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JP6544967B2 - 食材の凍結方法 - Google Patents
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Description

本発明は、食材の凍結方法に関する。より詳しくは、厚みのある食材や、食材内部で組成に差がある食材であっても、食材内部での氷晶の肥大化を抑制することができる食材の凍結方法に関する。
以前より、肉や鮮魚その他の食品(以下、単に「食材」という。)の鮮度を保ちながら長期保存する方法として、冷凍保存が行われている。このうち、食材を常温(外気温)から一気に−30℃から−45℃の冷凍室に入れて急速冷凍を行う方法が一般的に良く知られている。
しかし、急速冷凍した食材は、色調変化、味覚劣化、ドリップ (解凍時の液汁の流出)の発生等、品質の低下や鮮度の低下を完全に防ぐことが出来ていない。これは、食材中に含まれる水が凍結し、氷晶が肥大化することで細胞が破壊されるためである。
氷晶の肥大化は、冷凍時に氷晶生成温度域を通過する時間が緩慢である場合に発生する。そこで、氷晶の肥大化を抑制しつつ凍結する方法として、過冷却を利用した食材冷凍技術が脚光を浴びている。この技術は、過冷却状態から水を瞬時に凍らせることにより細胞内の水分の氷晶肥大化を防ぐものであり、細胞膜の破壊を抑えることができると考えられている。
過冷却状態から水を瞬時に凍らせるには、一般的に温度刺激を与える方法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、対象物を常温から凍結点を基準にして0℃〜−5℃の範囲の温度まで凍結しないように冷却した後、凍結点〜−40度まで急速凍結させる技術が開示されている。
特開2008−20116号公報
ところで、食材中の過冷却状態の水を瞬時に凍らせるには、食材全体に刺激が加わることが好ましい。しかしながら、厚みのある食材や、食材内部で組成に差がある食材(例えば、赤身と脂肪など)などは、刺激の伝達に差が出てしまう。そのため、食材の表層に近い過冷却状態の水は瞬時に凍るが、食材内部では氷晶が肥大化してしまい、細胞が破壊されてしまう場合がある。
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、厚みのある食材や、食材内部で組成に差がある食材であっても、食材内部にまで刺激を確実に伝達し、食材内部で生じる氷晶の肥大化を抑制する凍結方法である。
本発明者らは、食材内部にまで刺激を伝達する方法について検討を行った。そして、異なる刺激を組み合わせて同時に付与することで、厚みのある食材や、食材内部で組成に差がある食材であっても食材の内部にまで確実に刺激を伝達し、凍結状態に移行させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記課題解決のため、本発明は、食材の凍結方法であって、過冷却した食材に対して、少なくとも異なる二つの刺激を同時に与えることで食材中の過冷却状態の水を凍結させる食材の凍結方法を提供する。また、本発明の凍結方法は、異なる刺激が温度刺激と物理刺激であることが好ましい。
かかる構成によれば、少なくとも異なる二つの刺激を同時に与えることで、厚みのある食材や、食材内部で組成に差がある食材であっても食材の内部にまで確実に刺激を伝達することができる。これにより、緩慢凍結様にエビ内部では氷晶が肥大化し、細胞を破壊することがない。
本発明により、氷晶の肥大化に伴って生じる、食材の色調変化、味覚劣化、ドリップ (解凍時の液汁の流出)の発生等、品質の低下や鮮度の低下を抑制することができる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について、温度刺激と物理刺激を組み合わせたエビの凍結装置を例に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明にかかる凍結装置は、過冷却冷凍庫と急速凍結機とを少なくとも備える。そして、過冷却冷凍庫と急速凍結機は連続するように配置されている。
本実施例にかかる凍結装置では、急速凍結機入口側のコンベアの先端が、過冷却冷凍庫の出口側コンベアの下に潜り込むように配置されている。このとき、コンベア搬送面の高低差が食材に加わる衝撃の大きさに寄与する。コンベア搬送面との高低差は食材によって異なるが、10cm以上あることが好ましく、20cm以上あることがより好ましく、30cm以上あることがさらにより好ましい。高低差が低いと、食材に加わる衝撃が弱くなるため食材内部にまで衝撃が伝わらず、食材内部の過冷却状態の水を冷凍状態に移行させることができない。
<過冷却冷凍庫>
過冷却冷凍庫は、食材を過冷却するための冷凍庫である。ここで、過冷却とは凍結点以下の温度でも凍結しないように冷却された状態をいう。
本発明にかかる過冷却冷凍庫は、入口と出口とを備えた空間を有している。庫内には入口から出口までの間を無端コンベアが回動している。入口側のコンベアの一部は、過冷却冷凍庫の外に延出している。また、出口側のコンベアの一部は、過冷却された食材を後述する急速凍結器内へと導くために急速凍結器内に延出している。さらに、コンベア上には、金属製のバッドが載置されている。
過冷却冷凍庫内は、食材の凍結点を基準として−3〜−7℃の温度条件となるように、設定されていることが好ましい。−3℃よりも温度が高いと食材の中心部の水が過冷却状態にならず、−7℃より温度が低いと過冷却ではなく凍結してしまう可能性があるためである。本実施例であるエビの場合だと、凍結点が−3〜−5℃付近であるため、−7℃に設定することが好ましい。
食材を過冷却状態にするために必要な時間は食材によって異なるが、少なくとも30分以上、上記温度条件下に晒すことが好ましい。時間が30分未満だと食材の中心部の水が過冷却状態にならないためである。本実施例であるエビの場合には、40分間、晒すことが好ましい。本実施例においては、所定時間、晒されるようにコンベア速度を調節すれば良い。
コンベア上に載置されている金属製のバットとしては、熱伝導率が高く、腐食しにくい金属、例えば、ステンレス、アルミ、チタンなどが挙げられるが、これに限られるものではない。なお、本実施例ではコンベア上に金属製のバットが載置されている場合を例に説明したが、コンベアベルトのベルトとして可撓性の金属板を用いても良いし、ベルト表面に金属板を設けても良い。
<急速凍結機>
急速凍結機は、食材内の過冷却状態の水を凍結状態に移行するための装置である。言い換えると、過冷却された食材を凍結するための装置である。
本発明にかかる急速凍結機も、入口と出口とを備えた空間を有している。また、庫内には入口から出口までの間を無端コンベアが回動している。なお、出口側のコンベアの一部は、凍結された食材を急速凍結器外に排出するために突き出た形状となっている。
急速凍結器内の温度としては、過冷却冷凍庫よりも低い温度条件となるように設定されていることが好ましく、食材の凍結点を基準として−15〜−40℃の温度条件となるように、設定されていることが好ましい。過冷却庫内の温度と同じかそれよりも温度が高いと、せっかくの過冷却状態が解除されてしまい、食材が凍結しない。一方、−40℃より温度を低くしても効果に差は出ず、逆にコストがかかってしまう。本実施例であるエビの場合だと、急速凍結機の設定温度は−20℃〜−40℃の間に設定することが好ましい。
急速凍結機のコンベアとしては、コンベアベルト上に金属板が設けられているか、ベルト自体が可撓性の金属板となっていることが好ましい。金属としては、熱伝導率が高く、腐食しにくい金属、例えば、ステンレス、アルミ、チタンなどが挙げられる。また、コンベア上に金属製のバットを設けても良い。
次に、本実施例の凍結装置の使用方法について説明する。
まず、過冷却冷凍庫のコンベア上に載置されたバットに、エビ同士が重なり合わないように並べる。エビが並べられたバットはコンベアの動きに従って、−7℃に設定された過冷却冷凍庫内を移動することで、エビを過冷却状態にする。この時、過冷却冷凍庫内に供給される冷気が、エビに直接当たらないようにすることが好ましい。また、過冷却冷凍庫内を移動する際に、振動が発生しないように移動させることが好ましい。振動によってエビの表層のみが凍結してしまうのを防ぐためである。
過冷却が終了したエビは、次に−35℃に設定した急速凍結機内のコンベアに乗り移らせる。このとき、過冷却冷凍庫のコンベアから急速凍結器のコンベアに落下する際の衝撃と、過冷却冷凍庫内よりも低い温度に冷却されたコンベア上の金属板からの温度刺激によって、エビは過冷却状態から直ちに凍結状態へと移行する。すなわち、従来の温度刺激だけでは表層のみの凍結となってしまっていたところ、本実施例であれば衝撃も合わさって加えられるため、内部にまで刺激が伝わる。これにより、食材内部の過冷却状態の水を凍結状態へと速やかに移行させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。また、本発明の各特性は、以下の方法により評価した。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
3〜5gのバナメイエビ15尾をステンレス製バットに並べ、−7℃で30分間過冷却した。次に、−22℃に冷却したステンレス板に対して、高さ10cmの距離からバットをひっくり返すことでバナメイエビをステンレス板に落下させた。そして、凍結したバナメイエビの数を測定した。
(実施例2)
実施例1において、高さを30cmにしたこと以外は、実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例1において、−37℃に冷却したステンレス板を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(実施例4)
実施例1において、−37℃に冷却したステンレス板に高さ30cmの距離から落下させたこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例1)
実施例1において、過冷却温度と同じ−7℃に冷却したステンレス板を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例2)
実施例1において、過冷却温度と同じ−7℃に冷却したステンレス板に対して、高さ30cmの距離から落下させたこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例3)
実施例1において、−22℃に冷却したステンレス板をバットに並んだエビに触れさせたこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例4)
実施例1において、−37℃に冷却したステンレス板をバットに並んだエビに触れさせたこと以外は、実施例1と同じである。
(官能評価)
実施例1〜4及び比較例1〜4において凍結したバナメイエビを1分間ボイルし、解凍した。解凍したバナメイエビを6名のパネラーにブラインド条件下で試食してもらい食感、食味について、5段階で評価をおこなった。なお、このとき、剥き身のバナエイエビを−30℃で35分間急速凍結したものをコントロールとした。
<味>
評価
5:コントロールよりもエビの旨味が強い
3:コントロールと同等
1:コントロールよりもエビの旨味が弱い
<食感>
評価
5:コントロールよりも肉質が強い
3:コントロールと同等
1:コントロールよりも肉質が弱い(身がボソボソする)
結果を表1に示す。
Figure 0006544967
表1の結果から明らかなように、温度刺激と衝撃を組み合わせた実施例は、比較例に比べて凍結数が多く、風味、食感も良好であるという結果が得られた。実施例のうち、実施例1は、他の実施例に比べて過冷却との温度差および/または高さにおいて刺激が弱いものではある。そのため、他の実施例と異なり、凍結数において、全てのエビは凍結しなかった。しかし、それでも比較例よりも多くのエビが凍結していることがわかる。
一方、実施例1と比較例1とを比較すると、両者の差は過冷却との温度差があるか、すなわち温度刺激があるか否かの差である。表1の結果から明らかなように、衝撃のみでは、全てのエビは凍らず、また、風味、食感も劣るとの結果であった。さらに、実施例1と比較例3とを比較すると、両者の差は衝撃があるか否かの差である。表1の結果から明らかなように、この場合においても全てのエビは凍らず、また、風味、食感が劣るとの結果であった。このことから、いずれかの刺激だけでは足りず、2つの刺激を同時に与えることが有効であると示唆された。このことは、実施例3と比較例2及び実施例3と比較例4との対比においても確認できる。
次に、比較例1と比較例2及び比較例3と比較例4を比べると、どちらも刺激の強い方(比較例2と比較例4)よりもが、刺激の弱い方(比較例1と比較例3)よりもわずかだが良好な結果が得られている。つまり、刺激が1種類の場合、刺激をより強くすれば多少の改善が認められることがわかる。しかしながら、実施例1と比較例1〜4とを比較すると、実施例1は比較例で効果の弱かった組み合わせ同士であるが、いずれの比較例よりも良好な結果が得られている。このことから、2つの刺激を組み合わせることで、単独の刺激では効果の認められない温度差並びに高さであっても、有利な効果を得られることがわかる。
なお、過冷却状態から瞬時に凍結状態に移行しなかった場合、緩慢凍結様にエビ内部では氷晶が肥大化し、細胞を破壊する。これにより解凍後はエビの旨味や水分がドリップとして流出したり、風味が劣り、ボソボソした食感になるもの考えられる。
以上、説明したように、本発明は異なる刺激を組み合わせて同時に付与することで、厚みのある食材や、食材内部で組成に差がある食材であっても食材の内部にまで確実に刺激を伝達し、凍結状態に移行させることができる。
なお、本実施例では、温度刺激と衝撃を組み合わせた場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、過冷却した食材に対して、過冷却よりも低い温度に冷却したステンレス等の金属板を、コンベア等に並んだエビ等の凍結対象物に対して上から押し付けても良い。この場合、温度刺激と圧力を同時に付与することができる。また、バットに並んだエビ等に対して、過冷却温度よりも低い温度の風を吹きつけても良い。このような場合でも、異なる刺激を同時に付与することができる。

Claims (1)

  1. 食材の凍結方法であって、
    過冷却した食材に対して、過冷却温度との差が−30℃以上の温度刺激と、高低差が10cm以上の落下による物理衝撃を同時に与えることで食材中の過冷却状態の水を凍結させる食材の凍結方法。
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