JP7787489B2 - ナノセルロースの製造方法 - Google Patents
ナノセルロースの製造方法Info
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Description
本発明によれば、以下の手段が提供される。
次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得て、前記酸化の後、解繊処理を実質的に行うことなく前記酸化セルロースをナノ化する工程を含む、ナノセルロースの製造方法。
[2]
前記酸化により得られた酸化セルロースを含む分散液を希釈する工程を含み、
前記希釈後の分散液を固形分濃度0.1質量%としたときの光透過率が、70%以上である、
[1]に記載の製造方法。
[3]
前記酸化の後、酸化セルロースを含む分散液を必要に応じて固液分離して、ナノセルロースを含む分散液を得る工程を含む、
[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記ナノセルロースを含む分散液を精製する工程を含む、
[3]に記載の製造方法。
[5]
前記ナノセルロースの平均繊維幅が、1nm以上100nm以下である、
[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記ナノセルロースの平均繊維長が、50nm以上800nm以下である、
[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
前記酸化の反応時間が、30分以上である、
[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
前記酸化の際の反応系におけるセルロース系原料の濃度が、0.1質量%以上30質量%以下である、
[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
従前の方法では、ナノセルロースを得るために、機械解繊等の解繊処理の前処理として化学処理、生物処理等を行っても最後に解繊処理することを行っていた。本発明者らは、次亜塩素酸又はその塩を用いてセルロース系原料を酸化することにより、解繊が進行し、ナノセルロースが得られていることを見いだした。また、上記酸化により得られる酸化セルロースを適宜希釈すると、ナノセルロースを容易に得られることを見出した。以上のとおり、本発明の製造方法では、解繊処理の必要がなく、効率的にナノセルロースを得ることができる。
また、解繊処理に使用する装置は高価であり製造コストの増大を招来していたが、本発明の製造方法によれば生産コスト低減の観点からも効率性に優れる。
植物の主成分はセルロースであり、セルロース分子が束になったものがセルロースミクロフィブリルと称される。セルロース系原料中のセルロースもまた、セルロースミクロフィブリルの形態で含まれている。本発明におけるナノセルロースは、セルロースをナノ化したものの総称を表し、微細セルロース繊維やセルロースナノクリスタル等を含む。微細セルロース繊維は、セルロースナノファイバー(CNFとも記載する)ともいう。
本発明によって得られるナノセルロースは、ナノセルロースを含む水分散液の態様であることが好ましい。
本明細書において、「解繊処理を実質的に行わない」とは、酸化の後に、得られた酸化セルロースに対して機械解繊装置等を用いてせん断力等のエネルギー負荷をかけることでナノ化する工程を行わないことを意味する。
ナノセルロースの品質をより高める観点から、平均繊維長は、より好ましくは50nm以700nm以下、さらに好ましくは100nm以上700nm以下、よりさらに好ましくは100nm以上600nm以下である。
ナノセルロースの品質をより高める観点から、平均繊維幅は、より好ましくは2nm以上50nm以下、さらに好ましくは3nm以上30nm以下、よりさらに好ましくは3nm以上20nm以下である。
アスペクト比が200以下であることにより、ナノセルロースが均一に分散し品質を高められる傾向にある。こうした観点から、アスペクト比は、より好ましくは190以下であり、さらに好ましくは180以下である。
その一方で、アスペクト比が低すぎる、すなわち、ナノセルロースの形状が細長い繊維状というよりも太い棒状である場合、偏在により凝集が起こり、ナノセルロースの品質が低下する傾向にある。そのため、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上であり、さらに好ましくは40以上である。
本発明の製造方法においては、セルロース系原料として、セルロースを機械的処理や化学的処理に得られる微細セルロースを用いることが好ましい。微細セルロースとしては、粉末パルプを好適に挙げることができる。粉末パルプを使用することにより、酸化反応によって微細化がより進行する傾向にある。また、粉末パルプの粒子径は、通常1~1000μmの範囲であり、好ましくは1~500μmの範囲であり、より好ましくは1~100μmの範囲である。ここでいう粒子径とは、平均粒子径であって、測定原理としてレーザー散乱法を用い、粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布が50%となるときの値を意味する。
セルロース系原料の酸化により酸化セルロースを製造する方法としては、セルロース系原料と、次亜塩素酸又はその塩を含む反応液とを混合する方法が挙げられる。反応液に含まれる溶媒は、取り扱いやすい点や副反応が生じにくい点で、水が好ましい。
酸化においては、有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いることが好ましい。有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いることにより、酸化セルロース中のカルボキシ基量を十分に多くでき、十分に解繊が進行し、酸化反応の後の解繊処理を省略できる。
また、反応液(反応系)における次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度も、6~43質量%の範囲であることが好ましい。
解繊処理することなく酸化によってナノセルロースを得る観点から、酸化反応の反応時間は、30分以上とすることが好ましい。酸化反応の反応時間は、解繊をより進行させる観点から、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。酸化反応の反応時間の上限は、特に制限されず、適宜調整すればよい。反応時間の上限は、通常15日以下であり、10日以下であってもよく、7日以下であってもよい。反応時間の上限は、生産性の観点からは、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下である。
本発明の製造方法は、酸化工程で用いた次亜塩素酸又はその塩を処理する工程(以下、「処理工程」ともいう)をさらに含むことができる。処理工程を含むことにより、セルロース系原料を酸化する反応を停止させることができる。
なお、反応の停止は、上述した反応時間に基づき停止してもよく、反応の進行具合(すなわち、反応の終点)を判断して停止してもよい。反応の終点を判断する方法としては、例えば、反応生成物の酸化の程度であるカルボキシ基量を測定する方法や、次亜塩素酸又はその塩の残量を観察する方法や、反応系のpHの変化を観察する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記亜硫酸塩類としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、次亜硫酸塩等が挙げられ、これらは水和物であってもよい。上記亜硫酸塩類としては、具体的には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム、次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸マグネシウム、ピロ亜硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらの中でも亜硫酸ナトリウムが好ましい。
上記スルファミン酸又はその塩の中でも、好ましくはスルファミン酸塩である。スルファミン酸塩としては、具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ニッケル等が挙げられる。
上記チオ硫酸塩としては、具体的には、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記シュウ酸塩としては、具体的には、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム等が挙げられる。
上記ギ酸塩としては、具体的には、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム等が挙げられる。
次亜リン酸塩としては、具体的には、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
還元剤の添加量は、次亜塩素酸又はその塩の量(有効塩素濃度)に応じて適宜調整すればよい。また、次亜塩素酸又はその塩を処理する方法以外に、酸や金属触媒を添加してセルロース系原料を酸化する反応を停止させる方法を併用してもよい。
本発明の製造方法の酸化により得られた酸化セルロースを含む分散液を希釈することにより、当該酸化セルロースのナノ化が進行する。ナノ化したことは、希釈液の光透過率を測定することにより確認することができ、当該光透過率を70%以上とすることが好ましい。なお、上記光透過率は、固形分濃度0.1質量%の希釈液の光透過率を測定して得られる値である。
したがって、本発明の一つは、次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得て、前記酸化により得られた酸化セルロースを含む分散液を希釈する工程を含む、前記希釈後の分散液を固形分濃度0.1質量%としたときの光透過率が70%以上である、製造方法である。
上記希釈には分散液を構成する分散媒を用いることが好ましく、分散媒としては後述するプロトン化工程に用いる分散媒を用いることができる。
希釈液における酸化セルロースの濃度は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。希釈液における酸化セルロースの濃度の下限値は、0質量%超過であればよく、ナノ化後の取り扱い容易性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
本発明の製造方法では、酸化により得られた反応混合物(以下、酸化物分散体ともいう)を用いて、ろ過等の公知の固液分離を必要に応じて行うことが好ましい。したがって、本発明の製造方法の一態様は、次亜塩素酸又はその塩を用いてセルロース系原料を酸化し、前記酸化の後、解繊処理を実質的に行うことなく、得られた反応混合物を必要に応じて固液分離して、ナノセルロースを含む分散液を得る工程を含む。ここでいう固液分離とは、固形分と液相とを分離する操作を意味し、ナノセルロースを含む分散液が液相に相当する。上記操作を単に分離工程ともいう。
本発明のこの一態様において、固液分離を行うことがより好ましい。固液分離を行うことにより、微細化されていない酸化セルロースを固形分として除去することができる。この微細化されていない酸化セルロース(すなわち、固液分離による固形分)は、再利用してさらに酸化反応を行うか、解繊処理の工程に供して微細化してもよい。また、上述した(1)のとおり、得られた酸化セルロースを希釈し、光透過率を所定の範囲に調整する方法に供してもよい。
精製の方法は、分散液中のナノセルロース以外の不純物を除く手段であれば特に制限されない。不純物としては、酸化反応等に由来する塩成分や、酸化反応が過度に進行した結果として得られる粒子状のセルロース、可溶成分等が挙げられる。精製の具体的な方法としては、一般的な手法、例えば、透析チューブに分散液を入れて不純物を水などに抜き出す方法や、電気透析、各種のクロマトグラフィー(分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー)等が挙げられる。
本発明の製造方法は、上記(1)及び/又は(2)を行う前後において、好ましくは上記(1)及び/又は(2)を行う前において、酸化工程にて得られたセルロース系酸化物に酸を添加し、pHが4.0以下である酸化物分散体を調製する工程(以下、「プロトン化工程」ともいう)をさらに含むことができる。ここで、酸化物分散体に含まれるセルロース系酸化物にはカルボキシ基が含まれており、プロトン化工程は、かかるカルボキシ基の少なくとも一部を塩型(-COO- X+:X+はナトリウム等の陽イオンを指す)からプロトン型(-COO-H+)とするための工程である。
陽イオン交換樹脂を用いてプロトン化した後は、陽イオン交換樹脂を金属メッシュ等により濾過して除去すればよい。
本発明の酸化セルロースの製造方法は、セルロース系酸化物と分散媒とを含む酸化物分散体を固液分離し、酸化セルロースを得る工程(分離工程)を含むことができる。上記(2)の方法を採用する場合、分離工程を含む。
本発明の製造方法は、酸化物分散体又は酸化セルロースを酸性の洗浄液で洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)をさらに含むことができる。
本発明の製造方法は、塩基を添加し、分離工程で得られた酸化セルロースと分散媒とを含む酸化セルロース分散体のpHを4.0超に調整する工程(以下、「塩化工程」ともいう。また、塩化工程を「中和工程」ともいう。)をさらに含むことができる。ここで、酸化セルロース分散体に含まれる酸化セルロースにはカルボキシ基が含まれており、塩化工程は、かかるカルボキシ基の少なくとも一部をプロトン型(-COO-H+)から塩型(-COO- X+:X+はナトリウム、リチウム等の陽イオンを指す)とするための工程である。
また、塩基としては、アミンも用いることができる。アミンとしては、第一級アミンであっても、第二級アミンであっても、第三級アミンであっても、第四級アミンであってもよい。
である。pHの範囲は、上記上限値と下限値を適宜組み合わせればよい。
本開示の実施の一形態において、本発明におけるナノセルロースは、ゼータ電位が-30mV以下であることが好ましい。ゼータ電位が-30mV以下(すなわち、絶対値が30mV以上)であると、ミクロフィブリル同士の反発が十分に得られ、表面電荷密度が高いナノセルロースが生じやすくなる。これにより、ナノセルロースの分散安定性が向上し、スラリーとしたときの粘度安定性、及びハンドリング性を優れたものとすることができる。分散安定性の観点からは、ゼータ電位の下限は特に制限されない。ただし、ゼータ電位が-100mV以上(すなわち、絶対値が100mV以下)の場合には、酸化の進行に伴う繊維方向の酸化切断が抑制される傾向にあるため、均一なサイズのナノセルロースを得ることができる傾向にある。
ゼータ電位は、例えば、酸化をより進行させる側(すなわち、酸化度合いを高くする側)に酸化の反応時間、反応温度及び撹拌条件の1つ以上を設定する(例えば、反応時間を長くする)ことによって高くなる傾向にある。
ナノセルロースに純水を加えて、ナノセルロースの濃度が約0.1%になるように希釈する。希釈後のナノセルロース水分散体に、0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約8.0に調整して、例えば、大塚電子社製ゼータ電位計(ELSZ-1000)によりゼータ電位を20℃で測定する。
本発明におけるナノセルロースを分散媒中に分散させたナノセルロース分散体は、セルロース繊維の光散乱等が少なく、高い光透過率を示すことができる。具体的には、好適な実施の一形態において、本発明におけるナノセルロースは、水と混合して固形分濃度0.1質量%とした混合液における光透過率が70%以上である。当該光透過率は、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、よりさらに好ましくは92%以上であり、さらにより好ましくは95%以上である。なお、光透過率は、分光光度計により測定した波長660nmでの値である。
酸化セルロースの重合度は600以下であることが好ましい。酸化セルロースの重合度が600を超えると、微細化が不十分である傾向にある。また、酸化セルロースの重合度が600を超えると、解繊が不十分なナノセルロースが多くなるため、これを分散媒中に分散させた場合に光散乱等が多くなり、透明度が低下することがある。重合度の下限は特に設定されないが、酸化セルロースの重合度が50未満であると、繊維状というより粒子状のセルロースの割合が多くなり、スラリーの品質が不均一になり粘度が不安定になる。上記の観点から、酸化セルロースの重合度は、50~600であることが好ましい。
pH10に調整した水素化ホウ素ナトリウム水溶液に酸化セルロースを加え、25℃で5時間、還元処理を行う。水素化ホウ素ナトリウム量は、酸化セルロース1gに対して約0.1gとする。還元処理後、吸引ろ過にて固液分離、水洗を行い、得られた酸化セルロースを凍結乾燥させる。純水約10mlに乾燥させた酸化セルロース約0.04gを加えて2分間撹拌した後、1M銅エチレンジアミン溶液約10mlを加えて溶解させる。その後、キャピラリー型粘度計にて25℃でブランク溶液の流下時間とセルロース溶液の流下時間測定する。ブランク溶液の流下時間(t0)とセルロース溶液の流下時間(t)、酸化セルロースの濃度(c[g/ml])から次式のように相対粘度(ηr)、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を順次求め、粘度測の式から酸化セルロースの重合度(DP)を計算する。
ηr=η/η0=t/t0
ηsp=ηr-1
[η]=ηsp/(100×c(1+0.28ηsp))
DP=175×[η]
本発明におけるナノセルロースのカルボキシ基量は、0.30mmol/g以上2.0mmol/g未満であることが好ましい。当該カルボキシ基量が0.30mmol/g以上であると、十分に微細化したセルロース繊維が得られる傾向にある。また、品質が均一化されたナノセルロース含有スラリーを得ることができ、スラリーの粘度安定性、ハンドリング性を向上させることができる。一方、カルボキシ基量が2.0mmol/g以下であると、セルロースが過度に分解することを抑制でき、粒子状のセルロースの比率が少なく品質が均一なナノセルロースを得ることができる。こうした観点から、カルボキシ基量は、より好ましくは0.35mmol/g以上、さらに好ましくは0.40mmol/g以上、よりさらに好ましくは0.42mmol/g以上である。カルボキシ基量の上限については、より好ましくは1.5mmol/g以下、さらに好ましくは1.2mmol/g、よりさらに好ましくは1.0mmol/g以下である。
カルボキシ基量=a(ml)×0.05/酸化セルロース質量(g)
繊維長の標準偏差が600nmを超える場合、ナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する。そのため、標準偏差は小さいほど好ましい。但し、標準偏差を10nm未満にしようとすると酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
尖度は繊維長分布の集中度を示す数値であり、11未満の尖度が小さなナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する。そのため、尖度は大きいほど好ましいが、30を超える尖度にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維長の尖度は、データ数をn、各データをx、標準偏差をsとすれば、下記式(2)から求められる。
繊維長の歪度が3.0未満であると粘度安定性が低下し、歪度が6.0、さらには4.0を超える場合は、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
なお、繊維長の歪度が高いほど、繊維長分布が幅の小さい側に偏っていることを示している。
繊維長の歪度は、データ数をn、各データをx、標準偏差をsとすれば、下記式(3)から求められる。
繊維長の範囲が4000nmを超えるナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、繊維長の範囲は小さいほど好ましい。但し、繊維長の範囲の下限を700nm未満、さらに550nm未満にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維幅の標準偏差が1.5nmを超えると、ナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、標準偏差は小さいほど好ましい。但し、標準偏差を1.0nm未満、さらに0.5nm未満にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維幅の標準偏差の計算方法は、上記繊維長の標準偏差と同じである。
なお、繊維幅の標準偏差は、繊維長の標準偏差の制御方法と同様の方法により、制御することができる。
繊維幅の尖度の小さなナノセルロースを使用したスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、尖度は大きいほど好ましい。但し、尖度を2.5以上にしようとすると、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維幅の尖度の計算方法は、上記繊維長の尖度と同じである。
繊維幅の歪度が0.5未満であると粘度安定性が低下し、歪度が1.5を超える場合は、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
なお、繊維幅の歪度が高いほど、繊維幅分布が幅の小さい側に偏っていることを示している。
繊維幅の尖度の計算方法は、上記繊維長の尖度と同じである。
繊維幅の範囲の大きなナノセルロースを含むスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、繊維幅の範囲は小さいほど好ましい。但し、繊維幅の範囲の下限を5.0nm未満、更に5.2nm未満にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
同様に、繊維幅は、その分布が狭い(標準偏差が小さい、範囲が小さい)、及び/又は、その分布が尖っている(尖度が大きい)、及び/又は、繊維幅分布が小さい方へ偏っている(歪度が大きい)と、スラリー中のCNF濃度の不均一な部分が生じ難くなり、スラリーの状態、特に粘度の安定性が高くなると考えられる。
得られた水分散液を純水で1000~1000000倍に希釈し、それをマイカ基材上で自然乾燥させ、オックスフォード・アサイラム製走査型ブローブ顕微鏡「MFP-3D infinity」を用いて、ACモードで、CNFの形状観察を行った。
繊維長については、得られた画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」を用いて二値化し解析を行った。繊維100本以上について、繊維長=「周囲長」÷2として平均繊維長を求めた。
繊維幅については、「MFP-3D infinity」に付属されているソフトウェアを用いて、繊維50本以上について、形状像の断面高さ=繊維幅として平均繊維幅を求めた。
(酸化工程)
ビーカーに、有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を350g入れ、純水を加えて撹拌し、有効塩素濃度を21質量%とした。そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH11の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。
上記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の粉末パルプ(VP-1,平均粒子径:30μm,ここでいう平均粒子径は、測定原理としてレーザー散乱法を用い、粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布が50%となるときの値である)を50g加えた。
セルロース系原料を供給後(ここで混合物におけるセルロース系原料の濃度は6.7質量%であった)、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを11に調整して、6時間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。
(処理工程、分離工程、洗浄工程)
反応終了後、亜硫酸ナトリウムを加えて余剰の次亜塩素酸ナトリウムを処理し、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により濾液を回収した。ここで、メンブランフィルター上の残渣の質量は、12gであった。上記残渣の質量は、酸化反応による微細化の進行の指標となり、残渣の量が少ないほどナノセルロースの生成量が多いことを意味する。
その後、濾液について透析膜及び純水を使用して含まれる塩成分を除去し、ナノセルロースの水分散液を得た。
この水分散液について、上記の〔CNFの繊維長と繊維幅の測定方法〕によって、形状観察を行った。形状観察によって、平均繊維幅12nm、平均繊維長300nmのCNFが得られていることを確認した。
(次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度の測定)
次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を純水に加えた水溶液0.582gを精密に量り、純水50mLを加え、ヨウ化カリウム2g及び酢酸10mLを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置した。15分間の放置後、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果(指示薬 デンプン試液)、滴定量は34.55mLであった。別に空試験を行い補正し、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mLが3.545mgClに相当するので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は21質量%であった。
酸化反応における反応時間を、6時間から、2時間にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。メンブランフィルター上の残渣の質量は、32gであった。
この水分散液について、上記の〔CNFの繊維長と繊維幅の測定方法〕によって、形状観察を行った。形状観察によって、平均繊維幅14nm、平均繊維長350nmのCNFが得られていることを確認した。
(酸化工程)
ビーカーに、pH13、有効塩素濃度23質量%である次亜塩素酸ナトリウム水溶液を500g入れ、新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にて三枚後退翼型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の水で湿らせた粉末パルプ(VP-1)を70g(水35g、パルプ35g)加えた。
セルロース系原料を供給後、上記恒温水浴で30℃に保温しつつ、pH11に低下するまで撹拌した。pHが11到達以降、25質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応系のpHを11に調整した条件を維持しつつ、pH11到達から3時間20分間、撹拌機にて撹拌を行った。
その後、純水を加えて希釈することで酸化反応を遅くさせ、水中に分散しているセルロース系酸化物を得た。
(処理工程)
得られた水中に分散しているセルロース系酸化物に対して、亜硫酸ナトリウム水溶液を加えることで、残留している余剰の次亜塩素酸ナトリウム分を還元処理した。
(プロトン化工程)
その後、塩酸を加えてセルロース系酸化物のカルボキシ基を塩型(-COO-Na+)からプロトン型(-COO-H+)とし、pH2.5の水分散体を得た。
なお、本実施例におけるpHの制御は、pHコントローラー(東京硝子器械株式会社、FD-02)を用いて行った。
(分離工程、洗浄工程)
得られたpH2.5の水分散体に対して、固液分離及び洗浄を行った。具体的には、遠心分離(1000G、10分間)及びデカンテーションにより上澄みを除去し、除去分相当量の純水を加えて匙で充分に撹拌して均一にするという操作を6回繰り返し、最後に上記遠心分離及びデカンテーションを行って、酸化セルロースを得た。
(塩化工程)
その後、導入されたカルボキシ基の量とほぼ等モル量分の水酸化ナトリウムを添加し、カルボン酸基をプロトン型(-COO-H+)から塩型(-COO-Na+)に戻した。この水分散体における酸化セルロースの含有濃度は11.3質量%であった。
(酸化セルロース希釈工程)
酸化セルロースの水分散体に純水を加えて、酸化セルロースの含有濃度を1質量%に調整した後、室内で1~2日間静置させた。静置開始時、酸化セルロースはゲル状であったが、1日経過後にゲル状のものは見えなくなり、軽く手で振り混ぜるとほぼ透明な液となった。2日静置させたものも同様の挙動を示した。
1又は2日間静置したサンプルに純水を加えて酸化セルロース濃度0.1質量%に調整し、その光透過率(660nm)を測定した結果、光透過率はそれぞれ93、94%と高い値を示した。なお、光透過率は、具体的には、酸化セルロース濃度0.1質量%のサンプルを10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により波長660nmの光透過率を測定した。
また、1日経過後のサンプルを走査型プローブ顕微鏡で観察した結果、平均繊維長170nm、平均繊維幅4.4nmのナノセルロースが得られていることを確認した。
なお、1質量%に調整した酸化セルロースの水分散液をホモミキサーで解繊(10,000rpm、10分間)し、機械解繊によるナノセルロース水分散液を得た。この機械解繊したナノセルロースは、平均繊維長170nm、平均繊維幅4.3nmであった。
以上のことから、静置工程により、ナノセルロースの水分散液が得られたことを確認した。
ビーカーに、TEMPOを0.8g及び臭化ナトリウムを5.0g、純水を加えて撹拌して水溶液とし、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の粉末パルプ(VP-1)を50g加えた。
上記水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて25℃に加温した後、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の粉末パルプ(VP-1)を50g加えた。
0.1M水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、pH10.0の水溶液とした。そこへ、有効塩素濃度13.2質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液129gを加え、同じ恒温水槽で25℃に保温した状態で、0.1M水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを10.0に調整して、2時間撹拌を行った。
反応終了後、亜硫酸ナトリウムを加えて余剰の次亜塩素酸ナトリウムを処理し、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により濾液を回収した。ここで、メンブランフィルター上の残渣の質量は、52gであった。また、この水分散液について、上記の〔CNFの繊維長と繊維幅の測定方法〕によって、形状観察を行った結果ナノセルロースは確認できず、平均繊維長及び平均繊維幅は算出できなかった。
Claims (6)
- 次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得る酸化工程、
前記酸化工程で用いた次亜塩素酸又はその塩を処理し、セルロース系原料を酸化する反応を停止させる処理工程、
セルロース系酸化物と分散媒とを含む酸化物分散体を固液分離し、酸化セルロースを得る分離工程、
前記酸化セルロースを分散媒に希釈することでナノセルロースを含む分散液を得る工程、
を含み、
前記酸化セルロースのカルボキシ基量が、0.30mmol/g以上であり、
前記酸化工程が、撹拌しながら行われ、酸化反応の反応時間が2時間以上であり、
前記希釈後の分散液を固形分濃度0.1質量%としたときの光透過率が、70%以上である、
ナノセルロースの製造方法。 - 次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得る酸化工程、
前記酸化工程で用いた次亜塩素酸又はその塩を処理し、セルロース系原料を酸化する反応を停止させる処理工程、
セルロース系酸化物と分散媒とを含む酸化物分散体を固液分離し、ナノセルロースを含む分散液を得る工程、
を含み、
前記酸化セルロースのカルボキシ基量が、0.30mmol/g以上であり、
前記酸化工程が、撹拌しながら行われ、酸化反応の反応時間が2時間以上である、
ナノセルロースの製造方法。 - 前記ナノセルロースを含む分散液を精製する工程を含む、
請求項2に記載の製造方法。 - 前記ナノセルロースの平均繊維幅が、1nm以上100nm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記ナノセルロースの平均繊維長が、50nm以上800nm以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記酸化の際の反応系におけるセルロース系原料の濃度が、0.1質量%以上30質量%以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
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