オイルパルス工具は打撃力を発生させるために油圧を用い、回転力をある角度において急激に出力軸に取り付けた先端工具に打撃力を与える。打撃時においては、先端工具側からの反力を受けることになり、この反力は減速機の支持部に加わるために、オイルパルス工具において減速機を設けた場合、反力が大きくなり、打撃時の振動が増大する。そのため、打撃時の振動を小さくするために、モータの回転軸とオイルパルス機構の間に減速機を設けないダイレクトドライブ機構とすることが提案されている。
しかし、ダイレクトドライブ機構とするためには、モータを低速高トルク型にする必要があり、一般的な減速機を使用する高速低トルク型と比べ大型化してしまう。さらに低速高トルク型のモータを使用した場合、ロータを支持するベアリング部の強度を十分確保する必要がある。さらに、工具を使用する際に本来の使用目的とは異なる状況(落下等)が発生した際にロータ支持部の強度が不足すると、ロータの慣性力により工具が破損してしまう可能性があるので、ロータの支持部を十分な強度とすることが重要となる。
オイルパルス機構における打撃後には、先端工具側からの反力の作用によりオイルパルユニット回転数が低くなるが、ダイレクトドライブ機構のブラシレスモータにおいては、減速機がないためモータ回転数も低くなる。ブラシレス直流モータを用いた場合、反力によってモータの回転数が低くなると、駆動回路に大きな電流が発生してスイッチング素子が異常に温度上昇する場合があり得る。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的はモータ及びオイルパルスユニット等の動力伝達機構の冷却効率を高めて耐久性を向上させた電動工具を提供することにある。
本発明の別の目的は、回転軸を支持するベアリング部の強度を向上させると共に、小型化を実現した電動工具を提供することにある。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
本発明の一つの特徴によれば、モータと、モータにより回転駆動されモータの回転力を伝達する動力伝達機構と、モータ及び動力伝達機構を収容するハウジングを有し、動力伝達機構に取り付けられる先端工具により締結部材を締め付ける電動工具において、ハウジングの内部にモータと動力伝達機構を収容し、動力伝達機構とモータの間に、モータの回転軸用の一つのベアリングを保持し、ベアリングをハウジングに固定するためのベアリング保持部材を設け、このベアリング保持部材に動力伝達機構側とモータ側との間を通風させる複数の通風口を設けた。また、複数の通風口の間を仕切る支柱を設け、この支柱がモータの巻線間の隙間の位置に配置されるようにした。ハウジングのモータを収容する部分と動力伝達機構を収容する部分には、空気取入口と空気排出口が形成され、ファンによって空気取入口から取り入れられた外気が、通風口を通るように流れ、空気排出口よりハウジングの外部に排出されるように構成した。つまり、ベアリング保持部材の通風口によって、動力伝達機構側とモータ側との間の空気の移動が可能になる。
本発明の別の特徴によれば、ファンは、モータの後方に設けられた電動ファンであり、電動ファンは軸方向に吸引して円周方向の一方向に排出させる遠心ファンである。ベアリング保持部材は、中心部にベアリングを収容する円形の貫通穴が形成された金属製の部材であり、貫通穴に保持されたベアリングの内周側において、モータの回転軸と動力伝達機構の入力軸が連結される。ベアリング保持部材の貫通穴近傍に、ベアリングの外輪が軸方向に抜けないようにするための保持手段が設けられる。
本発明のさらに別の特徴によれば、通風穴は、円周方向に複数形成され、通風口の数はモータのスロット数の約数(但し2以上)とすると好ましい。ここで、約数には、スロット数と同数(1で割れる数)も含む。空気取入口は動力伝達機構の外周側のハウジング部分に形成され、空気排出口はモータの後方のハウジング部分に形成される。さらに通風口の内周側の径位置は、モータのロータの外周側の径位置よりも外側に位置するように形成すると好ましい。
請求項1の発明によれば、動力伝達機構とモータの間に、モータの回転軸用の一つのベアリングを保持し、ベアリングをハウジングに固定するためのベアリング保持部材を設け、ベアリング保持部材にモータ側と動力伝達機構側との間を通風させる通風口を設けたので、動力伝達機構側からモータ側へ、或いは逆方向に冷却用の空気を通過させることができ冷却効果を高めることができる。また、支柱の位置がモータの巻線間の隙間の位置と一致するようにしたので、通風口はモータの巻線と対向する位置に配置されることになり、通風口を介してオイルパルスユニット側からモータ側に流れる空気は、かならず巻線に当たることになり冷却効果が一層高まる。さらに、ベアリング保持部材によってベアリングを保持するので、ロータの支持部に強度を持たせることが可能となり耐久性を向上させることが可能となる。
請求項2の発明によれば、ハウジングに空気取入口と空気排出口が形成され、ファンによって空気取入口から取り入れられた外気が、通風口を通るように流れ、空気排出口よりハウジングの外部に排出されるので、発熱しやすいモータと動力伝達機構の両方を効果的に冷却することができる。
請求項3の発明によれば、ファンは、モータの後方に設けられた電動ファンであり、モータとは独立に制御することが可能であるので任意の風量を実現できる。また電動ファンは軸方向に吸引して円周方向の一方向に排出させる遠心ファンであるので、小さいファンで高い送風効率を実現できる。
請求項4の発明によれば、ベアリング保持部材は、中心部にベアリングを収容する円形の貫通穴が形成された金属製の部材であるので剛性を高くすることができる。また、貫通穴に保持されたベアリングの内周側において、モータの回転軸と動力伝達機構の入力軸が連結されるので、落下等の衝撃が加わってもベアリング保持部材によって衝撃力が分散して伝わるので壊れにくく、耐久性を高めることが可能となる。
請求項5の発明によれば、ベアリング保持部材の貫通穴近傍に、ベアリングの外輪が軸方向に抜けないようにするための保持手段を設けたので、落下等の衝撃によって軸方向の力が加わってもベアリングがずれることを防止できる。
請求項6の発明によれば、通風穴は、円周方向に複数形成されるので、通風効率を良くすることができる。
請求項7の発明によれば、通風口の数はモータのスロット数の約数(但し2以上)であるので、モータの巻線の位置に効果的に冷却風を導く事ができる。
請求項8の発明によれば、空気取入口は動力伝達機構の外周側のハウジング部分に形成され、空気排出口はモータの後方のハウジング部分に形成されるので、動力伝達機構としてオイルパルスユニット等の発熱の多い機構を用いた場合であっても効果的に冷却することができる。
請求項9の発明によれば、通風口の内周側の径位置は、モータのロータの外周側の径位置よりも外側に位置するので、より発熱の多い固定子の巻線の外周側に多くの冷却風を導入することができ、冷却効果を更に高めることができる。
請求項10の発明によれば、ベアリング保持部材の通風口によって、動力伝達機構側とモータ側との間の空気の移動が可能になるので、通風口の形状を設定することによって所望の箇所に冷却風を導くことが可能になる。
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。尚、本明細書の説明においては電動工具の例としてオイルパルス工具を用いて説明し、その上下及び前後の方向は、図1中に示した方向として説明する。
図1は本発明の実施形態に係るオイルパルス工具の全体を示す断面図である。オイルパルス工具1は、外部から電源コード2により供給される電力を利用し、モータ3を駆動源とし、モータ3によって動力伝達機構であるオイルパルスユニット4を駆動し、オイルパルスユニット4に連結された出力軸5に回転力と打撃力を与えることによってソケットビット等の図示しない先端工具に回転打撃力を連続的又は間欠的に伝達させてネジ締めやボルト締め等の作業を行う。
電源コード2により供給される電源は、直流電源又はAC100V等の交流電源であり、交流の場合はオイルパルス工具1内に図示しない整流器を設けて直流に変換した後に、モータの駆動用回路に送られる。モータ3は、内周側に永久磁石を有する回転子3bを有し、外周側に鉄心3aに巻かれた巻線3cを有する固定子を有するブラシレス直流モータであって、2つのベアリング10a、10bによってその回転軸11が回転可能なように支持される。前方のベアリング10bは大きな径のベアリングであり、インナプレート32を介してハウジング6の筒状の胴体部6a内に固定される。後方のベアリング10aは、前方のベアリング10bに比べて小さい径のベアリングであり、胴体部6aと一体に形成されたベアリングホルダ15に固定される。ハウジング6はプラスチック等の成型により胴体部6aとハンドル部6bが一体的に製造される。
モータ3の後方には、モータ3を駆動するための駆動回路基板7が配設され、この回路基板上にはFET(Field effect transistor)などのスイッチング素子7aにより構成されるインバータ回路及び回転子3bの回転位置を検出するためのホールICなどの位置検出素子が搭載される。胴体部6aの内側後端付近には、冷却用の冷却ファンユニット17が設けられる。冷却ファンユニット17は、モータ3とは独立して回転する電動式であり、前方の軸付近から吸引して円周方向の一方向に排出させる遠心ファンを用いることができ、小型の直流モータにより駆動される。
ハウジング6は、胴体部6aから略直角に下方向に延びるハンドル部6bを有し、ハンドル部6bの取り付け部付近にはトリガスイッチ8が配設される。ハンドル部6bの内部にはスイッチ回路基板14が設けられ、トリガスイッチ8を引いた量に比例する信号がモータ制御基板9aに伝達される。ハンドル部6bの下側には、複数の回路基板9が配置され、これにはモータ制御基板9a及び冷却ファン用の電源回路基板9bが含まれる。
胴体部6a内の前方側に収容されるオイルパルスユニット4は、入力軸であるライナプレート23がモータ3の回転軸11に直結され、モータ3の回転が減速されずに直接伝達される。そのため、ベアリング10bの内側において、ライナプレート23の連結部23aが回転軸11の先端に形成された六角穴11fに嵌合する。このようにライナプレート23と回転軸11の連結部分が、インナプレート32と軸方向の同位置に配置されることにより、連結部分の剛性を高めることが可能になる。
トリガスイッチ8が引かれてモータ3が起動されると、モータ3の回転はオイルパルスユニット4に伝達される。オイルパルスユニット4の内部にはオイルが充填されていて、出力軸5に負荷がかかっていないとき、又は、負荷が小さい際には、オイルの抵抗のみでモータ3の回転にほぼ同期して出力軸5が回転する。出力軸5に強い負荷がかかると出力軸5の回転が止まり、オイルパルスユニット4の外周側のライナのみが回転を続け、1回転に1箇所、オイルの圧力が急激に上昇し、出力軸5に大きな締付トルク(打撃力)が作用し、出力軸5を大きな力で回転させる。以後、同様の衝撃動作が数回繰り返され、締結対象が設定トルクで締め付けられるまで打撃力が間欠的に繰り返し伝達される。
図2(1)は、図1のオイルパルスユニット4の断面図であり、図3は図2のC−C断面であって、オイルパルスユニット4の使用状態における一回転の動きを8段階で示した断面図である。オイルパルスユニット4は、主に、モータ3と同期して回転する駆動部分と、先端工具が取り付けられる出力軸5と同期して回転する出力部分の2つの部分により構成される。モータ3と同期して回転する駆動部分は、モータ3の回転軸に直結されるライナプレート23と、その外周側で前方に延びるように固定される外径が略円柱形のライナ21と、ライナ21の前方内周側に固定されるローワプレート26を含んで構成される。出力軸5と同期して回転する出力部分は、メインシャフト24と、メインシャフト24にバネを介して取付けられるブレード25a、25b(図3)を含んで構成される。
メインシャフト24はローワプレート26を貫通し、ライナ21内で回転できるように保持され、ライナ21とメインシャフト24の間には、トルクを発生するための作動油(オイル)を充填してライナ21の両端に取り付けたライナプレート23とローワプレート26によってオイルは密封される。ローワプレート26とメインシャフト24、及び、ライナ21とライナプレート23の間には、相互間の気密性を確保するためのOリング27、28が設けられる。なお、ライナ21にはオイルの圧力を高圧室から低圧室に逃がすリリーフバルブ22があり、発生するオイルの最大圧力を制御し、締め付けトルクを調整することができる。
ライナ21の内部は図3に示すような略4つの領域を形成するような断面を有するライナ室が形成される。メインシャフト24の外周部には、対向する2個の溝部にバネを介してブレード25a、25bが嵌挿され、ブレード25a、25bがライナ21の内面に当接するようにバネによって円周方向に付勢される。ブレード25a、25b間のメインシャフト24の外周面には軸方向に延びる二本の突条たる凸状シール面26a、26bが設けられる。ライナ21の内周面には山形状に盛り上げて成る凸状シール面27a、27bと、凸状部28a、28bが形成される。
オイルパルス工具1はボルト締め付け時において締め付けボルトの座面が着座すると、メインシャフト24に負荷がかかり、メインシャフト24、ブレード25a、25bはほぼ停止した状態になり、ライナ21だけ回転し続ける。モータ3の回転によるライナ21の回転に伴い、1回転に1回の衝撃パルスが発生するが、この衝撃パルス発生時においてオイルパルス工具1内は、ライナ21の内周面に形成した凸状シール面27aとメインシャフト24の外周面に形成した凸状シール面26aが接触する。同時に、ライナ21の内周面に形成した凸状シール面27bとメインシャフト24の外周面に形成した凸状シール面26bと接触する。このようにライナ21の内周面に形成した一対の凸状シール面と、メインシャフト24の外周面に形成した一対の凸状シール面がそれぞれ当接することにより、ライナ21の内部は二つの高圧室Hと2つの低圧室Lに仕切られる。そして、前記高圧室Hと低圧室Lとの圧力差によりメインシャフト24が締め付けボルトを締め付けるべく回転する。
次に、オイルパルスユニット4の動作手順を説明する。まず、トリガ8を引くことによりモータ3が回転され、これに伴いライナ21も同期して回転する。図3の(1)〜(8)は、ライナ21がメインシャフト24に対して相対角で1回転する状態を示した図である。前述したように、出力軸5に負荷のかかっていないとき、又は、負荷が小さい時には、オイルの抵抗のみでメインシャフト24はモータ3の回転にほぼ同期して回転する。出力軸5に強い負荷がかかるとそれに直結されたメインシャフト24の回転が止まり、外側のライナ21のみが回転を続ける。
図3の(1)は、メインシャフト24に衝撃パルスによる打撃力が発生するときの位置関係を示す図である。この(1)に示す位置が、1回転に1箇所あるオイルを密閉する位置である。ここでは、凸状シール面27aと26aが、シール面27bとシール面26bが、ブレード25aと凸状部28aが、ブレード25bと凸状部28bがそれぞれメインシャフト24の軸方向全域において当接し、これによりライナ21の内部空間が2つの高圧室と2つの低圧室の4室に区画される。
ここで高圧、低圧とは、内部に存在するオイルの圧力である。さらにモータ3の回転によってライナ21が回転すると、高圧室の容積は減少するためオイルは圧縮されて瞬間的に高圧が発生し、この高圧はブレード25a、25bを低圧室側に押しやる。その結果、メインシャフト24には上下のブレード25a、25bを介して瞬間的に力が作用して強力なトルクが発生する。この高圧室が形成されることにより、ブレード25a、25bを図中時計方向に回転させるような強い打撃力が作用する。図3(1)に示す位置を本明細書では「打撃位置」と呼ぶ。
図3の(2)は、打撃位置からライナ21が45度回転した状態を示す。(1)に示す打撃位置を過ぎると、凸状シール面27aと26a、凸状シール面27bとシール面26b、ブレード25aと凸状部28a、及び、ブレード25bと凸状部28bの当接状態が解除されるため、ライナ21の内部の4室に区画されていた空間が解除され、相互の空間にオイルが流れるため、トルクは発生せず、ライナ21はモータ3の回転によりさらに回転する。
図3の(3)は、打撃位置からライナ21が90度回転した状態を示す。この状態では、ブレード25a、25bが凸状シール面27a、27bに当接してメインシャフト24から突出しない位置、半径方向内側まで後退するため、オイルの圧力の影響を受けずトルクは発生しないため、ライナ21はそのまま回転する。図3の(4)は、打撃位置からライナ21が135度回転した状態を示す。この状態ではライナ21の内部空間は連通してオイルの圧力変化は生じないため、メインシャフトに回転トルクは発生しない。
図3の(5)は、打撃位置からライナ21が180度回転した状態を示す。この位置では、凸状シール面27bと26a、凸状シール面27bとシール面26bが接近するが、当接しない。これは、メインシャフト24に形成した凸状シール面26aと26bが、メインシャフトの軸に対して対称位置にないためである。同様にライナ21の内周に形成した凸状シール面27aと27bもメインシャフトの軸に対して対称位置にはない。従って、この位置ではオイルの影響をほとんど受けないためトルクはほとんど発生しない。尚、発生するトルクがゼロではないのは、内部に充填されるオイルには粘性があり、凸状シール面27bと26a、又は、凸状シール面27aと26bが対面した際に、ほんの僅かながら高圧室が形成されるため、(2)〜(4)、(6)〜(8)と違って若干の回転トルクを生じさせる。
図3の(6)〜(8)の状態は、(2)〜(4)とほぼ同様であり、これらの状態の際はトルクが発生しない。(8)の状態からさらに回転すると、図3の(1)の状態に戻り、凸状シール面27aと26aが、シール面27bとシール面26bが、ブレード25aと凸状部28aが、ブレード25bと凸状部28bがそれぞれメインシャフト24の軸方向全域において当接し、これによりライナ21の内部空間が2つの高圧室と2つの低圧室の4室に区画されるため、メインシャフト24に強い回転トルクが発生する。
上記のように締付作業時には粘性のあるオイルに対し加圧、減圧を繰り返すためオイルが発熱する。また、モータ3も打撃時には回転が制御され、場合によっては回転が停止(ロック)したり、わずかながら逆転してしまうため、モータ3のインバータ回路や固定子巻線には過多な電流が流れ巻線3c及びスイッチング素子7aが発熱する。この発熱対策として、図1に示すように冷却ファンユニット17が設けられる。
図1に戻り、冷却ファンユニット17及びモータ3、オイルパルスユニット4はハウジング6の胴体部6a内に収められており、メインシャフト5の回転軸方向と略平行にオイルパルスユニット4、モータ3、冷却ファンユニット17の順番で設置される。厳密に言えば、オイルパルスユニット4とモータ3は同軸上に配置するのが好ましいが、冷却ファンユニット17は、これらと完全に同軸上でなくてもよく、その中心軸がややずれても良いし、冷却ファンユニットの回転軸をモータ3の回転軸11と角度を隔てて配置しても良い。
オイルパルスユニット4内のオイルは、熱による特性変化が大きく最も冷却する必要があるため、導入された外気をこの順番にて冷却すると効率がよい。従って、本実施形態においては、胴体部6aのオイルパルスユニット4が設けられる部分の側方に複数の空気取入口31を形成し、冷却ファンユニット17を駆動させることで、空気取入口31を経由して外部から大気が吸引されるようにした。図1では一本しか図示していないが、空気取入口31は、胴体部6aの右側に4本、左側に4本の計8本のスリット状の空気取入口31として、その長手方向が出力軸5と略並行になるように形成される。尚、空気取入口31の形状は比較的自由度が高く、スリットの向きを胴体部6aの円周方向としても良いし、その他任意の形状であっても良い。
空気取入口31から導入された外気は、オイルパルスユニット4を冷却した後にインナプレート32の通風口32dを通過し、モータ3側に流れる。モータ3においては、回転子3d、鉄心3a、巻線3cの間の空間を流れて後方に流れ、モータ3の後方に軸方向と鉛直に設けられた駆動回路基板7の搭載電子素子を冷却する。その後、冷却ファンユニット17内の軸付近から吸引され、ファンによって吐出口17aから円周方向に排出され、胴体部6aに形成された後述する空気排出口を通過しハウジング6の外部へ排出される。
本実施形態においてはダイレクトドライブ機構のブラシレスモータとしたことで、打撃時のモータ3の回転数が低くなるため、巻線3cに大きな電流が流れるためスイッチング素子7aの温度が上昇しやすい。従って、駆動回路基板7を冷却ファンユニット17の近傍、即ちモータ3の後ろ側に設けることで、冷却風のスイッチング素子7a近傍の量が増加し、冷却効率を向上することが可能となり、電動工具の耐久性が向上する。
冷却ファンユニット17はモータ3の駆動とは別体に駆動される。これによりモータ3の回転が停止した場合においても発熱したオイルパルスユニット4及びモータ3を冷却することが可能となる。冷却ファンユニット17はハウジング6の胴体部6a内に弾性体30を介して設置される。これにより、打撃時にパルスユニット部4が引き起こす振動が冷却ファンユニット17へ伝わることを抑制し、冷却ファンユニット17の破損を防止する。さらに冷却ファンユニット17の駆動時においては回転振動に伴う騒音が発生するが、冷却ファンユニット17はハウジング6の胴体部6a内に弾性体30を介して設置されるため、振動音を抑制することが可能となる。弾性体30は発泡材とすることで、制震効果を高くしつつ軽量化が可能となる。
モータの回転子3bは回転軸11に設けられる。図2(2)は図1の回転軸11を拡大表示したもので、回転軸11はオイルパルスユニット4と結合される側でベアリング10bにより支持される。ベアリング10bは、ベアリング10aよりも大径のものが用いられ、ベアリング10aが取り付けられる部分は、その径が軸径部11bよりやや細くなっている細径部11aであり、ベアリング10bが取り付けられる部分は、その径が軸径部11bよりやや太くなっている太径部11cである。太径部11cの一部には、その径が半径方向外側に延びるフランジ11dが形成され、ベアリング10bは、回転軸11の前側軸端部から太径部11cに挿入され、その内輪の後端がフランジ11dと当接するよう位置づけられる。そして、トメワ35が円環溝11eに装着されることにより、ベアリング10bを回転軸11に対して固定する。
ベアリング10bの外輪側にはインナプレート32が装着され、外輪の前側の端部がフランジ32cに当接するように位置づけられ、プレート33をネジ34で螺合させることにより、ベアリング10bをインナプレート32に固定する。インナプレート32は、ベアリング10bとほぼ同じ厚さを有するプレート状の部材であり、例えばアルミニウム合金やステンレス合金などの金属製で構成すると好ましい。また、ベアリング10bの内輪と外輪の両方側において、ベアリング10bがインナプレート32に対して軸方向(前後方向)に移動しないように抜け止めを設ける。このようにベアリング10bに比較的大径のものを用いてしっかり保持することにより、落下等の工具を使用する際に本来の状況とは異なる条件下において、工具本体後方或いは前方から工具の回転軸側に急激な荷重が生じた場合でも、オイルパルスユニット4とロータ3bの慣性力による荷重は、主にベアリング10bが受けることとなるので、ベアリング10aの固定部の強度は回転動作中にかかる荷重にのみ耐えうれば良くなる。そのため、ベアリング10aの支持部(ベアリングホルダ15)の肉厚等を小さくする事が可能となり、工具を小型化する事が可能となる。さらに、ベアリング10aやベアリングホルダ15を小型にできるため、モータ3の後端部を流れる冷却風の通過面積を多く取る事が可能となり、冷却風量が増加することができ、冷却性能が向上する。
図4は冷却ファンユニット17と弾性体30を示す斜視図である。冷却ファンユニット17は軸方向に空気を吸引するための吸引口17cが設けられ、回転するファンを収容すると共に吸引及び排出する空気を所望の方向に導くためのファンハウジング17b、空気を一方向に排出するための吐出口17aを有した汎用ブロワファンである。弾性体30は冷却ファンユニット17に接着剤や両面テープ等で貼り付けられ、これらは冷却ファンユニット17をハウジング6の内壁に固定するための接着機能と共に、冷却ファンユニット17に伝わる振動を低減させる制震機能を果たす。さらに、弾性体30aは、吐出口17aを吸入口17c側の空間と遮断するためのシール機能を果たす。
図5は図1のA−A部の断面図であり、冷却ファンユニット17をハウジング6の胴体部6の内部に設置した際の状況を示す。冷却ファンユニット17は、その吐出口17aがハウジング6の胴体部6aに形成された空気排出口37に対向するように固定される。冷却ファンユニット17には、取り付け用の取付穴17dを有するが、冷却ファンユニット17はハウジング6の後端部の囲まれた空間内に配置されるので、ネジによって強固に固定せずに両面テープ等のシール材を用いて固定するので十分である。但し、ネジを併用して固定するようにしても良いのは言うまでもない。
吐出口17aと空気排出口37の間にはバッファ領域33が設けられる。これにより、吐出口17aよりも空気排出口37の断面積を大きくする事が可能となり、空気排出口37に複数のリブ等を設け異物流入の防止を行った場合でも、空気排出口37における流出損失を低減させる事が可能となる。さらに、吐出口17aとファンハウジング17bの一部を囲うようにシール状の弾性体30aを設けることで、弾性体30aによる冷却ファンユニット17の保持と同時に、吐出口17aからバッファ領域33へ流入した冷却風がモータ3側へ逆流することができる。
図6は、冷却ファンユニット17が取り付けられるハウジング6の胴体部6aの後端部右側の内部形状を示す部分斜視図である。ここで、ハウジング6は軸方向を通る上下に延びる面で2分割でき、右側とは作業者が右手でオイルパルス工具を把持した際に、作業者からみて右側に位置する側を示す。胴体部6aの後端部には、ベアリング10aを保持する固定部となるベアリングホルダ15が一体で成型され、その後方には冷却ファンユニット17を固定すると共に、冷却ファンユニット17の吐出口17側の空間(バッファ領域33)と分離するためのリブ16が形成される。リブの後方には4本の上下方向に延びるスリット状の空気排出口37が形成される。ベアリングホルダ15の上下側には、左側のハウジング6とネジ止めするための2つのネジ穴13が形成される。図示していないが、胴体部6aの後端部左側の内部形状は、リブ16及び空気排出口37は形成されず、ネジ穴13とベアリングホルダ15が形成されることになる。
尚、図6において、ハウジング6の後端面には開口が存在しないことが理解できるであろう。これは、冷却ファンユニット17として吐出側が後方でなく、側方になるブロワファンを用いたためであり、別のタイプの冷却ファンを用いるならばハウジング6の後端面に空気排出口を設けるようにしても良い。
次に図7〜9を用いて、インナプレート32の形状と、それを通過する冷却風の流れについて説明する。図7は図1におけるC−C断面図である。インナプレート32は円環状の内周輪32a及び外周輪32bの間を接続する複数の支柱32cにより構成され、これらによって冷却風を通過させる複数の通風口32dが形成される。ここで、図から理解できるように支柱32cの円周方向の数及びその位置は、モータ3の巻線3c間の隙間の位置と一致するようにした。従って、通風口32dはモータ3の巻線3cと対向する位置に配置されるので、通風口32dを介してオイルパルスユニット4側からモータ3側に流れる空気は、かならず巻線3cに当たることになる。さらに、径方向において、インナプレートの内周輪32aと外周輪32bの位置は、モータ3の巻線3cの内周側及び外周側位置とそれぞれほぼ一致するように設定している。
図8は図1のB−B部におけるモータ3の固定子部分の断面図であり、モータ3の固定子3b部の断面図である。固定子は鉄心3aに巻線3cを巻きつけており、巻線3c間にはスロット(巻線隙間)3dが設けられる。この図から理解できるように、本実施形態では、モータ3の巻線は外周部において密に巻かれており、内周部の巻数が少なくなるようにされている。
図9は図7のD−D部の断面図であり、インナプレート32とブラシレスモータ固定子部の位置関係を示し、インナプレート32から固定子へ流入する空気の流れを示した部分断面図である。本図からインナプレート32の支柱32cとスロット3dの位置関係がよく理解できるであろう。図9に示すように、空気取入口31から取り入れられた冷却風は通風口32dを通過し、胴体部6aのモータ3が配置される空間に流入し、モータ3の巻線3cの前方部を通過してスロット3dへと流れていく。モータ3としてブラシレスモータを用いる場合は、巻線3cの発熱が大きいため、冷却風を巻線3cの前方部を通過させることで、効率良く冷却することが可能となる。
図10は、図7及び8で示した実施形態の変形例である。本変形例では、インナプレート42に形成される支柱42cの数を3つにし、6つのスロット3dに対して半分にした。このようにモータ3のスロット3dの数とインナプレート32の通風口32dの数を一致させずとも、冷却効率を向上させることが可能となる。しかし、図7に示すようにモータ3のスロット3dの数とインナプレート32の通風口32dの数を一致させた場合が、最も冷却効率を向上させることが可能となる。また、図10においては、インナプレート42の通風口42dの内径、つまり内周輪42aを回転子3bの外径よりも僅かながら大きく設定している。これにより、通風口42dを通過する冷却風は回転子3bの巻線3cの外周側にあたりやすくなっており、さらなる冷却効率の向上が可能となる。
図11は、本実施形態におけるオイルパルスユニット4とハンドル部の配置関係を説明するための図である。オイルパルス機構は低騒音な打撃機構であり、打撃時の振動は小さいものの、打撃時の反力(変位)は大きくなってしまう。反動は打撃源を中心に円弧運動となるため、打撃源から遠くなるほど反動が大きくなる。本発明において、オイルパルスユニット4とハンドル部6aを前後方向に近接させることで、把持部が打撃源に近くなり、把持位置での反動が小さくなる。具体的には、オイルパルスユニット4の前端部がハウジング6の胴体部6aの前端部と隣接するオイルパルス工具において、ハウジング6のハンドル部6bはオイルパルスユニット4の略真下に設けられる。従って、ハンドル部6bの長手方向中心線52を延長した線と、出力軸5の中心軸と交差する交差点53は、出力軸5の軸方向(前後方向)に見て、オイルパルスユニット4の配置位置51内に存在するようにした。また、オイルパルスユニット4の後端位置と、ハンドル部前側の最も後退した位置を比較すると、矢印の範囲54で示すようにオイルパルスユニット4の後端位置の方が後ろになるように配置した。このように構成すれば、出力軸5にソケット等の先端工具を取り付けた場合においては工具全体の重心位置がハンドル近傍となるため、作業時のバランスが良く、操作性がよくなるといった利点が得られる。
以上説明したように、本実施形態による電動工具では、安価な汎用の冷却ファンを用いて高効率にモータ及び動力伝達機構(オイルパルスユニット)を冷却することが可能となるので耐久性を向上させることができる。また、モータの回転とは非同期にファンを駆動させることによって、モータのスイッチング素子部の冷却効率をも向上させることができる。さらに、ロータを支持するベアリング部の強度を向上させることができる電動工具を実現できる。
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では電動工具の例として、ブラシレス直流モータを用いたオイルパルス工具の例で説明したがこれに限られるものではなく、電動ドリル、電動グライダ等、任意の電動工具においても同様に適用できる。また、使用するモータの種類も、ブラシレス直流モータだけでなく、ブラシ付きのDCモータでも、交流モータでも良い。