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JP5429492B2 - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びアクチュエーター装置 - Google Patents
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JP5429492B2 - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びアクチュエーター装置 - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びアクチュエーター装置 Download PDF

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Description

本発明は、圧電体層とその両側に電極とが設けられた圧電素子、圧電素子を有するアクチュエーター装置、アクチュエーター装置を有する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードのアクチュエーター装置として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。
このような圧電素子を構成する圧電体層(圧電セラミックス)として用いられる圧電材料には高い圧電特性が求められており、代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる(特許文献1参照)。
しかしながら、環境問題の観点から、鉛の含有量を抑えた圧電材料が求められている。鉛を含有しない圧電材料としては、例えば、化学組成がx[(Bia1-a)TiO3]−(1−x)[BiFeO3](但し、0.3≦x≦0.8,0.4<a<0.6)で表される圧電セラミックスが開示されている(特許文献2参照)。
特開2001−223404号公報 特開2008−069051号公報
この特許文献2に記載された圧電セラミックスは、膜厚が厚い、所謂バルクのものであり、この材料を薄膜にすると、絶縁性が低くリーク電流が発生してしまうため、圧電素子に使用し難いという問題がある。
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外の液滴を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在し、また、液体噴射ヘッド以外に用いられる圧電素子や圧電アクチュエーターにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、絶縁性が高くリーク電流の発生を抑制することができ且つ環境負荷の少ない液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びアクチュエーター装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を有する流路形成基板と、該流路形成基板上方に設けられて、前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子と、を具備し、前記圧電素子が、(100)面に優先配向し、ペロブスカイト構造を有するランタンニッケル酸化物を主成分とする配向制御層を有する第1電極と、該第1電極上方に形成されて鉄、マンガン、ビスマス、チタン及びカリウムを含む複合酸化物からなり、(100)面に優先配向した圧電体層と、該圧電体層上方に設けられた第2電極と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、鉄、マンガン、ビスマス、チタン及びカリウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電材料を圧電体層とすることにより、絶縁性が高くリーク電流の発生を抑制することができる。また、鉛の含有量を抑えられるため、環境への負荷を低減できる。さらに、ランタンニッケル酸化物からなり(100)面に優先配向した配向制御層上に圧電体層を設けることで、圧電体層を(100)面に優先配向させることができると共に、(100)面に優先配向した圧電体層を用いることで、耐久性及び歪み量を向上することができる。
ここで、前記配向制御層の厚さが10nm以上であることが好ましい。これによれば、配向制御層上に(100)面に優先配向した圧電体層を容易に形成することができる。
また、前記圧電体層が、鉄酸マンガン酸ビスマス及びチタン酸ビスマスカリウムを含み、前記鉄酸マンガン酸ビスマスと前記チタン酸ビスマスカリウムのモル比である鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウムが、0.42以上1.5以下であることが好ましい。これによれば、確実にリーク電流の発生を抑制することができる。
また、前記圧電体層は、厚さが2μm以下の薄膜であることが好ましい。これによれば、薄膜の圧電体層を有する液体噴射ヘッドを提供できる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、絶縁性が高くリーク電流の発生を抑制することができる液体噴射ヘッドを有するため、絶縁破壊が防止され信頼性に優れた液体噴射装置となる。
また、本発明の他の態様は、(100)面に優先配向し、ペロブスカイト構造を有するランタンニッケル酸化物を主成分とする配向制御層を有する第1電極と、該第1電極上方に形成されて鉄、マンガン、ビスマス、チタン及びカリウムを含む複合酸化物からなり、(100)面に優先配向した圧電体層と、該圧電体層上方に設けられた第2電極と、を具備することを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、鉄、マンガン、ビスマス、チタン及びカリウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電材料を圧電体層とすることにより、絶縁性が高くリーク電流の発生を抑制することができる。また、鉛の含有量を抑えられるため、環境への負荷を低減できる。さらに、ランタンニッケル酸化物からなり(100)面に優先配向した配向制御層上に圧電体層を設けることで、圧電体層を(100)面に優先配向させることができると共に、(100)面に優先配向した圧電体層を用いることで、耐久性及び歪み量を向上することができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の圧電素子を変位可能に具備することを特徴とするアクチュエーター装置にある。
かかる態様では、繰り返し駆動による耐久性及び歪み量を向上したアクチュエーター装置を実現できる。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの断面図及びその拡大図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施例1、2及び比較例1のXRD測定結果を示すグラフである。 実施例3及び4のSEM画像である。 実施例3及び4のJ−E Curveを示す図である。 サンプル1、3及び5のJ−E Curveを示す図である。 サンプル1、3及び5のP−E曲線を示す図である。 サンプル1〜6の抗電界−組成プロットである。 サンプル1〜6の比誘電率−組成プロットである。 サンプル1〜6のS−V曲線を示す図である。 サンプル1〜6の圧電定数−組成プロットである。 サンプル7のΔS/L12−ΔV70プロットである。 比較サンプル1のP−E曲線を示す図である。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図であり、図3は図2のA−A′線断面図及びその要部拡大図である。図1〜図3に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールドの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が形成されている。また、絶縁体膜55上には、酸化チタン等からなり、絶縁体膜55と第1電極60との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。
さらに密着層56上には、第1電極60と、第1電極60の上方に設けられて厚さが2μm以下、好ましくは1〜0.3μmの薄膜である圧電体層70と、圧電体層70の上方に設けられた第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。なお、ここで言う上方とは、直上も、間に他の部材が介在した状態も含むものである。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、変位可能に設けられた圧電素子300をアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。このような圧電素子300は、酸化アルミニウムの耐湿性を有する絶縁材料からなる保護膜で覆われていてもよい。
第1電極60は、図3(b)に示すように、密着層56上に設けられた白金からなる導電層61と、導電層61上に設けられたランタンニッケル酸化物(LNO)からなりペロブスカイト構造を有する配向制御層62と、を具備する。
配向制御層62は、結晶の配向面が疑キュービック表示で(100)面に優先配向している。なお、本発明で「結晶が(100)面に優先配向している」とは、全ての結晶が(100)面に配向している場合と、ほとんどの結晶(例えば、90%以上)が(100)面に優先配向している場合と、を含むものである。本実施形態の配向制御層は、X線回折試験を行った結果、(100)面の配向率は97%以上であった。
このような配向制御層62は、この配向制御層62上に圧電体層70をエピタキシャル成長により形成した際に、圧電体層70の結晶を(100)面に優先配向させるためのものである。
圧電体層70は、鉄酸マンガン酸ビスマス(例えばBi(Fe,Mn)O)とチタン酸ビスマスカリウム(例えば(Bi,K)TiO)とを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる。なお、ペロブスカイト構造、すなわち、ABO型構造のAサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。このAサイトにBi及びKが、BサイトにFe、Mn及びTiが位置している。すなわち、鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸ビスマスカリウムとを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物は、鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸ビスマスカリウムとが均一に固溶した固溶体といえる。なお、鉄酸マンガン酸ビスマス(BFM)とチタン酸ビスマスカリウム(BKT)との割合は、BFM/BKT(モル比)が、0.42以上1.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.82以上1.5以下である。
このように、圧電体層70を構成する圧電材料を、鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸ビスマスカリウムとを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物とすると、後述する実施例に示すように、絶縁性が高くなりリーク電流を抑制することができる。
また、鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸ビスマスカリウムとを含む圧電体層70は、結晶の配向面が疑キュービック表示で(100)面に優先配向している。なお、本発明で「結晶が(100)面に優先配向している」とは、全ての結晶が(100)面に配向している場合と、ほとんどの結晶(例えば、90%以上)が(100)面に優先配向している場合と、を含むものである。本実施形態の圧電体層70は、X線回折試験を行った結果、(100)面の配向率は97%以上であった。
このように圧電体層70を(100)面に優先配向させることで、圧電体層70の耐久性及び圧電特性(歪み量)を向上することができる。なお、従来より圧電体層として利用されているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)では、結晶を優先配向させることで、耐久性及び歪み量を向上することができた。したがって、本発明の新たな圧電材料である鉄酸マンガン酸ビスマス及びチタン酸ビスマスカリウムを含む複合酸化物であっても同様に耐久性及び歪み量を向上することができる。
なお、このような圧電体層70は、後述する実施例に示すように、25℃における比誘電率を300以上、さらには500以上にすることができる。したがって、圧電特性(歪み量)が良好である。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、密着層56、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
次に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法の一例について、図4〜図8を参照して説明する。なお、図4〜図8は、圧力発生室の長手方向の断面図である。
まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)等からなる二酸化シリコン膜51を熱酸化等で形成する。次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
次に、図5(a)に示すように、絶縁体膜55上に、酸化チタンからなる密着層56を形成し、密着層56上に第1電極60を形成する。具体的には、絶縁体膜55上に酸化チタン等からなる密着層56を形成した後、密着層56上に白金(Pt)からなる導電層61と、ランタンニッケル酸化物(LNO)からなる配向制御層62とを順次積層することで第1電極60を形成する。なお、密着層56及び導電層61は、スパッタリング法や蒸着法により形成することができる。また、配向制御層62は、スパッタリング法によって形成することができる。
次いで、第1電極60上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散した溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いて圧電体層70を形成できる。圧電体層70の製造方法は、MOD法やゾル−ゲル法に限定されず、例えば、レーザアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法などでもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順例としては、まず、図5(b)に示すように、第1電極60上に、有機金属化合物、具体的には、Bi、Fe、Mn、Ti、Kを含有する有機金属化合物を、目的とする組成比になる割合で含むゾルやMOD溶液(前駆体溶液)をスピンコート法などを用いて、塗布して圧電体前駆体膜71を形成する(塗布工程)。
塗布する前駆体溶液は、Bi、Fe、Mn、Ti、Kをそれぞれ含む有機金属化合物を、各金属が所望のモル比となるように混合し、該混合物をアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させたものである。Bi、Fe、Mn、Ti、Kをそれぞれ含む有機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。Biを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸ビスマスなどが挙げられる。Feを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸鉄などが挙げられる。Mnを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸マンガンなどが挙げられる。Tiを含有する有機金属化合物としては、例えばチタニウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸チタン、チタン(ジ−i−プロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)などが挙げられる。Kを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カリウム、カリウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。
次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば100〜200℃)に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば350〜450℃)に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
次に、図5(c)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度、例えば600〜800℃程度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。この焼成工程においても、雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
なお、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
このように、第1電極60上に形成された圧電体膜72は、(100)面に優先配向する配向制御層62上にエピタキシャル成長により形成されるため、配向制御層62と同じ(100)面に優先配向される。
次に、図6(a)に示すように、圧電体膜72上に所定形状のレジスト(図示無し)をマスクとして例えば第1電極60及び圧電体膜72の1層目をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。
次いで、レジストを剥離した後、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返して複数の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成することで、図6(b)に示すように複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、塗布溶液の1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、例えば、10層の圧電体膜72からなる圧電体層70全体の膜厚は約1.1μm程度となる。なお、本実施形態では、圧電体膜72を積層して設けたが、1層のみでもよい。
このように圧電体層70を形成した後は、図7(a)に示すように、圧電体層70上に白金等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、第1電極60と圧電体層70と第2電極80からなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。その後、必要に応じて、600℃〜800℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後に、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚さに薄くする。
次に、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、マスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面のマスク膜52を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIとする。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(100)に配向したシリコン基板の表面に熱酸化により膜厚1070nmの二酸化シリコンからなる弾性膜を形成した。次に、弾性膜上に膜厚400nmの酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜を形成した。次に、絶縁体膜上にRFスパッタ法により膜厚40nmのチタン膜を形成し、熱酸化することで酸化チタンからなる密着層を形成した。
次に、密着層上にDCスパッタ法により膜厚130nmの白金からなる導電層を形成した。次に、導電層上に膜厚10nmのランタンニッケル酸化物からなる配向制御層を形成することで、第1電極とした。
この第1電極上に圧電体層を形成した。その手法は以下のとおりである。まず、Bi、K、Fe、Mn、Tiのキシレン、オクタンおよびブタノール溶液を所定の割合で混合して、前駆体溶液を調製した。
この前駆体溶液を用いて第1電極が形成された上記基板上に滴下し、3000rpmで基板を回転させて圧電体前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に150℃で2分、350℃で4分間乾燥・脱脂を行った(乾燥及び脱脂工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に、Rapid Thermal Annealing(RTA)で700℃、5分間焼成を行った(焼成工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を3回繰り返し、計9回の塗布により全体で厚さ900nmの圧電体層を形成した。
その後、圧電体層上に、第2電極としてDCスパッタ法により膜厚100nmの白金膜を形成した後、RTAを用いて650℃、5分間焼成を行うことで、Bi(Fe0.97,Mn0.03)O及び(Bi0.5,K0.5)TiO含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であって、鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム、すなわちBi(Fe0.97,Mn0.03)O/(Bi0.5,K0.5)TiOがモル比で1.50であるものを圧電体層とする圧電素子を形成した。なお、上述したように、BF−BKTとBMとのモル比は、BF−BKT:BM=100:3である。
(実施例2)
膜厚が50nmのランタンニッケル酸化物からなる配向制御層を有する第1電極を形成した以外は、上述した実施例1と同じ材料・製造方法にて実施例2の圧電素子を形成した。
(比較例1)
比較のため、ランタンニッケル酸化物を設けていない第1電極とした。すなわち、第1電極として、酸化チタンからなる密着層と、白金からなる導電層とを設けた以外は、上述した実施例1と同じ材料・製造方法にて比較例1の圧電素子を形成した。
(試験例1)
実施例1、2及び比較例1の圧電素子について、ブルカーAKS社製の「D8 DISCOVER」を用い、X線源にCuKα線を使用したX線回折広角法(XRD)により、室温で圧電体層のX線回折チャートを求めた。この結果を図9に示す。
図9に示すように、実施例1及び2の圧電体層では、(100)面及び(200)面に由来する回折強度のピーク(2θ)が検出され、その他の配向、例えば、(110)面の回折強度のピークはほとんど検出されなかった。これに対して、比較例1の圧電体層では、(100)面、(200)面、(110)面に由来する回折強度のピークが検出された。この結果から、実施例1及び2のようにランタンニッケル酸化物である配向制御層を10nm以上設け、この配向制御層上に形成した圧電体層は(100)面に優先配向させることができる。なお、配向制御層を50nmよりも厚くしても、配向制御層上の圧電体層を(100)面に優先配向させることができるが、配向制御層が厚すぎると、第1電極全体の厚みが増大し、第1電極が圧電素子の変位を阻害する要因となる可能性や、第1電極の厚さを同じに保つために導電層を薄くすると、導電性が低下するなどの不具合が発生する虞がある。したがって、配向制御層の厚さは、50nm以下が好ましい。ちなみに、実施例1及び2には、(200)面の回折強度のピークが検出されているが、(200)面は(100)面と等価なものである。
また、配向制御層を設けることで、圧電体層の配向を制御することができるのは、上述したように、圧電体層として鉄酸マンガン酸ビスマス(例えばBi(Fe,Mn)O)とチタン酸ビスマスカリウム(例えば(Bi,K)TiO)とを含む材料を用いたからである。すなわち、圧電体層として鉄酸マンガン酸ビスマス(例えばBi(Fe,Mn)O)とチタン酸ビスマス(例えばBiTiO)とを含む材料を用いた場合には、ランタンニッケル酸化物からなる配向制御層を下地として設けたとしても、配向制御層上に形成した圧電体層は優先配向しない。
また、上述した実施例1及び2では、Bi(Fe0.97,Mn0.03)O/(Bi0.5,K0.5)TiOがモル比で1.50の圧電体層を例示したが、これ以外のモル比の圧電体層であっても同様に、優先配向したランタンニッケル酸化物からなる配向制御層上に形成することで(100)面に優先配向させることができる。
(実施例3)
上述した実施例1と同様の材料を用いて、以下の手順により実施例3の圧電素子を形成した。
実施例3の圧電素子の形成方法としては、シリコン基板上に弾性膜と、絶縁体膜と、密着層と、導電層及び配向制御層を有する第1電極と、を順次積層形成した。
次に、第1電極上に塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を3回繰り返し、計9回の塗布により全体で厚さ900nmの圧電体層を形成した。このとき、各焼成工程の後に、焼成した圧電体層の表面を純水によって洗浄する洗浄工程を行うようにした。すなわち、焼成工程と次の塗布工程との間に洗浄工程を行うようにした。なお、最後の焼成工程の後に洗浄工程を行ってもよく、また洗浄工程を行わないようにしても良い。本実施形態では、最後の焼成工程の後に洗浄工程を行わないようにした。
(実施例4)
上述した実施例3と同様の材料を用いて、洗浄工程を行わないようにした以外は同じ製造工程によって実施例4の圧電素子を形成した。
(試験例2)
実施例3及び4の圧電素子について、走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果を図10に示す。なお、図10(a)は実施例3のSEMであり、図10(b)は実施例4のSEM画像である。
図10(b)に示すように、洗浄工程を行わずに形成した実施例4の圧電体層には焼成工程毎に変質層501が形成されているのに対し、図10(a)に示すように、洗浄工程を行った実施例3の圧電体層には、焼成工程毎に形成される変質層500を抑制することができていることが確認できた。
また、実施例3及び4の圧電素子について、J−E Curveを、ヒューレットパッカード社製「4140B」を用い、室温(25℃)で測定した。なお、測定はφ=300μmの電極パターンを使用した。この結果を図11に示す。図11に示すように、洗浄工程を行わずに形成した実施例4の圧電体層は、印加電圧の上昇(又は下降)に伴ってリーク電流(電流密度)が急激に増加し、印加電圧が−20Vを超えたところで絶縁破壊が生じていることが確認された。これに対して、洗浄工程を行って形成した実施例3の圧電体層は、印加電圧に対する電流密度の上昇率が、実施例4に比べて低く、印加電圧が−40V近くに達するまで絶縁破壊は確認されなかった。したがって、実施例3の圧電素子は、実施例4の圧電素子に比べてリーク電流が抑制され、且つ耐電圧が向上する。
ここで、圧電体層のその他の例について以下に示す。
(サンプル1)
(100)に配向したシリコン基板の表面に熱酸化により膜厚1070nmの二酸化シリコンからなる弾性膜を形成した。次に、弾性膜上にRFスパッタ法により膜厚40nmのチタン膜を形成し、熱酸化することで酸化チタンからなる密着層を形成した。次に、密着層上にDCスパッタ法により膜厚130nmの白金からなる導電層を形成し、(111)に配向した第1電極とした。
次いで、第1電極上に圧電体層をスピンコート法により形成した。その手法は以下のとおりである。まず、Bi、K、Fe、Mn、Tiのキシレン、オクタンおよびブタノール溶液を所定の割合で混合して、前駆体溶液を調製した。そしてこの前駆体溶液を酸化チタン膜及び第1電極が形成された上記基板上に滴下し、3000rpmで基板を回転させて圧電体前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に150℃で2分、400℃で4分間乾燥・脱脂を行った(乾燥及び脱脂工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に、Rapid Thermal Annealing(RTA)で650℃、5分間焼成を行った(焼成工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を3回繰り返し、計9回の塗布により全体で厚さ900nmの圧電体層を形成した。
その後、圧電体層上に、第2電極としてDCスパッタ法により膜厚100nmの白金膜を形成した後、RTAを用いて650℃、5分間焼成を行うことで、Bi(Fe0.97,Mn0.03)O及び(Bi0.5,K0.5)TiO含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であって、鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム、すなわちBi(Fe0.97,Mn0.03)O/(Bi0.5,K0.5)TiOがモル比で1.50であるものを圧電体層とする圧電素子を形成した。
(サンプル2〜6)
Bi、K、Fe、Mn、Tiのキシレン、オクタンおよびブタノール溶液の混合割合を変更し、表1に示す鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム(モル比)の鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸ビスマスカリウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物を圧電体層70とした以外は、サンプル1と同様にして、圧電素子300を形成した。
(サンプル7)
まず、(100)に配向したシリコン基板の表面に熱酸化により膜厚1070nmの二酸化シリコン膜を形成した。次に、二酸化シリコン膜上にスパッタ法により、ジルコニウム膜を作製し、熱酸化することで400nmの酸化ジルコニウム膜を形成した。次に、酸化ジルコニウム膜上にRFスパッタ法により膜厚40nmのチタン膜を形成し、熱酸化することで酸化チタン膜を形成した。次に、酸化チタン膜上にDCスパッタ法により(111)に配向した膜厚130nmの白金膜を形成した。次に、白金膜上に所定の形状のフォトレジストを形成し、ドライエッチングによりパターニングを行い、第1電極とした。
次いで、第1電極上に圧電体層をスピンコート法により形成した。その手法は以下のとおりである。まず、Bi、K、Fe、Mn、Tiのキシレン、オクタンおよびブタノール溶液を、所定の割合で混合して、前駆体溶液を作製した。そしてこの前駆体溶液を酸化チタン膜及び第1電極が形成された上記基板上に滴下し、3000rpmで基板を回転させて圧電体前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に150℃で2分、400℃で4分間乾燥・脱脂を行った(乾燥及び脱脂工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に、Rapid Thermal Annealing(RTA)で750℃、5分間焼成を行った(焼成工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を3回繰り返し、計9回の塗布により全体で厚さ900nmの圧電体層を形成した。
その後、圧電体層上にDCスパッタ法により膜厚100nmの白金膜を作製した。次に、RTAで750℃、5分間熱処理を行った。次に、前記白金膜上に、所定の形状のフォトレジストを形成し、ドライエッチングにより白金および圧電体層をパターニングを行った。その後、スパッタ法にて酸化アルミニウム膜を作製した。次に、所定の形状のフォトレジストを形成、およびドライエッチングによりパターニングを2度行い、酸化アルミニウム膜を所定の形状に加工した。
その後、この加工したものの上部を有機フィルムにより保護した後、下部を研削機にて所定の厚さに加工し、その後研削面を研磨処理した。次に、耐アルカリ性のハードマスクを形成し、所定の形状にパターン加工した。次に、ウェットエッチングによりシリコンを所定の形状に加工した。その後、有機フィルムを剥離することで、圧電素子および圧力発生室を有する圧電アクチュエーターを作製した。なお、圧電体層は、Bi(Fe0.97,Mn0.03)O及び(Bi0.5,K0.5)TiOを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であって、鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム、すなわちBi(Fe0.97,Mn0.03)O/(Bi0.5,K0.5)TiOがモル比で1.22である。
(比較サンプル1)
原料として酸化ビスマス、酸化鉄、炭酸カリウム、酸化チタンの固体粉末を用い、固相法によりセラミックスを作製した。この手法は以下の通りである。まず、前述の原料を、モル比でBi:Fe:K:Ti=70:40:30:60になるように混合した後、前述の混合粉末と等量のエタノールと原料の4倍量のジルコニアボールを加え、24時間混合・粉砕を行った。その後、ジルコニアボールを取り除いた後に、乾燥を行い、混合粉末を得た。この混合粉末を電気炉で700℃に加熱することで、仮焼成粉末を得た。この仮焼成粉にバインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を2.5重量%添加し混合した後に、プレス成型により直径1mmのペレットを作製した。このペレットを仮焼成粉で被い、700℃で脱バインダー処理を行った後、1060℃で焼成することで、セラミックスペレットを得た。このペレットを研磨した後、スクリーン印刷により銀電極を塗布し、700℃で焼き付けることで、電極を具備したセラミックスを得た。
(試験例2)
サンプル1〜6の圧電素子について、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温(25℃)で、圧電体層の粉末X線回折パターンを求めた。その結果、全てのサンプル1〜6において、ABO型構造に起因するピークと基板由来のピークのみが観測され、異相は観測されなかった。
(試験例3)
サンプル1〜6の各圧電素子について、J−E Curveを、ヒューレットパッカード社製「4140B」を用い、室温(25℃)で測定した。なお、測定はφ=300μmの電極パターンを使用した。この結果、すべての実施例において、電流密度が小さく、リークが抑制されていることが分かる。結果の一例として、サンプル1、サンプル3及びサンプル5の結果を図12に示す。
(試験例4)
サンプル1〜6の圧電素子について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、室温で周波数1kHzにて、分極量と電界の関係(P−E曲線)を求めた。この結果、全てのサンプルにおいて、強誘電性に由来する良好なヒステリシスを示した。結果の一例として、サンプル1を図13(a)に、サンプル3を図13(b)に、サンプル5を図13(c)に示す。
また、サンプル1〜6の圧電素子について、試験例4の分極量と電界の関係(P−E曲線)から、抗電界Eを求めた。鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム(モル比)に対して抗電界Eをプロットした図を、図14に示す。図14に示すように、サンプル1〜6全てにおいて、抗電界Eが164kVcm−1未満となっているため、164kVcm−1以上の電界となる電圧を印加すれば、インクジェット式記録ヘッドを駆動できるといえる。例えば、抗電界Eが200kVcm−1未満なので、1μm厚の薄膜では、20Vの電圧(中間電位)で分極可能であり、インクジェット式記録ヘッドを駆動できることが分かる。また、サンプル3及びサンプル4はEが100kVcm−1未満となっているため、この組成近傍では2μm厚の薄膜においても、20Vの中間電位で分極可能であることが分かる。なお、サンプルでは後述する比較サンプル1と比較して、抗電界が大きくなっているが、これは界面、応力、結晶性等の要因によって薄膜で抗電界が大きくなる薄膜特有の現象である。
(試験例5)
サンプル1〜6の各圧電素子について、ヒューレットパッカード社製「4294A」を用い、φ=500μmの電極パターンを使用し、室温(25℃)で周波数1kHzにて、圧電体層の比誘電率を測定した。鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム(モル比)に対して比誘電率εをプロットした図を、図15に示す。この結果、図15に示すように、比誘電率は300以上と高く、また、サンプル1〜4では500以上であった。また、比誘電率は組成比に対し極大を持っており、BFM/BKT=1.11(サンプル2)のときε=616、BFM/BKT=1.00(サンプル3)の時ε=628という高い値を示した。これらは鉄酸ビスマス(BFO)の3倍以上の比誘電率である。
(試験例6)
サンプル1〜6の圧電素子について、アグザクト社製の変位測定装置(DBLI)を用い室温(25℃)で、φ=500μmの電極パターンを使用し、周波数1kHzの電圧を印加して、電界誘起歪−電圧の関係を求めた。サンプル1を図16(a)に、サンプル2を図16(b)に、サンプル3を図16(c)に、サンプル4を図16(d)に、サンプル5を図16(e)に、サンプル6を図16(f)に示す。この結果、図16に示すように、全てのサンプルにおいて、良好に変位していた。
図16に示した測定結果より、最大圧電歪Smaxを最大印加電界Emaxで除す(Smax/Emax)ことにより、圧電定数d33を求めた。鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウム(モル比)に対してd33をプロットした図を、図17に示す。図17より、d33は組成に対し極大を持っており、BFM/BKT=1.11(サンプル2)の時d33=55pmV−1、BFM/BKT=1.00(サンプル3)の時d33=40pmV−1と、試験例5の誘電率の極大と同様の傾向を示した。このことから、誘電率の増加が圧電性の向上に対応していることが分かる。
(試験例7)
サンプル7の圧電体層70に電位差ΔV70を印加した時に発生する、弾性膜50、絶縁体膜55、密着層56、第1電極60、圧電体層70、第2電極80、および保護膜(酸化アルミニウム膜)の相対位置の最大変化幅ΔSを、レーザードップラー変位計を用い、室温(25℃)で測定した。図18に印加電圧を変化させたときの測定結果を示す。縦軸はΔSを圧力発生室12の長手方向の長さL12で除した値(ΔS/L12)であり、これは電圧を印加したときに発生する圧力発生室12の単位長さあたりの変形量を意味する。すなわち、ヘッドの液体吐出能力に相当する。また、無次元数であるため、単位系として形式的にUを使用する。
図18より、サンプル7はΔV70=20Vにおいて約100μU、40Vでは約200μUという良好なアクチュエーター特性を有することが分かった。それに加え、ΔV70=20〜50Vの領域で、印加電圧に対し良好な直線応答を示しており、印加電圧波形による吐出液滴径制御(MSDT)が容易であることが分かった。
(試験例8)
比較サンプル1のセラミックスについて、東陽テクニカ社製「FCE−1A」を用い、シリコンオイル中で、室温で10kHzにて測定し、分極量と電界の関係(P−E曲線)を求めた。結果を図19に示す。図19に示すように、強誘電性に由来する良好なヒステリシスが観測された。なお、抗電界Eは、14kVcm−1であった。
また、比較サンプル1のセラミックスについて、室温のシリコンオイル中で、3分間、50kVcm−1の直流電界を印加することで、分極処理を行った。なお、分極処理に使用した電界は、図19のP−E曲線より、分極処理に十分な電界である。
この分極処理した比較サンプル1のセラミックスの圧電特性を、中国科学院製「ピエゾd33メーター」を使用し、分極方向の圧電定数(d33)によって評価した。なお、測定は室温で行った。また、上記中国科学院製「ピエゾd33メーター」は、圧力により誘起された分極量を測定することで、圧電定数を測定するものである。この結果、比較サンプル1の圧電定数はd33=36pCN−1であった。これは、特許文献2における電圧印加により誘起された歪から求めた圧電定数の1/5程度の値であり、比較サンプル1のセラミックスは、一般的な分極処理では分極を保持できないことを示している。したがって、インクジェット式記録ヘッドに使用し難いことが分かった。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
また、例えば、上述した実施形態では、圧電素子300として、流路形成基板10上に弾性膜50及び絶縁体膜55を介して第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、下部電極と上部電極との間の圧電体層の厚さの途中に中間電極を有する構成であってもよい。このような構成では、下部電極の圧電体層との界面に配向制御層を設けてもよく、また、中間電極の上部電極側の圧電体層との界面に、配向制御層を設けてもよく、これらの両方に配向制御層を設けてもよい。ちなみに、下部電極の圧電体層との界面に配向制御層を設けた場合には、下部電極が特許請求の範囲に記載の第1電極に相当し、中間電極が特許請求の範囲に記載の第2電極に相当する。また、中間電極の上部電極側の圧電体層との界面に配向制御層を設けていた場合には、中間電極が特許請求の範囲に記載の第1電極に相当し、上部電極が特許請求の範囲に記載の第2電極に相当する。
さらに、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図20は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図20に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、焦電センサー等他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。また、本発明は強誘電体メモリー等の強誘電体素子にも同様に適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 マニホールド部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 56 密着層、 60 第1電極、 61 導電層、 62 配向制御層、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子

Claims (7)

  1. 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を有する流路形成基板と、該流路形成基板上方に設けられて、前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子と、を具備し、
    前記圧電素子が、(100)面に優先配向し、ペロブスカイト構造を有するランタンニッケル酸化物を主成分とする配向制御層を有する第1電極と、
    該第1電極上方に形成されて鉄、マンガン、ビスマス、チタン及びカリウムを含む複合酸化物からなり、(100)面に優先配向した圧電体層と、
    該圧電体層上方に設けられた第2電極と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記配向制御層の厚さが10nm以上であることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記圧電体層が、鉄酸マンガン酸ビスマス及びチタン酸ビスマスカリウムを含み、前記鉄酸マンガン酸ビスマスと前記チタン酸ビスマスカリウムのモル比である鉄酸マンガン酸ビスマス/チタン酸ビスマスカリウムが、0.42以上1.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記圧電体層は、厚さが2μm以下の薄膜であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  6. (100)面に優先配向し、ペロブスカイト構造を有するランタンニッケル酸化物を主成分とする配向制御層を有する第1電極と、
    該第1電極上方に形成されて鉄、マンガン、ビスマス、チタン及びカリウムを含む複合酸化物からなり、(100)面に優先配向した圧電体層と、
    該圧電体層上方に設けられた第2電極と、を具備することを特徴とする圧電素子。
  7. 請求項6に記載の圧電素子を変位可能に具備することを特徴とするアクチュエーター装置。
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