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JP7787489B2 - ナノセルロースの製造方法 - Google Patents
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JP7787489B2 - ナノセルロースの製造方法 - Google Patents

ナノセルロースの製造方法

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Description

本発明は、ナノセルロースの製造方法に関する。
各種セルロース系原料を酸化剤で酸化し、得られた酸化セルロースを微細化することにより、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)等のナノセルロース材料を製造する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1には、酸化剤として次亜塩素酸又はその塩を用い、反応系内の有効塩素濃度が14~43質量%の高濃度条件においてセルロース系原料を酸化して酸化セルロースを得た後、酸化セルロースを微細化処理してCNFを得ることが開示されている。また、特許文献2には、酸化剤として次亜塩素酸又はその塩を用い、反応系内の有効塩素濃度を6~14質量%として、pHを5.0~14.0に調整しながらセルロース系原料を酸化して酸化セルロースを得た後、酸化セルロースを微細化処理してCNFを得ることが開示されている。これらの技術では、触媒として2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(TEMPO)等のN-オキシル化合物を用いずに酸化処理を行うため、N-オキシル化合物がセルロース繊維中に残存しておらず、よって、環境等に及ぼす影響の低減を図りながらナノセルロース材料を製造することが可能である。
国際公開第2018/230354号 国際公開第2020/027307号
特許文献1及び2には、酸化セルロースを微細化処理してナノセルロース材料を製造する具体例として、超音波ホモジナイザーを用いた機械的処理による解繊処理を経てナノセルロース材料を得た例が開示されている。しかしながら、生産コスト低減等の観点から、ナノセルロースを効率的に製造する方法が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、効率的なナノセルロースの製造方法を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、セルロース系原料を次亜塩素酸又はその塩を用いて酸化することで、解繊処理の工程を省略でき、効率的にナノセルロースを得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、以下の手段が提供される。
[1]
次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得て、前記酸化の後、解繊処理を実質的に行うことなく前記酸化セルロースをナノ化する工程を含む、ナノセルロースの製造方法。
[2]
前記酸化により得られた酸化セルロースを含む分散液を希釈する工程を含み、
前記希釈後の分散液を固形分濃度0.1質量%としたときの光透過率が、70%以上である、
[1]に記載の製造方法。
[3]
前記酸化の後、酸化セルロースを含む分散液を必要に応じて固液分離して、ナノセルロースを含む分散液を得る工程を含む、
[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記ナノセルロースを含む分散液を精製する工程を含む、
[3]に記載の製造方法。
[5]
前記ナノセルロースの平均繊維幅が、1nm以上100nm以下である、
[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記ナノセルロースの平均繊維長が、50nm以上800nm以下である、
[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
前記酸化の反応時間が、30分以上である、
[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
前記酸化の際の反応系におけるセルロース系原料の濃度が、0.1質量%以上30質量%以下である、
[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
本発明のナノセルロースの製造方法は、解繊処理の工程を省略でき、効率性に優れる。
本発明のナノセルロースの製造方法は、次亜塩素酸又はその塩を用いてセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得て、前記酸化の後、解繊処理を実質的に行うことなく前記酸化セルロースをナノ化する工程を含む。
従前の方法では、ナノセルロースを得るために、機械解繊等の解繊処理の前処理として化学処理、生物処理等を行っても最後に解繊処理することを行っていた。本発明者らは、次亜塩素酸又はその塩を用いてセルロース系原料を酸化することにより、解繊が進行し、ナノセルロースが得られていることを見いだした。また、上記酸化により得られる酸化セルロースを適宜希釈すると、ナノセルロースを容易に得られることを見出した。以上のとおり、本発明の製造方法では、解繊処理の必要がなく、効率的にナノセルロースを得ることができる。
また、解繊処理に使用する装置は高価であり製造コストの増大を招来していたが、本発明の製造方法によれば生産コスト低減の観点からも効率性に優れる。
本発明におけるナノセルロースとは、次亜塩素酸又はその塩を用いてセルロース系原料を酸化し、前記酸化の後、解繊処理を実質的に行うことなく得られるものを指す。
植物の主成分はセルロースであり、セルロース分子が束になったものがセルロースミクロフィブリルと称される。セルロース系原料中のセルロースもまた、セルロースミクロフィブリルの形態で含まれている。本発明におけるナノセルロースは、セルロースをナノ化したものの総称を表し、微細セルロース繊維やセルロースナノクリスタル等を含む。微細セルロース繊維は、セルロースナノファイバー(CNFとも記載する)ともいう。
本発明によって得られるナノセルロースは、ナノセルロースを含む水分散液の態様であることが好ましい。
本明細書において、「解繊処理を実質的に行わない」とは、酸化の後に、得られた酸化セルロースに対して機械解繊装置等を用いてせん断力等のエネルギー負荷をかけることでナノ化する工程を行わないことを意味する。
本発明におけるナノセルロースの平均繊維長は、好ましくは50nm以上800nm以下である。平均繊維長が50nm以上であることにより、ナノセルロースとしての品質が均一になりやすい傾向にある。品質をより均一にする観点から、平均繊維長の下限は、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上である。平均繊維長が800nm以下であることにより、粗大なセルロース繊維の割合を抑え、ナノセルロースの沈殿の発生を抑制する傾向にある。沈殿の発生をより抑制する観点から、平均繊維長の上限は、より好ましくは700nm以下、さらに好ましくは600nm以下である。
ナノセルロースの品質をより高める観点から、平均繊維長は、より好ましくは50nm以700nm以下、さらに好ましくは100nm以上700nm以下、よりさらに好ましくは100nm以上600nm以下である。
本発明におけるナノセルロースの平均繊維幅は、好ましくは1nm以上100nm以下である。平均繊維幅が1nm以上であることにより、ナノセルロースとしての品質が均一になりやすい傾向にある。品質をより均一にする観点から、平均繊維幅の下限は、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上である。平均繊維幅が100nm以下であることにより、粗大なナノセルロースの割合を抑え、ナノセルロースの沈殿の発生を抑制する傾向にある。沈殿の発生をより抑制する観点から、平均繊維幅は、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下、よりさらに好ましくは20nm以下である。
ナノセルロースの品質をより高める観点から、平均繊維幅は、より好ましくは2nm以上50nm以下、さらに好ましくは3nm以上30nm以下、よりさらに好ましくは3nm以上20nm以下である。
本発明におけるナノセルロースにおいて、平均繊維幅と平均繊維長との比で表されるアスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)は、20以上200以下であることが好ましい。
アスペクト比が200以下であることにより、ナノセルロースが均一に分散し品質を高められる傾向にある。こうした観点から、アスペクト比は、より好ましくは190以下であり、さらに好ましくは180以下である。
その一方で、アスペクト比が低すぎる、すなわち、ナノセルロースの形状が細長い繊維状というよりも太い棒状である場合、偏在により凝集が起こり、ナノセルロースの品質が低下する傾向にある。そのため、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上であり、さらに好ましくは40以上である。
なお、平均繊維幅及び平均繊維長は、ナノセルロースの濃度が概ね1~10ppmとなるようにナノセルロースと水とを混合し、十分に希釈したナノセルロース水分散体をマイカ基材上で自然乾燥させ、走査型プローブ顕微鏡を用いてナノセルロースの形状観察を行い、得られた像より任意の本数の繊維を無作為に選択し、形状像の断面高さ=繊維幅とし、周囲長÷2=繊維長とすることにより算出した値である。このような平均繊維幅及び平均繊維長の算出には、画像処理のソフトウェアを用いることができる。このとき画像処理の条件は任意であるが、条件によって同一画像であっても算出される値に差が生じる場合がある。条件による値の差の範囲は、平均繊維長については±100nmの範囲内であることが好ましい。条件による値の差の範囲は、平均繊維幅については±10nmの範囲内であることが好ましい。より詳細な測定方法は、後述の実施例に記載の方法に従う。
セルロース系原料は、セルロースを主体とする材料であれば特に限定されず、例えば、パルプ、天然セルロース、再生セルロース、及びセルロースを機械的処理することにより解重合した微細セルロース等が挙げられる。セルロース系原料としては、パルプを原料とする結晶セルロース等の市販品をそのまま使用することができる。その他、おからや大豆皮等、セルロース成分を多量に含む未利用バイオマスを原料としてもよい。また、使用する酸化剤を原料パルプの中に浸透しやすくする目的で、予めセルロース系原料を適度な濃度のアルカリで処理してもよい。
本発明の製造方法においては、セルロース系原料として、セルロースを機械的処理や化学的処理に得られる微細セルロースを用いることが好ましい。微細セルロースとしては、粉末パルプを好適に挙げることができる。粉末パルプを使用することにより、酸化反応によって微細化がより進行する傾向にある。また、粉末パルプの粒子径は、通常1~1000μmの範囲であり、好ましくは1~500μmの範囲であり、より好ましくは1~100μmの範囲である。ここでいう粒子径とは、平均粒子径であって、測定原理としてレーザー散乱法を用い、粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布が50%となるときの値を意味する。
セルロース系原料の酸化に使用される次亜塩素酸又はその塩としては、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、及び次亜塩素酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさの点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
本発明の製造方法は、酸化工程を少なくとも含み、処理工程、プロトン化工程、分離工程、洗浄工程、塩化工程を適宜含んでいてもよい。
酸化工程
セルロース系原料の酸化により酸化セルロースを製造する方法としては、セルロース系原料と、次亜塩素酸又はその塩を含む反応液とを混合する方法が挙げられる。反応液に含まれる溶媒は、取り扱いやすい点や副反応が生じにくい点で、水が好ましい。
酸化においては、有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いることが好ましい。有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いることにより、酸化セルロース中のカルボキシ基量を十分に多くでき、十分に解繊が進行し、酸化反応の後の解繊処理を省略できる。
また、反応液(反応系)における次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度も、6~43質量%の範囲であることが好ましい。
酸化セルロースのカルボキシ基量を十分に多くする観点から、有効塩素濃度は、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、よりさらに好ましくは14質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上であり、一層好ましくは18質量%以上であり、より一層好ましくは20質量%以上である。また、解繊時にセルロースが過度に分解することを抑制する観点から、反応液の有効塩素濃度は、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは38質量%以下である。反応液の有効塩素濃度の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができる。当該有効塩素濃度の範囲は、より好ましくは7~43質量%、さらに好ましくは14~43質量%の範囲である。
なお、次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度は、以下のように定義される。次亜塩素酸は水溶液として存在する弱酸であり、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸の水素が他の陽イオンに置換された化合物である。例えば、次亜塩素酸塩である次亜塩素酸ナトリウムは溶媒中(好ましくは水溶液中)に存在するため、次亜塩素酸ナトリウムの濃度ではなく、溶液中の有効塩素量として濃度が測定される。ここで、次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素について、次亜塩素酸ナトリウムの分解により生成する2価の酸素原子の酸化力が1価の塩素の2原子当量に相当するため、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の結合塩素原子は、非結合塩素(Cl2)の2原子と同じ酸化力を持ち、有効塩素=2×(NaClO中の塩素)となる。測定の具体的な手順としては、まず試料を精秤し、水、ヨウ化カリウム及び酢酸を加えて放置し、遊離したヨウ素についてデンプン水溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し有効塩素濃度を測定する。
次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化反応は、pHを5.0~14.0の範囲に調整しながら行うとよい。この範囲であると、セルロース系原料の酸化反応を十分に進行させることができ、酸化セルロース中のカルボキシ基量が十分に多くなり、解繊が進行する傾向にある。反応系のpHは、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上である。反応系のpHの上限については、より好ましくは13.5以下、さらに好ましくは13.0以下である。また、反応系のpHの範囲は、より好ましくは7.0~14.0、さらに好ましくは8.0~13.5である。
以下、次亜塩素酸又はその塩として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合を例にして、酸化セルロースを製造する方法についてさらに説明する。
次亜塩素酸ナトリウムを用いてセルロース系原料の酸化を行う場合、反応液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度を目的とする濃度(例えば、目的濃度:6質量%~43質量%)に調整する方法としては、目的濃度よりも有効塩素濃度の低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を濃縮する方法、目標濃度よりも有効塩素濃度の高い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する方法、及び次亜塩素酸ナトリウムの結晶(例えば、次亜塩素酸ナトリウム5水和物)を溶媒に溶解する方法等が挙げられる。これらの中でも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する方法、又は次亜塩素酸ナトリウムの結晶を溶媒に溶解する方法により酸化剤としての有効塩素濃度に調整することが、自己分解が少なく(すなわち、有効塩素濃度の低下が少なく)、有効塩素濃度の調整が簡便であるため好ましい。
セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを混合する方法は特に限定されないが、操作の容易性の観点から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にセルロース系原料を加えて混合することが好ましい。
セルロース系原料の酸化反応を効率良く進行させるために、酸化反応中は、セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との混合液を撹拌しながら行うことが好ましい。撹拌の方法としては、例えば、マグネチックスターラー、撹拌棒、撹拌翼付き撹拌機(スリーワンモータ)、ホモミキサー、ディスパー型ミキサー、ホモジナイザー、外部循環撹拌等が挙げられる。これらのうち、セルロース系原料の酸化反応が円滑に進行させ、解繊処理なくナノセルロースを効率的に得る点で、ホモミキサー及びホモジナイザー等のせん断式撹拌機、撹拌翼付き撹拌機、並びにディスパー型ミキサーのうち1種又は2種以上を用いる方法が好ましく、攪拌翼付き撹拌機を用いる方法が特に好ましい。撹拌翼付き撹拌機を用いる場合、撹拌機としては、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼等の公知の撹拌翼を備える装置を使用することができる。また、撹拌翼付き撹拌機を用いる場合、回転速度50~300rpmにて撹拌を行うことが好ましい。
酸化反応における反応温度は、好ましくは15℃~100℃、より好ましくは20℃~90℃である。反応中は、酸化反応によりセルロース系原料にカルボキシ基が生成することに伴い反応系のpHが低下する。このため、酸化反応を効率良く進行させる観点から、アルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム等)又は酸(例えば、塩酸等)を反応系中に添加し、反応系のpHを上記好ましい範囲に調整することが好ましい。反応系のpHを10以上とする場合には、反応温度を30℃以上とすることが好ましい。
酸化反応の反応時間は、長いほど解繊が進行する傾向にある。反応時間が長いほど、セルロース系原料中のセルロースミクロフィブリル表面への酸化が一層進行し、静電的反発や浸透圧によりフィブリル間の反発が強まることにより、微細化が進行、特に平均繊維幅がより小さくなると考えられる。
解繊処理することなく酸化によってナノセルロースを得る観点から、酸化反応の反応時間は、30分以上とすることが好ましい。酸化反応の反応時間は、解繊をより進行させる観点から、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。酸化反応の反応時間の上限は、特に制限されず、適宜調整すればよい。反応時間の上限は、通常15日以下であり、10日以下であってもよく、7日以下であってもよい。反応時間の上限は、生産性の観点からは、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下である。
酸化反応の際のセルロース系原料の濃度は、酸化反応時の撹拌をしやすくするといった作業性向上の観点及び解繊を進行させる観点から、酸化反応時の反応混合物全量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。酸化反応の際のセルロース系原料の濃度の下限は、通常0.1質量%以上であればよく、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。酸化反応の際のセルロース系原料の濃度は、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲である。
処理工程
本発明の製造方法は、酸化工程で用いた次亜塩素酸又はその塩を処理する工程(以下、「処理工程」ともいう)をさらに含むことができる。処理工程を含むことにより、セルロース系原料を酸化する反応を停止させることができる。
なお、反応の停止は、上述した反応時間に基づき停止してもよく、反応の進行具合(すなわち、反応の終点)を判断して停止してもよい。反応の終点を判断する方法としては、例えば、反応生成物の酸化の程度であるカルボキシ基量を測定する方法や、次亜塩素酸又はその塩の残量を観察する方法や、反応系のpHの変化を観察する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
次亜塩素酸又はその塩を処理する方法は、特に制限されず、紫外線照射や高温条件下での自己分解等で処理してもよいが、次亜塩素酸又はその塩を還元する方法が好適に挙げられる。具体的には、亜硫酸塩類、スルファミン酸又はその塩、チオ硫酸塩、過酸化水素、シュウ酸又はその塩、ギ酸又はその塩、次亜リン酸塩等の還元剤を添加する方法や酸化ニッケル等の分解触媒を添加する方法が挙げられる。
上記亜硫酸塩類としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、次亜硫酸塩等が挙げられ、これらは水和物であってもよい。上記亜硫酸塩類としては、具体的には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム、次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸マグネシウム、ピロ亜硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらの中でも亜硫酸ナトリウムが好ましい。
上記スルファミン酸又はその塩の中でも、好ましくはスルファミン酸塩である。スルファミン酸塩としては、具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ニッケル等が挙げられる。
上記チオ硫酸塩としては、具体的には、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記シュウ酸塩としては、具体的には、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム等が挙げられる。
上記ギ酸塩としては、具体的には、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム等が挙げられる。
次亜リン酸塩としては、具体的には、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
還元剤の添加量は、次亜塩素酸又はその塩の量(有効塩素濃度)に応じて適宜調整すればよい。また、次亜塩素酸又はその塩を処理する方法以外に、酸や金属触媒を添加してセルロース系原料を酸化する反応を停止させる方法を併用してもよい。
本発明の製造方法では、セルロース系原料を酸化した後に、解繊処理をせずに、適宜後処理を行うことによりナノセルロースを得ることができる。上記後処理の方法としては、ナノセルロースを得られる方法であれば特に制限されず、例えば、(1)酸化により得られた酸化セルロースを希釈し、光透過率を所定の範囲に調整する方法、及び、(2)固液分離してナノセルロースを含む分散液を得る方法等が挙げられる。
(1)酸化により得られた酸化セルロースを希釈し、光透過率を所定の範囲に調整する方法
本発明の製造方法の酸化により得られた酸化セルロースを含む分散液を希釈することにより、当該酸化セルロースのナノ化が進行する。ナノ化したことは、希釈液の光透過率を測定することにより確認することができ、当該光透過率を70%以上とすることが好ましい。なお、上記光透過率は、固形分濃度0.1質量%の希釈液の光透過率を測定して得られる値である。
したがって、本発明の一つは、次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得て、前記酸化により得られた酸化セルロースを含む分散液を希釈する工程を含む、前記希釈後の分散液を固形分濃度0.1質量%としたときの光透過率が70%以上である、製造方法である。
上記希釈には分散液を構成する分散媒を用いることが好ましく、分散媒としては後述するプロトン化工程に用いる分散媒を用いることができる。
上記希釈において、得られる希釈液における酸化セルロースの濃度は、通常5質量%以下に調整すればよい。希釈により酸化セルロースのナノ化が進行する理由は、分散媒の割合が高まることで、酸化セルロースの表面が分散媒と相互作用しやすくなり、酸化セルロースがほぐされるためであると推定される。また、希釈により塩析効果が弱まることによりナノ化が進行しやすくなると推定される。ナノ化が進行する理由は、これらに限定されない。
希釈液における酸化セルロースの濃度は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。希釈液における酸化セルロースの濃度の下限値は、0質量%超過であればよく、ナノ化後の取り扱い容易性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
上記光透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
上記希釈液の光透過率を70%以上とするためには、希釈後に時間を経過させることが好ましい。時間を長くすることにより光透過率はより高くなる傾向にあり、酸化セルロースのナノ化が進行し、ナノセルロースを含む分散液をより効率的に得られる傾向にある。光透過率は、例えば、ナノセルロースの水分散体を10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により測定することができる。
経過時間は、光透過率を確認しながら適宜調整すればよいが、通常30分以上であればよく、1時間以上であってもよく、6時間以上であってもよく、12時間以上であってもよく、18時間以上であってもよく、1日以上であってもよい。時間を長くするほどナノ化が進行する傾向にある。静置する時間の上限値は、特に制限されず、5日以下であってもよく、3日以下であってもよく、2日以下であってもよい。
希釈する工程は、後述する塩化工程の後に行うことが好ましい。
(2)固液分離してナノセルロースを含む分散液を得る方法
本発明の製造方法では、酸化により得られた反応混合物(以下、酸化物分散体ともいう)を用いて、ろ過等の公知の固液分離を必要に応じて行うことが好ましい。したがって、本発明の製造方法の一態様は、次亜塩素酸又はその塩を用いてセルロース系原料を酸化し、前記酸化の後、解繊処理を実質的に行うことなく、得られた反応混合物を必要に応じて固液分離して、ナノセルロースを含む分散液を得る工程を含む。ここでいう固液分離とは、固形分と液相とを分離する操作を意味し、ナノセルロースを含む分散液が液相に相当する。上記操作を単に分離工程ともいう。
本発明のこの一態様において、固液分離を行うことがより好ましい。固液分離を行うことにより、微細化されていない酸化セルロースを固形分として除去することができる。この微細化されていない酸化セルロース(すなわち、固液分離による固形分)は、再利用してさらに酸化反応を行うか、解繊処理の工程に供して微細化してもよい。また、上述した(1)のとおり、得られた酸化セルロースを希釈し、光透過率を所定の範囲に調整する方法に供してもよい。
本発明の製造方法では、得られた反応混合物を必要に応じて固液分離し、ナノセルロースを含む分散液を得て、必要に応じてこの分散液を精製してもよい。
精製の方法は、分散液中のナノセルロース以外の不純物を除く手段であれば特に制限されない。不純物としては、酸化反応等に由来する塩成分や、酸化反応が過度に進行した結果として得られる粒子状のセルロース、可溶成分等が挙げられる。精製の具体的な方法としては、一般的な手法、例えば、透析チューブに分散液を入れて不純物を水などに抜き出す方法や、電気透析、各種のクロマトグラフィー(分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー)等が挙げられる。
プロトン化工程
本発明の製造方法は、上記(1)及び/又は(2)を行う前後において、好ましくは上記(1)及び/又は(2)を行う前において、酸化工程にて得られたセルロース系酸化物に酸を添加し、pHが4.0以下である酸化物分散体を調製する工程(以下、「プロトン化工程」ともいう)をさらに含むことができる。ここで、酸化物分散体に含まれるセルロース系酸化物にはカルボキシ基が含まれており、プロトン化工程は、かかるカルボキシ基の少なくとも一部を塩型(-COO-+:X+はナトリウム等の陽イオンを指す)からプロトン型(-COO-+)とするための工程である。
プロトン化工程に用いる酸としては、pHが4.0以下である酸化物分散体を調製できるものであれば特に限定されず、無機酸や有機酸が挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさの点から、無機酸、特に塩酸が好ましい。また、プロトン化工程には、陽イオン交換樹脂を用いてもよい。
陽イオン交換樹脂としては、対イオンがH+である限り、強酸性イオン交換樹脂及び弱酸性イオン交換樹脂のいずれも用いることができ、これらの中でも好ましくは強酸性イオン交換樹脂である。強酸性イオン交換樹脂及び弱酸性イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂或いはアクリル系樹脂にスルホン酸基或いはカルボキシ基を導入したものが挙げられる。陽イオン交換樹脂の形状は、特に限定されず、細粒(粒状)、膜状、繊維等、種々の形状のものを用いることができる。中でも、カルボキシル化セルロースナノファイバー塩を効率よく脱塩処理し、脱塩処理後の分離が容易であるとの観点から、粒状が好ましい。このような陽イオン交換樹脂としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アンバージェット1020、同1024、同1060、同1220(以上、オルガノ社製)、アンバーライトIR-200C、同IR-120B(以上、東京有機化学社製)、レバチットSP112、同S100(以上、バイエル社製)、GELCK08P(三菱化学社製)、Dowex50W-X8(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
陽イオン交換樹脂を用いてプロトン化した後は、陽イオン交換樹脂を金属メッシュ等により濾過して除去すればよい。
プロトン化工程に用いる分散媒としては特に制限はなく、上記酸に含まれる溶媒をそのまま使用することが好ましい。また、目的に応じて、酸に含まれていない分散媒を適宜併用することや、酸に含まれている溶媒を他の分散媒に置換することもできる。分散媒の具体例としては、水;アルコール類、エーテル類、ケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキサイド等の有機溶剤が挙げられる。これらの中では、得られる酸化セルロースの収率をより高くする観点から、水が好ましい。溶媒としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
分散媒のうちアルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
酸化物分散体のpHは、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。このとき、酸化物分散体のpHの下限は特に制限されず、通常1.0以上であり、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上である。酸化物分散体のpHの範囲としては、上記上限値と下限値を適宜組み合わせればよい。
本発明の製造方法がプロトン化工程を含む場合は、プロトン化工程は、後述する分離工程前であることが好ましく、酸化工程後であることが好ましいものの、酸化工程の一部と同時であってもよい。
セルロース系酸化物は、それをプロトン化工程の前後やその間において必要に応じてさらに精製等することにより、分離工程に用いてもよい。また、酸化工程により得られたセルロース系酸化物を含む溶液をそのまま分離工程に供してもよい。
分離工程
本発明の酸化セルロースの製造方法は、セルロース系酸化物と分散媒とを含む酸化物分散体を固液分離し、酸化セルロースを得る工程(分離工程)を含むことができる。上記(2)の方法を採用する場合、分離工程を含む。
酸化物分散体を固液分離する方法としては、特に限定されないが、遠心分離やろ過等の公知の単離処理によって、液相を除去し、固相に含まれる酸化セルロースを得る方法が挙げられる。この中では、酸化物分散体をろ過することによって固液分離することが、操作性の点で好ましい。
分離工程における酸化物分散体のpHは、酸化セルロースの回収率を高める観点から、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。このとき、酸化物分散体のpHの下限は特に制限されないが、通常1.0以上であり、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上である。酸化物分散体のpHの範囲としては、上記上限値と下限値を適宜組み合わせればよい。
分離工程に用いる分散媒は、酸化工程において用いた溶媒あるいはプロトン化工程に用いる分散媒そのまま使用することが好ましい。
洗浄工程
本発明の製造方法は、酸化物分散体又は酸化セルロースを酸性の洗浄液で洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)をさらに含むことができる。
洗浄工程に用いる酸性の洗浄液としては、プロトン化工程に用いる酸と分散媒とを含む溶液を用いることができるが、特に制限されない。
酸性の洗浄液のpHは、上述した酸化物分散体のpHと同様であり、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。このとき、酸性の洗浄液のpHの下限は特に制限されないが、通常1.0以上であり、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上である。酸性の洗浄液のpHの範囲としては、上記上限値と下限値を適宜組み合わせればよい。
洗浄工程を含む場合は、洗浄工程は、分離工程の前後又は同時であればよく、分離工程と洗浄工程とを繰り返す操作を行ってもよい。
塩化工程
本発明の製造方法は、塩基を添加し、分離工程で得られた酸化セルロースと分散媒とを含む酸化セルロース分散体のpHを4.0超に調整する工程(以下、「塩化工程」ともいう。また、塩化工程を「中和工程」ともいう。)をさらに含むことができる。ここで、酸化セルロース分散体に含まれる酸化セルロースにはカルボキシ基が含まれており、塩化工程は、かかるカルボキシ基の少なくとも一部をプロトン型(-COO-+)から塩型(-COO-+:X+はナトリウム、リチウム等の陽イオンを指す)とするための工程である。
塩化工程に用いる塩基としては、酸化セルロース分散体のpHを4.0超に調整できるものであれば特に限定されず、無機塩基や有機塩基が挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさの点から、無機塩基、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
また、塩基としては、アミンも用いることができる。アミンとしては、第一級アミンであっても、第二級アミンであっても、第三級アミンであっても、第四級アミンであってもよい。
酸化セルロース分散体のpHは、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは7.0以上である。pHの上限値は特に制限されないが、好ましくは14.5以下、より好ましくは14.0以下、さらに好ましくは12.0以下、よりさらに好ましくは10.0以下、さらにより好ましくは9.0以下、特に好ましくは8.0以下である。
である。pHの範囲は、上記上限値と下限値を適宜組み合わせればよい。
塩化工程に用いる分散媒としては特に制限はなく、上記塩基に含まれる溶媒をそのまま使用することが好ましい。また、目的に応じて、塩基に含まれていない分散媒を適宜併用することや、塩基に含まれている溶媒を他の分散媒に置換することもできる。分散媒の具体例は、プロトン化工程に用いる分散媒と同様である。ただし、ナノセルロースの単離が容易となるため、水及び/又は有機溶剤が好ましい。
塩化工程を含む場合は、塩化工程は、分離工程後であればよく、洗浄工程の前後又は同時であってもよい。
本発明の製造方法において、セルロース系原料を次亜塩素酸又はその塩で酸化する処理では、TEMPO等のN-オキシル化合物を用いる必要がない。N-オキシル化合物は環境や人体への影響が懸念されている。このため、本発明におけるナノセルロースは、N-オキシル化合物を実質的に含まないことが好ましい。ここで、本明細書において、ナノセルロースが「N-オキシル化合物を実質的に含んでいない」とは、酸化の際にN-オキシル化合物を用いていない、又はナノセルロース中におけるN-オキシル化合物に由来する窒素の含有量が、セルロース系原料からの増加分として2.0ppm以下であることを意味する。ナノセルロース中のN-オキシル化合物の量は、セルロース系原料からの増加分として好ましくは1.0ppm以下である。
本発明におけるナノセルロースは一態様として、上述したように、平均繊維幅、平均繊維長、又はアスペクト比によって特徴づけることができるが、その他の態様として、所定のゼータ電位や光透過率を有していてもよい。
(ゼータ電位)
本開示の実施の一形態において、本発明におけるナノセルロースは、ゼータ電位が-30mV以下であることが好ましい。ゼータ電位が-30mV以下(すなわち、絶対値が30mV以上)であると、ミクロフィブリル同士の反発が十分に得られ、表面電荷密度が高いナノセルロースが生じやすくなる。これにより、ナノセルロースの分散安定性が向上し、スラリーとしたときの粘度安定性、及びハンドリング性を優れたものとすることができる。分散安定性の観点からは、ゼータ電位の下限は特に制限されない。ただし、ゼータ電位が-100mV以上(すなわち、絶対値が100mV以下)の場合には、酸化の進行に伴う繊維方向の酸化切断が抑制される傾向にあるため、均一なサイズのナノセルロースを得ることができる傾向にある。
ゼータ電位は、例えば、酸化をより進行させる側(すなわち、酸化度合いを高くする側)に酸化の反応時間、反応温度及び撹拌条件の1つ以上を設定する(例えば、反応時間を長くする)ことによって高くなる傾向にある。
上記の観点から、本発明におけるナノセルロースのゼータ電位は、より好ましくは-35mV以下、さらに好ましくは-40mV以下、よりさらに好ましくは-50mV以下である。また、ゼータ電位の下限については、好ましくは-90mV以上、より好ましくは-85mV以上、さらに好ましくは-80mV以上、よりさらに好ましくは-77mV以上である。ゼータ電位の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができる。ゼータ電位は、好ましくは-90mV以上-35mV以下であり、より好ましくは-85mV以上-40mV以下であり、さらに好ましくは-80mV以上-50mV以下である。なお、本明細書においてゼータ電位は、本発明におけるナノセルロースと水とを混合してナノセルロースの濃度を0.1質量%としたセルロース水分散体につき、pH8.0、20℃の条件で測定した値である。
ゼータ電位は、詳細には以下の方法にしたがい測定することができる。
ナノセルロースに純水を加えて、ナノセルロースの濃度が約0.1%になるように希釈する。希釈後のナノセルロース水分散体に、0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約8.0に調整して、例えば、大塚電子社製ゼータ電位計(ELSZ-1000)によりゼータ電位を20℃で測定する。
(光透過率)
本発明におけるナノセルロースを分散媒中に分散させたナノセルロース分散体は、セルロース繊維の光散乱等が少なく、高い光透過率を示すことができる。具体的には、好適な実施の一形態において、本発明におけるナノセルロースは、水と混合して固形分濃度0.1質量%とした混合液における光透過率が70%以上である。当該光透過率は、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、よりさらに好ましくは92%以上であり、さらにより好ましくは95%以上である。なお、光透過率は、分光光度計により測定した波長660nmでの値である。
光透過率は、例えば、ナノセルロースの水分散体を10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により測定することができる。
本発明におけるナノセルロースは、上述のとおり、セルロース系原料を次亜塩素酸又はその塩を用いて酸化することによって得られる。本明細書において、セルロース系原料の酸化物を、酸化セルロースともいう。本発明におけるナノセルロースは、酸化セルロースを含み、酸化セルロースそのものであることが好ましい。
酸化セルロースの重合度は600以下であることが好ましい。酸化セルロースの重合度が600を超えると、微細化が不十分である傾向にある。また、酸化セルロースの重合度が600を超えると、解繊が不十分なナノセルロースが多くなるため、これを分散媒中に分散させた場合に光散乱等が多くなり、透明度が低下することがある。重合度の下限は特に設定されないが、酸化セルロースの重合度が50未満であると、繊維状というより粒子状のセルロースの割合が多くなり、スラリーの品質が不均一になり粘度が不安定になる。上記の観点から、酸化セルロースの重合度は、50~600であることが好ましい。
酸化セルロースの重合度は、より好ましくは580以下、さらに好ましくは560以下、よりさらに好ましくは550以下、一層好ましくは500以下、より一層好ましくは450以下である。重合度の下限については、スラリーの粘度安定性及び塗工性を良好にする観点から、より好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上、よりさらに好ましくは100以上、一層好ましくは110以上、より一層好ましくは120以上である。重合度の好ましい範囲は、既述の上限及び下限を適宜組み合わせることにより定めることができる。本酸化セルロースの重合度は、より好ましくは80~600であり、更に好ましくは90~600であり、よりさらに好ましくは100~600であり、一層好ましくは100~550であり、より一層好ましくは100~500である。
酸化セルロースの重合度は、酸化反応の際の反応時間、反応温度、pH、及び次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度等を変更することにより調整することができる。具体的には、酸化度を高めると重合度が低下する傾向があることから、重合度を小さくするには、例えば酸化の反応時間及び/又は反応温度を大きくする方法が挙げられる。他の方法として、酸化セルロースの重合度は、酸化反応時の反応系の攪拌条件によって調整することができる。例えば、攪拌翼等を用いて反応系を十分に均一化した条件下であれば、酸化反応が円滑に進行し、重合度が低下する傾向がある。一方、スターラーによる攪拌等のように反応系の攪拌が不十分となりやすい条件下では、反応が不均一になりやすく、酸化セルロースの重合度を十分に低減することが難しい。また、酸化セルロースの重合度は、セルロース系原料の選択によっても変動する傾向がある。このため、セルロース系原料の選択によって酸化セルロースの重合度を調整することもできる。なお、本明細書において、酸化セルロースの重合度は、粘度法により測定された平均重合度(粘度平均重合度)である。
酸化セルロースの重合度は、詳細には以下の方法にしたがい測定することができる。
pH10に調整した水素化ホウ素ナトリウム水溶液に酸化セルロースを加え、25℃で5時間、還元処理を行う。水素化ホウ素ナトリウム量は、酸化セルロース1gに対して約0.1gとする。還元処理後、吸引ろ過にて固液分離、水洗を行い、得られた酸化セルロースを凍結乾燥させる。純水約10mlに乾燥させた酸化セルロース約0.04gを加えて2分間撹拌した後、1M銅エチレンジアミン溶液約10mlを加えて溶解させる。その後、キャピラリー型粘度計にて25℃でブランク溶液の流下時間とセルロース溶液の流下時間測定する。ブランク溶液の流下時間(t0)とセルロース溶液の流下時間(t)、酸化セルロースの濃度(c[g/ml])から次式のように相対粘度(ηr)、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を順次求め、粘度測の式から酸化セルロースの重合度(DP)を計算する。
ηr=η/η0=t/t0
ηsp=ηr-1
[η]=ηsp/(100×c(1+0.28ηsp))
DP=175×[η]
(カルボキシ基量)
本発明におけるナノセルロースのカルボキシ基量は、0.30mmol/g以上2.0mmol/g未満であることが好ましい。当該カルボキシ基量が0.30mmol/g以上であると、十分に微細化したセルロース繊維が得られる傾向にある。また、品質が均一化されたナノセルロース含有スラリーを得ることができ、スラリーの粘度安定性、ハンドリング性を向上させることができる。一方、カルボキシ基量が2.0mmol/g以下であると、セルロースが過度に分解することを抑制でき、粒子状のセルロースの比率が少なく品質が均一なナノセルロースを得ることができる。こうした観点から、カルボキシ基量は、より好ましくは0.35mmol/g以上、さらに好ましくは0.40mmol/g以上、よりさらに好ましくは0.42mmol/g以上である。カルボキシ基量の上限については、より好ましくは1.5mmol/g以下、さらに好ましくは1.2mmol/g、よりさらに好ましくは1.0mmol/g以下である。
なお、カルボキシ基量(mmol/g)は、酸化セルロースを水と混合した水溶液に0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11.0になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から下記式を用いて算出した値である。詳細は、後述する実施例に記載の方法に従う。カルボキシ基量は、酸化反応の反応時間、反応温度、反応液のpH等を変更することにより調整することができる。
カルボキシ基量=a(ml)×0.05/酸化セルロース質量(g)
本発明におけるナノセルロースは、次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化することにより得ることができる。こうして得られた酸化セルロースは、好適には、セルロースを構成するグルコピラノース環の水酸基のうち少なくとも2個が酸化された構造を有し、より具体的には、グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有することが好ましい。なお、酸化セルロースが有するグルコピラノース環におけるカルボキシ基の位置は、固体13C-NMRスペクトルにより解析することができる。
本発明におけるナノセルロースは、1本単位の繊維の集合体である。本発明におけるナノセルロースにカルボキシ基が導入されている場合、少なくとも1本のカルボキシル化されたナノセルロース(カルボキシル化CNFとも記載する)を含んでいればよく、カルボキシル化されたナノセルロースが主成分であることが好ましい。ここでカルボキシル化CNFが主成分であるとは、微細セルロース全量に占めるカルボキシル化CNFの割合が50質量%超過であること、好ましくは70質量%超過であること、より好ましくは80質量%超過であることを指す。上記割合の上限は100質量%であるが、98質量%であってもよく、95質量%であってもよい。
本発明におけるナノセルロースの繊維長の標準偏差は、好ましくは600nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上500nm以下の範囲である。
繊維長の標準偏差が600nmを超える場合、ナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する。そのため、標準偏差は小さいほど好ましい。但し、標準偏差を10nm未満にしようとすると酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
本発明におけるナノセルロースにおける繊維長の標準偏差は、例えば、セルロース系原料の種類の選択、カルボキシ基量を制御すること、具体的には、酸化反応の時間を制御すること;酸化反応の撹拌を調整すること;等によって、所定の範囲に制御することができる。繊維長の標準偏差の制御方法は、これらに限定されず、また、これらの方法の2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
なお、本発明における繊維長の標準偏差は、統計的な対象となる値がその平均からどれだけ広い範囲に分布しているかを表すものである。標準偏差は、データ数をn、各データをxとすれば、下記式(1)から求められる。
さらに、本発明におけるナノセルロースの繊維長の尖度は、11以上であることが好ましく、12以上がより好ましく、12以上30以下の範囲がさらに好ましい。
尖度は繊維長分布の集中度を示す数値であり、11未満の尖度が小さなナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する。そのため、尖度は大きいほど好ましいが、30を超える尖度にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
なお、繊維長の尖度について、正規分布と比べて、尖度が大きければ鋭いピークと長く太い裾を持った分布となり、尖度が小さければより丸みがかったピークと短く細い裾を持つ分布となる。
繊維長の尖度は、データ数をn、各データをx、標準偏差をsとすれば、下記式(2)から求められる。
さらに、本発明におけるナノセルロースの繊維長の歪度が3.0以上であることが好ましく、3.0以上6.0以下の範囲がより好ましく、3.0以上4.0以下の範囲がさらに好ましい。繊維長の歪度が一定範囲内であると、メカニズムは不明であるが、ナノセルロースのスラリーは、スラリーの状態、特に粘度安定性が高い。
繊維長の歪度が3.0未満であると粘度安定性が低下し、歪度が6.0、さらには4.0を超える場合は、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
なお、繊維長の歪度が高いほど、繊維長分布が幅の小さい側に偏っていることを示している。
繊維長の歪度は、平均値周辺分布の両側の非対称度を表すもので、正の歪度は、より正の値に向かって広がる非対称のテールを持つ分布を示し、負の歪度は、より負の値に向かって伸びる非対称テールを持つ分布を示す。
繊維長の歪度は、データ数をn、各データをx、標準偏差をsとすれば、下記式(3)から求められる。
また、本発明におけるナノセルロースの繊維長の範囲(最大値と最小値の差)は、4000nm以下であることが好ましく、550nm以上4000nm以下の範囲がより好ましく、700nm以上4000nm以下の範囲がさらに好ましい。
繊維長の範囲が4000nmを超えるナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、繊維長の範囲は小さいほど好ましい。但し、繊維長の範囲の下限を700nm未満、さらに550nm未満にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
さらに、本発明におけるナノセルロースに関して、繊維幅の標準偏差が1.5nm以下であることが好ましく、0.5nm以上1.5nm以下の範囲がより好ましく、1.0nm以上1.5nm以下の範囲がさらに好ましい。
繊維幅の標準偏差が1.5nmを超えると、ナノセルロースのスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、標準偏差は小さいほど好ましい。但し、標準偏差を1.0nm未満、さらに0.5nm未満にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維幅の標準偏差の計算方法は、上記繊維長の標準偏差と同じである。
なお、繊維幅の標準偏差は、繊維長の標準偏差の制御方法と同様の方法により、制御することができる。
さらに、本発明におけるナノセルロースに関して、繊維幅の尖度が0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上2.5以下の範囲がさらに好ましい。
繊維幅の尖度の小さなナノセルロースを使用したスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、スラリーの状態、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、尖度は大きいほど好ましい。但し、尖度を2.5以上にしようとすると、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維幅の尖度の計算方法は、上記繊維長の尖度と同じである。
さらに、本発明におけるナノセルロースの繊維幅の歪度は、0.5以上であることが好ましく、0.8以上1.5以下の範囲がより好ましく、0.85以上1.5以下の範囲がさらに好ましい。繊維幅の歪度が一定範囲内であると、メカニズムは不明であるが、そのナノセルロースのスラリーは、粘度安定性が高い。
繊維幅の歪度が0.5未満であると粘度安定性が低下し、歪度が1.5を超える場合は、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
なお、繊維幅の歪度が高いほど、繊維幅分布が幅の小さい側に偏っていることを示している。
繊維幅の尖度の計算方法は、上記繊維長の尖度と同じである。
さらに、本発明におけるナノセルロースの繊維幅の範囲(最大値と最小値の差)は、6.8nm以下であることが好ましく、5.0nm以上6.8nm以下の範囲がより好ましく、5.2nm以上6.7nm以下の範囲がさらに好ましい。
繊維幅の範囲の大きなナノセルロースを含むスラリーは、不均一な部分が生じ易くなり、特に粘度安定性が低下する傾向にある。そのため、繊維幅の範囲は小さいほど好ましい。但し、繊維幅の範囲の下限を5.0nm未満、更に5.2nm未満にするためには、微細化のために酸化反応の反応時間を大幅に増やす必要があり、経済的に好ましくない。
繊維長の尖度、歪度、繊維長の範囲、及び、繊維幅の尖度、歪度、繊維幅の範囲は、繊維長の標準偏差の制御方法と同様の方法により制御することができる。
平均繊維長が比較的短く、繊維長分布が狭い(標準偏差が小さい、範囲が小さい)、及び/又は、繊維長分布が尖っている(尖度が大きい)と、及び/又は、繊維長分布が小さい方へ偏っている(歪度が大きい)と、スラリー中のCNF濃度の不均一な部分が生じ難くなり、スラリーの状態、特に粘度の安定性が高くなると考えられる。
同様に、繊維幅は、その分布が狭い(標準偏差が小さい、範囲が小さい)、及び/又は、その分布が尖っている(尖度が大きい)、及び/又は、繊維幅分布が小さい方へ偏っている(歪度が大きい)と、スラリー中のCNF濃度の不均一な部分が生じ難くなり、スラリーの状態、特に粘度の安定性が高くなると考えられる。
以上説明したナノセルロースは、種々の用途に適用することができる。具体的には、例えば、補強材として各種材料(例えば、樹脂、繊維、ゴム等)と混合されて使用されてもよいし、増粘剤又は分散剤等として各種用途(例えば、食品、化粧品、医療品、塗料、インク等)において使用されてもよい。また、ナノセルロース分散液を成膜し、各種シート又はフィルムとして使用することもできる。本ナノセルロース及びこれを含むナノセルロース分散液を適用する分野も特に限定されず、例えば自動車用部材、機械部品、電化製品、電子機器、化粧品、医療品、建築材、日用品、文具等といった各種分野の製品の製造において使用することができる。また、例えば、顔料等の無機粒子を含むスラリーへの添加剤としてナノセルロース及びこれを含むナノセルロース分散液を使用した場合には、スラリーの粘度安定性やハンドリング性、塗工性能を向上させることができる点で好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
〔繊維長と繊維幅の測定方法〕
得られた水分散液を純水で1000~1000000倍に希釈し、それをマイカ基材上で自然乾燥させ、オックスフォード・アサイラム製走査型ブローブ顕微鏡「MFP-3D infinity」を用いて、ACモードで、CNFの形状観察を行った。
繊維長については、得られた画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」を用いて二値化し解析を行った。繊維100本以上について、繊維長=「周囲長」÷2として平均繊維長を求めた。
繊維幅については、「MFP-3D infinity」に付属されているソフトウェアを用いて、繊維50本以上について、形状像の断面高さ=繊維幅として平均繊維幅を求めた。
[実施例1]
(酸化工程)
ビーカーに、有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を350g入れ、純水を加えて撹拌し、有効塩素濃度を21質量%とした。そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH11の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。
上記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の粉末パルプ(VP-1,平均粒子径:30μm,ここでいう平均粒子径は、測定原理としてレーザー散乱法を用い、粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布が50%となるときの値である)を50g加えた。
セルロース系原料を供給後(ここで混合物におけるセルロース系原料の濃度は6.7質量%であった)、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを11に調整して、6時間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。
(処理工程、分離工程、洗浄工程)
反応終了後、亜硫酸ナトリウムを加えて余剰の次亜塩素酸ナトリウムを処理し、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により濾液を回収した。ここで、メンブランフィルター上の残渣の質量は、12gであった。上記残渣の質量は、酸化反応による微細化の進行の指標となり、残渣の量が少ないほどナノセルロースの生成量が多いことを意味する。
その後、濾液について透析膜及び純水を使用して含まれる塩成分を除去し、ナノセルロースの水分散液を得た。
この水分散液について、上記の〔CNFの繊維長と繊維幅の測定方法〕によって、形状観察を行った。形状観察によって、平均繊維幅12nm、平均繊維長300nmのCNFが得られていることを確認した。
なお、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は以下の方法により測定した。
(次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度の測定)
次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を純水に加えた水溶液0.582gを精密に量り、純水50mLを加え、ヨウ化カリウム2g及び酢酸10mLを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置した。15分間の放置後、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果(指示薬 デンプン試液)、滴定量は34.55mLであった。別に空試験を行い補正し、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mLが3.545mgClに相当するので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は21質量%であった。
[実施例2]
酸化反応における反応時間を、6時間から、2時間にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。メンブランフィルター上の残渣の質量は、32gであった。
この水分散液について、上記の〔CNFの繊維長と繊維幅の測定方法〕によって、形状観察を行った。形状観察によって、平均繊維幅14nm、平均繊維長350nmのCNFが得られていることを確認した。
[実施例3]
(酸化工程)
ビーカーに、pH13、有効塩素濃度23質量%である次亜塩素酸ナトリウム水溶液を500g入れ、新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にて三枚後退翼型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の水で湿らせた粉末パルプ(VP-1)を70g(水35g、パルプ35g)加えた。
セルロース系原料を供給後、上記恒温水浴で30℃に保温しつつ、pH11に低下するまで撹拌した。pHが11到達以降、25質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応系のpHを11に調整した条件を維持しつつ、pH11到達から3時間20分間、撹拌機にて撹拌を行った。
その後、純水を加えて希釈することで酸化反応を遅くさせ、水中に分散しているセルロース系酸化物を得た。
(処理工程)
得られた水中に分散しているセルロース系酸化物に対して、亜硫酸ナトリウム水溶液を加えることで、残留している余剰の次亜塩素酸ナトリウム分を還元処理した。
(プロトン化工程)
その後、塩酸を加えてセルロース系酸化物のカルボキシ基を塩型(-COO-Na+)からプロトン型(-COO-+)とし、pH2.5の水分散体を得た。
なお、本実施例におけるpHの制御は、pHコントローラー(東京硝子器械株式会社、FD-02)を用いて行った。
(分離工程、洗浄工程)
得られたpH2.5の水分散体に対して、固液分離及び洗浄を行った。具体的には、遠心分離(1000G、10分間)及びデカンテーションにより上澄みを除去し、除去分相当量の純水を加えて匙で充分に撹拌して均一にするという操作を6回繰り返し、最後に上記遠心分離及びデカンテーションを行って、酸化セルロースを得た。
(塩化工程)
その後、導入されたカルボキシ基の量とほぼ等モル量分の水酸化ナトリウムを添加し、カルボン酸基をプロトン型(-COO-+)から塩型(-COO-Na+)に戻した。この水分散体における酸化セルロースの含有濃度は11.3質量%であった。
(酸化セルロース希釈工程)
酸化セルロースの水分散体に純水を加えて、酸化セルロースの含有濃度を1質量%に調整した後、室内で1~2日間静置させた。静置開始時、酸化セルロースはゲル状であったが、1日経過後にゲル状のものは見えなくなり、軽く手で振り混ぜるとほぼ透明な液となった。2日静置させたものも同様の挙動を示した。
1又は2日間静置したサンプルに純水を加えて酸化セルロース濃度0.1質量%に調整し、その光透過率(660nm)を測定した結果、光透過率はそれぞれ93、94%と高い値を示した。なお、光透過率は、具体的には、酸化セルロース濃度0.1質量%のサンプルを10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により波長660nmの光透過率を測定した。
また、1日経過後のサンプルを走査型プローブ顕微鏡で観察した結果、平均繊維長170nm、平均繊維幅4.4nmのナノセルロースが得られていることを確認した。
なお、1質量%に調整した酸化セルロースの水分散液をホモミキサーで解繊(10,000rpm、10分間)し、機械解繊によるナノセルロース水分散液を得た。この機械解繊したナノセルロースは、平均繊維長170nm、平均繊維幅4.3nmであった。
以上のことから、静置工程により、ナノセルロースの水分散液が得られたことを確認した。
[比較例1]
ビーカーに、TEMPOを0.8g及び臭化ナトリウムを5.0g、純水を加えて撹拌して水溶液とし、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の粉末パルプ(VP-1)を50g加えた。
上記水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて25℃に加温した後、セルロース系原料として、ティーディーアイ社の粉末パルプ(VP-1)を50g加えた。
0.1M水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、pH10.0の水溶液とした。そこへ、有効塩素濃度13.2質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液129gを加え、同じ恒温水槽で25℃に保温した状態で、0.1M水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを10.0に調整して、2時間撹拌を行った。
反応終了後、亜硫酸ナトリウムを加えて余剰の次亜塩素酸ナトリウムを処理し、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により濾液を回収した。ここで、メンブランフィルター上の残渣の質量は、52gであった。また、この水分散液について、上記の〔CNFの繊維長と繊維幅の測定方法〕によって、形状観察を行った結果ナノセルロースは確認できず、平均繊維長及び平均繊維幅は算出できなかった。
本発明は、ナノセルロースの製造分野で産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. 次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得る酸化工程
    前記酸化工程で用いた次亜塩素酸又はその塩を処理し、セルロース系原料を酸化する反応を停止させる処理工程、
    セルロース系酸化物と分散媒とを含む酸化物分散体を固液分離し、酸化セルロースを得る分離工程、
    前記酸化セルロースを分散媒に希釈することでナノセルロースを含む分散液を得る工程、
    を含み、
    前記酸化セルロースのカルボキシ基量が、0.30mmol/g以上であり、
    前記酸化工程が、撹拌しながら行われ、酸化反応の反応時間が2時間以上であり、
    前記希釈後の分散液を固形分濃度0.1質量%としたときの光透過率が、70%以上である、
    ナノセルロースの製造方法。
  2. 次亜塩素酸又はその塩によりセルロース系原料を酸化し酸化セルロースを得る酸化工程、
    前記酸化工程で用いた次亜塩素酸又はその塩を処理し、セルロース系原料を酸化する反応を停止させる処理工程、
    セルロース系酸化物と分散媒とを含む酸化物分散体を固液分離し、ナノセルロースを含む分散液を得る工程、
    を含み、
    前記酸化セルロースのカルボキシ基量が、0.30mmol/g以上であり、
    前記酸化工程が、撹拌しながら行われ、酸化反応の反応時間が2時間以上である、
    ナノセルロースの製造方法。
  3. 前記ナノセルロースを含む分散液を精製する工程を含む、
    請求項に記載の製造方法。
  4. 前記ナノセルロースの平均繊維幅が、1nm以上100nm以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記ナノセルロースの平均繊維長が、50nm以上800nm以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記酸化の際の反応系におけるセルロース系原料の濃度が、0.1質量%以上30質量%以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
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