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JP7089236B2 - 既設鋼構造物のき裂補修方法 - Google Patents
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JP7089236B2 - 既設鋼構造物のき裂補修方法 - Google Patents

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Description

本開示は、例えば、主要な部材が鋼材である既存の橋梁や建築物等の既設鋼構造物に生じたき裂の補修に用いるのに好適な既設鋼構造物のき裂補修方法に関するものである。
従来、橋梁や建築物等の既設構造物に、経年劣化や金属疲労によってき裂が発生した場合には、例えば、入熱量が少なくて済むレーザ光を用いた溶接補修装置を採用している。この溶接補修装置では、き裂が生じている溶接補修箇所にレーザ溶接を実施することで、この溶接補修箇所を溶融させてき裂を消去するようにしていた(特許文献1参照)。
特許第5860264号公報
ところが、上記したレーザ溶接によるき裂補修方法において、橋梁や建築物等の既設鋼構造物が、例えば、多くの炭素に加えて硫黄及びリンが含まれている古い構造物鋼材から成っている場合には(特別な施工条件によっては)、溶接部のじん性値に低下が生じてしまうことが知られている。
したがって、上記したような古い構造物鋼材から成る既設鋼構造物のき裂補修で且つじん性値の低下が厳しく制限されるき裂補修には、低入熱量のレーザ溶接を用いることが難しいという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっている。
本開示は、上記したような従来の課題を解決するためになされたものである。例えば、既設鋼構造物が多くの炭素、硫黄、リンを含んでいる構造物鋼材から成っている場合であったとしても、じん性値を低下させることなく既設鋼構造物に生じているき裂をレーザ溶接により溶融して除去することが可能である既設鋼構造物のき裂補修方法を提供することを目的としている。
本開示の第1の態様は、溶加材を用いて既設鋼構造物に生じたき裂を補修するき裂補修方法であって、前記既設鋼構造物に生じた前記き裂に対して前記溶加材を用いて肉盛り溶接を行う肉盛り溶接工程と、前記肉盛り溶接工程の肉盛り溶接による溶加材肉盛り部及び前記き裂に対してレーザ光貫通溶接を実施するレーザ光貫通溶接工程を経る構成としている。
本開示の既設鋼構造物のき裂補修方法では、まず、肉盛り溶接工程に先立って、き裂補修後の補修溶接部に求められるじん性値に応じて、溶加材の成分及び溶加材の添加量を決定する。この溶加材に係る成分及び添加量は、データベースに格納した過去のデータを活用して決定してもよいし、補修の都度行う試験によって得られるデータを採用して決定してもよい。
次いで、肉盛り溶接工程において、上記のように決定した成分の溶加材を決定した量だけ添加しつつ既設鋼構造物に生じたき裂に対して肉盛り溶接を行う。
そして、この肉盛り溶接の後、レーザ光貫通溶接工程において、先の肉盛り溶接工程における肉盛り溶接による溶加材肉盛り部及びき裂に対して、レーザ光によって入熱量が低い貫通溶接を実施する。このように入熱量が低い貫通溶接を実施すると、既設鋼構造物を構成する構造物鋼材が多くの炭素、硫黄、リンを含んでいる場合であったとしても、じん性値を低下させることなくき裂を溶融して除去し得ることとなる。
つまり、古い構造物鋼材から成る既設鋼構造物のき裂補修のように、じん性値の低下が生じるような施工条件においても、じん性値を低下させることなくき裂を除去し得ることとなる。
本発明に係る既設鋼構造物のき裂補修方法によれば、じん性値の低下が生じるような施工条件であったとしても、じん性値を低下させることなく既設鋼構造物に生じているき裂をレーザ溶接により溶融して除去することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
本発明の一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法で用いるレーザ溶接装置を概略的に説明する模式図である。 本発明の一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法における肉盛り溶接工程後のレーザ光貫通溶接工程を示す断面説明図である。 本発明の一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法におけるレーザ光貫通溶接工程後を示す断面説明図である。 本発明の他の実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法における肉盛り溶接工程後のレーザ光貫通溶接工程を示す断面説明図である。 本発明の一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法で得られる補修溶接部における効果を示す入熱量と吸収エネルギ比との関係を説明するグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法で用いるレーザ溶接装置を示している。
図1に概略的に示すように、このレーザ溶接装置1は、既設鋼構造物を構成する構造物鋼材W、例えば、橋梁の主桁に用いられるI型鋼の腹板に生じたき裂Waを溶接により補修するものである。このレーザ溶接装置1は、図外のレーザ発振器から光ファイバ5を介して供給されるレーザ光Lを集光する光学系3を内蔵したレーザヘッド4を備えている。このレーザヘッド4は、光学系3で集光したレーザ光Lをき裂Waが生じている補修箇所に照射する。このほか、このレーザ溶接装置1は、図示はしないが、レーザヘッド4を補修箇所に沿って(図示例では奥行き方向に沿って)移動させると共に補修箇所に接近離間させる駆動部と、制御部を備えている。制御部は、溶接速度,レーザ出力及びスポット径等をコントロールする。
また、このレーザ溶接装置1は、ワイヤ送給機構10を備えている。このワイヤ送給機構10は、ワイヤ送給ドラム11と、このワイヤ送給ドラム11から連続して送給されるフィラーワイヤ(溶加材)FWを補修箇所に送り込むワイヤホルダ12を具備している。
なお、このワイヤ送給機構10において、図示はしないが、ワイヤ電源を備えたホットワイヤ送給機構としてもよい。この場合には、ワイヤ電源によりフィラーワイヤFWを補修箇所近傍で加熱することができる。
次に、このように構成されたレーザ溶接装置1を用いて行う本発明の一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法を説明する。
この実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法は、低入熱量のレーザ光Lを用いた溶融補修によってき裂Waをなくす方法である。すなわち、レーザ溶接を採用することによって構造物鋼材Wの溶融量を少なく抑えつつ、補修溶接部のじん性値の低下を抑えることを主たる特徴としている。
なお、この実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法が対象とする「き裂」は、疲労き裂に代表される「貫通き裂」であるが、この「貫通き裂」に限定されない。
そこで、まず、肉盛り溶接工程に先立って、き裂Waが生じている既設鋼構造物の構造物鋼材Wの化学組成を調べる。なお、既設鋼構造物の構造物鋼材Wの化学組成が既知である場合には、この作業を省略してもよい。
次に、き裂補修後の補修溶接部に求められるじん性値に応じて、フィラーワイヤFWの成分及びフィラーワイヤFWの添加量を決定する。このフィラーワイヤFWに係る成分及び添加量の決定は、データベースに格納した過去のデータを活用してもよいし、補修の都度行う試験によって得られるデータを採用してもよい。
なお、フィラーワイヤFWには、既設鋼構造物を構成する母材である構造物鋼材Wと同じ種類のものを用いることが望ましいが、特に限定はしない。
次いで、肉盛り溶接工程において、構造物鋼材Wに生じたき裂Waの部分に対して、上記のように決定した成分のフィラーワイヤFWを決定した添加量でワイヤホルダ12を介して送給する。このようにフィラーワイヤFWを送給しつつ、レーザヘッド4からレーザ光Lを照射して肉盛り溶接を行う(図1に示す状態)。
この実施形態では、肉盛り溶接工程の溶接にレーザ溶接を採用しているが、これに限定されるものではなく、アーク溶接を採用してもよい。
そして、この肉盛り溶接の後、図2Aに示すように、レーザ光貫通溶接工程において、先の肉盛り溶接工程における肉盛り溶接による溶加材肉盛り部FW1及びき裂Waに対して、レーザヘッド4からレーザ光Lを照射して入熱量が低い貫通溶接を実施する。このように入熱量が低い貫通溶接を実施すると、図2Bに示すように、溶加材肉盛り部FW1が溶け込んだ補修溶接部Wbにより、じん性値の低下が生じることなくき裂Waの補修が成されることとなる。
つまり、既設鋼構造物を構成する構造物鋼材Wが多くの炭素、硫黄、リンを含んでいる場合でも、じん性値を低下させることなくき裂Waを除去することができる。すなわち、じん性値の低下が生じるような施工条件においても、じん性値を低下させることなくき裂Waを除去することができる。
この実施形態では、肉盛り溶接工程において、構造物鋼材Wに生じたき裂Waの部分に対して肉盛り溶接を行う場合、構造物鋼材Wの平面上に溶加材肉盛り部FW1を形成するようにしている。
しかしながら、構造物鋼材Wの厚みが大きい場合や、フィラーワイヤFWの添加量が多い場合には、図3に示すようにして肉盛り溶接を行うようにしてもよい。つまり、構造物鋼材Wにディスクグラインダー等の工具により溝Wcを形成して、この溝Wcに対して肉盛り溶接を行うようにしてもよい。
このように、構造物鋼材Wに形成した溝Wc内の溶加材肉盛り部FW1及びき裂Waに対して入熱量が低いレーザ光Lの貫通溶接を実施する肉盛り溶接の場合には、平面上に溶加材肉盛り部FW1を形成する肉盛り溶接の場合と比較して、溶加材肉盛り部FW1の嵩が減る分だけレーザ出力を少なくすることができる。
そこで、上記した一実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法で補修した補修溶接部の母材(構造物鋼材W)に対する吸収エネルギ比(補修溶接部吸収エネルギ(WM(T=0))/母材吸収エネルギ(BM(T=0)))と、比較例の吸収エネルギ比とを比べた。この比較例の吸収エネルギ比は、フィラーワイヤFWを添加した肉盛り溶接を行わずにレーザ光Lの貫通溶接のみを行った補修溶接部の母材(構造物鋼材W)に対する吸収エネルギ比である。この比較により、図4のグラフに示す結果を得た。この際の施工条件を図4のグラフ内に示す。
ここで、吸収エネルギ比は、値が1.0に近づくほど補修溶接部がより母材に近い吸収エネルギを有することになる、すなわち、じん性値が高いことになる。
図4のグラフにおいて、この実施形態による既設鋼構造物のき裂補修方法で補修した補修溶接部の吸収エネルギ比(実施例1,2)をそれぞれ〇印で示し、レーザ光の貫通溶接のみを行った補修溶接部の吸収エネルギ比(比較例)を×印で示した。
図4のグラフに示すように、実施例1,2及び比較例の各補修溶接部への入熱量がほぼ同じであるにもかかわらず、実施例1,2の各補修溶接部の方が、比較例の補修溶接部よりも高い吸収エネルギを有していることが判る。
特に、実施例1の補修溶接部は、比較例の補修溶接部よりも入熱量が多いにもかかわらず、吸収エネルギが0.1も大きい、すなわち、じん性値が高いことが判る。
これらの結果から、この実施形態に係る既設鋼構造物のき裂補修方法では、従来におけるレーザ光の貫通溶接のみを行った補修方法と比較して、じん性値を低下させることなく既設鋼構造物に生じているき裂を除去し得ることが実証できた。
本発明に係る既設鋼構造物のき裂補修方法の構成は、上記した実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
他の構成として、例えば、構造物鋼材に生じたき裂に対して溶加材を用いて肉盛り溶接を行いつつ、溶加材肉盛り部及びき裂に対してレーザ光の貫通溶接を実施する構成とすることが可能である。
本開示の第1の態様は、溶加材を用いて既設鋼構造物に生じたき裂を補修するき裂補修方法であって、前記既設鋼構造物に生じた前記き裂に対して前記溶加材を用いて肉盛り溶接を行う肉盛り溶接工程と、前記肉盛り溶接工程の肉盛り溶接による溶加材肉盛り部及び前記き裂に対してレーザ光貫通溶接を実施するレーザ光貫通溶接工程を経る構成としている。
本開示の既設鋼構造物のき裂補修方法において、レーザには、ファイバーレーザやYAGレーザや半導体レーザを用いるのが一般的であるが、これらのものに限定されない。
本開示の既設鋼構造物のき裂補修方法では、まず、肉盛り溶接工程に先立って、き裂補修後の補修溶接部に求められるじん性値に応じて、溶加材の成分及び溶加材の添加量を決定する。この溶加材に係る成分及び添加量は、データベースに格納した過去のデータを活用して決定してもよいし、補修の都度行う試験によって得られるデータを採用して決定してもよい。
なお、溶加材は、既設鋼構造物を構成する構造物鋼材(母材)と同じ種類のものを用いることが望ましいが、特に限定はしない。
次いで、肉盛り溶接工程において、上記のように決定した成分の溶加材を決定した量だけ添加しつつ既設鋼構造物に生じたき裂に対して肉盛り溶接を行う。
この溶加材を用いた肉盛り溶接において、既設鋼構造物の平坦な母材面に肉を盛ってもよいし、母材面に形成した溝に肉を盛ってもよい。
この肉盛り溶接工程の溶接は特に種類を問わない。レーザ溶接を採用することができるほか、アーク溶接も採用することができる。
肉盛り溶接工程にレーザ溶接を採用する場合のレーザ出力値(kW)は、レーザ貫通溶接を行い得るように決定するが、レーザ貫通溶接を行うためには、レーザ出力密度が少なくとも1(kW/mm2)必要である。
また、肉盛り溶接工程にアーク溶接を採用する場合において、60(定数)×電流×電圧/速度で求められる入熱量(アーク溶接時に外部から溶接部に与えられる熱量;J/cm)は、溶接金属及びその周辺に与える熱影響を少なく抑え得るように決定する。
そして、この肉盛り溶接の後、レーザ光貫通溶接工程において、先の肉盛り溶接工程における肉盛り溶接による溶加材肉盛り部及びき裂に対して、レーザ光によって入熱量が低い貫通溶接を実施する。このように、入熱量が低い貫通溶接を実施すると、既設鋼構造物を構成する構造物鋼材が多くの炭素、硫黄、リンを含んでいる場合であったとしても、じん性値を低下させることなくき裂を溶融して除去し得ることとなる。
つまり、古い構造物鋼材から成る既設鋼構造物のき裂補修のように、じん性値の低下が生じるような施工条件においても、じん性値を低下させることなくき裂を除去し得ることとなる。
本開示の第2の態様は、前記肉盛り溶接工程の肉盛り溶接を前記既設鋼構造物に形成した溝に対して行う構成としている。
このように、肉盛り溶接工程の肉盛り溶接を既設鋼構造物に形成した溝に対して行う肉盛り溶接の場合には、平面上に溶加材肉盛り部を形成する肉盛り溶接の場合と比較して、溶加材肉盛り部の嵩が減る分だけレーザ出力を少なくすることができる。
FW フィラーワイヤ(溶加材)
FW1 溶加材肉盛り部
L レーザ光
W 既設鋼構造物を構成する構造物鋼材
Wa き裂
Wc 溝

Claims (2)

  1. 溶加材を用いて既設鋼構造物に生じたき裂を補修するき裂補修方法であって、
    前記既設鋼構造物に生じた前記き裂に対して前記溶加材を用いて肉盛り溶接を行う肉盛り溶接工程と、
    前記肉盛り溶接工程の肉盛り溶接による溶加材肉盛り部及び前記き裂に対してレーザ光貫通溶接を実施するレーザ光貫通溶接工程を経る既設鋼構造物のき裂補修方法。
  2. 前記肉盛り溶接工程の肉盛り溶接を前記既設鋼構造物に形成した溝に対して行う請求項1に記載の既設鋼構造物のき裂補修方法。
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