以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、図1(a)のように成形型1は内部にキャビティ6を設けると共に上面にこのキャビティ6に連通する注入口3を設けることによって形成されるものである。この成形型1は一対の型1a,1bからなるものであり、型1a,1bのうち少なくとも一方の対向面にエアーベント7を形成するための溝が設けてある。エアーベント7は粘結剤コーテッドサンド2は通過させないが水蒸気などの気体は容易に通過する寸法に形成されるものである。そして一対の型1a,1bを合致させるように型締めすることによって、成形型1を形成することができるものである。
この成形型1には、電気ヒーターを埋め込むなどして発熱手段を設けてあり、高温に加熱することができるようにしてある。成形型1の加熱温度は粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の種類などに応じて設定されるものであるが、通常は200〜350℃程度である。
一方、粘結剤コーテッドサンド2は、レジンコーテッドサンド(RCS)とも呼ばれるものであり、耐火骨材に粘結剤を混合することによって、耐火骨材の表面を粘結剤で被覆して形成されるものである。本発明において耐火骨材としては、特に限定されるものではないが、硅砂、山砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂、再生砂、その他、人工砂などを例示することができるものであり、これらを1種単独で用いる他、複数種を混合して用いることもできる。
また粘結剤としては、鋳型用の粘結剤コーテッドサンド(レジンコーテッドサンド)に使用されるものであれば、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂を用いるのが一般的である。
熱硬化性樹脂としては、レゾール型、ノボラック型、ベンジリックエーテル型などのフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、イソシアネート化合物、アミンポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂などを挙げることができるものであり、これらに硬化剤としてイソシアネート化合物、有機エステル類、ヘキサメチレンテトラミンなどを、硬化触媒として第三級アミン、ピリジン誘導体、有機スルホン酸などをそれぞれ配合し、熱硬化性にして使用することができるものである。これらは一種を単独で用いる他、複数種を併用することもできる。
粘結剤としてフェノール樹脂を用いる場合、フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒド類を反応触媒の存在下で反応させることによって調製することができる。
ここでフェノール類は、フェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであり、例えばフェノールの他に、m−クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノールなどの3官能性のもの、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどの4官能性のもの、o−クレゾール、p−クレゾール、p−ter−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4又は2,6−キシレノールなどの2官能性のo−又はp−置換のフェノール類を挙げることができ、さらに塩素又は臭素で置換されたハロゲン化フェノールなども用いることができる。勿論、これらから1種を選択して用いる他、複数種のものを混合して用いることもできる。
またホルムアルデヒド類としては、水溶液の形態であるホルマリンが最適であるが、パラホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンのような形態のものを用いることもでき、その他、ホルムアルデヒドの一部をフルフラールやフルフリルアルコールに置き換えて使用することも可能である。
上記のフェノール類とホルムアルデヒド類との配合比率は、フェノール類とホルムアルデヒドのモル比が1:0.6〜1:3.5の範囲になるように設定するのが好ましい。
また反応触媒は、ノボラック型フェノール樹脂を調製する場合は、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはシュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸、さらに酢酸亜鉛などを用いることができる。またレゾール型フェノール樹脂を調製する場合は、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物を用いることができ、さらにジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミドなどの脂肪族の第一級、第二級、第三級アミン、N,N−ジメチルベンジルアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、アニリン、1,5−ナフタレンジアミンなどの芳香族アミン、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミンなどや、その他二価金属のナフテン酸や二価金属の水酸化物等を用いることもできる。
また、粘結剤として上記のようにフェノール樹脂を用いる場合、硬化速度を速めるために、フェノール樹脂に二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールを1〜60質量%含有させるようにしてもよい。
ここで二価フェノールとしては、特に限定されるものではないが、カテコール(融点105℃)、アルキルカテコール、ヒドロキノン(融点170.3℃)、レゾルシン(融点110℃)、アルキルレゾルシン、4−ヘキシルレゾルシン(化学式(1))などを挙げることができる。また、三価フェノールとしては、特に限定されるものではないが、ピロガロール(融点133℃)、フロログルシン(融点219℃:化学式(2))などを挙げることができる。これら二価あるいは三価の多価フェノールは、一種を単独で用いる他、複数種を併用することもできる。
フェノール樹脂粘結剤は、フェノール樹脂中に、二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールが反応して結合した状態であってもよく、またフェノール樹脂に、二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールが反応していない状態で混合されたものであってもよい。さらに二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールの一部がフェノール樹脂中に反応して結合していると共に、二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールの他の一部がフェノール樹脂と反応せずに混合しているものであってもよい。
フェノール樹脂中に、二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールを反応させて結合したものとしてフェノール樹脂粘結剤を調製するにあたっては、上記のように一価のフェノール類とアルデヒド類を触媒の存在下で反応させてフェノール樹脂を合成する際に、二価フェノール、三価フェノールから選ばれる多価フェノールを添加して反応させることによって行なうことができる。
このとき、一価のフェノール類とアルデヒド類を反応させる合成の初期から多価フェノールを添加することによって、一価のフェノール類と多価フェノールをそれぞれアルデヒド類と反応させて、フェノール樹脂中に多価フェノールが結合して取り込まれたフェノール樹脂粘結剤組成物を調製することができる。
あるいは、一価のフェノール類とアルデヒド類を反応させてフェノール樹脂を合成する途中の段階で多価フェノールを添加することによって、多価フェノールの一部をアルデヒド類と反応させて、フェノール樹脂中に多価フェノールの一部が結合して取り込まれると共に、多価フェノールの他の一部がフェノール樹脂と反応せずに混合した状態で、フェノール樹脂粘結剤を調製することができる。
さらに、一価のフェノール類とアルデヒド類を反応させてフェノール樹脂の合成を終了した後、反応系からフェノール樹脂を取り出す前に多価フェノールを添加し、フェノール樹脂と多価フェノールを溶融混合することによって、フェノール樹脂に多価フェノールを混合した状態のフェノール樹脂粘結剤を得ることができる。
フェノール樹脂中に多価フェノールが含有されたこのフェノール樹脂粘結剤にあって、フェノール樹脂中の多価フェノールの含有量は、1〜60質量%の範囲に設定されるものである。多価フェノールの含有量は3〜60質量%の範囲がより好ましく、特に好ましくは5〜30質量%である。多価フェノールの含有量が少ないと、フェノール樹脂中に多価フェノールを含有させることで、多価フェノールの高い反応性によってゲル化時間を短縮し、フェノール樹脂粘結剤の硬化時間を短くする効果を十分に得ることができない。逆に多価フェノールの含有量が多すぎると、ゲル化反応を制御することが難しくなり、硬化時間が速くなりすぎて作業性に問題が生じるおそれがある。
フェノール樹脂中に二価や三価のフェノールが含有されたこのフェノール樹脂粘結剤のゲル化時間は、130℃の測定温度で100秒以下であることが好ましく、80秒以下であることがより好ましい。ゲル化時間がこれより長いと、フェノール樹脂粘結剤の硬化時間を短くする効果を十分に得ることができない。ゲル化時間の下限は特に設定されるものではないが、作業性の点からすると、ゲル化時間は10秒以上であることが望ましい。このゲル化時間は、JACT試験法 RS−5に準拠して測定した数値である。ここで、JACT試験法 RS−5では測定温度が150℃に設定されているが、本発明で用いるフェノール樹脂粘結剤はゲル化時間が短く、150℃の温度で測定するとゲル化時間が短すぎて測定が困難であり、測定結果にばらつきが生じ易いと共に、ゲル化時間の差を確認することが難しくなるので、測定温度を130℃と低い温度に設定して行なうようにしている。
そして、耐火骨材の粒子に粘結剤を配合して混合することによって、耐火骨材の表面に粘結剤を被覆して、本発明において用いる粘結剤コーテッドサンド2を得ることができるものである。
耐火骨材に被覆する粘結剤の量は、成分や用途などに応じて異なり一概に規定できないが、耐火骨材100質量部に対して粘結剤が0.5〜4.0質量部の範囲が一般に好ましく、滑剤は固形分で0.02〜0.15質量部の範囲になるように設定するのが一般的に好ましい。耐火骨材の表面に粘結剤を被覆する方法としては、ホットコート法、コールドコート法、セミホットコート法、粉末溶剤法などがある。
ホットコート法は、110〜180℃に加熱した耐火骨材に固形の粘結剤を添加して混合し、耐火骨材による加熱で固形の粘結剤を溶融させることによって、溶融した粘結剤で耐火骨材の表面を濡らして被覆させ、この後、この混合を保持したまま冷却することによって、粒状でさらさらした粘結剤コーテッドサンドを得る方法である。あるいは、110〜180℃に加熱した耐火骨材に、水などの溶剤に溶解又は分散させた粘結剤を混合して被覆し、溶剤を揮散させることによって、粘結剤コーテッドサンドを得る方法である。
コールドコート法は、粘結剤を水やメタノールなどの溶剤に分散乃至溶解して液状になし、これを耐火骨材の粒子に添加して混合し、溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッドサンドを得る方法である。
セミホットコート法は、上記の溶剤に分散乃至溶解した粘結剤を、50〜90℃に加熱した耐火骨材の粒子に添加して混合し、溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッドサンドを得る方法である。
粉末溶剤法は、固形の粘結剤を粉砕し、この粉砕粘結剤を耐火骨材の粒子に添加してさらに水やメタノールなどの溶剤を添加し、これを混合して溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッドサンドを得る方法である。
以上のいずれの方法においても、耐火骨材の表面を常温(30℃)で固形のコーティング層で被覆して、粒状でさらさらした粘結剤コーテッドサンドを得ることができるが、作業性などの点においてホットコート法が好ましい。また上記のように耐火骨材に粘結剤を混合する際に、必要に応じて硬化剤や、耐火骨材と粘結剤とを親和させるためのシランカップリング剤など各種のカップリング剤や、また黒鉛等の炭素質材料などを配合することもできる。
上記のように調製される粘結剤コーテッドサンド2を成形型1に注入するにあたって、粘結剤コーテッドサンド2はサンド供給ヘッド9に供給される。そしてサンド供給ヘッド9のノズル10を成形型1の注入口3に図1(b)のように接続し、サンド供給ヘッド9に連結したエアー配管11から高圧エアーをサンド供給ヘッド9に供給することによって、このエアー圧で粘結剤コーテッドサンド2をノズル10から注入口3を通して成形型1のキャビティ2内に注入することができるものである。粘結剤コーテッドサンド2と共にキャビティ6内に吹き込まれるエアーはエアーベント7から排出されるものであり、キャビティ6内に粘結剤コーテッドサンド2を充填することができるものである。
このように成形型1のキャビティ6に粘結剤コーテッドサンド2を充填して所定時間経過すると、成形型1が有する高温が粘結剤コーテッドサンド2に伝熱され、成形型1内の粘結剤コーテッドサンド2が加熱されて、粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の硬化が進行する。成形型1内に充填された粘結剤コーテッドサンド2には、まずキャビティ6の内面に接している部分に熱が伝わって加熱されるので、粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の硬化はキャビティ6の内面に接している部分で進行が始まり、キャビティ6の内面から離れている中央部の粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤に硬化が始まるのは遅い。
そこで、キャビティ6内の粘結剤コーテッドサンド2のうち、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の硬化は進行しているが、中央部の粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤は硬化が始まらず進行していない時間のタイミングで、図1(c)のように成形型1を上下に回転させて180°反転させる。このように成形型1を上下反転させて注入口3を下向きにすると、キャビティ6内の粘結剤コーテッドサンド2のうち、粘結剤が未硬化の粘結剤コーテッドサンド2はばらばらの粒子であるので、注入口3から排出される。一方、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の硬化は進行しているので、粘結剤の溶融・硬化により粒子が結合され、粘結剤コーテッドサンド2の層として一体化している。従って、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の層が中空形状で成形型1内に残ることになる。
ここで、成形型1内に粘結剤コーテッドサンド2を充填してから、未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出するために、成形型1を上下反転するまでの時間は、粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の種類や、成形型1の温度、成形型1内に残す粘結剤コーテッドサンド2の層の厚みなどに応じて調整されるものであるが、一般的に5〜60秒程度が好ましい。成形型1を反転させるまでの時間が短いと、成形型1内に残る粘結剤コーテッドサンド2の層の厚みが薄くなり、成形される鋳型の厚みが薄くなって強度の上で問題が生じる。逆に成形型1を反転させるまでの時間が長いと、排出される未硬化の粘結剤コーテッドサンド2の量が少なくなり、鋳型を中空に形成することによって得られる効果が不十分になる。
尚、キャビティ6に接する粘結剤コーテッドサンド2のうち、注入口3に対向する部分には成形型1の熱は作用し難いので、この部分の粘結剤コーテッドサンド2の硬化は進行し難い。このため、硬化が進行した粘結剤コーテッドサンド2で注入口3が塞がれることはなく、上記のように注入口3から未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を支障なく排出することができるものである。
ただ、成形型1内に粘結剤コーテッドサンド2を充填してから成形型1を上下反転するまでの時間を長くする場合など、注入口3の付近の粘結剤コーテッドサンド2も硬化が進行して、この硬化が進行した粘結剤コーテッドサンド2で注入口3が塞がれる場合がある。このときには、成形型1を上下反転しても、未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出することができなくなる。そこでこのときには、成形型1内に粘結剤コーテッドサンド2を充填した後、図4(a)に示すように、注入口3よりも深い長さを有する栓15を注入口3に挿入し、栓15の先端部を粘結剤コーテッドサンド2内に差し込むようにすればよい。栓15は、成形型1の温度に耐える耐熱性を有し、かつ成形型1よりも熱伝導性が低い断熱性を有する材料で形成するのが好ましく、例えば耐熱性ゴムなどで栓15を形成することができる。このように断熱性の高い栓15を差し込むことによって、注入口3に対向する部分の粘結剤コーテッドサンド2に成形型1の熱が伝熱されることを抑制できるものであり、注入口3に対向する部分の粘結剤コーテッドサンド2の硬化が進行して注入口3を塞ぐことを防ぐことができるものである。従って、成形型1を反転する直前に栓15を注入口3から抜いて、成形型1を反転させることによって、未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を支障なく注入口3から排出することができるものである。
上記のように未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出した後に、キャビティ6の内面に接して残される粘結剤コーテッドサンド2の層において、粘結剤は硬化が十分に進行しておらず、半硬化あるいはゲル化の段階または粘結剤が熱溶融している状態であるので、成形型1内のこの粘結剤コーテッドサンド2の層を加熱して、粘結剤の硬化をさらに進行させて完全に硬化させる必要がある。本発明は、この粘結剤コーテッドサンド2の硬化をさらに進める加熱を、水蒸気によって行なうようにしたものである。
すなわち、上記のように未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出して、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の層を中空形状で成形型1内に残した後、成形型1を再度上下に反転させて、注入口3を上向きにし、図1(d)のように水蒸気供給ヘッド17のノズル18を注入口3に接続する。水蒸気供給ヘッド17には蒸気ホース19が連結してあって、蒸気ホース19から水蒸気供給ヘッド17に水蒸気が供給されており、ノズル18から注入口3を通して水蒸気を成形型1のキャビティ6内に吹き込むことができるものである。成形型1内に吹き込まれた水蒸気は、キャビティ6の内周の粘結剤コーテッドサンド2の層を通過した後、エアーベント7から排気される。粘結剤コーテッドサンド2の層は粘結剤で結合されて固まっているが、粘結剤は完全に硬化しておらず、耐火骨材の粒子間に隙間が多数形成されているので、水蒸気はこの骨材粒子間の隙間を容易に通過して、エアーベント7から排気されるものである。
そして上記のように成形型1内に水蒸気を吹き込むと、粘結剤コーテッドサンド2の表面に水蒸気が接触することによって、水蒸気は潜熱と顕熱が粘結剤コーテッドサンド2に奪われて凝縮するが、水蒸気は高い潜熱と顕熱を有するので、水蒸気が凝縮する際に伝熱されるこの潜熱で粘結剤コーテッドサンド2の温度を急速に上昇させることができるものである。また水蒸気の凝縮で成形型1内に生成される凝縮水は、その後に成形型1内に吹き込まれる水蒸気による加熱で蒸発されるので、成形型1内の温度は水蒸気の温度付近にまで急速に上昇し、この温度で粘結剤コーテッドサンド2を急速に加熱することができるものである。特に水蒸気は、粘結剤コーテッドサンド2の各粒子に直接接触して加熱するので、殆ど瞬時に粘結剤コーテッドサンド2を高温に加熱することができるものである。
このように成形型1に水蒸気を吹き込んで、キャビティ6の内周の粘結剤コーテッドサンド2の層を加熱し、粘結剤の硬化を進行させて完全硬化させることによって、鋳型Aを成形することができるものであり、成形型1を型開きして型1a,1bを分離させることによって、図1(e)のような中空の鋳型Aを得ることができるものである。
ここで、成形型1内の粘結剤コーテッドサンド2の層を水蒸気によって急速に加熱することによって、この粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤を短時間で硬化させることができるものであり、粘結剤コーテッドサンド2の層を完全硬化させるのに要する時間は、水蒸気の温度や成形型1内への吹き込み流量、成形型1内の粘結剤コーテッドサンド2の層の厚みなどで変動するが、通常、3〜40秒程度の短時間である。そして、成形型1内の粘結剤コーテッドサンド2の層は粘結剤の硬化が不十分であるために結合力が小さく、強度が低いが、粘結剤コーテッドサンド2の層のうち垂直乃至下向きの個所に、図5(d)のように自重で層間剥離する前に、短時間で粘結剤を十分に硬化させることができるものであり、ピールバック不良が発生するようなことなく、中空の鋳型Aを成形することがきるものである。
本発明において、水蒸気としては飽和水蒸気をそのまま用いることができるが、過熱水蒸気を用いるのが好ましい。過熱水蒸気は、飽和水蒸気をさらに加熱して、沸点以上の温度とした完全気体状態の水蒸気であり、100℃以上の乾き蒸気である。飽和水蒸気を加熱して得られる過熱水蒸気は、圧力を上げないで定圧膨張させたものであってもよく、あるいは膨張させないで圧力を上げた加圧水蒸気であってもよい。成形型1内に吹き込む過熱水蒸気の温度は特に限定されるものではなく、過熱水蒸気は900℃程度にまで温度を高めることができるので、100〜900℃の間で必要に応じた温度に設定すればよい。
上記のように中空の鋳型Aを成形するにあたって、未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出したあとの孔として鋳型Aに図1(e)のような開口aが形成されることになる。鋳型Aは鋳造の際に中子などとして主として使用されるが、鋳造の作業にこの開口aが支障とならないのであれば、開口aを有するこの鋳型Aをそのまま使用することができる。一方、鋳造の作業に開口aが支障となる場合には、粘結剤コーテッドサンド2を用いて別途成形した蓋材を用い、この蓋材を開口aに差し込んで接着したり、あるいは耐火骨材を液状の粘結剤と混練した成形材料を開口aに詰め込んで加熱硬化させたりして、開口aを塞ぐようにすればよい。
図2は他の実施の形態を示すものであり、図1の実施の形態では、注入口3を成形型1に小さな口として形成したが、図2では注入口3を大きく開口して形成してある。すなわち、図2(a)に示すように成形型1の下面に注入口3を大きく開口して設けてあり、成形型1内のキャビティ6は注入口3によって全体が開口している。また型1a,1bの間にはエアーベント7が形成してある。
そしてこの成形型1を上下反転して注入口3を上向きにし、この状態で図2(b)のように成形型1のキャビティ6に粘結剤コーテッドサンド2を充填する。注入口3は大きく開口するので、上記の図1(b)のようなサンド供給ヘッド9を用いてエアー圧で粘結剤コーテッドサンド2を注入する必要はなく、粘結剤コーテッドサンド2を流し込む作業などでキャビティ6に粘結剤コーテッドサンド2を充填することができる。
このように成形型1のキャビティ6に粘結剤コーテッドサンド2を充填して所定時間経過し、成形型1が有する高温が粘結剤コーテッドサンド2に伝熱され、キャビティ6の内面に接している部分の粘結剤コーテッドサンド2が進行した時点で、成形型1を上下反転し、注入口3を下向きにする。成形型1を上下反転すると、キャビティ6内の粘結剤コーテッドサンド2のうち、粘結剤が未硬化の粘結剤コーテッドサンド2はばらばらの粒子であるので、下方に開口する注入口3から排出される。一方、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の硬化は進行しているので、粘結剤の溶融・硬化により粒子が結合され、粘結剤コーテッドサンド2の層として一体化している。従って図2(c)に示すように、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の層が中空形状で成形型1内に残ることになる。成形型1内に粘結剤コーテッドサンド2を充填してから、成形型1を上下反転するまでの時間は、図1の実施の形態と同様に、5秒〜60秒程度が好ましい。
次に、上記のように未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出して、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の層を中空形状で成形型1内に残した後、成形型1を再度上下に反転させて、注入口3を上向きにし、成形型1内に水蒸気を吹き込む。水蒸気の吹き込みは図1(d)と同様に水蒸気供給ヘッド17を用いて行なうことができるが、注入口3が大きく開口しているので、図2(d)のように、ノズル18の外周に蓋片24を大きく張り出して設けたものを用い、蓋片24で注入口3に蓋をして注入口3を密閉した状態でノズル18が注入口3に接続されるようにするのが望ましい。そしてノズル18から注入口3を通して水蒸気を成形型1のキャビティ6内に吹き込む。成形型1内に吹き込まれた水蒸気は、キャビティ6の内周の粘結剤コーテッドサンド2の層を通過した後、エアーベント7から排気される。
このように成形型1に水蒸気を吹き込んで、キャビティ6の内周の粘結剤コーテッドサンド2の層を加熱し、粘結剤の硬化を進行させて完全硬化させることによって、鋳型Aを成形することができるものであり、成形型1を型開きして型1a,1bを分離させることによって、図2(e)のような中空の鋳型Aを得ることができるものである。
ここで、成形型1内の粘結剤コーテッドサンド2の層を水蒸気によって急速に加熱することによって、この粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤を短時間で硬化させることができるものであり、粘結剤コーテッドサンド2の層を完全硬化させるのに要する時間は、図1の場合と同様に、通常、3〜40秒程度の短時間である。そして、図2のようなキャビティ6を有する成形型1で鋳型を成形する場合、図2(d)のように成形型1内に残る粘結剤コーテッドサンド2の層のうち、キャビティ6の垂直な面に張り付いている個所に層間剥離が生じ易いが、このような層間剥離が発生する前に、水蒸気加熱により短時間で粘結剤を完全に硬化させることができるものであり、ピールバック不良が発生するようなことなく、中空の鋳型Aを成形することがきるものである。
次に図3の実施の形態について説明する。この実施の形態では、成形型1として上部に注入口3を、下部に排出口4を設けたものを用いるものであり、図3(a)に示すように成形型1の上面に注入口3を形成すると共に下面に排出口4を形成するようにしてある。また型1a,1bの間にはエアーベント7が形成してある。
成形型1に粘結剤コーテッドサンド2を注入する前に、排出口4に栓21をして、排出口4を栓21で塞いでおく。栓21は、成形型1の温度に耐える耐熱性を有し、かつ成形型1よりも熱伝導性が低い断熱性を有する材料で形成するのが好ましく、例えば耐熱性ゴムなどで栓21を形成することができる。
そしてサンド供給ヘッド9のノズル10を成形型1の注入口3に図3(b)のように接続し、サンド供給ヘッド9に連結したエアー配管11から高圧エアーをサンド供給ヘッド9に供給することによって、このエアー圧で粘結剤コーテッドサンド2をノズル10から注入口3を通して成形型1のキャビティ2内に注入することができるものである。粘結剤コーテッドサンド2と共にキャビティ6内に吹き込まれるエアーはエアーベント7から排出されるものであり、キャビティ6内に粘結剤コーテッドサンド2を充填することができるものである。成形型1の下端の排出口4は栓21で塞がれているので、粘結剤コーテッドサンド2が排出口4から漏れ出ることはない。
このように成形型1のキャビティ6に粘結剤コーテッドサンド2を充填して所定時間経過し、成形型1が有する高温が粘結剤コーテッドサンド2に伝熱され、キャビティ6の内面に接している部分の粘結剤コーテッドサンド2が進行した時点で、成形型1の下面の排出口4から栓21を抜き、排出口4を開口させる。成形型1内に粘結剤コーテッドサンド2を充填してから、栓21を抜いて排出口4を開口させるまでの時間は、図1の実施の形態における成形型1を上下反転するまでの時間と同様に、10〜60秒程度が好ましい。
このように栓21を抜いて排出口4を開口させると、キャビティ6内の粘結剤コーテッドサンド2のうち、粘結剤が未硬化の粘結剤コーテッドサンド2が排出口4から排出される。一方、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤の硬化は進行しているので、粘結剤により粒子が結合され、粘結剤コーテッドサンド2の層として固まっている。従って、図3(c)のように、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の層が中空形状で成形型1内に残ることになる。
ここで、排出口4には成形型1よりも熱伝導性が低い断熱性を有する栓21が差し込んであるため、キャビティ6に接する粘結剤コーテッドサンド2のうち、排出口4に対向する部分には成形型1の熱が作用し難くなっており、排出口4に対向する部分の粘結剤コーテッドサンド2の硬化は進行し難い。このため、硬化が進行した粘結剤コーテッドサンド2で排出口4が塞がれることはなく、栓21を抜いて排出口4を開くことによって未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を支障なく排出することができるものである。
ただ、成形型1内に粘結剤コーテッドサンド2を充填してから栓21を抜いて排出を行なうまでの時間を長くする場合など、排出口4の付近の粘結剤コーテッドサンド2も硬化が進行して、この硬化が進行した粘結剤コーテッドサンド2で排出口4が塞がれる場合がある。そこでこのときには、図4(b)に示すように、栓21を排出口4よりも深い長さで形成し、栓21を排出口4に差し込むと、栓21の先端部がキャビティ6の内面よりも内方へ突出するようにするのがよい。このようにすると、排出口4に対向する部分の粘結剤コーテッドサンド2に成形型1の熱が伝熱されることを抑制できるものであり、排出口4に対向する部分の粘結剤コーテッドサンド2の硬化が進行して排出口4を塞ぐようなことを防ぐことができるものである。従って、排出口4から栓21を抜いて開口させることによって、未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を支障なく排出口4から排出することができるものである。
上記のように成形型1のキャビティ6内から未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出して、キャビティ6の内面に接している粘結剤コーテッドサンド2の層を中空形状で成形型1内に残した後、図3(d)のように、成形型1の上面の注入口3に水蒸気供給ヘッド17のノズル18を接続し、ノズル18から注入口3を通して水蒸気を成形型1のキャビティ6内に吹き込む。このとき、水蒸気が排出口4から短絡的に出て行かないように、排出口4に栓22を差し込んで塞ぐようにしてもよい。このように成形型1内に吹き込まれた水蒸気は、キャビティ6の内周の粘結剤コーテッドサンド2の層を通過した後、エアーベント7から排気される。
このように成形型1に水蒸気を吹き込んで、キャビティ6の内周の粘結剤コーテッドサンド2の層を加熱し、粘結剤の硬化を進行させて完全硬化させることによって、鋳型Aを成形することができるものであり、成形型1を型開きして型1a,1bを分離させることによって、図3(e)のような中空の鋳型Aを得ることができるものである。
ここで、成形型1内の粘結剤コーテッドサンド2の層を水蒸気によって急速に加熱することによって、この粘結剤コーテッドサンド2の粘結剤を短時間で硬化させることができるものであり、粘結剤コーテッドサンド2の層を完全硬化させるのに要する時間は、図1の場合と同様に、通常、3〜40秒程度の短時間である。そして、粘結剤コーテッドサンド2の層のうち垂直乃至下向き個所に既述の図5(d)のように自重で層間剥離が発生する前に、短時間で粘結剤を完全に硬化させることができるものであり、ピールバック不良などが発生するようなことなく、中空の鋳型Aを成形することがきるものである。
この図3の実施の形態では、未硬化の粘結剤コーテッドサンド2は成形型1の下面に設けた排出口4から排出することができるものである。従って、成形型1内から未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出するにあたって成形型1を上下に反転させるような必要がなく、成形型1を上下に反転させるための機構を備える必要がなくなるものである。
またこの実施の形態では、中空の鋳型Aには注入口3の部分と排出口4の部分に開口a,bが形成されることになる。鋳型Aは鋳造の際に中子などとして主として使用されるが、鋳造の作業にこの開口a,bが支障とならないのであれば、開口a,bを有するこの鋳型Aをそのまま使用することができる。一方、鋳造の作業に開口a,bが支障となる場合には、粘結剤コーテッドサンド2を用いて別途成形した蓋材を用い、この蓋材を開口a,bに差し込んで接着したり、あるいは耐火骨材を液状の粘結剤と混練した成形材料を開口a,bに詰め込んで加熱硬化させたりして、開口a,bを塞ぐようにすればよい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
成形型1として、内径が100mmの球形のキャビティ6を有し、上面に直径10mmの注入口3を設けて形成したものを用いた(図1(a)参照)。そしてこの成形型1を、内蔵する電気ヒーターで250℃に加熱して使用した。
一方、145℃に加熱したフラタリーサンド30kgをワールミキサーに入れ、これにレゾール型フェノール樹脂(リグナイト(株)製「LT−15」)を540g加え、30秒間混練した後、さらに450gの水を添加して十分に混練した。次いでさらにステアリン酸カルシウム30gを添加して30秒間混練した後、エアーレーションを行なうことによって、粘結剤として融着点108℃のフェノール樹脂が1.8質量%付着した粘結剤コーテッドサンド2を得た。
そしてまず、成形型1の注入口3にサンド供給ヘッド9を接続し、粘結剤コーテッドサンド2を注入口3から、ゲージ圧力0.1MPaの空気圧で成形型1内に吹き込んで充填した(図1(b)参照)。
次に、成形型1への粘結剤コーテッドサンド2の充填完了から、15秒間経過した後、成形型1を上下反転させ、注入口3から未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出した(図1(c)参照)。
この後、直ちに成形型1を上下反転して元の状態に戻し、成形型1の注入口3に水蒸気供給ヘッド17を接続し、ボイラーで発生させたゲージ圧力0.4MPa、温度143℃の飽和水蒸気を過熱蒸気発生装置(野村技工(株)製「GE−100」)で加熱して調製される、350℃、ゲージ圧力0.45MPaの過熱水蒸気を、60kg/hの流量で供給して、成形型1内にこの過熱水蒸気を吹き込んだ(図1(d)参照)。
この過熱水蒸気の吹き込みを15秒間行なった後、直ちに成形型1を開き、成形された鋳型Aを取り出した(図1(e)参照)。この鋳型Aは肉厚が約10mmの中空の球形に成形されていた。そして鋳型Aはキャビティ6の形状と同じ直径100mmの完全な球形であり、内部にも層間剥離など変形の発生はみられなかった。
(比較例1)
上記の実施例1と同様にして、成形型1に粘結剤コーテッドサンド2を注入し(図1(b)参照)、成形型1を上下反転させて成形型1から粘結剤コーテッドサンド2を排出した(図1(c)参照)。この後、再度成形型1を反転させて注入口3を上向きにし、この状態で40秒間放置した。
次に成形型1を開き、成形された鋳型Aを取り出した。この鋳型Aは中空の球形に成形されていた。そしてこの鋳型Aは、キャビティ6の形状と同じ直径100mmであったが、上部内に層間剥離によって二重層になる変形があり、図5(f)のようなピールバック不良が発生しているものであった。
(実施例2)
成形型1として、内径が100mmの球形のキャビティ6を有し、上面に直径10mmの注入口3を、下面に直径10mmの排出口4を設けて形成したものを用いた(図3(a)参照)。そしてこの成形型1を、内蔵する電気ヒーターで250℃に加熱して使用した。
そしてまず、排出口4に耐熱ゴムの栓21を差し込んで塞ぎ、成形型1の注入口3にサンド供給ヘッド9を接続して、粘結剤コーテッドサンド2を注入口3から、ゲージ圧力0.1MPaの空気圧で成形型1内に吹き込んで充填した(図3(b)参照)。
次に、成形型1への粘結剤コーテッドサンド2の充填の完了から、10秒間経過した後、排出口4の栓21を抜き、排出口4から未硬化の粘結剤コーテッドサンド2を排出した(図3(c)参照)。
未硬化の粘結剤コーテッドサンド2の排出を完了した後、直ちに排出口4に耐熱ゴムの栓22を差し込んで、成形型1の注入口3に水蒸気供給ヘッド17を接続し、ボイラーで発生させたゲージ圧力0.4MPa、温度143℃の飽和水蒸気を過熱蒸気発生装置(野村技工(株)製「GE−100」)で加熱して調製される、350℃、ゲージ圧力0.45MPaの過熱水蒸気を、60kg/hの流量で供給して、成形型1内にこの過熱水蒸気を吹き込んだ(図3(d)参照)。
この過熱水蒸気の吹き込みを15秒間行なった後、直ちに成形型1を開き、成形された鋳型Aを取り出した(図3(e)参照)。この鋳型Aは肉厚が約10mmの中空の球形に成形されていた。そして鋳型Aはキャビティ6の形状と同じ直径100mmの完全な球形であり、内部にも層間剥離など変形の発生はみられなかった。
(比較例2)
上記の実施例2と同様にして、成形型1に注入口3から粘結剤コーテッドサンド2を注入し(図3(b)参照)、栓21を抜いて排出口4から粘結剤コーテッドサンド2を排出した(図3(c)参照)。そしてこの状態で40秒間放置した。
次に成形型1を開き、成形された鋳型Aを取り出した。この鋳型Aは中空の球形に成形されていた。そしてこの鋳型Aは、キャビティ6の形状と同じ直径100mmであったが、上部内に層間剥離によって二重層になる変形があり、図5(f)のようなピールバック不良が発生しているものであった。