以下に第1及び第2実施形態を説明する。以下の図面の記載において、実質的に同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付し、重複説明を適宜省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、本明細書において、図面に示されたXYZ座標軸を用いて方向を説明する場合、当該座標軸における矢印の方向を正方向としている。例えば、本明細書中で図面におけるX軸の矢印の方向を示すときは+X方向とし、矢印の方向と反対の方向を示すときは、-X方向としている。XYZ座標軸の矢印の向きに限定されず、単に各軸方向に沿った方向を示す場合、X方向等としている。
-第1実施形態-
(全体の概略構成)
まず、図1~図15を参照しながら、第1実施形態に係る可動手摺25について説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る可動手摺25は、病院や介護施設の建物、或いは一般住宅等の構造物内の廊下において、使用可能な手摺である。
可動手摺25は、図1に示したように、手摺本体26と、支持部材30と、係止部材50とを備える。可動手摺25は、壁面17Aに設置された固定手摺21に、固定手摺21の軸方向に沿って摺動自在に設けられている。また、図2に示すように、壁面17Aには、廊下を挟んで対向する壁面17Bが存在し、壁面17Bには固定手摺23が設置されている。
また、可動手摺25は、固定手摺21の周面に沿って回動可能であり、図1中に示した倒伏状態、及び、起立状態(図12参照。)に切り替え可能である。また、可動手摺25は、固定手摺21の軸方向(Y方向)に移動可能である。
図1に示すように、倒伏状態では、可動手摺25は、廊下の床面19の上方に手摺本体26が架け渡された手摺として使用可能である。倒伏状態では、図2及び図3に示すように、可動手摺25は、2本の固定手摺21,23の間に、平面視で固定手摺21,23に直交するように架け渡されている。
固定手摺21,23は、図1に示すように、真直な中空の筒状部材であり、長手方向(図1中のY方向)の両端部で、それぞれ対応する壁面に固定されている。固定手摺21,23は、廊下の延びる方向(図1中のY方向)に沿って、延在されている。2本の固定手摺21,23は、いずれもほぼ水平に、かつ、互いに平行に設けられている。固定手摺21,23は、例えば、アルミ等の金属製であり、固定手摺21,23のそれぞれの筒の外周面は、樹脂被膜(不図示)によって被覆されている。樹脂被膜の外周面には、固定手摺21,23を把持する人間が把持し易いように、ディンプル(凹凸)形状が設けられてもよい。
固定手摺21の形状は、可動手摺25の支持部材30が、固定手摺21の軸方向に沿って移動可能であればよく、特に限定されない。例えば、支持部材30の移動をガイド可能なレールであってもよい。また、固定手摺21,23は、連続した棒状部材でなく、例えば、複数の棒状部材が同一直線上に配置されることによって、部分的には間隙が設けられていても、全体として手摺として機能するように構成されてもよい。
なお、可動手摺25の基端部27側に位置する固定手摺21は、本発明における「構造物に設置された手摺棒」に対応する。また、可動手摺25の先端部28側に位置する固定手摺23は、本発明における「他の構造物」に対応する。以下、可動手摺25について具体的に説明する。
<可動手摺の構造>
(手摺本体)
手摺本体26は、可動手摺25を手摺として機能させるための棒状部材であり、側面視で略U字形状である。手摺本体26は、支持部材30から延出され、基端部27側で、支持部材30を介して固定手摺21に支持されている。手摺本体26は、固定手摺21,23と同様に、例えば、アルミ等の金属製であり、手摺本体26の外周面は、樹脂被膜によって被覆可能である。
(支持部材)
支持部材30は、図4に示すように、本体部31と、回動支持部材32とを有する。支持部材30は、固定手摺21に対して手摺本体26の基端部27を回動可能に支持する。
(支持部材の本体部)
図5に示すように、本体部31は、筐体状の部材であり、筒状部33等が内蔵されている。本体部31には、固定手摺21の軸方向(Y方向)の両端にそれぞれ開口31Aが設けられ、開口31Aを介して、固定手摺21が貫通されている。本体部31の開口31Aは、筒状部33の筒の内径よりも大きく、支持部材30は、Y方向に移動可能である。
また、図1及び図2に示したように、本体部31のY方向の中央には、正面開口部31Dが設けられ、正面開口部31Dの位置には、固定手摺21の軸方向に沿った筒状部33の中央部33Fが露出している。筒状部33の内側には、固定手摺21が貫通して配置されている。図5中の筒状部33の固定手摺21と反対側(左側)の外周面には、支持部34が、正面開口部31Dから突出するように、筒状部33に連結して設けられている。支持部34の上側には、手摺本体26が設けられている。
図5中の本体部31の筐体の左側の内壁には、右側の筒状部33に向かって突出した本体凸部31Bが設けられている。また、図7に示すように、本体部31の開口31Aの位置には、圧迫部31Cが設けられている。第1実施形態では、圧迫部31Cは、本体部31における固定手摺21が挿通される開口31Aの内周面の一部である。なお、本発明の圧迫部としては、開口31Aの内周面の一部が圧迫部31Cである場合に限定されず、例えば、本体部31と一体成形で設けられた隔壁等の部位や、他の部材であってもよい。
また、本体部31の内側には、筒状部33を挟んで本体凸部31Bの反対側に、図5中で上下方向に延びる被押圧部35が、筒状部33の外周面に接触して設けられている。すなわち、被押圧部35は、筒状部33を挟んで圧迫部31Cとは反対側に位置する。被押圧部35は、筒状部33の外周面によって押圧される部材である。
被押圧部35には、筒状部33に向かって突出する突起部35Aが、長手方向(図5中の上下方向)の中央に設けられている。また、被押圧部35の長手方向の両端部は、本体部31に支持されている。被押圧部35としては、例えば、板ばね部材を使用できる。図5中の被押圧部35の下側には、被押圧部35の上下方向の高さの固定位置を調整する固定ねじ35Bが例示されている。
被押圧部35として、板ばね部材が採用されることで、固定手摺21の表面にディンプル(凹凸)が設けられている場合等、固定手摺21の外形寸法が軸方向で変化しても、板ばね部材の弾性変形によって、筒状部33のX方向の変位を吸収できる。このため、筒状部33を含めた本体部31の軸方向の移動が円滑になる。
(支持部材の回動支持部材)
回動支持部材32は、図5に示すように、支持部材30の本体部31に設けられ、筒状部33と、筒状部33に接続された支持部34とを有している。
筒状部33は、略円筒形状であり、筒の軸のほぼ水平にした状態で、本体部31の内部に設けられている。筒状部33の内径は、固定手摺21の外径よりも、やや大きく設定されており、筒状部33の内側に、固定手摺21が差し込まれている。筒状部33は、固定手摺21の周面に沿って回動可能かつ軸方向に移動可能である。
本体部31の内部では、図示を省略するが、筒状部33のY方向の両端の位置に、ほぼ鉛直な隔壁が、筒状部33の回転を阻害しない程度の隙間を空け、筒状部33を挟むようにそれぞれ設けられている。このため、筒状部33のY方向への変位は防止されている。また、筒状部33の収納空間の上側(Z方向)には僅かな隙間が設けられているだけであるため、筒状部33のZ方向への変位は、実質的に無視することができる。
また、筒状部33は、X方向においては、本体部31の本体凸部31Bと、被押圧部35の突起部35Aとによって、挟まれている。筒状部33の筒の中心軸Cと、本体部31の本体凸部31Bの先端(図5中の右端)と、被押圧部35の突起部35Aの先端(図5中の左端)とは、Z方向において、ほぼ同じ高さに揃っている。図5中では、筒状部33の中心軸Cの高さにおいて、右側の押圧部33A1から左側の緩和部33Bとの間で、水平に沿って測った間隔Dが例示されている。
筒状部33の軸方向(Y方向)の両端部の外周面には、押圧部33A1,33A2が設けられている。押圧部33A1,33A2は、筒状部33の外周面において、緩和部33Bよりも外径の大きい部位である。特に、第1実施形態では、押圧部33A1,33A2は、筒状部33の中央部33Fの外周面と面一になっている(図7参照)。押圧部33A1は、手摺本体26が図5中の倒伏状態である場合に、被押圧部35を押圧する。また、押圧部33A2は、手摺本体26が図12中の起立状態である場合にも、被押圧部35を押圧する。
また、筒状部33の軸方向の両端部の外周面には、押圧部33A1,33A2と隣接する位置に、緩和部33Bが設けられている。緩和部33Bは、筒状部33の外周面において、押圧部33A1,33A2よりも外径の小さい凹状の部位である。緩和部33Bは、手摺本体26が起立状態と倒伏状態との間に位置する中間状態(図10参照)である場合に、被押圧部35を押圧する。緩和部33Bによって、被押圧部35への押圧力は、押圧部33A1,33A2による押圧力よりも緩和される。
また、図5中の筒状部33の左側の外周面には、内側(図5中の右側)に向かって窪んだ凹状部33D1が設けられている。また、図5中の筒状部33の下側の外周面には、内側(図5中の上側)に向かって窪んだ凹状部33D2が設けられている。可動手摺25が起立状態及び倒伏状態である場合、凹状部33D1,33D2は、本体部31の本体凸部31Bに接触する。
また、2個の凹状部33D1、33D2の間に位置する筒状部33の外周面において、筒状部33の中心を挟んで緩和部33Bとは反対側の位置に、凸状部33Eが設けられている。本発明の「当接部」としての凸状部33Eは、凹状部33D1,33D2の底部より、筒状部33の外側に突出している。可動手摺25が中間状態である場合、凸状部33Eは、本体部31の本体凸部31Bに当接(接触)する。
一方、図5中の筒状部33の右側の内周面の位置には、周囲より固定手摺21側に張り出す板状の摩擦部33Cが設けられている。図6に示すように、摩擦部33Cは、固定手摺21側に対向する第1端面33C1と、筒状部33の内周面に接合する第2端面33C2とを有する。側面視で、第1端面33C1は、ほぼ直線状であり、第2端面33C2は、筒状部33の内周面に沿って円弧状である。
摩擦部33Cは、例えば、筒状部33と一体成形できる。第1実施形態では、第1端面33C1がほぼ鉛直であるように、摩擦部33Cが筒状部33の内周面に配置されている。摩擦部33Cが固定手摺21の樹脂被膜に食い込むことによって、樹脂被膜は復元可能な程度に弾性変形する。なお、本発明では、摩擦部33Cは必須ではなく、筒状部33の内周面そのものによって固定手摺21を押圧することもできる。また、固定手摺が樹脂被膜を有さない金属製の手摺棒である場合、筒状部の内周面に合成ゴム等の弾性体を設けることにより摩擦力を高めることも可能である。
支持部34は、円筒状であり、図8に示すように、内側に、回動部36が回転自在に支持されている。回動部36は、円筒状の底部36Aと、底部36Aの上側に設けられた円筒状の連結体36Bとを有する。第1実施形態では、底部36A及び連結体36Bは、樹脂によって一体成形されているが、本発明では、別々に作製された上で互いに連結されてもよい。
図8中の底部36Aの下部は、鍔状であり、中央及び上部より外側に張り出すように拡径されている。底部36Aの中央及び上部の外径は、支持部34の上部の内径W2とほぼ同じである。底部36Aの内径W2は、支持部34の筒の最小径をなす。また、底部36Aの外周面と支持部34の内周面とは、滑らかに接触している。なお、手摺本体26の基端部27の下端面は、底部36Aと連結体36Bとの境界の位置とほぼ同じ高さに配置されている。
連結体36Bは、底部36Aの上側で、手摺本体26の基端部27の開口部Sから、支持部34の中心軸Vに沿って支持部34の内側から延びるように突出している。中心軸Vは、支持部34を通り、且つ、固定手摺21の軸方向(Y方向)に対して垂直に直交する。連結体36Bの外径は、開口部Sの径W1とほぼ同じである。このため、回動部36は、中心軸Vを揺動中心として、支持部34の内側で回転自在に支持されている。
また、連結体36Bには、手摺本体26の基端部27が挿入されると共に、基端部27及び連結体36Bには、ピン等の連結部材38が、水平方向に貫通して差し込まれ、基端部27と連結体36Bとは一体化されている。このため、支持部34によって、手摺本体26の基端部27は、揺動可能に支持されている。また、
支持部34は、筒状部33に連結されているため、手摺本体26の揺動動作は、支持部34を介して筒状部33に伝達される。すなわち、筒状部33は、手摺本体26の固定手摺21の軸方向を回動中心とした回動が可能であると同時に、中心軸Vに対する揺動も可能である。
(可動手摺の軸方向の移動規制)
次に、固定手摺21の軸方向に沿った、支持部材30の移動を規制する方法を具体的に説明する。図5に示したように、可動手摺25が倒伏状態である場合において、突起部35Aは、筒状部33の押圧部33A1に接触し、本体凸部31Bは、筒状部33の凹状部33D1に接触している。このため、固定手摺21は、突起部35Aによって圧迫され、図7に示すように、筒状部33の中心軸Cは、本体部31の開口31Aに対してX方向に偏心している。そして、固定手摺21の-X方向側の外周面は、筒状部33の-X方向側の内周面及び摩擦部33Cと接触し、固定手摺21の+X方向側の外周面は、本体部31の開口31Aの+X方向側の圧迫部31Cと接触する。
このとき、筒状部33の押圧部33A1によって、被押圧部35の突起部35Aが押圧され、本体部31は被押圧部35からの反作用を受ける。このため、固定手摺21は、筒状部33の内周面及び摩擦部33Cと、本体部31の圧迫部31Cと、により押圧される。また、筒状部33の内周面及び摩擦部33Cは、固定手摺21に押圧されると共に、圧迫部31Cは、固定手摺21を圧迫する。また、摩擦部33Cが固定手摺21の表面に食い込むことによって、押圧力が、内周面だけの場合より高められる。
すなわち、図7に示すように、可動手摺25の倒伏状態において、筒状部33の内周面及び摩擦部33Cと、本体部31の圧迫部31Cとによって、固定手摺21が挟持される。このため、筒状部33及び本体部31の軸方向(Y方向)の移動が規制され、結果、支持部材30の軸方向の移動が規制される。なお、第1実施形態では、倒伏状態及び起立状態において、筒状部33の軸方向への移動が規制された、手摺本体26の回動位置を「ロック位置」と定義する。
次に、図9及び図10に示すように、可動手摺25の手摺本体26が固定手摺21の周面に沿って回動し、可動手摺25が倒伏状態から中間状態へ切り替わった場合を説明する。図10に示すように、被押圧部35の突起部35Aは、筒状部33の緩和部33Bに接触し、本体凸部31Bは、筒状部33の凸状部33Eに接触している。可動手摺25が中間状態である場合、可動手摺25が倒伏状態である場合に比べて、筒状部33の中心軸Cは、本体部31の開口31Aの中心軸側に変位する。
図11中に例示した筒状部33の中心軸Cは、開口31Aの中心軸とほぼ揃っている。このため、筒状部33の内周面と固定手摺21の外周面との間には、周全体に亘って間隙が生じ、本体部31の開口31Aが、固定手摺21から離間すると共に、筒状部33の摩擦部33Cは、固定手摺21から離間し、固定手摺21の表面へ食い込まない。結果、可動手摺25の中間状態において、筒状部33の内周面及び摩擦部33Cと、本体部31の圧迫部31Cとによる、固定手摺21の挟持が緩和され、筒状部33及び本体部31の軸方向の移動規制が解除される。
また、図10に示したように、可動手摺25の中間状態では、筒状部33の緩和部33Bに、被押圧部35の突起部35Aが入り込んでいる。また、被押圧部35の突起部35AのY方向の端面と、緩和部33BのY方向の側壁面とは、接触している。図10中では、緩和部33BのY方向の側壁面は、突起部35Aと重なるように描かれている。このため、手摺本体26を介して支持部34に軸方向(Y方向)の移動が入力されると、筒状部33から被押圧部35へ力が伝達される。そして、被押圧部35が本体部31に取り付けられた筒状部33も、支持部34の移動に伴って固定手摺21の軸方向(Y方向)に沿って移動する。
なお、図10に示したように、中間状態においても、筒状部33の中心軸Cの高さにおいて、右側の緩和部33Bから左側の押圧部33A1,33A2との間で、水平に沿って測った間隔Dは、図5中に示した倒伏状態における間隔Dとほぼ同じである。
次に、図12に示すように、可動手摺25の手摺本体26が固定手摺21の周面に沿って更に回動し、鉛直な壁面17と平行に延びるように、可動手摺25が起立状態に切替えた場合を説明する。起立状態では、被押圧部35の突起部35Aは、筒状部33の押圧部33A2に接触し、本体部31の本体凸部31Bは、筒状部33の凹状部33D2に接触する。筒状部33の押圧部33A2と被押圧部35の突起部35Aとが接触すると、倒伏状態の場合と同様に、被押圧部35からの反力によって、固定手摺21は、筒状部33の内周面及び摩擦部33Cと、本体部31の圧迫部31Cと、により押圧される。また、固定手摺21は、突起部35Aによって圧迫される。
そして、可動手摺25の起立状態において、筒状部33の内周面及び摩擦部33Cと、本体部31の圧迫部31Cとによって、固定手摺21が挟持され、筒状部33及び支持部材30の軸方向の移動が規制される。また、起立状態における手摺本体26の回動位置は、ロック位置となる。
なお、図12中に示したように、起立状態においても、筒状部33の中心軸Cの高さにおいて、右側の押圧部33A1,33A2から左側の緩和部33Bとの間で、水平に沿って測った間隔Dは、図5中に示した倒伏状態におけるそれぞれの間隔Dとほぼ同じである。また、図12中の間隔Dは、図10中に示した中間状態における間隔Dとも、ほぼ同じである。すなわち、第1実施形態では、倒伏状態及び中間状態を通じて、筒状部33の中心軸Cの高さにおけるX方向の間隔Dが一定に保持されている。また、図12に示したように、倒伏状態、中間状態及び起立状態を通じて、筒状部33の中心軸Cの高さにおけるX方向の間隔Dを一定に保持することも可能である。
上記のように手摺本体26が起立状態又は倒伏状態の場合、本体部31によって、固定手摺21が押圧され、筒状部33の軸方向の移動が制限されるため、筒状部33及び支持部材30の軸方向の移動が規制され、可動手摺25の基端部27側は、強固に固定される。また、固定手摺21が押圧されて固定されるので、固定手摺21に対し、別途、固定のための構造、加工を加えることなく、可動手摺25の固定を実現できる。
また、可動手摺25の手摺本体26の固定手摺21の周面に沿った回動に伴い、本体部31がX方向に沿って変位する結果、開口31Aによって、固定手摺21が押圧され、支持部材30の軸方向の移動が規制される。このため、手摺本体26の回動に連動して、可動手摺25の基端部27側での固定が実現される。なお、板ばね部材である被押圧部35の強度や、固定ねじ35B(図5、図13参照)による本体部31への固定位置の調整によって、固定手摺21に対する押圧力を調整することができる。
(支持部材の壁面ローラ)
図13に示すように、本体部31には、さらに壁面ローラ37が設けられる。壁面ローラ37は、壁面17Aに接触して転動する回転部材である。壁面ローラ37は、本体部31と壁面17Aとの間に介在するように、壁面17Aと対向する位置(手摺本体26と反対側の位置)に設けられている。壁面ローラ37は、本体部31においてZ方向に挿通されたピン37Aに対して軸支されている。図13に示すように、第1実施形態では、壁面ローラ37は、本体部31に4つ設けられている。壁面ローラ37は、例えば、合成樹脂や合成ゴム等、一定の弾性を有する部材を用いて作製でき、弾性変形可能である。
図11に示したように、可動手摺25が中間状態である場合、壁面17Aと支持部材30との間には、隙間が形成される。また、壁面ローラ37の外周側は、支持部材30の本体部31の壁面17側の端面よりも、壁面17側に突出して接触している。このため、支持部材30が軸方向(Y方向)に移動する際、支持部材30の本体部31が壁面17Aに接触しないように、本体部31の軸方向の移動が、壁面ローラ37によってガイドされる。結果、支持部材30の本体部31が可動手摺25の軸方向の移動を妨げることなく、可動手摺25をスムーズに移動でき、可動手摺25の軸方向の位置の変更を容易かつ精度よく行うことができる。
一方、可動手摺25が起立状態又は倒伏状態で固定される際、壁面ローラ37が弾性変形可能であるため、本体部31が壁面17Aに近接すると、壁面ローラ37が壁面17Aに押し付けられて圧縮変形し、本体部31が壁面17Aに接触できる。また、接触の際、壁面ローラ37がクッションのように機能するため、本体部31が壁面17Aに衝突して、壁面17Aが損傷することを防止できる。すなわち、可動手摺25が中間状態である場合には壁面ローラ37が本体部31から壁面17側に突出していても、中間状態から起立状態への切替の際、又は、中間状態から倒伏状態への切替の際には、壁面ローラ37が弾性変形することによって円滑に切替できる。
なお、第1実施形態では、壁面ローラ37は、本体部31の上下に2つずつ設けられた場合が例示されたが、本発明では、壁面ローラ37の数は、壁面17と本体部31との円滑な摺動を可能にできればよく、特に限定されない。例えば、壁面ローラ37は、本体部31の上下に1つずつ設けられてもよいし、3つ、或いは5つ以上設けられてもよい。また、壁面ローラ37が1つある場合も除外されないが、安定性を考慮して、壁面ローラ37は2つ以上であることが好ましい。
(支持部材の手摺ローラ)
図13及び図14に示すように、本体部31には、さらに手摺ローラ39が設けられてもよい。手摺ローラ39は、本体内部においてX方向に挿通されたピン39Aに対して軸支され、固定手摺21の外周面に当接(接触)しながら転動する回転部材である。手摺ローラ39が設けられていることで、可動手摺25の固定手摺21の軸方向の移動がより円滑になり、可動手摺25の水平方向の位置変更が容易かつ精度よく行える。このため、固定された可動手摺25が軸方向における最適な位置に提供される。
特に、手摺ローラ39は、固定手摺21の外周面の内、鉛直方向(図14におけるZ方向)の上側の外周面に接触するように、配置される。このため、本体部31を含む可動手摺25の重さによって、手摺ローラ39が固定手摺21に接触しやすくなり、手摺ローラ39を介した可動手摺25の移動が、より円滑になる。従って、可動手摺25の水平方向の位置変更が容易かつ精度よく行える。このため、固定された可動手摺25が軸方向における最適な位置に提供されるとともに、可動手摺25の軸方向の移動の規制が解除された後、可動手摺25をスムーズに移動可能となる。
(係止部材)
係止部材50は、図4に示したように、可動手摺25の先端部28側に設けられている。係止部材50の下部の中央には、側面視又は断面視で、略半円形状の凹部53が設けられている。凹部53内には、可動手摺25の倒伏状態において、可動手摺25の支持部材30と反対側に位置する壁面17B側の固定手摺23が収容される。
係止部材50には、回転摘み57、連結軸58及び回転ストッパ59が設けられている。回転摘み57は、図2及び図4に示すように、円筒状であり、係止部材50の本体部51の上面上に回転自在に取り付けられ、使用者が指で摘まみ回転させることができる。連結軸58は、係止部材50の内部を、図4中の上下方向に沿って貫通して配置され、連結軸58の上端は、回転摘み57に連結されている。回転ストッパ59は、図3及び図4に示すように、固定手摺23に接する側の下部が上部より拡径した楕円柱状であり、回転ストッパ59の上面には、連結軸58の下端が連結されている。回転ストッパ59は、回転摘み57の回転に連動して回転する。
回転ストッパ59の下部は、図3に示すように、凹部53の内側に張り出すように延びる状態と、凹部53と重ならないように凹部53の外側で延びる状態とに切り替わる。図4に示すように、側面視又は断面視で、回転ストッパ59の下部が凹部53の内側に張り出すように延びた状態では、張り出し部分が固定手摺23を下側から受けるように位置し、凹部53の下側の領域が、張り出し部分によって部分的に覆われる。このため、固定手摺23と係止部材50とが堅固に嵌合し、結果、可動手摺25は、固定手摺23に対して安定的に固定される。
<可動手摺の操作例>
次に、第1実施形態に係る可動手摺25の操作例について、図4、図9及び図15を参照しながら、説明する。まず、図4に示すように倒伏状態である可動手摺25を、図9に示す中間状態へと切り替える際、可動手摺25の操作者は、手摺本体26の先端部28側に設けられた係止部材50による固定を解除する。係止部材50による固定が解除された後、操作者によって、可動手摺25は、固定手摺21を回転軸として回動する。回動によって、支持部材30の固定手摺21の軸方向に沿った移動の規制が解除される。
次に、図15に示すように、可動手摺25を固定手摺21の軸方向に沿って移動させ、水平方向(図15中のY方向)の位置を変更する。中間状態では、可動手摺25の固定手摺21の軸方向の移動が規制されていないため、手摺本体26を廊下に架け渡す位置を変更可能となり、固定された可動手摺25を所望の位置に配置できる。
また、中間状態では、手摺本体26が、壁面17Aに対して鉛直方向から斜めとなった状態(図9参照)で、支持部材30を固定手摺21の軸方向に移動できる。このため、可動手摺25の移動に際し、利用者が壁面17A側に近接して可動手摺25を操作したり、壁面17Aの近くまで手を伸ばして可動手摺25を移動させたりする必要がない。結果、固定手摺21に対して固定された可動手摺25を、水平方向の様々な位置に設けることが容易となる。
また、図8及び図15に示すように、可動手摺25の基端部27は、支持部34の回動部36において、固定手摺21の軸方向(Y方向)と直交する方向(Z方向)に延びる中心軸Vを回転軸として、回動可能である。このため、可動手摺25を固定手摺21の軸方向に移動させる際に、固定手摺21との干渉(基端部27でのモーメントによる齧り)が起き難く、円滑な移動が実現される。
(作用効果)
第1実施形態に係る可動手摺25によれば、可動手摺25の倒伏状態において、廊下を往来する人間に対し、可動手摺25の奥側への進入が規制されていることを警告できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、手摺本体26がロック位置に配置された倒伏状態である場合に、本体部31によって、固定手摺21が押圧され、筒状部33の軸方向の移動が制限される。このため、可動手摺25が倒伏状態である場合に、筒状部33及び支持部材30の軸方向の移動が規制され、可動手摺25の基端部27側での固定が簡便に行われる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、手摺本体26と連結した回動支持部材32によって、回動に伴い本体部31が変位する結果、開口31Aによって、固定手摺21が押圧され、支持部材30の軸方向の移動が規制される。このため、手摺本体26の回動に連動して、可動手摺25の基端部27側での固定が実現されるので、可動手摺25の軸方向の移動の規制、及び、規制の解除が簡便に行われる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、ロック位置において筒状部33の内周面が手摺本体26を押圧するため、支持部材30の移動を強固かつ安定して規制できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、筒状部33の内周面には、ロック位置において固定手摺21に押圧される摩擦部33Cが設けられているため、支持部材30の移動の規制をより強化できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、筒状部33の外周面において、周方向に押圧部33A1,33A2に隣接する位置に、被押圧部35への押圧力を押圧部33A1,33A2よりも緩和した緩和部33Bが設けられている。このため、押圧部33A1,33A2に隣接した緩和部33Bによって、解放状態が実現されるので、固定状態、解放状態の切り替えが少ない角度で行われる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、圧迫部31Cは、本体部31における手摺棒が挿通される開口の一部である。筒状部33と本体部31の開口との両方を用いたせん断状態によって、固定手摺21を押圧できるため、支持部材30をより強固に固定できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、本体部31には、筒状部33を挟んで被押圧部35とは反対側の位置に筒状部33に向けて突出する本体凸部31Bが設けられている。また、筒状部33は、+X方向側で凹状部33D1,33D2が本体凸部31Bに接触する場合に、-X方向側で押圧部33A1,33A2が被押圧部35に接触する。また、+X方向側で凸状部33Eが本体凸部31Bに接触する場合に、-X方向側で緩和部33Bが被押圧部35に接触する。+X方向側の本体凸部31Bと-X方向側の突起部35Aとの両方によって、ほぼ同一直線上で筒状部33を保持するので、筒状部33の回転角度を正確に定めることができる。
加えて、被押圧部35は、筒状部33に向けて突出する突起部35Aを有する。また、筒状部33は、+X方向側で凹状部33D1,33D2が本体凸部31Bに接触する場合に、-X方向側で押圧部33A1,33A2が突起部35Aに接触する。また、+X方向側で凸状部33Eが本体凸部31Bに接触する場合に、-X方向側で緩和部33Bが突起部35Aに接触する。そして、図5、図10及び図12に示したように、倒伏状態、中間状態及び起立状態を通じて、筒状部33の中心軸Cの高さにおけるX方向の間隔Dを、ほぼ同一直線上で、一定に保持することが可能である。このため、可動手摺25の回転動作の間、筒状部33が、径方向(X方向)において、がたつくことが防止され、手摺本体26が、円滑に回転できる。
なお、本発明では、被押圧部は、押圧部33A1,33A2からの作用に対して反作用を生じさせることができる限り、板ばね部材に限定されない。被押圧部は、例えば、本体部31の内部において、押圧部33A1,33A2に対向する位置に本体部31と一体成形で設けられた壁状の部位であってもよい。例えば、本体部31においてX方向で互いに対向する側壁のうち、圧迫部と反対側に位置する方を被押圧部としてもよい。また、本体凸部31Bも必須ではない。筒状部33を支持する高さにおける本体部31の内側の間隔Dが一定であれば、筒状部を挟み込む本体部31の側壁の弾性力を活用して、筒状部を偏心させることもできる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、板ばね部材(被押圧部35)に突起部35Aが一体的に成形されるので、部品点数を減らすことができる。また、板ばね部材(被押圧部35)の弾性変形により、固定手摺21の外径が変化する場合に、大径の位置において樹脂被覆が傷つくことを抑制できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、手摺ローラ39が固定手摺21の上側で回転するため、手摺ローラ39には固定手摺21の荷重が加わらない。このため、手摺ローラ39及び手摺ローラ39の周囲の部材の負担を軽減できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、可動手摺25を固定手摺21の挿通方向(Y方向)に移動させる際、可動手摺25が支持部材30に設けられた支持部34において揺動(回転)する。このため、支持部材30と固定手摺21との干渉が起き難くなるので、円滑に摺動させることができる。具体的には、支持部材30が固定手摺21の軸方向に沿って摺動する際、支持部34によって、手摺本体26の基端部27が、中心軸Vを中心として回転(揺動)自在である。このため、可動手摺25を移動させる際、支持部材30の開口31Aと固定手摺21とが接触し難い。
一方、特許文献1の浴槽手摺(4)では、連結部(7)が回転しない。このため、浴槽手摺(4)を壁付き手摺(3)の軸方向に沿って移動させる際、連結部(7)にモーメントが生じ、結果、連結部(7)の開口が壁付き手摺(3)と接触し易くなり、円滑に摺動させることができない場合がある。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、筒状の支持部34によって、基端部27が回転自在に支持されているため、可動手摺25を容易に揺動(回転)できる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、係止部材50の固定手摺23への固定に伴い、本体部31の圧迫部31Cと筒状部33の内周面及び摩擦部33Cとが固定手摺21を押圧して挟持するため、支持部材30の軸方向への移動が規制される。すなわち、可動手摺25の基端部27側の固定に連動して、先端部28側もほぼ同時に固定されるため、全体の固定に要する行程を減らすことができる。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、本体部31の開口31Aが筒状部33の筒の内径より大きい。このため、筒状部33が、開口31Aの内側で径方向に沿って移動(偏心)しても、開口31Aが固定手摺21に衝突することが防止され、円滑な摺動に寄与する。
また、第1実施形態に係る可動手摺25によれば、固定手摺21に接触する手摺ローラ39が設けられているため、手摺ローラ39が設けられていない場合と比べ、支持部材30をより円滑に摺動させることができる。
-第2実施形態-
第1実施形態では、可動手摺25が、2本の固定手摺21,23の間に架け渡された場合が例示されたが、本発明では、可動手摺が架け渡される対象は、固定手摺だけに限定されず、可動手摺は、他の構造物に対しても適宜、架け渡されて使用することができる。図16中に例示した第2実施形態に係る可動手摺25Aは、浴室において固定手摺21Aに設けられて使用される。
第2実施形態では、可動手摺25Aが、浴室の壁面17に設置された手摺棒としての固定手摺21Aと他の構造物としての浴槽10との間に架け渡されて使用される点が、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態では、可動手摺25Aの手摺本体26Aの構成が、第1実施形態に係る可動手摺25の手摺本体26と異なる。また、第2実施形態では、第1係止部材40が更に設けられている点が、第1実施形態の場合と異なる。
(全体の概略構成)
浴槽10は、浴室内において床面19Aの上で壁面17に沿って配置されている。また、浴室内には、利用者の浴槽10への入出槽、又は入浴中の姿勢、動作を補助するために可動手摺25Aが設けられている。可動手摺25Aは、浴槽10の利用者本人又は利用者を介助する人によって使用される。浴槽10の側壁11の上部の外周面には、浴槽10の外縁に沿って延びるように溝部15が設けられている。
(固定手摺及び被係止具)
固定手摺21A及び被係止具23Aは、壁面17に設置された真直な中空の筒状部材であり、長手方向の両端部で壁面17に固定されている。固定手摺21Aは、図16中のY方向に沿って、延在されている。固定手摺21Aの形状は、可動手摺25Aの支持部材30が、固定手摺21Aの軸方向に沿って移動可能とされればよく、特に限定されない。例えば、支持部材30の移動をガイド可能なレールであってもよい。第2実施形態における固定手摺21Aは、第1実施形態に係る可動手摺25における固定手摺21に対応すると共に、本発明における「構造物に設置された手摺棒」に対応する。
被係止具23Aは、固定手摺21Aより上側で、固定手摺21Aと平行に設けられている。第2実施形態における被係止具23Aは、固定手摺21Aより短い手摺棒の固定手摺である。被係止具23A及び固定手摺21Aは、例えば、金属製であり、第1実施形態の固定手摺21,23と同様に、被係止具23A及び固定手摺21Aのそれぞれの筒の外周面は、樹脂被膜によって被覆されている。また、第1実施形態と同様に、樹脂被膜には、ディンプル(凹凸)形状を設けることができる。
<可動手摺の構造>
図16及び図17に示すように、可動手摺25Aは、手摺本体26Aと、支持部材30と、第1係止部材40と、第2係止部材50とを備える。第1係止部材40及び第2係止部材50は、可動手摺25Aの手摺本体26Aの先端部28側に取り付けられている。図16中の倒伏状態における可動手摺25Aは、例えば、四肢まひ等、不自由な部位の多い方向けの入出槽時、入浴中の姿勢、動作を保持するための手摺として使用できる。
図17に示すように、可動手摺25Aは、固定手摺21Aと被係止具23Aとの間で手摺本体26Aが架け渡された起立状態で、手摺として使用される。起立状態における可動手摺25Aは、例えば、片まひ等、半身が不自由な方向けの入出槽時の姿勢、動作の保持に用いられる。
手摺本体26Aは、可動手摺25Aを手摺として機能させるための棒状部材であり、側面視で略U字形状である。手摺本体26Aは、支持部材30から延出され、基端部側で、支持部材30を介して固定手摺21Aに支持されている。
支持部材30は、固定手摺21Aを回転軸として手摺本体26Aの基端部27を回動可能に支持する。本体部31及び支持部材30は、可動手摺25Aが起立状態及び倒伏状態である場合に、固定手摺21Aを押圧する。一方、中間状態では、本体部31及び支持部材30による固定手摺21Aの押圧は緩和される。第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、本体部31及び支持部材30による固定手摺21Aの押圧及び緩和によって、固定手摺21Aの軸方向に沿った可動手摺25Aの移動、及び、移動の規制が実現される。このため、可動手摺25Aの移動、及び、移動の規制についての重複説明を省略する。
(第1係止部材)
図16に示したように、可動手摺25Aの先端部28側には、第1係止部材40が設けられている。第1係止部材40は、可動手摺25Aの倒伏状態において、可動手摺25Aの先端部28の下側に位置する。第1係止部材40は、可動手摺25Aの倒伏状態において、可動手摺25Aを浴槽10の側壁11の上部に対して固定する。
図17に示すように、第1係止部材40は、載置部41と、係止部43とを有する。載置部41は、浴槽10の側壁11の上壁面13に載置される部位である。可動手摺25Aは、載置部41を介して浴槽10の側壁11の上壁面13に載置される。載置部41の上壁面13と対向する面には、合成ゴム等の弾性体から成るシート状部材が取り付けられている。載置部41は、先端が所定の曲率をもって上壁面13側へ向かって湾曲している。
係止部43は、可動手摺25Aの倒伏状態において浴槽10の側壁11の外面に配置可能とされている。係止部43は、載置部41との間で浴槽10の側壁11を保持する。このため、可動手摺25Aを浴槽10に対して強固に固定することが可能となる。
係止部43は、浴槽10の溝部15に挿入可能であり、浴槽10の溝部15内に収容され、溝部15の上面と接触する。上壁面13に載置された載置部41と係止部43とが側壁11を挟持することで、手摺本体26Aが浴槽10に固定され、可動手摺25Aを浴槽10に対してより強固に固定することが可能となる。
第1係止部材40は、さらに調整機構45を有している。調整機構45は、載置部41に対する係止部43の位置を調整する。係止部43の位置が調整されることで、第1係止部材40の挟持力を調節することができ、また、浴槽10の溝部15の位置が変化しても、係止部43を溝部15内に収容できる。
第1係止部材40は、さらに回動機構47を有している。回動機構47は、係止部43を回動させる。回動機構47によって、第1係止部材40は、退避位置と保持位置との間で回動可能である。ここで、保持位置とは、倒伏状態において係止部43が浴槽10の側壁11の外面に配置された位置であり、溝部15内に係止部43が収容される位置である。また、待避位置とは、可動手摺25の倒伏状態において係止部43が保持位置から待避して浴槽10の側壁11の保持が解除される位置であり、係止部43が保持位置から所定角度(本例は略90度)回動して、溝部15から離脱した位置である。
可動手摺25Aが起立状態から倒伏状態へと回動される際、保持位置の係止部43が待避位置に向けて略90度回動されることで、係止部43が浴槽10の側壁11と干渉することが防止される。また、可動手摺25が倒伏状態から起立状態へと回動されるときも、係止部43と浴槽10との干渉を防止できる。このため、可動手摺25Aの起立状態又は倒伏状態の切り替えが、スムーズに行われる。なお、第1係止部材40には、係止部43を保持位置にロック可能なロック手段(不図示)が設けられている。
(第2係止部材)
第2係止部材50は、図17に示すように、手摺本体26の先端部28の上側に、凹部53が上側に開口するように設けられている。第2実施形態における第2係止部材50の構成は、図4等を用いて説明した第1実施形態における係止部材50と等価であるため、重複説明を省略する。第2実施形態においても、回転摘み57を回転させることによって、図17中の回転ストッパ59の上部が凹部53の内側に張り出すように延び、凹部53の上側の領域が、張り出し部分によって部分的に覆われる。このため、起立状態において被係止具23Aと第2係止部材50とが堅固に嵌合し、可動手摺25Aは、被係止具23Aに対して安定的に固定される。
<変形例>
第1実施形態では、筒状部33は、倒伏状態、中間状態及び起立状態を通じて、中心軸Cの高さでX方向において、押圧部33A1,33A2及び緩和部33Bが配置され、筒状部33の中心軸CのX方向への偏心が実現されていた。しかし、本発明では、筒状部の形状は、これに限定されず、図19~図21中に例示した変形例のように、断面形状が多角柱状の筒状部63であってもよい。
変形例に係る可動手摺の筒状部63の軸方向(Y方向)において本体部31及び被押圧部35と接触する両端部の断面形状は、対称軸Wを中心に左右対称的な五角形状、又は、五角形に近似した六角形状である。また、筒状部63の肉厚は、ほぼ等しい。また、変形例では、本体部31には、図5で説明したような本体凸部31Bが設けられていないと共に、被押圧部35には、突起部35Aが設けられていない。図19中、対称軸W上には、筒状部63の中心軸Cが位置する。また、図19中には、中心軸Cから押圧部63A1までの距離D1が例示されている。
また、図19中の筒状部63の左下には、中心軸Cと重なって外側に突出した角部63Cと、角部63の左右で角部63に隣接する平坦部63Eとが形成されている。角部63Cは、筒状部63の外周面に、筒状部63の中心を挟んで緩和部63Bとは反対側の位置に設けられている。角部63Cは、本発明の「当接部」に相当する。
筒状部63の内周面の位置には、周囲より固定手摺21A側に張り出す板状の摩擦部63F1,63F2が設けられている。変形例においても、図5中の筒状部33の摩擦部33Cの場合と同様に、固定手摺21Aの樹脂被膜に食い込む摩擦部63F1,63F2が設けられ、摩擦部63F1,63F2によって、樹脂被膜は、復元可能な程度に弾性変形する。
変形例においても、図19に示すように、可動手摺25が倒伏状態である場合、押圧部63A1は、被押圧部35を押圧する。変形例においても、第1実施形態において図7で説明した場合と同様に、筒状部63の中心軸Cは、本体部31の圧迫部31Cに対してX方向に偏心している。このため、固定手摺21Aの-X方向側(図19中の右側)の外周面は、図19中の筒状部63の押圧部63A1の上下に位置する2個の内周面63D1,63D2と接触する。また、図示を省略するが、固定手摺21Aの+X方向側(図19中の左側)の外周面は、開口31Aの圧迫部31C(図7参照)と接触する。
このとき、筒状部63の押圧部63A1によって、被押圧部35が押圧され、本体部31は被押圧部35からの反作用を受ける。このため、固定手摺21Aは、筒状部63の内周面63D1,63D2と、摩擦部63F1と、本体部31の開口31Aと、により押圧され、筒状部63及び本体部31の軸方向の移動が規制される。
次に、図20に示すように、可動手摺25が倒伏状態から、中間状態へ向けて回動された場合、筒状部63が被押圧部35を最も押圧する領域は、押圧部63A1から緩和部63Bに移行する。緩和部63Bが被押圧部35に接触する場合に、本体部31における筒状部63を挟んで被押圧部35とは反対側の位置に、当接部としての角部63Cが当接する。図20中には、中心軸Cから緩和部63Bまでの距離D2が例示されている。距離D2は、距離D1より短く設定されているため、緩和部63Bが被押圧部35を押圧する力は、倒伏状態において押圧部63A1が被押圧部35を押圧する力より小さくなる。
このため、第1実施形態において図11で説明した場合と同様に、変形例でも、可動手摺25が中間状態である場合、可動手摺25が倒伏状態の場合に比べて、筒状部63の中心軸Cは、本体部31の開口31Aの中心軸側に寄っている。また、図20中で中心軸Cから最も離れた左側の角部63Cは、支持部材30の本体部31の内壁面を押圧する。このため、筒状部63の内周面と固定手摺21Aの外周面との間には、周全体に亘って間隙が生じ、本体部31の開口31A(図7参照)が、固定手摺21Aから離間する。そして、筒状部63の内周面と、本体部31の圧迫部31Cとによる、固定手摺21Aの挟持が緩和され、筒状部63及び本体部31の軸方向の移動規制が解除される。
そして、図21に示すように、手摺本体26がさらに上側に回動された場合、筒状部63が被押圧部35を最も押圧する領域は、緩和部63Bから押圧部63A2に移行する。図21中には、中心軸Cから押圧部63A2までの距離D1が例示されている。可動手摺25が起立状態の場合の距離D1と、倒伏状態の距離D1とは、ほぼ等しい。
可動手摺25が起立状態である場合、図19で説明した場合と同様に、図21中の筒状部63の押圧部63A2の上下に位置する2個の内周面63D1,63D3と、摩擦部63F2と、本体部31の圧迫部31Cとによって、固定手摺21Aが挟持される。そして、筒状部63及び本体部31の軸方向の移動が規制される。
変形例においても、可動手摺25が起立状態又は倒伏状態の場合、筒状部63及び支持部材30の軸方向の移動が規制され、可動手摺25の基端部27側での固定が強固に行われる。また、固定手摺21Aが押圧されて固定されるので、固定手摺21Aに対し、別途、固定のための構造、加工を加えることなく、可動手摺25の固定を実現できる。また、可動手摺25が中間状態である場合、可動手摺25をY方向に沿って任意の位置へ移動できる。
<その他の実施形態>
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。例えば、本発明に係る可動手摺は、建物の廊下や浴室に限定されず、他の構造物に設置された手摺棒にも適用できる。
また、例えば、第2実施形態において、浴槽10に溝部15が設けられている例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、浴槽10には溝部15が設けられず、浴槽10の側壁11が平坦であってもよい。
また、第1実施形態では、1個の可動手摺25が設けられている例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、可動手摺25は、1本の固定手摺21又は1本の固定手摺21Aに対して、複数設けられてもよい。
また、第1実施形態では、可動手摺25は、廊下に面した壁面17Bに設けられた固定手摺23に連結された場合が例示されたが、本発明では、可動手摺25が連結される対象物としては、これに限定されない。例えば、床面上に載置される金属製のベースプレートと、ベースプレートの上面上に設けられた複数本の支柱(縦手摺)と、複数本の支柱に架け渡された手摺棒(横手摺)とを有する据置式の手摺装置が、可動手摺25の連結対象として採用されてもよい。すなわち、土地や建物に固定された手摺装置だけでなく、移動可能な手摺装置に対しても、本発明に係る可動手摺を連結できる。
また、第1及び第2実施形態では、ロック位置において、筒状部と本体部とが接触した場合が例示的に説明されたが、本発明では、ロック時に必ずしも筒状部と本体部とが接触しなくても構わない。また、第1及び第2実施形態では、ロック位置が、倒伏状態及び起立状態という、2つ設けられた場合が例示的に説明されたが、本発明ではロック位置は、2つの場合に限られず、例えば、倒伏状態又は起立状態のいずれか一方のときだけロックされる等、1つだけであってもよい。
また、固定手摺が壁面に縦(垂直)に設置され、可動手摺の支持部材が固定手摺に沿って縦方向に移動し、かつ、手摺本体が横(水平)方向に回動する場合も、本発明に含まれ得る。すなわち、本発明では、固定手摺21,21Aの周方向に沿って可動手摺が回動する際のそれぞれの状態の表現は、第1及び第2実施形態で説明した「倒伏」「起立」という表現のみに限定されない。
また、図1~図21中の可動手摺の構成を部分的に組み合わせて、本発明に係る可動手摺を実現することもできる。以上のとおり本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。