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JP6984828B2 - 凝集タンパク質の再生剤およびこれを用いた凝集タンパク質の再生方法 - Google Patents
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JP6984828B2 - 凝集タンパク質の再生剤およびこれを用いた凝集タンパク質の再生方法 - Google Patents

凝集タンパク質の再生剤およびこれを用いた凝集タンパク質の再生方法 Download PDF

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Description

本発明は、凝集タンパク質の再生剤およびこれを用いた凝集タンパク質の再生方法に関する。
タンパク質は容易に変性し、凝集体を形成する。また、大腸菌を宿主とする大量発現の際にも高い確率で凝集タンパク質(不溶性凝集体;封入体)を形成する。このような凝集タンパク質から活性を有するタンパク質へと再生する方法として、高濃度の変性剤で凝集タンパク質を可溶化し、その後、透析や希釈によって徐々に変性剤を除去していく方法が一般的である。しかしながら、この方法は時間がかかり操作が煩雑である、多量の廃水が出るといった問題を抱えている。また、操作の途中で再び凝集タンパク質を形成する確率が高いという問題もある。
ここで、凝集タンパク質の再生には、可溶化と巻き戻し(リフォールディング)という2つの過程が重要である。タンパク質凝集体の溶解(可溶化)には、6Mのグアニジン塩酸塩や8Mの尿素といったかなり強力な変性剤を用いて変性させることで可溶化を図る場合が多い。また、タンパク質によってはβ−メルカプトエタノール、チオール試薬、還元剤を加えることで溶解度を高めるなどの方法が用いられる。しかしながら、変性剤の使用量や種類はタンパク質によって異なり、溶解はするもののその後の再生が困難になる場合も少なくない。また、変性剤の使用量等は経験による部分も多く、確立された方法はいまだ存在しない。
さらに、可溶化後の巻き戻しには、変性剤の除去過程が重要である。可溶化した凝集タンパク質から変性剤を除去することで巻き戻しが始まる。変性剤の除去には、通常、希釈法または透析法が用いられる。巻き戻しはタンパク質が正しく折りたたまれるか、凝集するかの競合において、より正しく折りたたまれる方向に導くことで達成される。活性型への巻き戻し効率は中間状態に強く依存すると言われているが、中間体同士の相互作用や変性したタンパク質の疎水性相互作用により、巻き戻し過程で再度凝集が生じることも少なくない。効率のよい巻き戻しのため、低分子化合物を安定化剤としてバッファー中に添加することも行われている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、巻き戻しの過程についても依然として確立された方法は存在していないのが現状である。なお、生体内におけるタンパク質の巻き戻し(リフォールディング)はシャペロン内で進行する。このシャペロンは、内部が疎水性領域となっているポケットを持ち、ここでタンパク質がフォールディングすることで、不適切な結合が抑制されると考えられている。このことは、変性剤の濃度をゆっくり下げる方法では限界があることを示している。
ところで、所定構造のイミダゾリウムイオンをカチオン構造に含むイオン結合性塩(イオン液体)をタンパク質のリフォールディングの際に利用する技術も提案されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照)。
特開2016−108264号公報
Protein Science (2005), 14:2693-2701. Journal of Biotechnology 150 (2010) 64-72
このように、従来、種々の添加剤をバッファー中に添加することで、可溶化されたタンパク質をリフォールディングする技術は種々提案されている。しかしながら、上述した技術はいずれも、凝集タンパク質の可溶化および巻き戻し(リフォールディング)を一貫して行うことが可能な技術ではなく、依然として煩雑な操作を伴うものであるという問題がある。ここで、大腸菌を宿主としたタンパク質の大量発現による工業的な生産では、ほとんどの場合において、凝集タンパク質の再生はほぼ不可避な状況にあるのが現状である。したがって、凝集タンパク質の可溶化および巻き戻しによる再生過程を簡便な操作によって行える技術が開発されれば、その工業上の有用性は計り知れないものがある。
そこで本発明は、強力な変性剤を使用しなくとも凝集タンパク質を可溶化することができ、かつ、その他の添加剤を使用しなくともネイティブ類似の構造へと巻き戻し(リフォールディング)することが一貫して実施可能な技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、所定の化学構造を有するイオン結合性塩(イオン液体)に所定量の水を水和水として含ませたものが凝集タンパク質の再生剤として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、下記一般式(1)または下記一般式(2):
Figure 0006984828
式中、
Xは、窒素原子またはリン原子を表し、
nは、7〜11の整数を表し、
pおよびqは、それぞれ独立して2〜14の整数を表し、かつ、|p−q|≧6を満足し、
x−は、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオンおよびカルボン酸イオンからなる群から選択される対アニオンを表し、xは、前記対アニオンの価数を表す、
で表されるイオン結合性塩の水和物を有効成分として含有する凝集タンパク質の再生剤が提供される。ここで、前記水和物における前記イオン結合性塩と水和水とのモル比は1:1〜1:20である点に特徴がある。
また、本発明の他の形態によれば、上述した再生剤の存在下で凝集タンパク質を処理することを含む、凝集タンパク質の再生方法もまた、提供される。
本発明によれば、イオン結合性塩(イオン液体)のイオン構造をデザインし疎水性を制御することで、強力な変性剤を使用しなくとも凝集タンパク質を可溶化することができ、かつ、その他の添加剤を使用しなくともネイティブ類似の構造へと巻き戻し(リフォールディング)することが一貫して実施可能な技術が提供されうる。
凝集タンパク質の変性剤であるグアニジン塩酸塩(塩化グアニジウム)を用いて凝集タンパク質を変性(アンフォールディング)した場合において、変性剤の濃度を変化させたときの極大蛍光波長の変化の様子を説明するためのグラフである。 未変性(ネイティブ)の糖鎖結合タンパク質コンカナバリンA(ConA)を上記バッファー中に溶解したサンプル(ポジティブコントロール)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(11’)である「P44412・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:3)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(11’)である「P44412・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:7)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(11’)である「P44412・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:15)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(14’)である「N8888・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:3)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(9’)である「P4444・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:3)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(10’)である「P4448・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:3)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(12’)である「N4444・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:3)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。 イオン結合性塩(15’)である「P6666・dhp」の水和物(塩:水のモル比=1:3)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。
本発明の一形態は、下記一般式(1)または下記一般式(2):
Figure 0006984828
式中、
Xは、窒素原子またはリン原子を表し、
nは、7〜11の整数を表し、
pおよびqは、それぞれ独立して2〜14の整数を表し、かつ、|p−q|≧6を満足し、
x−は、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオンおよびカルボン酸イオンからなる群から選択される対アニオンを表し、xは、前記対アニオンの価数を表す、
で表されるイオン結合性塩の水和物を有効成分として含有し、
この際、前記水和物における前記イオン結合性塩と水和水とのモル比が1:1〜1:20であることを特徴とする、凝集タンパク質の再生剤に関する。以下、本発明の実施形態を説明する。
[凝集タンパク質の再生剤]
本形態に係る発明は、凝集タンパク質の再生剤に関するものである。本明細書において、「凝集タンパク質」とは、タンパク質が凝集することにより凝集体を形成した状態のものを指し、凝集していないタンパク質がどのような原因によって凝集するに至ったかを問わない。凝集タンパク質としては、未変性(ネイティブ)のタンパク質が熱や化学物質等の外部刺激を受けて凝集したものや、大腸菌を宿主として生産された組み換えタンパク質が凝集した不溶性凝集体(いわゆる封入体)などが挙げられるが、これらはいずれももちろん本発明に係る「凝集タンパク質」の概念に包含されるものである。
本明細書において、凝集タンパク質の「再生」とは、凝集タンパク質を可溶化(溶解)する工程と、可溶化した凝集タンパク質をネイティブな構造にリフォールディングする工程とを含む方法により凝集タンパク質を凝集前と同一または類似の構造および活性を有する状態へと変化させることを意味する。本明細書において、凝集タンパク質の「再生剤」とは、凝集タンパク質の「再生」における溶解およびリフォールディングの双方を補助し、凝集タンパク質の再生収率を向上させるのに用いられるものである。
<イオン結合性塩の水和物>
本形態に係る凝集タンパク質の再生剤は、上述した一般式(1)または一般式(2)で表されるイオン結合性塩の水和物(「水和イオン液体」とも称する)を有効成分とするものである。
(イオン結合性塩)
水和物の原料であるイオン結合性塩は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造を有する塩であり、100℃以下に融点を有し、室温で液体状態を呈するものが多くある。水和物を調整するとほぼ全て液体状態となる。
Figure 0006984828
一般式(1)および(2)において、Xは、窒素原子またはリン原子を表す。すなわち、有効成分である水和イオン液体を構成するイオン結合性塩のカチオンは、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンである。
一般式(1)で表されるイオン結合性塩のカチオンは、中心元素(窒素原子またはリン原子)に対して4本の同一のアルキル鎖(−C2n+1)が共有結合した構造を有している。ここで、nは、7〜11の整数を表す。一般式(1)においてnが小さすぎると、カチオンの疎水性が不十分であることに起因して、凝集タンパク質を可溶化(溶解)することはできても、溶解したタンパク質をリフォールディングして活性を回復させることができない。一方、一般式(1)においてnが大きすぎると、アルキル鎖の疎水性が大きすぎる結果、水和物の形態とした場合であっても凝集タンパク質を十分に可溶化(溶解)させることができない。これに対し、一般式(1)においてnが7〜11の整数である場合には、凝集タンパク質の再生剤として優れた性能を発揮することが可能である。なお、好ましい実施形態では、一般式(1)で表されるイオン結合性塩において、Xが窒素原子であり、nが8〜10の整数を表す。また、さらに好ましい実施形態では、一般式(1)で表されるイオン結合性塩において、Xが窒素原子であり、nが8である(後述する実施例を参照)。
また、一般式(2)で表されるイオン結合性塩のカチオンは、中心元素(窒素原子またはリン原子)に対して4本のアルキル鎖が結合しているが、4本のうち1本のアルキル鎖(−C2q+1)の炭素数(q)は他の3本のアルキル鎖(−C2p+1)の炭素数(p)とは異なっている。さらに、これらの炭素数の差は6以上異なっている必要がある(つまり、|p−q|≧6を満足する)。非対称構造を有する一般式(2)で表されるイオン結合性塩の場合には、このような構造を有することにより、界面活性剤に類似した性質を示すようになり、やはり凝集タンパク質の再生剤として優れた性能を発揮することが可能となるものと考えられる。また、上記一般式(1)と同様にある程度の疎水性を示すという観点から、一般式(2)におけるpおよびqは、それぞれ独立して2〜14の整数を表すことが好ましい。他の好ましい実施形態では、一般式(2)で表されるイオン結合性塩において、p<qをさらに満足する(つまり、1本のみ異なるアルキル鎖が他の3本のアルキル鎖よりも長い)。さらに他の好ましい実施形態では、一般式(2)で表されるイオン結合性塩において、Xがリン原子であり、pが3〜5の整数であり、qが9〜13の整数である。より好ましい実施形態では、一般式(2)で表されるイオン結合性塩において、Xがリン原子であり、pが4であり、qが12である(後述する実施例を参照)。
一般式(1)および(2)において、Ax−は、対アニオンを表す(xは当該対アニオンの価数を表す)。そして、本形態において、当該対アニオンは、3価のアニオン(x=3)であるリン酸イオン、2価のアニオン(x=2)であるリン酸水素イオンおよび硫酸イオン、並びに1価のアニオン(x=1)であるリン酸二水素イオンおよび硫酸水素イオンからなる群から選択される。つまり、xは1〜3の整数である。なお、カルボン酸イオンとしては、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオンなどが挙げられる。また、対アニオンとしては、好ましくはリン酸二水素イオンである。これらのアニオンはいずれも優れたコスモトロピシティー(cosmotropicity)を示すという点で共通しており、よって、本願発明に係るイオン結合性塩のアニオンとして用いることで凝集タンパク質の再生剤として優れた性能を発揮するものと考えられる。
本発明に係るイオン結合性塩の具体的な構造について特に制限はなく、上述した各構造の組み合わせによって得られる任意のイオン結合性塩が用いられうる。イオン結合性塩の一例としては、下記一般式(3)または下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006984828
(水和水)
上述したように、本形態に係る凝集タンパク質の再生剤の有効成分は、上述した一般式(1)または一般式(2)で表されるイオン結合性塩の水和物(水和イオン液体)である。水和イオン液体は、上記イオン結合性塩が水に水和したものであり、水和水を含む。
ここで、本形態に係る凝集タンパク質の再生剤の有効成分である水和イオン液体は、これに含まれる水和水の量が所定の範囲内の値に制御されている点に特徴がある。
具体的には、イオン結合性塩の水和物(水和イオン液体)における当該イオン結合性塩と水和水とのモル比が1:1〜1:20である点に特徴がある。このような構成とすることにより、凝集タンパク質の再生剤として優れた性能を発揮することができる。なお、イオン結合性塩に対する水の含有量が多くなると、水和に関与しない水(自由水)が生じる虞が高まる。自由水の存在は凝集タンパク質の再生に悪影響を及ぼすことから、自由水の発生を防止するという観点から、上記モル比は好ましくは1:2〜1:17であり、より好ましくは1:3〜1:15であり、さらに好ましくは1:3〜1:7であり、特に好ましくは1:3〜1:5であり、最も好ましくは1:3〜1:4である。
なお、本形態に係る凝集タンパク質の有効成分としての水和イオン液体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、イオン結合性塩のカチオンおよびアニオンの構造の組み合わせや水和水の含有量の異なる2種以上のものが併用されてもよい。
<イオン結合性塩およびその水和物の製造方法>
本形態に係るイオン結合性塩については、市販品が存在する場合には当該市販品を購入して用いてもよい。また、市販品が存在しない場合であっても、従来公知の手法により製造可能である(後述する実施例を参照)。
さらに、イオン結合性塩を水和物とする手法についてもそれ自体は公知であり、イオン結合性塩に所定量の水を添加した後、必要に応じて混合、撹拌等の処理を施すことで、水和イオンを得ることができる。
[凝集タンパク質の再生方法]
本発明の他の形態によれば、凝集タンパク質の再生方法もまた、提供される。すなわち、本発明の他の形態は、上述した本発明の一形態に係る凝集タンパク質の再生剤の存在下で凝集タンパク質を処理することにより前記凝集タンパク質を溶解およびリフォールディングすることを含む、凝集タンパク質の再生方法である。
本形態に係る凝集タンパク質の再生方法において、再生する対象のタンパク質には、天然または人造(化学合成法、発酵法、遺伝子組み換え法)などの由来や製造方法の別にかかわらず、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、およびこれらの複合体(例えば、(ポリ)ペプチドまたはタンパク質と化合物との複合体、(ポリ)ペプチドまたはタンパク質と糖類との複合体、(ポリ)ペプチドまたはタンパク質と金属との複合体、(ポリ)ペプチドまたはタンパク質と補酵素との複合体など)が含まれる。なお、タンパク質の種類は問わず、例えば細胞内タンパク質、細胞外タンパク質、膜タンパク質、および核内タンパク質がいずれも含まれる。なお、タンパク質の凝集にはジスルフィド結合が関与しうることが知られているが、対象となるタンパク質は必ずしもジスルフィド結合を有するタンパク質である必要はない。ただし、好適なタンパク質として少なくとも1つのジスルフィド結合を含むタンパク質が挙げられる。
対象となるタンパク質は、好ましくは、大腸菌などの原核生物や酵母などの真核生物や無細胞抽出系などの異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組み換え体である。このような組み換え体は、しばしば不溶性で不活性の凝集体(いわゆる封入体)として得られることが多いため、本発明に係る再生方法が好適に使用できる。
本形態において対象とするタンパク質の分子量について特に制限はないが、通常1,000〜10,000,000程度のタンパク質が挙げられる。再生効果の点から、好ましくは分子量10,000〜250,000のタンパク質である。一般に分子量の大きさと再生のし難さには相関性があり、分子量の大きなタンパク質(分子量10,000以上程度)になると再生が著しく困難になる場合がある。本形態に係る再生方法によれば、高い再生効果を得ることができることから、分子量10,000以上の高分子量のタンパク質に対しても有効である。分子量1,000未満のタンパク質は容易に巻き戻すことができるため、本形態に係る再生方法は、分子量1,000以上のタンパク質に対して特に好適に使用することができる。なおタンパク質の分子量は、一般的なゲル電気泳動法などで測定することができる。
本形態に係る凝集タンパク質の再生方法は、上述したように、本発明の一形態に係る凝集タンパク質の再生剤の存在下で凝集タンパク質を処理することにより前記凝集タンパク質を溶解およびリフォールディングすることを含む点に特徴がある。
この再生方法における溶解およびリフォールディングにおいては、本発明に係る再生剤を溶媒として用いることで、凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングの双方を一貫して達成することが可能であることから、極めて簡便な手法により凝集タンパク質を再生することができるという点で、工業的に非常に有用性の高い再生方法であると言える。ただし、本発明に係る再生剤以外の従来公知の溶媒や添加剤を、凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングの少なくとも一方において用いてももちろんよい。ただし、好ましい実施形態においては、本発明に係る再生剤以外の溶媒または添加剤を用いることなく凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングが行われる。
いずれにせよ、凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングを本発明に係る凝集タンパク質の再生剤の存在下で行うには、本発明に係る凝集タンパク質の再生剤(水和イオン液体)と凝集タンパク質とを接触させる(好ましくは、水和イオン液体を溶媒として凝集タンパク質をこれに溶解させ、必要に応じて撹拌する)のみで凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングが進行する。溶解およびリフォールディング(特に、リフォールディング)を十分に進行させるという観点からは、混合物を一定時間静置することが好ましい。静置時間は例えば1〜50時間でありうる。また、静置する際の温度条件としては、0〜100℃の範囲で、対象とするタンパク質の熱耐性に応じて適宜選択することができるが、通常は4〜30℃の範囲である。
本形態に係る凝集タンパク質の再生方法は、正常タンパク質を調製する方法と言い換えることもできる。
本形態に係る凝集タンパク質の再生方法は、凝集タンパク質を本発明に係る再生剤の存在下で処理することにより、当該凝集タンパク質を溶解およびリフォールディングするものであればよく、他の工程の有無を特に制限するものではない。対象のタンパク質が、例えば大腸菌や酵母や無細胞抽出系などの異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組み換え体である場合、本形態に係る凝集タンパク質の再生方法は、下記の(2)〜(3)、(1)〜(3)または(1)〜(4)の工程を含む方法であってもよい:
(1)タンパク質産生菌の培養工程:大腸菌などのタンパク質産生菌を培養し、組み換え体を産生する;
(2)溶菌工程:溶菌剤などを用いてタンパク質産生菌体内からタンパク質封入体を取り出す;
(3)溶解工程;上記タンパク質封入体を、本発明に係る凝集タンパク質の再生剤(水和イオン液体)を溶媒として用いてこれに溶解させ、必要に応じて室温にて数時間放置する。本発明に係る再生方法によれば、当該溶解工程に引き続いてリフォールディング工程が行われ、本来の活性を有するタンパク質が再生する。
(4)単離工程:上記で得られたタンパク質の水和イオン液体中の溶液から、目的とする正常タンパク質(リフォールディングタンパク質)を、カラムクロマトグラフィーなどを用いて単離する。
なお、上記の(1)のタンパク質産生菌培養工程におけるタンパク質産生菌としては、以下の細菌細胞を例示することができる。細菌細胞としては、連鎖球菌属(Streptococci)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)およびバチルス属菌(Bacillus)細胞、真菌細胞:例えば酵母細胞およびアスペルギルス属(Aspergillus)細胞、昆虫細胞:例えばドロソフィラS2(Drosophila S2)、スポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)細胞、動物細胞:例えば、CHO、COS、Hela、C127、3T3、BHK、293およびボウズ(Bows)メラノーマ細胞、ならびに植物細胞等が挙げられる。
また、上記(1)工程のタンパク質産生菌の培養方法にあたり、目的タンパク質をコードするcDNAを含有する発現ベクターは、(i)目的タンパク質産生細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、当該mRNAから単鎖されたcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、当該相補DNAをファージまたはプラスミドに組み込む。(ii)得られた組み換えファージまたはプラスミドで宿主を形質転換し、培養後、目的タンパク質の一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーションまたは抗体を用いたイムノアッセイ法により目的とするDNAを含有するファージあるいはプラスミドを単離する。(iii)その組み換えDNAから目的とするクローン化DNAを切りだし、当該クローン化DNAまたはその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。その後、適当な方法により、宿主を発現ベクターで形質転換し培養する。培養は通常15〜43℃で3〜24時間行い、必要により通気、攪拌を加えることもできる。
また、上記(2)の溶菌工程で採用される溶菌方法としては、超音波による物理的破砕、リゾチーム等の溶菌酵素による処理、界面活性剤等の溶菌剤による処理などのいずれもが使用できる。生産性の観点から溶菌剤による処理が好ましい。また、有用なタンパク質を変性させないといった点からは、対イオンがギ酸、酢酸などのカルボン酸イオンである第4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤などの溶菌剤を挙げることができる。
さらに、上記(4)の単離工程において、カラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としてはシリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド、ビニルポリマーなどが挙げられる。商業的に入手できる市販品としては、Sephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio-Gelシリーズ(Bio-Rad社)等が挙げられる。
なお、システイン残基などに由来するチオール基(−SH基)を有するタンパク質が凝集した場合、凝集の際に分子間でジスルフィド結合が生成することがある。このような凝集タンパク質を本発明に係る再生剤を用いて溶解およびリフォールディングした場合において、リフォールディングされたタンパク質が分子間でジスルフィド結合を形成しているときには、リフォールディングされたタンパク質を還元剤と接触させて、前記ジスルフィド結合を還元する操作をさらに実施することが好ましい。この際に用いられる還元剤としては特に制限はなく、ペプチドやタンパク質におけるジスルフィド結合の切断に利用されている従来公知の還元剤が同様にして用いられうる。このような還元剤の一例としては、1,4−ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、還元型グルタチオン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩などが挙げられる。
また、ネイティブのタンパク質が分子内の複数のシステイン残基などの間にジスルフィド結合を有しているような場合、このジスルフィド結合は、凝集の際に切断されるか、または、本発明に係る再生剤による再生(溶解およびリフォールディング)の際に切断されるなどして、リフォールディングが完了した際に複数のチオール基(−SH基)が露出した状態となることがある。このように、リフォールディングされたタンパク質が複数のチオール基(−SH基)を有する場合には、リフォールディングされたタンパク質を酸化剤と接触させて、前記複数のチオール基の間にジスルフィド結合を形成する操作をさらに実施することが好ましい。この際に用いられる還元剤としては特に制限はなく、ペプチドやタンパク質におけるジスルフィド結合の生成に利用されている従来公知の酸化剤が同様にして用いられうる。このような酸化剤の一例としては、酸化型グルタチオン、シスチンなどが挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明の好ましい実施形態についてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例によって限定されるわけではない。
[イオン結合性塩を用いた凝集タンパク質の溶解]
(イオン結合性塩およびその水和物の準備)
イオン結合性塩の凝集タンパク質の溶解性を確認するため、市販品を購入することにより、以下のイオン結合性塩を準備した。
(1)1−ブチル−3−メチルピリジニウムブロミド
(2)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド
(3)1−ブチル−3−メチルピペリジニウムブロミド
(4)リン酸二水素コリン
(5)1−ブチルピリジニウムブロミド
(6)1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド
(7)ベンジルトリプロピルアンモニウムクロリド
(8)1,3−ジデシル−2−メチルイミダゾリウムクロリド
(9)テトラブチルホスホニウムブロミド(P4444・Br)
(10)トリブチル−n−オクチルホスホニウムブロミド(P4448・Br)
(11)トリブチルドデシルホスホニウムブロミド(P44412・Br)
(12)テトラブチルアンモニウムブロミド(N4444・Br)
(13)テトラヘキシルアンモニウムブロミド(N6666・Br)
(14)テトラ−n−オクチルアンモニウムブロミド(N8888・Br)
(15)テトラヘキシルホスホニウムブロミド(P6666・Br)
(16)ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド
(17)メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド
(18)トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリド
(19)ジメチルジオクチルアンモニウムブロミド
(20)エチルヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミド
(21)トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド
(22)オクチルトリメチルアンモニウムブロミド。
次いで、上記で準備したイオン結合性塩(9)〜(22)について、アニオンをリン酸二水素イオン(dhp)に交換することにより、以下のイオン結合性塩を併せて準備した。具体的には、まず、上記で準備したイオン結合性塩をそれぞれ水に溶解し、陰イオン交換カラム樹脂(Amberlite IRN 78)に通液してアニオンをOHに交換した。次いで、等モル量のリン酸を加え、中和反応後、エバポレーターで脱水することで、アニオンがリン酸二水素イオン(dhp)に交換されたイオン結合性塩を得た。
(9’)テトラブチルホスホニウムリン酸二水素(P4444・dhp)
(10’)トリブチル−n−オクチルホスホニウムリン酸二水素(P4448・dhp)
(11’)トリブチルドデシルホスホニウムリン酸二水素(P44412・dhp)
(12’)テトラブチルアンモニウムリン酸二水素(N4444・dhp)
(13’)テトラヘキシルアンモニウムリン酸二水素(N6666・dhp)
(14’)テトラ−n−オクチルアンモニウムリン酸二水素(N8888・dhp)
(15’)テトラヘキシルホスホニウムリン酸二水素(P6666・dhp)。
さらに、上記で準備したイオン結合性塩(1)〜(22)および(9’)〜(15’)の一部について、水を添加することにより水和物の形態とした。具体的には、イオン結合性塩の1イオンペアに対して水分子の数が3、7または15分子の割合となるように水を添加して、水和物の形態のイオン結合性塩を得た。
(凝集タンパク質の溶解性の確認)
凝集タンパク質として、糖鎖認識タンパク質であるコンカナバリンA(ConA)の凝集体を調製した。具体的には、ConAを10mg/mLの濃度となるようにミリQ水と混合し、70℃にて10分間インキュベートすることにより、ConAの凝集体を得た。
そして、このようにして調製された凝集タンパク質(ConAの凝集体)約0.5mgと、上記で準備したイオン結合性塩(またはその水和物)50μLとを混合し、一晩撹拌を行った。
一晩撹拌した後のサンプルについて、目視および蛍光測定により溶解性を確認した。なお、蛍光測定では、撹拌後のサンプルを遠心分離(10,000g、30分間)して得られた上澄みについて、タンパク質中のトリプトファン残基を測定対象とする励起波長280nmで励起を行い、得られた蛍光スペクトルの極大蛍光波長およびその蛍光強度を測定した。結果を下記の表1に示す。
Figure 0006984828
ここで、表1に示す結果について考察する。まず、未変性(ネイティブ)のConAはバッファー中に溶解すると336nmに極大蛍光波長が観測される。一方、典型的な変性剤であるグアニジン塩酸塩(塩化グアニジウム)を用いて凝集タンパク質を変性(アンフォールディング)すると、極大蛍光波長は長波長側へとシフトし、高濃度のグアニジン塩酸塩を用いた場合には約350nm程度にまでシフトする(図1)。このことを考慮すると、本発明に係るイオン結合性塩のいくつかは、極大蛍光波長の長波長側へのシフトをほとんど示すことなく凝集タンパク質を溶解(可溶化)することができたことがわかる。このことはすなわち、本発明に係るイオン結合性塩の水和物のいくつかが、凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングを一貫して行うことが可能な系として機能しうることを示唆している。なお、タンパク質のリフォールディング用添加剤として従来提案されているイミダゾリウム構造やその他の芳香環含有構造をカチオン中に含むイオン結合性塩を用いた場合には、凝集タンパク質を可溶化(溶解)させることはできなかった。
[溶解されたタンパク質の活性の確認]
上記で凝集タンパク質(ConAの凝集体)が可溶化(溶解)したサンプルのうちいくつかについて、ConA本来の活性(糖鎖結合能)が維持されているか否かを確認した。具体的には、センサーチップ上に固定化したマンノース付加ウシ血清アルブミン(BSA)へのタンパク質の結合能を、バイオレイヤー干渉法(Blitz:プライムテック株式会社)を用いて評価した。なお、評価の際には、上記と同様の手法により、凝集タンパク質(ConAの凝集体)をイオン結合性塩の水和物中で撹拌後、遠心処理を行った上澄みについて、PBSバッファーを用いて2,000倍に希釈し、結合活性の評価を行った。
図2Aは、未変性(ネイティブ)のConAを上記バッファー中に溶解したサンプル(ポジティブコントロール)について、結合活性の評価を行った結果を示すグラフである。なお、ポジティブコントロールサンプル中のタンパク質濃度は、イオン結合性塩の水和物を用いて評価した場合と等しくなるように調整した。
また、図2B〜図2Iはそれぞれ、以下のサンプルについて結合活性の評価を行った結果を示すグラフである:
図2B:(11’)P44412・dhp(1:3)
図2C:(11’)P44412・dhp(1:7)
図2D:(11’)P44412・dhp(1:15)
図2E:(14’)N8888・dhp(1:3)
図2F:(9’)P4444・dhp(1:3)
図2G:(10’)P4448・dhp(1:3)
図2H:(12’)N4444・dhp(1:3)
図2I:(15’)P6666・dhp(1:3)。
図2B〜図2Iに示す結果から、イオン結合性塩(11’)(P44412・dhp)およびイオン結合性塩(14’)(N8888・dhp)を用いて処理した場合には、凝集タンパク質(ConAの凝集体)が可溶化(溶解)するだけではなく、当該タンパク質の本来の活性を回復することができることがわかる。つまり、これらのイオン結合性塩は、凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングを一貫して行うことが可能な系として機能することが明確に実証された。
一方、その他のイオン結合性塩を用いて処理した場合には、凝集タンパク質(ConAの凝集体)が可溶化(溶解)することができたものであっても、当該タンパク質の本来の活性を回復させることはできなかった。これは、カチオンの中心元素として窒素原子またはリン原子を有する場合に、当該中心元素に結合する4本のアルキル鎖がすべて同一である対称構造の場合には、カチオン構造に疎水性を持たせるために、当該アルキル鎖の炭素数はある程度大きい必要があることを示している。このような構造により形成される疎水性環境がリフォールディング環境として重要であると考えられる。また、このことは、生体内におけるタンパク質のリフォールディングはシャペロン内の疎水領域で進行することと一致する。また、カチオンの中心元素(窒素原子またはリン原子)に結合するアルキル鎖の鎖長が1本のみ異なる場合には、鎖長の短いものと長いものとの間で炭素数の差がある程度大きいことが必要であることも示している。対称性のない分子から形成される均一な環境ではなく、ある程度の空間やドメイン構造等を形成可能な非対称分子で形成される環境も、タンパク質の再生の場として適していることが推測される。これらの結果および考察に基づき、本発明者らは、本発明に係るイオン結合性塩の水和物が凝集タンパク質の再生剤として有用であろうと推定しているのである。
(凝集タンパク質の種類を変更した場合の検討)
凝集タンパク質として、コンカナバリンAに代えて、以下の3種のタンパク質の凝集体をそれぞれ準備した。
・チトクロムc
・リゾチーム
・フルクトースデヒドロゲナーゼ
具体的には、各タンパク質を10mg/mLの濃度となるようにミリQ水と混合し、70℃にて10分間インキュベートすることにより、各タンパク質の凝集体を得た。
そして、このようにして調製された凝集タンパク質(各タンパク質の凝集体)約0.5mgと、下記のイオン結合性塩の水和物50μLとをそれぞれ混合し、一晩撹拌を行った。そして、一晩撹拌した後のサンプルについて、目視および蛍光測定により溶解性を確認した。なお、蛍光測定では、撹拌後のサンプルを遠心分離(10,000g、30分間)して得られた上澄みについて、タンパク質中のトリプトファン残基を測定対象とする励起波長280nmで励起を行い、得られた蛍光スペクトルの極大蛍光波長およびその蛍光強度を測定した。
(チトクロムcの凝集体の再生に用いた再生剤)
・N4444・dhpの水和物(1:3)
・P44412・dhpの水和物(1:3)
・P4448・dhpの水和物(1:3)
(リゾチームの凝集体の再生に用いた再生剤)
・P6666・dhpの水和物(1:3)
・P4448・dhpの水和物(1:3)
(フルクトースデヒドロゲナーゼの凝集体の再生に用いた再生剤)
・P44412・dhpの水和物(1:3)
その結果、いずれのサンプルについても凝集タンパク質の溶解(可溶化)が確認された。
続いて、溶解(可溶化)した上記各タンパク質について、常法に従って、活性が回復しているかどうかを確認した。その結果、いずれのサンプルについても、活性の回復が確認された。なお、溶解(可溶化)したフルクトースデヒドロゲナーゼについては、還元剤であるβ−メルカプトエタノールを10mMの濃度でサンプルに添加することにより活性の回復が促進された。
このように、本発明に係るイオン結合性塩を用いて処理することで、種々の凝集タンパク質について、可溶化(溶解)の実現のみならず、各タンパク質の本来の活性を回復することができることがわかる。つまり、本発明に係るイオン結合性塩は、凝集タンパク質の種類にかかわらず、溶解およびリフォールディングを一貫して行うことが可能な系として機能することが明確に実証された。なお、フルクトースデヒドロゲナーゼについて還元剤(β−メルカプトエタノール)の添加により活性が回復したのは、凝集体の形成時にタンパク質の分子間に生じたジスルフィド結合が還元剤の添加によって切断され、正常なリフォールディングが可能になったことによるものと考えられる。このように、本発明に係るイオン結合性塩は、必要に応じて還元剤と併用することで、リフォールディングおよびそれによる活性の回復をより効率的に行うことが可能となる。
[イオン結合性塩中でのペプチド分子内におけるジスルフィド結合の形成]
本発明に係るイオン結合性塩であるP44412・dhpの水和物(1:3)中に、ジスルフィド結合が還元された状態のペプチド(オキシトシン)を5mMの濃度で溶解させた。そこへジスルフィド化剤として機能する酸化剤を添加し、25℃にて1時間反応させた。反応の前後におけるサンプルをそれぞれHPLCにて分析したところ、ペプチド分子内においてジスルフィド結合が形成されていることが確認された。このことから、本発明に係る凝集タンパク質の再生剤(イオン結合性塩)は、凝集タンパク質の溶解およびリフォールディングを達成した後、特に別途の操作を必要とすることなく酸化剤を添加するのみで、必要なジスルフィド結合の形成場としても用いられうることがわかる。
本出願は、2017年11月22日に出願された日本国特許出願第特願2017−225090号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

Claims (15)

  1. 下記一般式(1)または下記一般式(2):
    Figure 0006984828

    式中、
    Xは、窒素原子またはリン原子を表し、
    nは、7〜11の整数を表し、
    pおよびqは、それぞれ独立して2〜14の整数を表し、かつ、|p−q|≧6を満足し、
    x−は、リン酸イオン、リン酸水素イオンおよびリン酸二水素イオンからなる群から選択される対アニオンを表し、xは、前記対アニオンの価数を表す、
    で表されるイオン結合性塩の水和物を有効成分として含有し、
    この際、前記水和物における前記イオン結合性塩と水和水とのモル比が1:1〜1:20であることを特徴とする、凝集タンパク質の再生剤。
  2. 前記対アニオンがリン酸二水素イオンである、請求項に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  3. 前記水和物が前記一般式(1)で表されるイオン結合性塩を有効成分として含有する、請求項1または2に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  4. Xが窒素原子であり、nが8〜10の整数を表す、請求項に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  5. 前記水和物が前記一般式(2)で表されるイオン結合性塩を有効成分として含有する、請求項1または2に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  6. p<qをさらに満足する、請求項に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  7. pが4〜8の整数である、請求項に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  8. Xがリン原子であり、pが3〜5の整数であり、qが9〜13の整数である、請求項に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  9. 前記イオン結合性塩が、下記一般式(3)または下記一般式(4):
    Figure 0006984828

    で表される、請求項1に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  10. 前記水和物における前記イオン結合性塩と水和水とのモル比が1:3〜1:15である、請求項1〜のいずれか1項に記載の凝集タンパク質の再生剤。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の再生剤の存在下で凝集タンパク質を処理することにより前記凝集タンパク質を溶解およびリフォールディングすることを含む、凝集タンパク質の再生方法。
  12. 溶媒としての前記再生剤の存在下で前記凝集タンパク質を処理する、請求項11に記載の凝集タンパク質の再生方法。
  13. 前記再生剤以外の溶媒または添加剤を用いることなく前記凝集タンパク質を処理する、請求項12に記載の凝集タンパク質の再生方法。
  14. リフォールディングされたタンパク質が分子間でジスルフィド結合を形成している場合に、前記タンパク質を還元剤と接触させて、前記ジスルフィド結合を還元することをさらに含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の凝集タンパク質の再生方法。
  15. リフォールディングされたタンパク質が複数のチオール基(−SH基)を有する場合に、前記タンパク質を酸化剤と接触させて、前記複数のチオール基の間にジスルフィド結合を形成することをさらに含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の凝集タンパク質の再生方法。
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