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JP7724722B2 - 熱可塑性樹脂を含む材料から成る部材同士を接合するための方法 - Google Patents
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JP7724722B2 - 熱可塑性樹脂を含む材料から成る部材同士を接合するための方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂を含む材料から成る部材同士を接合するための方法

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Description

本発明は、例えば熱可塑性樹脂複合材料のような熱可塑性樹脂を含む材料から成る部材同士を接合するための方法に関する。
熱可塑性樹脂を含む材料から成る部材同士を接合するための方法として、ファスナーを用いた機械的結合や、熱硬化性樹脂(接着剤)を用いた接着接合が知られている。
しかしながら、前者の機械的結合においては、ファスナーを通すための開口を部材に設ける必要があり、当該開口に起因して部材の強度が低下する可能性がある。
また、後者の接着接合においては、事前に接着剤と被接合部材との相性を評価する必要があり、更に、接着剤を保管するための冷凍庫、接合プロセスにおいて接着剤を硬化させるためのオートクレーブ等の設備が必要となるほか、接着剤の使用期限を管理する必要があるなど、コストの増大が避けられない。
そのため、2つの被接合部材を加熱することにより、両部材に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融した熱可塑性樹脂を介して両部材を接合する方法、すなわち融着が提案されている。
しかしながら、通常の融着では、2つの被接合部材を全体として熱可塑性樹脂の融点以上の温度まで加熱する必要があり、液相となった熱可塑性樹脂が流動することによる変形が、両部材の全体に亘って生じる可能性がある。特に、顕著に大きさの異なる2つの被接合部材を融着する場合、小さな部材に生じる変形は許容可能な又は修正可能なものであったとしても、大きな部材には許容不可能な又は修正不可能な変形が生じてしまう可能性があり、好ましくない。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材を融着により接合するための方法であって、液相となった熱可塑性樹脂が流動することによる両部材の変形を防止することが可能な方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の接合方法は、共に熱可塑性樹脂を含む材料から成る第1部材と第2部材を接合するための方法であって、第1熱源の上面の上に前記第1部材を載置するステップと、前記第1部材の上面の上に熱可塑性樹脂から成る接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第2部材を載置するステップと、前記第2部材の上方に第2熱源を位置付けるステップと、前記第1熱源を所定の第1温度まで、前記第2熱源を所定の第2温度まで、それぞれ加熱すると共に、前記第2熱源を下降させ、下向きの所定の荷重が負荷された状態でその下面を前記第2部材の上面に押し付けるステップと、前記第1熱源の温度が前記第1温度に到達し、且つ、前記第2熱源の温度が前記第2温度に到達してから、所定の保持時間が経過した後、前記第1部材及び前記第2部材を冷却するステップと、をこの順に含み、前記第2温度は、前記熱可塑性樹脂の融点より高く且つ前記熱可塑性樹脂の熱分解温度より低く、前記第1温度は、前記熱可塑性樹脂の融点より低い。
本発明の第2の態様の接合方法において、前記第1温度、前記第2温度、前記荷重及び前記保持時間は、前記各ステップを含む予備実験と、前記予備実験の後に行われる前記第1部材と前記第2部材の接合領域の非破壊検査と、を通じて予め設定される。
本発明の第3の態様の接合方法において、前記第1部材及び前記第2部材は、それぞれ成形型を用いて予め成形されていると共に、当該成形後に、前記第1部材のうち前記接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第2部材と接触する部位、及び、前記第2部材のうち前記接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第1部材と接触する部位に残存する離型剤は、予め除去されている。
本発明の第4の態様の接合方法において、前記第2部材は、前記接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第1部材の前記上面と接触する下面を有する板状の被接合部位を含み、前記被接合部位は、その板厚方向において前記下面と反対側に位置する上面を有し、前記第2熱源が下降したとき、前記第2熱源は前記被接合部位の前記上面に押し付けられる。
本発明の第5の態様の接合方法において、前記第2熱源の底面には凹部が形成されており、前記第2熱源が下降されたとき、前記凹部の上面が前記第2部材の前記被接合部位の前記上面に押し付けられる。
本発明の第6の態様の接合方法において、前記凹部は、前記第2熱源が下降した状態において、前記第2部材の前記被接合部位を収容するように構成されている。
本発明の第7の態様の接合方法において、前記第2部材の前記被接合部位は、前記上面と前記下面とを接続する側面を有し、前記第2熱源の前記凹部は、当該凹部の前記上面と前記第2熱源の前記底面とを接続する側面を有し、前記第2熱源が下降した状態において、当該第2熱源の前記凹部の側面は、間隙を介して、前記第2部材の前記被接合部位の前記側面と対向するように構成されている。
本発明の第8の態様の接合方法において、前記第1部材の前記上面の上に、前記第2部材の前記被接合部位を収容するように構成された樹脂流動防止治具が載置されており、前記第2熱源の底面は、前記第2部材の前記被接合部位の前記上面と同一の形状及び寸法を有しており、前記第2熱源が下降されたとき、前記第2熱源の前記底面が前記第2部材の前記被接合部位の前記上面に押し付けられる。
本発明の第9の態様の接合方法において、前記第2部材の前記被接合部位は、前記上面と前記下面とを接続する側面を有し、前記樹脂流動防止治具は内側の側面を有し、前記第2熱源が下降した状態において、当該第2熱源の側面は、間隙を介して、前記樹脂流動防止治具の前記内側の側面と対向するように構成されている。
本発明によれば、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材を融着により接合する際、熱可塑性樹脂を溶融させるための加熱が両部材の接合領域に限定されるため、液相となった熱可塑性樹脂が流動することによる変形が、両部材の全体に亘って生じることを防止することができるという、優れた効果を得ることができる。
本発明の実施形態の方法による接合プロセスの開始直前における、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材及びそれらを接合するための機材の配置状態を示す概略斜視図である。 本発明の実施形態の方法による接合プロセスの開始直前における、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材及びそれらを接合するための機材の配置状態の要部を示す幅方向(図1におけるw方向)の中央における概略断面図である。 本発明の実施形態の方法による接合プロセスにおいて用いられる第2熱源を下方から見た概略斜視図である。 本発明の別の実施形態の方法による接合プロセスの開始直前における、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材及びそれらを接合するための機材の配置状態を示す概略斜視図である。 本発明の別の実施形態の方法による接合プロセスの開始直前における、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材及びそれらを接合するための機材の配置状態の要部を示す幅方向(図4におけるw方向)の中央における概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の方法による接合プロセスの開始直前における、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材及びそれらを接合するための機材の配置状態を示す概略斜視図であり、図2は、当該配置状態の要部を示す幅方向(図1におけるw方向)の中央における概略断面図である。
両図には、熱可塑性樹脂を含む材料から成る第1部材M1の上面M1Uに、同じく熱可塑性樹脂を含む材料から成る第2部材M2を、その被接合部位M2Wにおいて接合する際の状態が示されている。
熱可塑性樹脂を含む材料は、例えば、母材としての熱可塑性樹脂(一例として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))と、強化材としての炭素繊維とから成る、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)であることができるが、熱可塑性樹脂を含む材料であれば、如何なるものであってもよい。ただし、第1部材M1及び第2部材M2に含まれる熱可塑性樹脂は同一のものであることが好ましい。
図1及び図2に示された実施例において、第1部材M1は略平坦な板状(厚さは例えば2~3mm)の比較的大きな部材であり、第2部材M2は略L字形の板状(厚さは例えば2~3mm)の比較的小さな部材である。また、第2部材M2のうち、第1部材M1の上面M1Uに接合される被接合部位M2Wは、L字の一辺(図示した実施例においては短辺)に相当する略平坦な板状の部位であり、図2においては密なハッチングで示されている。より厳密には、被接合部位M2Wは、板厚方向において、後述する接合用フィルムFを介して第1部材M1の上面M1Uと接触する下面M2Lと、板厚方向において当該下面M2Lと反対側に位置する上面M2Uと、の間の部位であり、下面M2Lと上面M2Uとを接続する側面(図1に示された実施例においては、M2S1、M2S2及びM2S3)を有している。ここで、側面とは、被接合部位M2Wの周囲の空間に対して開放された面を意味する。
第1部材M1及び第2部材M2は、それぞれ成形型を用いて予め成形されている。ここで、成形直後の両部材の表面には、成形型からの取り外しを容易とするための離型剤が残存しているが、当該離型剤は、後述する接合プロセスの妨げとなる。そのため、少なくとも、第1部材M1の上面M1Uのうち後述する接合用フィルムFを介して第2部材M2の被接合部位M2Wと接触する部位(第1接合面)、及び、第2部材M2の被接合部位M2Wの下面M2L(第2接合面)に残存する離型剤は、サンドペーパによる研磨、サンドブラスト等の適宜の方法により予め除去されている。この離型剤の除去に伴い、第1部材M1のうち第1接合面の近傍の領域及び第2部材M2のうち第2接合面の近傍の領域においては、熱可塑性樹脂の一部も除去され、後述する融着による接合に寄与し得る熱可塑性樹脂が少ない状態となっている。この熱可塑性樹脂の不足を補う必要があると認められる場合は、同じく熱可塑性樹脂から成る接合用フィルムFが第1接合面と第2接合面との間に挟み込まれる。なお、第1部材M1のうち第1接合面の近傍の領域及び第2部材M2のうち第2接合面の近傍の領域に、後述する融着による接合に寄与し得る熱可塑性樹脂が十分に残存していると認められる場合は、第1接合面と第2接合面との間に接合用フィルムFを挟み込まなくてもよい。この場合、第1接合面は、接合用フィルムFを介することなく直接的に第2部材M2の被接合部位M2Wと接触することとなり、第2接合面は、接合用フィルムFを介することなく直接的に第1部材M1の上面M1Uと接触することとなる。
図1及び図2に示された接合プロセス開始直前の状態において、第1部材M1は、第1熱源H1の上面H1U上に載置されている。また、第2部材M2は、接合用フィルムFを介して、第1部材M1の上に載置されている。すなわち、第2部材M2の被接合部位M2Wの下面M2Lと、第1部材M1の上面M1Uとの間には、上述した接合用フィルムFが挟み込まれている。更に、第2部材M2の被接合部位M2Wの上方には、第2熱源H2が位置付けられている。
なお、接合用フィルムFは、平面視において、第2部材M2の被接合部位M2Wの下面M2Lと実質的に同一の形状及び大きさを有している。また、接合用フィルムFは、第1部材M1及び第2部材M2に含まれるものと同一の熱可塑性樹脂から成るものであってもよいし、これとは異なる熱可塑性樹脂から成るものであってもよい。
第1熱源H1は、金属製の略平坦なパネル状の機材であるが、その上面H1Uは、第1部材M1の下面M1Lの全体がこれと密着し得る形状及び大きさを有するものとして形成されている。例えば、第1部材M1の下面M1Lが曲面(例えば凸状の円筒面)である場合には、第1熱源H1の上面H1Uは、当該曲面の形状と相補的な形状を有する曲面(例えば凹状の円筒面)として形成されている。
また、第1熱源H1の内部には、ヒータが埋め込まれている。図1に示された実施例においては、4本のカートリッジヒータCHが、第1熱源H1の上面H1Uと略平行に且つ互いに平行に埋め込まれている。なお、図1においては、図が煩雑になることを避けるため、1本のカートリッジヒータCHのみについて、その埋め込み態様を概略的に示している。
更に、第1熱源H1の内部には、温度センサが埋め込まれている。図1に示された実施例においては、1つの熱電対TCが、その測温接点(図示省略)が第2部材M2の被接合部位M2Wの下面M2Lと接触する上面H1Uの直下の近傍に位置するよう、埋め込まれている。
一方、第2熱源H2は、略直方体状の機材であり、その底面H2Lには、凹部H2Rが設けられている。なお、図示は省略しているが、第2熱源H2には、これを下方へ押すと共に、その下面(凹部H2Rの上面H2RU)が第2部材M2の上面(被接合部位M2Wの上面M2U)と接触した状態において、下向きの荷重L(図2における矢印L参照)を負荷するための機構が取り付けられている。なお、当該機構は、荷重Lの大きさを変えることができるように構成されている。
凹部H2Rは、図示された実施例においては、第2熱源H2を下方から見た概略斜視図である図3に示すように、第2熱源H2の底面H2L及び前面(第2部材M2の被接合部位M2W以外の部位(図示した実施例においては、L字の長辺に相当する略平坦な板状の部位)と対向する面)H2Fにおいて開放された窪みであり、上面H2RU、並びに、当該上面H2RUと前記底面H2Lとを接続する3つの側面H2RS1、H2RS2及びH2RS3によって画定されている。そして、後述するように第2熱源H2が押し下げられた状態において、凹部H2Rの上面H2RUは第2部材M2の被接合部位M2Wの上面M2Uと接触し、凹部H2Rの側面H2RS1、H2RS2、H2RS3は、それぞれ第2部材M2の被接合部位M2Wの側面M2S1、M2S2、M2S3(図1参照)と僅かな間隙を介して対向する。すなわち、第2熱源H2の凹部H2Rは、上述した状態において第2部材M2の被接合部位M2Wを収容し得るように形成されている。なお、凹部H2Rの側面と第2部材M2の被接合部位M2Wの側面が対向する際の間隙は、第2熱源H2を押し下げる際の水平方向の位置決め精度、加熱された第2部材M2の被接合部位M2Wの予測される最大変形量(熱膨張及び/又は熱可塑性樹脂の流動による)等を考慮して、適宜に決定することができる。
また、第2熱源H2の内部には、ヒータが埋め込まれている。図1に示された実施例においては、1本のカートリッジヒータCHが、第2熱源H2の凹部H2Rの直上において、凹部H2Rの上面H2RUと略平行に埋め込まれている。
更に、第2熱源H2の内部には、温度センサが埋め込まれている。図1に示された実施例においては、1つの熱電対TCが、その測温接点(図示省略)が凹部H2Rの上面H2RUの直上の近傍に位置するよう、埋め込まれている。
なお、以上の説明では、第1熱源H1及び第2熱源H2の内部に埋め込まれたヒータとしてカートリッジヒータを例示したが、自己発熱型のヒータであれば如何なるものでも用いることができる。また、ヒータの数及び各熱源の内部における配置態様も、図示された実施例に限定されず、任意に設定することができる。
第1熱源H1及び第2熱源H2の内部にそれぞれ埋め込まれたカートリッジヒータCHのリード線及び熱電対TCの導線は、汎用の温度コントローラ(図示省略)に接続されており、接合プロセスの間、当該温度コントローラによって第1熱源H1及び第2熱源H2の温度が後述するように制御される。
また、図示は省略しているが、接合プロセスの完了後に、第1部材M1及び第2部材M2を冷却するために、これらの全体に空気を吹き付けることができるようなブロワが設置されている。
接合の対象である第1部材M1及び第2部材M2、接合用フィルムF、並びに、第1熱源H1及び第2熱源H2を上述したように配置した状態で、本発明の実施形態の方法による接合プロセスが行われるが、以下で、その詳細を説明する。
ここで、第1部材M1及び第2部材M2は同一の熱可塑性樹脂を含むものとし、当該熱可塑性樹脂の熱的性質を特徴付ける温度として、以下の3つの温度に着目する。
・熱分解温度(Th):熱分解を生じることなく熱可塑性樹脂を使用し得る最高の温度
・融点(Tm):熱可塑性樹脂が固相から液相へ相変化する温度
・軟化点(Ts):熱可塑性樹脂が軟化し変形が可能となる温度
なお、通常はTh>Tm>Tsの関係が成り立つ。一例として、Th=約400℃、Tm=約305℃、Ts=約280℃である。
そして、本発明の実施形態の方法による接合プロセスは、第1熱源H1の温度(第1温度)を熱可塑性樹脂の融点Tmよりも低くすると同時に、第2熱源H2の温度(第2温度)を熱可塑性樹脂の融点Tmよりも高くすることにより、両熱源の間に位置する第1部材M1と第2部材M2との接合領域の温度が、熱可塑性樹脂の融点Tmに達するようにすることを意図している。これにより、接合領域、すなわち第1接合面(第1部材M1の上面M1Uのうち第2部材M2の被接合部位M2Wの下面M2Lと対向する部位)と、第2接合面(第2部材M2の被接合部位M2Wの下面M2L)との間の領域において、熱可塑性樹脂(接合用フィルムFを含む。)が融解し、両部材を融着(接合)させることができる。
なお、上述した融着は、第1熱源H1の温度を熱可塑性樹脂の融点Tmよりも高くすると同時に、第2熱源H2の温度を熱可塑性樹脂の融点Tmよりも低くすることによっても、一応は実現可能である。しかしながら、第1部材M1は上述したように比較的大きな部材であるため、既に成形済みの当該第1部材M1への熱影響(特に液相となった熱可塑性樹脂が流動することによる変形)を回避するために、上述したように、第1熱源H1の温度は熱可塑性樹脂の融点Tmよりも低くし、第2熱源H2の温度を熱可塑性樹脂の融点Tmよりも高くすることが好ましい。
そして、本発明の実施形態の方法による接合プロセスにおいては、第1熱源H1及び第2熱源H2のそれぞれに埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が、上述した温度コントローラによって、それぞれ第1温度T1及び第2温度T2となるよう制御される。
制御の目標値である第1温度T1及び第2温度T2は、後述するように、最終的には予備実験を通じて決定されるが、当該予備実験における設定温度T1e及びT2eは、大前提として以下の式1を満たすものでなければならない。
T1e<Tm<T2e<Th (式1)
ここで、上式のうち、T1e<Tmは、第1部材M1に含まれる熱可塑性樹脂の溶融を防止することを、T2e<Thは、第2部材M2に含まれる熱可塑性樹脂の熱分解の発生を防止することを、それぞれ意図している。
なお、第1部材M1に含まれる熱可塑性樹脂の軟化による変形を防止するためには、設定温度T1e及びT2eは、以下の式2を満たすことが好ましい。
T1e<Ts<Tm<T2e<Th (式2)
この条件は、第1部材M1からの放熱が小さく、第1熱源H1からの入熱によって接合領域の温度を効率的に(すなわち、第1部材M1の温度を過度に上昇させることなく)熱可塑性樹脂の融点Tmに到達させることができる場合に実現可能である。
例えば、接合領域の直下及び直上における第1部材M1及び第2部材M2の伝熱抵抗が等しい単純な場合を想定すると、設定温度T1e及びT2eの初期値を、
T1e=Tm-ΔT
T2e=Tm+ΔT
ただし、
0<ΔT<Th-Tm(好ましくは、Tm-Ts<ΔT<Th-Tm)
とすることができる。
予備実験においては、接合領域(好ましくは、第1部材M1の内部であって第1接合面の近傍の領域、及び、第2部材M2の被接合部位M2Wの内部であって第2接合面の近傍の領域)に、実験用の熱電対が予め埋め込まれる。そして、当該熱電対を用いて接合領域の温度を監視しながら、第1熱源H1及び第2熱源H2のそれぞれに埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が、それぞれ設定温度T1e及びT2eとなるよう、第1熱源H1及び第2熱源H2に埋め込まれたカートリッジヒータCHのオン/オフが温度コントローラによって制御される。このとき、第2熱源H2は、図2に示された位置から、その下面(凹部H2Rの上面H2RU)が第2部材M2の上面(被接合部位M2Wの上面M2U)と接触するまで下方へ押し下げられ、下向きの荷重Lが負荷された状態で保持される。
この状態で、第1熱源H1及び第2熱源H2のそれぞれに埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が、それぞれ設定温度T1e及びT2eに到達し、保持時間tの経過後に、接合領域に埋め込まれた実験用の熱電対による測定温度が熱可塑性樹脂の融点Tm以上になれば、両部材が融着したものと一応判断できる。この場合、第1熱源H1及び第2熱源H2を共にオフにしたうえで、第1部材M1及び第2部材M2を、これらの全体に上述したブロワを用いて空気を吹き付ける(図1における矢印A参照)ことにより融点Tm未満に冷却し、冷却の完了後、融着が真に完了しているかが確認される。この確認は、超音波探傷、X線CTスキャン等の非破壊検査の手法を用いて接合領域の状況を観察することにより行われる。
その結果、第1部材M1と第2部材M2の融着が真に完了していることが確認されれば、そのときの設定温度T1e及びT2e、設定温度到達後の保持時間t、並びに、第2熱源H2に負荷される荷重Lが、実際の接合プロセスにおける施工条件とされる。すなわち、そのときの設定温度T1e、T2eが、それぞれ、実際の接合プロセスにおける第1熱源H1の温度(第1温度)T1、第2熱源H2の温度(第2温度)T2とされる。
一方、第1部材M1と第2部材M2の融着が実際には完了していないことが確認された場合には、設定温度T1e及びT2e、設定温度到達後の保持時間t、並びに、第2熱源H2に負荷される荷重Lのうち少なくとも1つを変更したうえで、予備実験が繰り返される。
なお、以上においては、第1熱源H1の温度(第1温度)T1が常温よりも高いことを暗に前提として説明してきた。これは、第1熱源H1の温度T1を常温とした場合、汎用されている熱可塑性樹脂においては、接合領域の温度をその融点Tm以上とするために必要とされる第2熱源H2の温度(第2温度)T2が熱分解温度Thを超えてしまい、接合プロセスの実施が現実的には不可能となるためである。このように、第1熱源H1は、そのT1が常温よりも高い点からは文字通り「熱源」であると言えるが、本発明の実施形態の方法による接合プロセスにおいて、第1熱源H1は、ヒートソースとして作用する第2熱源H2に対して、ヒートシンクとして作用するものであるとも言える。
上述した予備実験を通じて決定された施工条件(第1熱源H1及び第2熱源H2のそれぞれに埋め込まれた熱電対TCによる測定温度の目標値(第1温度T1及び第2温度T2、測定温度が目標値に到達した後の保持時間t、並びに、第2熱源H2に負荷される荷重L)に基づいて、実際の接合プロセスは、以下のステップをこの順に実行することにより実施される。
(1)第1熱源H1の上面H1Uの上に第1部材M1を載置するステップ
(2)第1部材M1の上面M1Uの上に熱可塑性樹脂から成る接合用フィルムFを介して又はこれを介することなく第2部材M2(の被接合部位M2W)を載置するステップ
(3)第2部材M2の上方に第2熱源H2を位置付けるステップ
(4)第1熱源H1を第1温度T1まで加熱する(第1熱源H1に埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が第1温度T1となるよう、第1熱源H1に埋め込まれたカートリッジヒータCHのオン/オフを温度コントローラにより制御する)ステップ
(5)第2熱源H2を第2温度T2まで加熱する(第2熱源H2に埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が第2温度T2となるよう、第2熱源H2に埋め込まれたカートリッジヒータCHのオン/オフを温度コントローラにより制御する)と共に、当該第2熱源H2を下降させ、下向きの荷重Lが負荷された状態でその下面(凹部H2Rの上面H2RU(図3参照)又は底面H2L’(図5参照))を第2部材M2の上面(被接合部位M2Wの上面M2U)に押し付けるステップ
(6)第1熱源H1に埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が第1温度T1に到達し、且つ、第2熱源H2に埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が第2温度T2に到達してから所定の保持時間tが経過した後、第1部材M1及び第2部材M2を(ブロワを用いて空気を吹き付けることにより)冷却するステップ
なお、上述した(5)のステップは、第2熱源H2を第2温度T2まで加熱した後に、当該第2熱源H2を下降させ、下向きの荷重Lが負荷された状態でその下面を第2部材M2の上面に押し付けてもよいし、予め第2熱源H2を下降させ、下向きの荷重Lが負荷された状態でその下面を第2部材M2の上面に押し付けつつ、当該第2熱源H2を第2温度T2まで加熱してもよい。
また、上述した(6)のステップにおける第1部材M1及び第2部材M2の冷却は、第2熱源H2が下降したままの状態で行ってもよいが、第1熱源H1及び第2熱源H2に埋め込まれた熱電対TCによる測定温度が共に第1部材及び第2部材に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm(好ましくは、軟化点Ts)を下回った時点で第2熱源H2を上昇させることにより、第1部材M1及び第2部材M2の冷却を促進することができる。
上述した(5)のステップにおいて、第2部材M2の被接合部位M2Wは、第2熱源H2の底面H2Lに設けられた凹部H2R内に収容される。このとき、第2部材M2の被接合部位M2Wの熱可塑性樹脂は、当該熱可塑性樹脂の融点Tmを超える温度T2となっている第2熱源H2からの伝熱によって、少なくとも部分的に液相へ相変化し、流動可能な状態となる。しかしながら、第2部材M2の被接合部位M2Wの上面M2Uは第2熱源H2の凹部H2Rの上面H2RUと接触しており、また、第2部材M2の被接合部位M2Wの側面M2S1、M2S2及びM2S3と第2熱源H2の凹部H2Rの側面H2RS1、H2RS2及びH2RS3との間には僅かな間隙しか存在しない。そのため、液相となった熱可塑性樹脂が顕著な流動を生じることはなく、第2部材M2の被接合部位M2Wは実質的にその形状を保持することが可能である。
なお、以上においては、第2熱源H2の底面H2Lに設けられた凹部H2Rの形状を、第2部材M2のL字形の形状に対応して第2熱源H2の前面に開放部を有するものとして説明したが、これに限定されない。すなわち、第2部材M2の形状によっては、当該開放部は無くてもよいし、あるいは、複数あってもよい。要するに、第2熱源H2の底面H2Lに設けられた凹部H2Rは、第2部材M2(の被接合部位M2W)の上面と接触してこれを加熱する上面H2RUを必須の構成要素として備え、更に、第2部材M2(の被接合部位M2W)の側面(図1に示された実施例においては、M2S1、M2S2及びM2S3)と僅かな間隙を介して対向する側面(図3に示された実施例においては、H2RS1、H2RS2及びH2RS3)をも構成要素として備えるものである。
以上においては、上述したステップ(5)~(6)において、第2部材M2の被接合部位M2Wの熱可塑性樹脂が顕著な流動を生じることを防止するため、第2熱源H2の底面H2Lに凹部H2Rを設け、当該凹部H2R内に第2部材M2の被接合部位M2Wを収容するようにした実施形態について説明した。しかしながら、第2部材M2の被接合部位M2Wの熱可塑性樹脂が顕著な流動を生じることを防止するために、別の実施形態を採用することもできる。これについて、以下で説明する。
図4は、本発明の別の実施形態の方法による接合プロセスの開始直前における、熱可塑性樹脂を含む材料から成る2つの部材及びそれらを接合するための機材の配置状態を示す概略斜視図であり、図5は、当該配置状態の要部を示す幅方向(図4におけるw方向)の中央における概略断面図である。
両図に示すように、本実施形態においては、第1部材M1の上面M1Uの上に、第2部材M2の被接合部位M2Wを収容するように(厳密には、三方から取り囲むように)構成された樹脂流動防止治具Jが載置されている。
樹脂流動防止治具Jは、断熱材(又は金属によって補強された断熱材)から成る部材であり、平面視においてコ字型(角張ったU字型)の形状を有している。樹脂流動防止治具Jの内側の側面JS1、JS2、JS3は、それぞれ、第2部材M2の被接合部位M2Wの側面M2S1、M2S2、M2S3と、僅かな間隙を介して対向している。また、樹脂流動防止治具Jの高さは、接合用フィルムFを介して又はこれを介することなく第1部材M1の上面M1Uの上に載置された第2部材M2の被接合部位M2Wの上面M2Uの、第1部材M1の上面M1Uからの高さと比較して、十分に大きい。更に、図示した例では、樹脂流動防止治具Jの内側の側面JS1及びJS3は、第2部材M2のL字の長辺に相当する略平坦な板状の部位の側面とも、僅かな間隙を介して対向するように構成されている。これにより、第2部材M2と樹脂流動防止治具Jとの間に画定される空間は、実質的に上方にのみ開放された状態(すなわち、水平方向には実質的に閉鎖された状態)となっている。
一方、第2熱源H2’は直方体状に形成されており、上述した実施形態のように、その底面H2L’に凹部は形成されていない。また、第2熱源H2’の底面H2L’は、第2部材M2の被接合部位M2Wの上面M2Uと同一の形状及び寸法を有している。したがって、上述したステップ(5)において、第2熱源H2’が下降し、その底面H2L’が第2部材M2の被接合部位M2Wの上面M2Uと接触したとき、第2熱源H2’は、その3つの側面が、樹脂流動防止治具Jの内側の側面JS1、JS2、JS3と僅かな間隙を介して対向する状態となる。
以上のように構成されていることにより、本実施形態においては、上述した(5)のステップにおいて、第2部材M2の被接合部位M2Wは、樹脂流動防止治具Jの内側の側面JS1、JS2、JS3によって画定される空間内に収容される。そのため、液相となった熱可塑性樹脂が顕著な流動を生じることはなく、第2部材M2の被接合部位M2Wは実質的にその形状を保持することが可能である。
なお、以上においては、相対的に大きな第1部材M1が略平坦な板状であり、相対的に小さな第2部材M2が略L字形の板状である場合を例として説明してきたが、本発明の実施形態は、これに限定されない。例えば、相対的に大きな第1部材M1として、第2部材M2と接合される面が凹状若しくは凸状の円筒面、球面等の曲面であるようなものを、相対的に小さな第2部材M2として、第1部材M1と接合される略平坦な板状の部位を有するU字型、T字型等の部材を、それぞれ対象とした場合にも、本発明の実施形態の方法によって、両部材を接合することができる。
なお、以上においては、接合プロセスの終了後における第1部材M1及び第2部材M2の冷却を、ブロワを用いて空気を吹き付けることにより行うものとして説明したが、これに限定されない。すなわち、例えば第1熱源H1及び第2熱源H2の冷却を、それぞれの熱源の内部に設けた通路に冷却媒体(例えば、空気、水、油など)を流通させることにより行ってもよい。
F 接合用フィルム
H1 第1熱源
H1U 第1熱源の上面
H2、H2’ 第2熱源
H2L’ 第2熱源の底面
H2R 第2熱源の凹部
H2RU 第2熱源の凹部の上面
H2RS1、H2RS2、H2RS3 第2熱源の凹部の側面
L 荷重
J 樹脂流動防止治具
JS1、JS2、JS3 樹脂流動防止治具の内側の側面
M1 第1部材
M2 第2部材
M2L 第2部材の被接合部位の下面
M2S1、M2S2、M2S3 第2部材の被接合部位の側面
M2U 第2部材の被接合部位の上面
M2W 第2部材の被接合部位
T1 第1温度
T2 第2温度
Th 熱可塑性樹脂の熱分解温度
Tm 熱可塑性樹脂の融点
Ts 熱可塑性樹脂の軟化点
t 保持時間

Claims (9)

  1. 共に熱可塑性樹脂を含む材料から成る第1部材と第2部材を接合するための方法であって、
    第1熱源の上面の上に前記第1部材を載置するステップと、
    前記第1部材の上面の上に熱可塑性樹脂から成る接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第2部材を載置するステップと、
    前記第2部材の上方に第2熱源を位置付けるステップと、
    前記第1熱源を所定の第1温度まで、前記第2熱源を所定の第2温度まで、それぞれ加熱すると共に、前記第2熱源を下降させ、下向きの所定の荷重が負荷された状態でその下面を前記第2部材の上面に押し付けるステップと、
    前記第1熱源の温度が前記第1温度に到達し、且つ、前記第2熱源の温度が前記第2温度に到達してから、所定の保持時間が経過した後、前記第1部材及び前記第2部材を冷却するステップと、
    をこの順に含み、
    前記第2温度は、前記熱可塑性樹脂の融点より高く且つ前記熱可塑性樹脂の熱分解温度より低く、前記第1温度は、前記熱可塑性樹脂の融点より低い、ことを特徴とする方法。
  2. 前記第1温度、前記第2温度、前記荷重及び前記保持時間は、前記各ステップを含む予備実験と、前記予備実験の後に行われる前記第1部材と前記第2部材の接合領域の非破壊検査と、を通じて予め設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1部材及び前記第2部材は、それぞれ成形型を用いて予め成形されていると共に、
    当該成形後に、前記第1部材のうち前記接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第2部材と接触する部位、及び、前記第2部材のうち前記接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第1部材と接触する部位に残存する離型剤は、予め除去されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記第2部材は、前記接合用フィルムを介して又はこれを介することなく前記第1部材の前記上面と接触する下面を有する板状の被接合部位を含み、
    前記被接合部位は、その板厚方向において前記下面と反対側に位置する上面を有し、
    前記第2熱源が下降したとき、前記第2熱源は前記被接合部位の前記上面に押し付けられる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記第2熱源の底面には凹部が形成されており、
    前記第2熱源が下降されたとき、前記凹部の上面が前記第2部材の前記被接合部位の前記上面に押し付けられる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記凹部は、前記第2熱源が下降した状態において、前記第2部材の前記被接合部位を収容するように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記第2部材の前記被接合部位は、前記上面と前記下面とを接続する側面を有し、
    前記第2熱源の前記凹部は、当該凹部の前記上面と前記第2熱源の前記底面とを接続する側面を有し、
    前記第2熱源が下降した状態において、当該第2熱源の前記凹部の側面は、間隙を介して、前記第2部材の前記被接合部位の前記側面と対向するように構成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記第1部材の前記上面の上に、前記第2部材の前記被接合部位を収容するように構成された樹脂流動防止治具が載置されており、
    前記第2熱源の底面は、前記第2部材の前記被接合部位の前記上面と同一の形状及び寸法を有しており、
    前記第2熱源が下降されたとき、前記第2熱源の前記底面が前記第2部材の前記被接合部位の前記上面に押し付けられる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  9. 前記第2部材の前記被接合部位は、前記上面と前記下面とを接続する側面を有し、
    前記樹脂流動防止治具は内側の側面を有し、
    前記第2熱源が下降した状態において、当該第2熱源の側面は、間隙を介して、前記樹脂流動防止治具の前記内側の側面と対向するように構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
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