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JP6418548B2 - 末梢神経の脱髄抑制剤 - Google Patents
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本発明は、薬物による末梢神経の脱髄を抑制する薬剤、詳しくは、末梢神経の脱髄の抑制作用を有する生薬成分を含有する外用剤形態の脱随抑制剤に関するものである。
医薬品の成分である薬物より生じる副作用の1つに神経障害がある。神経障害には中枢神経系、自律神経系、末梢神経系及び感覚器等の障害がある。これらの神経障害を引き起こす恐れがある医薬品として高脂血症治療薬、抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)、抗ウィルス薬及び抗結核薬等が知られている。
このうち、末梢神経障害で誘発される感覚異常は、薬物を使用してしばらく経過した後に手・足先の痺れ感、ほてり、感覚が鈍くなる等の症状を呈する。症状は、次第に上方の腕や脚に広がる。感覚異常の多くは両足・両手で起こるが、片足・片手だけのこともある。
薬物による末梢神経障害は、軸索が一次的に障害され、二次的に髄鞘が障害される軸索障害(axonopathy)、神経細胞体が一次的に障害され軸索や髄鞘が障害される神経細胞体障害(neuronopathy)、シュワン(Schwan)細胞が一次的に障害され、軸索と神経細胞体は保たれる髄鞘障害(myelinopathy)に分けられる(非特許文献1)。
髄鞘は、大部分が脂肪で構成されていており、神経の電気伝導を速めるが、障害されることで神経伝導速度が遅くなり、多彩な神経症状が引き起こされる。髄鞘が破壊された状態は「脱髄」と称されている。
抗がん剤の末梢神経障害による感覚異常は、がん化学療法において問題となっている。抗がん剤の中で、パクタキセル、ビンクリスチンなどの植物成分由来の抗がん剤の末梢神経障害は、微小管阻害作用による軸索輸送の障害であり、回復が見込まれる障害である。
生薬として多用されるシャクヤク(芍薬)の主要成分であるぺオニフロリンには、鎮痛、鎮静、抗炎症、血圧降下、血管拡張、平滑筋弛緩などのなどの多種の薬理作用が知られている。また、神経保護作用については、脳虚血性障害ラットにおける神経保護作用の報告がある(非特許文献2)。
日本内科学会誌、96:1585-1590(2007) Br J Pharmacol. 2005 Oct;146(4):604-11 漢方医学,34(1),24-25(2010)
タキサン系の抗がん薬であるパクタキセルで誘発される四肢末端の末梢神経障害による感覚異常に対し、芍薬甘草湯および芍薬が有用であることが知られている(非特許文献3)。
しかし、芍薬は単味で漢方薬として使用されておらず、また、芍薬を処方成分とする芍薬甘草湯など漢方薬は、経口投与が基本であり、感覚異常を生じている局所での治療に用いる外用剤が求められている。
本発明者らは、マウスにおいて、ペリオフロリンまたは芍薬の抽出物を皮膚に塗布することで、パクタキセル投与による末梢神経障害から生じる感覚異常が改善されることを見出した。さらに、この末梢神経保護作用が末梢神経の脱随の抑制作用によるものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の有効成分として含まれるペオニフロリン(Paeoniflorin)は、式
(式中、Glcはグルコース残基を示す。)
で表される配糖体であり、多種の立体異性体が存在するが、本発明では、それらの任意の純粋な立体異性体またはそれらの混合物を用いることができる。
本発明の脱随抑制剤に含有されるペオニフロリンは、化学合成によって、または天然物から抽出して精製することによって、調製することができる。また、市販品を用いてもよい。
ペオニフロリンを天然物から抽出する場合には、ペオニフロリンを含有する植物の全体または一部分(例えば、全草、葉、根、根茎、茎、根皮、花)をそのまま用いて、または加工処理(例えば、乾燥、切断、粉末化など)したもの(例えば、生薬)を用いて抽出する。抽出条件は一般的に植物抽出に用いられる条件ならば特に制限はない。
本明細書において、植物としての「シャクヤク」(Paeonia lactiflora)と、生薬としての「芍薬」(Peony Root)とを、カタカナと漢字とで区別して表記する。すなわち、芍薬とは、シャクヤクまたはその近縁植物(Paeoniaceae)の根の生またはその乾燥物を意味し、それらの部分を単独であるいは任意に組み合わせて使用することができる。
本発明の脱随抑制剤において有効成分として用いる芍薬抽出物は、ペオニフロリンを含有していればよく、従って、芍薬の粗抽出物を用いることができる。
本発明で用いる芍薬抽出物の製造方法としては、芍薬を、例えば、水(例えば、温水、好ましくは熱湯)によって抽出するか、または有機溶媒を用いて抽出する。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトニトリルなどを用いることができ、これらの有機溶媒を単独、または適宜組み合わせ、一定の比率で混合しで用いることができる。好ましくは、エチルアルコール、メチルアルコール、水、ブチレングリコール、含水アルコールまたはアセトニトリル−水混合溶媒などが好ましい。
水抽出又は有機溶媒抽出の方法としては、通常の生薬抽出に用いられる方法を用いることができ、例えば(乾燥)芍薬1重量部に対し、水または有機溶媒5〜300重量部を用いて、攪拌しながら、その沸点以下の温度で加熱還流することが望ましい。抽出工程は、通常は5分〜7日間、好ましくは10分〜24時間実施し、必要に応じて、攪拌等の補助的手段を加えることにより、抽出時間を短縮することができる。
抽出工程終了後、濾過または遠心分離などの適当な方法により、水または有機溶媒抽出液から、不溶物を分離して粗抽出物を得ることができる。なお、天然物より抽出、分画したペオニフロリンは、粗抽出物を特に精製することなく、そのまま使用してもよい。
常法による熱水抽出物または有機溶媒抽出物の他に、粗抽出物を各種有機溶媒または吸着剤などにより、更に処理した精製抽出物も、本発明の保護剤の有効成分として用いることができる。これらの粗抽出物および各種の精製処理を終えた精製抽出物を含む芍薬抽出物は、抽出したままの溶液を用いても、溶媒を濃縮したエキスを用いても良いし、溶媒を留去し乾燥した粉末、更に は結晶化して精製したもの、あるいは粘性のある物質を用いても良く、またそれらの希釈液を用いることもできる。こうして得られた芍薬抽出物は、芍薬に含まれるペオニフロリンを含み、同時に原料の芍薬に由来する不純物を含んでいる。
ペオニフロリン誘導体としては、生薬中に本来含有されているペオニフロリン誘導体[例えば、オキシペオニフロリン(Oxypaeoniflorin)、ベンゾイルペオニフロリン(Benzoylpaeoniflorin)、ベンゾイルオキシペオニフロリン(Benzoyloxypaeoniflorin)、アルビフロリン(Albiflorin)、ガロイルペオニフロリン(Galloylpaeoniflorin)など];抽出、分画の際の化学的処理によって変換した誘導体;及び化学的修飾を行った誘導体[例えば、ペオニフロリンテトラアセテート(Paeoniflorin tetraacetate)、ペオニフロリンペンタアセテート(Paeoniflorin pentaacetate)、デスベンゾイルペオニフロリン(Desbenzoylpaeoniflorin)、ペオニフロリンテトラアセテートトシレート(Paeoniflorin tetraacetate tosylate)、ペオニフロリンモノベンゾエートトリアセテート(Paeoniflorin monobenzoate triacetate)、ペオニフロリンモノベンゾエート(Paeoniflorin monobenzoate)など〕などが含まれる。
本発明の脱随抑制剤は、ペオニフロリンもしくはその誘導体、またはペオニフロリン含有植物、例えば、ペオニフロリン含有生薬(芍薬など)より抽出、分画したペオニフロリン含有抽出物を、それ単独、好ましくは製剤学的に許容することのできる通常の担体と共に投与することができる。投与剤型としては、特に限定がないが、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、エアゾール剤など外用剤が好ましい。
本発明の脱随抑制作用を有する外用剤には、必要に応じ水、低級アルコール、溶解補助剤、界面活性剤、乳化安定剤、ゲル化剤、粘着剤、その他、所望する剤型を得るための通常使用される基剤成分などを配合でき、必要に応じて血管拡張剤、副腎皮質ホルモン、角質溶解剤、保湿剤、殺菌剤、抗酸化剤、清涼化剤、香料、色素などを本発明の効果が損なわれない範囲で配合することができる。
それらを用いて常法に従って製造することができる。
本発明の脱随抑制剤は、ペオニフロリン、その誘導体またはその医薬上許容される塩を、0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜80重量%の量で含有することができる。また、ペオニフロリン含有植物抽出物、例えば、ペオニフロリン含有生薬抽出物(芍薬抽出物など)を有効成分として含有する本発明の保護剤は、その中に含まれるペオニフロリンが前記の量範囲になるように適宜調整して、調製することができる。
本発明の脱随抑制剤を医薬として用いる場合の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、投与方法などにより異なり、特に制限はないが、ペオニフロリン量として通常成人1人当り0.1mg〜1g程度を、1日1〜4回程度にわけて、感覚異常が生じている箇所またはその周辺に塗布すればよい。
ペオニフロリンもしくはその誘導体またはペオニフロリン含有植物の抽出物は、末梢神経の脱随を抑制する作用を有し、タキサン系抗がん剤などの末梢神経傷害から生じる感覚異常を改善することができる。また、外用剤であることより経口投与に比して、薬物の副作用などのリスクを減らすことができ、臨床への応用が容易となる。
パクリタキセル誘発機械的アロディニアにおけるペオニフロリン繰り返し塗布の効果を示す図である。図の値は、平均±標準誤差(n = 6)。* p<0.05 vs. PTX+VH2 (Holm-Sidak テスト)。PTX: パクリタキセル、VH1: PTXの溶媒(Chremophore:ethanol:saline=1:1:8)、VH2:ペオニフロリンの溶媒(エタノール) パクリタキセル誘発機械的アロディニアにおける芍薬水抽出エキス繰り返し塗布の効果を示す図である。図の値は、平均±標準誤差示した(n = 6)。* p<0.05 vs. PTX+VH2 (Holm-Sidak テスト)。PTX: パクリタキセル、VH1: PTXの溶媒(Chremophore:ethanol:saline=1:1:8)、VH2:ペオニフロリンの溶媒(エタノール) パクリタキセル誘発機械的アロディニアにおける芍薬エタノール抽出エキス繰り返し塗布の効果を示す図である。図の値は、平均±標準誤差示した(n = 6)。* p<0.05 vs. PTX+VH2 (Holm-Sidak テスト)。PTX: パクリタキセル、VH1: PTXの溶媒(Chremophore:ethanol:saline=1:1:8)、VH2:ペオニフロリンの溶媒(エタノール) パクリタキセル投与マウスへのペオニフロリン繰り返し塗布による末梢神経脱髄抑制効果を示す電子顕微鏡写真である。(a)は、パクリタキセルの溶媒(Chremophore:ethanol:saline=1:1:8)投与マウスにペオニフロリンの溶媒(エタノール)を繰り返し塗布した末梢神経、(b)は、パクリタキセル投与マウスにペオニフロリンの溶媒(エタノール)を繰り返し塗布した末梢神経、(c)は、パクリタキセル投与マウスにペオニフロリンを繰り返し塗布した末梢神経 パクリタキセル投与マウスへのペオニフロリン繰り返し塗布による末梢神経脱髄抑制効果を示す図である。図の値は、平均±標準誤差示(n= 4)。*p<0.05 vs. VH1+VH2、#p<0.05 vs. PTX+VH1 (Holm-Sidak テスト)。PTX: パクリタキセル、PF: ペオニフロリン、VH1: ペオニフロリンの溶媒(エタノール)、VH2:PTXの溶媒(Chremophore:ethanol:saline=1:1:8)
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、感覚異常の指標としてvon Freyフィラメントを用いた感覚の過過敏症(アロディニア)の評価を用いた。
製造例1
<芍薬エキス1>
芍薬50gと純水400mLを煎じ器加え,とろ火で50分間煎じる。煎じ液を濾紙で濾過し、濾液を凍結乾燥する。得られた粉末状のエキス(13.4g、収率:26.8%)はサンプル瓶に入れ、冷蔵保管する。
製造例2
<芍薬エキス2>
芍薬1kgと99.5%エタノール2Lをガラス容器(ナス型フラスコの上部に摺合ジムロート冷器を装着したガラス容器)に投入し、90分間加熱還流する。冷却後、上清を分取する。残渣に99.5%エタノール2Lを加え、90分間加熱還流する。冷却後、上清を分取する。この抽出操作を再度繰り返す。分取した上清を合わせ、減圧下に濃縮する。残渣を凍結乾燥し、得られた粉末状のエキス(112.4g)はサンプル瓶に入れ、冷蔵保管する。
実施例1
マウス(ICR,5〜7週齢, 雄性)に、パクリタキセル(PTX、5mg/kg)単回腹腔内注射し、翌日よりペオニフロリンまたはその溶媒(VH2:エタノール)を20μLの容量で1日2回両足(足首から指先まで全体的に)に塗布した。アロディニアは、von Freyフィラメント(0.69 mN)を用いてスコア化(0 : 反応なし又は後肢を横にずらす行動、1 : 後肢の引き上げ行動 (lifting)、2 : 後肢の振り行動 (flinching) 又は刺激部位への舐め行動 (licking))して評価した。
実施例2
マウス(ICR,5〜7週齢, 雄性)に、パクリタキセル(PTX、5mg/kg)単回腹腔内注射し、翌日より芍薬エキス1またはその溶媒(VH2:エタノール)を20μLの容量で1日2回両足(足首から指先まで全体的に)に塗布した。アロディニアは、von Freyフィラメント(0.69 mN)を用いてスコア化(0 : 反応なし又は後肢を横にずらす行動、1 : 後肢の引き上げ行動 (lifting)、2 : 後肢の振り行動 (flinching) 又は刺激部位への舐め行動 (licking))して評価した。
実施例3
マウス(ICR,5〜7週齢, 雄性)に、パクリタキセル(PTX、5mg/kg)単回腹腔内注射し、翌日より芍薬エタノール抽出エキス2またはその溶媒(VH2:エタノール)を20μLの容量で1日2回両足(足首から指先まで全体的に)に塗布した。アロディニアは、von Freyフィラメント(0.69 mN)を用いてスコア化(0 : 反応なし又は後肢を横にずらす行動、1 : 後肢の引き上げ行動 (lifting)、2 : 後肢の振り行動 (flinching) 又は刺激部位への舐め行動 (licking))して評価した。図の値は、平均±標準誤差示した(n = 6)。* p<0.05 vs. PTX+VH2 (Holm-Sidak テスト)。
実施例4
マウス(ICR,5〜7週齢, 雄性)に、パクリタキセル(PTX、5mg/kg)或いはその溶媒(VH1: Chremophore:ethanol:saline=1:1:8)を単回腹腔内注射し、翌日よりペオニフロリン(PF)またはその溶媒(VH1:エタノール)を20μLの容量で1日2回両足(足首から指先まで全体的に)に塗布した。PTX投与後14日目に後肢足蹠の神経を採取し、2% パラホルムアルデヒド・2% グルタルアルデヒド混合固定液(カコジル酸緩衝)で固定後。2% グルタルアルデヒド、続いて1%オスミウム液で固定。その後、アルコールで脱水。酸化プロピレン、続いて酸化プロピレンとエポキシ樹脂の混液で処理し、エポキシ樹脂で包埋した。約100 nmに薄切し、酢酸ウラニル溶液ならびに鉛溶液で染色後、電子顕微鏡で観察した(図4)。さらに、一視野当たりの全有髄神経数中の脱髄化の観察された神経数の割合を示した(図5)。
本発明の脱随抑制剤は、薬物の末梢神経障害による感覚異常を改善することができる。外用剤とすることで経口投与より薬物の副作用などのリスクを減らすことができ、臨床への応用が容易となる。

Claims (1)

  1. ペオニフロリン又はその医薬上許容される塩を含有する芍薬の抽出物と、製剤学的に許容される担体とからなり、
    抗がん剤による末梢神経障害に起因した脱随を抑制する脱随抑制外用剤。
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