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JP6798334B2 - 溶接トーチ、および、溶接システム - Google Patents
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JP6798334B2 - 溶接トーチ、および、溶接システム - Google Patents

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Description

本発明は、アーク溶接に用いられる溶接トーチおよび溶接システムに関する。
溶接電源装置から供給される電力によって、溶接トーチと被加工物との間にアークを発生させて溶接を行うアーク溶接が知られている。半自動式のアーク溶接の場合、作業者が溶接トーチを把持して、溶接トーチの先端を被加工物に近づけて溶接を行う。半自動式のアーク溶接を行うための溶接システムについては、例えば特許文献1などに記載されている。
特開2013−184184号公報
半自動式のアーク溶接においては、溶接トーチの姿勢によって、溶接状態が変わってくる。溶接進行方向に向けて溶接トーチを傾けて溶接を行う方法である後退法の場合、溶込みが深く、余盛が高く幅が狭いビードが形成される。一方、溶接進行方向とは逆方向に向けて溶接トーチを傾けて溶接を行う方法である前進法の場合、溶込みが浅く、余盛が低く幅が広いビードが形成される。溶接進行方向に対して溶接トーチを傾けなかった場合は、前進法と後退法との間のビード状態になる。作業者は、被加工物Wの板厚などの条件に応じて、溶接トーチの傾きを維持したまま溶接を行う。しかし、作業者の熟練度によっては、溶接トーチの傾きを維持したまま溶接トーチを移動させ続けるのは困難であり、溶接トーチの傾きが溶接の途中で変化する場合がある。溶接トーチの傾きが変化すると溶接状態が変化するので、溶接の品質が低下する。特に、前進法で溶接トーチの傾きが大きくなりすぎるとスパッタの発生が多くなり、溶接の品質がより低下する。
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、溶接の途中で溶接トーチの傾きが変化しても、溶接の品質が低下することを抑制することができる溶接トーチ、および、当該溶接トーチを備えた溶接システムを提供することをその目的としている。
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
本発明の第1の側面によって提供される溶接トーチは、溶接電源装置から電力を供給されてアーク溶接を行う溶接トーチであって、前記溶接トーチの進行方向情報および姿勢情報を検出するセンサ部と、前記センサ部が検出した前記進行方向情報および前記姿勢情報に適応した溶接情報を取得する溶接情報取得部と、前記溶接情報取得部が取得した前記溶接情報を前記溶接電源装置に送信する通信部とを備えていることを特徴とする。「進行方向情報」とは、溶接トーチの溶接進行方向を示す情報であって、例えば、溶接トーチの先端部分の速度ベクトルや3軸の各軸方向の速度などが含まれる。「姿勢情報」とは、溶接トーチの姿勢を示す情報であって、例えば、重力方向を基準とした、溶接トーチの先端部分の中心軸の方向ベクトル(姿勢ベクトル)などが含まれる。「溶接情報」とは、溶接電源装置が出力する溶接電力を制御するためのパラメータ値である。例えば、溶接電源装置が直流出力を行う場合は、溶接電流設定値、溶接電圧設定値、短絡時の電流の立上り変化速度などが溶接情報に相当する。また、溶接電源装置がパルス出力を行う場合は、パルスのベース電流設定値、ピーク電流設定値、ローレベル期間、ハイレベル期間、パルス周波数、パルスのデューティ比、パルスの立上りおよび立下りの傾斜などが溶接情報に相当し、溶接電源装置が交流出力を行う場合は、交流周波数、溶接トーチをプラスにする時間の割合などが溶接情報に相当する。この構成によると、センサ部が検出した進行方向情報および姿勢情報に適応した溶接情報が、自動的に溶接電源装置に送信される。溶接電源装置が受信した溶接情報に応じて溶接電力を供給することで、溶接トーチは、進行方向情報および姿勢情報に適応した溶接を行うことができる。したがって、溶接の途中で溶接トーチの傾きが変化しても、溶接の品質が低下することを抑制することができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記センサ部は、前記溶接トーチの先端部分の速度ベクトルを前記進行方向情報として検出し、前記溶接トーチの先端部分の軸方向の姿勢ベクトルを前記姿勢情報として検出する。この構成によると、速度ベクトルおよび姿勢ベクトルに基づいて、溶接情報を取得することができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶接情報取得部は、前記進行方向情報および前記姿勢情報に基づいてトーチ角度を算出し、算出された前記トーチ角度に適応した前記溶接情報を取得する。「トーチ角度」とは、溶接トーチの傾きを示す角度で溶接進行方向に対する向きを示す情報が含まれたものである。例えば、鉛直上方向に対する溶接トーチの先端部分の中心軸の傾き角で、溶接進行方向に対する向きを示す情報が含まれたものや、いわゆる前進角、後退角などが含まれる。この構成によると、算出されたトーチ角度に基づいて、容易に溶接情報を取得することができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶接情報取得部は、前記トーチ角度が複数の範囲のどの範囲に属するかを判別し、判別した範囲に対応付けられた値に基づいて前記溶接情報を取得する。この構成によると、トーチ角度に対応する溶接情報を容易に取得することができる。
本発明の第2の側面によって提供される溶接システムは、本発明の第1の側面によって提供される溶接トーチと、前記溶接電源装置とを備えていることを特徴とする。
本発明によると、センサ部が検出した進行方向情報および姿勢情報に適応した溶接情報が、自動的に溶接電源装置に送信される。溶接電源装置が受信した溶接情報に応じて溶接電力を供給することで、溶接トーチは、進行方向情報および姿勢情報に適応した溶接を行うことができる。したがって、溶接の途中で溶接トーチの傾きが変化しても、溶接の品質が低下することを抑制することができる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなる。
第1実施形態に係る溶接システムを説明するための図であり、(a)は全体構成を示す概要図であり、(b)は機能構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係る溶接トーチの一例の外観を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。 溶接トーチのトーチ角度と前進角および後退角との関係を説明するための図である。 トーチ角度を説明するための図である。 溶接情報の設定処理を説明するためのフローチャートである。 トーチ角度θに応じて各溶接情報を変更した場合の出力電流波形を示している。 トーチ角度θに応じて各溶接情報を変更した場合の出力電流波形を示している。 (a)はトーチ角度θに対する各溶接情報の値を設定するテーブルの一例を示す図であり、(b)はトーチ角度θおよび(a)に示すテーブルに応じて各溶接情報を変更した場合の出力電流波形を示している。 トーチ角度θに応じて各溶接情報を変更した場合の出力電流波形を示している。 第2実施形態に係る溶接システムの機能構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図である。図1(a)は、溶接システムA1の全体構成を示す概要図である。図1(b)は、溶接システムA1の機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電力伝送線5、信号線8、ガスボンベ6、およびガス配管7を備えている。溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、溶接トーチ3に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
溶接システムA1は、溶接時にシールドガスを用いる。ガスボンベ6のシールドガスは、ワイヤ送給装置2を通るように設けられているガス配管7によって、溶接トーチ3の先端に供給される。溶接電源装置1からワイヤ送給装置2へは、送給モータなどを駆動させるための電力(例えばDC24V)が、電力伝送線5を介して供給される。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、信号線8を介して通信を行っている。なお、溶接システムA1は、溶接トーチ3に冷却水を循環させるようになっていてもよい。
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力をアーク溶接に適した電力に変換して出力する。また、溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力を、ワイヤ送給装置2の送給モータなどを駆動するための直流電力に変換して、電力伝送線5を介してワイヤ送給装置2に出力する。
溶接電源装置1は、溶接情報に応じて電力を出力するように制御されており、溶接情報は、図示しない操作部の操作に応じて変更される。また、溶接電源装置1は、信号線8を介して溶接トーチ3から入力される信号に応じて、溶接情報を変更する。
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出すものである。ワイヤ電極は、トーチケーブル39および溶接トーチ3の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチ3の先端に導かれる。ワイヤ送給装置2は、電力伝送線5を介して溶接電源装置1から供給される電力で、送給モータなどを駆動させる。また、この電力は、ワイヤ送給装置2からトーチケーブル39内部に設けられている電力伝送線(図示なし)を介して、溶接トーチ3にも供給される。ワイヤ送給装置2は、信号線8を介して、溶接電源装置1と通信を行う。また、ワイヤ送給装置2は、トーチケーブル39内部に設けられている信号線(図示なし)を介して、溶接トーチ3と通信を行う。溶接トーチ3と溶接電源装置1とは、ワイヤ送給装置2を仲介することで、通信を行う。
ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3とは、トーチケーブル39によって接続されている。トーチケーブル39は、溶接トーチ3の基端に接続されたケーブルであり、ケーブル内部にパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および信号線が配置されている。
コネクタ21は、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続するための接続用端子である。例えば、コネクタ21は、凹型の接続用端子であり、溶接トーチ3のトーチケーブル39の一端に備えられた凸型のトーチプラグ(図示しない)を差し込まれることで、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続する。このコネクタ21を介して、ワイヤ送給装置2の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線5および信号線8が、それぞれ、トーチケーブル39の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および信号線に接続される。
溶接トーチ3は、溶接電源装置1から供給される溶接電力により、被加工物Wの溶接を行う。溶接トーチ3は、機能ブロックとして、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、センサ部35、および制御部36を備えている。
通信部31は、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部31は、制御部36から入力される信号を、トーチケーブル39内部の信号線を介して、ワイヤ送給装置2に送信する。また、通信部31は、トーチケーブル39内部の信号線を介してワイヤ送給装置2から入力される信号を受信して、制御部36に出力する。通信の規格としては、例えばCAN(Controller Area Network)が使用される。
表示部32は、各種表示を行うものであり、例えば液晶表示装置であるディスプレイ321(後述)を備えている。表示部32は、制御部36によって制御されており、記憶部34に記憶されている溶接情報の表示を行う。
操作部33は、複数の操作手段を備えており、作業者による各操作手段の操作を操作信号として制御部36に出力するものである。操作手段としては、後述するように、トーチスイッチ331および操作ボタン332がある。なお、操作部33には、他の操作手段が設けられていてもよい。
記憶部34は、溶接情報の各設定値や、総溶接時間などの情報を記憶するものである。
センサ部35は、複数のセンサを備えており、各センサの検出値を制御部36に出力する。本実施形態において、センサ部35は、後述する加速度センサ351およびジャイロセンサ352を備えている。なお、センサ部35は、その他のセンサを備えていてもよい。
制御部36は、溶接トーチ3の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部36は、操作部33より入力される操作信号に応じて、所定の処理を行う。また、制御部36は、通信部31による通信や、記憶部34の情報の書き込みおよび読出し、表示部32での表示を制御する。また、制御部36は、センサ部35より入力される検出値に基づいて、所定の演算を行い、演算結果を処理に用いる。具体的には、制御部36は、加速度センサ351が検出した検出値、および、ジャイロセンサ352が検出した検出値に基づいて、溶接トーチ3のトーチ角度(後述)を演算し、当該トーチ角度に適応した溶接情報の設定を行う。速度情報に適応した溶接情報の設定処理の詳細については後述する。
図2は、溶接トーチ3の一例の外観を示す図である。同図(a)は正面図であり、同図(b)は平面図である。図2に示すように、溶接トーチ3は、トーチボディ37、ハンドル38、制御基板381、トーチスイッチ331、操作ボタン332、ディスプレイ321、加速度センサ351、ジャイロセンサ352およびトーチケーブル39を備えている。
トーチボディ37は、金属製の筒状の部材であり、内部に、溶接ケーブルが挿通されたライナ、パワーケーブル41、およびガス配管7が配置されている。トーチボディ37の先端には、ノズル371が取り付けられている。トーチボディ37は、作業者が被加工物Wに対してノズル371を向けやすいように、湾曲部分を有している。
ハンドル38は、作業者が把持するための部位であり、トーチボディ37の基端部を保持するように設けられている。作業者は、このハンドル38を把持して、溶接作業を行う。ハンドル38には、トーチスイッチ331、操作ボタン332、およびディスプレイ321が配置されている。また、ハンドル38の内部には、制御基板381が配置されている。制御基板381には、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、センサ部35、および制御部36を構成する回路が搭載されている。
トーチスイッチ331は、溶接の開始/停止操作を受け付けるための操作手段であり、ハンドル38を把持した作業者が、人差し指で押動操作しやすい位置に配置されている。トーチスイッチ331のオン操作(押下)により、操作信号が制御部36に出力され、当該操作信号が溶接電源装置1に入力されることで、溶接電源装置1は溶接電力の出力を行う。オン操作が解除されることで、溶接電源装置1は、溶接電力の出力を停止する。すなわち、トーチスイッチ331を押下している間だけ溶接が行われる。
ディスプレイ321は、各種表示を行うものであり、ハンドル38を把持して溶接作業を行う作業者が画面を見やすいように、ハンドル38のトーチスイッチ331とは反対側に配置されている。
操作ボタン332は、画面の切り替えや各種設定値を変更する操作を行うための操作手段であり、ハンドル38のディスプレイ321と同じ側の、ハンドル38の把持部分とディスプレイ321との間に配置されている。操作ボタン332は、上ボタン332a、下ボタン332b、左ボタン332c、および右ボタン332dからなる。各ボタン332a〜332dが押下されると、対応する操作信号が制御部36に出力され、制御部36は対応する処理を行う。左ボタン332cおよび右ボタン332dは、ディスプレイ321に表示される画面を切り替えるための操作手段である。上ボタン332aおよび下ボタン332bは、ディスプレイ321に表示されている設定値を変更するための操作手段である。
各操作ボタン332の押下を検知するセンサは、制御基板381に搭載されている。また、ディスプレイ321は、同じ制御基板381上に配置されている。本実施形態においては、作業者がディスプレイ321の表示画面を見ながら各操作ボタン332の操作を行いやすいように、ディスプレイ321の表示画面が制御基板381に対して所定の角度を有するようになっている。なお、ディスプレイ321は、表示画面が制御基板381と平行になるように配置されていてもよい。制御基板381には、制御部36としてのマイクロコンピュータ、記憶部34としてのメモリ、通信部31としての通信モジュール、および各種電子部品も搭載されている。加速度センサ351およびジャイロセンサ352も制御基板381上に搭載されている。
加速度センサ351は、3軸の加速度センサであり、各軸方向の加速度を検出して、検出値を制御部36に出力する。ジャイロセンサ352は、3軸のジャイロセンサであり、各軸周りの角速度を検出して、検出値を制御部36に出力する。制御部36は、センサ部35の加速度センサ351およびジャイロセンサ352より入力される検出値に基づいて、溶接トーチ3のトーチ角度を演算する。
ジャイロセンサ352は、自身に設定されている互いに直交する3つの軸の各軸周りの角速度を検出する。制御部36は、これらの角速度を積分することで各軸周りの回転角を算出する。そして、各軸周りの回転角に基づいて、各軸方向の加速度を演算する。さらに、演算された各加速度から、ノズル371の先端部分を中心としたジャイロセンサ352の回転運動による加速度の要素を減じることで、ノズル371の先端部分における3軸方向の各加速度を演算する。制御部36は、ノズル371の先端部分における各軸方向の加速度から重力加速度の要素を減じた加速度(ノズル371の先端部分の移動による加速度)を積分することで各軸方向の速度を演算する。この演算された3軸の各軸方向の速度(すなわち、速度ベクトル)が、本発明の「進行方向情報」に相当する。また、制御部36は、ノズル371の先端部分における3軸方向の各加速度から、重力方向を基準とした、溶接トーチ3の姿勢、より具体的には、溶接トーチ3のノズル371の中心軸の姿勢ベクトルを演算する。この演算された姿勢ベクトルが、本発明の「姿勢情報」に相当する。加速度センサ351は、自身に設定されている互いに直交する3つの軸の各軸方向の加速度を検出する。制御部36は、これらの加速度を、ジャイロセンサ352の各軸方向の加速度の補正に利用する。本実施形態においては、加速度センサ351、ジャイロセンサ352および制御部36の一部が本発明の「センサ部」に相当する。そして、制御部36は、速度ベクトルと姿勢ベクトルとから、トーチ角度を演算する。トーチ角度の演算については後述する。
なお、制御部36による速度ベクトルおよび姿勢ベクトルの演算方法は限定されない。例えば、加速度センサ351を利用せず、ジャイロセンサ352による検出値のみから演算するようにしてもよい。また、ジャイロセンサ352を利用せずに、加速度センサ351による検出値のみから演算するようにしてもよい。
なお、溶接トーチ3の外観は上述したものに限定されない。例えば、トーチスイッチ331、操作ボタン332、およびディスプレイ321の配置場所や形状は限定されない。また、本実施形態においては、操作ボタン332が4つの独立したボタンである場合を示したが、1つの十字ボタンであってもよい。また、ボタンの数も限定されない。
次に、トーチ角度の演算とトーチ角度に適応した溶接情報の設定処理について説明する。
後退法において、鉛直上方向に対する溶接トーチ3のノズル371の中心軸の傾き角は、後退角と呼ばれ、前進法において、鉛直上方向に対する溶接トーチ3のノズル371の中心軸の傾き角は、前進角と呼ばれている。本願明細書等では、鉛直上方向に対する溶接トーチ3のノズル371の中心軸の傾き角を、溶接進行方向に傾いている場合を正の値とし、進行方向とは逆方向に傾いている場合を負の値で表したものを、「トーチ角度」とする。つまり、トーチ角度は、正の値の場合には後退角を表しており、負の値の場合には前進角を表している。図3に示す溶接トーチ3bは、ノズル371の中心軸が鉛直上方向に一致している場合、すなわち、トーチ角度が0°の場合を示している。溶接トーチ3cは、ノズル371の中心軸が溶接進行方向(図における太線矢印の方向)に傾いている場合、すなわち、後退法による溶接であり、トーチ角度が正の値となる場合(後退角)を示している。溶接トーチ3aは、ノズル371の中心軸が溶接進行方向(図における太線矢印の方向)とは逆方向に傾いている場合、すなわち、前進法による溶接であり、トーチ角度が負の値となる場合(前進角)を示している。
トーチ角度が所定範囲内の場合は溶接状態が大きく変化しないが、トーチ角度が所定範囲より大きくなった場合(後退角オーバー)や、トーチ角度が所定範囲より小さくなった場合(前進角オーバー)、溶接状態が大きく変化する。本実施形態では、溶接トーチ3は、トーチ角度を検出し、検出されたトーチ角度に適応させて、自動的に溶接電圧を変更することで、溶接状態の変化を抑制する。特に、トーチ角度が所定範囲より小さくなった場合(前進角オーバー)に、溶接電圧を高くすることで、スパッタの発生を抑制する。
制御部36は、加速度センサ351およびジャイロセンサ352より入力される検出値に基づいて、速度ベクトルおよび姿勢ベクトルを演算し、速度ベクトルおよび姿勢ベクトルに基づいてトーチ角度を演算する。姿勢ベクトルを鉛直方向と速度ベクトルで規定される平面に投影させたベクトルが、鉛直上方向となす角度が、トーチ角度になる。
図4は、トーチ角度を説明するための図である。同図に示すベクトルAは、速度ベクトルであり、溶接進行方向を示している。z軸は鉛直上方向を示しており、z軸とx軸で規定されるxz平面が速度ベクトル(ベクトルA)と平行となるように、x軸が設定されている。x軸の向きはベクトルAの向きに合わせている。y軸は、z軸およびx軸に直交する。ベクトルBは、姿勢ベクトルであり、溶接トーチ3のノズル371の中心軸の方向(先端から基端に向かう向き)を示している。ベクトルCは、姿勢ベクトル(ベクトルB)をxz平面に投影したベクトルである。z軸とベクトルCとがなす角度θが、トーチ角度になる。ベクトルCが、x軸の向きとは反対の向きの場合、角度θは負の値とする(前進角)。
なお、トーチ角度を演算する方法は限定されない。例えば、速度ベクトル(ベクトルA)と姿勢ベクトル(ベクトルB)とから(両ベクトルのなす角度が鈍角か鋭角かによって)前進角か後退角かを判断し、姿勢ベクトル(ベクトルB)と鉛直上方向(z軸)とがなす角度をトーチ角度として、簡易的に演算するようにしてもよい。
制御部36は、記憶部34に記憶されている溶接電圧設定値を読み出してこれを基準電圧値とする。溶接電圧設定値は、溶接電源装置1で設定されたものが受信されて、記憶部34に記憶されている。制御部36は、算出したトーチ角度θが所定範囲内である場合、基準電圧値を溶接電圧設定値とする。所定範囲は、溶接状態が大きく変化しない範囲として、あらかじめ設定されている。本実施形態では、例えば−10°〜10°が所定範囲として設定されている。なお、これは一例であって、所定範囲をどのように設定するかは限定されない。所定範囲は、被加工物Wの板厚や材質、ワイヤ電極の材質、直径、送給速度などに応じて設定されており、溶接開始時にこれらの情報を設定することで自動的に設定される。図3に示す溶接トーチ3bの場合、トーチ角度θが0°で所定範囲内なので、基準電圧値が溶接電圧設定値に設定される。
また、制御部36は、演算されたトーチ角度θが所定範囲より小さい角度の場合(前進角オーバー)、基準電圧値に所定値αを加算した値を溶接電圧設定値とする。図3に示す溶接トーチ3aの場合、トーチ角度θが−10°より小さいので、基準電圧値に所定値αを加算した値が溶接電圧設定値に設定される。一方、演算されたトーチ角度θが所定範囲より大きい角度の場合(後退角オーバー)、基準電圧値から所定値βを減算した値を溶接電圧設定値とする。図3に示す溶接トーチ3cの場合、トーチ角度θが10°より大きいので、基準電圧値から所定値βを減算した値が溶接電圧設定値に設定される。所定値αおよび所定値βは、基準電圧値に応じてあらかじめ設定されている。例えば、本実施形態では、基準電圧値が20Vの場合、所定値αおよび所定値βは0.5Vとして設定されている。したがって、トーチ角度θが所定範囲の場合(−10≦θ≦10)、溶接電圧設定値は基準電圧値である20Vとなり、トーチ角度θが所定範囲より小さい場合(θ<−10)、溶接電圧設定値は基準電圧値に所定値αを加算した20.5Vとなり、トーチ角度θが所定範囲より大きい場合(θ>10)、溶接電圧設定値は基準電圧値から所定値βを減算した19.5Vとなる。なお、これは所定値αおよび所定値βの一例であって、これに限定されない。所定値αと所定値βとは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、所定値を加減算するのではなく、割合である所定値を乗算するようにしてもよい(例えば小さい場合に1.025を乗算し、大きい場合に0.975を乗算する)。本実施形態においては、制御部36が本発明の「溶接情報取得部」に相当する。
制御部36は、溶接電圧設定値を通信部31に出力して、溶接電源装置1に送信させる。通信部31から送信された溶接電圧設定値は、溶接電源装置1に受信されて設定される。溶接電源装置1は、出力電圧を設定された溶接電圧設定値になるように制御する。これにより、溶接電源装置1の出力電圧は、トーチ角度θに適応した電圧に制御される。なお、制御部36は、通信部31から溶接電源装置1に溶接電圧設定値自体を送信させるのではなく、溶接電源装置1に設定されている溶接電圧設定値を所定値αだけ増加(または所定値βだけ減少)させるための信号を送信させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、トーチ角度θに基づく情報がディスプレイ321に表示されるようになっている。具体的には、制御部36は、演算により算出したトーチ角度θを表示部32に出力する。表示部32は、入力されたトーチ角度θに基づく情報をディスプレイ321に表示させる。なお、トーチ角度θをそのまま表示するようにしてもよいし、トーチ角度θが所定範囲であるか、小さいか、大きいかを表示するようにしてもよい。また、トーチの絵を表示して、アニメーションにより、前進角(後退角)が所定範囲をオーバーしていることを表示するようにしてもよい。作業者は、ディスプレイ321を見ることで、溶接トーチ3のトーチ角度θが所定範囲をオーバーしていることを知ることができるので、適切な角度となるように溶接トーチ3の姿勢を変化させることができる。なお、作業者は、ディスプレイ321の画面を切り替えて、現在設定されている溶接電圧設定値を表示させることができ、当該溶接電圧設定値を手動で変化させることもできる。例えば、溶接中に溶接状態を見て、もう少し電圧を上げたい(下げたい)と考えた場合は、左ボタン332cまたは右ボタン332dを押下することでディスプレイ321に表示される画面を切り替えて「溶接電圧設定」画面を表示させ、上ボタン332a(下ボタン332b)を押下することで、溶接電圧設定値を上げる(下げる)ことができる。
作業者が未熟な場合や被加工物Wの関係で、トーチ角度θが大きく(小さく)なりすぎる場合がある。この場合、上述したようにトーチ角度θに適応させて溶接電圧設定値を変更したとしても、溶接の品質が低下する。本実施形態では、トーチ角度θが大きく(小さく)なりすぎた場合に、警告がディスプレイ321に表示されるようになっている。具体的には、制御部36は、トーチ角度θが大きくなりすぎた場合(例えば、20°を超えた場合)、および、トーチ角度θが小さくなりすぎた場合(例えば、−20°未満になった場合)、表示部32に警告を表示する指示を出力する。なお、トーチ角度θが大きく(小さく)なりすぎたことの判定のための閾値は限定されない。制御部36から指示を入力された表示部32は、所定の警告文(例えば、「トーチの後退角が大きすぎます」、「トーチの前進角が大きすぎます」)をディスプレイ321に表示させる。なお、警告の報知はディスプレイ321に表示する場合に限定されない。例えば、音声やブザー音で警告を報知するようにしてもよい。作業者は、警告によりトーチ角度θが大きく(小さく)なりすぎたことに気付いて、適切な角度となるように溶接トーチ3の姿勢を変化させることができる。
また、トーチ角度θの変化が激しい場合、溶接欠陥が発生する場合がある。本実施形態では、トーチ角度θが急変した場合にも、警告がディスプレイ321に表示されるようになっている。具体的には、制御部36は、所定時間でのトーチ角度θの変化量Δθを演算しており、変化量Δθの絶対値が所定値を超えた場合(トーチ角度θが急変した場合)に、表示部32に警告を表示する指示を出力する。本実施形態では、例えば、1秒間に10°以上変化する場合に警告するようにしているが、これに限定されない。制御部36から指示を入力された表示部32は、所定の警告文(例えば、「溶接欠陥に注意して下さい。」)をディスプレイ321に表示させる。作業者は、溶接欠陥が発生している可能性があることを警告によって知ることができ、溶接欠陥に気付くことができる。
図5は、制御部36が行う溶接情報の設定処理を説明するためのフローチャートである。当該処理は、溶接作業時(トーチスイッチ331が押下されている間)に、所定の時間間隔で、繰り返し実行される。
まず、溶接電圧設定値が基準電圧値Vとして、記憶部34から読み出される(S1)。次に、加速度情報および角速度情報が検出され(S2)、トーチ角度θが演算される(S3)。具体的には、制御部36は、加速度センサ351が検出した3軸の加速度検出値と、ジャイロセンサ352が検出した3軸の角速度検出値とを取得し、これらの検出値を用いて所定の演算によりトーチ角度θを算出する。
次に、トーチ角度θに基づいて、溶接電圧設定値V’が設定される(S4〜S8)。まず、トーチ角度θが−10°未満であるか否かが判別される(S4)。トーチ角度θが−10°未満である場合(S4:YES)、基準電圧値Vに所定値αを加算した値が溶接電圧設定値V’として設定される(S5)。トーチ角度θが−10°以上である場合(S4:NO)、トーチ角度θが10°以下であるか否かが判別される(S6)。トーチ角度θが10°以下である場合(S6:YES)、トーチ角度θが所定範囲であるとして、基準電圧値Vが溶接電圧設定値V’として設定される(S7)。トーチ角度θが10°より大きい場合(S6:NO)、基準電圧値Vから所定値βを減算した値が溶接電圧設定値V’として設定される(S8)。
次に、溶接電圧設定値V’が溶接電源装置1に送信される(S9)。具体的には、制御部36は、溶接電圧設定値V’を通信部31に出力する。通信部31は、溶接電圧設定値V’を溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1は、溶接電圧設定値V’を受信して設定し、出力電圧を設定された溶接電圧設定値V’になるように制御する。これにより、溶接電源装置1の出力電圧は、トーチ角度θに適応した電圧に制御される。
次に、トーチ角度θに基づく情報がディスプレイ321に表示される(S10)。具体的には、制御部36は、トーチ角度θを表示部32に出力する。表示部32は、入力されたトーチ角度θに基づく情報をディスプレイ321に表示させる。
次に、トーチ角度θが−20°未満であるか否かが判別される(S11)。トーチ角度θが−20°未満の場合(S11:YES)、トーチ角度θが小さすぎると判断され、警告が表示されて(S15)、処理は終了される。具体的には、制御部36は、表示部32に警告を表示する指示を出力する。当該指示を入力された表示部32は、所定の警告文をディスプレイ321に表示させる。一方、トーチ角度θが−20°以上の場合(S11:NO)、トーチ角度θが20°より大きいか否かが判別される(S12)。トーチ角度θが20°より大きい場合(S12:YES)、トーチ角度θが大きすぎると判断され、警告が表示されて(S15)、処理は終了される。一方、トーチ角度θが20°以下の場合(S12:NO)、ステップS13に進む。
次に、トーチ角度θの変化量Δθが演算される(S13)。具体的には、制御部36は、今回演算したトーチ角度θと、前回演算されたトーチ角度θとの差から、変化量Δθを演算する。そして、変化量Δθの絶対値が所定値Δθ0以下であるか否かが判別される(S14)。変化量Δθの絶対値が所定値Δθ0以下の場合(S14:YES)、処理は終了される。一方、変化量Δθの絶対値が所定値Δθ0より大きい場合(S14:NO)、トーチ角度θの変化が大きすぎると判断され、警告が表示されて(S15)、処理は終了される。
なお、図4のフローチャートに示す処理は一例であって、制御部36が行う溶接情報の設定処理は上述したものに限定されない。例えば、警告表示のための処理(S11〜S15)は、溶接情報を設定する処理(S1〜S10)とは異なるタイミング(例えば、S1〜S10を所定回数行った時など)で実行するようにしてもよい。
次に、溶接トーチ3の作用効果について説明する。
本実施形態によると、制御部36は、加速度センサ351およびジャイロセンサ352より入力される検出値に基づいて、トーチ角度θを演算し、算出したトーチ角度θに応じて溶接電圧設定値を変更する(変更しない場合も含む)。溶接電圧設定値は、通信部31を介して送信されて、溶接電源装置1に設定される。溶接電源装置1は、出力電圧を設定された溶接電圧設定値になるように制御する。これにより、溶接電源装置1の出力電圧は、溶接トーチ3のトーチ角度θに適応した電圧に制御される。したがって、溶接の途中で溶接トーチ3のトーチ角度θが変化しても、溶接の品質が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態によると、トーチ角度θに基づく情報がディスプレイ321に表示される。これにより、作業者は、ディスプレイ321を見ることで溶接トーチ3のトーチ角度θが所定範囲をオーバーしていることを知ることができるので、適切な角度となるように溶接トーチ3の姿勢を変化させることができる。また、作業者は、溶接状態とトーチ角度θから判断して、もう少し電圧を上げたい(下げたい)と考えた場合は、溶接電圧設定値を手動で変更することもできる。
また、本実施形態によると、制御部36は、トーチ角度θが大きく(小さく)なりすぎた場合に、表示部32に警告を表示させる。これにより、作業者は、トーチ角度θが大きく(小さく)なりすぎたことに気付いて、適切な角度となるように溶接トーチ3の姿勢を変化させることができる。また、制御部36は、トーチ角度θの変化量Δθを演算しており、変化量Δθの絶対値が所定値Δθ0を超えた場合(トーチ角度θが急変した場合)に、表示部32に警告を表示させる。これにより、作業者は、溶接欠陥が発生している可能性があることを警告によって知ることができ、溶接欠陥に気付くことができる。
なお、本実施形態においては、制御部36が、加速度センサ351およびジャイロセンサ352が検出した検出値から速度ベクトルおよび姿勢ベクトルを演算し、速度ベクトルおよび姿勢ベクトルに基づいてトーチ角度θを演算する場合について説明したが、これに限られない。加速度センサ351およびジャイロセンサ352が検出した検出値から、溶接進行方向を示す情報(進行方向情報)と、溶接トーチ3の姿勢を示す情報(姿勢情報)とを演算し、これらに基づいてトーチ角度θを演算してもよい。また、トーチ角度θを演算せずに、溶接進行方向を示す情報と溶接トーチ3の姿勢を示す情報とに基づいて、溶接電圧設定値を変更するようにしてもよい。また、溶接進行方向を示す情報(進行方向情報)または溶接トーチ3の姿勢を示す情報(姿勢情報)は、加速度センサ351またはジャイロセンサ352以外のセンサが検出した検出値から演算してもよい。例えば、溶接トーチ3に位置を検出するためのセンサを備えておき、溶接トーチ3の位置の変化から、溶接進行方向を示す情報(進行方向情報)を演算するようにしてもよい。
本実施形態においては、トーチ角度θが、−10≦θ≦10(所定範囲)、θ<−10(前進角オーバー)、θ>10(後退角オーバー)のうちのいずれの範囲に属するかを判別しているが、これに限られない。例えば、各範囲の境界領域にヒステリシス特性を有する領域(過去のトーチ角度θに依存して溶接電圧設定値を変更する領域)を設けてもよい。例えば、θ<−15(前進角オーバー)、−15≦θ<−5(ヒステリシス領域)、−5≦θ≦5(所定範囲)、5<θ≦15(ヒステリシス領域)、θ>15(後退角オーバー)とした場合、トーチ角度θが(前進角オーバー)範囲から(ヒステリシス領域)に入ったときには、溶接電圧設定値を基準電圧値に所定値αを加算した値のままとし、(ヒステリシス領域)から(所定範囲)に入ったときに、溶接電圧設定値を基準電圧値に変更する。一方、トーチ角度θが(所定範囲)から(ヒステリシス領域)に入ったときには、溶接電圧設定値を基準電圧値のままとし、(ヒステリシス領域)から(後退角オーバー)範囲に入ったときに、溶接電圧設定値を基準電圧値から所定値βを減算した値に変更する。これにより、トーチ角度θが各範囲の境界で頻繁に上下することによる溶接電圧設定値の頻繁な切り替えを防ぐことができる。
また、本実施形態においては、トーチ角度θの判別のための範囲分けを、3つの範囲としているが、これに限られず、2つの範囲としてもよいし、4つ以上の範囲としてもよい。例えば、θ<−15(前進角オーバー)、−15≦θ<−10(前進角少しオーバー)、−10≦θ≦10(所定範囲)、10<θ≦15(後退角少しオーバー)、θ>15(後退角オーバー)の5つの範囲としてもよい。この場合、溶接電圧設定値を5段階で切り替えることができる。
また、溶接電圧設定値をトーチ角度θに応じて線形的に変化させるようにしてもよい。例えば、基準電圧値V、溶接電圧設定値V’の場合、aを所定の係数とすると、下記(1)式により、溶接電圧設定値V’を算出するようにしてもよい。この場合、a=0.05とすると、θ=0のときV’=Vとなり、θ=−10のときV’=V+0.5となり、θ=10のときV’=V−0.5となり、これらの間は線形的に変化させることができる。

V’=V−a・θ ・・・・ (1)
本実施形態においては、トーチ角度θに基づいて溶接電圧設定値を変更する場合について説明したが、これに限られない。溶接電圧設定値の代わりに溶接電流設定値を変更するようにしてもよい。この場合は、トーチ角度θが大きいほど、溶接電流設定値を小さくするように設定すればよい。また、短絡時の電流の立上り変化速度を変更するようにしてもよい。この場合は、トーチ角度θが大きいほど、立上り変化速度を小さくするように設定すればよい。また、変更する溶接情報は複数であってもよい。また、トーチ角度θに対する各溶接情報の値をテーブルとして記憶部34に記憶しておいてもよい。
本実施形態においては、溶接電源装置1の出力が直流出力の場合について説明したが、これに限られない。溶接電源装置1の出力は、パルス電流出力であってもよい。この場合、トーチ角度θが大きいほど、パルスのハイレベルの電流設定値(ピーク電流設定値)を小さくするように設定すればよい。図6(a)は、トーチ角度θに応じてピーク電流設定値を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。また、トーチ角度θが大きいほど、パルスのローレベルの電流設定値(ベース電流設定値)を小さくするように設定してもよい。
また、トーチ角度θが大きいほど、パルスのハイレベル期間を短くするように設定してもよい。図6(b)は、トーチ角度θに応じてハイレベル期間を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。また、トーチ角度θが大きいほど、パルスのローレベル期間を長くするように設定してもよい。図6(c)は、トーチ角度θに応じてローレベル期間を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。
また、トーチ角度θが大きいほど、パルス周波数を高くするように設定してもよい。図7(a)は、トーチ角度θに応じてパルス周波数を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。また、トーチ角度θが大きいほど、パルスのデューティ比を小さくすように設定してもよい。図7(b)は、トーチ角度θに応じてパルスのデューティ比を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。
また、トーチ角度θが大きいほど、パルスの立上りおよび立下りの傾斜を緩やかにするように設定してもよい。図7(c)は、トーチ角度θに応じてパルスの立上りおよび立下りの傾斜を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。
また、変更する溶接情報は複数であってもよい。この場合、トーチ角度θに対する各溶接情報の値をテーブルとして記憶部34に記憶しておけばよい。図8(a)は、テーブルの一例を示す図である。図8(a)に示すテーブルでは、トーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)の場合、ベース電流から所定値I1[A]だけ減算すること、および、ローレベル期間から所定値t1[ms]だけ減算すること(条件1)、トーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)の場合、ベース電流およびローレベル期間を変更しないこと(条件2)、トーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)の場合、ベース電流に所定値I2[A]だけ加算すること、および、ローレベル期間に所定値t2[ms]だけ加算すること(条件3)が記憶されている。図8(b)は、トーチ角度θおよび図8(a)に示すテーブルに応じて、ベース電流設定値およびローレベル期間を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。トーチ角度θが大きいほど、ベース電流とピーク電流との差を小さくしてローレベル期間を長くすることで、供給される電力量を小さくするようにしている。
また、溶接電源装置1の出力は、交流電流出力であってもよい。この場合、トーチ角度θが大きいほど、交流周波数を高くするように設定すればよい。図9(a)は、トーチ角度θに応じて交流周波数を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。
また、トーチ角度θが大きいほど、溶接トーチ3をプラスにする時間の割合を小さくするように設定してもよい。溶接電源装置1が交流電流出力の場合、溶接トーチ3をプラスとし被加工物Wをマイナスとして電流を流す状態と、溶接トーチ3をマイナスとし被加工物Wをプラスとして電流を流す状態とが、交互に繰り返される。このうち、溶接トーチ3をプラスにする時間の割合を調整する。具体的には、溶接電源装置1の出力交流電流の制御目標Irefを示す下記(2)式において、オフセット値xを調整する。なお、Aは振幅であり、ωは角周波数、φは初期位相である。オフセット値xを小さくするほど、電流波形はマイナス側に移動し、溶接トーチ3をプラスにする時間の割合が小さくなり、被加工物Wをプラスにする時間の割合が大きくなる。溶接トーチ3をプラスにする時間の割合が小さくなると、ワイヤ電極が溶けにくくなる。逆に、オフセット値xを大きくするほど、電流波形はプラス側に移動し、溶接トーチ3をプラスにする時間の割合が大きくなり、被加工物Wをプラスにする時間の割合が小さくなる。溶接トーチ3をプラスにする時間の割合が大きくなると、ワイヤ電極が溶け易くなる。

Iref=A・sin(ωt+φ)+x ・・・・ (2)
図9(b)は、トーチ角度θに応じて溶接トーチ3をプラスにする時間の割合を変更した場合の出力電流波形を示している。図に示す破線の波形はトーチ角度θがθ<−10(前進角オーバー)のものであり、一点鎖線の波形はトーチ角度θが−10≦θ≦10(所定範囲)のものであり、実線の波形はトーチ角度θがθ>10(後退角オーバー)のものである。
なお、上述したのは溶接情報のパラメータの一例である。トーチ角度θに応じて変更する溶接情報のパラメータは、上述したものに限定されない。
本実施形態においては、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが信号線8を介して通信を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、パワーケーブル41,42または電力伝送線5に信号を重畳させて通信を行うようにしてもよい、この場合、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する信号線8を必要としない。
図10は、第2実施形態に係る溶接システムA2の機能構成を示すブロック図である。なお、図10において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。
図10に示す溶接システムA2は、溶接トーチ3が溶接電源装置1と無線通信を行う点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
通信部31は、アンテナを介して信号の送受信を行う。通信部31は、制御部36より入力される信号を変調して、電磁波として送信する。また、通信部31は、アンテナが受信した電磁波を復調して、制御部36に出力する。通信部31は、溶接電源装置1の通信部11と無線通信を行う。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
本発明に係る溶接トーチおよび溶接システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る溶接トーチおよび溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
A1,A2:溶接システム
1 :溶接電源装置
11 :通信部
2 :ワイヤ送給装置
21 :コネクタ
3 :溶接トーチ
31 :通信部
32 :表示部
321 :ディスプレイ
33 :操作部
331 :トーチスイッチ
332 :操作ボタン
332a :上ボタン
332b :下ボタン
332c :左ボタン
332d :右ボタン
34 :記憶部
35 :センサ部
351 :加速度センサ
352 :ジャイロセンサ
36 :制御部(センサ部、溶接情報取得部)
37 :トーチボディ
371 :ノズル
38 :ハンドル
381 :制御基板
39 :トーチケーブル
41 :パワーケーブル
42 :パワーケーブル
5 :電力伝送線
6 :ガスボンベ
7 :ガス配管
8 :信号線
P :電力系統
W :被加工物

Claims (4)

  1. 溶接電源装置から電力を供給されてアーク溶接を行う溶接トーチであって、
    前記溶接トーチの進行方向情報および姿勢情報を検出するセンサ部と、
    前記センサ部が検出した前記進行方向情報および前記姿勢情報に基づいてトーチ角度を算出し、算出された前記トーチ角度に適応した溶接情報を取得する溶接情報取得部と、
    前記溶接情報取得部が取得した前記溶接情報を前記溶接電源装置に送信する通信部と、を備えていることを特徴とする溶接トーチ。
  2. 前記センサ部は、前記溶接トーチの先端部分の速度ベクトルを前記進行方向情報として検出し、前記溶接トーチの先端部分の軸方向の姿勢ベクトルを前記姿勢情報として検出する、
    請求項1に記載の溶接トーチ。
  3. 前記溶接情報取得部は、前記トーチ角度が複数の範囲のどの範囲に属するかを判別し、判別した範囲に対応付けられた値に基づいて前記溶接情報を取得する、
    請求項1または2に記載の溶接トーチ。
  4. 請求項1ないしのいずれかに記載の溶接トーチと、
    前記溶接電源装置と、
    を備えていることを特徴とする溶接システム。
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