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JP4014298B2 - 裏地及びその製造方法 - Google Patents
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JP4014298B2 - 裏地及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨコ方向に伸びがあり、表面平滑性に優れた滑り性の良いポリエステル系長繊維100%裏地及びセルロース系長繊維/ポリエステル系長繊維の交織裏地に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、織物裏地として用いられている素材は、ポリエステル系長繊維とセルロース系長繊維に大別出来る。ポリエステル系長繊維100%よりなる裏地は、セルロース系長繊維100%で構成された裏地に比べて安価で、引っ張り・屈曲・磨耗に対する強度が強く、洗濯による寸法安定性に優れ、外観変化の少ないことなどから、裏地全体の8割近くの量を占めている。セルロース系長繊維100%よりなる裏地は、風合い、吸湿性、吸汗性、制電性、滑り性に優れるというポリエステル系繊維には無い長所を有し、特に高級婦人服分野の裏地として使用されている。又、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の持つお互いの長所を複合させる目的でこれらの糸を交織した裏地も商品化されている。
【0003】
一方近年、洋服に使用される表地は、衣服の着心地やシルエットを重視するファッション動向の影響で、ソフトでしなやかな生地が主流になって来ており、裏地についても着心地、シルエットを損なわないソフトでしなやかな商品が求められ、商品化されて来ている。
ソフトでしなやかな裏地とする手段として、織物設計密度の減少、使用する繊維の細デニール化、染色仕上げ加工方法の改良等が採られているが、特にポリエステル系長繊維100%よりなる裏地は、染色仕上げ加工時に高濃度の苛性ソーダ溶液を用いて繊維を減量加工して風合いをソフトにした商品が殆どである。減量加工を施した商品の中でも特に減量率が10〜15%程度の高減量商品は、風合いが非常にソフトで高級差別化裏地として用いられている。
【0004】
減量加工による風合いソフト化の機構は、アルカリ溶液によってポリエステル系繊維を加水分解し繊維を細化する事によって得られるが、同時に織物を構成するタテ糸とヨコ糸間に隙間が形成され、且つタテヨコの糸を構成するマルチフィラメント間にも隙間が出来ることが風合いのソフト化に大きな効果をもたらしている。この隙間が、織物の引っ張り剛性や曲げ剛性やせん断剛性を低下させ、織物の風合がソフトになると考えられる。
しかし、高減量を施したこの様な裏地は風合いがソフトである反面、タテ糸とヨコ糸間に隙間が形成されているため、衣服着用時に引っ張り・せん断の大きな力が加わるとタテ糸ヨコ糸が非常に動き易く、実着用時の問題点としては、特に縫い目が滑脱し易いという欠点を有している。縫い目の滑脱は、織物の縫い目に応力が掛かった時に、縫い目を境にしてタテ糸もしくはヨコ糸がずれる、ひどい場合には縫い目が破裂してしまう現象をいう。
【0005】
実際に縫い目の滑脱が起こりやすい衣服の代表例としては、婦人のタイトスカートである。スカートの場合は、肌触りを重視して裏地のきせが殆どなく、又歩行したり座ったり等の動作が大きくなると、その為縫い目が引っ張られ滑脱し易くなってくる。
縫い目滑脱を起こりにくくする方法としては、タテ糸ヨコ糸の密度の増加、繊維間の摩擦抵抗を高くする為のスリップ防止剤を使用する方法が採られているが、タテ糸ヨコ糸の密度の増加は風合のソフト化と相反すること、又スリップ防止の使用は、一時的には効果があるもの洗濯によって脱落し永久的な効果が無い等の問題を有している。
【0006】
裏地の縫い目滑脱を防止する為には、裏地のヨコ方向の伸びが重要であることを突き詰めると同時に、実着用時の着脱性や肌触りを良くする為には表面の平滑性が必要であることを突き止められた。たとえば、特開平9−363766号公報では、ポリエステル系長繊維又はセルロース系長繊維からなるタテ糸と、ポリエステル系長繊維の仮撚加工糸からなるヨコ糸で構成された織物であって、該織物のヨコ方向の伸びが6〜12%、織物表面の動摩擦係数が0.30〜0.45、ヨコ糸のクリンプ率を経糸密度で除した値が0.035〜0.110の範囲であることを特徴とする裏地であって、その製造方法としては、製織後の織物幅に対して5〜15%幅入れした状態で160〜200℃の熱処理することが提案されている。
この方法を用いることにより確かに縫い目滑脱を防止し、かつ着心地の良い裏地が得られる。しかし、仮撚糸はトルクが内在していて糸条の伸縮性は極めて大きいが、トルクは織物表面のざらつきに転移しやすい欠点があり、この裏地も表面タッチに問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の裏地の欠点を解消したポリエステル系長繊維100%裏地及びポリエステル系長繊維とセルロース系長繊維の交織裏地を提供せんとするもので、つまり縫い目滑脱が起こりにくく、且つ従来の裏地と同様にソフトな風合い、及び裏地機能として重要な滑り性と良好な表面タッチ性を兼ね備えた裏地を提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、ヨコ糸がサイドバイサイド型ポリエステル系複合糸で、その捲縮伸長率が10〜100%であれば、裏地の縫い目滑脱を防止し、表面の平滑性かつ表面タッチが良好であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、ポリエステル系長繊維又はセルロース系長繊維からなるタテ糸と、捲縮伸長率が10〜100%であるサイドバイサイド型ポリエステル系複合糸からなるヨコ糸で構成された織物であって、該織物のヨコ方向の伸びが6〜12%であり、かつ織物表面の動摩擦係数が0.30〜0.45、ヨコ糸のクリンプ率を経糸密度で除した値が0.035〜0.110である織物からなることを特徴とする表面タッチの良好な裏地であって、その製造方法としては、製織後の織物幅に対して15〜30%の幅入れした状態で160℃〜200℃の熱処理を行うことを特徴としたものである。
【0009】
尚、本発明で規定した捲縮伸長率及び伸び、動摩擦係数、クリンプ率をタテ糸密度で除した値、せん断かたさ、曲げかたさ、表面タッチ、乾熱収縮率は、下記の方法で測定した値である。
(捲縮伸長率)
複合糸の20回巻きカセを作り、1.2mg/dの荷重をかけて15分間沸水処理した後、乾燥調湿する。得られたカセに20mg/dの荷重をかけてカセ長(L1)を測定し、次に300mg/dの荷重をかけて30秒後のカセ長(L2)を測定する。測定値から次式を用いて捲縮伸長率を算出する。
捲縮伸長率(%)=〔(L2−L1)/L〕×1100
【0010】
(ヨコ方向の伸び)
カトーテック(株)製のKES−FB1を用いて、20cm×20cmの織物を引っ張り速度=0.2mm/秒でヨコ方向に伸長し、500g/cmの応力下での伸びS(%)を次式によって求めた。
S(%)=(A/20)×100
〔A:500g/cm下で伸びた長さ(cm)〕
【0011】
(動摩擦係数)
カトーテック(株)製のKES−SEを用いて、摩擦面寸法が1cm×1cmで重量が25gの摩擦子に、かなきん3号精錬上がりの綿布を取り付けて、5cm/minの速度で固定した裏地の表面上をすべらせ、その時の摩擦抵抗力から、次式によって動摩擦係数(μ)を求めた。
μ=A/B A:摩擦抵抗力の平均値(g)、B:摩擦子の重量(g)
本発明ではタテ方向に滑らせたときの摩擦係数と、ヨコ緯方向に滑らせたときの摩擦係数の平均値を、裏地の動摩擦係数とした。
【0012】
(クリンプ率をタテ糸密度で除した値)
クリンプ率をタテ糸密度で除した値=ヨコ糸のクリンプ率/タテ糸密度
ヨコ糸のクリンプ率は、織物のヨコ糸に20cmの印を付けた後、織物を分解してヨコ糸に1/10g/dの荷重時の伸び(△S(cm))を読み、次式により算出した。
クリンプ率(%)=(△S/20)×100
タテ糸密度は、1インチ当たりのタテ糸の本数を数えた。
【0013】
(せん断かたさ)
カトーテック(株)製のKES−FB1を用いて、20cm×20cmの織物に10gf/cmの強制荷重を掛けた状態で、0°〜±8°のせん断変形を与えたときの、±0.5°と±5°の単位幅当たりのせん断応力(gf/cm)をせん断変形角度(4.5°)で除した値(gf/cm・degree)。
(曲げかたさ)
カトーテック(株)製のKES−FB2を用いて、20cm×20cmの織物を有効試料長20cm×1cmで把持し、最大曲率±2.5cm−1の条件下で曲げたときの、曲率が±0.5と±1.5cm−1の単位幅当たりの曲げモーメント(gf・cm/cm)を曲率(1cm−1)で除した値(gfcm2/cm)。
【0014】
(表面タッチ)
ハンドリングによる官能評価で判定した。
◎:非常に良好
○:良好
△:やや不良
×:不良
(乾熱収縮率)
複合糸の20回巻きカセを作り、0.2mg/dの荷重をかけて原長(H0)を測定する。無荷重で180℃、3分間乾熱処理した後、室温まで冷却する。0.2mg/dの荷重をかけてカセ長(H1)を測定する。
乾熱収縮率(%)=〔(H0−H1)/H0〕×100
【0015】
以下に本発明の詳細を説明する。
特開平9−363766号公報では、スカートに使用した従来の裏地の縫い目滑脱の原因を検討し、伸びの大きい表地は、伸ばされても生地に発生する応力が小さいが、伸びの小さい裏地には大きな応力が発生する。この時裏地のパーツの中で応力の発生に対して最も弱い部分は縫い目の部分であることから、裏地の縫い目の滑脱が発生してしまうことを開示している。また、既存の裏地は表地よりもヨコ方向の伸びが小さいため、実着用時、例えば、しゃがんだ時とかイスに座った時など人間の皮膚伸びによって表地・裏地とも伸びに伴う応力が発生するが、表地より裏地の応力が高くなってしまい、圧迫感を受ける事にもつながっていることになる。
【0016】
ヨコ方向に伸びを有する裏地としては、合成繊維の仮撚加工糸を用いて15%以上の伸びを発現させている裏地がある。この裏地は、織物を高温の水溶液中で無緊張状態でリラックス処理を行い、仮撚加工糸の潜在捲縮を顕在化し、この顕在化した捲縮によって裏地に高い伸びを発現させている。しかし、このような裏地は、ヨコ糸の仮撚加工糸の屈曲が大きく、タテ糸よりヨコ糸が織物表面に浮き出た凹凸感の大きい構造の織物となり、裏地の必要機能であるすべり性が低下し、衣服の着脱性や着用時の肌触りが悪いものとなっていた。
【0017】
ヨコ方向に6〜12%の伸びを有し、かつ表面の滑り性の良好な裏地としては、特開平9−363766号公報に記載されているヨコ糸に加工糸を使用した裏地がある。この方法を用いることにより確かに縫い目滑脱を防止し、かつ着心地の良い裏地が得られる。しかし、仮撚糸はトルクが内在して糸条の伸縮性は極めて大きいが、トルクは織物表面のざらつきに転移しやすい欠点があり、この裏地も表面タッチに問題点がある。
つまり、縫い目の滑脱を防止し且つ着用時の圧迫感がなく、ソフトで滑り性がよく表面タッチの良好な裏地とするためには、ヨコ糸に使用する原糸の捲縮伸長率が重要であることを突き止め本発明を完成するに至ったものである。
【0018】
本発明のヨコ方向の伸びとしては、6〜12%が好ましく、この範囲は縫い目滑脱を起きにくくすることと、滑り性を低下させないために非常に重要である。
ヨコ方向の伸びが6%未満に於いては、裏地に掛かる応力をを吸収出来ないことから、スカートを着用して座ったりしゃがんだりしたとき縫い目滑脱が起こりやすく、しかも裏地に掛かる応力によって着圧が高くなり圧迫感の強い裏地となってしまう。又伸びが6%未満に於いては裏地に掛かる応力によって裏地の裾が表地と一緒にズレ上がり着用感の悪い物になってしまうという問題もある。
12%を越える伸びを有する裏地は、縫い目滑脱や着用感については問題はないが、ヨコ糸の屈曲が大きなる為、表面凹凸感の強いものになり滑り性の悪い裏地となってしまう。また、厚みが厚く表地のシルエットを阻害する物となってしまう。
【0019】
本発明の動摩擦係数としては、0.30〜0.45の範囲が好ましい。0.30未満では、例えばスカートを着用してイス等に腰掛けた場合に、表地もしくは素肌やパンティストッキングなどとの滑りが良すぎる為に、スカートの裾部などがずれやすくなるなどの支障をきたす。また、0.45を越える動摩擦係数の裏地は、素肌やパンティーストッキング等とのすべりが悪くなり、スカートなどの脱着性や肌触りが悪いものとなってしまう。
【0020】
本発明の織物のヨコ方向の伸びと滑り性を両立させるためには、織物内のヨコ糸の屈曲状態が重要である。このヨコ糸の屈曲状態はヨコ糸のクリンプ率をタテ糸密度(本/インチ)で除した値で示すことが出来る。本発明の伸びと滑り性を両立させるための値としては、0.035〜0.110とすることが好ましく、より好ましくは0.045〜0.100である。0.035未満においては、タテ糸1本当たりに対するヨコ糸の屈曲が小さいために、本発明の伸びを発現することが出来ない。また0.110を超えると、タテ糸1本当たりのヨコ糸の屈曲が大きすぎるために、織物の表面にヨコ糸が浮いた状態となり織物表面の滑り性が低下してしまう。
また、上記で規定した伸びと滑り性の両立と併せて、風合いのソフトさを達成する為には、次のことが重要である。
【0021】
風合いのソフトさは、織物にせん断変形や曲げ変形を与えた時の変形のしやすさによって定量化することが出来る。具体的には、前記の方法によってせん断かたさや曲げかたさを計測することが出来る。
本発明の裏地のせん断かたさ及び曲げかたさは、上記の方法で計測した値が、次の範囲にあるのが好ましい。
ヨコ方向のせん断かたさが、0.20〜0.40。
ヨコ方向の曲げかたさが、0.01〜0.025。
該せん断かたさ及び曲げかたさの範囲未満では、風合いが柔軟になりすぎるばかりではなく、せん断かたさや曲げかたさが小さい為、縫製時の取り扱い性が悪くまた実着用時に目寄れ等の変形が起こりやすい。上記範囲を超えてしまうと、織物のソフトさが損なわれ硬い風合いとなってしいまい、本発明の目的を達成することが出来ない。
【0022】
本発明のポリエステル系長繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートなどのポリエステル系重合体及びこれらの共重合体からなるものであり、これらの重合体または共重合体に制電剤、難燃剤、耐熱剤、耐光剤、酸化チタン等の添加剤を加えることは何らさしつかえない。また、フィラメントの断面形状および繊維の太さについての制限も特になく、断面形状については、丸型、三角型、L型、Y型、T型、W型、扁平等の多角形型、多葉型、中空型や不定形型名のような物でも良い。
【0023】
タテ糸に用いるセルロース系長繊維とは、銅アンモニア法レーヨン、ビスコース法レーヨン、ポリジックレーヨン、アセテート繊維等を言う。これらの繊維のトータルデニールとしては、30〜120デニール、好ましくは50〜100デニールであり、単糸デニールとしては、0.5〜10デニール好ましくは1〜5デニールの範囲である。
本発明に用いるサイドバイサイド型ポリエステル系複合糸とは、重合度の異なるポリエステルの組み合わせ、またはホモポリエステルとコポリエステルとの組み合わせ等により収縮率の異なる二種類以上の重合体を並列的もしくは偏芯的に複合紡糸した潜在捲縮性をもつ繊維である。このような繊維のポリマーの組み合わせの具体例を挙げると、以下の通りである。
【0024】
一方の成分は少なくとも85モル%の構造式(1)
【化1】
Figure 0004014298
で示される繰り返し単位を有するポリエステルであり、他方の成分は上記ポリエステルの酸成分に対して構造式(2)
【0025】
【化2】
Figure 0004014298
で示される化合物(以下「I(m,n)」と称する)を1〜30モル%共重合したポリエステルである。前者のポリエステル中の共重合成分の割合が増すと、ポリエステル本来の優れた性質がそこなわれるとともに、共重合ポリエステルとの収縮率の差が小さくなり複合糸の捲縮特性が低下する。
【0026】
I(m,n)の共重合割合はポリエステル中の酸成分に対して1〜30モル%、好ましくは3〜20モル%が良い。1モル%以下では共重合ポリエステル単独系の収縮率が低く、複合糸とした場合の捲縮性が低い。30モル%を越えると共重合体の融点の低下が大きく、耐熱性が下がり複合紡糸に不適当である。またn及びmは3までが好ましく、n、mが大きくなると共重合ポリマーの耐熱性が低下する。
【0027】
本発明に用いるサイドバイサイド型ポリエステル系複合糸の捲縮伸長率は、10〜100%が好ましい。さらに好ましくは15〜50%である。捲縮伸長率10%以下では、ヨコ方向の伸び6〜12%のものは得られない。また、捲縮伸長率100%以上であれば、ヨコ糸の屈曲が大きすぎるために、織物の表面にヨコ糸が浮いた状態となり織物表面の滑り性が低下してしまう。
本発明の裏地の織物組織としては、平織り、朱子織、綾織などが挙げられるが、何れを採用するかは用途、要求特性などによって適宜決定される。例えば婦人服に関しては、ソフトな風合が好まれることから、平織りが特に好ましい。
【0028】
次に、本発明の裏地を好ましく製造し得る方法について説明をする。
伸びと織物の表面平滑性を両立させて製造する方法として、タテ糸及びヨコ糸を拘束した状態で捲縮発現による組織収縮を起こさせる。つまり製織後の織物を精練前又は精練後に、幅入れした状態で熱処理を行えば、伸びがありしかもシボが発現せずに表面凹凸感が小さくなる。すなわち本発明は、ポリエステル系長繊維又はセルロース系長繊維からなるタテ糸と、捲縮伸長率が10〜100%であるサイドバイサイド型ポリエステル系複合糸からなるヨコ糸で構成された織物を、製織後の織物幅に対して、精錬前又は精練後に15〜30%幅入れした状態で、160〜200℃の熱処理を行うことにより得られる。
【0029】
本発明における幅入れとは、例えば一般的に織物の加工時に熱処理機として用いられているピンテンター型のヒートセッターで熱処理する場合、製織後の織物の幅両端を固定した状態で熱処理するが、その固定した幅を製織後の織物幅よりも狭くして処理することを言う。本発明で言う幅入れ率とは、下式によって求めたものである。
幅入れ率(%)=〔(製織後の織物幅−幅入れ後の織物幅)/製織後の織物幅〕×100
本発明の幅入れ率としては、15〜30%の範囲である。
【0030】
好ましい範囲は、ヨコ糸に用いるサイドバイサイド型複合糸の乾熱収縮率によって異なる。乾熱収縮率10〜25%のサイドバイサイド型複合糸を用いた場合は、15〜20%の幅入れ率が好ましく、乾熱収縮率20%以上のサイドバイサイド型複合糸を用いた場合は、25〜30%の幅入れ率が好ましい。15%未満の幅入れ率で熱処理を行うと、伸びを付与させるための捲縮発現が小さく本発明の伸びの織物が得られない。30%以上の幅入れ率で熱処理を行うと、熱処理をする段階で緊張状態とならないために、織物がたるんだ状態で熱処理されることから、シワが発生する問題点や表面凹凸感の強いものとなったり、ヨコ糸が湾曲してしまう目曲がりなどの問題が発生し好ましくない。
【0031】
本発明における製織後の織物の熱処理は、用いたサイドバイサイド型複合糸の捲縮発現を緊張下で最大限に行わせると同時に、発現した捲縮を熱固定することが重要である。この熱処理で仮撚加工糸の熱固定が充分に行われないと、熱処理後の工程(例えば染色工程等)で捲縮発現による織物の組織収縮が起き、シボの発生原因となる。この時点で発生したシボは、最後の仕上げ工程で緊張状態で熱処理しても、完全になくすことは出来なくなる。捲縮発現及び熱固定を充分に行う熱処理温度としては、160℃〜200℃が好ましく、より好ましくは180℃〜190℃である。熱処理温度が160℃未満では、サイドバイサイド型複合糸の捲縮発現と熱固定が不十分となり、後の染色工程等で再び捲縮の発現が起こりシボ感の強い表面平滑性に劣る物になってしまう。また、熱処理温度が200℃を越えると、繊維への熱によるダメージが強くなり、裏地となった時の機械物性等が低下したり、風合いの硬い織物に仕上がってしまう。
【0032】
本発明の熱処理を行う処理時間としては、使用したサイドバイサイド型ポリエステル複合糸の捲縮発現および熱固定を完全に行うことが出来る時間であれば良く、熱処理温度が高い時には繊維へのダメージを考え短い処理時間で行うが、低い温度で処理する場合には、時間を長くして処理すれば良い。好ましい熱処理時間としては、180〜190℃で30秒〜60秒の時間である。
上記熱処理を行う手段としては、織物の幅方向に緊張状態で処理ができる装置で有れば限定されないが、一般的な織物の熱処理で汎用的に用いられている両端にピンがついたピンテンター型のヒートセッターが好ましい。
【0033】
本発明における精錬とは、製織後の織物に付着している紡糸オイルやタテ糸糊剤などをを除去する工程であり、この精錬で用いられる処理液としては、水又は界面活性剤とアルカリを含む水溶液が良い。該精錬を行う方法としては限定されないが、一般的に織物の精錬で用いられているオープンソーパー型連続精練機液流型染色機、浴中懸垂型連続処理機、ウインス染色機、ソフサ精練機などが好ましい。
【0034】
本発明の裏地を好ましく製造しうる方法としては、精練前に幅入れ熱処理を行うことが好ましい。この方法に於いては、後の精練で上記に挙げたどのような機械を用いても本発明の目的を達成できる。
精練を本発明の熱処理の前に行う場合には、例えばオープンソーパー型連続精練機等のように、織物のタテ方向に張力が掛かった状態で処理が出来る装置が良い。液流型染色機等の様に、織物のタテ・ヨコ方向共に張力が掛からない様な装置で行うと、織物表面にシボが発生してしまい好ましくない。
【0035】
本発明の方法で熱処理を行った後の工程としては、一般的な裏地の加工工程である染色・仕上げの工程を行うことにより、本発明の裏地を製造することが出来る。風合をよりソフトにする場合には、アルカリ減量加工を行っても差し支えない。本発明の裏地は、ヨコ方向に伸びを持っているためアルカリ減量加工を施しても実着用時、縫い目の滑脱が問題になることはない。
【0036】
本発明のポリエステル系長繊維100%よりなる裏地の染色加工としては、一般的なポリエステル系長繊維で構成されている従来の裏地の染色加工と同様で良く、その方法としては、液流型染色機、ジッガー染色機、ビーム染色機、ウインス染色機、などが挙げられるが、染色品の品位の面からは、液流染色機で加工することが好ましい。仕上げ加工としては、染色加工同様一般的なポエステル系長繊維を用いた裏地仕上げ加工と同様で良いが、気をつけなければならないのは、最終仕上げの工程で皺をなくす為にピンテンター等により幅出しして熱処理を行う際に、幅出しする割合を大きくとってしまうと、希望とする裏地の伸びに対して低い伸びの裏地となってしまうので、例えば染色後の幅に対して1〜2cmの幅出を行い、シワが取れる程度にすることが望ましい。この仕上げ工程のところで、仕上げ剤として帯電防止剤、撥水剤、吸汗剤などを付与してもかまわない。また、織物表面の光沢、平滑性、風合いを改善するために、仕上げ剤付与後にカレンダー処理などを適用しても良い。
【0037】
本発明のセルロース系長繊維/ポリエステル系長繊維よりなる交織裏地の場合の染色加工工程は、まず上記と同様な方法で精練及びポリエステル系長繊維の染色を行った後、引き続いてセルロース系長繊維の染色を行う必要があるが、ポリエステル系長繊維を染色した染色機と同機を用いて染色してもよいし、又コールドパッドバッチ法やパッドスチーム法による別の染色機を用いて染色してもかまわない。
染色終了後の仕上げ加工は、通常のセルロース繊維の加工で実施されている、洗濯収縮率、湿摩擦堅牢度を向上させるための樹脂加工を施す事が好ましい。
【0038】
【作用】
本発明の裏地を用いることにより、従来のポリエステル系長繊維を用いた裏地が問題としている実着用時の縫い目滑脱を防止する事が出来る。又、裏地の伸長による応力発生を低減出来るため、圧迫感がなく、スカートの裾部分のずれ上がりのない、滑り性に優れ表面タッチの良好な裏地を提供する事が出来る。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
【実施例】
なお実施例中の数値及び製品の特徴の判定基準は、以下の評価法で行った。
(ヨコ方向伸び)
前記と同じ。
(動摩擦係数)
前記と同じ。
(クリンプ率をタテ糸密度で除した値)
前記と同じ。
【0040】
(表面性・外観)
しわ・シボ等の発現状態を中心に、肉眼で識別できる判定を行った。
(縫い目滑脱)
10%の伸びのあるウールの表地に、実施例で作製した織物を裏地として用いたスカート(ゆとり率5%)を作製して、2週間着用後の縫い目滑脱の程度を評価した。評価方法としては、0.5kg/2.54cmの負荷が掛かった状態で、縫い目の両側の滑脱の最大値を読み、それを縫い目滑脱とした。
【0041】
(着用感)
10%の伸びのあるウールの表地に、実施例で作製した織物を裏地として用いたスカート(ゆとり率5%)を作製して、モニターに着用してもらった時の官能評価で判定した。
○:着用感が極めて良好。
△:着用感にやや不快さを感じる。
×:着用感が不快に感じる。
【0042】
(表面タッチ)
ハンドリングによる官能評価で判定した。
◎:非常に良好
○:良好
△:やや不良
×:不良
(還元粘度)
ポリマーの還元粘度(ηsp/c)は、o−クロロフェノールの1%溶液として35℃の測定値である。
【0043】
【実施例1】
タテ糸に50デニール24フィラメントのポリエチレンテレフタレート、ヨコ糸に通常の方法で重合した還元粘度0.73のポリエチレンテレフタレートとポリエステルの酸成分に対して5モル%のI(n=1、m=1)を共重合したコポリマーを同一の紡糸口金より量比1:1で並列関係に密着紡糸し、延伸速度830m/分かつ、加熱ローラーの表面温度70℃として得られた75デニール36フィラメントの捲縮伸長率14.4%のサイドバイサイド型複合糸を用いて、タテ糸密度100本/インチ、ヨコ糸密度81本/インチ、目付50g/m2 、製織後の織物幅131.5cmの織物を製織した。
【0044】
得られた織物をピンテンターにより、190℃×30秒の条件で製織後の織物幅に対して18%の幅入れを行った。次に2g/lの炭酸ソーダと2g/lのスコアロール(花王(株)社製)を投入した液で、液流染色機によって130℃×10分の精練を行った。その後、液流染色機により表1記載の条件で染色を行い、次に余分な染料除去や織物のpH調整のための還元洗浄し乾燥を行った。仕上げ加工は表2記載の条件で加工を行った。
【0045】
【表1】
Figure 0004014298
【0046】
【実施例2】
タテ糸に50デニール24フィラメントのポリエチレンテレフタレート、ヨコ糸に通常の方法で重合した還元粘度0.49のポリエチレンテレフタレートとポリエステルの酸成分に対して5モル%のI(n=1、m=1)を共重合したコポリマーを同一の紡糸口金より量比1:1で並列関係に密着紡糸し、延伸速度830m/分かつ、加熱ローラーの表面温度70℃として得られた75デニール36フィラメントの捲縮伸長率24%のサイドバイサイド型複合糸を用いて、タテ糸密度100本/インチ、ヨコ糸密度81本/インチ、目付50g/m2 、製織後の織物幅131.5cmの織物を製織した。
【0047】
得られた織物をピンテンターにより、190℃×30秒の条件で製織後の織物幅に対して20%の幅入れを行った。次に2g/lの炭酸ソーダと2g/lのスコアロール(花王(株)社製)を投入した液で、液流染色機によって130℃×10分の精練を行った。その後、液流染色機により前記表1記載の条件で染色を行い、次に余分な染料除去や織物のpH調整のための還元洗浄し乾燥を行った。仕上げ加工は前記表2記載の条件で加工を行った。
【0048】
【比較例1】
タテ糸に50デニール24フィラメントのポリエチレンテレフタレート、ヨコ糸に通常の方法で重合した還元粘度0.73のポリエチレンテレフタレートとポリエステルの酸成分に対して5モル%のI(n=1、m=1)を共重合したコポリマーを同一の紡糸口金より量比1:1で並列関係に密着紡糸し、延伸速度830m/分かつ、加熱ローラーの表面温度90℃として得られた75デニール36フィラメントの捲縮伸長率5.0%のサイドバイサイド型複合糸を用いて、タテ糸密度100本/インチ、ヨコ糸密度81本/インチ、目付50g/m2 、製織後の織物幅131.5cmの織物を製織した。
【0049】
得られた織物をピンテンターにより、190℃×30秒の条件で製織後の織物幅に対して18%の幅入れを行った。次に2g/lの炭酸ソーダと2g/lのスコアロール(花王(株)社製)を投入した液で、液流染色機によって130℃×10分の精練を行った。その後、液流染色機により前記表1記載の条件で染色を行い、次に余分な染料除去や織物のpH調整のための還元洗浄し乾燥を行った。仕上げ加工は前記表2記載の条件で加工を行った。
【0050】
【比較例2】
タテ糸に50デニール24フィラメントのポリエチレンテレフタレート、ヨコ糸に75デニール36フィラメントのポリエチレンテレフタレートの2ヒーター仮撚加工糸(仮撚数3350T/M、1ヒーター温度220℃、2ヒーター温度180℃、2ヒーターゾーンフィード率+20%)を用いて、タテ糸密度100本/インチ、ヨコ糸密度81本/インチ、目付50g/m2 、製織後の織物幅131.5cmの織物を製織した。
【0051】
得られた織物をピンテンターにより、190℃×30秒の条件で製織後の織物幅に対して5%の幅入れを行った。次に2g/lの炭酸ソーダと2g/lのスコアロール(花王(株)社製)を投入した液で、液流染色機によって130℃×10分の精練を行った。その後、液流染色機により前記表1記載の条件で染色を行い、次に余分な染料除去や織物のpH調整のための還元洗浄し乾燥を行った。仕上げ加工は前記表2記載の条件で加工を行った。
実施例1、2および比較例1、2で得られた織物の伸び、動摩擦係数、縫い目滑脱、外観、表面タッチ、着用感の評価結果をまとめて表3に示した。
【0052】
【表2】
Figure 0004014298
【0053】
【発明の効果】
本発明は、以上詳述したように、極めて縫い目滑脱が起こりにくく、又裏地の伸長による応力発生を低減できるため、圧迫感がなく、スカートの裾部分のずれ上がりのない、滑り性、表面タッチの良い裏地を提供することができる。

Claims (4)

  1. ポリエステル系長繊維又はセルロース系長繊維からなるタテ糸と収縮率の異なる2種のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維であって、捲縮伸長率が10〜100%であるヨコ糸で構成された織物であって、ヨコ糸のクリンプ率をタテ糸密度で除した値が0.035〜0.110であることを特徴とする裏地。
  2. 裏地のヨコ方向の伸びが6〜12%であり、且つ表面の動摩擦係数が0.30〜0.45であることを特徴とする請求項1記載の裏地。
  3. ヨコ糸に用いる収縮率の異なる2種のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維が重合度の異なるポリエステルの組み合わせ、又はホモポリエステルとコポリエステルとの組み合わせのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の裏地。
  4. ポリエステル系長繊維又はセルロース系長繊維からなるタテ糸と、捲縮伸長率が10〜100%である収縮率の異なる2種のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維からなるヨコ糸で構成された織物を、製織後の織物幅に対して、精練前又は精練後に15〜30%の幅入れした状態で、160〜200℃の熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の裏地の製造方法。
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