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JP4549293B2 - 二酸化炭素固定化擁壁 - Google Patents
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JP4549293B2 - 二酸化炭素固定化擁壁 - Google Patents

二酸化炭素固定化擁壁 Download PDF

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本発明は、法面などの保護や補強に用いられる擁壁構造に関し、詳細には、セメント系材料の反応を利用して大気中の二酸化炭素を効率よく固定化する表面を有する二酸化炭素固定化擁壁に関する。
我国のCO排出量は年間約12億5000万トンに達し、世界の約5.1%を占めるに至っている。1997年の京都議定書における我国のCO排出量削減の目標値は1990年比6%削減であるが、現行の対策では、7%の増加となることが予想され、内閣に設置された地球温暖化対策推進本部を中心に関係各分野での早急な有効方策の実施が求められている。
一方、CO抑制対策の柱の一つに「革新的技術開発の強化」が揚げられており、省エネ、太陽光発電などの技術と並んで、いったん排出されたCOを貯蔵・固定化する技術の開発が揚げられている。具体的な研究課題として、プランクトンなどの海洋生物や、樹木などの利用技術、電気化学的手法、地中隔離などの技術が提案されているが、COをいかに効率よく、低コストで固定するかが将来的な課題として研究途上である。
土木建築構造物に使用されるセメントコンクリートは、硬化後、主要な化学成分である、水酸化カルシウムや、カルシウムシリケート水和物が大気中のCOと反応し、炭酸カルシウムを生じる過程で徐々にアルカリ性を失う、いわゆる炭酸化・中性化現象を生じる性質がある。炭酸化・中性化現象は、コンクリート中の鉄筋の発錆につながるため、従来は炭酸化を抑制する技術が多く研究されてきた。本発明は、逆にこの反応を利用することにより、建物の外壁を構成するセメントコンクリート成型体にCOを積極的に固定する技術を提案するものである。
一般のコンクリートの炭酸化反応は、硬化したセメント水和物に含まれる水酸化カルシウムが大気中よりコンクリートに浸透した二酸化炭素と反応し炭酸カルシウムを生じる以下の反応式で表すことができる。
Ca(OH) + CO → CaCO + H
上式の反応により、大気中の二酸化炭素が炭酸カルシウムとしてコンクリート中に固定され、大気中の二酸化炭素がコンクリート成型体への固定化により減少することになる。コンクリート中の炭酸カルシウムは安定な反応物として存在し、極めて分解しにくいため、二酸化炭素はそのままコンクリート中に固定される状態が続く。このような反応は、通常、大気中の二酸化炭素が徐々にコンクリート成型体中に浸透、拡散し、セメント水和物中に含まれる水酸化カルシウムと接触することにより生起、進行する。
従来、一般的に使用されるコンクリート成型体は、コンクリートの微細構造が緻密であり、気体の拡散係数が小さく、大気中の二酸化炭素の浸透速度は極めて緩慢であるため、上式で表される如き炭酸化の進行速度は極めて緩やかであり、大気中の二酸化炭素を固定化する特性は極めて弱いといえる。例えば、一般の土木建築物のコンクリートでは、表層から20mm程度の深さまで炭酸化反応が進行するには約50年程度の時間を要し、コンクリート中への二酸化炭素の固定量も限定されている。
一方、コンクリート成型体に透水性、通気性を与えたり、爆裂を防止するなどの目的で、種々の多孔質コンクリートが提案されている。
例えば、骨材とセメントとの配合量を調整し、骨材間に空隙を保持させて多孔質コンクリートを得る方法(例えば、特許文献1〜3参照。)や、軽量気泡コンクリートいわゆるALCコンクリートのように大量の空気をコンクリート中に連行する方法、空隙形成材料をコンクリート組成物に混入し、硬化後に空隙材料を収縮或いは分解させ空隙を形成する方法(例えば、特許文献4参照。)などが提案されている。しかしながら、これらの方法では、形成される空隙の体積が大きいため、コンクリートの圧縮強度や曲げ強度など力学特性が大きく損われる欠点があり、また、空隙面積が大きいために、二酸化炭素の吸着に有用なコンクリート表面積の増加が十分に得られず、二酸化炭素を効果的に固定化するには至ってはいなかった。
また、耐爆裂性のコンクリート組成物は、セメントや骨材に加えて熱分解性の有機繊維などを含有するものであるが(例えば、特許文献5参照。)、この組成物は高温に晒されて初めて空気や水蒸気を透過させるための微細な空隙を生じるものであり、通常時には二酸化炭素を浸透、吸着させる機能を有しないものである。
特開平8−105052号公報 特開平9−205875号公報 特開平11−268969号公報 特開2003−277164公報 特開2000−143322公報
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、任意の法面に容易に形成することができ、大気中の二酸化炭素を効果的に固定化しうる表面を有効に配置してなる二酸化炭素固定化擁壁を提供することにある。
本発明者らは、モルタル、コンクリート中へ大気中の二酸化炭素を大幅に浸透しやすくし、効率よく二酸化炭素を固定化しうる炭酸化反応を非常に促進するコンクリート組成物を利用し、擁壁の形状をいかして十分な大気との接触面積を与えることで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は以下に示す構成である。
<1> 斜面の表面保護を目的として形成される擁壁であって、水、セメント、混和材料、骨材を含有するコンクリート組成物を硬化して得られ、直径10μm〜200μmの空隙もしくは同径の断面を有する空洞孔を0.05容積%〜10容積%設けてなる表層部を有する構造体に、該表層部が大気に接触するように設けられた水抜き孔を有し、該表層部において大気中の二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化擁壁。
<2> 前記擁壁が、水、セメント、混和材料、骨材に、アルカリ分解性樹脂微粒子、アルカリ分解性樹脂からなる有機繊維、紫外線分解性樹脂微粒子、及び、紫外線分解性樹脂からなる有機繊維のうち少なくとも1種を含有する二酸化炭素固定化コンクリート組成物を打設し、硬化して形成されたものである<1>記載の二酸化炭素固定化擁壁。
<3> 前記水抜き孔が前記コンクリート組成物の打設時に型枠中に挿入した円筒型部材を、該コンクリート組成物の硬化後に除去することにより形成される<1>又は<2>に記載の二酸化炭素固定化擁壁。
<4> 前記擁壁が、水、セメント、混和材料、骨材に、アルカリ分解性樹脂微粒子、アルカリ分解性樹脂からなる有機繊維、紫外線分解性樹脂微粒子、及び、紫外線分解性樹脂からなる有機繊維のうち少なくとも1種を含有する二酸化炭素固定化コンクリート組成物を硬化して得られた擁壁用コンクリートブロックを、少なくとも一部に水抜き用の空隙を形成するように配置して積層し、斜面に固定して形成されたものである<1>記載の二酸化炭素固定化擁壁。
<5> 前記擁壁用コンクリートブロックの斜面への固定が、擁壁用コンクリートブロックと斜面との間に裏込め砕石を充填することで行われる<4>記載の二酸化炭素固定化擁壁。
<6> 前記二酸化炭素固定化擁壁の二酸化炭素固定化量が0.8kg/m以上であることを特徴とする<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化擁壁。
前記二酸化炭素固定化擁壁を構成する材料としては、前記したように、水、セメント、混和材料、骨材に、アルカリ分解性樹脂微粒子、アルカリ分解性樹脂からなる有機繊維、紫外線分解性樹脂微粒子、及び、紫外線分解性樹脂からなる有機繊維のうち少なくとも1種を含有する二酸化炭素固定化成形体形成用コンクリート組成物が挙げられる。このようなコンクリート組成物は、混練し、硬化した後、アルカリ或いは紫外線によりコンクリート組成物中に含まれる樹脂微粒子もしくは樹脂からなる有機繊維が分解し、二酸化炭素の固定化に有用な空隙を有する表層部が形成され、高い二酸化炭素固定化能を発現する。
二酸化炭素固定化成形体形成用コンクリート組成物には、前記空隙を形成するための分解性有機材料に加え、二酸化炭素吸収を有する種々の化合物を添加することができる。
擁壁を形成するには、表面保護を必要とする地山の所定領域を掘削し、形成する斜面(法面)に適合するような型枠を設置し、二酸化炭素固定化コンクリート組成物を打設して形成してもよく、また、このような二酸化炭素固定化コンクリート組成物により、予め、擁壁形成に適する形状に成形した擁壁用コンクリートブロックを、地山を掘削した所定領域の保護しようとする法面の形状に適合するように積層し、固定することもできる。
ここで、掘削の形態や擁壁の固定化態様は、擁壁を構築する現場の状況によって異なり、状況に応じて、盛り土を行ったり、杭基礎を用いるなどの種々の手段を適用することができる。
なお、本発明の二酸化炭素固定化擁壁の二酸化炭素固定化量は、前記の如く0.8kg/m以上であることが好ましい。通常のコンクリート構造物の表面における二酸化炭素固定化量は、0.30〜0.40kg/mであることを考慮すれば、この二酸化炭素固定化擁壁が優れた二酸化炭素固定化能を有することがわかる。
セメントモルタル、コンクリートの炭酸化は、セメントの水和反応によってセメント水和物中の細孔中に生じた水酸化カルシウムが大気中よりコンクリート中に浸透した二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなる反応によって生じる。炭酸カルシウムは化学的に安定な化合物であり、通常の環境条件のコンクリート中では分解されにくいため、コンクリート中に浸透した二酸化炭素は炭酸カルシウムとしてコンクリート中に固定されることになる。
本発明の擁壁は、モルタル、コンクリート中のセメント水和物の炭酸化反応を促進するため、より多くの二酸化炭素がモルタル、コンクリート中に浸透するよう、モルタル、コンクリートの表層部に多数の微細な空隙が形成されるように形成されており、任意の法面などに配置することで、法面の保護と、空気中の二酸化炭の優れた固定化能とを発現させることができる。
本発明によれば、任意の法面に容易に形成することができ、大気中の二酸化炭素を効果的に固定化しうる表面を有効に配置してなる二酸化炭素固定化擁壁を提供することができる
本発明の二酸化炭素固定化擁壁は、法面など、地山の斜面の保護のため形成配置されるものであって、水、セメント、混和材料、骨材を含有するコンクリート組成物を硬化して得られ、直径10μm〜200μmの空隙もしくは同径の断面を有する空洞孔を0.05容積%〜10容積%設けてなる表層部を有し、該表層部において大気中の二酸化炭素を固定化する。
以下、本発明の態様を、図を参照して説明する。
図1は、本発明の二酸化炭素固定化擁壁10の一態様を示す断面図である。
二酸化炭素固定化擁壁10は、地山を掘削して形成した所定の領域に、形成しようとする擁壁構造に適合する形状の型枠を形成し、該型枠内に二酸化炭素固定化能に優れたコンクリート組成物を打設して形成してなる。この場合、形成された擁壁10は地山の背面土砂12の斜面を保護する機能を有する。図1に示す態様では、擁壁10の下端は、前面土砂14中に埋没して、保持されているが、下端は必ずしも土砂14に埋没されていなくてもよい。
二酸化炭素固定化擁壁10には、所定の間隔で水抜き孔16が形成されているが、この水抜き孔16は内部の表層部が大気に直接接触するように設けられている。このような水抜き孔16は、二酸化炭素固定化擁壁10を形成する際に、原料コンクリート組成物に所定の間隔で、例えば、擁壁構造を貫通する円筒形の部材を配置し、コンクリート組成物が硬化した後にそれを抜き取る方法、原料コンクリート組成物に所定の間隔で、擁壁構造を貫通する円筒形のメッシュ材料を配置し、その後、コンクリート組成物を硬化させる方法、水溶性、生分解性の材料で形成した円筒型部材を配置し、それらの溶解、分解などにより開口部を形成する方法などをとることができる。
水抜き孔16の背面土砂12側の開口部には、土砂の流入による開口部の詰まりを防止し、水の流出を妨げない多孔質材料からなる目詰まり防止材(ドレーン材)18を配置することが好ましい態様である。
ここで用いうるドレーン材としては、背面の開口孔をプラスチック製ネット状シート(例えば、ネトロンシート、商品名:大日本プラスチック株式会社製)や不織布製の透水防砂材で保護し、その背面に裏込め砕石を入れる方法や、立体網状構造のマット(例えばヘチマロン、商品名:新光ナイロン株式会社製)を設置する方法が挙げられる。
通常、水抜き孔は、擁壁構造中に中空の水抜きパイプを配置して設けるものであるが、このように、水抜き孔12をその内面も大気と直接接触するように形成することで、二酸化炭素固定化擁壁10は、その表面のみならず、水抜き孔12の内表面からも二酸化炭素を吸着、固定化することができるため、擁壁10構造全体における二酸化炭素固定化能が向上する。図1において斜線で示した領域は二酸化炭素固定化領域を模式的に示すものであり、二酸化炭素固定化能の向上に水抜き孔16が有用であることがわかる。
水抜き孔16の開口形状は円型、楕円形に限らず種々の形状をとることができる。図2(A)〜(D)は、水抜き孔の開口形状の例を示す。製造容易性の観点からは図2(A)や(B)に示す円形や直方体、或いは、楕円などの形状が好ましいが、大気と接触する表面積が大きいといった観点からは、図2(C)や(D)に示す形状も好ましい。
水抜き孔16の開口径は本来の排水性能を確保するといった観点からは、40〜200mmであることが好ましい。
水抜き孔16は所定の間隔をもって形成され、その間隔、或いは、単位面積当たりの形成数は、背面土砂の特性、形成される環境、開口径の大きさなどを考慮して適宜選択されるが、一般的には、2m当たり、直径100mmの開口部0.5〜1カ所程度である。この開口部を形成しうる市販の塩化ビニル管としては、VP40(呼び径40mm)、VP50(呼び径50mm)、VP75(呼び径75mm)、VP100(呼び径100mm)、VP125(呼び径125mm)などがあり、これを擁壁を形成する際の型枠内に固定し、コンクリート硬化後に抜き取ることで、本発明に係る水抜き孔を形成することができる。
例えば、VP100を用いて2m当たり1カ所の水抜き孔を形成しても、VP50を用いて2m当たり4カ所の水抜き孔を形成しても、得られる排水量はほぼ同じであり、これらは外観などを考慮して選択すればよい。
水抜き孔の設置箇所は任意であるが、排水効果の観点からは、前面の埋戻し土砂の天端から30cm程度上方に設置することが好ましい。
ここでは、水抜き孔の形成に、塩化ビニル管を抜く方法を採用しているが、水抜き孔の内表面を通気性の素材で被覆して形成することもできる。
水抜き孔の内表面保護のための材料としては、通気性と強度との両立という観点から、発泡アルミニウム(多孔質のアルミニウムシートであり、市販品としては、例えば、アルポラス、商品名:神鋼鋼線工業株式会社製がある)、メッシュアルミ(エキスパンドメタル)や孔開け加工アルミ(パンチングメタル)などが挙げられ、これらの素材により水抜きパイプを作製し、設置することで、塩化ビニル管を用いた場合の如き撤去の手間が省け、空気透過性能を持つ水抜きパイプとして有用である。また、プラスチック製ネット状シート等でも打設時の衝撃に打得うる強度であれば使用可能であり、地下排水によく用いられる有孔管(多孔質管、市販品としては、例えば、カナパイプ、商品名:カナフレックスコーポレーション株式会社製などがある)も使用可能である。
これら通気性の素材で形成されたパイプに不織布を巻き付けて使用すると、コンクリートの細かい骨材の施工中における流出を抑制できるため、さらに好ましい。
図3(A)は、擁壁用の大型コンクリートブロック22を用いて形成した擁壁20の例を示す断面図である。ここでは、図3(B)の正面図で示すように、水抜き孔24は、擁壁用コンクリートブロック22の切り欠きの部分を利用し、そこに、前記したような塩化ビニル管や通気性素材からなるパイプを配置し、間詰めを行って形成されている。塩化ビニル管を用いた場合には、間詰めが硬化した後、抜き取ることが必要となる。また、大型ブロックの場合には、予めブロック自体に水抜き孔が形成されていてもよい。
擁壁用コンクリートブロック22と、背面土砂12との間には、裏込め石26が充填され、この裏込め石26により擁壁用コンクリートブロック22が固定されている。裏込め石26の間には空隙が形成され、通気性を有することから、二酸化炭素は擁壁用コンクリートブロック22の外表面、水抜き孔24の内表面のみならず、裏込め石26の間隙に接する裏面の地山12側からも吸収、固定化される。通常、擁壁用コンクリートブロック22の最上部には、これらのブロックや裏込め石を安定化するためにシールコンクリート28が設けられるが、擁壁用コンクリートブロック背面からの二酸化炭素固定化能を向上させるため、シールコンクリート28に図3(A)中に破線で示されるような開口部(通気口)を設けることも好ましい態様である。
水抜き孔24の形状は、擁壁用コンクリートブロック22の形状を変形することにより任意に選択することができる。図3に示す擁壁20の水抜き孔24の開口面積、配置間隔などは、先に図1に記載の態様で説明した範囲と同様である。
擁壁用コンクリートブロックの大きさは、擁壁の配置位置、配置目的に応じて適宜選択されるが、代表的なものを挙げれば、一般的には、高さ250mm、幅400mm、奥行き350mm程度である。また、大型のものとしては、高さ1000mm、幅2000mm、奥行き800mm程度のものが挙げられる。
擁壁用コンクリートブロック22に裏込め石26を使用することは固定化能と空隙保持の観点から好ましいが、擁壁用コンクリートブロック22の固定化は石以外の材料を用いてなされてもよく、例えば、裏込めコンクリートを打設してもよい。ここで使用する裏込めコンクリートとして二酸化炭素吸収化コンクリートで施工することが好ましく、そのさらに背面の裏込め砕石などを用いる場合、空気の透過性がある材料であれば、二酸化炭素吸収性という観点から好ましい。
〔二酸化炭素固定化コンクリート組成物〕
以下、本発明の擁壁、或いは、擁壁用コンクリートブロックの形成に用いられる二酸化炭素固定化能を有するコンクリート組成物について説明する。
本発明の擁壁の形成に用いられる、大気中の二酸化炭素を固定化しうる二酸化炭素固定化コンクリート組成物は、硬化したのち、その成型体が、少なくともその表層部に直径10μm〜200μmの空隙もしくは同径の断面を有する空洞孔を、0.05容積%〜10容積%の範囲で設けてなるものである。この空隙は、アルカリ分解性樹脂或いは紫外線分解性樹脂の微粒子や有機繊維をコンクリート組成物中に含有させ、コンクリート硬化後、アルカリ雰囲気下に晒す、自然光、或いは、人工的に紫外線を照射するなどの手段により、これらの樹脂を分解、減容させて形成される。空隙のサイズや密度(存在量)は、含有させる樹脂微粒子或いは樹脂からなる有機繊維のサイズ、添加量などにより容易に調整することができる。
本発明の効果は、この成形体表層部に形成された空隙、空洞孔の存在により達成される。本発明でいう表層部とは、擁壁構造、或いは、水抜き孔の断面において表面からの深さ方向で0〜100mm程度、即ち、大気と接触する最表面から100mmまでの深さの範囲を指し、この領域に前記の如き空隙、空洞孔を有することで本発明の効果を達成しうる。空隙が形成される深さは本発明の擁壁の厚みとの関係で最大深度が決定される。空隙は、擁壁の深部まで均一に存在していてもよく、また、深さ方向の表面近傍のみに形成されていてもよいが、擁壁構造の裏面からの炭酸ガスの固定化を考慮すれば、擁壁或いは擁壁用コンクリートブロック深部まで空隙が存在することが好ましい。
これら空隙を形成する樹脂は、アルカリ雰囲気下、或いは、紫外線照射により分解して減容、或いは消滅する特性を有するものであれば、特に制限はないが、アルカリにより速やかに加水分解する脂肪族ポリエステル、ポリアクリル酸などの生分解性樹脂、アルカリにより加水分解するポリエチレンテレフタレート等や、紫外線照射により分解するポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂などが好ましく挙げられる。
なかでも、脂肪族ポリエステルは、コンクリート組成物に混入する前は、繊維強度が十分に高く、良好な取扱い性を有しているが、コンクリート組成物に混入させて、硬化させ、セメント系成型体を形成した場合、アルカリ雰囲気に曝されることで、繊維を構成する樹脂が加水分解して低分子化し、ガス化し、成型体中で良好な空隙を形成するという観点から特に好ましい。
このようなアルカリ雰囲気下において加水分解性を有する樹脂として、まず、脂肪族ポリエステル樹脂を例に挙げて説明する。
本発明において用いられる脂肪族ポリエステル樹脂は、単独重合樹脂、共重合樹脂のいずれであってもよいが、自己縮重合および/または開環重合によって得られる単独重合樹脂が好ましい。このような単独重合脂肪族ポリエステル樹脂は公知の種々の樹脂を用いることができるが、より具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3−ヒドロキシブチレートおよびポリカプロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記例示の単独重合脂肪族ポリエステル樹脂は、いずれも生分解性樹脂として知られているが、アルカリ雰囲気下で加水分解して容易に低分子量化するため、本発明に好適に用いられる。
また、本発明においては、ポリマー分子内に、前記各樹脂の構成単位を2種以上有する共重合脂肪族ポリエステル樹脂、あるいは前記各樹脂の構成単位とその他の構成単位を有する共重合脂肪族ポリエステル樹脂も用いることができる。
これらの樹脂の中で、経済性や、カーボンニュートラル、効果などの点から、特に発酵法による乳酸を原料とするポリ乳酸が好ましい。
本発明においては、樹脂微粒子、有機繊維の素材として、これらの脂肪族ポリエステル樹脂を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
空隙を形成する場合、脂肪族ポリエステル樹脂は、乳化重合、造粒、紡糸など公知の方法により繊維状或いは、微粒子状に成形して用いる。有機繊維に成形する場合、その紡糸方法については特に制限はなく、従来、熱可塑性樹脂の紡糸において慣用されている公知の方法の中から、任意の方法を適宜選択して用いることができる。また、紡糸繊維を、必要に応じ公知の方法で延伸処理してもよい。繊維状に成形された樹脂は、コンクリート内部で、細長い連続的な空隙を形成するため、不定形や微粒子状の樹脂に比較して本発明の効果が向上するため好ましい。
また、前記の脂肪族ポリエステル樹脂には、成形性、紡糸性や、繊維にした場合のアルカリ加水分解性以外の物性を向上させるなどのために、本発明の目的が損なわれない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニールアルコール、ポリアセタール、芳香族ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミドなどを併用してもよく、また、可塑剤等の公知の添加剤を適宜添加することもできる。
このような素材からなる本発明のセメント系成型体用有機繊維は、アルカリ雰囲気下において加水分解性を有しており、したがって、セメント配合物に混入させて、セメント系成型体を形成した場合、セメント水和物が本来有するアルカリ雰囲気に曝されることで、該繊維を構成する樹脂が加水分解する。例えば、ポリ乳酸繊維を用いた場合、セメント水和物中に一定期間、具体的には、4週間以上おくことにより、減容し、空隙が形成される。
脂肪族ポリエステル樹脂をコンクリート組成物に配合する場合、効果の観点から、微粒子としては、平均粒径が10〜500μmの範囲のものが好ましく、20〜200μmのものがさらに好ましい。
有機繊維としては、形状が、直径5〜200μm、長さ50μm〜500mmのものが好ましく、より好ましくは直径10〜50μm、長さ1〜15mmである。
なお、微粒子の粒径、有機繊維の形状は、電子顕微鏡或いは高倍率の光学顕微鏡による映像を用いて常法により測定することができる。
本発明においてコンクリート構造物の表面に適用される二酸化炭素固定化成型体は、前述のアルカリ分解性或いは紫外線分解性樹脂からなる微粒子或いは有機繊維と、水、セメント、混和材料、骨材を含有するコンクリート組成物を、硬化して得られる成型体である。前記コンクリート組成物中の樹脂微粒子或いは有機繊維の配合量としては、二酸化炭素固定化効果および構造体の強度などを考慮すると、組成物全量に、0.02〜1.0体積%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5体積%、さらに好ましくは0.1〜0.5体積%である。
前記セメント成型体としては、水、セメント、混和材料、骨材、化学混和剤よりなるコンクリート組成物であり、形成されるセメント系成型体の用途に応じて各種材料の、重量比を適宜調整することができる。
コンクリート組成物には、二酸化炭素固定化能を向上させる観点から、二酸化炭素を吸着しうる微粉末または吸着剤(以下、適宜、二酸化炭素吸着物質と称する)、酸化カルシウム(CaO)微粉末などの添加剤を含有することができる。
ここで、コンクリート組成物に配合可能な二酸化炭素を吸着しうる微粉末または吸着剤としては、γ−2CaO・SiOを含有するスラグが好ましく挙げられる。このようなγ−2CaO・SiOを含有するスラグとしては、例えば、ステンレススラグ、製鋼スラグが挙げられる。該スラグは、ブレーン比表面積が3000cm/g以上であることを要し、4000〜10000cm/gの範囲であることがより好ましい。なお、スラグのブレーン比表面積は、JIS R 5201に記載のブレーン法により、或いは、レーザー回析粒度計を用いる方法により測定することができる。
該スラグを二酸化炭素吸着物質として使用する場合には、コンクリート組成物中に含まれるセメントの含有量に対して15〜45質量%の範囲であることが好ましく、この範囲において優れた二酸化炭素吸着能が発現され、力学的特性にも優れる。
二酸化炭素を吸着しうる微粉末または吸着剤の他の好ましい例としては、ゼオライト微粉末、シリカゲル微粉末、アルミナ微粉末、甲殻類微粉末からなる群より選択される微粉末が挙げられる。なかでも、好ましくはゼオライト微粉末及び甲殻類微粉末である。甲殻類は、カルシウムを多量に含有するため、微粉末にすると優れた二酸化炭素吸着能を示す。
これら微粉末の粒径は、1μm〜3mm程度が好ましく、さらに好ましくは10μm〜1mmの範囲である。
これら微粉末を二酸化炭素吸着物質として用いる場合、その含有量はコンクリート組成物に含まれるセメントの含有量に対して5〜30質量%の範囲であることが好ましい。この範囲において、顕著な二酸化炭素吸収効果が発現され、コンクリート成形体の力学的特性には影響を与える懸念はない。
本発明に用いうるCaO微粉末としては、CaOを含有し、且つ、ブレーン比表面積が2000cm/g以上であるものを用いる。
CaOを主成分とする微粉末は、生石灰や石灰系膨脹材などをブレーン比表面積が2,000cm/g以上の微粉末状に粉砕したものを用いることができる。このような微粉末は、石灰系混和材と同様に、混和材料としても使用することができる。
微粉末のブレーン比表面積は3000cm/g以上であることを要し、3000〜4000cm/gの範囲であることがより好ましい。
CaO微粉末は、コンクリート組成物中に0.5〜2.0容積%の範囲で含まれることが好ましく、この範囲において優れた二酸化炭素吸着能が発現され、成形体の力学的特性にも優れる。
本発明において成形体の素材であるコンクリート組成物に用いられるセメントとしては特に制限はなく、形成されるセメント系成型体の用途に応じて、各種セメント類の中から、適宜選択することができる。セメントとして、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、などが使用できる。
前記混和材料としては特に制限はなく形成されるセメント系成型体の用途に応じて、各種セメント、コンクリート用混和材料から適宜種類、使用量を選択できる。混和材料としては、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどが一般的に使用できる。
また、骨材の種類や量は特に制限はなく、形成される成型体の用途に応じて、骨材の種類及び配合割合を適宜選択することができる。
本発明のセメント系成型体には、通常セメント系成型体に配合されている各種添加剤、例えば減水剤、空気連行剤、消泡剤などを、適宜配合することができる。
前記セメント成型体の水とセメントの重量比は、形成されるセメント系成型体の用途に応じて適宜選択することができるが、大気中の二酸化炭素との炭酸化反応を促進するためには、水と結合材の重量比は30%以上70%以下が好ましく、より好ましくは40%以上65%以下である。
本発明の二酸化炭素固定化擁壁或いは擁壁用コンクリートブロックは、前記した空隙形成用の分解性樹脂からなる微粒子或いは有機繊維を含有する二酸化炭素固定化用コンクリート組成物を混練し、成型、硬化した後、アルカリ或いは紫外線によりコンクリート組成物中に含まれる樹脂微粒子もしくは樹脂からなる有機繊維を分解させ、二酸化炭素の固定化に有用な空隙を有する表層部を形成することにより製造することができる。
アルカリ雰囲気下に暴露した場合には、アルカリに接触した成形体の表面領域から徐々に樹脂が分解(/減容)し、空隙が形成される。アルカリ雰囲気の特性やアルカリ雰囲気への接触条件を制御することにより、コンクリート成型体の表層部のみに空隙を形成することができる。このように、空隙は少なくとも二酸化炭素の固定化に関与する表層部に形成されていればよいが、コンクリートのさらなる深部まで均一に形成されていてもかまわない。
このような空隙を有する表層部において空隙の開口部から徐々に二酸化炭素が浸透し、コンクリート組成物中においてセメントの水和反応の反応生成物である水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムを形成し、二酸化炭素の固定化がなされる。
表層部に形成された空隙のサイズや形状は、コンクリート硬化体断面を電子顕微鏡で観察することにより、検知できる。また、空隙率は水銀圧入ポロシメータ(自動ポロシメーター オートポアIII(商品名)、マイクロメリテックス社製)などにより測定することができる。
ここで用いられる二酸化炭素固定化コンクリート組成物は、従来のセメントコンクリート組成物に比較して大気中の二酸化炭素による炭酸化反応が早く進行し、セメント成型体中に炭酸カルシウムとして固定される量が増大する効果を持つとともに、力学特性は従来と同程度の成型体を得ることができる。
本発明に使用される二酸化炭素固定化コンクリート組成物は、主として中性化を促進することにより二酸化炭素の効率的な固定化を達成しているために、通常のコンクリート成形体に比較してアルカリ雰囲気の中性化が早いため、擁壁構造内に補強材として鉄筋、金網、鉄骨を用いる場合には、酸化されにくい素材を用いたもの、耐久性に優れた防錆加工を施したものを選択することが好ましい。
補強材として、用いられる鉄筋などの防錆処理としては、公知の方法、例えば、亜鉛メッキ処理などが挙げられる。また、鋼材に代えて、酸化されにくいステンレススチール、錆びることがないFRP筋(ガラス繊維や炭素繊維を樹脂で固めた複合補強筋)などの金属材、セラミック材料、樹脂材料などを補強材として埋設することも好ましい。
さらに、炭素繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維など非鋼製繊維混入によるタフネス増加を計ることも可能である。
本発明の擁壁は、二酸化炭素固定化量が0.8kg/m以上であることが効果の観点から好ましく、さらに好ましくは、1.5kg/m以上である。
本発明の擁壁を地山の斜面などに配置することで、斜面の保護とともに、二酸化炭素の高い吸収能を達成することができる。また、擁壁をコンクリート製の残存型枠(例えばプロテロックメーク、商品名:タカムラ総業株式会社製)を二酸化炭素固定コンクリートで作製し、ボルト・ナットにより擁壁表面から脱着可能な形状に加工する方法などをとることで、容易に交換することも可能となり、所望の領域における二酸化炭素固定化能を所定の水準に維持することが容易であるという利点をも有するものである。
本発明の擁壁は、現場で打設して形成することも可能であり、擁壁用コンクリートブロックをもちいる場合には、二酸化炭素固定化能などを考慮して予め設計された仕様により、高い品質管理の下で、工場で予め均一な製品として作製することができる。
本発明において二酸化炭素固定化擁壁が有する二酸化炭素固定化能を推定する方法としては、本願出願人が先に提案した特願2005−145628明細書に記載の方法を適用することができる。
即ち、該コンクリート構造物に用いられる二酸化炭素固定化成形体の二酸化炭素固定化能に応じて、成形体が大気に接触した時間を発生時Tより、解体時などの固定化終了時Tまでの間に吸収する二酸化炭素の量を推定する方法であり、より具体的には、発生時Tからの経過時間tにおけるコンクリート製ガス吸収素材の炭酸化深度cを、炭酸化速度方程式c=f(t)で表し、更に構造物に用いられる二酸化炭素固定化成形体のうち既に炭酸化した領域と未炭酸化領域との境界面sの面積をSとして、炭酸化がdc(表面からの深さ)だけ進行したときの体積部分に含まれる炭素の密度をaとして、炭酸化深度cに達したときのガス吸収量WをW(c)=∫(a×S)dcと表して、これら両式から所定時間内での温室効果ガス吸収量を推定するものである。
コンクリートの炭酸化反応は一般に中性化反応とも呼ばれるが、その炭酸化(中性化)速度式としては、ルート則と呼ばれるc=A×tを用いることができる。ここでcは反応量、Aは炭酸化速度係数、tは経過時間である。また、nは実験的に決定される定数で一般的にはn=0.5である。
炭酸化速度式c=A×t0.5中の炭酸化速度係数Aは、従来様々な研究が行われているが、簡単には水セメント比(W/C)に依存するAと、それ以外の要因に依存する定数Rとで、A=A×Rで表すことができる、Rは炭酸化率と呼ばれる定数であり、コンクリートの属性による係数をA、仕上げ材による係数をA、環境(温湿度、二酸化炭素濃度)の区分による係数をAとすると、R=A×A×Aとなる。
に関しては、例えば実験的にW/C≧0.6であるときに次の数式1が知られており、又、W/C≦0.6であるときに数式2が知られている(岸谷 著「鉄筋コンクリートの耐久性」鹿島建設技術研究所出版部 1963年刊)。
[数式1]
={(W/C)−0.25}/[0.3×{1.15+3(W/C)}]0.5
[数式2]
={4.6×(W/C)−1.76}/√(7.2)
なお、上述のW(c)=∫(a×S)dcを用いれば任意の形状のコンクリート構造物の温室効果ガスの吸収量を計測することができるが、平板状のコンクリート板に関しては、W/S=∫abcとすることで単位表面積当りの吸収量を求めることもできる。
このようにして本発明の擁壁表面(ここには、水抜き孔の内表面も当然含まれる)における二酸化炭素固定化能を推定し、その設計に役立てることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(コンクリート組成物の配合)
普通ポルトランドセメントと水、砂(骨材)を含有するセメント組成物100質量部中に、下記表1に示す量の分解性樹脂からなる有機繊維を配合して、水/セメント組成物比(W/C 比)が55%、セメント組成物と砂の比率が1/3のモルタルを調製してコンクリート組成物を調製した。
また、比較のために、アルカリ分解性有機繊維に代えて、一般の建材に補強材として使用される分解性を有しない有機繊維を配合し、同一混入量にてコンクリート組成物を調製して比較例とした。
[使用材料]
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)比重3.15
水:水道水
砂:木更津産山砂、表乾密度2.65g/cm、吸水率0.46%、実積率60.4%、粗粒率6.70
AE減水剤:チューポールEX20(竹本油脂社製)
消泡剤:AFK−2(竹本油脂社製)
有機繊維:
ポリ乳酸樹脂を溶融紡糸した繊維(表中にPLA繊維と記載、以下同様)、繊維径20μm、長さ5.0mm
[コンクリート組成物の配合]
表1にコンクリート組成物の配合を示す。表中で使用した各材料の詳細は上記の通りである。なお、下記表1中、W/Cは、水/結合材比を、S/Cは砂/セメント比を表す。
Figure 0004549293
[二酸化炭素固定化擁壁の製造]
前記表1に記載のコンクリート組成物について、水、セメント、砂および有機繊維または樹脂微粒子を所定量ミキサ(太平洋機工株式会社製 SD−100ミキサ、容量100L)に投入し、3分間練り混ぜた。この際、練りあがったモルタルの空気量が一定の値(5.0容量%)と成るよう、AE減水剤および消泡剤を適量添加し調整した。練り混ぜ後、擁壁を模した図4(A)に示すような成形体に適合する型枠内に成型し、材齢8週まで温度20℃、湿度60%で気中養生を施して、二酸化炭素固定化擁壁30を得た。
〔水抜き孔の形成〕
水抜き孔32の形成は,JIS K 6741 により規定される塩化ビニル管(VP100)を用いて供試体に2カ所配置し、コンクリート硬化後に塩化ビニル管を撤去することにより行った。
側面を炭酸化防止のため、非通気性のシートで被覆し、背面一面にヘチマロン(商品名:新光ナイロン株式会社製)34を貼り付けた上に、背面土砂を想定して通気性を有しないシート36で被覆した。実施例1では、背面の大気がヘチマロン34の空隙と水抜き孔32を通じて表面へ通気できる構成とした。図4(B)は、その断面図を示す。
(比較例1)
前記二酸化炭素固定化コンクリート組成物に代えて、ポリ乳酸樹脂を溶融紡糸した繊維を含有しない他は同様の組成の通常のコンクリート組成物を用いて、比較例1の二酸化炭素固定化擁壁を得た。水抜き孔の形成は、塩化ビニル管(VP100)を用いて供試体に2カ所配置することにより行い、コンクリート硬化後も塩化ビニル管を残存させた。この比較例1の擁壁の背面には、ヘチマロンを貼り付けることなく、背面土砂を想定した通気性を有しないシートで被覆した。
[二酸化炭素固定化能の評価]
二酸化炭素固定化量は、50cm間隔でドリルにより実施例1、比較例1の擁壁に開口部を形成し、得られたコンクリート粉末を採取し、フェノールフタレイン1%エタノール溶液に中性深さを計測した。次に、中性深さまで達したときのコンクリート粉末を採取し、二酸化炭素固定化量を、熱重量測定装置(TG8110C、株式会社リガク製)を用いた熱分析により炭酸カルシウムに含まれる二酸化炭素重量を測定することで算出した。
中性化促進材齢13日の結果を測定した。結果を下記表2に示す。
Figure 0004549293
表2の結果より明らかなように、本発明の二酸化炭素固定化擁壁は、通常のコンクリート組成物を用いて成形し、通気について考慮していない比較例1の擁壁に比べ、擁壁中の二酸化炭素固定化量が10倍以上であり本発明の構成が有効であることが確認された。
二酸化炭素固定化コンクリート組成物を打設して形成された本発明の二酸化炭素固定化擁壁の一態様を示す断面図である。 (A)〜(D)は、二酸化炭素固定化擁壁に形成された水抜き孔の開口形状の例を示す概略図である。 (A)擁壁用コンクリートブロックにより形成された本発明の二酸化炭素固定化擁壁の一態様を示す断面図であり、図3(B)は擁壁用コンクリートブロックを積層した状態の一部を示す平面図である。 (A)二酸化炭素固定化コンクリート組成物を打設して形成された実施例1の二酸化炭素固定化擁壁の一態様を示す斜視図であり、(B)はその断面図である。
符号の説明
10、20、30 二酸化炭素固定化擁壁
12 背面土砂(地山)
16、24 水抜き孔
22 二酸化炭素固定化擁壁用コンクリートブロック

Claims (6)

  1. 斜面の表面保護を目的として形成される擁壁であって、水、セメント、混和材料、骨材を含有するコンクリート組成物を硬化して得られ、直径10μm〜200μmの空隙もしくは同径の断面を有する空洞孔を0.05容積%〜10容積%設けてなる表層部を有する構造体に、該表層部に大気が接触するように設けられた水抜き孔を有し、該表層部において大気中の二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化擁壁。
  2. 前記擁壁が、水、セメント、混和材料、骨材に、アルカリ分解性樹脂微粒子、アルカリ分解性樹脂からなる有機繊維、紫外線分解性樹脂微粒子、及び、紫外線分解性樹脂からなる有機繊維のうち少なくとも1種を含有する二酸化炭素固定化コンクリート組成物を打設し、硬化して形成されたものである請求項1記載の二酸化炭素固定化擁壁。
  3. 前記水抜き孔が前記コンクリート組成物の打設時に型枠中に挿入した円筒型部材を、該コンクリート組成物の硬化後に除去することにより形成される請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素固定化擁壁。
  4. 前記擁壁が、水、セメント、混和材料、骨材に、アルカリ分解性樹脂微粒子、アルカリ分解性樹脂からなる有機繊維、紫外線分解性樹脂微粒子、及び、紫外線分解性樹脂からなる有機繊維のうち少なくとも1種を含有する二酸化炭素固定化コンクリート組成物を硬化して得られた擁壁用コンクリートブロックを、少なくとも一部に水抜き用の空隙を形成するように配置して積層し、斜面に固定して形成されたものである請求項1記載の二酸化炭素固定化擁壁。
  5. 前記擁壁用コンクリートブロックの斜面への固定が、擁壁用コンクリートブロックと斜面との間に裏込め砕石又は裏込めコンクリートを充填することで行われる請求項4記載の二酸化炭素固定化擁壁。
  6. 前記二酸化炭素固定化擁壁の二酸化炭素固定化量が0.8kg/m以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化擁壁。
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