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JP5890700B2 - 熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜、磁気記録媒体、およびスパッタリングターゲット - Google Patents
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JP5890700B2 - 熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜、磁気記録媒体、およびスパッタリングターゲット - Google Patents

熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜、磁気記録媒体、およびスパッタリングターゲット Download PDF

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Description

本発明は、記録過程でレーザー光または近接場光による局所的な加熱で磁気記録を補助する熱アシスト記録方式[heat−assisted magnetic recording(HAMR)]用のハードディスクドライブに用いられる磁気記録媒体において、基板と、記録膜または下地層との間に形成される熱拡散制御膜として有用なAg合金薄膜、それを用いて構成される磁気記録媒体、および上記Ag合金薄膜の成膜に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
磁気記録媒体において、記録時のみ対象領域をレーザー光、または近接場光を用いて加熱する熱アシスト記録方式が提案されている。熱アシスト記録方式は、記録材料の結晶磁気異方性が温度と共に減少することを利用するものであり、磁気記録技術と光記録技術を融合した記録方式である。熱アシスト記録方式によれば、通常の磁気記録では記録できないような高保磁力媒体に対して、レーザー光の照射による熱で記録磁気部分の保磁力を局所的に下げて記録した後、室温まで急冷して保磁力を大きくして保存することができる。
熱アシスト記録方式ではレーザー書き込み時にレーザー照射を行うことから、高い熱伝導率(Thermal conductivity)に加え、記録時における加熱後は速やかに冷却されることが望ましく、高い熱拡散率(Thermal diffusivity)も要求される。そこで熱拡散を促進するために、基板と下地層または記録膜との間に、高い熱伝導率を有する熱拡散制御膜が配置されている。図1に、熱拡散制御膜を有する熱アシスト磁気記録媒体の膜構成の一例を示す。
ここで熱伝導率と熱拡散率について説明すると、熱伝導率は、定常的な温度勾配が存在する時の熱エネルギーが伝わる速さの割合を示す量である。これに対し、熱拡散率は、温度分布が緩和して熱的な平衡状態になる速さを表す量であり、
熱伝導率=熱拡散率×比熱×密度
で表される。右辺のうち比熱と密度を掛けた値は体積あたりの比熱に相当し、金属では物質によらず、ほぼ一定の値をもっているため、熱伝導率が高い金属は、熱拡散率も高い。そこで、熱伝導率および熱伝導率が高い金属としてAgが好ましく用いられている。
Agは、AuやCuに比べて熱拡散率が最も大きく、良好な熱的特性を有していることに加え、貴金属に分類されることから明らかなように、酸化による腐食に強く、他の金属との反応性も低いため、熱拡散制御膜に最も適している。
しかしながら、Ag薄膜は一般に、平均表面粗さRaが数nm以上と大きく、加熱により容易に粒成長や粗面化などの膜構造変化を起こす。一方、磁気記録媒体では、磁気ヘッド−磁気記録媒体間の距離が非常に狭いため、磁気記録媒体のRaは1.0nm以下程度の非常に平滑な表面が必要とされている。また、熱アシスト記録方式では、100℃を超える高温加熱に曝され、このような高温加熱と室温までの急激な冷却の繰返しを受けるため、高い耐熱性も要求される。
そこで本願出願人は、高い熱伝導率に加えて、高い熱拡散率、高い表面平滑性、高い耐熱性の全ての特性を兼ね備えたAg合金熱拡散制御膜として、特許文献1を提案している。特許文献1には、Ndおよび/またはY、並びにBiをそれぞれ所定量含むAg合金、好ましくは更にCuを所定量含むAg合金が開示されている。
特開2011−108328号公報
上記特許文献1の出願当時、熱アシスト記録方式では、記録時の加熱温度はおおよそ、100〜300℃程度と推定されていたため、特許文献1では、上記温度近傍での評価を行なっていた。具体的には、特許文献1の実施例1では、200℃で10分の真空熱処理後の平均表面粗さRaを1.0nm以下に抑制できること;実施例2では、大気雰囲気中で400℃、1時間の熱処理した後も平滑な表面が維持され、Agの表面拡散に起因する結晶粒成長を抑制できることを示している。
しかしながら、最近は、記録層を形成する際の熱履歴(記録時の加熱温度)は更に高くなり、記録層を形成する際の熱履歴は、おおむね600℃程度に達すると推定されている。それに伴い、熱拡散制御膜に要求される耐熱性のレベルも益々高くなっている。よって、このような非常に高い熱履歴を施した後も、高い熱伝導率・熱拡散率および高い表面平滑性を維持することができ、優れた耐熱性を有する新規な熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられるAg合金熱拡散制御膜の提供が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜であって、記録層を形成する際の熱履歴を、従来より高温の600℃程度に高めても表面平滑性に優れており、非常に優れた耐熱性を確保することができる新規なAg合金熱拡散制御膜、及びそれを用いた磁気記録媒体、並びに当該Ag合金熱拡散制御膜の作製に有用なスパッタリングターゲットを提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の熱拡散制御膜は、熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜であって、Nd、Bi、およびSiを含有するAg合金で構成されているところに要旨を有するものである。
本発明には、上記熱拡散制御膜を備えた熱アシスト記録用磁気記録媒体も本発明の範囲内に包含される。
また、上記課題を解決し得た本発明のスパッタリングターゲットは、上記熱拡散制御膜の作製に用いられるスパッタリングターゲットであって、Nd、Bi、およびSiを含有するAg合金で構成されているところに要旨を有するものである。
本発明によれば、Ag合金の組成が適切に制御されているため、600℃程度の高温熱履歴後も、高い熱伝導率・熱拡散率および高い表面平滑性を維持することができ、極めて優れた耐熱性を確保することができた。よって、本発明の熱拡散制御膜は、熱アシスト記録用磁気記録媒体に好適に用いられる。
図1は、熱アシスト記録用磁気記録媒体の膜構成の一例を示す説明図である。
本発明者らは、600℃程度の高温熱履歴後も良好な耐熱性を確保できるAg合金を提供するため、上記特許文献1に記載のAg合金のうち、Ag−Nd−Bi合金の三元系Ag合金をベースにして検討を行なった。その結果、後記する実施例に示すように、Ag−Nd−Bi合金では、熱履歴の温度が600℃程度まで高くなると表面平滑性が低下し、平均表面粗さRaが大きくなって高い耐熱性を確保できなくなることが判明した。そこで更に検討を重ねた結果、上記の三元系Ag合金に、更にSiを加えたAg−Nd−Bi−Si合金を用いれば、600℃の高温熱履歴後も、高い熱伝導率・熱拡散率を維持したまま、良好な表面平滑性も確保できる(平均表面粗さRaは小さい)ことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の熱拡散制御膜は、Ag−Nd−Bi−Si合金で構成されているところに特徴がある。上記組成の四元系Ag合金を用いれば、成膜直後のみならず、600℃程度の高温熱履歴後も、熱伝導率・熱拡散率および表面平滑性に優れた熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜を提供することができる。
本発明において「高温熱履歴後の耐熱性に優れた」とは、後記する実施例に記載の方法で650℃で10秒間の熱履歴を施したとき、熱伝導率が150W/(m・K)以上と高く(評価○)、且つ、平均表面粗さRaが2.0nm以下(評価○)、好ましくはRaが1.0nm以下(評価◎)のものを意味する。
特に、前述した特許文献1との関係で特筆すべき本発明の特徴部分は、高温熱履歴後の耐熱性向上元素としてSiが有効な元素であることを突き止めたところにある。以下、後記する実施例の結果に基づいて、Siの有用性を詳述する。
まず、後記する表1のNo.1〜5は、上記特許文献1に記載のAg−Bi−Nd合金膜を模擬した例であり、Biの量を略一定(0.06原子%前後)とし、Ndの量を0.20〜0.93原子%の範囲で変化させた三元系合金の例である。これらはいずれも、650℃で10秒の高温熱履歴後の熱伝導率は良好であったが、平均表面平滑性(Ra)が低下した。このうちNo.5は、高温熱履歴後のRa=2.3nmであり、上記No.のなかでは最も小さくなったが、それでも所望レベル(Ra≦2.0nm)には達しておらず、依然として高いままである。
詳細には、Nd量の増加(No.1→No.5)に伴って、高温熱履歴後のRaは小さくなる(表面平滑性は良好になる)傾向にある反面、高温熱履歴後の熱伝導率も小さくなる傾向にあることが分かる。よって、高温熱履歴後のRaの低減化のみ達成するとの観点からすれば、Ag−Bi−Nd合金膜のNd量を、上記No.5(Nd量=0.93原子%)よりも更に増量することも考えられるが、そうすると逆に、高温熱履歴後の熱伝導率も小さくなることが予想され、所望レベル(150W/(m・K)以上)を確保することができなくなる。すなわち、Nd量の増加に伴い、高温熱履歴後のRa低減作用(メリット)と、高温熱履歴後の熱伝導率低下作用(デメリット)の両方が発揮されることが分かる。
よって、上記実験の結果から、本発明の課題解決のためには、Ag−Bi−Ndの三元系合金膜では限界がある(本発明の解決課題を達成できない)ことが分かった。
これに対し、表1のNo.9〜14は、上記No.1〜5のAg−Bi−Nd合金膜において、Bi量を同程度とし、更にSiを添加した本発明のAg−Nd−Bi−Si合金膜であるが、成膜直後(as−depo.)の熱伝導率およびRaは良好である(評価○、評価基準の詳細は後記する実施例の欄を参照)と共に、650℃で10秒の高温熱履歴後の熱伝導率およびRaも良好であった(熱伝導率=○、Ra=○または◎)。すなわち、Siの添加により、前述したAg−Bi−Nd合金膜では達成できなかった、高温熱履歴後の高い熱伝導率と高い表面平滑性(Raの低減化)を両方達成できることが分かった。
詳細には、Siの添加効果は前述したNdと同様であり、Si量の増加に伴い、高温熱履歴後のRa低減作用は有効に発揮される半面、高温熱履歴後の熱伝導率は低下することが分かった。よって、本発明のAg−Bi−Nd−Si合金膜において、高温熱履歴後の高い熱伝導率を維持しつつ、Siによる高温熱履歴後のRa低減作用を有効に発揮させるためには、Nd量との関係でSi量を適切に制御することが必要であり、表1のNo.9〜11の本発明例に比べ、No.6〜8のようにNd量との関係で添加されるSi量が少なくなると、Si量の添加効果が充分に発揮されず、高温熱履歴後のRaが大きくなった。
具体的に、表1に基づいて考察する。
まず、Nd量(Nd量≒0.2原子%)およびBi量(Bi量≒0.05原子%)が略一定である、本発明例(No.9〜11)と、比較例(No.6〜8)と、特許文献1(Si添加なし)を模擬した従来例(No.1)について、高温熱履歴後のRaを対比すると、従来例→比較例→本発明例の順にRaは小さくなった。詳細には、Siを1.25〜1.70原子%含む上記本発明例ではRa=0.6〜0.8nm(評価◎)であるのに対し、本発明例に比べてSi量が少なくSiを0.32〜0.94原子%しか含まない上記比較例ではRa=2.2〜3.4nm(評価×)と大きくなり、Siを含まない従来例ではRa=7.3nmと、最も大きくなった。
なお、上記表1には、Ag合金膜のSi量が最大で1.70原子%(No.11)の結果しか示していないが、以下の基礎実験の結果から、上記No.9〜11の本発明例とほぼ同程度のBi量およびNd量を含むAg−Bi−Nd−Si合金では、Si量をおおむね、3原子%近傍まで増加させても、所望とする効果(高温熱履歴後も高い熱伝導率と高い表面平滑性を維持すること)を確保できることが充分に推認される。すなわち、表1には記載していないが、Ag−0.35原子%Bi−0.2原子%Nd−3原子%Siのスパッタリングターゲットを用いて上記と同様にしてAg合金膜を成膜したときの、高温熱履歴後の熱伝導率は181.4W/(m・K)であり(評価○)、且つ、高温熱履歴後のRaは0.7nm(評価◎)であった。このスパッタリングターゲットを用いたときのAg合金膜の組成は測定していないが、上記スパッタリングターゲットの組成と、前述したNo.9〜11の本発明例に用いたスパッタリングターゲットとは、Bi量およびNd量が同じでSi量のみが相違していることや、本発明例におけるスパッタリングターゲットの組成とAg合金膜の組成の関係を考慮すると、上記スパッタリングターゲットを用いて得られる薄膜の組成は、おそらく、上記本発明例と、Bi量およびNd量がおおむね同程度であり、Si量は約3原子%近傍であると充分に推察される。よって、上記のAg−Bi−Nd−Si合金膜では、Si量をおおむね、3原子%近傍まで増加させても、所望とする効果が得られるものと思われる。
なお、上記例において、高温熱履歴後の熱伝導率は、従来例→比較例→本発明例の順に低下し、上記本発明例では熱伝導率が最も小さくなったが、いずれも、本発明の合格基準(150W/(m・K)以上)を満たしており、所望とする高い熱伝導率を維持することができた。
次に、Nd量(Nd量≒0.9原子%)およびBi量(Bi量≒0.1原子%)が略一定である、本発明例(No.12〜14)と、特許文献1(Si添加なし)を模擬した従来例(No.5)について、高温熱履歴後のRaを対比すると、従来例→本発明例の順にRaは小さくなった。詳細には、Siを0.09〜0.29原子%含む本発明例ではRa=1.1〜1.6nm(評価○)であるのに対し、Siを含まない従来例ではRa=2.3nmと大きくなった。
なお、上記例において、高温熱履歴後の熱伝導率は、従来例に比べて本発明例の方が低下したが、上記本発明のいずれも、合格基準(150W/(m・K)以上)を充分満たしており、所望とする高い熱伝導率を維持することができた。
また、本発明例であるNo.9〜11(Nd量≒0.2原子%)と、No.12〜14(Nd量≒0.9原子%)とを対比すると、前述したようにNd量が高くなると高温熱履歴後のRaを小さく抑えられることから、No.9〜11に比べてNd量が多いNo.12〜14では、No.9〜11に比べて少ない量のSiで、所望とする特性を具備させることができた。逆に言えば、No.12〜14に比べてNd量が少ないNo.9〜11では、No.12〜14に比べてSi量を多くしないと、所望とする特性を具備させることができないことが分かる。
上記の結果から、Bi≦0.1原子%、Nd≦0.3原子%の場合は、Si量を少なくとも0.94原子%超とすれば良いことが分かる(No.9〜11と、No.8とから考察できる)。
以下、本発明を構成する元素(Nd、Bi、Si)の作用効果について説明する。
Ndは、成膜直後および高温熱履歴後の両方において、表面平滑性向上(Raの低減化)に寄与する元素である。上記効果は、Nd量の増加に伴って向上する傾向が見られるが、Ndを過剰に添加すると、成膜直後および高温熱履歴後の両方において、熱伝導率が低下する傾向にある。Nd量は、特にSi量との関係で適切に制御することが好ましい。
BiもNdと同様、表面平滑性向上作用を有している。特に、高温熱履歴後のRa低減作用はNdより大きいと推察される(詳細は後記する)。但し、過剰に添加すると、熱伝導率が低下するため、Nd量、Si量との関係で適切に制御することが好ましい。
ここで、BiがNdに比べて高温熱履歴後のRa低減化に大きく寄与していることは、Biを含まないスパッタリングターゲットを用いたときの実験結果から推察できる(表1には示さず)。すなわち、Biを含まずNd量は同じでSi量のみ異なる2種類のスパッタリングターゲット[(ア)Ag−0.2原子%Nd−1.4原子%Siのスパッタリングターゲットと、(イ)Ag−0.2原子%Nd−3原子%Siのスパッタリングターゲット)を用いて上記と同様にしてAg合金膜を成膜したときの、高温熱履歴後の熱伝導率は、(ア)では193.6W/(m・K)であり(評価○)、(イ)では156.5W/(m・K)であり(評価○)、且つ、高温熱履歴後のRaは、(ア)では2.5nm(評価×)、(イ)では2.6nm(評価×)であった。上記(ア)および(イ)のスパッタリングターゲットを用いたときのAg合金膜の組成は測定していないが、上記のようにスパッタリングターゲット中にBiを含まない場合は、スパッタリングターゲット中のSi量を1.4〜3原子%の範囲内で変化させても高温熱履歴後のRaは依然として高かったことを考慮すれば、Biの、高温熱履歴後のRa低減作用は非常に大きいことが充分に推察される。
Siは本発明を最も特徴付ける元素であり、高温熱履歴後の高い熱伝導率と高い表面平滑化作用を両方具備させるために有用な元素である。すなわち、Siは、成膜直後および高温熱履歴後の両方において、表面平滑性向上(Raの低減化)に寄与する元素であり、Si量の増加に伴って向上する傾向にある。但し、Siを過剰に添加すると、成膜直後および高温熱履歴後の両方において、熱伝導率が低下する傾向にあるため、所望の特性が発揮されるように、特にNd量との関係で適切に制御することが好ましい。また、後記するように本発明のAg合金膜は、Ag合金膜を構成する元素を含むAg合金スパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により成膜されることが好ましいが、Si量が多くなると、上記Ag合金スパッタリングターゲットの製造時やスパッタリング時に当該Ag合金スパッタリングターゲットの割れが発生する恐れがあるため、Si量の上限は、このような観点も考慮して適切に制御することが好ましい。
本発明に用いられるAg合金膜は、上記元素を含有し、残部:Agおよび不可避的不純物である。
以上、本発明のAg合金膜の構成について説明した。上記Ag合金膜は、熱アシスト記録用磁気記録媒体の熱拡散制御膜として用いられるものであり、その膜厚は、上記用途に通常用いられるものであれば特に限定されないが、おおむね、10〜270nmの範囲内であることが好ましい。
上記Ag合金膜は、スパッタリング法にてスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ということがある)を用いて形成することがより好ましい。スパッタリング法によれば、イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成できるからである。
スパッタリング法により上記Ag合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、前述した元素(Nd、Bi、およびSi)を含むAg合金スパッタリングターゲットを用いることが好ましい。
なお、Ag合金スパッタリングターゲット中に含まれるNdおよびSiは、Ag合金膜とほぼ同一量に制御されていれば良いが、Biは、Ag合金膜の表面近傍に濃化し易い元素であるため、Ag合金膜中のBi量に対して、おおむね、5倍程度のBiをスパッタリングターゲット中に含有させることが好ましい。
上記ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法が挙げられる。
本発明のAg合金熱拡散制御膜は、熱アシスト記録用磁気記録媒体に好適に用いられる。熱アシスト記録用磁気記録媒体の膜構成は、通常用いられるものであれば限定されず、代表的には、基板の上に、上記の熱拡散制御膜と、少なくとも一層の下地層と、少なくとも一層の磁気記録層と、少なくとも一層の保護層を有する積層構造である。上記の熱拡散制御膜は、例えば基板と、下地層または磁気記録層との間に設けられる。前述した図1は、本発明のAg合金熱拡散制御膜を適応し得る熱アシスト記録用磁気記録媒体の一例であり、本発明はこれに限定する趣旨ではない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限されず、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
本実施例では、Ag合金膜の組成が、熱伝導率、および表面平滑性(Ra)に及ぼす影響を調べた。
具体的には、多元スパッタ装置(アルバック社製SH−200)を用い、シリコン基板(基板サイズ:6インチ)上に、表1に記載の種々のAg合金膜を100nm作製した。使用したスパッタリングターゲットの組成を表1に併記する。
スパッタ条件は、到達真空度<7.5×10-7Torr、Arガス圧2mTorr、成膜パワー密度10〜300W、基板温度室温(22℃)、背圧<7.5×10-7Torrとした。
成膜されたAg合金膜の組成は、ICP発光分光分析装置(島津製作所製のICP発光分光分析装置「ICP−8000型」)を用い、定量分析して確認した。
このようにして得られたAg合金膜を用い、熱伝導率、および表面平滑性(Ra)を以下のようにして調べた。
(熱伝導率の測定)
熱伝導率は、4端子抵抗評価装置を用いてシート抵抗を測定し、下式(1)に基づいて電気抵抗率を算出した後、ヴィーデマン−フランツの法則を用いた下式(2)に基づき、熱伝導率に換算した。
電気抵抗率(μΩ・cm)=4.532×(シート抵抗)×(Ag合金膜厚)
・・・(1)
熱伝導率(W/(m・K))=753/電気抵抗率(μΩ・cm)・・・(2)
測定は、成膜直後の薄膜、および650℃×10秒の真空熱処理後の薄膜のそれぞれについて行い、下記基準で評価した。本実施例では、成膜直後および真空熱処理後の熱伝導率が○のものを合格とした。
(成膜直後の評価)
○:熱伝導率≧60W/(m・K)
×:熱伝導率<60W/(m・K)
(650℃×10秒の真空熱処理後の評価)
○:熱伝導率≧150W/(m・K)
×:熱伝導率<150W/(m・K)
なお、本実施例では、熱拡散率は測定していないが、前述したように熱伝導率が高いものは熱拡散率も高いため、ここでは、上記のようにシート抵抗値から簡易に算出した熱伝導率を測定することで、間接的に熱拡散率も評価することにした。
(平均表面粗さRaの測定)
Raは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)を用い、3μm×3μmのエリアの測定値から算出した。測定は、成膜直後の薄膜、および650℃×10秒の真空熱処理後の薄膜のそれぞれについて行い、下記基準で評価した。本実施例では、成膜直後のRaが○、および真空熱処理後のRaが○または◎のものを合格とした。
(成膜直後の評価)
○:Ra≦1.0nm
×:Ra>1.0nm
(650℃×10秒の真空熱処理後の評価)
◎:Ra≦1.0nm
○:Ra:1.0nm超、2.0nm以下
×:Ra>2.0nm
(真空熱処理)
RTP炉(アルバックRT−6)を用いて、2.5×10-2Paまで真空排気を行った後、1℃/秒の平均昇温速度で650℃まで上昇させ、650℃で10秒保持した。その後、1℃/秒の平均冷却速度で冷却し、温度が100℃以下になったらサンプルを取り出した。
これらの結果を表1に併記する。
Figure 0005890700
表1より、Nd、Bi、およびSiを含有し、各含有量が適切に制御されたNo.9〜14(本発明例)は、成膜直後だけでなく、高温熱履歴後も高い熱伝導率および良好な表面平滑性が発揮された。また、この結果より、上記例は高い熱拡散率を有していることも確認できる。これに対し、Siを含有しない特許文献1を模擬したNo.1〜5、およびNd、Bi、およびSiを含有しているがNd量との関係でSi量が適切に制御されていないNo.6〜8では、高温熱履歴後の表面平滑性が低下した。

Claims (4)

  1. 熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜であって、
    前記熱拡散制御膜は、Nd、Bi、およびSiを含有するAg合金で構成されており、
    650℃で10秒間の真空熱処理を施したとき、熱伝導率が150W/(m・K)以上であり、且つ、平均表面粗さRaが2.0nm以下であることを特徴とする熱拡散制御膜。
  2. 前記Ag合金は、Ndを0.93原子%以下(0原子%を含まない)、Biを0.1原子%以下(0原子%を含まない)、およびSiを3原子%以下(0原子%を含まない)含有するものである請求項1に記載の熱拡散制御膜。
  3. 請求項1または2に記載の熱拡散制御膜を備えた熱アシスト記録用磁気記録媒体。
  4. 請求項1または2に記載の熱拡散制御膜の作製に用いられるスパッタリングターゲットであって、
    Nd、Bi、およびSiを含有するAg合金で構成されていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
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