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JP7065182B2 - 茶の病害虫防除方法 - Google Patents
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JP7065182B2 - 茶の病害虫防除方法 - Google Patents

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Description

本発明は、茶樹における病害虫を駆除又は防除するための茶の病害虫防除方法に関する。
茶園等の圃場においては種々の病害虫が発生するため、茶樹を健全に栽培するためには病害虫の防除は必要不可欠であり、従来から、茶生産家においては適宜時期に適宜種類、適宜量の薬剤散布を行うことで対応してきた。
このような薬剤散布による茶の防除方法に関しては、例えば特許文献1(特開平7-31350号公報)において、茶樹における枝等に付着する貝殻虫等の駆除又は防除作業において、茶樹中に薬剤を満遍なく且つ能率よく短時間で散布するための装置として、把部を備えた略円弧状基板の下面に多数のノズルを突設し、各ノズルに薬剤を供給するようにしてなる、茶樹に対する薬剤の散布装置が開示されている。
また、特許文献2(特開平7-289057号公報)には、茶畝に沿って移動され茶葉を摘み採る摘採機構と茶樹に対し薬剤を付着させる薬剤付着手段とを一体に構成し、摘採機構が茶葉を摘み採った直後に、薬剤付着手段が茶樹の摘採切口に薬剤を付着させるようにした茶葉摘採装置による茶樹の病害虫防除方法が開示されている。
ところで、化学肥料や農薬などの薬剤を用いた防除方法は、人体の健康への悪影響や環境汚染が懸念されることから、近年では、化学肥料や農薬を全くまたは殆ど使わずに、病虫害を防除する方法が検討されている。特にお茶に関しては、日本では茶に対して現在約100種の農薬成分が設定されている一方、諸外国においては、農薬成分が認可されていなかったり、残留農薬基準が著しく低く設定されていたりすることが多いため、茶の輸出を考えると、農薬を使わない防除方法を検討することが急務であった。
農薬を使わない防除方法に関しては、例えば特許文献3(特開2016-152794号公報)には、特別な整備を施した圃場に温水を散布すると共に、害虫の卵や幼虫、成虫が農作物の葉に付着している場合に有機農法用溶液を葉面に散布することによって、病虫害を防除する温水防除方法が開示されている。
特許文献4(特開2016-158522号公報)には、圃場における嫌湿性病害虫の寄生環境の至近位置に、濡れ程度センサを設け、この濡れ程度センサの検出値に応じ、圃場に散水を行い、嫌湿性病害虫の忌避状況および/または生存しにくい状況を現出させるようにしたことを特徴とする嫌湿性病害虫の防除方法が開示されている。
特許文献5(特開2011-212012号公報)には、植物苗を囲む処理空間内に、所要温度に調整した飽和水蒸気流を、前記植物苗の上側を水平に流動するように生成させ、当該飽和水蒸気流中に前記植物苗を、熱傷害を受けない範囲内の時間だけ曝しておくことを特徴とする、植物苗の病害虫防除方法が開示されている。
また、非特許文献1には、いちごなどの植物を、数十秒から数分間、40~50℃の高温にすると、植物はさまざまな反応を起こし、病害に対する抵抗性が誘導され、例えば、うどんこ病などの病気に掛りにくくなる現象があることが開示されている。
特開平7-31350号公報 特開平7-289057号公報 特開2016-152794号公報 特開2016-158522号公報 特開2011-212012号公報
佐藤達雄「熱ショック処理を使った植物の病害防除について」野菜情報.2013年2月号
永年作物の中でも、お茶は特殊な作物であり、茶葉を年に複数回収穫するという特徴を有している。摘採時期は、地方によっても異なり、例えば静岡県でいえば、4月中旬から5月中旬の間に一番茶の摘採を行った後、一番茶摘採後45~50日間ほど経過し次の芽が伸びてくるのを待ってから二番茶を摘採し、その後に秋まで約3ヶ月待ってから秋冬番茶を摘採するのが通常である。
このように1年の間に複数回収穫する茶樹に関しては、摘採する時期ごとに複数回の防除を行う必要があるため、三番茶や四番茶、秋冬番茶など後半の摘採時期になると前茶期に散布した農薬が残留し、茶葉に含まれる農薬の種類及び濃度が高くなる場合があった。また、農薬の使用回数が多くなることから、一般的な作物と比較して費用が掛ってしまう場合もあった。そのため、農薬を使わず、効果的な新たな病害虫防除方法が求められていた。
そこで本発明は、農薬を使わない茶の病害虫防除方法であって、茶の病害虫をより効果的に防除することができる新たな茶の病害虫防除方法を提供せんとするものである。
本発明は、飽和水蒸気と大気とを体積比1:1~1:4で混合した湿潤空気(「混合冷却水蒸気」と称する)を、茶葉乃至茶樹に接触させる処理を行うことを特徴とする茶の病害虫防除方法を提案する。
本発明が提案する茶の病害虫防除方法によれば、農薬を使わないでも、飽和水蒸気と大気とを混合して得ることができる混合冷却水蒸気を利用して効果的に茶の病害虫を防除することができる。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本防除方法>
本発明の実施形態の一例に係る茶の病害虫防除方法(「本防除方法」と称する)は、飽和水蒸気と大気とを体積比1:1~1:4で混合して得られる混合冷却水蒸気を、茶葉乃至茶樹に接触させる処理を行うことを特徴とする茶の防除方法である。
(対象とする茶)
本防除方法が対象とする茶としては、摘採した茶葉もしくは茶葉の加工物を液体に抽出し、その液体を飲用することを目的として栽培する茶であればよい。摘採した茶葉を食用することを目的として栽培する茶であってもよい。
具体的には、例えば煎茶、碾茶、玉露、烏龍茶、紅茶、その他飲料用の茶を栽培する茶を挙げることができる。
本防除方法は、特に「茶園」のような大規模生産に適した技術である。具体的には茶園面積が1ha以上の規模の茶園に適した技術である。例えば、水をシャワーしたり、温水を散布したりする方法では、茶園に多量の水を散布することになるため、設備的に困難であるばかりか、水はけ、水量過多による湿害が発生し、新芽の生育が悪くなり、収量・品質ともに低下し、成葉が黄化落葉する可能性がある。これに対し、本防除方法は水蒸気を使用するため、後述するように水の散布量を抑えることができ、かかる課題を解決することができる。
(対象とする病害、虫害)
本防除方法が対象とし得る病害としては、例えば炭そ病、輪斑病、赤葉枯病、網もち病、白星病などを挙げることができる。虫害の虫種としては、例えばチャノミドリヒメヨコバイ(以下、ウンカと示す)、カンザワハダニ、クワシロカイガラムシ、チャノキイロアザミウマ、チャノコカクモンハマキ、チャノホソガなどを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
(飽和水蒸気)
飽和水蒸気は、水道水、井戸水などの任意の水を使用して作製した水蒸気であればよい。必要に応じて、薬剤を添加した水を使用して作製した水蒸気であってもよい。
飽和水蒸気は、市販の蒸気ボイラーによって製造することができ、0.1~1.0MPaで98~180℃の飽和水蒸気を用いるのが好ましく、中でも0.1~0.5MPaで99~140℃、その中でも0.1MPaで100℃の飽和水蒸気を用いるのがさらに好ましい。
(大気)
大気は、通常の空気であればよく、気温によって大気の温度が変わってもよい。飽和水蒸気と大気との混合比率を調整することで、混合冷却水蒸気の温度を調整することができるからである。
(混合冷却水蒸気)
上記飽和水蒸気と、上記大気とを体積比1:1~1:4で混合して混合冷却水蒸気を作製するのが好ましく、中でも1:1~1:3、その中でも1:1~1:2で混合して混合冷却水蒸気を作製するのがさらに好ましい。
このようにして作製された混合冷却水蒸気は、霧状の水である。
より具体的には、例えば、蒸気ボイラーで製造された飽和水蒸気と、外部から取り込んだ空気(大気)とを、チャンバー内で混合すればよく、チャンバー内の圧力は0.1~1.0MPa、中でも0.1以上或いは0.5以下、その中でも0.1以上或いは0.2以下に調整するのが好ましい。
上記割合で混合した混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させることによって、過剰な水分を付着させることなく、病気及び害虫の防除が可能となる。
混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させる方法は、温水に漬けたり、シャワーリングしたりすることによる防除方法に比べ、所定時間処理後には周辺の空気により急速に冷却されるため、熱傷害が発生しやすい茶の新芽や葉の端部に特に効果的である。
(茶葉乃至茶樹に混合冷却水蒸気を接触させる方法)
混合冷却水蒸気は、少なくとも茶樹及び茶葉のうち、葉層表面部分の茶葉に接触させるのが好ましく、さらには摘採対象となる芽部分の茶葉に混合冷却水蒸気を接触させるのも好ましい。
葉層表面部分の茶葉に混合冷却水蒸気を接触させることで、芽の周囲に存在しその成長や品質に影響を与える病気の分生子や害虫を防除することができる。また、摘採対象となる芽部分の茶葉に混合冷却水蒸気を接触させることで、直接的に芽の防除を行うことができる。
中でも、茎の切断面にも混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましく、毛茸が存在する若い葉にも混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましい。また、一般的に「親葉」と称される摘採面より下にある硬化が進んだ葉にも混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましく、さらに枝に混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましく、さらには幹にも混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましい。
混合冷却水蒸気を茎の切断面に接触させることで輪斑病の防除を効果的に行うことができ、毛茸が存在する若い葉にも接触させることで炭そ病の防除を効果的に行うことができる。また、混合冷却水蒸気を親葉や枝、幹にも混合冷却水蒸気を接触させることで、それらに付着している分生子や害虫を防除することができる。
茶葉に接触させる接触時間は、1秒~10秒とするのが好ましく、中でも2秒以上或いは8秒以下、その中でも3秒以上或いは6秒以下であるのが特に好ましい。
なお、接触時間とは、混合冷却水蒸気が茶葉乃至茶樹と接触する時間、言い換えれば、茶葉乃至茶樹の同じ箇所に混合冷却水蒸気を噴霧する時間を云い、特に混合冷却水蒸気が、好ましい所定の温度、例えば45~55℃の状態で茶葉乃至茶樹と接触する時間の意味である。
例えば、次に説明するように、トラクターなどの自走装置の横に前後に渡って散布手段を設けておき、当該自走装置を移動させながら茶樹に対して混合冷却水蒸気散布装置を散布する場合には、トラクターの前方から後方までの通過時間が、前記所定の温度に保たれた混合冷却蒸気が接触する時間、つまり接触時間となる。
茶葉乃至茶樹に混合冷却水蒸気を接触させる具体的手段としては、例えばトラクターなどの自走装置に、蒸気ボイラー及びチャンバー及び散布手段を備えた混合冷却水蒸気作製散布装置を搭載し、当該自走装置を移動させながら茶樹に対して混合冷却水蒸気散布装置を散布して、混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させる方法を挙げることができる。但し、このような方法に限定するものではない。
茶葉乃至茶樹に混合冷却水蒸気を接触させる量としては、1m当りの茶葉乃至茶樹に対し、100~3000L/minの混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましく、中でも120L/min以上或いは1500L/min以下、その中でも150L/min以上或いは1000L/min以下の混合冷却水蒸気を接触させるのがさらに好ましい。
また、1m当りの茶葉乃至茶樹に対し、50~1000L/minの飽和水蒸気に相当する量の混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましく、中でも160L/min以上或いは800L/min以下、その中でも170L/min以上或いは500L/min以下の飽和水蒸気に相当する量の混合冷却水蒸気を接触させるのがさらに好ましい。
また、1m当りの茶葉乃至茶樹に対し、水分量として20~300gの混合冷却水蒸気を接触させるのが好ましく、中でも30g以上或いは200g以下、その中でも40g以上或いは100g以下の混合冷却水蒸気を接触させるのがさらに好ましい。
上述したように、本防除方法は、水をシャワーしたり、温水を散布したりする方法に比べて、茶園に散布する水分量を抑制することができるため、設備的に簡易なものでよいばかりか、水はけ、水量過多による湿害の発生を抑制し、新芽の生育が悪くなるのを防ぐことができるため、収量・品質の低下を防ぐことができ、さらには成葉の黄化落葉なども抑制することができる。
(防除処理時期)
炭そ病や輪斑病などを効果的に防除する観点から、上記の混合冷却水蒸気を茶葉に接触させる処理(「本防除処理」と称する)は、茶葉の摘採若しくは整枝を行った時から2週間以内、中でも1週間以内、その中でも1日以内に実施するのが好ましい。
なお、上記茶葉の摘採とは、茶葉を収穫するための摘採であれば特に限定するものではない。中でも、一番茶又は二番茶を収穫するための摘採であるのが好ましい。
また、上記茶葉の整枝とは、茶葉を摘採した後に行う摘採面の刈込作業を意味する。中でも一番茶摘採後の整枝又は二番茶摘採後の整枝であるのが好ましい。
以上の中でも、1番茶の摘採後、2番茶の摘採前に本防除処理を適用するのが好ましい。但し、1番茶の摘採前に行ってもよいし、また、2番茶の摘採後に行ってもよい。
その中でも、1番茶の摘採又は整枝当日~14日の間に本防除処理を実施するのが好ましく、その中でも摘採又は整枝当日~7日の間、その中でも摘採又は整枝当日~3日以下の間に本防除処理を実施するのがより一層好ましい。
摘採又は整枝することによって茶樹には傷がつくため、その傷口から輪斑病の分生子などが入り込むことがある。そのため、茶摘採又は整枝後すぐに防除するのが好ましく、萌芽前の炭そ病の分生子の低減、ウンカの低減も行うことができる。
さらに、炭そ病やウンカなどを発生防止する観点からすると、これらに最も効果的な二番茶芽が萌芽する一番茶摘採日又は整枝日から10日~25日の間、中でも摘採日又は整枝日から15日~20日の間に実施するのが特に好ましい。
他方、輪斑病などを予防する観点からすると、輪斑病の感染源となりやすい摘採機の刃による付傷部が感染部になるため、上記処理すなわち混合冷却水蒸気を茶葉に接触させる処理を、茶葉の摘採若しくは整枝を行った時から24時間以内、中でも18時間以内、その中でも12時間以内に実施するのが好ましい。
<茶の生産方法>
本防除方法を適用しながら茶樹を育成し、一番茶(3~5月)、二番茶(6~7月)、三番茶(7~8月)、秋冬番茶(秋)のうちの2~4期間、間隔をおいて摘採を行えばよい。
例えば鹿児島県であれば、一番茶の摘採時期は、4月中旬から5月下旬であり、一番茶摘採後45~50日間ほど経過し次の芽が伸びてくるのを待ってから二番茶を摘採し、二番茶摘採後40~45日間で三番茶を摘採し、三番茶摘採後50~60日間で四番茶を摘採するのが通常である。
摘採した茶葉は、荒茶工場において、蒸気で蒸して茶生葉に含まれる酸化酵素を不活性化(殺青)させた後、粗揉、揉捻、中揉及び精揉等によって揉込み、乾燥させる一連の工程を経て荒茶に加工した後、用途に合わせてさらに加工すればよい。
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
<試験1>
飽和水蒸気と大気との混合割合を変化させて混合冷却水蒸気を作製し、混合冷却水蒸気を茶樹及び茶葉に接触させた際の防除効果を検証した。
静岡県内の圃場で、茶品種「やぶきた」に対して、混合冷却水蒸気を茶防除に用いられる市販のノズル(20頭口)を使用して、表1に示した混合冷却水蒸気を茶樹及び茶葉に対して、表1に示した処理時間だけ噴射する防除処理を、2番茶摘採後24時間以内(6月13日)に実施した。
この際、混合冷却水蒸気は、市販のボイラーSB-110(丸文製作所製)を用いて作製した0.1MPaで100℃の飽和水蒸気と、0.1MPaで15℃の大気を、チャンバー内で体積比1:1~1:4の割合で混合し、ノズルから放出される蒸気大気の混合気体の温度を計測し、その計測された温度を基に混合器で取り込む大気量を調整して目的の混合冷却水蒸気を得た。
また、茶葉の葉面温度は、赤外線放射温度計(SK-8700II、佐藤計量器製作所製)を用い、葉層表面に位置している親葉の表面温度を測定した。後述する場合も同様である。
なお、表に示した「飽和水蒸気量(L/min)」「外気量(L/min)」は、1分間に0.1MPa(大気圧)の飽和水蒸気及び外気をチャンバー内に供給した量である。
また、表に示した「飽和水蒸気接触量」、「混合冷却水蒸気接触量」、「水分量」はそれぞれ、1m当りの茶葉乃至茶樹に対して噴射した単位時間当たりの体積又は質量である。後述する場合も同様である。
そして、3番茶摘採日(7月29日)において、「炭そ病」、「輪斑病」及び「害虫」の発生の有無を観察し、それぞれ発生しなかった場合「〇(good)」と判定し、発生が確認された場合「×(poor)」と判定した。
Figure 0007065182000001
<結果>
上記実施例及びこれまで本発明が行ってきた試験結果から、飽和水蒸気と大気とを体積比1:1~1:4で混合して得た混合冷却水蒸気を茶樹及び茶葉に接触させると、茶の病害虫を防除することができることが分かった。
<試験2>
飽和水蒸気と大気との混合割合を変化させて混合冷却水蒸気を作製し、混合冷却水蒸気を茶樹及び茶葉に接触させた際の処理頻度と、害虫防除効果との関係を検証した。
静岡県内の圃場で、茶品種「やぶきた」に対して、試験1同様に作製した混合冷却水蒸気を、試験1と同様に茶樹及び茶葉に対して、表2に示した処理時間だけ噴射する処理を、二番茶摘採後から、10日おきに計11回実施した(6月13日~10月13日)。
処理期間中の8月22日に、各試験区に害虫トラップ(Bug-Scan、Biobest社製、10cm×13cm)を3箇所ずつ設置し、10月13日に回収した。その後トラップに付着した害虫の数をカウントし、茶樹乃至茶葉への害虫防除効果を検証した結果を表2に示す。
なお、害虫については、茶葉乃至茶樹において代表的な害虫であるチャノミドリヒメヨコバイを選択し、各試験区に設置した3箇所の害虫トラップに付着したチャノミドリヒメヨコバイの平均個体数から害虫防除効果の有無を判断した。
Figure 0007065182000002
<結果>
混合冷却水蒸気を茶樹及び茶葉に接触させたすべての試験区において、慣行防除を行った試験区よりもチャノミドリヒメヨコバイの平均個体数が減少していることから、飽和水蒸気と大気とを体積比1:1~1:4で混合して得た混合冷却水蒸気を茶樹及び茶葉に接触させることで防虫効果が得られることが確認された。
<試験3>
混合冷却水蒸気を茶葉と接触させる防除処理を実施する好適な時期について検証した。
静岡県内の圃場で、茶品種「やぶきた」に対して、飽和水蒸気と大気とを体積比1:2で混合して得た混合冷却水蒸気を、試験1と同様に茶樹及び茶葉に対して6秒間噴射する防除処理を、一番茶摘採(4月23日)後に摘採面を均す目的で整枝を行ってから24時間以内(5月7日)、一葉期(5月21日)、三葉期(6月13日)にそれぞれ実施した。
そして、二番茶の摘採日(6月26日)において、やぶきたでは二番茶に発生しやすい「炭そ病」、やぶきたに感受性が高い「輪斑病」及び「害虫」の発生の有無を観察し、それぞれ発生しなかった場合「〇(good)」と判定し、発生が確認された場合「×(poor)」と判定した。
なお、上記混合冷却水蒸気は、市販のボイラーSB-110(丸文製作所製)を用いて生成した0.1MPaで100℃の飽和水蒸気と、0.1MPaで10℃の大気を、チャンバー内で体積比1:2の割合で混合して作製した。
Figure 0007065182000003
<結果>
試験区16~22は、試験区24の慣行防除と同等の防除効果を得ることができ、混合冷却水蒸気を茶葉と接触させる防除処理をどの時期に行っても有効であることが確認できた。
これに対し、未処理区である試験区23は、二番茶となる1芯4~5葉はウンカの被害が顕著で9割が被害を受けた。そのため、直接的に炭そ病、輪斑病の発生を確認できなかったが、周囲の畑では慣行防除が不十分であった畝の端などで炭そ病、輪斑病の発生が見られた。炭そ病は雨滴による分生子の飛散、輪斑病は降雨による分生子の分散や摘採機への分生子の付着により拡がることを考えると、混合冷却水蒸気を茶葉に接触させる防除処理は有効であることが分かった。
次に、各病害の発病までの流れと、蒸気防除が最も好ましい時期について検討した。
炭そ病は、若い芽にある毛茸から感染する病害であり、毛茸への付着後14~20日(最短で8~15日)の潜伏期間後に発病する。
このような炭そ病の防除方法は、毛茸がある芽の開葉期(一番茶摘採又は整枝から二週間以内)に行うことが最も有効であることが分かった。
他方、輪斑病は、主に摘採時の付傷面から感染する病害である。分生子は付着後2~3時間で発芽し、5~10日の潜伏期間後発病する。従来の慣行防除では、摘採後1日以内に防除(薬剤散布)を行う必要があり、期間が開くほど効果が減ると言われてきた。
輪斑病の防除については、摘採又は整枝から1日以内に行うのが最も有効であると考えることができる。
ウンカは、若い芽のみ吸汁を行うため、芽の開葉期(一番茶摘採から二週間以内)に行うことが最も有効である。
混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させる防除処理は、上記の期間外(試験区17,18など)に行っても効果が出ており、これらについては次のように考えることができる。
農薬は大きく分けると「予防剤」「治療剤」を散布することになる。上記の摘採から1日以内、一番茶から2週間以内などはいずれも「予防」を目指すものであり、発病を予防することが良い品質の茶葉を得ることに繋がるとの考え方による。しかし、防除を行っても発病することがあるため慣行防除では治療剤を使うが、農薬は使用時期が明確に決まっており、予防剤は一般的には二番茶摘採の30日前まで、治療剤は一般的には二番茶摘採の14日前までしか使えない。そのため、これまで摘採の一定期間前には農薬を散布できず病害が拡がってしまっていた。しかし、混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させる防除処理によれば、農薬を用いないため、必要な時期に処理することができる。
<試験4>
最も外部環境に弱い1番茶の萌芽期に混合冷却水蒸気を茶樹に対して散布し、熱傷害を生じない条件を検証した。
静岡県内の圃場で、茶品種「やぶきた」に対して、混合冷却水蒸気を茶防除に用いられる市販のノズル(20頭口)を使用して、3秒~10秒間、茶樹及び茶葉に対して噴射し、熱傷害の有無を観察した。
この際、混合冷却水蒸気は、下記表4のように、市販のボイラーSB-110(丸文製作所製)を用いて生成した0.1MPaで100℃の飽和水蒸気と、0.1MPaで10℃の大気を、チャンバー内で体積比1:1~1:4の割合で混合して調製した。ノズルから放出される蒸気大気の混合気体の温度を計測し、その計測された温度を基に混合器で取り込む大気量を調整して目的の混合冷却水蒸気を得た。
また、茶葉の葉面温度は、赤外線放射温度計(SK-8700II、佐藤計量器製作所製)を用い、葉層表面に位置している親葉の表面温度を測定した。
熱傷害の有無の判定は、葉が溶けるように落ちたり、又は葉が赤黒く変色し落ちたりするなど、葉の成長が進まずに落葉してしまった状態が観察された場合、熱傷害「有り」と判定し、一部のみにそのような状態が観察された場合、熱傷害「一部有り」と判定し、そのような状態がどこにも観察されなかった場合、熱傷害「無し」と判定した。
Figure 0007065182000004
<結果>
飽和水蒸気と大気を、体積比1:1~1:4の割合で混合した混合冷却水蒸気を接触させた場合には、長時間(10秒)当てても熱傷害を発生しなかったのに対し、飽和水蒸気と大気を体積比1:1の割合で混合した混合冷却水蒸気を接触させた場合は、10秒で一部熱傷害が発生した。また体積比1:0.8で混合した混合冷却水蒸気は60℃を超えてしまうため、より短時間で熱傷害が発生した。

Claims (7)

  1. 飽和水蒸気と大気とを体積比1:1~1:4で混合した湿潤空気(「混合冷却水蒸気」と称する)を、茶葉乃至茶樹に接触させる処理を行うことを特徴とする茶の病害虫防除方法。
  2. 1m当りの茶葉乃至茶樹に対し、50~1000L/minの飽和水蒸気に相当する量の混合冷却水蒸気を接触させることを特徴とする請求項1に記載の茶の病害虫防除方法。
  3. 1m当りの茶葉乃至茶樹に対し、100~3000L/minの混合冷却水蒸気を接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載の茶の病害虫防除方法。
  4. 1m当りの茶葉乃至茶樹に対し、水分量として20~300gの混合冷却水蒸気を接触させることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の茶の病害虫防除方法。
  5. 混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させる時間が1~6秒であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の茶の病害虫防除方法。
  6. 前記混合冷却水蒸気を茶葉乃至茶樹に接触させる処理を1~14日おきに2回以上行うことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の茶の病害虫防除方法。
  7. 飽和水蒸気と大気とを体積比1:1~1:4で混合した混合冷却水蒸気を、茶葉乃至茶樹に接触させる処理を行うことを特徴とする茶の生産方法。
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