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JP3934751B2 - 金色焼結体 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、装飾用部材、印鑑、釣具部品、食器類、事務用品等に用いられる金色焼結体に関するものであり、特に、人の肌に直接触れて使用される時計用外装部品、ネクタイピン、イヤリング、ピアス、指輪、ブレスレット、眼鏡フレーム等において、使用する人がNi、Co、Crによる金属アレルギーを引き起こすことがなく、好適な装飾性および耐スクラッチ性を兼ね備えた金色焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば時計用の外装部品などで金色を呈する部材には、製造の容易さやコストの面からステンレス鋼や黄銅などの金属表面に金メッキを施した材料が使用されていた。しかし、これらの材料にはメッキの下地層としてNiが使用されており、また、金色のメッキ層にもAu−Ni合金が使用される場合があった。
【0003】
このため、これらの部材が人の肌に直接触れて使用されるような場合では、汗などによって金属NiがNiイオンとして溶けだし、皮膚の炎症などの金属アレルギーを発生させる可能性があった。また、CoやCrでも同様に金属アレルギーを発生させる可能性がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するためにNiを用いずにメッキやコーティングを施した装飾部材が提案されている(特開平8−13132、特開平8−120481)。しかし、これらの装飾部材ではNiによる金属アレルギーには対応できるものの、メッキやコーティング層の硬度が低いため、使用の間に硬質物質との接触によって表面にキズを生じ、装飾性が損なわれてしまうという問題がある。
【0005】
一方、金色系の色調を示し、さらに耐スクラッチ性を向上させた材料として、周期律表第4a、5a、6a族の遷移金属の窒化物、例えば窒化チタンや窒化ジルコニウムの1種以上を主成分とするものや酸窒化チタンを主成分とするものに、
Ni、Co、Crなどの金属を結合相として添加した焼結合金が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法によって得られた焼結合金では、結合相として加えた金属成分が、汗や海水、酸性雨などによって腐食あるいは変色が発生し、装飾用部材としての使用ができなくなる問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】
さらに、前述したように結合相に使用しているNiやCo、Crなどの金属が原因となって、人によっては金属アレルギーを発生してしまう問題がある。このため、人に対して金属アレルギーを発生することなく、耐スクラッチ性、耐食性に優れ、さらに従来の材料と同等の色調を示す材料が求められている。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記課題に鑑み成されたもので、その目的は、装飾用部材として必要な機械的特性を有するとともに、人に対して金属アレルギーを起こさず、また、
装飾用部材として好適な装飾性と耐食性、耐スクラッチ性を備えた金色焼結体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は装飾用部材として必要な強度を有し、耐食性に優れ、良好な金色を示し、かつアレルギーの原因となる金属を含まない材料について種々の検討を重ねた結果、Tiの酸窒化物(炭酸窒化物を含む)からなる硬質相と、ZrNを焼成の過程で酸化させたZrOからなる強化相と、さらにNiを含有することなくMoを主体とする金属の結合相とから構成される焼結体について、強化相における結晶粒子の単斜晶割合を特定範囲で制御することにより前記目的を達成できることを知見し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の金色焼結体は、Tiの酸窒化物および/または炭酸窒化物からなる硬質相と、ZrOからなる強化相と、さらにNiを含有することなくMoを主体とする金属の結合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中の強化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が8−22重量%、残部が硬質相および不可避不純物からなり、前記強化相がZrNを焼成の過程で酸化させたZrO からなり、前記強化相中のZrO結晶の内、単斜晶の割合が3−55%であることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】
本発明の金色焼結体によれば、硬質相と強化相、結合相とから構成される焼結体において、金色の色調についてはTiの酸窒化物からなる硬質相が寄与し、窒素と酸素の割合を変更することで、金色の色調変化を行うことが可能である。
【0012】
ZrO2 からなる強化相は単斜晶の割合が3−55%である部分安定化ジルコニアで構成されるため、正方晶または立方晶の相変化による応力緩和効果により焼結体の強度を向上するとともに、耐スクラッチ性、耐食性を向上させる効果がある。
【0013】
また、ZrO2 からなる強化相は原料として直接ジルコニアを用いて添加するよりも、ZrNを焼結の過程で酸化させZrO2 を生成した方が強度向上の効果が高くなる。この要因は次のように考えられる。ZrNからZrO2 を生成させると体積膨張が生じるが、焼結体中で反応させた場合、生成したZrO2 の体積膨張によって焼結体の空隙が埋められていくため、破壊源となる空隙が消滅し強度向上の効果を発揮する。
【0014】
さらに、金属の結合相にMoを用いることでNiに代表されるアレルギー発症金属を含有することなく、機械的特性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の金色焼結体は、Tiの酸窒化物および/または炭酸窒化物からなる硬質相と、ZrOからなる強化相と、さらにNiを含有することなくMoを主体とする金属の結合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中の強化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が8−22重量%、残部が硬質相および不可避不純物からなり、前記強化相がZrNを焼成の過程で酸化させたZrO からなり、前記強化相中のZrO結晶の内、単斜晶の割合が3−55%であることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、上記のように限定した理由について述べる。
【0017】
前記強化相の割合が11%よりも少なくなると、強度向上の効果が弱く必要な強度が得られず、また、25%よりも多くなると焼結性が悪くなるために緻密な焼結体が得られなくなる。また、目的とする色調を得られなくなる。
【0018】
結合相の割合が8%よりも少なくなると、緻密化の効果が弱くなり、22%よりも多くなると焼結体の耐スクラッチ性が悪くなる。
【0019】
次に強化相の結晶粒子における単斜晶の割合は、X線回折法により同定した各結晶相のピーク強度に基づき、R.C.GarvieとP.S.Nicholson等による数1の式から算出した。
【0020】
【数1】
Figure 0003934751
【0021】
ここで、Imは単斜晶のX線回折ピーク高さを示し、Ic、Itはそれぞれ立方晶、正方晶のX線回折ピーク高さを示す。
【0022】
この式より算出した強化相の結晶粒子のうち、単斜晶の割合が3%未満の場合には前記要求特性が安定して得られず、再現性に乏しくなる。
【0023】
また、その割合が55%を越えると相対的に、強化相に含まれる正方晶あるいは立方晶の割合が低下し、応力緩和の向上効果が見られず、焼結体の強度が低くなる。
【0024】
従って、強化相の結晶粒子のうち、単斜晶の割合は3−55%に特定され、特に強度向上の点からは8−40%が最適である。
【0025】
次に本発明の金色焼結体の製造方法を以下の例に基づいて説明する。
【0026】
まず、原料粉末としては、例えば、硬質相を形成するためのTiの窒化物粉末、Tiの酸化物粉末粉末、Tiの酸窒化物粉末、Tiの炭酸窒化物粉末および、金属Ti粉末等を混合し、これに強化相を形成するためのZrO2 粉末、ZrN粉末と金属Mo粉末を所定量混合したものを使用する。
【0027】
ここで、Tiの窒化物粉末は化学量論組成のTiNであっても、また非化学量論組成のTiNであってもよい。さらにTiの酸窒化物粉末、Tiの炭酸窒化物粉末において酸素と窒素の割合、炭素、酸素と窒素の割合は目的とする色調によって種々変化させたものを使用することができる。
【0028】
前記硬質相は具体的には、粒径が1〜3μmのTiN粉末、および0.5〜2μmのTiO2 粉末、1〜3μmのZrN粉末、0.5〜1.5μmのMo粉末のそれぞれを前記組成を満足するように秤量する。
【0029】
ついで、前記原料粉末にアセトン等の有機溶媒を加えて混合粉砕した後、公知の有機バインダーを加え、所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押し出し成型等により任意の形状に成形後、非酸化性雰囲気下において所定温度で脱脂した後、前記強化相中の単斜晶割合を制御する一つの方法として、真空あるいは非酸化性雰囲気下で1600〜1900℃の温度で焼成する事が望ましく、焼成時間は成形体の大きさにもよるが、通常0.5〜5時間が適当である。
【0030】
また、熱間静水圧焼成(HIP)において1000〜2000気圧下で、1500〜1800℃で処理してもよい。
【0031】
そして、前述のようにして作製した焼結体を、ダイヤモンドペースト等を用いて鏡面研磨する事により、光沢のある金色が得られる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の金色焼結体を実施例に基づき詳述する。
【0033】
原料粉末として、平均粒径が1.5μmのTiN粉末および0.8μmのTiO2粉末、および平均粒径が1.4μmのZrN粉末と同粒径が2μmのMo粉末を用い、これらを焼結体の硬質相と強化相、結合相量が表1に示す割合となるように秤量混合し、これをアセトン等の有機溶媒中、約68時間混合粉砕した後、パラフィンを6重量%加え、2ton/cm2の加圧力で所望形状に成形した。
【0034】
そして、この成形体を非酸化性雰囲気下において所定温度で脱脂した後、真空度が10−3Torr の真空加熱炉において1700〜1900℃の温度で1時間真空焼成した。このようにして得られた最終焼結体を平面研削および鏡面研磨して評価用の焼結体を作製し、抗折強度、ビッカース硬度、耐食性をそれぞれ評価するとともに、目視により焼結体の色調を確認した。
【0035】
前記抗折強度はJISR1601の3点曲げ試験法に従い、ビッカース硬度はJISZ2244の試験法に準じて行った。
【0036】
また、耐食性の試験は尿素5g、塩化ナトリウム20g、乳酸15g、酢酸2.
5g、塩化アンモニウム15.5gを水に溶かして1リットルとし、アンモニア水でpH=4.7に調整した溶液を腐食液として使用して行った。40℃の温度に保持した前記人工汗の中に、鏡面研磨した焼結体試料の下半分を1週間浸した後、該試料の研磨面の状態を比較観察することにより研磨面に変色及び腐食が認められないものを○、わずかでも変色及び腐食が認められるものを×として表示した。
【0037】
さらに、ジメチルグリオキシムのアルコール溶液とアンモニア水をしみ込ませた綿棒で試料表面を擦ることでNiイオンとの反応による赤色の発色を確認した。
【0038】
【表1】
Figure 0003934751
【0039】
この表から明らかなように、本発明の請求範囲外である試料11、13は目的とする色調を示さず、試料1−3および11−13は強化相及び結合相の効果が小さいために強度が低く、比較例の試料14は赤色の発色が見られ、Niイオンの溶出を確認した。
【0040】
これに対して、本発明による焼結体では、いずれも抗折強度が800MPa以上を示し、また、目的の色調、耐食性を有していることがわかる。さらに、赤色の反応も見られず、Niイオンは確認されなかった。
【0041】
即ち、試料1は強化相の割合が11%未満であり且つ結合相(金属相)の割合が8%未満で強度不足となった。試料2は金属相の割合が8%未満で強度不足となった。試料3は強化相の割合が11%未満で強度不足となった。試料11は強化相の割合が25%超過で強度不足且つ色調不足となった。試料12は結合相(金属相)の割合が22%超過且つ強化相中の単斜相の割合が55重量%超過で強度不足となった。試料13は強化相の割合が25%超過且つ結合相(金属相)の割合が22%超過で強度不足且つ色調不足となった。なお、試料16は金属相からNiの溶出があり不適であった。
【0042】
これに対して、本願発明実施例である試料4〜10は焼結体中の強化相の割合が11−25重量%、結合相の割合が8−22重量%、強化相中のZrO2 に含まれる単斜相の割合が55重量%以下であり、結果も極めて良好であった。
【0043】
以上の結果から、焼結体中の強化相の割合が11−25重量%、結合相の割合が8−22重量%、強化相中のZrO2 に含まれる単斜相の割合が55重量%以下が好ましいことが確認された。なお、前述のように、強化相の結晶粒子のうち、単斜晶の割合が3%未満の場合には物性が安定して得られず、再現性に乏しくなるので好ましくない。したがって、前記単斜相の割合は3−55重量%に限定される。
【0044】
【実験例】
前記試料6の焼結体により耳飾り用のピアスを作製した。このピアスを20人を対象に1年間両耳に装着してもらい、皮膚アレルギーや炎症の有無を確認したところこのような問題は一切発現しなかった。
【0045】
また同焼結体により時計バンドを作製し、時計とこのバンドを20人を対象に1年間装着してもらい、皮膚アレルギーや炎症の有無、および目立つキズの有無を確信したが、このような問題は一切なかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の金色焼結体によれば、実用上何等支障のない強度と硬度を有するとともに、耐食性に優れ、また、金属アレルギーの原因となる金属を使用しないことから、装飾用部材として人に無害で、かつ長期間にわたり腐食や傷が発生しない金色装飾品として、例えば、時計ケース、時計バンド、ネックレス、ブレスレット、ボタン等の装飾品や食器類、刃物、釣り具等の他、建具などの装飾用部材や摺動部材、事務用品、スポーツ用品などにも利用することができる。

Claims (1)

  1. Tiの酸窒化物からなる硬質相と、ZrOからなる強化相と、さらにNiを含有することなくMoを主体とする金属の結合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中の強化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が8−22重量%、残部が硬質相および不可避不純物からなり、前記強化相がZrNを焼成の過程で酸化させたZrO からなり、前記強化相中のZrO結晶の内、単斜晶の割合が3−55%であることを特徴とする金色焼結体。
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