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JP5800922B2 - 放電ランプ用カソード部品 - Google Patents
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JP5800922B2 - 放電ランプ用カソード部品 - Google Patents

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Description

本発明は、放電ランプ用カソード部品に関する。
放電ランプは、大きく分けて低圧放電ランプと高圧放電ランプの2種類に分けられる。低圧放電ランプは、一般照明、道路やトンネルなどに使われる特殊照明、塗料硬化装置、UV硬化装置、殺菌装置、半導体などの光洗浄装置など様々なアーク放電型の放電ランプが挙げられる。また、高圧放電ランプは、上下水の処理装置、一般照明、競技場などの屋外照明、UV硬化装置、半導体やプリント基板などの露光装置、ウエハ検査装置、プロジェクタなどの高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプなどが挙げられる。このように放電ランプは、照明装置や製造装置などの様々なものに用いられている。
放電ランプ用カソード部品には、従来から酸化トリウム(ThO)を含有したタングステン合金が使用されている。特開2002−226935号公報には、トリウムおよびトリウム化合物の平均粒径を0.3μm以下として微細分散させることにより、耐変形性を向上させたトリウム含有タングステン合金が開示されている。
特開2002−226935号公報
上記の特開2002−226935号公報では、直径3mmのコイルを使って耐変形性を調べている。確かに、上記公報に記載のトリウム含有タングステン合金からなるコイルであれば耐変形特性は向上する。一方で、放電ランプのカソード部品は、10V以上、さらには数100Vの電圧をかけてエミッション特性を発揮する部品である。このような大きな電圧をかけた場合、特開2002−226935号公報で提案されているように0.3μm以下の平均粒径を有するトリウムを微細分散したものでは、トリウムがすぐに蒸発してしまうため、放電ランプの寿命が短いといった問題があった。
また、平均粒径が0.3μm以下であるような微細なトリウムを均一分散させるのは製造工程の負荷が大きかった。トリウムの分散状態が不均一であるとカソード部品内でのエミッションの発生箇所の不均一さにつながり、この点からも長寿命化が困難となっていた。
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、例えば、10V以上の高電圧がかかる放電ランプにおいて長寿命を達成できるカソード部品を提供することを目的とするものである。
本発明の放電ランプ用カソード部品は、線径2〜35mmの胴体部と、先が細くなった先端部と、を備えた放電ランプ用カソード部品であって、
前記カソード部品が、トリウム成分を、酸化物(ThO)換算で0.5〜3wt%含有するタングステン合金からなり、
前記胴体部の円周方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が1〜80μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上であり、且つ、
前記胴体部の側面方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上、であることを特徴とするものである。
また、本発明の実施態様においては、前記胴体部の円周方向断面において、トリウム成分粒子を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、粒径が1〜15μmの範囲にあるトリウム成分粒子が90%以上、且つ、前記胴体部の側面方向断面において、トリウム成分粒子を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、粒径が1〜30μmの範囲にあるトリウム成分粒子が90%以上であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、前記タングステンの結晶が、円周方向断面ではアスペクト比が3未満であり、側面方向断面ではアスペクト比が3以上であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、Mo含有量が0.005wt%以下であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、Fe含有量が0.003wt%以下であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、比重が17〜19g/cmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、硬さ(HRA)が55〜80の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、表面粗さRaが5μm以下であることが好ましい。
また、本発明の実施態様においては、カソード部品が、印加電圧が100V以上の放電ランプにも使用することができる。
本発明によれば、タングステン結晶サイズを、胴体部の断面方向および側面方向断面の両方で制御することにより、優れたエミッション特性および高温強度を有する放電ランプ用カソード部品を実現できる。そのため、それを用いた放電ランプは長寿命化を成し得ることができる。
本発明のカソード部品の一例を示す図。 円周方向断面の一例を示す図。 側面方向断面の一例を示す図。 本発明のカソード部品の一例を示す図。 本発明の放電ランプの一例を示す図。
本発明による放電ランプ用カソード部品は、線径2〜35mmの胴体部と、先が細くなった先端部と、を備えており、トリウム成分を酸化物(ThO)換算で0.5〜3wt%含有するタングステン合金からなるものである。そして、本発明においては、前記胴体部の円周方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が1〜80μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上であり、且つ、
前記胴体部の側面方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上、であることを特徴とする。
まず、トリウム成分とは、金属トリウム、酸化トリウムの1種または2種である。本発明による放電ランプ用カソード部品は、トリウム成分を酸化物(ThO)換算で0.5〜3wt%含有する。0.5wt%未満では添加の効果が小さく、3wt%を超えると焼結性および加工性が低下する。そのため、トリウム成分の含有量は酸化物(ThO)換算で0.8〜2.5wt%の範囲が好ましい。
また、カソード部品は、線径2〜35mmの胴体部と先が細くなった先端部とを備えている。図1および図4に本発明による放電ランプ用カソード部品の一例を示した。図中、1はカソード部品、2は胴体部、3は先端部、である。胴体部2は円柱形状であり、胴体部2の直径2〜35mmである。また、胴体部2の長さは10〜600mmであることが好ましい。前述のように放電ランプの用途は様々な分野があり、そこに求められる明るさも様々である。そのため、求められる明るさに応じて、カソード部品の胴体部の太さ(直径)を変えていく。また、胴体部の長さに関しても放電ランプのサイズに合わせて変えていくものとする。
また、先端部3は、図1に示したように断面台形形状や図4に断面三角形状が例示される。また、断面三角形状は、先端が鋭角である必要はなく、R形状であってもよい。また、本発明においては、先端部の形状は、上記した2種に限られるものではなく、放電ランプ用カソード部品として使えるものであれば特に限定されない。カソード部品は、先端部が先細る形状であることが必要である。放電ランプでは、一対のカソード部品を向い合せて組み込まれる。先端部が先細る形状であると、一対のカソード部品間の放電を効率よくできる。
本発明においては、胴体部の円周方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が1〜80μmの範囲にあるタングステン結晶粒子が90%以上であり、且つ、胴体部の側面方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上である、ことが必要である。図2に胴体部の円周方向断面の一例、図3に胴体部の側面方向断面の一例を示した。円周方向断面は図2に示したように側面に垂直に断面をとる。側面に垂直であれば、断面をとる箇所は任意であるが、胴体部長さの中心の断面で測定することが好ましい。また、側面方向断面は、側面に平行な断面をとるものとする。側面に平行であれば、断面をとる箇所は任意であるが、胴体部長さの中心の断面を円周方向断面とし、その中点に垂直方向に側面方向断面をとることが好ましい。
本発明では、胴体部の円周方向断面において、タングステン結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が1〜80μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上となることを特徴とするものである。粒径1〜80μmの範囲のタングステン結晶が面積比で90%以上であるということは、単位面積300μm×300μmにおいて、粒径1μm未満および80μmを超えるタングステン結晶粒子が面積比で10%未満であることを示す。つまり、粒径1μm未満と微小な結晶と粒径80μmを超える粗大な結晶の割合が少ないことを意味する。また、胴体部の円周方向断面において、結晶粒径が1〜80μmの範囲にあるタングステン結晶が面積比で100%であることが好ましい。
また、本発明においては、胴体部の側面方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上、であることを特徴とするものである。粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶粒子が面積比で90%以上であるということは、単位面積300μm×300μmにおいて、粒径が10μm未満および120μmを超えるタングステン結晶粒子が面積比で10%未満であることを示す。また、胴体部の側面方向断面において、結晶粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶が面積比で100%であることが好ましい。
タングステンの結晶粒子のサイズは、カソード部品の強度、エミッション特性に影響する。エミッタ材となるトリウム成分は、タングステン結晶同士の粒界に分散することになる。タングステン結晶サイズを上記範囲とすることにより、トリウム成分が分散されるタングステン結晶同士の粒界の均一性を3次元的に制御することができる。つまり、単に一方向の断面組織ではなく、胴体部の円周方向断面および側面方向断面の両方を制御することにより、タングステン結晶同士の粒界を3次元的に均一に存在させることができる。その結果、トリウム成分の分散状態を均一化できる。また、均一分散という観点からすると、胴体部の円周方向断面において、タングステン結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したとき、結晶粒径が2〜30μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上、かつ、胴体部の側面方向断面において、タングステン結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したとき、結晶粒径が15〜50μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上となることが好ましい。
また、胴体部の円周方向断面において、胴体部に含有されているトリウム成分粒子を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したとき、粒径が1〜15μmの範囲にあるトリウム成分粒子が90%以上であり、且つ、胴体部の側面方向断面において、トリウム成分粒子を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、粒径が1〜30μmの範囲にあるトリウム成分粒子が90%以上、であることが好ましい。トリウム成分粒子の粒径は、タングステン結晶粒子を観察したときと同じ断面写真を使って測定することができる。トリウム成分は、金属トリウムまたは酸化トリウム(ThO)である。トリウム成分粒子の粒径サイズの測定は拡大写真を使って、そこに写るトリウム成分粒子の最大フェレー径を求めるものとする。トリウム成分粒子の粒径が、前述の範囲であると、タングステン結晶粒界に均一分散し易い。トリウム成分粒子が所定サイズで均一分散していると、エミッション特性が向上する。また、エミッションによるトリウム成分粒子の蒸発が均一化され、その結果、カソード部品の長寿命化につながる。カソード部品の長寿命化が実現できれば、放電ランプの長寿命化を成し得ることができる。特に、エミッション特性も向上しているため、放電ランプの輝度が安定したまま長寿命化を図ることができる。また、トリウム成分粒子は、胴体部の円周方向断面において、粒径が1〜15μmの範囲にあるトリウム成分粒子が100%であり、胴体部の側面方向断面において、粒径が1〜30μmの範囲にあるトリウム成分粒子が100%であることが好ましい。
また、タングステンの結晶は、円周方向断面ではアスペクト比が3未満であり、側面方向断面ではアスペクト比が3以上であることが好ましい。円周方向断面のタングステン結晶のアスペクト比が3未満であると、胴体部の円周方向断面のタングステン結晶は、楕円形状または円形形状に近い結晶構造となる。また、側面方向断面のタングステン結晶のアスペクト比が3以上であると、胴体部の側面方向断面のタングステン結晶は長細い繊維状の結晶構造となる。アスペクト比3以上の繊維状の結晶が束(焼結体)となることにより強度を向上させることができる。また、強度を向上させるという観点からは、円周方向断面でのタングステンの結晶のアスペクト比を3以上と繊維状組織にすることが考えられる。円周方向断面および側面方向断面の両方がアスペクト比3以上であると強度は上がるが、加工性が低下する。繊維状結晶がランダムな配向になると、線引き加工時のダイスとの接触による断線が発生し易くなる。側面方向断面においてのみ、タングステンの結晶が繊維状であればダイスとの接触がスムーズであり、線引き加工での断線を抑制することができる。また、繊維状結晶がランダムな配向になると、先端を先細る形状に加工する際に、砥石とタングステン結晶との接触角度がランダムになり、削れる量にバラツキが生じる。削れる量にバラツキが生じると先端部を均一に加工するのに時間がかかる。また、砥石との接触角度がランダムであると砥石の消耗が速くなり、その結果、コストアップの要因となる。
また、本発明によるカソード部品は、K(カリウム)、Al(アルミニウム)、Si(珪素)の少なくとも1種を0.001〜0.01wt%含有してもよい。K、Al、Siはドープ材として機能するものであり、添加により再結晶組織の制御に効果がある。
また、本発明によるカソード部品は、Mo含有量が0.005wt%以下、Fe含有量が0.003wt%以下であることが好ましい。本発明のタングステン合金は、不純物金属成分を合計で0.1wt%以下(ゼロ含む)含有していてもよいものである。不純物金属成分の中でMo(モリブデン)とFe(鉄)は原料中または製造工程中に混合され易い成分である。Moが0.005wt%(50wtppm)を超えるまたはFeが0.003wt%(30wtppm)を超えると、タングステン合金の高温強度が低下するおそれがある。また、MoおよびFe以外の不純物としては、Ni、Cr、Cu、Ca、Mg、Cが挙げられる。それぞれ、Ni(ニッケル)は10wtppm以下、Cr(クロム)は10wtppm以下、Cu(銅)は10wtppm以下、Ca(カルシウム)は10wtppm以下、Mg(マグネシウム)は10wtppm以下、Na(ナトリウム)は10wtppm以下、C(炭素)は10wtppm以下が好ましい。また、不純物成分は、それぞれ0%(検出限界以下)であることが好ましい。
なお、各成分の分析方法は、次の通りである。トリウム成分は塩化水素ガス揮発分分離−重量法により分析する。また、K、Naは酸分解−原子吸光法により分析する。また、Al、Si、Fe、Ni、Cr、Mo、Cu、Ca、Mgは酸分解−ICP発光分光法により分析する。また、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法により分析する。
また、本発明によるカソード部品は、比重が17〜19g/cmの範囲内であることが好ましい。比重が17g/cm未満であると密度の低い、空隙が多い状態となり部品としての強度が低下する場合があり、また、比重が19g/cmを超えるとそれ以上の効果が得られない場合がある。
また、本発明によるカソード部品は、硬さ(HRA)が55〜80の範囲内であることが好ましい。硬さが55未満であると部品としての強度が足りず、寿命が短くなるおそれがある。また、硬さが80を超えると硬くなり過ぎて、加工性が低下するおそれがある。硬さ(HRA)の好ましい範囲は60〜70である。また、硬さ(HRA)の調製には、前述のようなタングステン結晶サイズや比重の調製を行うことが効果的である。また、硬さ(HRA)の測定は、120°ダイアモンド円錐圧子を用いて試験荷重60kgにより行うものとする。
また、本発明によるカソード部品は、表面粗さRaが5μm以下であることが好ましい。特に、先端部に関しては表面粗さRaが5μm以下、さらには3μm以下と小さいことが好ましい。表面凹凸が大きいとエミッション特性が低下する。
以上のような放電ランプ用カソード部品であれば、様々な放電ランプに適用することができる。そのため、印加電圧が100V以上と大きな電圧をかけても長寿命を成し得ることができる。また、前述のような低圧放電ランプや高圧放電ランプなど、特に使用制限を受けるものではなく、また、胴体部の線径が2〜35mmと、線径が2mm以上10mm未満の細いものから、10mm以上35mm以下の太いものまで適用可能である。
次に、本発明によるカソード部品の製造方法について説明する。本発明によるカソード部品は、前述の構成を有すれば製造方法は特に限定されるものではないが、効率よく得るための製造方法として次のものが挙げられる。
まず、タングステン合金の製造方法として、トリウム成分を含有したタングステン合金粉末の調製を行う。タングステン合金粉末の調製には、湿式法と乾式法が挙げられる。
湿式法では、まず、タングステン成分粉末を調製する工程を実施する。タングステン成分粉末は、タングステン酸アンモニウム(APT)粉末、金属タングステン粉末、酸化タングステン粉末が挙げられる。タングステン成分粉末は、これら1種でもよいし、2種以上を用いてもよい。また、タングステン酸アンモニウム粉末が比較的価格が安いことから望ましい。また、タングステン成分粉末は平均粒径5μm以下が好ましい。
また、タングステン酸アンモニウム粉末を使うときは、タングステン酸アンモニウム粉末を大気中または不活性雰囲気(窒素、アルゴンなど)中で400〜600℃に加熱して、タングステン酸アンモニウム粉末を酸化タングステン粉末に変化させる。400℃未満では、酸化タングステンへの変化が十分でなく、600℃を超えると酸化タングステンの粒子が粗大になり、後工程での酸化トリウム粉末との均一分散でき難くなる。この工程により、酸化タングステン粉末を調製する。
次に、トリウム成分粉末と酸化タングステン粉末を溶液中に添加する工程を実施する。トリウム成分粉末は、金属トリウム粉末、酸化トリウム粉末、硝酸トリウム粉末が挙げられる。この中では、硝酸トリウム粉末が好ましい。硝酸トリウム粉末は液体中で均一に混合し易い成分である。この工程により、トリウム成分と酸化タングステン粉末を含有した溶液を調製する。また、最終的に目的とする酸化トリウム濃度と同じか、若干多めの濃度となるように添加することが好ましい。また、トリウム成分粉末は平均粒径5μm以下が好ましい。また、溶液は純水であることが好ましい。
次に、トリウム成分と酸化タングステン粉末を含有した溶液の液体成分を蒸発させる工程を実施する。次いで、大気雰囲気中で400〜900℃で加熱して、硝酸トリウムなどのトリウム成分を酸化トリウムとする分解工程を実施する。この工程により、酸化トリウム粉末と酸化タングステン粉末が混合した混合粉末を調製することができる。また、得られた酸化トリウム粉末と酸化タングステン粉末とが混合した混合粉末の酸化トリウム濃度を測定し、濃度が低い場合には、酸化タングステン粉末を追加することが好ましい。
次に、酸化トリウム粉末と酸化タングステン粉末とが混合した混合粉末を、水素などの還元雰囲気中、750〜950℃で加熱して酸化タングステン粉末を金属タングステン粉末に還元する工程を実施する。この工程により、酸化トリウム粉末を含有するタングステン粉末を調製することができる。
また、乾式法は、先ず、酸化トリウム粉末を用意する。次に、酸化トリウム粉末をボールミルにて粉砕混合する工程を実施する。この工程により、凝集した酸化トリウム粉末をほぐすことができ、凝集した酸化トリウム粉末を低減することができる。また、混合工程の際は、少量の金属タングステン粉末を添加してもよい。
粉砕混合した酸化トリウム粉末に対し、必要に応じ、篩をかけて粉砕しきれなかった凝集粉または粗大粒を取り除くことが好ましい。また、篩掛けにより、最大径10μmを超える凝集粉または粗大粒を取り除くことが望ましい。
次に、金属タングステン粉末を混合する工程を実施する。最終的に目的とする酸化トリウム濃度になるように金属タングステン粉末を添加するものとする。酸化トリウム粉末と金属タングステン粉末の混合粉末を混合容器に入れ、混合容器を回転させ均一に混合させる。このとき、混合容器を円筒形状とし、円周方向に回転させることにより、スムーズに混合させることができる。この工程により、酸化トリウム粉末を含有するタングステン粉末を調製することができる。
以上のような、湿式法または乾式法により酸化トリウム粉末を含有するタングステン粉末を調製することができる。湿式法と乾式法では、湿式法の方が好ましい。乾式法は混合容器を回転させながら混合するため、原料粉末と容器がこすれて不純物が混入し易い。また、酸化トリウム粉末の含有量は0.5〜3wt%であるものとする。
次に、得られた酸化トリウム粉末を含有するタングステン粉末を使って成形体を調製する。成形体を形成する際は、必要に応じ、バインダーを使用してもよい。また、成形体は直径3〜50mmの円柱形状であることが好ましい。また、成形体の長さは任意である。
次に、成形体を予備焼結する工程を実施する。予備焼結は1250〜1500℃で行うことが好ましい。この工程により、予備焼結体を得ることができる。
次に、予備焼結体を通電焼結する工程を実施する。通電焼結は、焼結体が2100〜2500℃の温度になるように通電することが好ましい。温度が2100℃未満では十分な緻密化ができず強度が低下する場合がある。また、2500℃を超えると、酸化トリウム粒子およびタングステン粒子が粒成長し過ぎて目的とする結晶組織が得られない場合がある。この工程により、酸化トリウム含有タングステン焼結体を得ることができる。また、予備焼結体が円柱形状であれば焼結体も円柱形状になる。
次に、円柱状焼結体(インゴット)を、鍛造加工、圧延加工、線引加工などにより、線径を調整していく工程を実施する。その際の加工率は30〜70%の範囲であることが好ましい。ここで、「加工率」とは、加工前の円柱状焼結体の断面積をA、加工後の円柱状焼結体の断面積をBとしたとき、加工率=[(A−B)/A]×100%、により求めるものである。また、線径の調整は複数回の加工により行うことが好ましい。複数回の加工を行うことにより、加工前の円柱状焼結体のポアをつぶし、密度の高いカソード部品を得ることができる。
例えば、直径25mmの円柱状焼結体を直径20mmの円柱状焼結体に加工した場合を使って説明する。直径25mmの円の断面積Aは460.6mm、直径20mmの円の断面積Bは314mmであるから加工率は32%=[(460.6−314)/460.6]×100%となる。このとき直径25mmから直径20mmへの加工を複数回の線引加工などにより加工することが好ましい。
また、加工率が30%未満と低いと、結晶組織が加工方向に十分延ばされず、タングステン結晶およびトリウム成分粒子が目的とするサイズになり難くなる。また、加工率が30%未満と小さいと加工前の円柱状焼結体内部のポアが十分につぶれず、そのまま残存する恐れがある。内部ポアが残存するとカソード部品の耐久性などが低下する原因となる。一方、加工率が70%を超えて大きいと、加工し過ぎにより断線して歩留まりが低下する恐れがある。このため、好ましい加工率は30〜70%であり、より好ましくは35〜55%である。
また、線径を2〜35mmに加工した後、必要な長さに切断することにより、カソード部品となる。また、必要に応じ、研磨加工、熱処理、形状加工を行ってもよい。
以上のような製造方法によれば、本発明による放電ランプ用カソード部品を効率的に製造することができる。
実施例1〜5
平均粒径3μmのタングステン酸アンモニウム(APT)粉末を大気中500℃に加熱して、タングステン酸アンモニウム粉末を酸化タングステン粉末に変化させた。続いて、酸化タングステン粉末に、平均粒径3μmの硝酸トリウム粉末を添加し、純水を添加し、その後、15時間以上攪拌して均一に混合した。次に、水分を完全に蒸発させ、硝酸トリウム粉末と酸化タングステン粉末が均一に混合した混合粉末を得た。次に大気中500℃で加熱して硝酸トリウム粉末を酸化トリウムに変化させた。次に、水素雰囲気中(還元雰囲気中)800℃で熱処理して酸化タングステン粉末を金属タングステン粉末に還元した。これにより、酸化トリウム粉末と金属タングステン粉末の混合粉末(第一原料粉末)を調製した。
また、上記とは別に、平均粒径2μmのタングステン酸アンモニウム(APT)粉末を窒素雰囲気中450℃に加熱して、タングステン酸アンモニウム粉末を酸化タングステン粉末に変化させた。続いて、水素雰囲気中(還元雰囲気中)700℃で熱処理して酸化タングステン粉末を金属タングステン粉末に還元した。これにより、金属タングステン粉末(第二原料粉末)を調製した。
上記で得られた第一原料粉末に第二原料粉末を添加して、トリウム成分が酸化トリウム(ThO)換算で0.5wt%のタングステン粉末を実施例1として用意した。同様に、トリウム成分が酸化トリウム(ThO)換算で1.0wt%のタングステン粉末を実施例2、トリウム成分が酸化トリウム(ThO)換算で1.5wt%のタングステン粉末を実施例3、トリウム成分が酸化トリウム(ThO)換算で2.0wt%のタングステン粉末を実施例4、トリウム成分が酸化トリウム(ThO)換算で2.5wt%のタングステン粉末を実施例5、として用意した。
上記のようにして得られた原料粉末(実施例1〜5)を用いて、表1に示す条件により、円柱状焼結体(インゴット)を作製し、線径を調整することにより、所定の加工率を有する放電ランプ用カソード部品を得た。なお、線径の調整は、複数回の線引加工により行った。また、表面粗さをRa5μm以下になるように研磨した。
Figure 0005800922
実施例6〜10
平均粒径3μmの酸化トリウム粉末を用意した。次に、ボールミルを12時間行い、酸化トリウム粉末の凝集体を低減した。次に、メッシュ径10μmの篩を通して、10μm以上の粗大粒を除去した。このような酸化トリウム粉末を、平均粒径3μmの金属タングステン粉末と混合し、混合容器に入れて容器を回転させ25時間混合した。なお、酸化トリウム(ThO)粉末の含有量が0.5wt%のものを実施例6、1.0wt%のものを実施例7、1.5wt%のものを実施例8、2.0wt%のものを実施例9、2.5wt%のものを実施例10、として用意した。
上記のようにして得られた原料粉末(実施例6〜10)を用いて表2に示す条件により、円柱状焼結体(インゴット)を作製し、線径を調整することにより、所定の加工率を有する放電ランプ用カソード部品を得た。なお、線径の調整は、複数回の線引加工により行った。また、表面粗さをRa5μm以下になるように研磨した。
Figure 0005800922
比較例1〜2
平均粒径3μmの酸化トリウム粉末を用意した。次に、ボールミルおよび篩通しを行わずに平均粒径3μmの金属タングステン粉末と混合し、混合容器に入れて容器を回転させ25時間混合した。なお、酸化トリウム粉末(ThO)の含有量は2.0wt%とした。
上記のようにして得られた原料粉末を用いて表3に示す条件により、円柱状焼結体(インゴット)を作製し、線径を調整することにより、所定の加工率を有する放電ランプ用カソード部品を得た。なお、線径の調整は、複数回の線引加工により行った。また、表面粗さをRa5μm以下になるように研磨した。
Figure 0005800922
実施例1〜10および比較例1〜2に関するカソード部品に対して、胴体部のタングステン結晶粒径およびアスペクト比、トリウム成分粒子の粒径、不純物Mo量およびFe量、比重、硬さ(HRA)を調べた。
胴体部のタングステン結晶粒径およびアスペクト比、トリウム成分粒子の粒径、に関しては、胴体部の中心を通る円周断面および側面方向断面を切り出し、任意の単位面積300μm×300μmについて調べた。また、Mo量およびFe量はICP分析法により行った。また、比重はアルキメデス法により行った。また、硬さ(HRA)は、120°ダイアモンド円錐圧子を用いて試験荷重60kgで行った。表4、表5にその結果を示す。
Figure 0005800922
Figure 0005800922
また、実施例1〜10および比較例1〜2のカソード部品に対して、耐久性試験を実施した。耐久性試験は、カソード部品に通電して2100〜2200℃に加熱した状態で、100V、200V、300V、400Vの電圧を印加し、10時間後のエミッション電流密度(mA/mm)と100時間後のエミッション電流密度(mA/mm)を測定した。その結果を表6に示す。
Figure 0005800922
表6からも明らかなように、実施例1〜10のカソード部品は、100時間後のエミッション電流密度の低下が低く耐久性に優れることが分かった。それに対し、比較例1および2のカソード部品は、耐久性が約10%程度低下していた。これは、組織の不均一さによりトリウム成分粒子の分散状態が不均一であることなどによるものであると考えられる。
また、乾式法よりも湿式法で混合したものの方が耐久性が良かった。これは混合法による不純物混入を低減できているためである。
以上のことから、本発明によるカソード部品は印加電圧100V以上の放電ランプ用カソード部品に特に有効である。
1…カソード部品
2…胴体部
3…先端部
4…円周方向断面
5…側面方向断面
6…放電ランプ
7…支持棒
8…ガラス管

Claims (9)

  1. 線径2〜35mmの胴体部と、先が細くなった先端部と、を備えた放電ランプ用カソード部品であって、
    前記カソード部品が、トリウム成分を、酸化物(ThO)換算で0.5〜3wt%含有するタングステン合金からなり、
    前記胴体部の円周方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が1〜80μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上であり、且つ、
    前記胴体部の側面方向断面において、タングステンの結晶を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、結晶粒径が10〜120μmの範囲にあるタングステン結晶が90%以上、であることを特徴とする、放電ランプ用カソード部品。
  2. 前記胴体部の円周方向断面において、トリウム成分粒子を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、粒径が1〜15μmの範囲にあるトリウム成分粒子が90%以上、且つ、
    前記胴体部の側面方向断面において、トリウム成分粒子を、単位面積300μm×300μmにおける面積比で観察したときの、粒径が1〜30μmの範囲にあるトリウム成分粒子が90%以上である、請求項1記載の放電ランプ用カソード部品。
  3. 前記タングステンの結晶が、円周方向断面ではアスペクト比が3未満であり、側面方向断面ではアスペクト比が3以上である、請求項1または請求項2に記載の放電ランプ用カソード部品。
  4. Mo含有量が0.005wt%以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の放電ランプ用カソード部品。
  5. Fe含有量が0.003wt%以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電ランプ用カソード部品。
  6. 比重が17〜19g/cmの範囲内である、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプ用カソード部品。
  7. 硬さ(HRA)が55〜80の範囲内である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の放電ランプ用カソード部品。
  8. 表面粗さRaが5μm以下である、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放電ランプ用カソード部品。
  9. 印加電圧が100V以上の放電ランプに使用される、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の放電ランプ用カソード部品。
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