回転要素の回転の動きをアキシャル方向の動きに変換して、負荷を引く或いは押す装置(以下、直線運動装置という)における、軸力の過負荷防止機構としては、従来、トルクリミッタが用いられている。
該トルクリミッタとしては、回転要素の駆動部に設けられることにより、設定トルクに達すると摩擦面がスリップすることによってそれ以上のトルク伝達を不能とするように構成されたものが提供されている。その一種として、例えば実開昭59−47127号公報や特開2001−107330号公報が開示するような摩擦面スリップ方式のトルクリミッタが提案されている。又、設定トルク値に達すると係合部材相互の係合が解除されてそれ以上のトルク伝達を不能とするように構成されたもの、例えば特開2004−176856号公報が開示するような、ボールと凹部や凹溝との係合解除によってトルク伝達が遮断されるように構成された係合解除方式のトルクリミッタが提供されている。
図26は、摩擦面スリップ方式のトルクリミッタAを直線運動装置Bに組み付けたトルクリミッタ付き直線運動装置aを示すものであり、図示しない手段により回り止めされたナットbが、図示しない軸受により回転自在に支持されたネジ軸cに螺合されている。該ナットbは、該ネジ軸cの回転の動きを該ネジ軸cの軸線方向の動きに変換する要素の一例である。
そして該ネジ軸cの基端部分dに、円筒部eの一端にフランジfが周設されたハブgが固設されると共に、該円筒部eの先側部分は、外周面に雄ネジ部jが設けられてなるネジ筒部kとされている。又、該ネジ筒部kには付勢力調整ナットmが螺合されており、該円筒部eには、該付勢力調整ナットmと前記フランジfとの間で、ブッシュnを介して平歯車状の入力ギアpが回転自在に取り付けられている。該入力ギアpは、図示しないモータにより正逆回転せしめられる。そして、該入力ギアpの中央部分qがその内外から摩擦板r,rで挾持されると共に、前記付勢力調整ナットmと前記外の摩擦板rとの間に皿バネsが介装されており、該付勢力調整ナットmを所要に締め付けることにより該両摩擦板r,rによる挾持力が発生しこの挾持力によってトルクリミッタAの最大伝達トルク値が所要に設定されるようになされている。
然して、前記ナットbに作用する負荷が過大なときは、前記直線運動装置Bのネジ軸cの軸力が増大するに伴ってトルクリミッタAの伝達トルクが増大していきトルク伝達余力(トルクリミッタAの最大伝達トルクと、前記直線運動装置Bの軸力に応じたトルクとの差)が減少していく。そしてトルクリミッタAは、ついにはトルクを伝達できなくなり、前記入力ギアpが周方向にスリップ回転する。これによって、負荷側及び駆動側の装置を保護できるのである。
ところで、この種のトルクリミッタの前記最大伝達トルクの内、直線運動装置の軸力の発生に有効利用されるのはその一部分であり、ネジ軸cの支持部の損失トルクや、ナットbの螺合部の摩擦損失力に対応するトルクの他、加速度運動時(ネジ軸cの回転始動時)の回転部分の慣性モーメントに起因するトルク等で消費される部分も多かった。このように種々の消費トルク要因が存し、しかもこれらにバラツキが生ずることから、前記軸力の発生に有効利用されるトルクは実際には変化し易いものであった。
そして、この種のトルクリミッタを含め従来のトルクリミッタは、限界伝達トルク(伝達可能な最大トルク)が軸力と無関係に一定であるために、負荷が限界伝達トルク値の手前近傍の状態において、トルク差(トルクリミッタの限界伝達トルク値と負荷トルクとの差)が小さく、又、負荷トルクが限界伝達トルク値を超えた近傍の状態において、トルク差が小さかった。しかも、前記のように軸力の発生に有効利用されるトルクが変化し易いことから、所望の軸力よりも小さい軸力でトルク伝達が遮断されてしまったり、逆に、所望の軸力よりも大きい軸力に達してもトルク伝達を遮断できない場合が生ずる等、精度の良いトルク遮断を行なうのが難しい問題があった。
なお、直線運動装置に必要とされる軸力に達する前にトルク伝達が遮断されるのを防止するために、限界伝達トルクを高めに設定することも行なわれていた。しかしながら、限界伝達トルクをこのように高めに設定すると、結果的に、遮断時の軸力が所望軸力よりも相当高い値になってしまうことが生じた。
かかるトルク伝達の遮断は、本来は、直線運動装置の軸力が、該直線運動装置が必要とする軸力値を越えた時に速やかに行われるのが好ましいのであるが、従来のトルクリミッタにあっては、軸力が増すにつれてトルクも増大するであろうとの観点から、簡便に、トルクを利用して軸力を制御することがなされていたのである。
以上要するに従来のトルクリミッタは、限界伝達トルクが必ずしも直線運動装置の所望軸力と精度よく対応しておらず、軸力を精度よく制御することができない問題があったのである。
図1〜3において本発明に係るトルクリミッタ1は、負荷を引く装置、例えば、ベルトやチェーン、ワイヤ等を引くことで緊張させる緊張装置2aとしての直線運動装置2に応用されており、例えば円形孔からなる収容孔3が設けられてなる保持器4と、該収容孔3に収容され且つ軸線回りに回転し得る軸部5が設けられた軸部材6とを具えている。
前記保持器4は、本実施例においては図3に示すように、上下端7,9が平坦に形成され且つ左右側面10,11が円弧面に形成された基板部12の一端面13に、段差15を介して円筒状部16が突設されており、該円筒状部16及び該基板部12に亘って、該円筒状部16と同心に、同径の円形の前記収容孔3が設けられている。又、該基板部12の他端面17に、該円筒状部16と同心に連結ネジ軸19が突設されている。該連結ネジ軸19は、負荷に繋がる前記緊張装置2aの端部に設けられたネジ孔21に螺合されることにより、前記保持器4が前記緊張装置2aに連結された状態となっている。
そして前記円筒状部16の周壁部22には、図2〜3に示すように、周方向に90度の角度で4個の係止孔部23,23,23,23が、夫々、該円筒状部16の半径方向に貫設されており、該係止孔部23の夫々には、該係止孔部23の内径に略等しい径を有する球形状の係合子(本実施例においては球体25aとしての係合子)25が嵌め入れられている。
又、図2〜3に示すように、前記円筒状部16の外周面26の収容孔開放端27寄り部位に嵌着周溝29が設けられており、該嵌着周溝29には、該円筒状部16が略密接状態で挿入される円形挿通孔30を有するストッパリング31の外側面32を外側から支持するスナップリング33が嵌着されている。そして、前記段差15と該ストッパリング31の内側面35との間に、前記係合子25を前記円筒状部16の半径方向に押圧するための、バネ性に富む金属素材からなる円筒状のリング状バネ部材36aとしての付勢手段36が、前記周壁部22を取り囲むように装着されており、該リング状バネ部材36aが該周壁部22から脱落するのを前記ストッパリング31が阻止している。
前記軸部材6は丸軸状に形成されており、前記保持器4の前記収容孔3に収容される前記軸部5の外側面37に、該軸部5の軸線L方向に延長するネジ軸部39が連設されている。該ネジ軸部39は、図1、図3に示すように、その先側の部分40が、基台41に立設された軸受立壁42に設けられた円形挿通孔43に挿通せしめられ、該軸受立壁42から突出したネジ軸部分45に、保持手段46を構成するナット46aが螺合されている。
又前記軸部5は、図2〜3に示すように、前記収容孔開放端27側に存する大径の円板状の端軸部47の内側面(前記収容孔3の底面49側の面)に、傾斜段差50を介して、断面円形の係合軸部51が同心に連設されると共に、該係合軸部51の先端面(内側面)52に、前記軸部5の軸線Lと直角をなす段差面53を介して、より小径の円柱状の挿入軸部55が同心に連設されている。
前記係止孔部23,23,23,23に嵌め入れられている前記係合子25,25,25,25は、図2に示すように、円筒状を呈する前記リング状バネ部材36aの内周面56で弾性押圧されて、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される如くなされている。そして該係合子25は、前記係止孔部23の内周面59の内の、前記軸線L方向で見た対向部の何れか一方である係合内周面部(本実施例においては、前記収容孔3の開放端側の部分としての係合内周面部)60との係合によって、前記軸部5が前記収容孔3から抜け出る方向には移動が阻止されている。
又、前記挿入軸部55が、前記軸部材6とは別体の円形リング状を呈する支持リング部材61の中心部に設けられた挿通孔62に遊挿状態とされている。該支持リング部材61の外周部63の前記係合子25との対向側には、該係合子25の球面65と点状接触して該係合子25を支持し得る傾斜支持面66aとしての支持部66が、前記軸部5の先端方向に向けて周方向外側に傾斜するように設けられている。該傾斜支持面66aは、本実施例においては直線状の傾斜面として形成されており、前記軸線L方向に対する傾斜角度θ1は45度に設定されている。
又、前記挿入軸部55の先端に一体に設けられた受部67と前記支持リング部材61の、対向する側面69,70間に、スラスト軸受(本実施例においてはスラストニードル軸受)71が介在されており、該受部67は、該スラスト軸受71を介して、前記支持リング部材61に対して周方向での相対回転が可能となされている。該受部67は、本実施例においては図2に示すように、円形リング部材72を以て構成されており、前記挿入軸部55の先側部分をなすネジ軸部73が該円形リング部材72のネジ孔部75に螺合されている。そして、該円形リング部材72の外周面部に螺合されて前記ネジ軸部73の外周面76を押圧する止着ネジ77の締め付けによって、該円形リング部材72が前記挿入軸部55に固定され、これによって前記受部67が構成されている。
そして、図1において前記ナット46aを締め付けるに伴い、前記軸部材6がその軸線方向で引張されてその軸力が増大するようになされている。又、前記のように、係合子25が支持リング部材61の前記傾斜支持面66aで点状接触状態で支持されるようになされている。かかることから、前記ナット46aの締め付けによって前記軸部材6の軸力が増大するに伴い、該係合子25が該傾斜支持面66aから受ける外力が増大し、これに伴い、該係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力が減少する。そして、該係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力が所望外力値にまで減少した状態乃至該外力がゼロになった状態、即ち、前記軸力が所望遮断軸力値に達した状態で、前記軸部材6は、前記スラスト軸受71を介し前記支持リング部材61に対して前記軸線L回りに回転できる。このときの軸力は、前記ナット46aを含む前記保持手段46で保持される。
次に、かかる構成を有するトルクリミッタ1の作用をより詳しく説明する。今、前記ベルト等を所要に緊張させるに必要な緊張力が前記直線運動装置(緊張装置2a)2に要求される場合を考えると、この必要な緊張力は、負荷に繋がる直線運動装置2に連結されている前記トルクリミッタ1の前記軸部5の軸力を所望遮断軸力値にまで上昇させることによって確保することになる。
そのために先ず、前記軸部材6の軸力が所望遮断軸力値を取り得るように、前記4個の係合子25,25,25,25が前記係合軸部51の外周面57を弾性的に押圧することにより発生する摩擦力が所望値となるように、前記リング状バネ部材36aによる付勢力を所要に設定する。該摩擦力に起因して、前記係合子25と前記外周面57との間で、限界伝達トルク(伝達可能な最大トルク)が発生する。
この状態で、前記緊張装置2aが前記ベルト等を所要の緊張状態とするために前記ナット46aを締め付ける。このナット46aの締め付けにより、前記軸部材6が図1において右方向Fに移動し、該軸部材6の軸力が増大していく。この間において前記係合子25が受ける外力の状態を、図4(A)(B)(C)に基づいて説明する。ここで、前記係合子25が前記リング状バネ部材36aから受ける外力(係合子の半径方向で受ける外力)を第1の外力F1とし、前記係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力(係合子の半径方向で受ける外力)を第2の外力F2とし、前記係合子25が前記係止孔部23の前記係合内周面部60から受ける外力(係合子の半径方向で受ける外力)を第3の外力F3とし、前記係合子25が前記支持リング部材61の前記傾斜支持面66aから受ける外力(係合子の半径方向で受ける外力)を第4の外力F4とする。
図4(A)は、前記軸部材6の軸力がゼロのときの外力作用状態を示すものであり、前記係合子25が受ける外力は、リング状バネ部材36aから受ける第1の外力F1と、係合軸部51の外周面57から受ける第2の外力F2のみであり、このときにおける前記限界伝達トルクは最大である。
図4(B)は、前記軸力が前記所望遮断軸力値よりも小さいときの外力作用状態を示すものであり、前記係合子25が受ける外力は、リング状バネ部材36aから受ける第1の外力F1と、係合軸部51の外周面57から受ける第2の外力F2と、前記係合内周面部60から受ける第3の外力F3と、前記傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4である。該軸力が増大するに伴い、該係合子25が該傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4が増大していき、該係合軸部51の外周面57から受ける第2の外力F2が減少していく。このように、軸力の増大によって第2の外力F2が減少していくに伴い、前記限界伝達トルクは低減していき、トルク伝達余力(限界伝達トルクと、トルクリミッタ1の前記軸力に応じた伝達トルクとの差)が減少していく。
図4(C)は、前記軸力が前記所望遮断軸力値に達したときの外力作用状態を示すものであり、前記係合子25が受ける外力は、リング状バネ部材36aから受ける第1の外力F1と、係合軸部51の外周面57から受ける第2の外力F2と、前記係合内周面部60から受ける第3の外力F3と、前記傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4であるが、該係合子25が該傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4が増大して、前記外周面57から受ける第2の外力F2は、所望外力値にまで減少した状態にあり乃至ゼロの状態にある。該状態では、前記トルク伝達余力はゼロである。該状態で、前記係合子25,25,25,25と前記支持リング部材61とが一体化している。前記のように挿入軸部55が、前記軸部材6とは別体の円形リング状を呈する支持リング部材61の中心部に設けられた挿通孔62に遊挿されているため、このように支持リング部材61が係合子25,25,25,25と一体化した状態においては、挿入軸部55が挿通孔62の内周面に接触していない。
そして図2に示すように、前記挿入軸部55の先端に一体に設けられた前記受部67と前記支持リング部材61の、対向する側面69,70間に、前記スラスト軸受71が介在されている。かかることから、該状態で、該受部67は、前記スラスト軸受71を介し前記支持リング部材61に対して前記軸線L回りに回転することになる。即ち、前記係合子25が受ける前記第2の外力F2が、所望外力値にまで減少した状態にあり乃至ゼロの状態にあることから、最早、前記ナット46aを前記ネジ軸部39に対して締め付けることができず、該ナット46aと該ネジ軸部39とが一体となって回転することになるのである。この回転は、目視又はセンサーで検知できる。
これにより、前記緊張装置2aを介して前記ベルト等を所要に緊張させた状態が得られることになる。そして前記軸部5の設定軸力は、ナット46aとしての保持手段46で保持されることから、ベルト等の緊張状態がそのまま保持されることになる。
前記第4の外力F4は、前記係合子25が該傾斜支持面66aから受ける外力であり、該傾斜支持面66aに対して直交している。該第4の外力F4は、アキシャル方向成分(軸部材6の軸線L方向成分)とラジアル方向成分(軸部材6の軸線Lと直交する方向の成分)に分力される。本実施例においては、該傾斜支持面66aに点状接触状態となる係合子25の4個が、前記周壁部22の周方向に等角度(本実施例においては90度の角度)で配置されているため、各係合子25が受ける第4の外力F4の前記ラジアル方向成分は相殺される。従って、前記支持リング部材61はラジアル方向には移動できない。それ故、該支持リング部材61が前記挿入軸部55と接触しない。そして、各係合子25が受ける第4の外力F4の前記アキシャル方向成分は、前記スラスト軸受71に負荷されるため、該アキシャル方向成分は、軸部5と係合子25間の伝達トルクに影響を与えない。
かかる構成のトルクリミッタ1によるときは、前記したように、前記軸部5の軸力の増大に伴い、係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力が減少していく。即ち、限界伝達トルクが軸部材の軸力と無関係に一定であった従来のトルクリミッタとは異なり、限界伝達トルクが低減していくのである。かかることから、前記構成のトルクリミッタ1のトルク伝達余力は、遮断軸力値よりも小さい状態において、従来のトルクリミッタに比し大きいと言える。従って、該トルクリミッタ1は、軸力そのものを所望値に精度よく制御でき繰り返し特性に優れるのである。
前記遮断軸力値を設定するための主要な要素は、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される前記係合子25の個数と、前記付勢手段36による係合子25の押圧力と、前記傾斜支持面66aの傾斜角度がある。
前記所望遮断軸力値は、前記軸部5に必要とされる所望の軸力を考慮して設定されるものであるが、ここで、その設定手段について説明する。該所望遮断軸力値を設定するための主要要素は、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される前記係合子25の個数と、付勢手段の一種である前記リング状バネ部材36aを介しての係合子25の押圧力の大小と、図5に示す、該傾斜支持面66aに対する前記係合子25の接触点79と該係合子25の中心64とを結んだ直線が軸線Lとなす角度θ2の大小である。本実施例においては、前記傾斜支持面66aの前記軸線Lに対する傾斜角度θ1(図3)の大小である。
これらについてより具体的に説明すれば、該係合子25の配設個数を増やすほど遮断軸力値を大きくできる。この個数は前記係合軸部51の直径とも関係し、直径が大きいほど係合子25の配設個数を増やすことができる。
又、前記リング状バネ部材36aの付勢力が大きい程、前記係合子25が前記外周面57から受ける前記第2の外力F2をより大きく設定できる。これによって前記限界伝達トルクをより大きく設定でき、前記所望遮断軸力値をより大きく設定できることとなる。逆に、該付勢力が小さい程、該第2の外力F2をより小さく設定できる。これによって前記限界伝達トルクをより小さく設定でき、前記所望遮断軸力値を小さく設定できることとなる。
又、前記傾斜支持面66aの傾斜角度θ1が大きい程、該傾斜支持面66aから受ける外力F4のラジアル方向成分が小さくなるため、前記係合子25が前記外周面57から受ける外力の減少をより小さくでき、前記限界伝達トルクをより大きく設定できる。従って、前記所望遮断軸力値をより大きく設定できることになる。逆に、前記傾斜角度θ1が小さい程、前記傾斜支持面66aから受ける外力F4のラジアル方向成分が大きくなるため、前記係合子25が前記外周面57から受ける外力の減少をより大きく設定でき、前記限界伝達トルクをより小さく設定できる。従って、前記所望遮断軸力値をより小さく設定できることになる。
図6〜8は、本発明に係るトルクリミッタ1の他の実施例を示すもので、負荷を押す装置(例えば、ベルトやチェーン、ワイヤ等を押すことで緊張させる押圧装置2bとしての直線運動装置2)に応用されており、例えば円形孔からなる収容孔3が設けられてなる保持器4と、該収容孔3に収容され且つ軸線L回りに回転し得る軸部5が設けられた軸部材6を具えている。
前記保持器4は、本実施例においては図7〜8に示すように、上下端7,9が平坦に形成され且つ左右側面10,11が円弧面に形成された基板部12の一端面13に、段差15を介して円筒状部16が突設されており、該円筒状部16及び該基板部12に亘って、該円筒状部16と同心に、同径の円形の前記収容孔3が設けられている。又、該基板部12の他端面17に、該円筒状部16と同心に連結ネジ軸19が突設されている。該連結ネジ軸19は、負荷に繋がる前記押圧装置2bの端部に設けられたネジ孔21に螺合されることにより、前記保持器4が前記押圧装置2bに連結された状態となっている。
そして図7〜8に示すように、前記円筒状部16の周壁部22には、周方向に90度の角度で4個の係止孔部23,23,23,23が、夫々、該円筒状部16の半径方向に貫設されており、該係止孔部23の夫々には、該係止孔部23の内径に略等しい径を有する球形状の係合子(本実施例においては球体25aとしての係合子)25が嵌め入れられるようになされている。
又、図7〜8に示すように、前記円筒状部16の外周面26の収容孔開放端27寄り部位に嵌着周溝29が設けられており、該嵌着周溝29には、該円筒状部16が略密接状態で挿入される円形挿通孔30を有するストッパリング31の外側面32を外側から支持するスナップリング33が嵌着されている。そして、前記段差15と該ストッパリング31の内側面35との間に、前記係合子25を前記円筒状部16の半径方向に押圧するための、バネ性に富む金属素材からなる円筒状のリング状バネ部材36aとしての付勢手段36が、前記周壁部22を取り囲むように装着されており、該リング状バネ部材36aが該周壁部22から脱落するのを前記ストッパリング31が阻止している。
前記軸部材6は丸軸状に形成されており、前記保持器4の前記収容孔3に収容される前記軸部5の外側面37に、該軸部5の軸線L方向に延長するネジ軸部39が連設されている。そして該ネジ軸部39は、図6、図8に示すように、その先側の部分40が、基台41に立設された軸受立壁42に設けられた円形挿通孔43に挿通せしめられ、該軸受立壁42の内側に存するネジ軸部分81に、保持手段46を構成するナット46bが螺合されている。
そして前記軸部5は、図7〜8に示すように、断面円形の係合軸部51の内側面(前記収容孔3の底面82側の面)に、傾斜段差83を介して、円板状の端軸部85が同心に連設されると共に、該係合軸部51の外側面(前記収容孔開放端27側の面)に、前記軸部5の軸線Lと直角をなす段差面86を介して、より小径の挿入軸部55が同心に連設されている。そして該挿入軸部55の外端に、円板状の受部67が同心に一体に設けられ、該受部67の内側面87は、前記軸線Lと直交する面として形成されている。
前記受部67は、本実施例においては図7〜8に示すように、挿入軸部55の端部に同心に設けられた円板状部90を以て構成されており、該円板状部90の軸線Lに沿って、該円板状部90の内側面91で開口するネジ孔部92が設けられている。そして、前記挿入軸部55の外端に連設されたネジ軸93が該ネジ孔部92に螺合され、該螺合状態で、該円板状部90の外周面で螺合されて前記ネジ軸93の外周面95を押圧する止着ネジ96の締め付けによって、該円板状部90が前記挿入軸部55に固定され、これによって、該係合軸部51の外端に、円板状の受部67が同心に一体に設けられた構成となっている。
そして、前記係止孔部23,23,23,23に嵌め入れられている前記係合子25,25,25,25は、図7に示すように、前記リング状バネ部材36aを介して、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される如くなされている。該係合子25は、前記係止孔部23の内周面59の内の、前記軸線L方向で見た対向部の何れか一方である係合内周面部(本実施例においては、前記収容孔3の底面82側の部分としての係合内周面部)60との係合によって、前記軸部5が前記底面82に向けて移動する方向には移動が阻止されるようになされている。
又、前記挿入軸部55が、前記軸部材6とは別体の円形リング状を呈する支持リング部材61の中心部に設けられた挿通孔62に遊挿状態とされている。該支持リング部材61の外周部63の前記係合子25との対向側には、該係合子25の球面と点状接触して該係合子25を支持し得る傾斜支持面66aが、前記軸部5の先端方向に向けて周方向外側に傾斜するように設けられている。該傾斜支持面66aは、本実施例においては直線状の傾斜面として形成されており、前記軸線L方向に対する傾斜角度θ1は45度に設定されている。又、前記挿入軸部55の先端に一体に設けられた受部67と前記支持リング部材61との対向する側面69,70間にスラスト軸受(本実施例においてはスラストニードル軸受)71が介在されており、該受部67は、前記支持リング部材61に対して周方向での相対回転が可能となされている。
なお、前記挿入軸部55の遊挿及び、前記スラスト軸受71の介在は、前記ネジ軸93を前記ネジ孔部92に螺合する前に行われる。
然して、かかる構成を有するトルクリミッタ1によるときは、前記ナット46bの締め付けによって前記軸部材6がその軸線L方向で圧縮され、該軸部材6の軸力が増大することにより、前記係合子25が前記支持リング部材61の前記傾斜支持面66aで支持される。そして実施例1で説明したところと同様にして、該軸力が増大するに伴い、該係合子25が該傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4が増大していき、該係合軸部51の外周面57から受ける第2の外力F2が減少していく。このように、軸力の増大によって第2の外力F2が減少していくに伴い、前記限界伝達トルクは低減していき、トルク伝達余力(限界伝達トルクと、トルクリミッタ1の前記軸力に応じた伝達トルクとの差)が減少していく。
図9は、前記軸力が前記所望遮断軸力値に達したときの外力作用状態を示すものであり、前記係合子25が受ける外力は、リング状バネ部材36aから受ける第1の外力F1と、係合軸部51の外周面57から受ける第2の外力F2と、前記係合内周面部60から受ける第3の外力F3と、前記傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4であるが、該係合子25が該傾斜支持面66aから受ける第4の外力F4が増大して、前記外周面57から受ける第2の外力F2は、所望外力値にまで減少した状態にあり乃至ゼロの状態にある。該状態では、前記トルク伝達余力はゼロである。該状態で、前記係合子25,25,25,25と前記支持リング部材61とが一体化している。前記のように挿入軸部55が、前記軸部材6とは別体の円形リング状を呈する支持リング部材61の中心部に設けられた挿通孔62に遊挿されているため、このように支持リング部材61が係合子25,25,25,25と一体化した状態においては、挿入軸部55が挿通孔62の内周面に接触していない。
そして、前記挿入軸部55の先端に一体に設けられた前記受部67と前記支持リング部材61との、対向する側面69,70間に、前記スラスト軸受71が介在されている。かかることから、該状態で、該受部67は、前記スラスト軸受71を介し前記支持リング部材61に対して前記軸線L回りに回転することになる。即ち、前記係合子25が受ける前記第2の外力F2が所望外力値にまで減少した状態にあり乃至ゼロの状態にあることから、最早、前記ナット46bを前記ネジ軸部81に対して締め付けることができず、該ナット46bが該ネジ軸部81と一体化して回転することになるのである。この回転は、目視又はセンサーで検知できる。
これにより、前記押圧装置2bを介して前記ベルト等を所要に緊張させた状態が得られることになる。そして前記軸部材6の所望軸力は、ナット46bとしての保持手段46で保持されることから、ベルト等の緊張状態がそのまま保持されることになる。
前記第4の外力F4は、前記係合子25が該傾斜支持面66aから受ける外力であり、該傾斜支持面66aに対して直交している。該第4の外力F4は、アキシャル方向成分(軸部材6の軸線L方向成分)とラジアル方向成分(軸部材6の軸線Lと直交する方向の成分)に分力される。本実施例においては、該傾斜支持面66aに点状接触状態となる係合子25の4個が、前記周壁部22の周方向に等角度(本実施例においては90度の角度)で配置されているため、各係合子25が受ける第4の外力F4の前記ラジアル方向成分は相殺される。従って、前記支持リング部材61はラジアル方向には移動できない。それ故、該支持リング部材61が前記挿入軸部55と接触しない。そして、各係合子25が受ける第4の外力F4の前記アキシャル方向成分は、前記スラスト軸受71に負荷されるため、該アキシャル方向成分は、軸部5と係合子25間の伝達トルクに影響を与えない。
かかる構成のトルクリミッタ1によるときは、前記したように、前記軸部材6の軸力の増大に伴い、係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力が減少していく。即ち、限界伝達トルクが軸部材の軸力と無関係に一定であった従来のトルクリミッタとは異なり、限界伝達トルクが低減していくのである。かかることから、前記構成のトルクリミッタ1のトルク伝達余力は、遮断軸力値よりも小さい状態において、従来のトルクリミッタに比し大きいと言える。従って、該トルクリミッタ1は、軸力そのものを所望値に精度よく制御でき繰り返し特性に優れるのである。
そして、該第2の外力F2が所望外力値に減少した状態乃至該第2の外力F2がゼロになって前記軸力が所望遮断軸力値に達した状態で、前記軸部5は、前記スラスト軸受71を介して前記支持リング部材61に対して該軸部材6の軸線L回りに回転できる。そしてこのときの軸力が、前記ナット46bとしての保持手段46で保持される。
なお前記所望遮断軸力値は、前記と同様に、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される前記係合子25の個数や、付勢手段の一種である前記リング状バネ部材36aを介しての係合子25の押圧力の大小で設定できる。又、図10に示すように、該傾斜支持面66aに対する前記係合子25の接触点79と該係合子25の中心64とを結んだ直線が前記軸線Lとなす角度θ2の大小で設定できる。本実施例においては、前記傾斜支持面66aの前記軸線Lに対する傾斜角度θ1の大小で設定できる。
図11〜12は、本発明に係るトルクリミッタ1のその他の実施例を示すものであり、負荷を引く場合(例えば、緊張装置2aとしての直線運動装置2に応用された場合)、と負荷を押す場合(例えば、押圧装置2bとしての直線運動装置2に応用された場合)の双方に利用可能に構成されており、前記実施例1と前記実施例2における2つの機能を兼ね備える如く構成されている。
トルクリミッタ1は、より具体的には、負荷に繋がる直線運動装置2に連結され且つ例えば円形孔からなる収容孔3が設けられてなる保持器4と、該収容孔3内に収容され且つ軸線L回りに回転し得る軸部5を具えており、該軸部5は、断面円形の係合軸部51の、軸線L方向で見た左右端に、挿入軸部55,55が同心に連設されている。そして、各挿入軸部55,55が、前記軸部5とは別体の円形リング状を呈する支持リング部材61,61の中心部に設けられた挿通孔62,62に遊挿されている。
前記保持器4の構成、前記係合子25の構成、該係合子25の保持器4の周壁部22に対する取り付けの構成、前記付勢手段36の構成、前記支持リング部材61の構成、前記受部67の構成は、実施例1及び実施例2における場合と同様であるため、同様の構成部分には、前記と同一の符号を付して具体的な説明を省略している。
トルクリミッタ1をこのように構成する場合は、図12(A)に示すように、前記ナット46aを締め付けるに伴い、前記軸部材6がその軸線L方向で引張されてその軸力が増大するようになされている。そして前記のように、係合子25が、左側の支持リング部材61aの前記傾斜支持面66aで点状接触状態で支持されるようになされている。一方、図12(B)に示すように、前記ナット46bを締め付けるに伴い、前記軸部材6がその軸線L方向で圧縮されてその軸力が増大するようになされている。そして前記のように、係合子25が、右側の支持リング部材61bの前記傾斜支持面66aで点状接触状態で支持されるようになされている。
かかることから、前記実施例1、実施例2で詳述したように、前記軸部材6がその軸線L方向に引張され或いはその軸線L方向で圧縮されて前記軸部5の軸力が増大することによって、前記係合子25が前記支持リング部材61,61の何れか一方で支持されるようになされており、該軸力が増大することよって、該係合子25が該支持リング部材61から受ける前記第4の外力F4が増大して、該係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける前記第2の外力F2が減少するようになされている。
このように構成されたトルクリミッタ1によるときは、負荷を引くときの軸力(図12(A)において矢印P1方向に引くとき)と、負荷を押すとき(図12(B)において矢印P2方向に押すとき)の軸力を個別に設定できる利点がある。例えば、押すときは所望遮断軸力値を大きくし、引くときは所望遮断軸力値を小さくする。
なお前記所望遮断軸力値は、前記と同様に、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される前記係合子25の個数や、付勢手段の一種である前記リング状バネ部材36aを介しての係合子25の押圧力の大小、前記傾斜支持面66aの前記軸線Lに対する傾斜角度θ1の大小等によって設定できる。
図13は、負荷を引く場合と負荷を押す場合の双方に利用可能に構成されたトルクリミッタ1の他の使用態様を示すものであり、前記軸部5に同心に駆動ネジ軸94が連設されている。又、前記保持器4の前記基板部12に、該駆動ネジ軸94と同心に駆動軸部98が突設されている。そして該駆動軸部98を、図示しない駆動装置を介して図示しないモータで正逆回転させると、前記係合子25と前記係合軸部51の外周面57との間で発生する摩擦力による伝達トルクによって、トルクリミッタ1と共に前記駆動ネジ軸94を回転させ得るようになされている。
そして、前記駆動ネジ軸94には駆動ナット104が螺合されており、該駆動ナット104は、該駆動ネジ軸94の回転の動きを該駆動ネジ軸94の軸線方向の動きに変換するものである。本実施例においては、該駆動ナット104は、該駆動ネジ軸94の該駆動ナット104より先側の部分108を収容するための筒体114の内部の下端部分118に内挿状態となされ該下端部分118に固定されている。該駆動ナット104と該筒体114とは、前記直線運動装置2の構成要素の一部分である。
前記駆動ネジ軸94の正逆回転に伴う前記筒体114の直線運動によって、トルクリミッタ1を、負荷を引く場合にも負荷を押す場合にも利用できる。
然して、前記駆動ネジ軸94がその軸線方向に引張され或いはその軸線方向で圧縮されて前記軸部5の軸力が増大することによって、前記係合子25が前記支持リング部材61,61の何れか一方で支持される。該軸力が増大することによって、該係合子25が該支持リング部材61から受ける前記第4の外力F4が増大し、該係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける前記第2の外力F2が減少する。そして、該第2の外力F2が所望外力値にまで減少した状態となり乃至ゼロの状態になると、前記駆動軸部98が回転し続けても(従って、前記保持器4と前記支持リング部材61とが前記係合子25を介して一体となって軸線回りに回転し続けても)、前記スラスト軸受71の作用によって、支持リング部材61は回転状態にあっても前記受部67は停止状態となり、前記駆動ネジ軸94の回転は停止することになる。そして、このときの軸力は、前記駆動ナット104を含む保持手段46で保持される。
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
(1) 前記遮断軸力値を設定するための要素の一つとしては、前記のように、前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧される前記係合子25の個数がある。該係合子25の個数は複数個であればよいのであるが、該係合子25を、前記のような球体25aとして構成するのではなく、例えば図14に示すような、対向部が平行するカット面97,97として形成された樽形球体25bとして構成するときは、該樽形球体25bのカット面97,97間の距離を前記球体25aの直径よりも小さくできる。従って、前記球体25aと該樽形球体25bを、同一直径を有する前記周壁部22に配置する場合の取り付け個数で比較すれば、樽形球体を取り付ける場合の方が、より多くの係合子25を配置できることになる。該係合子25は、前記軸力が増大するに伴い前記支持リング部材61から受ける外力が増大していき係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力が減少する限り、円板状等に構成することもできる。
(2) 図15は、前記付勢手段36を構成する円筒状のリング状バネ部材36aの他の態様を示すものであり、その内周面56の一端側の部分は、軸線方向で見た一端99から他端100に向けて小径となるテーパ状面部101に形成されている。該テーパ状面部101は、前記係合子25を前記係合軸部51の外周面57に弾性的に押圧する。そして、該内周面56の他端側の部分は、雌ネジ内周面部102とされている。
そして該雌ネジ内周面部102は、図15に示すように、前記周壁部22の外周面の収容孔開放端27側の部分に設けられた雄ネジ外周面部103に螺合するように構成されている。そして、該雄ネジ外周面部103に対する該雌ネジ内周面部102のネジ込み量が大きくなるにつれて、前記テーパ状面部101による、前記係合軸部51の外周面57に対する係合子25の弾性的な押圧力を大きくすることができる。これによって、リング状バネ部材36aによる該外周面57に対しての係合子25の弾性的な押圧力を所要に調節することができるのである。この調節状態は、前記リング状バネ部材36aの他端部分に設けられた鍔部120に設けたネジ孔121に螺合する止着ネジ122を締め付けて該止着ネジ122の先端123を前記雄ネジ外周面部103に押圧状態とすることにより保持される。
(3) 前記付勢手段36は、前記した、周方向に閉じた円筒状を呈するリング状バネ部材36aを以て構成することの他、図16に示すように、周面部に割溝105が設けられた割溝付きリング状バネ部材36bを以て構成されることもある。
又、図17に示すように、前記係止孔部23に嵌め入れられた係合子25を、該係止孔部23に嵌め入れた圧縮バネ(コイルバネや板バネ等)117で所要に押圧するように構成することもできる。この場合、例えば図17に示すように、該係止孔部23の外端側の部分に設けた雌ネジ部106に調節ネジ107を螺合し、該調節ネジ107のねじ込み量を調整することによって、前記外周面57に対しての係合子25の弾性的な押圧力を所要に調節することができる。このように構成する場合、周方向に設けられた複数個の係止孔部23に螺合されている調節ネジ107の夫々を同時に同量分だけねじ込み操作できるように、一括ねじ込み手段を付設することもできる。
その他、前記付勢手段36は、エア圧や油圧等の流体圧を利用して構成したり、電磁弁を用いて構成して、該係合子25を外周面57に対して弾性的に押圧でき且つその押圧力を調整するようになすこともできる。要は、何らかの手段で係合子25を外周面57に対して弾性的に押圧でき且つその押圧力を調整できるものであればよい。
又、前記付勢手段36を、前記リング状バネ部材36aや割溝付きリング状バネ部材36bを以て構成する場合、これらを、金属とゴムとの複合素材を用いて構成することもできる。
(4) 前記支持リング部材61に設けられている前記傾斜支持面66aは、前記した直線状の傾斜面として形成されることの他、例えば図18に示すような湾曲面として構成されることもある。この場合も、係合子25は、湾曲面からなる該傾斜支持面66aに点状接触する。又前記支持部66は、前記係合子25と点状接触し得る限り、前記傾斜支持面66aとしての他、点状乃至線状等を呈するものであってもよい。
(5) 前記軸部5をその軸線回りに回転させると共に、該軸部5の軸力を保持手段46で保持する構成は、前記のように、通常のネジ軸39と通常のナット46a,46bとの組み合わせで構成することの他、ボールネジとボールネジナットとの組み合わせで構成することもできる。又、軸体と、該軸体の軸線に対して傾く軸線を有する一対のローラとの組み合わせで構成され、該一対のローラを回転させることによって該軸体を回転させ得るように構成されたものの他、磁気ネジを用いて構成することもできる。
(6) 前記スラスト軸受71は、スラストニードル軸受の他、スラスト玉軸受、スラストころ軸受、各種の素材からなる板状の軸受であってもよい。
(7) 図19は、前記係合軸部51の外周面57に、前記係合子25の球面部分109を嵌め入れるための断面円弧状の浅い荷重分散周溝110を周方向に連続して設けた場合を示している。溝深さは、例えば0.2〜0.3mm程度に設定される。このように構成する場合は、トルクリミッタの使用条件によって、より大きな軸力が要求されるために前記係合軸部51の外周面57に対する係合子25による押圧力が大なるときも、前記した点状接触状態における場合とは異なり、該係合子25が該荷重分散周溝110に円弧状の線状接触状態となって荷重を分散させることができる。従って、所望遮断軸力値を大きく確保するために前記押圧力を大きくしたときも、該外周面57に過大な応力が作用して係合軸部51が損傷されるのを防止できることになる。そして、このように周溝として構成する場合は、前記周壁部22の周方向に配置する係合子25の位置関係によらず、該係合子25を該荷重分散周溝110に嵌め入れることができる。
図19には、荷重分散周溝110が設けられている場合における第1の外力F1、第2の外力F2、第3の外力F3、第4の外力F4の作用状態が併せて示されている。この状態で、前記ナット46aや前記ナット46bの締め付けによって前記軸部材6の軸力が増大する。更にナット46aやナット46bを締め付けることにより、前記係合子25が前記係合軸部51の外周面57から受ける外力が減少し、前記軸部材6の軸力が所望遮断軸力値に達する。
図20は、同様の目的で、該係合軸部51の外周面57に、球面状の浅い荷重分散凹部113を前記係合子25の配置に併せて設けた場合を示している。荷重分散凹部113の深さは、例えば0.2〜0.3mm程度に設定される。このように構成するときは、該係合子25が該荷重分散凹部113に球面接触状態となって荷重を分散させることができる。図20には、荷重分散凹部113が設けられている場合における第1の外力F1、第2の外力F2、第3の外力F3、第4の外力F4の作用状態が併せて示されている。図21(A)は、前記第2の外力F2がゼロではあるが、前記係合子25が前記荷重分散凹部113に収まった状態を示している。この状態で前記ナット46aや前記ナット46bを更に締め付けることにより、図21(B)に示すように、該係合子25が該荷重分散凹部113から脱した状態となる。このとき前記係合子25が、前記リング状バネ部材36aを、ラジアル方向外側へ微小変位させ、該係合子25が荷重分散凹部113から脱出し、前記軸部材6の軸力が所望遮断軸力値に達した状態となり得る。
図22は、前記荷重分散周溝110の溝底部分111に更に、球面状の浅い荷重分散凹部113を、前記係合子25の配置に合わせて設けた場合を示している。
又図23(A)(B)は、荷重分散によって前記傾斜支持面66aを保護するために、該傾斜支持面66aの傾斜方向に沿って、断面円弧状で直線状を呈する浅い荷重分散直線状溝115を設けた場合を示している。
又図23(A)(C)は、前記付勢手段36を前記リング状バネ部材36aや前記割溝付きリング状バネ部材36bを以て構成する場合、荷重分散によってこれらを保護するために、該リング状バネ部材36aや該リング状バネ部材36bの内周面56に、係合子25を嵌め入れる、断面円弧状の浅い荷重分散周溝116を設けた場合を示している。又図24は、同様の目的で、該内周面56に、球面状の浅い荷重分散凹部117を周方向に所要角度で設けた場合を示している。
図25は、前記係合軸部51の外周面57に設けられた、断面V字状を呈する荷重分散周溝110を示すものであり、又、前記傾斜支持面66aにも、断面V字状を呈する荷重分散直線状溝を設けることができる。
(8) 前記収容孔3は、図1や図6等で示すような有底でなく、貫通孔として構成されることもある。