JP4300031B2 - クローニングベクター - Google Patents
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Description
本発明は、緑色蛍光蛋白質の遺伝子等のような宿主の選択のための遺伝子を用いたクローニングベクター及びそれを利用したシステムに関する。より詳細には、本発明は、緑色蛍光蛋白質が発する蛍光又は薬剤耐性等のような宿主の選択のための指標を用いてインサートの挿入の有無を簡単に判別することができるクローニングベクター及びそれを利用したシステムに関する。
背景技術
近年、国際ヒトゲノムプロジェクト及びセレーラ社に代表される研究機関において、ゲノムサイズでの大規模シーケンスの需要が世界的に広がっている。さらに今後は疾患遺伝病同定を目的にSNP(点突然変異多型)解析が盛んになり、それに伴いシーケンスの需要が急速に高まると考えられている。ゲノム(DNA)断片のクローン化は、このような配列決定方法においても、また一般的な遺伝子工学においても、極めて重要な基盤技術である。
一般にDNAのクローン化はDNA断片をベクターに挿入、大腸菌に導入後、プレート上で大腸菌コロニーを作成させて目的断片を持つコロニーを得る。挿入DNA配列(インサート)のベクターへの導入の確認は、現在のところ、β−ガラクトシターゼやGFP遺伝子の挿入失活により判別する方法が報告されている(blue−white screening or green−white screening、Yanisch−Perron et al.Gene 33 103−119(1985);Ito et al.Gene 245 59−63(2000))。しかし、この方法による判別では、インサート配列が導入される遺伝子配列(β−ガラクトシターゼ遺伝子またはGFP遺伝子)やその転写開始部位となるプロモーター配列などに有害突然変異が生じることにより、その蛋白質の機能を示さなくなるため、大腸菌コロニーの色や蛍光性を選別基準としてインサートの有無を判別する場合に、判別の効率が低くなるという問題点があった(Ito et al.Gene 245 59−63(2000))。また、このような従来法においては、プレート上で大腸菌コロニーを形成させてインサートの有無を判別しなければならないため、機械的システムを採用してハイスループット化する上で極めて難しい制約があった。
発明の開示
本発明は上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、挿入DNA配列(インサート)の導入の有無の判別を効率よく行うことができるクローニングベクター及びそれを用いたシステムを提供することを解決すべき課題とした。本発明はまた、プレート上で形質転換体のコロニーを形成させることなく、インサートの導入の有無を確認することができるクローニングベクター及びそれを用いたシステムを提供することを解決すべき課題とした。本発明はさらに、蛍光セルソーター等の装置を使用することによりインサートを有する形質転換体のみを回収して、目的DNA配列のクローン化をハイスループット化することができるクローニングベクター及びそれを用いたシステムを提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、DNA断片(インサート)が挿入されたベクターを有する形質転換体のみがGFPの蛍光を発することができるクローニングベクターを開発した。また、このクローニングベクターを使用することによりインサートの導入の有無を効率よく判別できることが分かった。またこの方法はクローニングマシンとしての蛍光セルソーター等と組み合わせることで、96穴マイクロプレートへの直接クローニングを可能にした。その結果、上記クローニングベクターを用いたクローニング操作では、従来のクローニング操作に必要であったプレートを用いたコロニー形成の工程を省くことができ、クローニング操作に要する時間を約16時間から約3時間へと大幅に短縮することができた。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、5’から3’方向に、1以上の制限酵素部位を有するクローニング部位、リボソーム結合配列、及び宿主の選択のための遺伝子を順番に有するクローニングベクターが提供される。
好ましくは、宿主の選択のための遺伝子は、薬剤耐性遺伝子、生合成経路の遺伝子、蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子、又は基質の存在下で発色、蛍光発光もしくは化学発光できる蛋白質の遺伝子から選択される遺伝子である。
さらに好ましくは、薬剤耐性遺伝子は、アンピシリン(Amp)耐性遺伝子、カナマイシン(Kan)耐性遺伝子、テトラサイクリン(Tet)耐性遺伝子、クロラムフェニコール(Cm)耐性遺伝子、又はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子であり、生合成経路の遺伝子は、グルタミン合成遺伝子又はプロリン合成酵素遺伝子であり、蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子は、緑色蛍光蛋白質又はその変異体、又はばさんご由来のDsRed遺伝子であり、基質の存在下で発色、蛍光発光もしくは化学発光できる蛋白質の遺伝子は、β−ガラクトシターゼ遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子である。
特に好ましくは、宿主の選択のための遺伝子は、緑色蛍光蛋白質又はその変異体をコードする遺伝子である。
好ましくは、リボソーム結合配列はSD配列又はコザック配列である。
好ましくは、宿主の選択のための遺伝子として、可視光下で蛍光を発する蛍光蛋白質の遺伝子を使用する。
好ましくは、宿主の選択のための遺伝子として、野生型緑色蛍光蛋白質のアミノ酸配列において64番目のアミノ酸がLeuであり、65番目のアミノ酸がThrであり、99番目のアミノ酸がSerであり、153番目のアミノ酸がThrであり、163番目のアミノ酸がAlaであり、208番目のアミノ酸がLeuであるアミノ酸配列をコードする遺伝子を使用する。
好ましくは、本発明のクローニングベクターは、さらに複製起点を有する。
好ましくは、本発明のクローニングベクターは、さらに抗生物質耐性遺伝子を有する。
本発明の一例としては、配列番号5に記載の塩基配列を有するクローニングベクターが提供される。
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のクローニングベクターを有する形質転換体が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のクローニングベクターのクローニング部位に、末端にプロモーター配列を有するDNA断片を挿入して得られる、組み換えベクターが提供される。
好ましくは、プロモーター配列はT7プロモーター配列である。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の組み換えベクターを有する形質転換体が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の組み換えベクターを用いて形質転換した宿主について、宿主の選択のための遺伝子の発現に基づく指標を判別することを含む、該ベクターのクローニング部位へのインサートの挿入の有無を判別する方法が提供される。
好ましくは、宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を使用して作製した組み換えベクターを用いる。
本発明のさらに別の側面によれば、(A)本発明のクローニングベクターのクローニング部位に、末端にプロモーター配列を有するDNA断片を挿入して組み換えベクターを作成する工程;
(B)得られた組み換えベクターを宿主に形質転換して形質転換体を作成する工程;及び
(C)得られた形質転換体中に導入されている宿主の選択のための遺伝子の発現に基づく指標を判別することにより、組み換えベクターを有する形質転換体を選別する工程;
を含む遺伝子のクローニング方法が提供される。
上記のクローニング方法において好ましくは、宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を使用して作製したクローニングベクターを使用する。また、上記のクローニング方法において好ましくは、工程(C)を蛍光セルソーター又はマイクロチップセルソーターにより行う。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のクローニングベクターは、5’から3’方向に、1以上の制限酵素部位を有するクローニング部位、リボソーム結合配列、及び宿主の選択のための遺伝子を順番に有することを特徴とする。
宿主の選択のための遺伝子の具体例としては以下のものが挙げられる。
(1)薬剤耐性遺伝子(例えば、アンピシリン(Amp)耐性遺伝子、カナマイシン(Kan)耐性遺伝子、テトラサイクリン(Tet)耐性遺伝子、クロラムフェニコール(Cm)耐性遺伝子、又はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子など)
宿主の選択のための遺伝子として薬剤耐性遺伝子を使用する場合、インサートが挿入されたクローンのみ、その薬剤の入っている培地上でコロニーを形成できるために宿主を判別することができる。
(2)生合成経路の遺伝子(例えば、グルタミン合成遺伝子又はプロリン合成酵素遺伝子など)
宿主の選択のための遺伝子として生合成経路の遺伝子を使用する場合、形質転換に用いる大腸菌を選ぶことにより(即ち、その合成酵素の欠損株を選ぶ)、インサート有りのクローンはM9などの合成培地上でコロニーを形成できる。
(3)蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子(例えば、緑色蛍光蛋白質又はその変異体、又はばさんご由来のDsRed遺伝子など)
宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を使用する場合、クローンの蛍光性の有無によりインサート挿入の有無を確認することができる。
(4)基質の存在下で発色、蛍光発光もしくは化学発光できる蛋白質の遺伝子(例えば、β−ガラクトシターゼ遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子など)
宿主の選択のための遺伝子として基質の存在下で発色、蛍光発光もしくは化学発光できる蛋白質の遺伝子を使用する場合、例えばblue−white screeningで使用されているbeta−ガラクトシターゼとX−gal、ルシフェラーゼとルシフェリン(+ATP)などの組み合わせを使用することにより、インサート挿入の有無を確認することができる。
本発明においては、宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異、体の遺伝子を使用することが好ましく、緑色蛍光蛋白質又はその変異体をコードする遺伝子を使用することが特に好ましい。
緑色蛍光タンパク質(GFP)は、クラゲの1種のエクオリア・ビクトリア(Aequorea victoria)(オワンクラゲ)に由来する蛍光タンパク質である。エクオリア・ビクトリアにおいてGFPは、カルシウムにより刺激されたエクオリン(aequorin)により産生されたエネルギーを吸収し、緑色光を発する。近紫外線または青色光により励起されると、原核細胞および真核細胞中において発現したGFPは、強い緑色蛍光を発光する。
GFPのアミノ酸配列は公知である(Pracher,D.C.,他、(1992)Gene,111,229−233)。アミノ酸残基は通常複数のDNAトリプレットによってコードされているので、野生型GFP又は変異型GFPのアミノ酸配列をコードするDNA配列は多数存在する。本発明のクローニングベクター中のGFP遺伝子はこれらのDNA配列の何れでもよい。本発明では、可視光下で蛍光を発する、又はレーザーによって励起できる各種のタンパク質発光体(例えば、緑色蛍光蛋白質又はその変異体)を使用することが好ましい。
また、本発明では変異体GFPを用いることができ、特に、緑色蛍光の強度が野生型GFPよりも高まっている変異体GFPを用いることが好ましい。そのような変異体GFPの例としては、野生型GFPのアミノ酸配列中に1個以上(例えば、1〜数個、具体的には1から30個、好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、特に好ましくは1から5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものが挙げられる。本明細書で緑色蛍光蛋白質(GFPとも略記する)という場合には、緑色蛍光性を有する変異体GFPの全てを包含するものとする。
変異体GFP遺伝子を得る方法としては、化学合成法、遺伝子工学的手法、突然変異誘発法などの当分野で既知の任意の方法を用いることができる。入手可能なGFP遺伝子を得て、これを基にして変異体GFPのDNAを得ることができる。ある遺伝子への変異導入は多くの方法により行うことができる。例えば、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。
遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。
本発明で用いるのに好適な変異体GFPの例としては、例えば、Ito et al.,1999,Biochem.Biophys.Res.Commun.264,556−560に記載されているGFPの変異体が挙げられ、具体的にはGFPuv(F99S、M153T、V163A)、GFPuv2(F99S、M153T、V163A、S208L)、GFPuv3(F99S、M153T、V163A、F64L、S65T)、およびGFPuv4(F99S、M153T、V163A、F64L、S65T、S208L)などどが挙げられる(上記において、括弧内は野生型GFPに対するアミノ酸変異を示し、例えば、F99Sは99番目のアミノ酸がFからSに置換されていることを示す)。上記の変異体GFPの中でも、GFPuv2(F99S、M153T、V163A、S208L)、GFPuv3(F99S、M153T、V163A、F64L、S65T)、およびGFPuv4(F99S、M153T、V163A、F64L、S65T、S208L)がより好ましく、GFPuv4(F99S、M153T、V163A、F64L、S65T、S208L)が特に好ましい。
例えば、宿主の選択のための遺伝子としてGFP遺伝子を使用する場合、従来法の場合のようにインサートがGFP遺伝子に挿入することによりGFPの蛍光を失活させる方法では、ベクター中にインサートが挿入された場合にのみ、GFP由来の緑色蛍光が発するようにすることはできない。そこで、本発明者らは、ベクター中に挿入するDNA配列に注目し、インサート配列の末端にプロモーター配列を付加させることとした。このようなプロモーター配列を末端に有するインサート配列をベクターに挿入した場合、インサート配列の末端のプロモーター配列の下流に存在するGFP遺伝子が発現することになり、発現したGFPの蛍光を指標とすることにより、インサートのベクターへの挿入の有無を判別することが可能となる。
本発明で用いるリボソーム結合配列は、宿主の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、宿主が大腸菌などの原核細胞の場合にはSD配列を選択することができ、宿主が酵母や動物細胞などの真核細胞の場合にはコザック配列を選択することができる。
本発明のクローニングベクターは、1以上の制限酵素部位を有するクローニング部位を有する。クローニング部位を構成する制限酵素部位の種類は特に限定されず、例えば、HindIII、SphI、XbaI、BamHI、SmaI、KpnI等のような複数の制限酵素部位を含むマルチクローニングサイトでもよい。なお、クローニング部位は、本発明のクローニングベクターの構築の際に出発材料として用いるベクター中に予め存在するものを利用してもよいし、組み換え遺伝子技術を用いてGFPベクター中に導入することもできる。
本発明のクローニングベクターは複製起点を含むことが好ましい。例えば、宿主が大腸菌である場合には、pBR322由来の複製起点、宿主が酵母である場合にはARSなどを選択することができる。
本発明のクローニングベクターは抗生物質耐性遺伝子を含むことが好ましい。抗生物質耐性遺伝子をベクター中に含めることにより、形質転換操作後の形質転換体を抗生物質含有培地で培養することにより形質転換されていない(ベクターを保持しない)宿主細胞を排除することができる。
抗生物質耐性遺伝子の種類は特に限定されず、例えばアンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子などが挙げられる。
なお、 宿主の選択のための遺伝子として薬剤耐性遺伝子を使用する場合は、当該薬剤耐性遺伝子とは異なる抗生物質耐性遺伝子を含むことが好ましい。
本発明のクローニングベクターの一例としては以下の実施例で作成したプラスミドpGFPclnが挙げられる。pGFPclnでは、GFP遺伝子の上流に、SD配列、マルチクローニングサイトを配置している(pGFPclnの構造の概略を図1に示し、pGFPclnの塩基配列を配列番号5に記載)。
本発明のクローニングベクターは、当業者により適宜製造することができる。例えば、当業者に入手可能なGFPベクターを用いてGFP遺伝子の上流にクローニング部位とリボソーム結合配列(例えば、SD配列など)を配置することにより製造することができる。
本発明はさらに、上記したクローニングベクターのクローニング部位に、末端にプロモーター配列を有するDNA断片を挿入して得られる、組み換えベクターにも関する。
インサートへ付加するプロモーター配列はその末端に外側方向へ向くように導入する。即ち、インサートの3’末端にプロモーター配列を付加する場合には、プロモーター配列の5’末端をインサートの3’末端に連結し、インサートの5’末端にプロモーター配列を付加する場合には、プロモーター配列の5’末端をインサートの5’末端に連結すればよい。
プロモーター配列とインサート配列との連結方法は特に限定されないが、例えば、プロモーター配列は以下の方法によりインサート配列に付加できる(図2)。
(1)挿入配列をPCRで増幅する際に、プライマー配列にあらかじめ導入する方法;又は
(2)挿入配列が制限酵素で切断された断片の際には、アダプター配列に導入する方法:
特にPCRによりプロモーター配列を付加する方法では、片方のみに導入することでインサートの挿入方向を決めることができる(図2)。
本発明で用いるプロモーターとしては、宿主細胞中で機能できるものであればいかなるものでもよい。例えば、T7プロモーター、trpプロモーター(P trp)、lacプロモーター(P lac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またP trpを2つ直列させたプロモーター(P trp×2)、tacプロモーター、let1プロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
酵母で機能するプロモーターとしては、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターを挙げることができる。
動物細胞で機能するプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
他の宿主を使用する場合にも、該宿主において機能する調節配列(プロモーター等)を適宜選択することができる。
上記したようにプロモーター配列を付加された目的挿入配列は、本発明のクローニングベクター中に、(I)マルチクローニング部位内の制限酵素部位、(II)T−拡張ベクター法、(III)平滑末端法を利用して連結することができる。
本発明はさらに、上記したクローニングベクター又は組み換えベクターを有する形質転換体に関する。即ち、本発明によれば、上記したクローニングベクター又は組み換えベクターを宿主に形質転換して得られる形質転換体が提供される。
本発明で用いる宿主の種類は特に限定されないが、好ましくは、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、線虫細胞、植物細胞または動物細胞から選択される。
細菌細胞、真菌細胞としては、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Bacillus属、Microbacterium属、Serratia属、Pseudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、Phormidium属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rhodospirillum属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Zymomonas属等に属する微生物を挙げることができ、好ましくはEscherichia属に属する微生物である。Escherichia属の具体例として、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、同XL2−Blue、同DH1、同DH5α、同MC1000、同KY3276、同W1485、同JM109、同HB101、同No49、同W3110、同NY49、同MP347、同NM522などが挙げられる。
酵母細胞としては、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ボンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces alluvius)等が挙げられる。
動物細胞としては、ベロ(Vero)細胞、ヒーラ(HeLa)細胞、CV1細胞、ナマルバ細胞、COS1細胞、COS7細胞、CHO細胞、並びに様々な脊椎動物、無脊椎動物、哺乳動物の細胞が含まれる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W.H.Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh5(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
本発明のクローニングベクター又は組み換えベクターを宿主に導入する方法としては、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、リン酸カルシウム法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法などを適宜選択してベクターを宿主に導入することができる。
上記方法により組み換えベクターが導入された形質転換体を用いて、宿主の選択のための遺伝子の発現に基づく指標を判別することにより、該ベクターのクローニング部位にインサートを有しているかどうかを判別することができる。
本明細書で言う「指標」とは、宿主の選択のための遺伝子として薬剤耐性遺伝子を使用する場合には、その薬剤の入っている培地上でコロニーを形成できるかどうかを言い、宿主の選択のための遺伝子として生合成経路の遺伝子を使用する場合には、合成培地上でコロニーを形成できるかどうかを言い、宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を使用する場合には、クローンの蛍光性の有無を言い、宿主の選択のための遺伝子として基質の存在下で発色、蛍光発光もしくは化学発光できる蛋白質の遺伝子を使用する場合には、該基質の存在下で呈する発色、蛍光発光もしくは化学発光の有無を言う。
即ち、本発明によれば、本発明の組み換えベクターを用いて形質転換した宿主について、宿主の選択のための遺伝子の発現に基づく指標を判別することを含む、該ベクターのクローニング部位へのインサートの挿入の有無を判別する方法が提供される。本発明の好ましい態様では、宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を使用して作製した組み換えベクターを用いて形質転換した宿主について、該宿主が発する蛍光の有無を判別することにより、該ベクターのクローニング部位へのインサートの挿入の有無を判別する。
さらに、本発明によれば、
(A)本発明のクローニングベクターのクローニング部位に、末端にプロモーター配列を有するDNA断片を挿入して組み換えベクターを作成する工程;
(B)得られた組み換えベクターを宿主に形質転換して形質転換体を作成する工程;及び
(C)得られた形質転換体中に導入されている宿主の選択のための遺伝子の発現に基づく指標を判別することにより、組み換えベクターを有する形質転換体を選別する工程;
を含む遺伝子のクローニング方法が提供される。
上記クローニング方法において、好ましくは、宿主の選択のための遺伝子として蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を使用して作製したクローニングベクターを使用し、工程(C)を蛍光セルソーター又はマイクロチップセルソーターにより行う。
本発明の一例としてGFPベクターを用いたハイスループットシステムの構成図を図3に示す。本発明のGFPベクターを用いたハイスループットシステムおいては、1日で2〜3,000個のクローンを処理することが可能であり、従来法と比較して処理効率を著しく向上させることができる。
インサートの有無に関わらず、GFP遺伝子の発現に関わる配列への有害突然変異を持つクローンは蛍光性を持たない。そのためインサートを持つクローンのみが蛍光発光する本発明の判別方法は、従来法とは異なり、アーティファクト(ここではインサートを持たないクローンが蛍光発光する)が現れにくい。
また蛍光セルソーターの使用により、インサートを持つ蛍光性大腸菌クローンのみを回収することができる。さらに、このような蛍光性の大腸菌一個ずつ96穴マイクロプレートの各ウェルにソートすることで簡単にそれらをクローン化することができる(直接クローニング)。この方法は従来法のようなプレート上でのコロニー形成にかかる時間を省くことができ、かつ目的DNA配列のクローン化をハイスループットに行うことができる。
発現GFPベクターと蛍光セルソーターを用いた遺伝子クローニングについてより具体的に記載する。
先ずシーケンスしたいDNA配列の片方にT7プロモーターをもつプライマーを用いてPCRを行い、pGFPclnベクター(以下の実施例に記載)とライゲーションする。ライゲーション産物をDH5α(DE3)株へトランスフォーメーションする(エレクトロポレーション、ケミカル法のどちらでもよい)。これをSOB5mlに移し、37℃で30分間振とうさせたのち、IPTGを最終濃度0.1mMになるように加え誘導する。
その後、37℃で3時間インキュベートした後、FACS Vantage SE(Becton Dickinson)EPICS ALTRA(Beckman−Coulter)を用いて、GFPが発現している大腸菌をソートし、96穴プレートのウエルそれぞれに一つの大腸菌を分注する。この際、アルゴンイオンレーザーを用いて励起し、FITC用のフィルターを用いて蛍光を測定する。上記したGFP発現ベクターを選択するためのマイクロチップセルソーターの概念図を図4に示す。大腸菌1個が流れる50μm径の流路に、蛍光検出器を設け、蛍光の強度で挿入の有無を識別する。この結果によって、2つの弁のうちの一方を開閉し、挿入された大腸菌のみを96穴プレートに分注する。96穴プレートに分注された大腸菌は、37℃で16時間インキュベーションし、ミニプレップ後、シーケンスする。
本出願の優先権主張の基礎となる出願である特願2001−138214号の明細書に開示した内容は全て引用により本明細書に開示したものとする。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
実施例
実施例1
方法:
(1)プラスミドベクターの構築
プラスミドpGFPclnは、pGFPgcn4(Ito et al.Biochem.Biophys.Res.Commun 264 556−5608(1999))を用いて以下の通り作製した。即ち、pGFPgcn4のマルチクローニング部位とGFP遺伝子の間へSD配列を導入し、lacプロモーター及びSD配列を含むHindIII/BsmBI間を欠失させ、さらにGFP遺伝子のN末端へT7tagを導入することにより作製した。図1にプラスミドpGFPclnの構造を示す。プラスミドpGFPclnの塩基配列を配列表の配列番号5に示す。
(2)PCRによりプロモーター配列を付加したインサートのベクターへの挿入 モデル挿入配列として、EYFP遺伝子、及びプライマー間に60bpのランダムヌクレオチドを持つ100bpをそれぞれPCR産物として使用した。
EYFP遺伝子は、pEYFP(Clontech)をテンプレート配列とし、DNAオリゴマー1(5’−TCAGCGGGTACCCTATAGTGAGTCGTATTATTNNNTTACTTGTACAGCTCGTCCAT−3’(配列番号1))及びDNAオリゴマー2(5’−TGACTGAAGCTTATGGTGAGCAAGGGCGAGGA−3’(配列番号2))をプライマー(下線は制限酵素部位を示す。NはA、G、C又はTの何れかの塩基を示す)として用いて、ExTaq DNA polymerase(TAKARA、下記方法1及び2にの場合)またはTaq DNA polymerase(TAKARA、下記方法3の場合)を用いてPCRを行うことにより作製した。なお、配列番号1の中の13番目から30番目のCTATAGTGAGTCGTATTAはT7プロモーター配列を示す。
ランダム配列を持つ100bpはEliらの方法により得た(Eli P.et al,J.Biochem.125 790−794(1999))。
インサートのベクターへの挿入は以下の3通りで行った。
1.制限酵素部位を利用した場合
プラスミドpGFPcln及び上記PCR産物をそれぞれHindIII及びKpnIで切断し、それぞれアガロース電気泳動による分離をしてDNAを抽出した後、T4DNAリガーゼにより連結した。
2.平滑末端法
プラスミドpGFPclnをSmaIで切断、大腸菌由来のアルカリホスファターゼ処理後、上記PCR産物と連結した。
3.T−拡張ベクター法
T−拡張ベクターの作成は平滑末端に切断する制限酵素をSmaIとした以外は、Ito et al.:Gene 245 59−63(2000)と同様の方法で行った。
PCR法を用いたプロモーター配列のインサートへの付加方法を図2の上段に示す。
(3)形質転換及びインサート有無の確認
上記(2)で作製した連結産物を、JM109(DE3)株(Stratagene)、またはλDE3 Lysogenization Kit(Novagen)を使用して作成した大腸菌DH5α(DE3)株に形質転換し、75μg/mlのアンピシリンを添加したLBプレートへまき、37℃で18時間インキュベートした。コロニーの蛍光性の有無は自然光下で判定した。自然光照射における蛍光性及び非蛍光性大腸菌JM109(DE3)株を図5に示す。
蛍光性クローンのインサート有無の確認は、マルチクローニング部位を挟むオリゴマー5(5’−ATTCAACAAGAATTGGGACA−3’(配列番号3))及びオリゴマー6(5’−CATTTTTATCCATAAGAAGATTAGCGGAT−3’(配列番号4))をプライマーとしたコロニーPCR法(Ito et al.Gene 245 59−63(2000))、並びにミニプレップ法によるプラスミドを抽出し、制限酵素処理によりインサートを回収することにより行った。得られた断片は1%または1.5%アガロースゲル電気泳動及びエチジウムブロマイド染色で確認した。インサート配列決定はDNAシーケンサー(Genetic Analyzer 310,ABI)により行った。
(4)蛍光セルソーターを用いた直接クローニングの確認
上記した平滑末端法により作成したEYFP導入プラスミド100ngとプラスミドpGFPcln 100ngを混合し、DH5alpha(DE3)株へケミカル法にてトランスフォーメーションした。75μg/mlのアンピシリンを添加したLB培地を加え、37℃にて16時間、振蕩培養を行った。サンプルはPBSで希釈後、蛍光セルソーター(FACS Vantage SE,Becton Dickinson)で測定した。Arイオンレーザーは波長488nmを使用し、蛍光フィルターはFiTC用のものを使用した。蛍光性大腸菌のソーティング方法はベクトンディキンソん社のマニュアルに従った。96穴プレートへのソーティング条件は一個/ウェルで行った。96穴プレートの各ウェルの蛍光性の有無はイメージアナライザー(Molecular Imager FX,Bio−Rad)により評価した。
結果及び考察:
(1)プラスミドベクターについて
ベクター内のインサートの有無は大腸菌のGFPの蛍光性の有無により判断する。そこで、本実施例では、蛍光性の有無の判断を行いやすくするために、大腸菌内でのGFPの蛍光強度が高いGFPuv4(Ito et al.Biochem.Biophys.Res.Commun 264 556−5608(1999))を利用した。今回はN末端のマルチクローニングサイトを持つLacZ由来の24アミノ酸に代わりT7 tag配列(NH2−MASMTGGQQMGA−COOH)を使用した。インサートに導入するプロモーター配列は、その配列長が短くかつプロモーター強度の高いT7プロモーター配列(Rosenberg,A.H.et al.Gene 56 125−135(1987))を用いた。作成したクローニングベクターをキャリブレーションするため、EYFP遺伝子をモデル挿入配列として、PCR法によりプロモーターをそれに付加し、(I)マルチクローニング部位内の制限酵素部位(今回はHindIII及びKpnIを使用した。)、(II)T−拡張ベクター法、(III)平滑末端法により、クローニングベクターと連結、そして大腸菌JM109(DE3)株またはDH5α(DE3)株に形質転換した。
(2)コロニーの蛍光性について
インサートの連結産物を形質転換した大腸菌コロニーを図5に示す。GFPuv4のT拡張ベクターを用いた方法(Ito et al.Gene 245 59−63(2000))と同様に、緑色蛍光性及び非蛍光性の2種類のコロニーが現れた。それぞれは自然光照射でさえ簡単に区別することができた。また蛍光性コロニーのPBS懸濁液の蛍光スペクトルはGFPの形のみを示し、EYFP由来のピークは現れなかった。このことは緑色蛍光コロニーの蛍光性は大腸菌内のGFPの発現によるものであることを示す。プラスミドpGFPclnを形質転換した大腸菌DH5α(DE3)株またはJM109(DE3)株のコロニーは緑色蛍光を示さなかった。
本来大腸菌DH5α(DE3)株またはJM109(DE3)株ではIPTGによりT7 RNA polymeraseは発現を誘導されるべきであるが、微量に発現することが知られている。しかしIPTG無添加条件下にもかかわらず、肉眼で大腸菌コロニーの蛍光性の有無を区別できた。また、液体培地を用いた培養後の結果もコロニーと同様に、IPTG無添加条件でも蛍光性の有無が確認できた。
(3)蛍光性クローンのインサート確認について
得られた蛍光性クローンとインサート配列の有無との関係を確認した。ランダムに選んだ各インサート導入方法により得られた蛍光性の形質転換クローンの各48個はすべてインサートを持っていた。
T−拡張ベクター法及び平滑末端法により連結されたインサートの挿入方向は2種類存在し、その確率は1/2であると期待される。ランダムに選んだクローン16個を配列決定したインサートはすべて同方向であった。以上の結果より、本システムではインサートを方向づけてベクターに導入することが示された。
(4)挿入失活による従来法との判別効率の比較
従来の挿入失活によるシステムと本システムとの判別効率を比較した。ランダム配列を含む100bpをテスト配列として使用し、T−拡張ベクター法により形質転換産物を得た。EYFP遺伝子を導入した際と同様に、蛍光性及び非蛍光性の2種類の大腸菌クローンが得られた。ランダムにサンプリングした110個の蛍光性クローンはすべてインサートを持っていた(図6)。同様の実験をGFP遺伝子の挿入失活により判別した報告では判別効率は94%であった(Ito et al.:Gene 245 59−63(2000))。このことは本システムの非常に高い判別効率を持つことを示している。
(5)蛍光セルソーターを用いた直接クローン化について
蛍光性及び非蛍光性大腸菌の混合集団より、蛍光性クローンを96穴プレートへ一個/ウェルの条件でソートした。ソートした大腸菌がクローンであることを確認するため、各ウェル上にて75μg/mlアンピシリンを添加したLB寒天培地を作成し、使用した。蛍光性クローンのみを96穴プレートへソートした結果、5ウェルに各一個ずつ蛍光性コロニーが現れた(図7)。また、そのコロニーの形は、それらがクローンであることを示した。
実施例2:発現用プラスミドpGFPEx
方法
(1)プラスミドの構築
発現用プラスミドpGFPExはpGFPgcn4(Ito et al.Biochem.Biophys.Res.Commun 264,556−5608(1999))の(1)GFP遺伝子上流へのマルチクローニング部位とSD配列の導入、(2)lacプロモーター及びSD配列を含むHindIII/PvuII間へプラスミドpBAD22由来のAraC遺伝子及びPBADプロモーター配列の導入、(3)GFP遺伝子のN末端へT7tag配列、C末端へ分解用タグ配列(NH2−AANDENYALAA−COOH,Andersen et al.Applied and Environmental Microbiology 64,2240−2246(1998))の導入、により作成した(図8)。
(2)挿入したEYFP遺伝子の発現
EYFP遺伝子を含むPCR産物はpEYFP(Clontech)をテンプレート配列に、オリゴマー(配列番号1および配列番号7)をプライマーに、ExTaq DNA polymerase(TAKARA)を用いてPCR法により得た。プラスミドpGFPEx及びEYFP遺伝子のPCR産物をそれぞれHindIII及びKpnIで切断し、それぞれをアガロース電気泳動による分離そしてDNA抽出後、T4 DNAリガーゼにより連結した。この連結産物を大腸菌DH5α(DE3)株またはDH5α(DE3)pLysS株へ形質転換、75μg/mlアンピシリンを添加したLBプレートへまき、37℃で18時間インキュベートした。
緑色コロニーを75μg/mlアンピシリンを添加したLB培地で37℃培養した。660nmでの濁度が0.3の時、アラビノース(最終濃度0.2%)またはIPTG(最終濃度0.1mM)を加え、さらに2時間培養した。
培養液をPBSにより置換、660nmでの濁度を0.1へ希釈後、励起波長488nmにより、蛍光波長450−600nm間の蛍光スペクトルを測定した(F2000,HITACHI)。
オリゴマー配列;イタリック太文字はSD配列、開始コドン部位(ATG)を示す。
結果及び考察;
(1)クローニング・発現用プラスミドpGFPExに関して
挿入する遺伝子の蛋白質発現を行うため、マルチクローニングサイトの上流にプロモーター配列を導入した。今回は大腸菌内での挿入遺伝子の発現を確認するため、転写調節をコントロールできるPBADプロモーター配列(Guzman et al.J.Bacteriol.177,4121−4130(1995))を使用した。
GFPは一度フォールディングすると、大腸菌内においても、安定に存在することが知られている。しかし本発現ベクターによる緑白スクリーニング後は、大腸菌内にGFPがない方が望ましい。そこで発現したGFPの分解を促進するため、degradation tag配列をGFPのC末端に導入した。
(2)プラスミドpGFPExを用いたEYFP遺伝子のクローニングとその発現
EYFP遺伝子をオリゴマー(配列番号1及び配列番号7)を用いてPCRを行い、インサートとした。このインサートにはHindIII認識部位方向(翻訳開始コドンの上流)にSD配列、Kpnl認識部位にT7プロモーター配列を有している(図9)。このインサートを用いてpGFPExベクターに導入し、大腸菌DH5α(DE3)株またはDH5α(DE3)pLysS株を形質転換した。
プラミスドpGFPclnを用いたシステムと同様に、インサートの連結産物を形質転換した大腸菌コロニーは蛍光、非蛍光の2種類であった。またその蛍光発光した大腸菌23クローンを無作為に選び、コロニーPCR法によりインサートの有無を確認した。その結果、選んだすべての蛍光性クローンはインサートを有していた。また上記とは別に無作為に選んだ8クローンの塩基配列解析結果は、すべてのクローンに関してインサートは同一方向、すなわち構築通りにPBADプロモーターの下流にSD配列そして翻訳開始コドンがみられたことを示した。
これらのクローンを、75μg/mlアンピシリンを添加したLB培地による液体培養を行い、660nmにおける濁度が0.3の時にIPTGまたはアラビノースを添加し(それぞれ最終濃度0.1mM,0.2%)、さらに2時間蛋白質を誘導発現した。またコントロール実験として、誘導なしの条件でも行った。それらの培養液をPBSで置換後、励起波長488nmにおける蛍光スペクトルを測定した結果を図に示す。IPTG誘導した場合はGFP特有の510nmのみにピークがみられ、アラビノース誘導した場合はYFP特有の526nmのみにピークがみられた。また誘導なし条件ではGFP、YFPのどちらのピークも示さなかった(図10)。
以上の結果は、プラスミドpGFPExに挿入したEYFP遺伝子が上流のPBADプロモーターにより誘導発現されたことを示している。
産業上の利用の可能性
本発明により、挿入DNA配列(インサート)の導入の有無の判別を効率よく行うことができるクローニングベクターを提供することが可能になった。本発明のクローニングベクターは、プレート上で形質転換体のコロニーを形成させることなく、インサートの導入の有無を確認することができ、また蛍光セルソーター等の装置を使用することによりインサートを有する形質転換体のみを回収して、目的DNA配列のクローン化をハイスループット化することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1はプラスミドpGFPclnの構造を示す。
図2は、プロモーター配列のインサートへの付加方法を示す。上図はPCR法を示し、下図はアダプター法を示す。
図3は、GFPベクターを用いたハイスループットシステムを示す。
図4は、GFP発現ベクターを選択するためのマイクロチップセルソーターの概念図を示す。大腸菌1個が流れる50μm径の流路に、蛍光検出器を設け蛍光の強度で挿入の有無を識別する。この結果によって、2つの弁のうち一方を開閉し、挿入された大腸菌のみを96穴プレートに分注する。
図5は、自然光照射における蛍光性及び非蛍光性大腸菌JM109(DE3)株を示す。大腸菌は、T7プロモーターを付加したEYFPのPCR産物をT拡張ベクター法によりライゲーションした形質転換産物である。アンピシリンを添加したLBプレートを37℃18時間培養した。左の矢印はDNAが挿入されたベクターをもつ大腸菌コロニーを示し、右の矢印はDNAが挿入されていないベクターをもつ大腸菌コロニーを示す。
図6は、蛍光コロニーをコロニーPCRしてインサートを確認した結果を示す。
図7は、セルソーターによってGFP発現大腸菌が選択されたことを示す。矢印はLB寒天培地を加えた96穴プレート内にセルソーター(FACS)で選択されたGFP発現コロニーを示す。選択されたコロニーは全てGFPが発現している(インサートDNAが挿入されている)。
図8はプラスミドpGFPExの構造を示す。
図9は、EYFP遺伝子を含むインサート配列の構造を示す。
図10は、EYFP遺伝子を挿入したpGFPExベクターを持つ大腸菌DH5α(DE3)pLysS株の488nm励起での蛍光スペクトルを示す。IPTG誘導ではGFPのピークが、アラビノース誘導ではEYFPのピークがそれぞれ見られる。
Claims (10)
- 5’から3’方向に、1以上の制限酵素部位を有するクローニング部位、リボソーム結合配列、及び宿主の選択のための遺伝子を順番に有するクローニングベクターのクローニング部位に、末端にプロモーター配列を有するDNA断片を挿入して得られる組み換えベクターを用いて形質転換した宿主について、宿主の選択のための遺伝子の発現に基づく指標を判別することを含む、該ベクターのクローニング部位へのインサートの挿入の有無を判別する方法において、宿主の選択のための遺伝子が、蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子であり、プロモーター配列がT7プロモーター配列であり、宿主がT7 RNAポリメラーゼを発現する大腸菌である、上記の方法。
- 宿主の選択のための遺伝子が、緑色蛍光蛋白質又はその変異体をコードする遺伝子である、請求項1に記載の方法。
- リボソーム結合配列がSD配列又はコザック配列である、請求項1又は2に記載の方法。
- 宿主の選択のための遺伝子として、可視光下で蛍光を発する蛍光蛋白質の遺伝子を使用する、請求項1から3の何れかに記載の方法。
- 宿主の選択のための遺伝子として、野生型緑色蛍光蛋白質のアミノ酸配列において64番目のアミノ酸がLeuであり、65番目のアミノ酸がThrであり、99番目のアミノ酸がSerであり、153番目のアミノ酸がThrであり、163番目のアミノ酸がAlaであり、208番目のアミノ酸がLeuであるアミノ酸配列をコードする遺伝子を使用する、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
- さらに複製起点を有する、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
- さらに抗生物質耐性遺伝子を有する、請求項1から6の何れかに記載の方法。
- クローニングベクターが配列番号5に記載の塩基配列を有するクローニングベクターである、請求項1から7の何れかに記載の方法。
- (A)5’から3’方向に、1以上の制限酵素部位を有するクローニング部位、リボソーム結合配列、及び蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子を順番に有するクローニングベクターのクローニング部位に、末端にT7プロモーター配列を有するDNA断片を挿入して組み換えベクターを作成する工程;
(B)得られた組み換えベクターを、T7 RNAポリメラーゼを発現する大腸菌に形質転換して形質転換体を作成する工程;及び
(C)得られた形質転換体中に導入されている蛍光蛋白質又はその変異体の遺伝子の発現に基づく指標を判別することにより、組み換えベクターを有する形質転換体を選別する工程;
を含む遺伝子のクローニング方法。 - 工程(C)を蛍光セルソーター又はマイクロチップセルソーターにより行う、請求項9に記載の遺伝子のクローニング方法。
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