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JP7535261B2 - 希土類化合物及びこれを用いた磁気記録媒体並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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希土類化合物及びこれを用いた磁気記録媒体並びにこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、希土類化合物及びこれを用いた磁気記録媒体並びにこれらの製造方法に関する。
クラウドコンピューティングや家電製品のデジタル化などにより、世界で取り扱われる情報量は爆発的に増加している。これらデータを格納するデバイスとして最も重要なのが、ハードディスクドライブ(HDD)である。HDDは、安価・大容量・不揮発という長所を兼ね備えているので、当分の間大容量データのストレージデバイスとして使われると考えられている。
HDDの中で情報を記録する部分を磁気記録媒体と呼ぶが、現在使われている媒体は約8nmのサイズのCoCrPt合金微粒子がSiOの非磁性マトリックス中に均一に分散したような微細組織を持っている。現在の記録密度は約1.5Tbit/inであるが、4Tbit/inを超える密度を実現することが期待されている。媒体の高密度化には、CoCrPt合金の更なる微粒子化が必要である。しかし、CoCrPt合金の磁気異方性は小さく、4Tbit/inを実現するのに必要とされる5nm以下のサイズでは熱エネルギーによる確率的な磁化反転が起こる(KV≦kT,KVは強磁性微粒子の異方性エネルギー、kTは熱エネルギー)ため、熱擾乱の問題が生じる。これを克服するには、Kの大きな材料を媒体に使う必要がある。
そのような材料として注目されているのがL1の規則構造を持つFePtである。FePtは、7×10erg/ccと、CoCrPt合金よりも一桁高い磁気異方性を持つので、4nmまでサイズを低減することが可能である。しかし、微粒子サイズを小さくすると同時に、磁化反転磁場が3T以上の大きな値になり、書き込み用の磁気ヘッドが生成できる磁場(約1.5T)を上回り、現行の記録方式では書き込みができない。この問題を解決する新しい磁気記録方式として、書き込みの時のみ局所的に媒体をキュリー点(強磁性が消滅する温度)まで温度を上げ、書き込みを行うという熱アシスト磁気記録(Heat Assisted Magnetic Recording,HAMR)が提案されている。FePtはHAMR媒体として着目されており、現在までにSeagate社により1.5Tbit/inの記録密度がデモンストレーションされた例がある。
Y. Hirayama, et al., Scr. Mater. 138 (2017) 62-65. D. Ogawa et al., Scr. Mater. 164 (2019) 140.
早期の実用化が期待されるHAMRではあるが、媒体の温度を局所的にキュリー点付近(~700K)にまで上げる動作を繰り返すために、信頼性に問題がある。そのため、キュリー点が低くかつ高い磁気異方性を示す媒体材料の開発が急務となっている。
そこで、本発明は、Sm(Fe0.8Co0.212化合物に代表されるThMn12型構造を有する希土類化合物を用いて、磁気記録媒体に適用可能な磁気特性を有する新規な化合物とこれを用いた磁気記録媒体、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
ThMn12型構造を有するSm(Fe0.8Co0.212化合物は、NdFe14B磁石を超える永久磁石の候補材料として期待されている。例えば、非特許文献1では、Sm(Fe0.8Co0.212化合物は、飽和磁化が1.78T、異方性磁場が12T、キュリー温度が859Kを有し、いずれもNdFe14Bを上回る値であることが報告されている。また、非特許文献2では、Cu-GaやMg-Znなどの低融点の共晶合金をSm(Fe0.8Co0.212粒界に拡散させることにより、0.87Tの保磁力が得られたことが報告されている。
本発明者らは、鋭意検討を行なった結果、ThMn12型構造を有する希土類化合物の組成に所定量のホウ素(B)を含有させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を要旨とする。
[1] 全体組成が、式1:(R (1-x) (上記式中、Rは、Sm、Pm、Er、Tm、及び、Ybからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Rは、Zr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、及び、Luからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、TはFe、Co、及び、Niからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mはホウ素であり、xは、0~0.5の数であり、aは6.0~13.7原子%の数であり、cは0原子%より大きく、12原子%以下の数であり、bは、100-a-c原子%で表される数である。)で表され、ThMn12型の結晶相を主相とし、前記主相間に存在するアモルファスの粒界相を有する希土類化合物。
[2] 前記主相中のホウ素の含有量と前記粒界相中のホウ素の含有量の差の絶対値が、1.0原子%以上である[1]に記載の希土類化合物。
[3] 前記Rが、少なくともSmを含む、[1]又は[2]に記載の希土類化合物。
[4] 実質的にTi、V、Mo、Nb、Cr、及び、Wのいずれも含有しない[1]~[3]のいずれかに記載の希土類化合物。
[5] 前記TがFe、及び、Coである、[1]~[4]のいずれかに記載の希土類化合物。
[6] 所定の方向に沿って、結晶方位、及び、磁化容易軸からなる群より選択される少なくとも一方が優先配向している[1]~[5]のいずれかに記載の希土類化合物。
希土類化合物
[7] 前記aが、6.0~10.0原子%である、[1]~[6]のいずれかに記載の希土類化合物。
[8] 磁性層に[1]~[7]のいずれかに記載の希土類化合物を用いた磁気記録媒体。
[9] 前記磁性層の結晶方位が、[001]方向に優先配向している[8]に記載の磁気記録媒体。
[10] 基板上に[1]~[7]のいずれかに記載の希土類化合物を含有する磁性層をスパッタリング法によって製造する方法であって、前記基板を250~400℃に加熱して、前記希土類化合物を構成する元素(R、R、T、及び、M)を含むターゲットをスパッタした後、前記基板加熱温度未満の温度で冷却する方法。
本発明によれば、ThMn12型構造を有する希土類化合物の組成に所定量のホウ素(B)を含有させることにより、ThMn12型の結晶相を主相とし、当該結晶相間にアモルファスの粒界相が存在するグラニュラー構造を形成することができる。
このため、本発明によれば、優れた保磁力を有する希土類化合物を提供することができ、この希土類化合物を、キュリー点が低くかつ高い磁気異方性を示す媒体材料として、磁気記録媒体の磁性層に用いることができる。
また、本発明によれば、この希土類化合物を含有する磁性層をスパッタリング法によって簡便に製造することができる。
本発明の実施形態に係る磁気記録媒体の層構造を示す模式図である。 膜の厚みが100nmである例1及び例2の薄膜の、面内(In-Plane(IP))及び面直(Out-of-Plane(OOP))方向の磁化曲線である。 例1及び例2の薄膜の、面内及び断面のBF-TEM像である;(a)例1、(b)例2。 例1及び例2の薄膜のHAADF-STEM像である;(a)及び(b)例1、(c)及び(d)例2。 例1及び例2の薄膜の、面内及び断面のSTEM-EDS像である;(a)例1、(b)例2。 (a)、(b)例1の膜の3DAPによる分析結果である。 (a)、(b)例2の膜の3DAPによる分析結果である。 例1及び例2の薄膜の微細構造を示す模式図である。 例3(a)、及び、(b)~(e)のSm(Fe0.8Co0.212B膜の面外(Out-of-Plane)XRDパターンである。 例3(a)、及び、(f)~(i)のSm(Fe0.8Co0.212B膜のOut-of-Plane XRDパターンである。 例3(a)、及び、(b)~(e)の膜の、面内及び面直方向の磁化曲線である。 例3(a)、及び、(f)~(i)の膜の、面内及び面直方向の磁化曲線である。 例3(c)~(i)の膜の磁気特性を示す図である;(a)飽和磁化(M)、(b)保磁力(H)、(c)ゼロ磁場での残留磁化比(M/M)、(d)垂直異方性(K)。 膜の厚みを20nmから200nmまで変化させた例4、例7~10及び例12の薄膜のOut-of-Plane XRDパターンである。 膜の厚み(tSFC)を変化させた例4~12の薄膜の格子定数a、c、及び、c/aの変化である。 膜の厚みを変化させた例4、例7~10及び例12の薄膜の磁化曲線である。 Bの含有量を一定とした薄膜の磁化(M)、ゼロ磁場での残留磁化比(M/M)、保磁力(H)、垂直異方性(K)の膜の厚み(tSFC)に対する依存性である。 保磁力の温度依存性である。 膜の厚みを50nmとした例13及び例15~21のSm(Fe0.8Co0.212B膜のOut-of-Plane XRDパターンである。 膜の厚みを一定とした例13~18及び例21の薄膜の格子定数a、c、及び、c/a(縦軸)と、Bの含有量(横軸)との関係である。 膜の厚みを一定としてBの含有量を変化させた例13及び例15~21の薄膜の、面内及び面直方向の磁化曲線である。 膜の厚みを一定とした薄膜の磁化(M)、ゼロ磁場での残留磁化比(M/M)、保磁力(H)、及び、垂直異方性(K)のBの含有量への依存性である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断らない限り「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含有する範囲を意味する。
[希土類化合物]
本発明の実施形態に係る希土類化合物(以下、「本実施形態の希土類化合物」ともいう。)は、全体組成が、式1:(R (1-x) で表され、ThMn12型の結晶相を主相とし、前記主相間に存在するアモルファスの粒界相を有する。
ここで、上記式中、Rは、Sm、Pm、Er、Tm、及び、Ybからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Rは、Zr、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、及び、Luからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、TはFe、Co、及び、Niからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mはホウ素であり、xは、0~0.5の数であり(0≦x≦0.5)、aは6.0~13.7原子%の数であり(6.0≦a≦13.7)、cは0原子%より大きく、12原子%以下の数であり(0<c≦12)、bは、100-a-c原子%で表される数である。
以下、本実施形態の希土類化合物の構成について詳述する。
〔全体組成〕
本実施形態の希土類化合物の全体組成は、(R (1-x) で表される。
本明細書において、「全体組成」は、ICP発光分光分析装置(Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer ; ICP-OES)により求められ、その測定方法は後述する実施例に記載したとおりである。
・全体組成中のR
式1中、Rは、Sm(サマリウム)、Pm(プロメチウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、及び、Yb(イッテルビウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素(以下、「特定希土類元素」ともいう。)である。Rの特定希土類元素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特定希土類元素は、スティーブンス因子を有する希土類元素である。スティーブンス因子とは、希土類元素の内殻にある4f電子の電化密度(形状)に関する物理量である。これが負であると対称軸に対して縮んだ形、正であると球対称から伸びた形になる。4f電子雲は周りのイオンからの結晶場を受けて、その安定方向が決まるため、電子雲の形状は磁気異方性の向きを決定づける。
本実施形態の希土類化合物は、スティーブンス因子が正である元素を含有するため、優れた磁気特性を有する。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する希土類化合物が得られる点で、Rとしては、スティーブンス因子が正であるSm、Yb、Tm、及び、Pmからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、Sm、Yb、及び、Tmからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、Sm、及び、Ybからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
なかでも、Smは、スティーブンス因子が正で、基底状態では後述するTで表される原子と強磁性的な結合をすると推測され、RがSmを含有すると、得られる希土類化合物はより優れた本発明の効果を有する。
従って、本実施形態の希土類化合物は、Rとして、少なくともSmを含有することが好ましい。
・全体組成中のR
式1中、Rは、Zr(ジルコニウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、及び、Lu(ルテチウム)からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「特定元素」ともいう。)である。Rの特定元素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
は本実施形態の希土類化合物が有するThMn12型の結晶相の安定化に寄与する成分である。
このうち、Y、及び、Ce(中でも、Ce(IV)が好ましい。)は、それ自体は磁性を有さない元素であるものの、希土類化合物がRとして上記を含有することによって、得られる希土類化合物は優れた安定性を有する。
Gd、及び、Zrは、得られる希土類化合物の安定性をより向上させる機能を有し、特に、RがSmを含有する場合に、その効果がより顕著である。すなわち、本実施形態の希土類化合物が、Rとして少なくともSmを含有する場合、本実施形態の希土類化合物は、Rとして、Gd、及び、Zrからなる群より選択される少なくとも1種の特定元素を含有することが好ましい。
La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、及び、Luは、スティーブンス因子が負、又は、ゼロであり、本実施形態の希土類化合物が有するThMn12型の結晶相の安定化に寄与する。一方で、R元素は、R元素に由来する磁気異方性を弱める作用もまた有するため、結晶相の安定性と、磁気特性の両面から、その含有量を調整することが好ましい。
具体的には、本実施形態の希土類化合物におけるR、及び、Rの含有量の合計に対するRの原子%(at%)基準の含有量の比(式中xで表される数)は0.5以下であり、0.4以下が好ましく、0.3以下が更に好ましい。
なお、下限としては特に制限されないが、本実施形態の希土類化合物は、Rを含有していなくてもよい。すなわち、本実施形態の希土類化合物においては、0≦x≦0.5であり、0≦x≦0.4が好ましく、0≦x≦0.3がより好ましい。
全体組成中におけるRとRとの原子%基準の合計含有量aは6.0≦a≦13.7である。より優れた本発明の効果を有する希土類化合物が得られる点で、aとしては、6.0≦a≦10であることが好ましい。
・全体組成中のT
式1中、Tは、Fe(鉄)、Co(コバルト)、及び、Ni(ニッケル)からなる群より選択される少なくとも1種の元素である。これらは鉄族元素に分類され、常温、及び、常圧において、強磁性を示す点で共通の性質を有する。従って、TとしてのFe、Co、及び、Niは互いに置換可能であり、Tとしては上記鉄族元素を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
全体組成中のTの含有量としては、上述したa、及び、後述するcとの関係で100-a-cを満足すれば特に制限されないが、一般に50~95原子%が好ましく、60~85原子%がより好ましい。
Tとしては、より優れた本発明の効果を有する希土類化合物が得られる点で、Fe、及び、Coからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、Fe、及び、Coを併用することが好ましい。
TとしてCoを含有する場合、希土類化合物の磁化がより向上し、キュリー温度がより上昇する。言い換えると、本実施形態の希土類化合物では、TとしてのCoの含有量を調整することによって、磁気特性を損なわずにキュリー点を制御することができる。
Tは、Fe、及び、Coであることが好ましい。すなわち、本実施形態の希土類化合物の全体組成としては、式2:(R (1-x) (FepCo1-pで表されることが好ましい。このとき、pは、0.5~1.0の数である。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する希土類化合物が得られる点で、本実施形態の希土類化合物の全体組成としては、式3:(Sm1-x (FeCo1-pで表されることがより好ましい。このとき、pは、0.5~1.0の数であり、好ましくは、0.9~1.0の数である。
・全体組成中のM
Mはホウ素(ホウ素元素、B)である。全体組成中のホウ素の含有量としては、0原子%より大きく、12原子%以下が好ましい。
従来、ホウ素のような軽元素を1-12相(ThMn12型の結晶相)に添加することによれば、磁気異方性が面内に変化するために得られる希土類化合物の保磁力が低下してしまうと考えられてきた。
しかし、本発明者らは上記のような技術常識にとらわれずに、様々な元素の可能性を多面的な視点で検討してきた。その努力の結果、所定量のホウ素を含有する式1で表される全体組成を有する希土類化合物であれば、優れた保磁力を有することを見出し、本発明を完成させた。
更に、本実施形態の希土類化合物は、驚くべきことに、後述する実施例で示すように、構造中に、1-12相のほかにα-Fe(α-(Fe,Co))相等の結晶相を有するにもかかわらず、優れた保磁力を有している。一般に、1-12相を主相とする希土類化合物の構造中に、上記他の結晶相が混在することは、保磁力を低減させたり、減磁曲線の角形性を低下させたりする原因となり得ると考えられてきたが、本発明者らの鋭意の検討によって、本実施形態の希土類化合物については、上記他の結晶相が含有されている場合であっても、当業者の予想し得ない特に優れた特性を有することが明らかにされた。
結晶相として1-12相のほかにα-Fe(α-(Fe,Co))相等を有する場合でも優れた保磁力が発揮される理由は必ずしも明らかではないが、後述する実施例で示す構造解析の結果から、本発明者らは以下の通り推測している。すなわち、ホウ素を添加することにより1-12相を主相とする結晶相の粒界にホウ素濃度が高いアモルファス相(B濃化相)が形成され、α-Fe(α-(Fe,Co))相等の軟磁性相が形成されても、当該アモルファスの粒界相(B濃化相)に含まれる非磁性のホウ素化合物により磁壁の移動が制限されたため、あるいは当該アモルファス相と主相間の磁壁エネルギー差が急峻なため保磁力が増加したと考えられる。
また、上記アモルファスの粒界相(B濃化相)による保磁力の向上効果をより確実に得る観点から、主相(1-12相)中のホウ素の含有量と当該アモルファスの粒界相(B濃化相)中のホウ素の含有量の差の絶対値は、1.0原子%以上であることが好ましい。また、当該ホウ素の含有量の差の絶対値は、全体組成中のホウ素の含有量に応じてより大きい値であってもよく、例えば、1.5原子%以上であってもよく、2.0原子%以上であってもよく、3.0原子%以上であってもよく、4.0原子%以上であってもよく、5.0原子%以上であってもよく、7.5原子%以上であってもよく、10原子%以上であってもよい。
より具体的には、主相(1-12相)中のホウ素の含有量は0原子%超である。従って、上記アモルファスの粒界相(B濃化相)中のホウ素の含有量は、1.0原子%超であることが好ましい。また、上記アモルファスの粒界相(B濃化相)中のホウ素の含有量は、1.5原子%以上であってもよく、2.0原子%以上であってもよく、3.0原子%以上であってもよく、4.0原子%以上であってもよく、5.0原子%以上であってもよく、7.5原子%以上であってもよく、10原子%以上であってもよい。
主相(1-12相)中のホウ素の含有量の上限としては、全体組成中のホウ素の含有量(原子%)を基準として、その半分の値から1.0を除算して得た値未満の値であることが好ましい。例えば、本実施形態の希土類化合物の全体組成中のホウ素の含有量が12原子%である態様では、主相(1-12相)中のホウ素の含有量は、5.0原子%未満が好ましく、4.0原子%以下がより好ましく、3.0原子%以下が更に好ましく、2.0原子%以下が特に好ましく、1.0原子%以下が最も好ましく、0.5原子%以下がより最も好ましい。
上記アモルファスの粒界相(B濃化相)中のホウ素の含有量は、全体組成中のホウ素の含有量(原子%)を基準として、その半分の値以上の値であることが好ましい。例えば、本実施形態の希土類化合物の全体組成中のホウ素の含有量が12原子%である態様では、上記アモルファスの粒界相(B濃化相)中のホウ素の含有量は、6.0原子%以上が好ましく、6.5原子%以上がより好ましく、7.0原子%以上が更に好ましく、8.0原子%以上が特に好ましく、9.0原子%以上が最も好ましく、10原子%以上がより最も好ましく、10.5原子%以上が更に最も好ましい。なお、上記アモルファスの粒界相(B濃化相)中のホウ素の含有量の上限としては特に制限されず、全体組成中のホウ素の含有量によって変動し得ることが理解されるべきである。
また、より優れた本発明の効果を有する希土類化合物が得られる点で、本実施形態の希土類化合物は、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Cr(クロム)、及び、W(タングステン)(以下、「除外元素」ともいう。)のいずれをも実質的に含有しないことが好ましい。上記除外元素を実質的に含有しない希土類化合物は、より優れた最大磁気エネルギー積(BH)maxおよび保磁力を有する。
なお、本明細書において、実質的に含有しないとは、ICP-OES分析によって主相中に含まれる元素を分析した場合に、除外元素の含有量が、全原子中の0.1原子%以下であることを意味し、0.01原子%以下であることがより好ましく、0.001原子%以下であることが更に好ましい、
なお、上記主相が2種以上の除外元素を含有する場合、上記2種以上の除外元素の合計が上記数値範囲内であることが好ましい。
本実施形態の希土類化合物は、ThMn12型の結晶相を有していれば他の結晶相を有していてもよい。他の結晶相としては特に制限されないが、例えば、全体組成がSm(Fe0.8Co0.212Bで表される場合、α-Fe、α-(Fe,Co)、Sm(FeCo)、及び、Sm(FeCo)17相等が挙げられる。
より優れた本発明の効果が得られやすい点で、本実施形態の希土類化合物は、ThMn12型の結晶相を主相とし、α-Fe、α-(Fe,Co)、Sm(FeCo)、及び、Sm(FeCo)17相等を他の結晶相とする構造であることが好ましい。
なお、本明細書において、主相とは希土類化合物のX線回折測定において、検出されるピーク強度が最も大きい相を意味する。
本実施形態の希土類化合物において、結晶方位、及び、磁化容易軸の配向状態としては特に制限されないが、最大エネルギー積(BH)maxがより大きくなりやすい点で、結晶方位、及び、磁化容易軸からなる群より選択される少なくとも一方が、所定の方向に沿って優先配向していることが好ましい。結晶方位、及び、磁化容易軸からなる群より選択される少なくとも一方が所定の方向に沿って優先配向した希土類化合物を、本明細書においては、磁気異方性を有する希土類化合物ともいう。
すなわち、本実施形態の希土類化合物は、磁気異方性を有する希土類化合物であることが好ましい。
例えば、ThMn12型の結晶相を有する磁性化合物であるSm(Fe0.8Co0.212は、[001]方向が磁化容易軸であり、上記磁化容易軸が所定の方向に優先配向している場合、より優れた最大エネルギー積(BH)maxが得られる。
本実施形態の希土類化合物は、ThMn12型の結晶相を有しており、この結晶方位、及び/又は、磁化容易軸が所定の方向に優先配向していると、より優れた本発明の効果を有する希土類化合物が得られやすい。
なお、本明細書において、「優先配向」とは、XRD(X-ray diffraction)の面内測定(In-Plane XRD)、又は、通常の薄膜X線回折(面外(Out-of-Plane)XRD)において、検出されるThMn12型の結晶相以外の相(第2相)のピーク強度に対する、ThMn12型の結晶相の(00L)からの回折線のピーク強度が、1以上であることを意味し、2以上であることが好ましい。
本実施形態の希土類化合物は、ThMn12型の結晶相以外の相(すでに説明したα-Fe相等)を有していてもよく、この場合、α-Fe相に由来するピークは、ThMn12型の結晶相の所定の結晶方位等に由来するピークには含まれない。
〔希土類化合物の用途〕
本実施形態の希土類化合物は、優れた保磁力を有するため、キュリー点が低くかつ高い磁気異方性を示す媒体材料として、磁気記録媒体の磁性層に好ましく用いることができる。
[磁気記録媒体]
図1は、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体(以下、「本実施形態の磁気記録媒体」ともいう。)の層構造を示す模式図である。
図1において、本実施形態の磁気記録媒体10(垂直磁気記録媒体)は、基板20上に、熱吸収層30、下地層40、及び、磁性層50をこの順に備えている。
基板20としては、限定されるものではないが、MgO単結晶基板、又は、ガラス基板が好ましく用いられる。基板用ガラスとしては、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダタイムガラス等が挙げられるが、なかでもアルミノシリケートガラスが好適である。また、アモルファスガラス、結晶化ガラスを用いることができる。なお、化学強化したガラスを用いると、剛性が高く好ましい。本実施形態において、基板主表面の表面粗さはRmaxで10nm以下、Raで0.3nm以下であることが好ましい。
熱アシスト磁気記録装置においては、磁気記録媒体への書き込み時にレーザーによって書き込み領域が一時的に600K以上の高温になるため、本実施形態の磁気記録媒体においては、基板20上に熱吸収層30を設けることが好ましい。熱吸収層30の材料としては、高熱伝導性の材料を用いることができ、具体的には、Ta、Cu(TaとCuの積層膜を含む)、NiTa合金のような金属が挙げられる。熱吸収層30の膜厚は、50~100nm程度の範囲とすることが適当である。熱吸収層30は、スパッタリング法を用いて形成することができる。
基板20上、好ましくは熱吸収層30を設けた基板20上には、下地層40(配向制御層)が設けられている。下地層40は、その上に形成される磁性層50(垂直磁気記録層)におけるThMn12型構造の磁化容易軸の垂直配向性(結晶配向を基板面に対して垂直方向に配向させる)、結晶粒径の均一な微細化、及び、主相(1-12相)がアモルファス粒界相に囲まれたグラニュラー構造を形成するための粒界偏析、等を好適に制御するために用いられる。
また、本実施形態においては、下地層40は、上層の磁性層50の格子ミスマッチによる格子欠陥を低減し、結晶性を改善できる形態が好ましい。すなわち、下地層40の材料は、磁性層50の格子定数と同程度であるものがより好ましく、磁性層50中のThMn12型構造の希土類化合物との格子定数ミスマッチが10%以内であるものが特に好適である。下地層40が、磁性層50中の希土類化合物との格子不整合が上記範囲内であることにより、下地層40による希土類化合物を主成分とする材料からなる磁性層50の結晶配向性の乱れを抑制し、微細構造を改善する効果が良好に発揮される。
下地層40の材料は、単結晶であっても多結晶であってもよいが、より優れた本発明の効果を有する磁気記録媒体が得られる点で、単結晶であることが好ましい。単結晶である下地層40を用いることにより、その上に形成される磁性層50が、よりエピタキシャル成長しやすく、結果として、より優れた本発明の効果を有する磁気記録媒体が得られる。
具体的には、本実施形態においては、下地層40として、MgO/X、又は、Mg-Ti-O/Xの2層構造を有する膜が好ましく用いられる。ここで、上記Xは、Pt、TiN、Ag、Au、Cr、Mo、V、Ti、Ta、Nb、及び、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属又は化合物である。
また、本実施形態においては、下地層40として、CrRu、Pt、Cr、Vを用いてもよく、この場合、下地層40は単層でもよく、複数層からなっていてもよい。複数層の場合、同じ材料の組み合わせはもちろん、異種材料を組み合わせることもできる。その場合、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、及び、これらの混合物のいずれであってもよい。
また、下地層40の膜厚は、特に制限されないが、磁性層50の構造制御を行うのに必要最小限の膜厚とすることが望ましく、例えば全体で5~30nm程度の範囲とすることが適当である。下地層40はスパッタリング法を用いて形成することができる。
磁性層50は、上述した本発明の実施形態に係る希土類化合物を主成分とする材料からなる。磁性層50は、上記希土類化合物を含有していればよく、その好適形態は上述した通りである。また、本実施形態においては、磁性層50の結晶方位が、[001]方向に優先配向していることが好ましい。
本実施形態において、磁性層50はスパッタリング法を用いて形成することができる。以下、スパッタリング法により磁性層50を形成する形態について詳述する。
スパッタリングを行う際の成膜装置のチャンバ内の圧力としては特に制限されないが、得られる磁性層50中の意図しない成分の混入をより減少させる観点で、10-6Pa以下が好ましく、10-8Pa以下がより好ましい。
また、スパッタリング法により基板20上に熱吸収層30、下地層40、及び、磁性層50を積層する場合、予め基板20の表面を清浄化することが好ましい。基板20の表面を清浄化する方法としては特に制限されないが、例えば、基板20自体をスパッタリングする方法等が挙げられる。上記によれば基板20上に形成された酸化被膜、及び、有機物等を除去できる。また、基板20を所定の温度(例えば、600~800℃程度)に加熱し、所定時間(例えば、10~30分間程度)保持して熱処理を施すことにより、基板20表面を清浄化してもよい。
スパッタリングの方法としては特に制限されないが、より低圧のAr雰囲気でスパッタリングが可能となるマグネトロン・スパッタリング法が好ましい。ここで、ターゲット材の厚みを調整することで、マグネトロン・スパッタリングの漏れ磁束の低減をより抑制し、スパッタリングをより容易にできる。スパッタリングの電源は、DC、及び、RFどちらでも使用可能であり、ターゲット材に応じて適宜選択できる。
磁性層50を形成する際の基板加熱温度(基板20の加熱温度)、成膜レート、及び、成膜時間としては特に制限されず、必要な磁性層50の厚みに応じて適宜調整すればよい。成膜レートは、スパッタリングのパワー、及び/又は、時間により調整可能である。
基板加熱温度は、上述した構造を有する本実施形態の磁気記録媒体がより効率的に得られる観点で、250~400℃が好ましく、300~350℃がより好ましい。
また、磁性層50の成膜(磁性層50の積層)後、基板加熱温度未満の温度で冷却することが好ましい。これにより、本実施形態の磁気記録媒体の効果をより確実に得ることができる。なお、上記基板加熱温度未満の温度で冷却する際の冷却手段及び冷却時間は特に制限されない。例えば、磁性層50の成膜後、基板20の加熱及び冷却を行わずに、自然冷却してもよい。上記自然冷却の場合、基板加熱温度の値や成膜装置のチャンバ内の雰囲気等によって異なるが、例えば、基板加熱温度が300~350℃の条件では、約20~50分後に基板20の温度は約50~70℃まで低下する。
また、磁性層50の成膜後、基板加熱手段の温度を、基板加熱温度未満の温度に設定し、所定時間保持することで基板20を冷却してもよい。この場合において、基板加熱手段の設定温度は上記基板加熱温度未満の温度であれば任意の温度であってよく、保持時間も任意の時間であってよい。
また、上述した基板加熱手段による冷却と自然冷却を組み合わせてもよい。
さらに、磁性層50の成膜後、窒素ガス等の冷却媒体を用いて基板20を冷却してもよく、これにより、より短い製造時間で本実施形態の磁気記録媒体を得ることができる。上記冷却媒体を用いる冷却の場合、冷却媒体の種類や基板加熱温度の値等によって異なるが、例えば窒素ガスを用いた場合、数分~10分程度で基板20の温度は20℃程度まで低下する。
なお、上述した冷却条件について、磁性層50の成膜時の基板加熱温度と冷却終了時の基板温度(基板20の温度)との差を冷却時間で除算して得られる平均冷却速度(℃/分)のおおよその目安としては、約3~85℃/分であってよい。
また、磁性層50(垂直磁気記録層)の上には、保護層(図示せず)を設けることが好ましい。保護層を設けることにより、磁気記録媒体上を浮上飛行する磁気ヘッドから磁気記録媒体表面を保護することができる。保護層の材料としては、たとえば炭素系保護層が好適である。また、保護層の膜厚は3~7nm程度が好適である。保護層は、例えばプラズマCVD法やスパッタリング法で形成することができる。
また、上記保護層の上には、更に潤滑層(図示せず)を設けることが好ましい。潤滑層を設けることにより、磁気ヘッドと磁気記録媒体間の磨耗を抑止でき、磁気記録媒体の耐久性を向上させることができる。潤滑層の材料としては、たとえばパーフロロポリエーテル(PFPE)系化合物が好ましく用いられる。潤滑層は、例えばディップコート法で形成することができる。潤滑層の膜厚は0~10nm程度が好適である。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔全体組成がSm(Fe0.8Co0.212Bで表される希土類化合物を含有するエピタキシャル薄膜の作製〕
薄膜の作製には、DCマグネトロンスパッタ法を用いた。
0.167Pa(1.30mTorr)のAr雰囲気下、超高真空(UHV)対応のDCマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内の圧力を10-8Pa以下とし、MgO(100)単結晶基板を700℃で20分間熱処理し、表面を清浄化した。その後、325℃の基板温度にて、このMgO(100)単結晶基板上に、下地層として、Sm(Fe0.8Co0.212と格子ミスマッチの小さいV(厚み=20nm)を配置した(以下、上記下地層を配置したMgO(100)単結晶基板を単に「基板」ともいう。)。
続いて、上記と同じ325℃の基板温度にて、Sm、Fe、Fe50Co50、Fe8020ターゲットを同時にスパッタすることによりSm(Fe0.8Co0.212B層を成膜した。更に、酸化防止のためキャップ層としてV(厚み=10nm)を堆積した。
なお、予めDCマグネトロンスパッタ装置の設定条件と、成膜レートとの関係を段差計を用いて測定し、この結果を用いて、各試料膜におけるホウ素の導入量を成膜レートから見積もった。
すなわち、同じ厚みの膜であっても、成膜レートを制御することでホウ素の導入量を制御でき、成膜レートを一定とすれば、一定のホウ素含有量を有し膜の厚みの異なる試料を成膜することもできる。なお、本発明者らの予備実験によれば、上記の材料、成膜条件、及び、成膜装置を用いて、基板上に5nm以上の厚みを有するSm(Fe0.8Co0.212B層を成膜することができることが確認されている。また、必要に応じて、Sm(Fe0.8Co0.212B層の厚みを5nm未満とすることも可能である。
ICP-OES分析は、以下の手順によって実施した。
まず、試料を石英ビーカーに採取し、硝酸と水との1:1(体積)溶液の5ml、塩酸と水との1:1(体積)溶液の10ml、及び、硫酸と水との1:1(体積)溶液の3mlを加え、120℃で30分間加熱して溶解させ、放冷後100mlに定容した。この溶液中の各元素の含有量をアジレント社製ICP-OES装置「720-ES ICP-OES」により測定した。
(例1~例2)
ホウ素(B)の導入(目標)量を0体積%から1.5体積%まで変化させて、基板上に100nmの厚みを有するSm(Fe0.8Co0.212B膜を作製した。以下では、Bの含有量が0体積%である試料(Sm(Fe0.8Co0.212膜;例1)、及び、Bの含有量が0.5体積%である試料(Sm(Fe0.8Co0.2120.5膜;例2)の特性について説明する。
図2(a)及び(b)には、それぞれ、膜の厚みが100nmである例1及び例2の薄膜の、面内(In-Plane(IP))及び面直(Out-of-Plane(OOP))方向の磁化曲線を示した。磁気特性の測定には、超伝導量子干渉磁束計(SQUID)を用い、室温下で±7T(70kOe)の範囲で磁場を印加した。後述する図11、図12、図16、図21についても同様である。
図2(a)によれば、Bが0体積%である例1の膜は強い垂直異方性を示している。保磁力は0.1Tであり、ゼロ磁場での残留磁化は0.2Tであった。
図2(b)によれば、Bが0.5体積%である例2の膜は、例1の膜に匹敵する強い垂直異方性を示し、例1の膜を有意に上回る1.2Tの保磁力を示した。また、ゼロ磁場での残留磁化は1.50Tであった。加えて、300~500K(27~227℃)の温度範囲における例2の膜の保磁力の温度係数(β)は、-0.22%/℃と計算された。従来報告されている異方性Nd-Fe-B系磁石の保磁力の温度係数(β)は約-0.4~-0.6%/℃であるので、例2の膜に関して得られた上記温度係数の絶対値は従来のNd-Fe-B系磁石よりも非常に小さく、このことは、本発明の実施形態に係る希土類化合物を含有する膜が、従来のNd-Fe-B系磁石に比べて保磁力の熱安定性に優れることを示している。
なお、例2の膜の磁化曲線(図2(b))については、後述する薄膜の微細構造解析の結果に基づき、減磁率を0.83とする反磁界補正を行っている。例2の膜で得られたゼロ磁場での残留磁化の値(1.50T)は、従来報告されている異方性NdFe14B/FeCoナノコンポジット薄膜での値(1.61T)と比べてやや小さいものの、本発明者らが知る限りにおいて、異方性Sm(Fe0.8Co0.212膜の中では最大の値である。また、XRDの回折パターン(データ示さず。)から、Bが0体積%である例1の膜では、格子定数a、c、及び、c/aは、それぞれ、a=0.8524nm、c=0.4811nm、c/a=0.564であり、Bが0.5体積%である例2の膜では、a=0.8656nm、c=0.4755nm、c/a=0.549であった。
図3(a)及び(b)には、それぞれ、例1及び例2の薄膜の、面内及び断面の透過型電子顕微鏡像(BF-TEM像)を示した。
図3(a)(例1の膜)では、上側の面内像からは薄膜が連続的であり、下側の断面像からは柱状構造を持っていることがわかる。柱状構造を持つ粒子の間には粒界相は観察されない。
これに対して、図3(b)(例2の膜)では、柱状のSmFe12系結晶粒が確認された。この柱状粒の平均粒径は、約40~50nmであり、高さと幅(平均粒径)の比率は、約2.5:1(平均アスペクト比約2.5)であった。また、この柱状粒を主相として、主相間に一定の幅(約1nm以上)を有する粒界相が存在する構造であることがわかる。
これらのBF-TEM像から、本発明の実施形態に係る希土類化合物を含有する膜では、所定量のホウ素が添加されることにより、主相のThMn12型の結晶相(1-12相)が柱状成長すると共に柱状結晶相間に一定の厚みを有する粒界相が形成され、このような微細構造によって高い保磁力が発揮されることが示唆された。
図4(a)~(d)に、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)像を示した。図4(a)及び(b)は、例1の薄膜(Sm(Fe0.8Co0.212膜)のHAADF-STEM像であり、図4(c)及び(d)は、例2の薄膜(Sm(Fe0.8Co0.2120.5膜)のHAADF-STEM像である。
図4(a)によれば、例1の膜では、2つのSm(Fe,Co)12結晶粒の間には明確な相は見られず、2つの結晶粒が互いに直接接触していることがわかる。図4(b)は、例1の膜におけるSm(Fe,Co)12結晶粒の[100]の晶帯軸(図4(a)の紙面上方向)に沿って得た高倍率画像である。HAADF-STEM像では試料中に含まれる元素の原子数に起因してコントラストが生じるので、画像中、より明るいスポットとして見られるのは、より重い元素の原子カラムに対応する、すなわち、Sm(Fe,Co)12化合物中のSmであると考えられる。また、図4(b)中に記号iで示した領域のナノビーム電子回折パターン(右上)、及び、原子分解能STEM-EDSマッピングの結果を投影することにより、例1の膜におけるSm(Fe,Co)12結晶粒はThMn12型構造を有することが示された。しかしながら、例1の膜では、図4(b)中に記号iiで示すように、ナノビーム電子回折パターン(左上)、及び、原子分解能STEM-EDSマッピングの結果が異なる領域も存在している。
図4(c)によれば、例2の膜では、2つのSm(Fe,Co)12結晶粒の間に約3nmの厚みを有するアモルファスの粒界相(GB)が確認された。図4(d)は、例2の膜におけるSm(Fe,Co)12結晶粒の[100]の晶帯軸(図4(c)の紙面上方向)に沿って得た高倍率画像である。図4(d)中に挿入したナノビーム電子回折パターン(右上及び左上)から、上記粒界相によって隔てられている2つのSm(Fe,Co)12結晶粒はいずれもThMn12型構造を有し、ミスアラインメントは2°程度と小さく、両者の近接するSm(Fe0.8Co0.212結晶粒の[001]方向(c軸)が上向き(図4(d)の紙面上方向)に配向していることが示された。
図5(a)及び(b)には、それぞれ、例1及び例2の薄膜の、面内及び断面の走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析の結果(STEM-EDS像)を示した。
図5(a)によれば、例1の膜では、Sm、Fe及びCoが膜中に均一に分布していることがわかる。なお、部分的にSmの濃度が異なる部分が見られるが、当該部分は、主相とは異なる第2相の存在に起因するものであり、当該第2相は、図4(b)に示すHAADF-STEM像から、ThMn17型相(Sm(FeCo)17相)又はTbCu型相(Sm(FeCo)相)のいずれかであると考えられる。
図5(b)によれば、例2の膜では、不均一なCoの分布が確認され、Coの濃度が低い部分は、図3(b)に示すBF-TEM像を参照して説明した粒界相に対応する部分であることが確認された。なお、エネルギー分散型X線分析装置の検出限界により、STEM-EDS像からはBの分布に関する情報は得られていない。
図6(a)及び(b)には、例1の膜の、3次元アトムプローブ(3DAP)による分析結果を示した。図6(a)に示す3DAPマップは、薄膜の面に対して平行にプローブを走査して得た。図6(b)は、図6(a)中の直方体で示した領域におけるSmの3DAPマップ(上段)、当該領域のSm、Co及びFeの組成プロファイル(中段)、及び、中段に示すSmの組成プロファイルを拡大したもの(下段)である。
図6(a)及び(b)によれば、例1の膜では、CoとFeの原子%(at%)基準の含有量比は1:4であり、成膜条件から予測される組成比の値であった。Smの含有量に関しては、図5(a)に示すSTEM-EDS像を参照して説明したように、部分的にSmの濃度が異なる部分が見られ、当該部分ではSmの含有量は約10~11原子%であったが、Smの平均含有量としては約7.95原子%であり、この値は、ThMn12型構造を有する異方性Sm(Fe0.8Co0.212相におけるSmの組成と一致している。
図7(a)及び(b)には、例2の膜の、3次元アトムプローブ(3DAP)による分析結果を示した。図7(a)に示す3DAPマップは、薄膜の面に対して平行にプローブを走査して得た。つまり、図7(a)の紙面貫通方向が、薄膜の面直方向である。図7(b)は、図7(a)中の直方体で示した領域における構成元素(Sm、Co、Fe及びB)の組成プロファイルである。
図7(a)によれば、図5(b)に示すSTEM-EDS像を参照して説明した、Coの濃度が低い部分において、Bが多く分布していることがわかる。また、このことは、図7(b)に示す原子%(at%)基準の組成プロファイルからもはっきりと確認することができる。
より具体的には、図7(b)によれば、Bは、主相(1-12相)及び粒界相(GB)の両方に分布し、特に粒界相に偏って分布する(偏在している)ことがわかる。言い換えると、例2の膜では、主相とは元素組成が明確に異なる粒界相が存在し、当該粒界相は、B濃化相であることが確認された。なお、図7(b)に示す組成プロファイルに基づいて計算された粒界相におけるBの含有量は、約10.3原子%であった。
主相である1-12相(ThMn12型の結晶相)におけるSmの平均含有量は、約8.0原子%であり、1-12相の化学量論組成と一致した。一方、粒界相におけるSmの平均含有量は1-12相より若干低く、約5.8原子%であった。上述したように、Bは主相中にも分布するが、その量は無視できる程度に低い。Coの含有量は、1-12相の中央部において約19.8原子%であるが、B濃化相である粒界相では約10.6原子%であった。
例2の膜についてICP-OES分析を行った結果、膜の全体組成は、Sm7.7Fe72.1Co16.53.7(原子%)であり、主相の1-12相及びアモルファスの粒界相の組成は、それぞれ、Sm8.0Fe71.9Co19.80.3及びSm5.8Fe73.3Co10.610.3(いずれも原子%)であった。また、粒界相におけるFeとCoの合計含有量が約84%であることから、当該粒界相は強磁性であると考えられる。加えて、Nd-Fe-B磁石について確認されているように、当該粒界相は磁壁移動の障壁として作用し得ることが、1.2Tの高い保磁力を示した要因であると考えられる。そして、例2の膜において、すべての相は、Vの下地層上で[001]方向に優先配向しているため、1.50Tの残留磁化が得られたと考えられる。
図8には、上述した特性分析の結果から導かれる、例1及び例2の薄膜の微細構造の模式図を示した。図8の左側が、例1の薄膜(Sm(Fe0.8Co0.212膜、保磁力(μ=0.1T))であり、右側が、例2の薄膜(Sm(Fe0.8Co0.2120.5膜、保磁力(μ=1.2T))である。
例1の膜では、部分的に主相とはSm含有量が異なる第2相が存在し得るが、当該第2相以外に、主相の1-12相と構造的かつ組成上明確に区別できるような相は存在しない。
これに対して、例2の膜では、Bを含有するSm(Fe,Co)12膜であることにより、主相(1-12相)としてThMn12型構造を有する異方性の結晶粒を含み、当該主相は、一定の厚みを有するアモルファスの粒界相に囲まれており、当該粒界相は、B濃化相である。具体的には、例2の膜では、3.7原子%のBを含有するSm(Fe,Co)12膜であることにより、平均粒径が約40~50nmの柱状の1-12相を有し、当該1-12相は、平均で約3nm程度の厚みを有するアモルファスの粒界相に囲まれており、当該粒界相は、約10.3原子%のB含有量を有するB濃化相である。そして、このような微細構造を有することにより、例2の膜は、従来のBを含まないSm(Fe,Co)12膜では得られなかった1.2Tの保磁力を示した。
(例3)
次に、上記例2と同様の材料、及び、成膜装置を用いて、100nmの厚みを有し、Bの含有量が0.5体積%である試料(Sm(Fe0.8Co0.2120.5膜)を作製した。例3では、成膜条件として、Sm(Fe0.8Co0.212B層の成膜時の基板温度を350℃とし、Vのキャップ層(10nm)を堆積した後の温度条件を以下の(a)~(i)のように設定して、計9種類の試料を作製した。
(a)自然冷却(30分間で60℃まで冷却)
(b)窒素ガスによる冷却(4分間で20℃まで冷却後、30分間保持)
(c)200℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で50℃まで冷却)
(d)250℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で60℃まで冷却)
(e)300℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で65℃まで冷却)
(f)350℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で65℃まで冷却)
(g)400℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で70℃まで冷却)
(h)450℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で70℃まで冷却)
(i)500℃で60分間保持した後、自然冷却(30分間で80℃まで冷却)
上記(a)~(i)の温度条件に関し、以下では、条件(a)を通常のプロセス(Normal process)とし、条件(b)~(i)については、Sm(Fe0.8Co0.212B層の成膜時の基板温度(350℃)を基準として、当該温度未満のもの((b)~(e))を冷却条件(Cooling)、当該温度以上のもの((f)~(i))を加熱条件(Annealing)と分類して、各条件で作製した試料の特性について説明する。
図9には、条件(a)、及び、条件(b)~(e)の冷却条件(Cooling)によって得られた膜の面外(Out-of-Plane)XRDパターンを示した。
図9によれば、いずれの試料でも、(002)及び(004)に由来する回折パターン(図中、下向き白三角印で示す。)が観測され、(001)面が強く配向したThMn12型の結晶相が主相であること、すなわち、Sm(Fe0.8Co0.212B層の結晶方位が[001]方向に優先配向していることがわかった。また、条件(a)と条件(b)~(e)との比較では、主相のピーク強度及び位置に大きな変化は見られなかった。
図10には、条件(a)、及び、条件(f)~(i)の加熱条件(Annealing)によって得られた膜のOut-of-Plane XRDパターンを示した。
図10によれば、いずれの試料でも、(002)及び(004)に由来する回折パターン(図中、下向き白三角印で示す。)が観測され、(001)面が強く配向したThMn12型の結晶相が主相であること、すなわち、Sm(Fe0.8Co0.212B層の結晶方位が[001]方向に優先配向していることがわかった。また、条件(a)と条件(f)~(i)との比較では、主相のピークの強度及び位置に大きな変化は見られなかった。一方、条件(f)~(i)の試料では、第2相(α-Fe、Sm(FeCo)、Sm(FeCo)17相等)のピーク(図中、下向き黒三角印で示す。)のピーク強度が増加する傾向が見られた。また、下地層及びキャップ層に用いたVのピーク強度が減少する傾向が見られた。このことから、加熱条件(Annealing)では、V層が主相内に拡散していることが示唆される。
図11には、条件(a)、及び、条件(b)~(e)の冷却条件(Cooling)によって得られた膜の、面内及び面直方向の磁化曲線を示した。
図11によれば、いずれの試料でも、1.16T(図中ではエルステッド単位Oeを用いて11.6kOeと表している)の保磁力を有することが確認された。
図12には、条件(a)、及び、条件(f)~(i)の加熱条件(Annealing)によって得られた膜の、面内及び面直方向の磁化曲線を示した。
図12によれば、条件(f)~(i)の試料では、保磁力の値は条件(a)の試料で得られた値(11.6kOe)よりも低く、保持温度が高いほどその値は低い結果であった。
図13(a)~(d)には、それぞれ、条件(c)~(i)の試料の磁気特性(飽和磁化、保磁力、ゼロ磁場での残留磁化比、及び、垂直異方性)を示した。
図13(a)によれば、飽和磁化(M)は、保持温度の増加に伴い線形に増加する傾向が見られた。
図13(b)によれば、保磁力(H)は、保持温度が350℃以上の加熱条件(Annealing)において減少することが確認された。
図13(c)によれば、ゼロ磁場での残留磁化比(M/M)は、保磁力と同様に、保持温度が350℃以上の加熱条件(Annealing)において減少することが確認された。
図13(d)によれば、垂直異方性(K)は、保持温度が350℃以上の加熱条件(Annealing)において増加するものの、保持温度が500℃の条件(i)では減少することが確認された。
これらの結果、及び、図11及び図12を参照して説明した各条件での保磁力の結果から、上述したアモルファスの粒界相(B濃化相)は、Sm(Fe0.8Co0.212B層の成膜時に形成されることが示唆された。また、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法において、基板上に本発明の実施形態に係る希土類化合物を含有する磁石層をスパッタリング法によって成膜する場合には、基板を所定の温度に加熱して当該希土類化合物を構成する元素を含むターゲットをスパッタした後、当該基板の加熱温度未満の温度で冷却することが望ましいことが確認された。
(例4~例12)
次に、上記例2と同様の材料、及び、成膜装置を用いて、膜の厚みを20nmから200nmまで変化させて、Bの含有量が5.0体積%である試料(Sm(Fe0.8Co0.212B膜)を作製した。
(例13~例21)
また、上記例2と同様の材料、及び、成膜装置を用いて、ホウ素(B)の導入(目標)量を0体積%から8.0体積%まで変化させて、50nmの厚みを有する試料(Sm(Fe0.8Co0.212B膜)を作製した。
以下の表1には、例4~例21の試料の、ホウ素(B)の導入(目標)量、及び、ICP-OESによる元素分析結果をまとめて示した。
なお、表1中、「-」はICP-OES測定を実施しなかったことを示す。また、表中「at%」は原子%を表す。
図14には、膜の厚みを20nmから200nmまで変化させた例4、例7~10及び例12の薄膜のOut-of-Plane XRDパターンを示した。
(002)及び(004)からの回折線(図中、下向き白三角印で示す。)の強度は膜の厚みの増加とともに増加する。一方で、65°付近に観測される第2相(α-Fe、Sm(FeCo)、Sm(FeCo)17)からの回折線(図中、下向き黒三角印で示す。)の強度は膜の厚みによって変化しなかった。
図15には、膜の厚み(tSFC)を変化させた例4~12の薄膜の格子定数a、c、及び、c/aの変化を示した。aは30nmの8.70Åまで増加するが、その後80nmまでは8.70Åの一定値を示し、その後減少した。
一方、cは30nmの4.75Åまで減少し、その後、4.75Åの一定値を示した。c/aは30nmまで減少するが、その後、一定値を示した。
図16に、膜の厚みを変化させた例4、例7~10及び例12の薄膜の磁化曲線を示す。いずれも垂直磁化膜であった。膜の厚みの増加とともに垂直方向の保磁力が増加し、100nmのときに0.94Tの最大値を示す。この値は例4~例21の膜の中では最大の値だった。
なお、膜の厚みが100nmのとき、磁化の値は1.55Tと比較的高い値を示している。更にB濃度を増加させると、保磁力は低下した。
図17に、Bの含有量を一定とした薄膜の磁化(M)、ゼロ磁場での残留磁化比(M/M)、保磁力(H)、垂直異方性(K)の膜の厚み(tSFC)に対する依存性を示した。
図18に保磁力の温度依存性を示した。図中、横軸は温度(K)、縦軸は保磁力(T)を示している。保磁力の温度依存性の測定には、試料振動型磁力計を備えたSQUID-VSMを用い、温度を50~700Kの範囲で変化させて測定した。
黒色の丸のプロットがホウ素の含有量が5体積%となるよう成膜条件を調整して得られた試料、黒色の四角のプロットがSm(Fe0.8Co0.212にCu拡散をしたもの、黒色の三角のプロットがSm(Fe0.8Co0.212にCu-Ga拡散をしたものである。
黒色の実線、黒色の破線2本の計3本は商用のNdFe14B磁石(NMX-36(Dy含有量8%)、NMX-43(Dy含有量4%)、NMX-52(Dyフリー))の温度依存性を表している。図18によれば、Sm(FeCo)12磁石はNdFe14B磁石よりも小さい温度依存性を示すことがわかる。Sm(FeCo)12磁石の中でも、ホウ素を5体積%含む試料は全温度領域にわたって高い保磁力を示し、300~700Kの温度範囲における保磁力の温度係数(β)は最も低い値(-0.15%/K)であった。
なお、例2の薄膜に関して図4(c)及び(d)を参照して説明したような微細構造、及び、図5(b)、図7(a)及び(b)を参照して説明したような構成元素の分布及び組成プロファイルは、例9の薄膜のHAADF-STEM像、ナノビーム電子回折パターン、STEM-EDS像、及び、3DAPによる分析結果からも確認された(データ示さず。)。
図19には、膜の厚みを50nmとした例13及び例15~21のSm(Fe0.8Co0.212B膜のOut-of-Plane XRDパターンを示した。Out-of-Plane XRDの結果より、(002)及び(004)に由来する回折パターン(図中、下向き白三角印で示す。)が観測され、ThMn12型の結晶相の(001)面が強く配向していること、すなわち、Sm(Fe0.8Co0.212B層の結晶方位が[001]方向に優先配向していることがわかった。
ここで、Bの含有量を増やしていくと(002)、(004)からの回折線は高角側へシフトするとともに、α-Fe、Sm(FeCo)、Sm(FeCo)17に起因するピーク(図中、下向き黒三角印で示す。)が2θ=65°付近に観測された。また、その強度はBの含有量の増加とともに増加した。
図20には、膜の厚みを一定(50nm)とした例13~18及び例21の薄膜の格子定数a、c、及び、c/a(縦軸)と、Bの含有量(横軸)との関係を示した。aはBの含有量が4体積%までは約8.56Å(オングストローム)でほぼ一定値を示すが、Bが4体積%を超えると急激に増加した。一方、c、及び、c/aはBの含有量の増加とともに単調に減少した。
図21に、膜の厚みを一定としてBの含有量を変化させた例13及び例15~21の薄膜の、面内及び面直方向の磁化曲線を示した。
図21によれば、Bが0体積%では強い垂直異方性を示している。保磁力は0.14Tである。
図21によれば、Bの含有量の増加とともに面直方向の保磁力が増加し、Bの含有量が5.0体積%で0.75Tの保磁力を示した。また、上記においては1.59Tの高い磁化を示した。更に、面内成分も増加した。
更にBの含有量を増加させると面直方向の保磁力は減少し、磁化容易方向が面内へと変化した。
図22には、膜の厚みを一定とした薄膜の磁化(M)、ゼロ磁場での残留磁化比(M/M)、保磁力(H)、及び、垂直異方性(K)のBの含有量への依存性を示した。なお、図22には、例13~21のB導入目標量とは異なる成膜条件で作製した試料の結果も併せて示した。
本発明の希土類化合物は優れた保磁力を有するため、特にHDD等の磁気ディスク装置に搭載される垂直磁気記録ディスク用の垂直磁気記録媒体に用いられる媒体材料として好適である。また、現状の垂直磁気記録媒体の情報記録密度をさらに上回る超高記録密度を実現するための媒体として有望視されているディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)向けの媒体材料として、あるいは垂直磁気記録方式による情報記録密度をさらに上回る超高記録密度を達成できる熱アシスト磁気記録(HAMR)向けの媒体材料として特に好適に用いられる。
10 磁気記録媒体(垂直磁気記録媒体)
20 基板
30 熱吸収層
40 下地層(配向制御層)
50 磁性層(垂直磁気記録層)

Claims (10)

  1. 全体組成が、式1:(R (1-x)
    (上記式中、Rは、Sm、Pm、Er、Tm、及び、Ybからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Rは、Zr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、及び、Luからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、TはFe、Co、及び、Niからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mはホウ素であり、xは、0~0.5の数であり、aは6.0~13.7原子%の数であり、cは0原子%より大きく、12原子%以下の数であり、bは、100-a-c原子%で表される数である。)
    で表され、ThMn12型の結晶相を主相とし、前記主相間に存在するアモルファスの粒界相を有する希土類化合物。
  2. 前記主相中のホウ素の含有量と前記粒界相中のホウ素の含有量の差の絶対値が、1.0原子%以上である請求項1に記載の希土類化合物。
  3. 前記Rが、少なくともSmを含む、請求項1又は2に記載の希土類化合物。
  4. 実質的にTi、V、Mo、Nb、Cr、及び、Wのいずれも含有しない請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類化合物。
  5. 前記TがFe、及び、Coである、請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類化合物。
  6. 所定の方向に沿って、結晶方位、及び、磁化容易軸からなる群より選択される少なくとも一方が優先配向している請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類化合物。
  7. 前記aが、6.0~10.0原子%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の希土類化合物。
  8. 磁性層に請求項1~7のいずれか一項に記載の希土類化合物を用いた磁気記録媒体。
  9. 前記磁性層の結晶方位が、[001]方向に優先配向している請求項8に記載の磁気記録媒体。
  10. 基板上に請求項1~7のいずれか一項に記載の希土類化合物を含有する磁性層をスパッタリング法によって製造する方法であって、
    前記基板を250~400℃の基板加熱温度に加熱して、前記希土類化合物を構成する元素(R、R、T、及び、M)を含むターゲットをスパッタした後、前記基板加熱温度未満の温度で冷却する方法。
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