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JP4925031B2 - 燃料電池用セパレータ材の製造方法 - Google Patents
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本発明は、例えば、自動車をはじめ小型分散型電源などに用いられる燃料電池のセパレータ材とその製造方法に関する。
燃料電池のセパレータ材には、電池の内部抵抗を低くして発電効率を上げるために電気伝導性が高く、また、燃料ガスと酸化剤ガスとを完全に分離した状態で電極に供給するために高度のガス不透過性が要求される。更に、電池スタックの組み立て時および電池作動時に破損や欠損が生じないよう高い材質強度や耐食性が必要である。
このような材質特性が要求されるセパレータ材には、従来から炭素質系の材料が用いられており、黒鉛などの炭素質粉末を熱硬化性樹脂を結合材として結着し、成形した炭素/硬化樹脂成形体が好適に使用されている。
例えば、特許文献1には炭素質粉末100重量部に対し、熱硬化性樹脂を10〜100重量部の割合で加えて混練し、硬化して得られた炭素/硬化樹脂成形体を金属薄板の表裏両面に熱圧接合して被着し、この硬化樹脂成形体にガス流通溝を形成する固体高分子型燃料電池セパレータ部材の製造方法が、特許文献2には平均粒子径50μm以下、最大粒子径100μm以下、アスペクト比3以下の黒鉛粉末60〜85重量%に不揮発分60%以上の熱硬化性樹脂15〜40重量%を加えて加圧混練し、混練物を粉砕して型に充填し減圧脱気したのち加圧成形し、成形体を所定形状に加工した後150〜280℃の温度で加熱硬化する、あるいは150〜280℃の温度で加熱硬化した後所定形状に加工する、固体高分子型燃料電池用セパレータ部材の製造方法、などが開示されている。
また、特許文献3には炭素質材料の水分散液に、撥水性物質を有機溶剤に溶解した溶液を滴下して撥水処理を施してなる、ガス拡散電極層などの燃料電池用炭素質材料が提案されている。これは、導電性と撥水性を兼ね備えた炭素質材料に関するもので、黒鉛粉に撥水性を持たせることは機械的強度の向上には逆効果となる。
また、特許文献4にはマトリックス中に炭素質粉末が分散されてなる複合材であって、該マトリックスは該炭素質粉末を被覆する樹脂被覆層と、該樹脂被覆層を形成する樹脂よりも高耐熱性の樹脂強化相とで形成されている燃料電池セパレータ成形用複合材を加熱後射出成形してなる燃料電池用セパレータが開示されている。しかし、樹脂被覆層の厚さによっては接触抵抗や固有抵抗が高くなり、燃料電池用のセパレータ材には十分でない。
特開平11−297337号公報 特開2000−021421号公報 特開2003−208905号公報 特開2003−257446号公報
一般に、セパレータ材に高導電性を付与させるためには、炭素/硬化樹脂成形体の炭素配合比を大きくすることが必要となるが、炭素配合比を大きくすると靱性が低くなり、材質強度が低下する難点がある。
すなわち、材質強度の低下は、燃料電池スタック組み立て時などのハンドリングや単セルを積層して締め付ける際などに割れが発生し易くなる。更に、例えば、燃料電池車として自動車に搭載した場合などには振動、衝撃、温度変化による伸縮などによって、亀裂や割れが発生するという問題がある。
そこで、発明者らはこの問題を解消して、材質強度の改善を図るべく鋭意検討を行い、黒鉛/硬化樹脂成形体が破壊される経路、すなわち破壊過程において微視的にどこの部分が破壊されていくのかを詳細に検討した結果、黒鉛粉と樹脂との界面における破壊に着目して研究を進めた。
そして、黒鉛/硬化樹脂成形体の材質強度の改善には黒鉛粉を表面処理することが効果的であり、特に黒鉛粉にシランカップリング剤を被覆すると材質強度の向上、特に燃料電池の発電温度付近の高温強度の向上が図られることを確認した。
すなわち、本発明はこの知見に基づいて完成したもので、その目的は導電性が高く、強度特性に優れた燃料電池用セパレータ材とその製造方法を提供することにある。
本発明による燃料電池用セパレータ材の製造方法は、シランカップリング剤を有機溶媒に溶解した溶液に黒鉛粉を入れて攪拌混合した後、乾燥して有機溶媒を除去し、次いで、シランカップリング剤を加水分解する表面処理により黒鉛粉にシランカップリング剤を被覆し、該黒鉛粉を熱硬化性樹脂溶液と混合混練し、混練物を乾燥、粉砕して成形粉を作製し、成形粉をガス流路となる溝山部を彫り込んだ金型内に充填して、熱圧成形することを構成上の特徴とする。
そして、黒鉛粉にシランカップリング剤を被覆する方法としては、シランカップリング剤を有機溶媒に溶解した溶液に黒鉛粉を入れて攪拌混合した後、乾燥して有機溶媒を除去し、次いで、シランカップリング剤を加水分解する表面処理により被覆することが好ましく、更に、シランカップリング剤の被覆量は黒鉛粉100重量部に対して0.1〜5重量部であり、シランカップリング剤はアミン系あるいはエポキシ系シランカップリング剤であることが好ましい。
本発明によれば、シランカップリング剤を被覆した黒鉛粉を熱硬化性樹脂を結合材として結着した黒鉛/硬化樹脂成形体で燃料電池用セパレータ材を形成することにより、導電性が高く、強度特性に優れ、自動車をはじめ小型分散型電源などに好適に用いられる燃料電池のセパレータ材とその製造方法が提供される。
本発明の燃料電池用セパレータ材は、シランカップリング剤を被覆した黒鉛粉を熱硬化性樹脂により結着、一体化したものであり、黒鉛粉表面に被覆されたシランカップリング剤により黒鉛粉と結合材となる熱硬化性樹脂との親和性が高められ、黒鉛粉と熱硬化性樹脂との密着性が良好となり、塑性変形し難くなる。
すなわち、黒鉛/硬化樹脂成形体において、黒鉛粉と熱硬化性樹脂との界面ズレが起こり難くなり、強度試験時の応力・歪み曲線の塑性変形域の弾性域の延長線からのはずれ方が小さくなる。その結果、機械的特性、特に高温強度の向上、改善を図ることが可能となる。
この燃料電池用セパレータ材は、黒鉛粉をシランカップリング剤を有機溶媒に溶解した溶液で表面処理して黒鉛粉にシランカップリング剤を被覆し、該黒鉛粉を熱硬化性樹脂溶液と混合混練し、混練物を乾燥、粉砕して成形粉を作製し、成形粉をガス流路となる溝山部を彫り込んだ金型内に充填して、熱圧成形することにより製造される。
黒鉛は天然黒鉛や人造黒鉛が用いられ、鱗片状、粒状、塊状、土状、球状などの天然黒鉛の粉砕品、石油コークスやピッチコークスなどを主原料に、混捏、成形、焼成、黒鉛化して製造された塊状の人造黒鉛の粉砕品、その他膨張黒鉛の粉砕品などを用いることができる。
黒鉛粉の粒径(一次粒子径)はセパレータの性能面から最大粒径が1000μm以下が好ましく、500μm以下が更に好ましく、300μm以下が特に好ましい。また、黒鉛粉は導電性、電池性能などの点から灰分含有量が1重量%以下、特に0.5重量%以下が好ましく、更に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の含有量は500ppm以下、特に100ppm以下のものが好ましい。
黒鉛粉は、シランカップリング剤を有機溶媒に溶解した溶液で表面処理することによりシランカップリング剤が被覆される。有機溶媒にはシランカップリング剤が相溶可能で、かつ黒鉛粉をよく濡らすものが好ましく、また乾燥により低温で容易に除去可能なメタノールやエタノールなどが好ましく、他にイソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトンなどが用いられる。シランカップリング剤の有機溶媒への溶解は、例えば、シランカップリング剤と有機溶媒とを攪拌しながら溶解させることにより、あるいはドラムに入れて緩やかに回転させ、1時間以上混合することにより完全相溶させる。
シランカップリング剤を有機溶媒に溶解した溶液(シランカップリング剤溶液)に黒鉛粉を入れて万能攪拌機などでよく攪拌混合する。この場合、シランカップリング剤溶液の量は黒鉛粉表面がしっとりと濡れる程度で十分であり、例えば黒鉛粉100重量部に対して溶液量は45〜65重量部程度が良く、溶液量が多過ぎると、後の乾燥時に黒鉛粉の表面に被覆されるシランカップリング剤量に偏りができることになる。
シランカップリング剤溶液に黒鉛粉を入れて十分に攪拌混合したのち、真空乾燥あるいは自然乾燥(通気乾燥)して有機溶媒を揮散除去することにより黒鉛粉にシランカップリング剤が被覆される。この場合、有機溶媒を揮散除去した後、更に湿度50%以上の空気中あるいは加湿空気中で適宜時間放置して、シランカップリング剤を加水分解することが好ましく、加水分解によってシランカップリング剤が高分子化して、黒鉛粉表面にシランカップリング剤の膜が強固に被覆される。
シランカップリング剤の被覆は、黒鉛粉の表面に薄くコーティングできる程度でよく、被覆量は黒鉛粉100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜2重量部である。被覆量が0.1重量部を下回ると機械的特性の向上が少なく、5重量部を越えると黒鉛粉がシランカップリング剤で凝集し、成形体の強度が低下するためである。
シランカップリング剤にはアミン系、エポキシ系、メタクリロキシ系、メルカプト系、カチオン系など使用できるが、熱硬化性樹脂としてフェノール系樹脂やエポキシ系樹脂が用いられることが多いので、これらの樹脂と化学結合する官能基をもつアミン系あるいはエポキシ系のシランカップリング剤を使用することが好ましい。
このように表面処理してシランカップリング剤を被覆した黒鉛粉と熱硬化性樹脂との混合混練は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂をアルコール、エーテル、ケトンなどの適宜な有機溶媒に溶解して低粘度の熱硬化性樹脂溶液として混合することが好ましく、均一な混練物を作製することができる。混合混練には、例えば、万能攪拌機やニーダー、加圧式ニーダー、二軸スクリュー式ニーダーなどの適宜な混練機が用いられ、混練物は乾燥して樹脂中の低沸点成分や有機溶媒などを除去したのち、粉砕して適宜な粒度の成形粉を作製する。
シランカップリング剤を被覆した黒鉛粉は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂となじみが良くなるので、黒鉛粉は熱硬化性樹脂と均一に混合されて黒鉛粉全体に熱硬化性樹脂が均一に付着した混練物が得られる。
なお、黒鉛粉と熱硬化性樹脂との混合は、黒鉛粉と熱硬化性樹脂の樹脂固形分の重量比が90:10〜65:35の量比に混合することが好ましい。黒鉛粉の重量比が90%を越えると熱硬化性樹脂量が不足して混練物の流動性が低くなり、成形性が悪化して成形体の組織不良を起こし、また黒鉛粉の重量比が65%未満となると導電性が低下する。
黒鉛粉に被覆されたシランカップリング剤は黒鉛粉と化学結合まではしていないが、黒鉛粉と濡れの良い有機溶剤を介して被覆され、その上、加水分解によるシランカップリング剤が高分子化することによって、化学的な結合がなくても黒鉛粉表面に非常に薄く、強固に被膜が形成され、密着被覆される。
更に、シランカプリング剤の官能基が樹脂硬化時に結合するので、樹脂と黒鉛粉は強固に密着し、その結果、黒鉛粉と樹脂との界面におけるズレの発生が抑止されて、機械的特性、特に高温強度の向上が図られる。
成形粉は常法により、ガス流路となる溝山部を彫り込んだ金型内に充填して、150℃以上の温度、20MPa以上の圧力、好ましくは150〜250℃の温度および20〜100MPaの圧力で熱圧成形することにより燃料電池用セパレータ材が製造される。この燃料電池用セパレータ材はそのまま、あるいは必要により更に精密にガス流路用の溝加工などを施して燃料電池用のセパレータが製造される。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
実施例1
エポキシ系シランカップリング剤(チッソ株式会社製、サイラーエースS510)を、エタノール55重量部に対して1重量部の割合で溶解させ、5時間攪拌して完全相溶させてシランカップリング剤溶液を調製した。
黒鉛粉には鱗片状天然黒鉛の粉砕品(最大粒径300μm、平均粒径50μm)を用いて、黒鉛粉の表面がしっとりと濡れる程度に、黒鉛粉100重量部に対しシランカップリング剤溶液を56重量部の割合で添加して、万能混合攪拌機により30分間混合した。その後、通気環境下に12時間放置乾燥してエタノールを揮散除去し、次いで、110℃のオーブン内で2時間熱処理して、黒鉛粉の表面に黒鉛粉に対して1重量%のシランカップリング剤を被覆した。
熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を主剤とし、硬化剤にノボラック型フェノール樹脂を用いて、主剤のエポキシ基に対する硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が1.0になるように混合した。この混合樹脂の樹脂固形分が70重量%になるようにメチルエチルケトンに溶解して樹脂溶液を調製し、更に、硬化促進剤として2エチル4メチルイミダゾールを1重量%添加した。
上記のシランカップリング剤を被覆した黒鉛粉と樹脂溶液とを、黒鉛粉と樹脂固形分との重量比が80:20になるように混合して、ニーダーに入れて1時間混練した。混練物を室温で24時間通気乾燥し、更に真空乾燥してメチルエチルケトンを揮散除去した。次いで、粉砕した後、粒度調整して0.1〜0.5mmの成形粉を作製した。
成形粉を予備成形型に均等になるように充填し、70℃に加熱した上型を載せて3MPaの圧力で10秒間加圧して予備成形した板状のプリフォームを作製した。
200×200mmの範囲内に幅1mm、深さ0.6mmの溝形状が彫られた外形270×270mmの成形金型にフッ素系の離型剤を塗布して、上記のプリフォームを挿入して、40MPaの圧力、180℃の温度で熱圧成形した。
このようにして、シランカップリング剤が被覆された黒鉛粉が硬化樹脂で結着した、黒鉛/硬化樹脂成形体からなり、ガス流路となる幅1mm、深さ0.6mmの溝部が形成されたセパレータ材(200×200mm、最薄肉部厚さ0.45mm)を製造した。
実施例2
シランカップリング剤にアミン系シランカップリング剤(チッソ株式会社製、サイラーエースS330)を用いた他は、実施例1と同じ方法により黒鉛粉の表面にシランカップリング剤を被覆して、実施例1と同じ方法でセパレータ材を製造した。
実施例3〜5
実施例1と同じエポキシ系シランカップリング剤(チッソ株式会社製、サイラーエースS510)を用いてシランカップリング剤溶液を調製し、黒鉛粉に対するシランカップリング剤の被覆量の異なる黒鉛粉を作製した。この黒鉛粉を用いて、実施例1と同じ方法によりセパレータ材を製造した。
比較例1
実施例1と同じ黒鉛粉をシランカップリング剤を被覆することなくそのまま使用した他は、実施例1と同じ方法によりセパレータ材を製造した。
比較例2
実施例1と同じ黒鉛粉に界面活性剤(花王株式会社製、ホモゲノールL18)を被覆した他は、実施例1と同じ方法によりセパレータ材を製造した。
次に、黒鉛粉と樹脂溶液との濡れ性、および、セパレータ材からテストピースを切り出して下記の方法により材質特性を測定し、その結果を表1に示した。
(1)黒鉛粉と樹脂溶液との濡れ性;
黒鉛粉に樹脂溶液を滴下して濡れ方を目視で評価した。評価は、表面処理をしていない黒鉛粉(比較例1の黒鉛粉)を基準として、樹脂溶液の濡れ性が良くなっていれば○、悪くなっていれば×、とし、変わらないものは△とした。
(2)曲げ強度(MPa);
JIS R1601により室温および80℃で測定した。
(3)破断歪み(%);
JIS R1602により室温および80℃で測定した。
(4)歪み0.2%時の曲げ応力(MPa);
曲げ強度測定時の応力−歪み曲線から算出した。
(5)固有抵抗(mΩ・cm);
JIS C2525により測定した。
(6)接触抵抗(mΩ・cm2 );
テストピース同士を1MPaの圧力で接触させながら、通電量1Aで測定した。
Figure 0004925031
表1より、シランカップリング剤を被覆した黒鉛粉を使用し、特にシランカップリング剤の被覆量が黒鉛粉100重量部に対して1重量部あるいは5重量部の実施例1〜3のセパレータ材は、シランカップリング剤を被覆しない黒鉛剤を使用した比較例1のセパレータ材に比べて室温および80℃における曲げ強度が高い値を示し、また、歪みが0.2%の時の曲げ応力も大きく、塑性変形域の弾性域の延長線からのずれ方が小さく、塑性変形し難いことが分かる。
なお、シランカップリング剤の被覆量が0.05重量部の実施例4、および、被覆量が8重量部の実施例5では、この改善効果が小さいことが認められる。また、黒鉛粉に界面活性剤を被覆した比較例2では、これらの改善効果が十分でなく、特に、80℃での曲げ強度の低下が著しかった。

Claims (3)

  1. シランカップリング剤を有機溶媒に溶解した溶液に黒鉛粉を入れて攪拌混合した後、乾燥して有機溶媒を除去し、次いで、シランカップリング剤を加水分解する表面処理により黒鉛粉にシランカップリング剤を被覆し、
    該黒鉛粉を熱硬化性樹脂溶液と混合混練し、混練物を乾燥、粉砕して成形粉を作製し、
    成形粉をガス流路となる溝山部を彫り込んだ金型内に充填して、熱圧成形することを特徴とする燃料電池用セパレータ材の製造方法。
  2. シランカップリング剤の被覆量が、黒鉛粉100重量部に対して0.1〜5重量部である、請求項1記載の燃料電池用セパレータ材の製造方法。
  3. シランカップリング剤がアミン系あるいはエポキシ系シランカップリング剤である、請求項1記載の燃料電池用セパレータ材の製造方法。
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