本発明においては、上記のようにコンデンサ素子に導電性高分子の層を形成するに先立って、コンデンサ素子をヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と沸点が150℃以上の高沸点溶剤が溶解した有機溶剤溶液で前処理する。従って、上記のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と沸点が150℃以上の高沸点溶剤が溶解した有機溶剤溶液を「前処理用溶液」という場合がある。
上記前処理用溶液におけるヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ニトロフェノール、クミルフェノール、アミノフェノール、ヒドロキシベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシ安息香酸)、スルホサリチル酸、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシ安息香酸)、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼンカルボン酸(つまり、トリヒドロキシ安息香酸)、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、ニトロフェノールスルホン酸、ヒドロキシベンゼンカルボン酸アルキルエステル(つまり、ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸プロピルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルなどで、特に例示した炭素数が1〜4のアルキルエステルが好ましい)、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステル(つまり、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸メチルエステル、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸エチルエステル、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸プロピルエステル、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸ブチルエステルなどで、特に例示した炭素数が1〜4のアルキルエステルが好ましい)、アルコキシフェノール(つまり、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノールなどで、特に例示した炭素数が1〜4のアルコキシフェノールが好ましい)などのベンゼン系のもの、ナフトール、ニトロナフトール、ヒドロキシナフタレンカルボン酸(つまり、ヒドロキシナフトエ酸)、ジヒドロキシナフトール、トリヒドロキシナフトール、ナフトールスルホン酸、ジヒドロキシナフトールスルホン酸、ニトロナフトールスルホン酸などのナフタレン系のもの、ヒドロキシアントラキノン、ヒドロキシインドールなどが挙げられるが、特にヒドロキシル基を1つだけ有するものが好ましい。そして、これらはそれぞれ単独で用いることができるし、また、2種以上併用することもできる。
このヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物としては、カルボキシル基を有するものや、ニトロ基を有するもの、アルコキシ基を有するものなどが好ましい。上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物で、カルボキシル基を有するものとしては、例えば、前記のヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ヒドロキシナフタレンカルボン酸などが挙げられる。
また、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物で、ニトロ基を有するものとしては、例えば、前記のニトロフェノール、ニトロフェノールスルホン酸、ニトロナフトール、ニトロナフトールスルホン酸などや、前記のカルボキシル基を有するものとしても挙げたヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられ、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物で、アルコキシ基を有するものとしては、例えば、前記のメトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノールなどのアルコキシフェノールが挙げられる。
そして、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物における「ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する」とは、ヒドロキシル基を1つだけ有する場合でもよいし、また、ヒドロキシル基を2つ以上有する場合であってもよいという意味である。
上記のようなヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物は、ポリマーアニオンをドーパントとする導電性高分子を固体電解質として用いた電解コンデンサのESRをより低くさせ、静電容量をより大きくさせ、耐電圧をより高くさせる作用を有している。
また、沸点が150℃以上の高沸点溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、グリセロール(つまり、グリセリン)(沸点:290℃)、ジグリセロール(つまり、ジグリセリン)〔沸点:265℃(15mmHg)〕、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。なお、ポリエチレングリコールは、ポリエチレグリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1500(ポリエチレングリコールの後の数字は分子量を表す)などのように常圧下では沸点が存在しないものもあるが、それらはいずれも、常圧下で150℃未満で沸騰することがないので、本発明では、このポリエチレングリコ−ルも沸点が150℃以上の高沸点溶剤の範疇に含めるものとする。また、沸点を示す際に、圧力を括弧書きで付記していないものは常圧下での沸点である。
上記コンデンサ素子の前処理にあたって用いる有機溶剤溶液、つまり、前処理用溶液において、沸点が150℃以上の高沸点溶剤をヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と共存させておくと、得られる電解コンデンサのESRを低くさせ、静電容量を大きくさせることになる。これは上記前処理用溶液を乾燥したときに、上記沸点が150℃以上の高沸点溶剤が一部残ってヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみをよくすることによるものと考えられる。つまり、完全な乾燥状態では、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみが悪く、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物による電解コンデンサの特性向上が充分に達成されないが、上記沸点が150℃以上の高沸点溶剤が一部残っていることによって、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみをよくして、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物による電解コンデンサの特性向上が達成されるようになるものと考えられる。
上記前処理用溶液、すなわち、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と沸点が150℃以上の高沸点溶剤が溶解した有機溶剤溶液を、調製するにあたって用いる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなどの低沸点の有機溶剤が用いられる。
上記の低沸点とは、沸点が150℃以上の高沸点溶剤の沸点より低いという意味であり、前処理工程における乾燥は、この溶媒としての有機溶剤の除去を主目的として行われ、乾燥は、通常、この有機溶剤の沸点より高い温度で行われる。
そして、前処理用溶液中の沸点が150℃以上の高沸点溶剤は、乾燥時に、上記有機溶剤と共沸して、そのほとんど取り除かれることになるが、その一部がヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に吸着したような状態で残り、前記のように、その一部残ったものが、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみをよくし、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物による特性向上に寄与するものと考えられる。
上記高沸点溶剤に関して、沸点が150℃以上としているのは、たとえ、それが電解コンデンサ中に残ったとしても、電解コンデンサの耐熱性に悪影響を与えないようにするためと、電解コンデンサの耐熱性の評価にあたっての試験の一つに150℃での貯蔵試験が採用されていることに基づくものである。
そして、上記前処理用溶液中において、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の濃度としては0.1〜50質量%が好ましく、その範囲内で1質量%以上がより好ましく、10質量%以下がより好ましく、また、沸点が150℃以上の高沸点溶剤の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、その範囲内で0.2質量%以上がより好ましく、5質量%以下がより好ましい。
また、上記前処理用溶液の調製にあたって、有機溶剤としてメタノール、エタノールなどの低級アルコールを用いる場合、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶解性を高めるためには、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどの低級アミン化合物や、アンモニア、イミダゾール、メチルイミダゾール、メチルエチルイミダゾール、メチルブチルイミダゾールなどの塩基性物質を添加してもよい。
さらに、上記前処理用溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジルなどを添加しておくと、電解コンデンサの耐電圧性を向上させることができるので好ましい。上記のような3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどからなる耐電圧向上剤のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液への添加量は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に対して、0.1〜1000質量%(すなわち、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物100質量部に対して耐電圧向上剤0.1〜1000質量部)が好ましく、上記範囲内で、10質量%以上がより好ましく、また、300質量%以下がより好ましい。
次に、コンデンサ素子およびそれに対する前処理について説明する。
まず、コンデンサ素子に関して、本発明で用いるものは、アルミニウム、タンタルおよびニオブよりなる群から選ばれる少なくとも1つの弁金属の多孔体と上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層とを有するものとしているが、このようなコンデンサ素子の構成は、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサに使われているコンデンサ素子に共通する基本的構成を特定するものであって、特殊な構成のコンデンサ素子を意図するものではなく、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサのいずれの電解コンデンサにおいてもコンデンサ素子として適用可能なものである。例えば、上記弁金属の多孔体の少なくとも一面に該弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有する陽極と、陰極とをセパレータを介して巻回または積層してコンデンサ素子としてもよいし、また、上記弁金属の多孔体と上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層とを有するものを陽極としてコンデンサ素子を構成し、固体電解質となる導電性高分子の層を形成し、さらに後処理した後、カーボン層および銀ペイント層を順次形成して陰極としたものであってもよい。
コンデンサ素子の前処理は、コンデンサ素子に上記前処理用溶液を含浸した後、乾燥する操作を少なくとも1回行うことによって行われる。このコンデンサ素子への前処理用溶液の含浸は、コンデンサ素子を前処理用溶液に浸漬するか、またはコンデンサ素子に前処理用溶液を吹き付けたり、塗布することによって行われる。そして、前処理用溶液の含浸を前処理用溶液にコンデンサ素子を浸漬することによって行った場合は、その含浸後の乾燥は、コンデンサ素子を前処理用溶液から取り出してから行う。このコンデンサ素子への前処理用溶液の含浸によって、前処理用溶液は、コンデンサ素子の表面のみならず、多孔質化している陽極やセパレータを用いるコンデンサ素子ではそのセパレータの空隙中に侵入した状態で保持され、その後、乾燥されるので、前処理用溶液中に含まれていたヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物は、コンデンサ素子の表面のみならず、陽極やセパレータの空隙内部に侵入した状態で存在するようになる。なお、この処理工程を前処理と言うのは、コンデンサ素子に導電性高分子の層を形成する前に行われるからである。
次に、本発明において用いる導電性高分子の分散液について説明する。
本発明において用いる導電性高分子の分散液は、ポリマーアニオンをドーパントとしてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して得られた導電性高分子の分散液である。
上記ポリマーアニオンとしては、高分子スルホン酸、高分子カルボン酸などが用いられ、また、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選らばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体も用いることができる。
上記高分子スルホン酸としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステルおよび次の一般式(1)で表される繰り返し単位を有するフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
これは、これらの高分子スルホン酸が、導電性高分子の合成時、優れた分散剤として機能し、酸化剤やモノマーとしてのチオフェンまたはその誘導体などを水中または水性液中を均一に分散させ、かつ合成されるポリマー中にドーパントとして取り込まれ、得られる導電性高分子を電解コンデンサの固体電解質として用いるのに適した高い導電性を有するものにさせるからである。そして、上記高分子スルホン酸が、優れた分散剤として機能することが、得られる導電性高分子を電解コンデンサの固体電解質として用いるのに適した優れた耐熱性を有させるようにするものと考えられる。
上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。
すなわち、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が10,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が1,000,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって、使用しにくくなるおそれがある。そして、上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、20,000以上のものが好ましく、40,000以上のものがより好ましく、また、800,000以下のものが好ましく、300,000以下のものがより好ましい。
また、上記スルホン化ポリエステルは、スルホイソフタル酸エステルやスルホテレフタル酸エステルなどのジカルボキシベンゼンスルホン酸ジエステルとアルキレングリコールとを酸化アンチモンや酸化亜鉛などの触媒の存在下で縮重合させたものであり、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が5,000〜300,000のものが好ましい。
すなわち、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が300,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものが好ましく、20,000以上のものがより好ましく、また、100,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂は、前記のように、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものであるが、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が5,000〜500,000のものが好ましい。
すなわち、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が500,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものがより好ましく、また、400,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
上記ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種以上併用することもできる。そして、本発明で用いる導電性高分子の分散液は、導電性高分子の合成にあたって、それらの高分子スルホン酸を混合して用いて合成した導電性高分子の分散液であってもよいし、また、上記高分子スルホン酸をそれぞれ別々に用いて導電性高分子を合成し、その導電性高分子の合成後に、それらの導電性高分子の分散液を混ぜ合せたものでもよい。
上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体(以下、これを「スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体」という場合がある)をドーパントとして、チオフェンまたはその誘導体を酸化重合することにより得られる導電性高分子は、導電性が高く、かつ耐熱性が優れているので、ESRが低く、かつ高温条件下における信頼性が高く、しかも漏れ電流が少ない電解コンデンサを製造するのに適している。
上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体を合成するにあたって、スチレンスルホン酸と共重合させるモノマーとして、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるが、上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸スルホヘキシルナトリウム、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシステアリルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシポリオキシエチレン、メタクリル酸メトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸エトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシブチルなどを用い得るが、特にメタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、メタクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
また、上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジフェニルブチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸スルホヘキシルナトリウム、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸ヒドロキシルアルキルなどを用い得るが、特にアクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸ヒドロキシルアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、アクリル酸グリシジルやアクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、アクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
そして、上記不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物やそれらの加水分解物を用いることができる。この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物とは、例えば、不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物が上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、メトキシ基が加水分解されてヒドロキシル基になった構造である3−メタクリロキシトリヒドロキシシランになるか、またはシラン同士が縮合してオリゴマーを形成し、その反応に利用されていないメトキシ基がヒドロキシル基になった構造を有する化合物になる。そして、この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
このスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体における、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの比率としては、質量比で、1:0.01〜0.1:1であることが好ましい。
そして、上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。
このスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体も、前記のポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などの高分子スルホン酸と併用することもできるし、また、このスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体をドーパントとして合成した導電性高分子の分散液と前記高分子スルホン酸をドーパントとして合成した導電性高分子の分散液とを混合して用いることもできる。
上記導電性高分子を含む分散液の調製にあたって、導電性高分子を合成するためのモノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体が用いられるが、そのチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン、その3,4−エチレンジオキシチオフェンのアルキル誘導体、3−アルキルチオフェン、3−アルコキシチオフェン、3−アルキル−4−アルコキシチオフェン、3,4−アルキルチオフェン、3,4−アルコキシチオフェンなどが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数は1〜16が適しているが、特に、3,4−エチレンジオキシチオフェンやそのアルキル誘導体が好ましい。
上記3,4−エチレンジオキシチオフェンやそのアルキル誘導体について以下に詳しく説明するが、以下においては、「3,4−エチレンジオキシチオフェン」の酸素原子が配位する位置を示す「3,4−」を省略して「エチレンジオキシチオフェン」で説明する。
上記エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体は、下記の一般式(2)で表される化合物に該当する。
そして、上記一般式(2)中のR2が水素の化合物がエチレンジオキシチオフェンであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本書では、この「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を「エチレンジオキシチオフェン」と表示している。そして、上記一般式(2)中のR2がアルキル基の場合、該アルキル基としては、炭素数が1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(2)中のR2がメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本書では、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(2)の中のR2がエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本書では、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。
一般式(2)の中のR2がプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本書では、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、一般式(2)の中のR2がブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本書では、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。また、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を、本書では、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、それらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、メチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましく、特にエチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。なお、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの合成法は本出願人が出願した国際公開第2011/068026や国際公開第2011/074380において具体的に開示している。
これらのエチレンジオキシチオフェンやそのアルキル誘導体(すなわち、アルキル化エチレンジオキシチオフェン)は、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種以上を併用することができる。
次に、ポリマーアニオンをドーパントとしてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して導電性高分子を合成する手段について説明すると、上記ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などの高分子スルホン酸や、スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体(すなわち、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体)などは、いずれも、水や水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液に対して溶解性を有していることから、酸化重合は水中または水性液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
導電性高分子を合成するにあたっての酸化重合は、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用することができる。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
電解酸化重合は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で電解酸化重合を行う場合、電流値としては0.05mA/cm2〜10mA/cm2が好ましく、0.2mA/cm2〜4mA/cm2がより好ましく、定電圧で電解酸化重合を行う場合は、電圧としては0.5V〜10Vが好ましく、1.5V〜5Vがより好ましい。電解酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、特に10℃〜30℃が好ましい。また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。なお、電解酸化重合にあたっては、触媒として硫酸第一鉄または硫酸第二鉄を添加してもよい。
上記のようにして得られる導電性高分子は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子の分散液を超音波ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去する。このときの動的光散乱法で測定した導電性高分子の粒径としては、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成した硫酸などを除去し、必要に応じ、高沸点溶剤を添加してもよい。
上記のように、導電性高分子の分散液中に高沸点溶剤を含有させておくと、乾燥して導電性高分子を得るときに、その製膜性を向上させ、それによって、導電性を向上させ、電解コンデンサの固体電解質として用いたときに、ESRを小さくさせることができる。これは、例えば、電解コンデンサの作製にあたって、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出して乾燥したときに、高沸点溶剤も脱け出ていくが、その高沸点溶剤が脱け出る際に、形成される導電性高分子の層の厚み方向の層密度を高くさせ、それによって、導電性高分子間の面間隔が狭くなり、導電性高分子の導電性が高くなって、電解コンデンサの固体電解質として用いたときにESRの小さいものにさせることができるようになるものと考えられる。
上記高沸点溶剤としては、沸点が150℃以上のものが好ましく、そのような高沸点溶剤の具体例としては、前記の前処理用溶液に関連して例示したものと同様のものを用いることができる。そして、この高沸点溶剤の含有量としては、分散液中の導電性高分子に対して5〜3,000質量%(すなわち、導電性高分子100質量部に対して高沸点溶剤が5〜3,000質量部)が好ましく、上記範囲内で、20質量%以上がより好ましく、700質量%以下がより好ましい。
また、上記導電性高分子を含む分散液には、コンデンサ素子と導電性高分子との密着性を高めるために、バインダ樹脂を添加してもよい。
そのようなバインダ樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、シランカップリング剤などが挙げられ、特にポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂などが好ましい。また、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレンのように、スルホン基が付加されていると、導電性高分子の導電性を向上させることができるので、より好ましい。
本発明において用いる導電性高分子の分散液には、上記のように、高沸点溶剤やバインダ樹脂を含有させてもよいので、それらを含んでいる場合があるが、本発明では、必須の成分である導電性高分子が含まれてさえいれば、上記の高沸点溶剤や結合剤を含んでいるか否かにかかわらず、導電性高分子の分散液と呼んでいる。
本発明において、電解コンデンサの製造にあたっては、前記のように、コンデンサ素子に前処理用溶液を含浸した後、乾燥する操作を少なくとも1回行って前処理し、その前処理後のコンデンサ素子にポリマーアニオンをドーパントとする導電性高分子の分散液を含浸した後、乾燥する操作を少なくとも1回行って、前処理後のコンデンサ素子に固体電解質を構成することになる導電性高分子の層を形成する。
上記の「少なくとも1回」とは、1回でもよいし、また、それより多い回数、つまり、2回以上でもよいという意味であるが、通常、コンデンサ素子への前処理用溶液による前処理は、コンデンサ素子に前処理用溶液を含浸した後、乾燥する操作を1回だけ行うことが多いが、上記前処理後のコンデンサ素子に導電性高分子の分散液を含浸した後、乾燥する操作は2〜3回繰り返すのが、コンデンサとしたときに所望の容量を得るのに適している。
上記のように、前処理後のコンデンサ素子にポリマーアニオンをドーパントとする導電性高分子の分散液を含浸した後、乾燥して、前処理後のコンデンサ素子に導電性高分子の層を形成する操作を「本処理」という場合があるが、この本処理における前処理後のコンデンサ素子への導電性高分子の分散液の含浸は、上記前処理後のコンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬するか、または上記前処理後のコンデンサ素子に導電性高分子の分散液を吹き付けたり、塗布することによって行われる。そして、その含浸を導電性高分子の分散液に前処理後のコンデンサ素子を浸漬することによって行った場合は、乾燥を上記前処理後のコンデンサ素子を導電性高分子の分散液から取り出してから行う。
上記のような本処理にあたって、ポリマーアニオンをドーパントとする導電性高分子の分散液は、25℃で、pH2〜4であることが好ましい。これは、上記導電性高分子の分散液の25℃でのpHが2より低い場合は、コンデンサ素子の酸化被膜を破壊してしまうおそれがあるからであり、また、上記条件下でのpHが4より高くなると、コンデンサのESRが悪く(つまり、高く)なるおそれがあるからである。
本発明では、上記のようなポリマーアニオンをドーパントとする導電性高分子の分散液を用いての本処理を経て導電性高分子の層を形成したコンデンサ素子に、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が溶解した有機溶剤溶液を含浸した後、乾燥する操作を少なくとも1回行うことを経て電解コンデンサを製造するか、または導電性高分子の層を形成したコンデンサ素子に、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を沸点が150℃以上の高沸点溶剤に溶解した溶液を含浸することを少なくとも1回行うことを経て電解コンデンサを製造する。本発明では、この処理工程を後処理というが、これは、この処理をコンデンサ素子に導電性高分子の層を形成後に行うからである。
そして、上記後処理に使用する溶液を後処理用溶液というが、上記のような特定の後処理用溶液で導電子高分子の層を形成後のコンデンサ素子を後処理することによって、ESRをより低くし、静電容量をより大きくし、耐電圧をより高くすることができる。
上記後処理における導電性高分子層を形成したコンデンサ素子への後処理用溶液の含浸は、上記コンデンサ素子を後処理用溶液に浸漬するか、または上記コンデンサ素子に後処理用溶液を吹き付けたり、塗布することによって行われる。
そして、上記後処理用溶液としてヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が溶解した有機溶剤溶液を用いた場合、上記後処理用溶液の含浸後、乾燥するが、その含浸をコンデンサ素子を後処理用溶液に浸漬することによって行った場合には、乾燥をコンデンサ素子を後処理用溶液から取り出してから行う。また、後処理用溶液としてヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に溶解した溶液を用いた場合には、その含浸後、乾燥しないので、上記後処理用溶液は電解コンデンサ内に残存することになる。
上記のような導電性高分子の層を形成後の後処理において後処理用溶液として使用するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が溶解した有機溶剤溶液に関して、そのヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物は前記前処理用溶液の調製にあたって用いたものと同様のものを用いることができ、また、有機溶剤も前記前処理用溶液の調製にあたって用いたものと同様の有機溶剤を用いることができる。
上記のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が溶解した有機溶剤溶液は、後処理時に乾燥するタイプの後処理用溶液であるが、この乾燥するタイプの後処理用溶液の調製にあたって、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物がメタノールやエタノールなの低級アルコールに溶解しにくい場合には、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどの低級アミン化合物や、アンモニア、イミダゾール、メチルイミダゾール、メチルエチルイミダゾール、メチルブチルイミダゾールなどの塩基性物質を添加して、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を上記のような有機溶剤に溶解しやすくしてもよい。
上記溶液中のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の濃度は、特に限定されることはないが、0.1〜80質量%が好ましく、上記範囲内で、1質量%以上がより好ましく、また、10質量%以下がより好ましい。
上記のように溶液中のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の濃度を0.1〜80質量%の範囲にすると、導電性高分子の層(以下、簡略化して、「導電性高分子層」ともいう)を形成したコンデンサ素子の上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液への浸漬回数を多くしなくてもよいし、また、粘度の高すぎによる作業性の低下も生じにくくなる。
上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液の液性は、特に限定されることはないが、pHが1〜11の範囲にあることが好ましい。これは、pHが11より高くなるとアルカリによる導電性高分子の脱ドープが生じるおそれがあり、また、pHが1より低くなるとコンデンサ素子の酸化被膜が損傷して、漏れ電流が多くなるおそれがあるからである。
上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液を導電性高分子層を形成したコンデンサ素子に含浸し、乾燥すると、上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物は、その大部分が導電性高分子層上に薄膜状で存在するものの、溶液状態にあるときに、一部が導電性高分子層の内部に浸透し、その状態で乾燥されるので、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の一部が導電性高分子層の内部に入り込んでいるものと考えられる。
このヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の量は、導電性高分子に対して1〜5,000質量%(導電性高分子100質量部に対してヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が1〜5,000質量部)が好ましく、上記範囲内で、20質量%以上がより好ましく、また、500質量%以下がより好ましい。
上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液には、高沸点溶剤を添加しておくことが好ましい。これはヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が溶解した溶液中に高沸点溶剤を含有させておくと、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の製膜性を向上させ、それによって、ESRをより低くし、耐電圧性をより高くすることができるからである。
上記のような高沸点溶剤としては、沸点が150℃以上のものが好ましく、そのような高沸点溶剤の具体例としては、前記の前処理用溶液に関して例示したものと同様のものを用いることができる。そして、上記高沸点溶剤の添加量としては、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に対して、5〜5,000質量%(すなわち、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物100質量部に対して高沸点溶剤が5〜5,000質量部)が好ましい。
上記のような沸点が150℃以上の高沸点溶剤として、例えば、エチレングリコール(沸点:198℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)などの沸点が150℃〜210℃の範囲内のものを用いる場合、それら沸点が150℃〜210℃の範囲内の高沸点溶剤の添加量としては、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に対して、5〜5,000質量%という好ましい範囲内で、200質量%以上がより好ましい。
また、上記のような沸点が150℃以上の高沸点溶剤として、例えば、ブタンジオール(沸点:230℃)ジエチレングリコール(沸点:244℃)、グリセロール(つまり、グリセリン)(沸点:290℃)、ジグリセロール(つまり、ジグリセリン)〔沸点:265℃(15mmHg)〕、ポリエチレングリコールなどの沸点が210℃より高い高沸点溶剤を用いる場合、それら沸点が210℃より高い高沸点溶剤の添加量としては、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に対して、5〜5,000質量%という好ましい範囲内で、20質量%以上がより好ましく、700質量%以下がより好ましい。
高沸点溶剤の添加量が上記より少ない場合は、導電性高分子層形成後のコンデンサ素子に上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の有機溶剤溶液を含浸したとき、導電性高分子の一部が溶解または膨潤し、それが乾燥するときにコンフォメーション(構造)が変化して導電性高分子の導電性が低下し、その結果、電解コンデンサのESRが高くなるとともに、耐電圧を高くさせる作用が低下するおそれがある。また、高沸点溶剤の添加量が上記より多い場合は、溶液の乾燥に時間を要する上に、その熱履歴によりESRを高くしてしまうおそれがある。
また、上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジルなどを添加しておくことと、電解コンデンサの耐電圧を向上させる作用が増加するので好ましい。
上記の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの耐電圧向上剤のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶液への添加量は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に対して、0.1〜1000質量%(すなわち、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物100質量部に対して結合剤0.1〜1000質量部)が好ましく、上記範囲内で、10質量%以上がより好ましく、また、300質量%以下がより好ましい。
この後処理時に乾燥するタイプの後処理用溶液による後処理は、上記導電性高分子層を形成後のコンデンサ素子を後処理用溶液を含浸した後、乾燥する工程を少なくとも1回行うことによって行われる。上記コンデンサ素子への後処理用溶液の含浸は、コンデンサ素子を後処理用溶液に浸漬するか、またはコンデンサ素子に後処理用溶液を吹き付けたり、塗布することによって行われる。そして、この後処理用溶液の含浸後の乾燥は、後処理用溶液の含浸を後処理用溶液にコンデンサ素子を浸漬することによって行った場合には、コンデンサ素子を後処理用溶液から取り出してから行う。
上記乾燥は、加熱による導電性高分子への影響を少なくし、かつ後処理を作業性よく行う観点から、通常、溶媒として用いられている有機溶剤の沸点より高い温度で行われる。
次に、後処理時に乾燥しないタイプの後処理用溶液について説明する。この後処理用溶液とは前記のようにヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を沸点が150℃以上の高沸点溶剤に溶解したものである。
この後処理時に乾燥しないタイプの後処理用溶液に使用するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物や沸点が150℃以上の高沸点溶剤は、これまでに説明してきたものと同様のものを用いることができる。そして、上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に関しては、その役割(作用)はこれまでに説明した場合と同様に、ESRをより低くさせ、静電容量をより大きくさせ、耐電圧性をより向上させるためであり、沸点が150℃以上の高沸点溶剤は、上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を溶解させるための溶剤としての作用を担うとともに、電解コンデンサの耐熱性を高く保つためのものである。
上記後処理時に乾燥しないタイプの後処理用溶液においては、沸点が150℃以上の高沸点溶剤が溶媒となり、ヒドロキシル基を少なくとも1つ以上有する環状有機化合物が溶質となるが、このヒドロキシル基を少なくとも1つ以上有する環状有機化合物の溶液中における濃度としては、0.5〜50質量%が好ましく、その範囲内で、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。つまり、ヒドロキシル基を少なくとも1つ以上有する環状有機化合物の濃度が上記より低い場合は、電解コンデンサのESRが充分に低くならず、耐熱性も低下するおそれがあり、また、ヒドロキシル基を少なくとも1つ以上有する環状有機化合物の濃度が上記より高い場合は、該環状有機化合物の析出が起こりやすくなり、取扱性が悪くなることに加えて、電解コンデンサのESRが悪くなるおそれがある。
また、上記後処理用溶液にエポキシ化合物またはその加水分解物、シラン化合物またはその加水分解物およびポリアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の耐電圧向上剤を含有させておくと、電解コンデンサの耐電圧性を向上させる作用が増加することから好ましい。
上記耐電圧向上剤の後処理用溶液中における濃度としては、0.05〜20質量%が好ましく、その範囲で0.1質量%以上がより好ましく、また、5質量%以下がより好ましい。
そして、上記エポキシ化合物またはその加水分解物としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジル、エポキシプロパノール(つまり、グリシドール)、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エポキシブタン(つまり、グリシジルメタン)、エポキシペンタン(つまり、グリシジルエタン)、エポキシヘキサン(つまり、グリシジルプロパン)、エポキシヘプタン(つまり、グリシジルブタン)、エポキシオクタン(つまり、グリシジルペンタン)、エポキシシクロヘキセン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、シラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、n−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、n−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シリカゾルなどが挙げられ、ポリアルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられる。
この後処理時に乾燥しないタイプの後処理用溶液による後処理は、前記のように、導電性高分子層を形成したコンデンサ素子に上記後処理用溶液を含浸することを少なくとも1回行うことによって行われる。この含浸は、前記と同様に、導電性高分子を形成後のコンデンサ素子を後処理用溶液に浸漬するか、または上記コンデンサ素子に後処理用溶液を吹き付けたり、塗布することによって行われる。
そして、この後処理時に乾燥しないタイプの後処理用溶液は、そのまま、電解液として使用できるので、乾燥を要しない。従って、この後処理時に乾燥しないタイプの後処理用溶液による後処理は、前記のような後処理時に乾燥するタイプの後処理用溶液による後処理に比べて、乾燥工程を省くことができるという利点がある。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は、特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
また、実施例に先立ち、コンデンサ素子への前処理にあたって実施例で用いる前処理用溶液の調製例を調製例1〜12で示し、比較例で用いる前処理用溶液の調製例を調製例13〜14で示す。そして、コンデンサ素子への導電性高分子の層の形成にあたって用いる導電性高分子の分散液の調製例を調製例(I)〜(II)で示し、また、導電性高分子の層の形成後の後処理にあたって用いる後処理用溶液の調製例を調製例A〜Bで示す。
調製例1
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエタノール500gに15gのヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルと5gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した後、5gのポリエチレングリコール400を添加し、その後、24時間撹拌することによって、前処理用溶液1を調製した。
上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルはヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルの前処理用溶液1中の濃度は約2.86%であり、ポリエチレングリコール400は沸点が150℃以上の高沸点溶剤に該当し、このポリエチレングリコール400の前処理用溶液1中の濃度は約0.95%である。そして、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは耐電圧向上剤に該当し、この3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの前処理用溶液1中の濃度は0.95%である。
調製例2
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエタノール500gに15gのヒドロキシベンゼンカルボン酸と5gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した後、5gのポリエチレングリコール400を添加し、その後、24時間撹拌することによって、前処理用溶液2を調製した。
上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸はヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このヒドロキシベンゼンカルボン酸の前処理用溶液2中の濃度は約2.86%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例3
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかった以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液3を調製した。
この前処理用溶液3では、耐電圧向上剤の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかったことに伴ない、ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルの濃度が約2.88%になり、ポリエチレングリコール400の濃度が約0.96%になった。
調製例4
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかった以外は、すべて調製例2と同様の操作を行って、前処理用溶液4を調製した。
この前処理用溶液4では、耐電圧向上剤の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかったことに伴ない、ヒドロキシベンゼンカルボン酸の濃度が約2.88%になり、ポリエチレングリコール400の濃度が約0.96%になった。
調製例5
ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えて、ニトロフェノールを添加した以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液5を調製した。
上記ニトロフェノールはヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このニトロフェノールの前処理用溶液5中の濃度は約2.86%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例6
ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルに代えて、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸を添加した以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液6を調製した。
上記ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸はヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸の前処理用溶液6中の濃度は約2.86%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例7
ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルに代えて、メトキシフェノールを添加した以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液7を調製した。
上記メトキシフェノールはヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このメトキシフェノールの前処理用溶液7中の濃度は約2.86%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例8
ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルに代えて、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸ブチルエステルを添加した以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液8を調製した。
上記ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸ブチルエステルはヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸ブチルエステルの前処理用溶液8中の濃度は約2.86%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例9
ポリエチレングリコール400に代えて、ジグリセロールを添加した以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液9を調製した。
上記ジクリセロールは沸点が265℃(15mmHg)で、沸点が150℃以上の高沸点溶剤に該当し、このジクリセロールの前処理用溶液9中の濃度は約0.95%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例10
ポリエチレングリコール400に代えて、ジグリセロールを添加した以外は、すべて調製例2と同様の操作を行って、前処理用溶液10を調製した。
上記ジクリセロールの前処理用溶液10中の濃度は約0.95%である。そして、その他は前記前処理用溶液2の場合と同様である。
調製例11
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えて、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加した以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、前処理用溶液11を調製した。
上記ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルは耐電圧向上剤に該当し、このポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの前処理用溶液11の濃度は0.95%である。そして、その他は前記前処理用溶液1の場合と同様である。
調製例12
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えて、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加した以外は、すべて調製例2と同様の操作を行って、前処理用溶液7を調製した。
上記ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの前処理用溶液12中の濃度は約0.95%である。そして、その他は前記前処理用溶液2の場合と同様である。
調製例13(比較例用)
ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルを添加しなかった以外は、調製例1と同様の操作を行って、比較例用の前処理用溶液13を調製した。
調製例14(比較例用)
ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステルに代えて、トルエンスルホン酸を添加した以外は、調製例1と同様の操作を行って、比較例用の前処理用溶液14を調製した。
導電性高分子の分散液の調製例(I)
テイカ社製ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量100、000)の3%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、硫酸第一鉄・7水和物0.3gを添加し、その中に3,4−エチレンジオキシチオフェン4mLをゆっくり滴下した。
それらをステンレス鋼製の攪拌翼で攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌翼の付け根に陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合を行った。上記電解酸化重合後、水で6倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で2時間分散処理を行った。その後、オルガノ社製のカチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間攪拌機で攪拌した。次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンなどのカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して濃度を2%に調整した後、28%アンモニア水溶液でpHを3.2に調整して、導電性高分子の分散液(I)を得た。
得られた導電性高分子の分散液(I)中の導電性高分子の粒度分布を大塚電子製ELS−Zで測定したところ、平均粒径が150nmであった。
導電性高分子の分散液の調製例(II)
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム170g(スチレンスルホン酸として152g)とアクリル酸ヒドロキシエチル30gを添加した。そして、その溶液に酸化剤として過硫酸アンモニウムを1g添加してスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。
そして、その後、その反応液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去し、濃度を3%に調整してスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液を得た。
得られたスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、ゲル濾過カラムを用い、デキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、150,000であった。
そして、前記導電性高分子の分散液(I)における濃度3%のポリスチレンスルホン酸水溶液に代えて、上記スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液を用いた以外は、すべて上記調製例(I)と同様の操作を行って、濃度2%の導電性高分子の分散液を得た。その濃度2%の導電性高分子の分散液に対して、28%アンモニア水溶液を加えてpHを2.7に調整した。そして、その溶液40gに対し、ジメチルスルホキシドを3g(導電性高分子に対して約375%)添加して、導電性高分子の分散液(II)を得た。
この導電性高分子の分散液(II)中の導電性高分子の粒度分布を大塚電子製ELS−Zで測定したところ、平均粒径が130nmであった。
後処理用溶液の調製例A
ヒドロキシベンゼンカルボン酸をエタノールとエチレングリコールとの質量比が1:1の混合溶媒に溶解して濃度2%の溶液を調製した。そして、そのヒドロキシベンゼンカルボン酸の2%エタノール−エチレングリコール溶液100gに対し、ニトロフェノールを2g添加し、さらに、ポリエチレングリコールジグリシジル1gを添加し、撹拌して後処理用溶液Aを得た。この後処理用溶液AのpHは3.9であった。
上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸はヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このヒドロキシベンゼンカルボン酸の後処理用溶液A中の濃度は約1.93%であり、上記ニトロフェノールもヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このニトロフェノールの後処理用溶液A中の濃度も約1.93%である。そして、上記ポリエチレングリコールジグリシジルは耐電圧向上剤に該当し、このポリエチレングリコールジグリシジルの後処理用溶液中の濃度は約0.97%であり、上記エチレングリコールは沸点が179℃であって、沸点が150℃以上の高沸点溶剤に該当し、このエチレングリコールの後処理用溶液中の濃度は約48%である。そして、この後処理用溶液Aは後記の実施例1〜24で導電性高分子層の形成後の後処理に用いるものであり、その後処理時において溶剤を乾燥するタイプのものである。
後処理用溶液の調製例B
攪拌機付き1Lビーカー内に入れたγ−ブチロラクトン500gに40gのp−ヒドロキシベンゼンカルボン酸と5gのニトロフェノールと4gのポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加した後、8gのジメチルアミンを添加し、24時間撹拌することによって後処理用溶液Bを得た。
上記γ−ブチロラクトンは沸点が203℃あって、沸点が150℃以上の高沸点溶剤に該当し、ヒドロキシベンゼンカルボン酸とニトロフェノールはヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に該当し、このヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の後処理用溶液B中の濃度は約8.08%であり、ヒドロキシベンゼンカルボン酸とニトロフェノールとの比率は質量比で8:1である。そして、上記ポリエチレングリコールジグリシジルは耐電圧向上剤に該当し、このポリエチレングリコールジグリシジルの後処理用溶液中の濃度は約0.72%であり、上記ジメチルアミンは電解質のカチオンに該当し、このジメチルアミンの後処理用溶液中の濃度は約1.44%である。そしてこの後処理用溶液Bは後記の実施例25〜48で導電性高分子層の形成後の後処理に用いるものであり、その後処理時において溶剤を乾燥しないタイプのものである。
〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)〕
この巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)では、後処理時に溶剤を乾燥するタイプの巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造し、その巻回型アルミニウム電解コンデンサで本発明の評価をする。
実施例1
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、200Vで化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。
上記コンデンサ素子を前記の調製例1で調製した前処理用溶液1に浸漬し、1分後に取り出し、150℃で15分間乾燥して前処理を行った。
次に、上記前処理後のコンデンサ素子を調製例(I)で調製した導電性高分子の分散液(I)に浸漬し、5分後に取り出し、150℃で30分間乾燥する操作を3回行って、コンデンサ素子に固体電解質となる導電性高分子の層を形成した。
そして、上記導電性高分子の層を形成後のコンデンサ素子を前記後処理用溶液の調製例Aで調製した後処理用溶液Aに浸漬し、1分後に取り出し、150℃で15分間乾燥して後処理を行った後、外装材で外装して実施例1の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例2〜12
前処理用溶液1に代えて、前処理用溶液2〜12を用い、それぞれ別々に前処理を行った以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、実施例2〜12の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例13〜24
導電性高分子の分散液(I)に代えて、導電性高分子の分散液(II)を用いた以外は、すべて実施例1〜12と同様の操作を行って、実施例13〜24の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例1
前処理用溶液1による前処理を行わなかった以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、比較例1の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例2
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液13を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、比較例2の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例3
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液14を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、比較例3の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例4
後処理用溶液Aによる後処理を行わなかった以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、比較例4の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例5
前処理用溶液1による前処理を行わなかった以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、比較例5の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例6
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液13を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、比較例6の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例7
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液14を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、比較例7の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例8
後処理用溶液Aによる後処理を行わなかった以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、比較例8の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
上記のように製造した実施例1〜24および比較例1〜8の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、前処理にあたって用いた前処理用溶液の種類、導電性高分子の層の形成にあたって用いた導電性高分子の分散液の種類、導電性高分子の層の形成後の後処理にあたって用いた後処理用溶液の種類を実施例1〜24については表1に示し、比較例1〜8については表2に示す。ただし、それらの種類は、前処理用溶液に関してはその番号で示し、後処理用溶液に関してはその記号で示す。そして、導電性高分子の分散液(I)、(II)に関しては(I)、(II)で示す。
上記のようにして製造した実施例1〜24および比較例1〜8の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、破壊電圧を測定した。その結果を実施例1〜24については表3に示し、比較例1〜8については表4に示す。なお、ESR、静電容量および破壊電圧の測定方法は次の通りである。
ESR:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、100kHzで測定した。
静電容量:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、120Hzで測定した。
破壊電圧:
松定プレシジョン社製PRK650−2.5を用い、25℃の条件下で、電圧を1V/秒の速度で上昇させて破壊時の電圧を測定した。
上記ESRおよび静電容量の測定は、各試料とも、20個ずつについて行い、ESRおよび静電容量に関して表3および表4に示す数値は、その20個の測定値の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものである。また、破壊電圧の測定は、各試料とも、10個ずつについて行い、破壊電圧に関して表3および表4に示す数値は、10個の測定値の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
表3〜4に示す結果から明らかなように、実施例1〜24の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、「巻回型アルミニウム電解コンデンサ」を簡略化して「コンデンサ」という場合がある)は、比較例1〜8のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きく、かつ、破壊電圧が高かった。
すなわち、コンデンサ素子に固体電解質を構成する導電性高分子の層を形成するに先立って、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と沸点が150℃以上の高沸点溶剤が溶解した有機溶剤溶液からなる前処理用溶液1〜12でコンデンサ素子を前処理し、導電性高分子層の形成後にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が溶解した有機溶剤溶液からなる後処理用溶液Aで後処理した実施例1〜24のコンデンサは、前処理用溶液1〜12のいずれでも前処理しなかった比較例1や比較例5のコンデンサ、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を含まない前処理用溶液13で前処理した比較例2や比較例6のコンデンサ、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に代えてヒドロキシル基を有しないトルエンスルホン酸を溶解した前処理用溶液14で前処理した比較例3や比較例7のコンデンサ、導電性高分子層の形成後に後処理用溶液Aによる後処理をしなかった比較例4や比較例8のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きく、破壊電圧が高かった。
また、実施例3のコンデンサや実施例4のコンデンサでは、その前処理用溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加していないが、それぞれ3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを前処理用溶液に添加している実施例1のコンデンサや実施例2のコンデンサに比べると、破壊電圧が若干低くなっているものの、比較例1〜8のコンデンサに比べると、破壊電圧がはるかに高く、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのような耐電圧向上剤の添加は、望ましいものであるが、必ずしも必要ではないことが分かる。
また、上記実施例1〜24および比較例1〜8の巻回型アルミニウム電解コンデンサの10個ずつ(先にESRや静電容量の測定に使用したが、破壊電圧の測定に使用しなかった残りの10個ずつ)について、松定プレシジョン社製PRk650−2.5とEL1.5k−650V−LGobを用い、2秒間に50V、20Aの充放電を1万回繰り返した後のESRと静電容量を測定することによって、充放電特性を調べた。その結果を実施例1〜24については表5に示し、比較例1〜8については表6に示す。なお、ESRや静電容量の測定方法は前記と同様であり、また、表5や表6への測定値の表示方法は、10個の測定値の平均値を求めた点を除いては、前記表の表3や表4の場合と同様である。これは以後の実施例25などでも同様である。
表5〜6に示す結果から明らかなように、充放電を1万回繰り返した後でも、実施例1〜24の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、簡略化して「コンデンサ」という場合がある)は、比較例1〜8のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きかった。
そして、この表5〜6に示すESR値および静電容量値と前記表3〜4に示すESR値および静電容量値との対比から明らかなように、実施例1〜24のコンデンサは、比較例1〜8のコンデンサに比べて、充放電を1万回繰り返した後のESRの増加や静電容量の低下が少なく、充放電特性が優れていた。すなわち、充放電を1万回繰り返した後では、実施例1〜24のコンデンサと比較例1〜8のコンデンサのESRや静電容量の差は、充放電開始前よりも大きくなり、実施例1〜24のコンデンサは、比較例1〜8のコンデンサに比べて、充放電特性が優れていた。
上記実施例1〜24のコンデンサのように電解質を固体の導電性高分子で構成したコンデンサでは、充放電の繰り返しによって特性が低下することが生じやすいが、上記のように、実施例1〜24のコンデンサは充放電特性が優れていた。
〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(2)〕
この巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(2)では、後処理時に溶剤を乾燥しないタイプの巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造し、その巻回型アルミニウム電解コンデンサで本発明の評価をする。
実施例25
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、200Vで化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。
上記コンデンサ素子を、前記調製例1で調製した前処理用溶液1に浸漬し、1分後に取り出し、150℃で15分間乾燥して前処理を行った。
次に、上記前処理後のコンデンサ素子を、調製例(I)で調製した導電性高分子の分散液(I)に浸漬し、5分後に取り出し、150℃で30分間乾燥する工程を2回繰り返して、導電性高分子の層を形成した。
そして、上記導電性高分子の層を形成後のコンデンサ素子を前記後処理用溶液の調製例Bで調製した後処理用溶液Bに浸漬し、1分後に取り出すことによって後処理を行った後、外装材で外装して実施例25の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例26〜36
前処理用溶液1に代えて、前記調製例2〜12で調製した前処理用溶液2〜12を用い、それぞれ別々に前処理を行った以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、実施例26〜36の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例37〜48
導電性高分子の分散液(I)に代えて、前記調製例(II)で調製した導電性高分子の分散液(II)を用いた以外は、すべて実施例25〜36と同様の操作を行って、実施例37〜48の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例9
前処理用溶液1による前処理を行わなかった以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、比較例9の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例10
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液13を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、比較例10の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例11
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液14を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、比較例11の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例12
後処理用溶液Bによる後処理を行わなかった以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、比較例12の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例13
前処理用溶液1による前処理を行わなかった以外は、すべて実施例37と同様の操作を行って、比較例13の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例14
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液13を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例37と同様の操作を行って、比較例14の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例15
前処理用溶液1に代えて、比較例用の前処理用溶液14を用いて前処理を行った以外は、すべて実施例37と同様の操作を行って、比較例15の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例16
後処理用溶液Bによる後処理を行わなかった以外は、すべて実施例37と同様の操作を行って、比較例16の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
上記のように製造した実施例25〜48および比較例9〜16の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、前処理にあたって用いた前処理用溶液の種類、導電性高分子層の形成にあたって用いた導電性高分子の分散液の種類、導電性高分子層の形成後の後処理にあたって用いた後処理用溶液の種類を実施例25〜48については表7に示し、比較例9〜16については表8に示す。ただし、それらの種類の表示方法は前記表1〜2の場合と同じである。
上記のようにして製造した実施例25〜48および比較例9〜16の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、前記実施例1の場合と同様に、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、破壊電圧を測定した。その結果を実施例25〜48については表9に示し、比較例1〜8については表10に示す。そして、それらESR値、静電容量値、破壊電圧値などの表9〜10への表示方法は前記表3〜4の場合と同様である。
表9〜10に示す結果から明らかなように、実施例25〜48の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、「巻回型アルミニウム電解コンデンサ」を簡略化して「コンデンサ」という場合がある)は、比較例9〜16のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きく、かつ、破壊電圧が高かった。
すなわち、コンデンサ素子に固体電解質を構成する導電性高分子の層を形成するに先立って、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と沸点が150℃以上の高沸点溶剤が溶解した有機溶剤溶液からなる前処理用溶液1〜12でコンデンサ素子を前処理し、導電性高分子層の形成後にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を沸点が150℃以上の高沸点溶剤に溶解した溶液からなる後処理用溶液Bで後処理した実施例25〜48のコンデンサは、前処理用溶液1〜12のいずれでも前処理しなかった比較例9や比較例13のコンデンサ、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を含まない前処理用溶液13で前処理した比較例10や比較例14のコンデンサ、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に代えてヒドロキシル基を有しないトルエンスルホン酸を溶解した前処理用溶液14で前処理した比較例11や比較例15のコンデンサ、導電性高分子層の形成後に後処理用溶液Bによる後処理をしなかった比較例12や比較例16のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きく、破壊電圧が高かった。
また、上記実施例25〜48および比較例9〜16の巻回型アルミニウム電解コンデンサの10個ずつ(ESRや静電容量の測定に使用したが、破壊電圧の測定に使用しなかった残りの10個ずつ)について、150℃で250時間貯蔵し、25℃まで冷却した後、前記実施例1の場合と同様にESRや静電容量を測定した。その結果を実施例25〜48については表11に示し、比較例9〜16については表12に示す。なお、表11〜12への測定値の表示方法は、前記表5〜6の場合と同様である。
表11〜12に示す結果から明らかなように、実施例25〜48の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、簡略化して「コンデンサ」という場合がある)は、比較例9〜16のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きかった。
そして、この表11〜12に示すESR値および静電容量値と前記表9〜10に示すESR値および静電容量値との対比から明らかなように、実施例25〜48のコンデンサは、比較例9〜16のコンデンサに比べて、150℃で250時間貯蔵した後のESRの増加や静電容量の低下が少なく、耐熱性が優れていた。すなわち、150℃で250時間貯蔵した後では、実施例25〜48のコンデンサと比較例9〜16のコンデンサのESRや静電容量の差は、貯蔵前よりも大きくなり、実施例25〜48のコンデンサは、比較例9〜16のコンデンサに比べて、耐熱性が優れていた。
導電性高分子の合成にあたって酸化剤として遷移金属塩を用いず、かつ前記実施例1〜24のコンデンサのように、実質上、電解質として導電性高分子のような固体しか用いないコンデンサでは、耐熱性の低下はほとんど考慮に入れる必要はないが、この実施例25〜48のコンデンサのように、液状のもの(つまり、後処理用溶液の調製にあたって用いた沸点が150℃以上の高沸点溶剤)を含んでいるコンデンサでは、高温で貯蔵した場合の耐熱性が問題になる。
しかし、上記実施例25〜48のコンデンサは、液状のものを含んでいても、150℃で250時間という高温長時間の貯蔵でもESRの増加や静電容量の低下が少なく、耐熱性が優れていた。