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JP7115960B2 - 車両前部構造 - Google Patents
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Description

本発明は、車両前部構造に関する。
特許文献1には、所謂センターポール衝突時及び微小ラップ衝突時にバンパリインフォースメント(以下、バンパRFという)が折れることを抑制するために、バンパRFの車幅方向中央部及び車幅方向両端部近傍にセンタバルク及びサイドバルクをそれぞれ配置した構造が開示されている。ここで、センターポール衝突とは車両の車幅方向中央付近に柱状の物体が前面衝突する場合であり、微小ラップ衝突とは、車両の車幅方向端部が衝突物に対してわずかに重なった状態で前面衝突する場合である。
特開2015-147437号公報
ところで、上記技術では、センターポール衝突時、センタバルクと右側サイドバルクとの間、又はセンタバルクと左側サイドバルクとの間の位置でバンパRFに折れが発生することが考えられる。ここで、上記技術は、左右の位置のうちのどちらが先に折れるかという順序をコントロールするものではない。
しかしながら、バンパRFの後方のパワーユニットやさらに後方のダッシュ部の構造は左右対称ではなく、その構造によってはバンパRFの折れ位置と折れる順序とをコントロールすることで車室の変形量を低減できる可能性がある。したがって、この点において上記技術には改良の余地がある。
本発明は、センターポール衝突時のバンパRFの折れ位置と折れる順序とをコントロールすることで車室の変形量を低減する車両前部構造を提供することを目的とする。
請求項1に記載の車両前部構造は、一対のフロントサイドメンバと、バンパRFと、パワーユニットと、ダッシュ部と、支持部と、を備え、前記バンパRFは、前記一対のフロントサイドメンバの車両前方側端部に接合され、前記パワーユニットは、前記一対のフロントサイドメンバの間、かつ前記バンパRFと車室の間に配置され、前記パワーユニットは、車幅方向の第1方向側に配置された第1装置と、車幅方向の第2方向側に配置された第2装置とを備え、前記第1装置と前記第2装置は連結され、前記ダッシュ部は、前記パワーユニットと前記車室の間に配置され、前記支持部は、前記ダッシュ部と前記第1装置の間に、車両前方側から見て前記第1装置と重複するように配置され、前記バンパRFは、第1低強度部と、第2低強度部と、車幅方向の中央部とを備え、前記第1低強度部及び前記第2低強度部は、前記中央部の車幅方向の両隣に配置され、前記第1低強度部は、車両前方側から見て前記第1装置と重複し、前記第2低強度部は、車両前方側から見て前記第2装置と重複し、前記第1低強度部の車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力は、前記第2低強度部よりも低く、前記第2低強度部の前記車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力は、前記中央部よりも低く、前記第1低強度部の硬度は、前記中央部よりも低く、前記第2低強度部の硬度は、前記中央部よりも低い。
請求項1に記載の車両前部構造では、バンパRFが一対のフロントサイドメンバの車両前方側端部に接合されている。一対のフロントサイドメンバの間には、バンパRFと車室の間にパワーユニットが配置されている。このパワーユニットは、車幅方向の第1方向側に配置された第1装置と車幅方向の第2方向側に配置された第2装置とが互いに連結されて構成されている。パワーユニットと車室の間にはダッシュ部が配置され、このダッシュ部とパワーユニットの第1装置の間には、支持部が配置されている。この支持部は、車両前方側から見てパワーユニットの第1装置と重複するように配置されている。このため、仮に第1装置が車両後方に移動した場合には、第1装置は支持部によって支持される。
バンパRFには、車幅方向の中央部と、中央部の車幅方向の両隣に配置された第1低強度部と、第2低強度部とが設けられている。第1低強度部は、車両前方側から見てパワーユニットの第1装置と重複するように配置されている。また、第2低強度部は、車両前方側から見てパワーユニットの第2装置と重複するように配置されている。ここで、第1低強度部の車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力は、第2低強度部よりも低く設定され、第2低強度部の車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力は、中央部よりも低く設定されている。また、第1低強度部の硬度及び第2低強度部の硬度は、中央部よりも低くなっている。
ここで、センターポール衝突時に、仮に第2装置と対向する第2低強度部が最初に折れる場合、第2低強度部が衝突荷重を伝達する装置は、支持部と対向している第1装置ではなく、第2装置である。このため、第1装置に衝突荷重が伝達される場合と比べて、第1装置と第2装置との連結部分の剪断入力が大きくなる。すると、第1装置と第2装置との連結が解除され(換言するとパワーユニット割れが発生し)、第2低強度部からの衝突荷重を受ける第2装置のみが車室側へ移動することで、ダッシュ部に対して局所的に荷重が伝達され、ダッシュ部の変形量が増大してしまうおそれがある。
そこで、本発明の車両前部構造では、バンパRFに中央部よりも曲げ耐力が低く設定された第1低強度部及び第2低強度部が設けられ、第2低強度部の曲げ耐力が第1低強度部の曲げ耐力よりも相対的に高く設定されている。すなわち、バンパRFにおいて最も曲げ耐力が低いのは、第1低強度部である。これにより、センターポール衝突時に第1低強度部が最初に折れ、次に第2低強度部が折れるように設定されている。また、第1低強度部が車両前方側から見て第1装置と重複するように配置されているので、センターポール衝突時に最初に折れる第1低強度部から衝突荷重を受ける第1装置は、車両後方に移動したときに支持部に支持される。
つまり、車両後方に移動したときに支持部に支持される装置と、最初に折れる第1低強度部が衝突荷重を伝達する装置とが同一の装置であるため、第1装置と第2装置との連結部分に発生する剪断入力が増大しない。その結果、パワーユニット割れが抑制される。
さらに、パワーユニット割れが抑制されることで、第1低強度部におけるパワーユニットからバンパRFへの反力が増大する。このため、バンパRFの第2低強度部での折れが発生しやすくなる。第2低強度部での折れが発生すると、バンパRFにおける第1低強度部及び第2低強度部の間の範囲(中央部)でパワーユニットを車両後方へ押すこととなり、衝突荷重を車幅方向に分散できる。その結果、ダッシュ部に対する局所的な入力を抑制でき、以って車室の変形を抑制することができる。
請求項2に記載の車両前部構造は、請求項1において、前記バンパRFは、鋼製であり、前記中央部の硬質マルテンサイト組織の割合は、前記第1低強度部と前記第2低強度部のいずれよりも高い。
請求項2に記載の車両前部構造では、バンパRFは、鋼製であり、中央部の硬質マルテンサイト組織の割合は、第1低強度部と第2低強度部のいずれよりも高く設定されている。このため、中央部の硬度は、第1低強度部と第2低強度部のいずれよりも高くなっている。これにより、第1低強度部及び第2低強度部は、中央部よりも折れやすくなっている。
以上説明したように、本発明によれば、センターポール衝突時のバンパRFの折れ位置と折れる順序とをコントロールすることで車室の変形量を低減することができる。
本実施形態の車両前部構造を示す模式的な平面図である。 図1に示される車両前部構造においてセンターポール衝突が発生し、バンパRFが第1低強度部で折れた瞬間を示す模式的な平面図である。 図1及び図2に示される車両前部構造においてバンパRFが第2低強度部で折れた瞬間を示す模式的な平面図である。 図1~図3に示される車両前部構造においてバンパRFがパワーユニットを面押ししている様子を示す模式的な平面図である。 (A)は、バンパRFを示す模式的な平面図である。(B)は、(A)に示されるバンパRFの曲げ耐力特性を示す線図である。(C)は、(A)の5C-5C線断面図である。 (A)は、比較例に係る車両前部構造におけるバンパRFの曲げ耐力特性を示す線図である。(B)は、比較例に係る車両前部構造を示す模式的な平面図である。
以下、図1~図6を用いて、本発明の実施形態について説明する。
なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印LHは、車両の前方向、上方向、車両左側をそれぞれ示している。また、以下の説明で特記なく前後、左右、上下の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車幅方向の左右、車両上下方向の上下を示す。
図1に示すように、本実施形態の車両前部構造は、車両前部の両サイドに配置された左右一対のフロントサイドメンバ10を備えている。フロントサイドメンバ10は、長手方向を車両前後方向に向けた車体骨格部材である。
フロントサイドメンバ10は、車両前方側に配置された変形部12と、変形部12の車両後方側に配置されて車両前後方向に延在された本体部14とを備えている。変形部12は、本体部14よりも車両前後方向の荷重に対する圧縮強度が低い。変形部12としては、例えば鋼製、アルミ製、又は繊維強化プラスチック製のクラッシュボックスが例示される。
また、車両前部構造は、金属製(本実施形態では鋼製)のバンパRF20を備えている。バンパRF20は、車幅方向に沿って延在する車体骨格部材であり、左右一対のフロントサイドメンバ10の車両前方側端部同士を連結している。具体的には、バンパRF20の後面が、左右一対のフロントサイドメンバ10の変形部12の車両前方側端部に接合されている。なお、車幅方向に直線的に一様に延在するバンパRF20を模式的に図示しているが、バンパRF20は、車幅方向から見た断面積が車幅方向中央部で最も大きく、車幅方向外側に向かうにつれて小さくなるように構成されていてもよい。また、バンパRF20は、車幅方向両側部が車両後方側へ斜めに曲がった形状、すなわち全体として車両前方側へ凸の弓形形状とされていてもよい。バンパRF20のより詳細な構成については後述する。
また、車両前部構造は、左右一対のフロントサイドメンバ10の間且つバンパRF20の車両後方(バンパRF20と図示しない車室の間)に配置されたパワーユニット30を備えている。パワーユニット30は、「第1装置」としてのトランスアクスル30Lと、「第2装置」としてのエンジン30Rと、を備えている。具体的には、トランスアクスル30Lは、車幅方向の左側(第1方向側)に配置され、エンジン30Rは、車幅方向の右側(第2方向側)に配置されている。そして、トランスアクスル30Lの車幅方向内側(車幅方向右側)とエンジン30Rの車幅方向内側(車幅方向左側)とが連結部分34で連結されている。パワーユニット30は、左右一対のフロントサイドメンバ10の本体部14に左右のエンジンマウント32を介して支持されている。また、図示は省略するが、パワーユニット30は、トランスアクスル30Lの部分において車両下方からも支持されている。また、エンジン30Rの幅寸法はトランスアクスル30Lの幅寸法よりも大きく、連結部分34は、車幅方向中央に対して左側にずれて位置している。
また、車両前部構造は、ダッシュ部40を備えている。ダッシュ部40は、パワーユニット30と図示しない車室の間に配置されており、パワーユニット30が配置された空間(エンジンコンパートメント)と車室とを隔てる部分である。つまり、ダッシュ部40は車室の前端を構成している。ダッシュ部40は、ダッシュパネル42や図示しないダッシュクロスを含んで構成されている。ダッシュパネル42には、左右一対のフロントサイドメンバ10の後端が結合されている。なお、フロントサイドメンバ10の車両後方側に図示しないキックアップ部が設けられ、このキックアップ部の上部にダッシュパネル42が配設される構成としてもよい。
ダッシュパネル42の前方には「支持部」としてのギアボックス44が設けられ、ギアボックス44は、ダッシュパネル42に対して車両前方側へ突出するように配置されている。また、ギアボックス44は、車両前方側から見てトランスアクスル30Lと重複するように配置されている。すなわち、ギアボックス44は、車幅方向中央に対して左側にずれた位置であってトランスアクスル30Lの後方の位置に、トランスアクスル30Lの後面に対向して配置されている。このため、本実施形態では、仮にパワーユニット30が車両後方へ移動した場合(例えば平行移動した場合)、ギアボックス44がトランスアクスル30Lを支持する構造となっている。
次に、図5(A)~図5(C)を参照して、バンパRF20の詳細な構成について説明する。
図5(A)に示されるように、バンパRF20は、車幅方向中央よりも左側に形成された第1低強度部22と、車幅方向中央よりも右側に形成された第2低強度部23とを有している。また、第1低強度部22と第2低強度部23とに挟まれた中央部24を有している。すなわち、第1低強度部22及び第2低強度部23は、中央部24の車幅方向の両隣に配置されている。バンパRF20はさらに、第1低強度部22よりも車幅方向左側の部分を構成する左側部25と、第2低強度部23よりも車幅方向右側の部分を構成する右側部26とを有している。なお、バンパRF20は、左側部25及び右側部26を備えなくともよい。すなわち、中央部24の車幅方向両隣に配置された第1低強度部22及び第2低強度部23が、バンパRF20の車幅方向左側端部及び右側端部までそれぞれ延在されていてもよい。
図5(C)には、図5(A)の5C-5C線断面図としてバンパRF20を車幅方向左側から見た縦断面図が示されている。この図に示されるように、バンパRF20は、車両後方側に位置する後側部材27と車両前方側に位置する前側部材28とを含んで構成されている。なお、上述の図5(A)では、後側部材27及び前側部材28の図示は省略されている。
後側部材27は、車両前方側に開放された断面略U字状の後側本体部27Aを備えている。また、後側本体部27Aの上端部から車両上方側へ後側上フランジ27Bが延出されており、後側本体部27Aの下端部から車両下方側へ後側下フランジ27Cが延出されている。このため、後側部材27は、車両前方側に開放された断面略ハット状に形成されている。
前側部材28は、車両前後方向を板厚方向とする平板状に形成されており、車両上下方向中央部分に位置して後側部材27の開口を閉塞する前側本体部28Aを備えている。また、前側本体部28Aの上端部から車両上方側へ前側上フランジ28Bが延出されており、この前側上フランジ28Bが後側部材27の後側上フランジ27Bと重ね合わされた状態でスポット溶接などによって接合されている。さらに、前側本体部28Aの下端部から車両下方側へ前側下フランジ28Cが延出されており、この前側下フランジ28Cが後側部材27の後側下フランジ27Cと重ね合わされた状態でスポット溶接などによって接合されている。これにより、本実施形態のバンパRF20は、閉断面構造(中空構造)となっている。
ここで、上述の第1低強度部22及び第2低強度部23(図5(A)参照)は、車幅方向から見てバンパRF20の全周に亘って形成されている。すなわち、本実施形態では、後側部材27及び前側部材28の双方に対して焼戻しが施されている。なお、後側部材27及び前側部材28のいずれか一方、あるいは一部に焼戻しが施されていてもよい。
バンパRF20は、上述の通り、車幅方向から見た断面積が車幅方向中央部で最も大きく、車幅方向外側に向かうにつれて小さくなるように構成されている。具体的には、後側本体部27Aの車両前後方向の寸法が、車幅方向中央部で最も大きく、車幅方向外側に向かうにつれて小さくなるように構成されている。したがって、バンパRF20の中央部24以外の部位における断面積は、図5(C)に示される中央部24の断面の面積よりも小さくなっている。
第1低強度部22及び第2低強度部23(図5(A)参照)は、焼入れされて硬化された鋼板に対して、焼戻しを行うことによって得られる。すなわち、バンパRF20を構成する鋼板は、その全体が焼入れされて硬化された後に、第1低強度部22及び第2低強度部23にはさらに焼戻しが施されている。焼戻し処理では、焼入れによって硬化された鋼板を加熱することにより軟化させ、焼入れ前の硬度に近づける。焼戻しが施された第1低強度部22及び第2低強度部23は、焼戻しが施されていない中央部24、左側部25及び右側部26に比べて硬質マルテンサイト組織の割合が低く、硬度が低い。これにより、第1低強度部22及び第2低強度部23は、中央部24、左側部25及び右側部26に比べて降伏強度が低く、曲げ耐力(車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力、以下同様)が低くなっている。なお、バンパRF20の車幅方向から見た断面積が車幅方向外側に向かうにつれて小さくなっていることから、後述するように、曲げ耐力も車幅方向外側に向かうにつれて小さくなっている。このため、左側部25及び右側部26の車幅方向外側端部では、曲げ耐力が第1低強度部22及び第2低強度部23よりも小さくなっていてもよい。
また、第1低強度部22と第2低強度部23とは、焼戻しの際の温度及び当該温度を保持する保持時間を調節することにより、軟化の度合いが調節されている。具体的には、第2低強度部23の方が第1低強度部22よりも硬質マルテンサイト組織の割合が高くなるように焼戻し温度及び保持時間が調節される。このため、第2低強度部23の方が第1低強度部22よりも硬度が高くなっている。これにより、第2低強度部23の曲げ耐力が第1低強度部22の曲げ耐力よりも高くなっている。
バンパRF20の各部の曲げ耐力について、以下に詳しく述べる。
図5(B)は、バンパRF20の車幅方向の位置に対する曲げ耐力特性を示す線図である。この図に示されるように、バンパRF20の曲げ耐力特性図は、第1低強度部22及び第2低強度部23を除いた部分の概形がなだらかな山型とされ、曲げ耐力は車幅方向中央で最も高く、車幅方向外側に向かうにつれて低くなっている。これは、上述の通りバンパRF20の車幅方向から見た断面積が車幅方向外側に向かうにつれて小さくなっているためである。しかしながら、曲げ耐力特性図は、第1低強度部22及び第2低強度部23では全体の山型の曲線から外れた形状となっている。具体的には、第1低強度部22の曲げ耐力は、隣接する中央部24及び左側部25よりも低くなっている。また、第2低強度部23の曲げ耐力は、中央部24及び右側部26のうちの隣接する部分よりも低くなっている。
また、第1低強度部22の曲げ耐力は、第2低強度部23の曲げ耐力よりも低くなっている。すなわち、第1低強度部22と第2低強度部23との間には、耐力差(矢印Dで示される)が設定されている。
以上のような構造とすることで、バンパRF20のうち第1低強度部22が最も折れやすく、センターポール衝突時に最初に折れる第1折れ起点部を構成している。また、第2低強度部23が、第1低強度部22の次に折れる第2折れ起点部を構成している。
別の説明をすると、バンパRF20は、中央部24を挟んで2つの折れ起点部(第1低強度部22と第2低強度部23)を有している。そして、第1低強度部22の曲げ耐力が第2低強度部23の曲げ耐力に対して耐力差Dだけ低く設定されている。これにより、バンパRF20のうち第1低強度部22がセンターポール衝突時に最初に折れるようにコントロールされており、第2低強度部2が第1低強度部22の次に折れるようにコントロールされている。3
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について、図6(A)及び図6(B)に示す比較例と対比しつつ説明する。
図6(A)に示されるように、比較例に係る車両前部構造では、バンパRF100は、その曲げ耐力特性図の形状がなだらかな山型とされ、曲げ耐力が低下された部分を有しない。すなわち、バンパRF100には、焼戻しが施された部分が設けられていない。したがって、センターポール衝突時には、車両中央部よりも曲げ耐力が低下された部分(曲げ耐力特性図の山の中腹に相当する位置)が折れ起点となる可能性がある。
図6(B)に示されるように、ポールPへの衝突時に、仮に折れ起点部100Aにおいて折れた場合、エンジン30Rはギアボックス44に支持されないため、ギアボックス44に支持される場合と比べてエンジン30Rとトランスアクスル30Lとの連結部分34に発生する剪断入力が大きくなる。すると、エンジン30Rとトランスアクスル30Lとの連結が解除され(換言するとパワーユニット割れが発生し)、折れ起点部100Aからの衝突荷重を受けるエンジン30Rのみが車室側へ移動することで、ダッシュ部40に対して局所的に荷重が伝達され、ダッシュ部40の変形量が増大してしまうおそれがある。
これに対し、本実施形態では、図1~図4に示されるように、左右一対のフロントサイドメンバ10が車両前部を車両前後方向に沿って延在している。また、バンパRF20が車幅方向に沿って延在し、左右一対のフロントサイドメンバ10の車両前方側端部に接合されている。また、左右一対のフロントサイドメンバ10の間且つバンパRF20の車両後方(バンパRF20と車室との間)には、パワーユニット30が配置されている。
パワーユニット30は、車幅方向右側に配置されたエンジン30Rと車幅方向左側に配置されたトランスアクスル30Lとが互いに連結されて構成されている。そして、ギアボックス44が、ダッシュ部40とトランスアクスル30Lとの間に設けられている。また、ギアボックス44は、車両前方側から見てトランスアクスル30Lと重複するように配置されている。このため、仮にパワーユニット30が車両後方へ移動(例えば平行移動)したときは、パワーユニット30のトランスアクスル30Lがギアボックス44に支持される。
バンパRF20には、図5(A)及び図5(B)に示されるように、車幅方向中央に配置された中央部24と、中央部24の車幅方向両隣に配置された第1低強度部22及び第2低強度部23が設けられている。ここで、第1低強度部22は、車両前方側から見てトランスアクスル30Lと重複するように配置されている。言い換えると、第1低強度部22は、連結部分34よりも車幅方向左側に設けられて、車両前後方向にトランスアクスル30Lと対向している。また、第2低強度部23は、車両前方側から見てエンジン30Rと重複するように配置されている。言い換えると、第2低強度部23は、連結部分34よりも車幅方向右側に設けられて、車両前後方向にエンジン30Rと対向している。そして、曲げ耐力(車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力)が、中央部24、第2低強度部23、第1低強度部22の順に低くなるように設定されている。また、第1低強度部22の硬度及び第2低強度部23の硬度は、中央部24の硬度よりも低くなっている。
これにより、本実施形態の車両前部構造では、図2及び図3に示すように、センターポール衝突時に第1低強度部22がエンジン30Rとトランスアクスル30Lのうちギアボックス44に支持される側の装置に衝突荷重を伝達するように第1低強度部22の位置が設定されている。このため、本実施形態の車両前部構造では、センターポール衝突時、以下に説明する変形モードを実現しやすい。
すなわち、センターポール衝突時、図2に示すように、バンパRF20は、ポールが当接した車幅方向中央位置では折れず、曲げ耐力が最も低く設定されている第1低強度部22で折れる。次に、図3に示すように、バンパRF20の第1低強度部22が、パワーユニット30のトランスアクスル30Lに衝突荷重(矢印Fで示される)を伝達する。衝突荷重によりパワーユニット30が車両後方へ移動すると、ギアボックス44にパワーユニット30(トランスアクスル30L)が支持される。ここで、ギアボックス44に支持される装置と第1低強度部22が衝突荷重を伝達する装置とが同一の装置(トランスアクスル30L)であるため、エンジン30Rとトランスアクスル30Lとの連結部分34に発生する剪断入力が増大しない。その結果、パワーユニット割れが抑制される。
さらに、パワーユニット割れが抑制されることで、第1低強度部22においてパワーユニット30からバンパRF20への反力(図3の矢印Fで示す力に対する反力)が増大する。このため、図3に示すように、バンパRF20に2点目の折れ、すなわち第1低強度部22よりも曲げ耐力が高く設定された第2低強度部23の折れが発生しやすくなる。第2低強度部23の折れが発生すると、図4に示すように、バンパRF20における第1低強度部22及び第2低強度部23の間の範囲でパワーユニット30を車両後方へ押すこととなり(面押しすることとなり)、衝突荷重を車幅方向に分散できる。その結果、ダッシュ部40に対する局所的な入力を抑制でき、以って車室の変形を抑制することができる。
このように、本実施形態では、バンパRF20の質量及び構成部品を増やすことなく、バンパRF20の折れ位置と折れる順序とをコントロールすることで車室の変形量を低減することができる。
また、本実施形態では、バンパRF20は鋼製であり、中央部24の硬質マルテンサイト組織の割合は、第1低強度部22と第2低強度部23のいずれよりも高く設定されている。このため、中央部24の硬度は、第1低強度部22と第2低強度部23のいずれよりも高くなっている。これにより、第1低強度部22及び第2低強度部23は、中央部24よりも折れやすくなっている。
また、図面では簡略化されているが、パワーユニット30の後面は凹凸のある形状とされている。本実施形態では、この凹凸のある形状とされた後面のうち、最も車両前後方向後端の部分とギアボックス44とが車両前後方向に対向している。つまり、パワーユニット30における車両前後方向後端部がダッシュ部40に最初に支持されることとなる。このため、センターポール衝突発生後、早期にパワーユニット30を後方から支持することができる。
なお、簡略化のため説明を省いたが、バンパRF20とパワーユニット30との間には、通常、図示しないクーリングユニットなどが配置されている。そのため、センターポール衝突が発生し、バンパRF20の第1低強度部22が折れてパワーユニット30側に変位すると、クーリングユニットなどを介して衝突荷重がバンパRF20からパワーユニット30に伝達する。
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、ギアボックス44が、ダッシュ部40の一般部であるダッシュパネル42に対して車両前方へ突出し、「支持部」として機能する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、パワーユニット30の一部が後方へ突出しており、この一部が、ダッシュ部40における例えばダッシュパネル42に最初に支持される態様(この場合、ダッシュパネル42の一部が「支持部」に相当する。)であってもよい。この場合であっても(ダッシュ部の一部が支持部であっても)、支持部は、ダッシュ部とトランスアクスル30Lとの間に車両前方側から見てトランスアクスル30Lと重複して配置されているといえる。
また、上記実施形態では、「支持部」としてのギアボックス44が、車幅方向中央に対して車幅方向左側にずれた位置、すなわち車両前方側から見てトランスアクスル30Lと重複した位置に配置された例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ギアボックス44は、車幅方向中央に対して車幅方向右側にずれた位置に配置されてもよい。この場合、上記実施形態のパワーユニット30の構成を前提に考えると、ギアボックス44は車両前方側から見てエンジン30Rと重複した位置に配置され、エンジン30Rを支持することとなる。すなわち、エンジン30Rが「第1装置」となる。この場合、バンパRF20のうち曲げ耐力が最も低い第1低強度部22は、中央部24に対して車幅方向右側に配置され、車幅方向右側が「第1方向側」となる。また、曲げ耐力が次に低い第2低強度部23は、中央部24に対して車幅方向左側に配置され、車幅方向左側が「第2方向側」となる。したがって、センターポール衝突時に最初に折れる第1低強度部22が右側、二番目に折れる第2低強度部23が左側に配置されることとなる。
また、支持部は車幅方向中央に位置していてもよい。この場合、上記実施形態のパワーユニット30の構成を前提に考えると、支持部は車両前後方向から見てエンジン30Rと重なる位置となる。すなわち、エンジン30Rが「第1装置」となる。そのため、バンパRF20の構成は、センターポール衝突時に最初に折れる第1低強度部22を右側(第1方向側)に、二番目に折れる第2低強度部23を左側(第2方向側)に有することとなる。
また、本発明の「支持部」はギアボックス44に限定されない。例えば、マスターシリンダーであってもよいし、左右一対のロッカ(車体下部における車幅方向両端部を車両前後方向に延びる骨格部材)の前端部同士を連結する骨格部材であるダッシュクロスであってもよい。また、支持部は、パワーユニットに対して反力を生じさせることができる部分(部材)である。したがって、配管やブラケットなどのような、パワーユニットを介して衝突荷重を受けた場合に容易に変形してしまう部分(部材)は、支持部には相当しない。
また、上記実施形態では、第2低強度部23が、車幅方向中央に対して第1低強度部22と対称の位置に設けられている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。第1低強度部22と第2低強度部23とが車幅方向中央に対して対称の位置になくとも、車両前方側から見て、第1低強度部22がトランスアクスル30L(ギアボックス44と車両前後方向に対向する第1装置)と重複し、第2低強度部23がエンジン30Rと重複していればよい。この場合には、中央部24は、バンパRF10の車幅方向の中心点から中央部24の車幅方向両端までの距離が左右で異なる構成となる。
また、上記実施形態では、図1に示すように、第1低強度部22が、「支持部」(ギアボックス44)よりも車幅方向外側の位置に設定されている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。第1低強度部22が、支持部よりも車幅方向内側の位置に設定されていてもよい。
また、上記実施形態では、変形部12がフロントサイドメンバ10の一部を構成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。フロントサイドメンバ10は、変形部12を備えなくともよい。この場合、本体部14の車両前方側端部が、バンパRF20の車両後方側の面に接合される。
また、上記実施形態では、第1低強度部22及び第2低強度部23に焼戻しを施すことにより中央部24よりも硬度が低下されて曲げ耐力が低下されているが、本発明はこれに限定されない。第1低強度部22及び第2低強度部23の硬質マルテンサイトの割合が中央部24に比べて低ければよい。別の説明をすると、第1低強度部22及び第2低強度部23が、硬質マルテンサイトよりも硬度の低いフェライトを含む場合(中央部24に比べてフェライトの割合が高い場合)に、中央部24に比べて折れやすくなる。
例えば、焼入れした後、第1低強度部22及び第2低強度部23をA1変態点を超えて昇温して徐冷すると組織の一部がフェライトになり、第1低強度部22及び第2低強度部23が中央部24に比べて折れやすいという効果を得ることができる。
また、第1低強度部22及び第2低強度部23に対する焼入れの際の冷却速度が小さいと、組織の一部がベイナイトやフェライトになるが、その場合も第1低強度部22及び第2低強度部23が中央部24に比べて折れやすいという効果を得ることができる。
更に、部分焼入れを施すことにより第1低強度部22及び第2低強度部23が中央部24に比べ折れやすいという効果を得ることができる。具体的には、中央部24に比べ、第1低強度部22及び第2低強度部23における焼入れされた領域を減らすことによって中央部24に比べて折れやすいという効果を得ることができる。
10 フロントサイドメンバ
20 バンパRF(バンパリインフォースメント)
22 第1低強度部
23 第2低強度部
24 中央部
30 パワーユニット
30R エンジン(第2装置)
30L トランスアクスル(第1装置)
40 ダッシュ部
44 ギアボックス(支持部)

Claims (2)

  1. 一対のフロントサイドメンバと、
    バンパリインフォースメントと、
    パワーユニットと、
    ダッシュ部と、
    支持部と、
    を備え、
    前記バンパリインフォースメントは、前記一対のフロントサイドメンバの車両前方側端部に接合され、
    前記パワーユニットは、前記一対のフロントサイドメンバの間、かつ前記バンパリインフォースメントと車室の間に配置され、
    前記パワーユニットは、車幅方向の第1方向側に配置された第1装置と、車幅方向の第2方向側に配置された第2装置とを備え、
    前記第1装置と前記第2装置は連結され、
    前記ダッシュ部は、前記パワーユニットと前記車室の間に配置され、
    前記支持部は、前記ダッシュ部と前記第1装置の間に、車両前方側から見て前記第1装置と重複するように配置され、
    前記バンパリインフォースメントは、第1低強度部と、第2低強度部と、車幅方向の中央部とを備え、
    前記第1低強度部及び前記第2低強度部は、前記中央部の車幅方向の両隣に配置され、
    前記第1低強度部は、車両前方側から見て前記第1装置と重複し、
    前記第2低強度部は、車両前方側から見て前記第2装置と重複し、
    前記第1低強度部の車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力は、前記第2低強度部よりも低く、
    前記第2低強度部の前記車両前後方向の曲げに対する曲げ耐力は、前記中央部よりも低く、
    前記第1低強度部の硬度は、前記中央部よりも低く、
    前記第2低強度部の硬度は、前記中央部よりも低い、
    車両前部構造。
  2. 前記バンパリインフォースメントは、鋼製であり、
    前記中央部の硬質マルテンサイト組織の割合は、前記第1低強度部と前記第2低強度部のいずれよりも高い、請求項1に記載の車両前部構造。
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