の金属粉末を高圧ガスとの混合流体として、上記の焼結磁石に対して噴射した。噴射の条件は以下の通りである。
Figure 0003877552
上記の噴射条件によって形成された皮膜の厚さ(膜厚)は表1に示す通りである。実施例1〜6および比較例について、塩水噴霧試験前の磁気特性を測定したところ、表1に記載のようになった。なお、実施例1〜6については皮膜形成後の磁気特性を測定した(比較例は皮膜なし)。
次いで、実施例1〜6および比較例について、JIS C 0023での塩水噴霧試験方法に則り、5wt%35℃の塩水噴霧下において100時間まで試験を行い、発錆の有無を観察した。その結果を表1に併せて示す。なお、磁気特性については、5wt%35℃の塩水を24時間噴霧した試料に対して試験前後の磁気特性を比較した。
【0041】
【表1】
Figure 0003877552
【0042】
表1に示すように、皮膜の膜厚が厚いほど、発錆が抑制されていることがわかる。特に、Sn粉末からなる皮膜を10.2μm形成した実施例2およびZn粉末からなる皮膜を9.6μm形成した実施例4は、100時間後においても発錆が観察されなかったところから、緻密でかつ密着力の強い皮膜が形成されていることが伺える。なお、この試験では、皮膜の材質による発錆の程度の差異は、観察されなかった。
【0043】
前述のように、皮膜形成前の磁気特性は、残留磁束密度Brが1.27T、保磁力Hcjが1695kA/mであった。これに対して、皮膜形成後の磁気特性は、表1に示す通りであって、皮膜形成による磁気特性の低下はほとんどないといってよい。したがって、本実施例による皮膜形成方法は、磁石にとって望ましい。
塩水噴霧試験前後の磁気特性を比較すると、前述した発錆の程度と傾向が一致する。つまり、塩水噴霧試験を100時間経過した時点で発錆の観察されない実施例2および実施例4は、磁気特性の劣化がないかあるいは僅かである。塩水噴霧試験が24〜100時間で発錆の観察された実施例1,3,5および6は、若干の磁気特性の劣化が観察されたが、皮膜を形成していない比較例に比べると、劣化の度合いが少ない。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂やカップリング剤などの第三の成分を用いることなく、しかも磁気特性を低下させることなく、希土類金属を含む基材上に耐食性皮膜を形成することができる。

Claims (2)

  1. ガスアトマイズ法により作製された、平均粒径30〜150μmの球状の金属粉末を高圧ガスの混合流体とする工程と、
    前記混合流体を、希土類焼結磁石表面に噴射ノズルから3〜10kg/cm の噴射圧力で噴射することにより、噴射された前記金属粉末をメカノケミカル反応によって前記希土類焼結磁石の表面に密着させて膜厚が1.5〜20μmの皮膜を形成する工程と、を備え
    前記皮膜がその表面に形成された前記希土類焼結磁石は、5wt%、35℃の塩水噴霧を24時間継続した時点で発錆が生じないことを特徴とする金属部材の製造方法。
  2. 前記金属粉末は、Cu,Fe,Ni,Co,Cr,Sn,Zn,Pb,Cd,In,Au,Ag,Alのうち1種または2種以上から構成されることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の製造方法。
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