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JP7847743B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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JP7847743B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

空気入りタイヤ

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Description

本開示は、空気入りタイヤ、より詳しくは、高いライフ性能の空気入りタイヤに関する。
車両に装着された空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)は、走行距離の増大や、紫外線の影響などにより、走行時間の経過と共にゴムの物性が低下していく。そして、このゴムの経時変化が、路面との摩擦による摩耗の促進、トレッド部での亀裂の発生、トレッドパターンの角が欠落するカットチップの発生などを招くことにより、徐々に摩耗性能が低下して、タイヤのライフ性能が低下するため、最終的に、タイヤ寿命に至ってタイヤ交換が必要となる。
そこで、従来より、トレッドゴムなどの配合を工夫することでタイヤの摩耗性能を改善して、ゴムの経時変化を抑制し、タイヤ寿命の長期化、即ち、ライフ性能の向上を図る種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、近年の、高速道を長距離移動することも珍しくない状況における安全性に対する要望や、環境問題や経済性に対する要望などを考慮すると、上記した従来の技術では十分とは言えず、ライフ性能の向上について、さらなる改善が望まれている。
特開2008-31244号公報
本開示は、上記問題点に鑑み、ゴムの経時変化が十分に抑制されて、高いライフ性能の空気入りタイヤを提供することを課題とする。
本開示者は、前記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する開示により前記課題が解決できることを見出し、本開示を完成させるに至った。
本開示は、
トレッド部の表面に溝を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、50質量部以上の天然ゴムを含有しており、スルフィド結合による全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上であり、平均一次粒子径が5nm以上、20nm以下のカーボンブラックを、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上含有しているゴム組成物であり、
さらに、正規リムに組み込み、正規内圧としたタイヤの前記トレッド部におけるランド比L(%)が、70%以下であり、
前記モノスルフィド結合の比率V(%)と、前記ランド比L(%)との比率V/L(%)が、140%以上であり、
また、前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる1本以上の周方向溝を、タイヤ赤道面を挟む2つの領域の各々に有しており、
一方の領域におけるランド比をLa(%)、他方の領域におけるランド比をLb(%)としたとき、LaとLbとが互いに異なっており、前記La(%)とLb(%)とが、下記式を満足することを特徴とする空気入りタイヤである。
|La-Lb|>20
本開示によれば、ゴムの経時変化が十分に抑制されて、高いライフ性能の空気入りタイヤを提供することができる。
[1]本開示のタイヤの特徴
1.概要
本開示の空気入りタイヤは以下に示す特徴を有している。
本開示の空気入りタイヤは、トレッド部の表面に溝を有する空気入りタイヤであり、トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、50質量部以上の天然ゴムを含有しており、スルフィド結合による全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上であり、平均一次粒子径が5nm以上、20nm以下のカーボンブラックを、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上含有しているゴム組成物である。そして、正規リムに組み込み、正規内圧としたタイヤのトレッド部におけるランド比L(%)が、70%以下である。
そして、モノスルフィド結合の比率V(%)と、前記ランド比L(%)との比率V/L(%)が、140%以上である。
また、トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる1本以上の周方向溝を、タイヤ赤道面を挟む2つの領域の各々に有しており、一方の領域におけるランド比をLa(%)、他方の領域におけるランド比をLb(%)としたとき、LaとLbとが互いに異なっていると共に、La(%)とLb(%)とが、下記式を満足している。
|La-Lb|>20
このようなトレッド部を有するタイヤとすることにより、次項以降に説明するように、ゴムの経時変化が十分に抑制され、高いライフ性能の空気入りタイヤを提供することができる。
なお、上記記載において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
そして、「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”を指す。
2.本開示の空気入りタイヤにおける効果発現のメカニズム
本開示の空気入りタイヤにおける効果発現のメカニズム、即ち、ゴムの経時変化が十分に抑制されて、高いライフ性能の空気入りタイヤを提供することができるメカニズムについては、以下のように考えられる。
(1)モノスルフィド結合の比率
前記したように、本開示に係る空気入りタイヤにおいては、トレッド部を構成するゴム組成物として、スルフィド結合による全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上のゴム組成物が使用されている。
タイヤは、一般的に、各種タイヤ部材を用いて作製された未加硫タイヤを硫黄架橋することにより製造されるが、その架橋形態は、1つの硫黄分子だけが介在するモノスルフィド結合と、架橋点間に2つ以上の硫黄分子が介在するポリスルフィド結合による架橋形態とに分類される。
この内、ポリスルフィド結合は、架橋点間に複数の硫黄分子が介在しているため、結合が弱い。このため、走行中に発生する熱などにより架橋鎖が切断されて、架橋密度の上昇に伴い、ライフ性能の低下を招き易い。一方、モノスルフィド結合は、架橋点間に一分子の硫黄しか介在しておらず、架橋鎖が切断され難く、架橋密度の上昇が抑制される。このため、全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率を高くした場合、ライフ性能の低下を抑制できると考えられる。
この考えの下、本開示者が種々の実験と検討を行ったところ、トレッド部をスルフィド結合による全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上であるゴム組成物で形成させた場合には、ゴムの経時変化を十分に抑制して、高いライフ性能のタイヤを提供できることが分かった。そして、このモノスルフィド結合の比率V(%)は、60%以上であるとより好ましく、70%以上であるとさらに好ましいことが分かった。なお、上限は特に限定されないが、カットチップ性能の観点から、90%以下であることが好ましい。
上記したモノスルフィド結合の比率V(%)は、特開2019-35013号公報、特開2019-45196号公報、特開2020-111674号公報などに示された公知の方法を用いて、モノスルフィド結合の架橋密度/スルフィド結合の全架橋密度により算出することができる。
(2)ランド比
そして、本開示に係る空気入りタイヤにおいては、さらに、正規リムに組み込み、正規内圧としたタイヤのトレッド部におけるランド比L(%)を70%以下としている。
「ランド比」は、トレッド部の表面に配された溝部を全て埋めた仮想の接地面に対する、実際の接地面の比率である。
タイヤは、走行中、路面との摩擦によって、トレッド部に熱を発生する一方で、溝部の空間を通る空気で冷却されることにより、トレッド部の温度上昇が抑制される。しかし、ランド比が大きいと、路面と接する面積が大きくなって、溝部の空間の容積が小さくなるため、溝部の空間で効率的な冷却ができず、トレッド部が温度上昇し易く、ライフ性能の低下を招き易いと考えられる。
この考えの下、本開示者が種々の実験と検討を行ったところ、ランド比L(%)を70%以下としたタイヤの場合、路面と接する面積を適切に小さくして、溝部の空間の容積を適切に確保することができるため、溝部の空間で効率的に冷却することができ、トレッド部の温度上昇を十分に抑制して、ライフ性能の低下を招き難いことが分かった。そして、ランド比L(%)が、60%以下であるとより好ましく、50%以下であるとさらに好ましいことが分かった。なお、下限は特に限定されないが、走行時のグリップ性能の観点から、40%以上であることが好ましい。
上記したランド比は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から求めることができる。
具体的には、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることにより、接地形状を得ることができるため、タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。このとき、5つの接地形状について、タイヤ軸方向の最大長さの平均値(単純平均)をS、軸方向に直交する方向の長さの平均値(単純平均)をWとする。
そして、ランド比は、(厚紙に転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/(S×W)×100(%)から求めることができる。
なお、「正規荷重」とは、前記したタイヤが基づいている規格を含む規格体系における各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、タイヤに負荷されることが許容される最大の質量を指しており、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”とする。
以上、本開示に係るタイヤにおいては、トレッド部をモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上のゴム組成物で構成することによる効果と、トレッド部のランド比L(%)を70%以下とすることによる効果とが協働するため、その相乗効果によってゴムの経時変化を十分に抑制して、高いライフ性能のタイヤを提供することができると考えられる。
[2]本開示に係るタイヤにおけるより好ましい態様
本開示に係るタイヤは、以下の態様を取ることにより、さらに大きな効果を得ることができる。
1.モノスルフィド結合の比率V(%)とランド比L(%)との関係
本開示に係るタイヤは、前記したように、トレッド部をモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上のゴム組成物で構成すると共に、トレッド部のランド比L(%)を70%以下としているが、本開示者が、さらに実験と検討を行ったところ、VとLの双方を一定の関係に制御した場合、より顕著な効果を得られることが分かった。
具体的には、V/L(%)が75%以上、より好ましくは100%以上、さらに好ましくは140%以上であれば、経時変化をより抑制して、よりライフ性能が向上することが分かった。
即ち、ランド比L(%)が一定の場合には、モノスルフィド結合の比率V(%)が大きいほどライフ性能がより向上し、モノスルフィド結合の比率V(%)が一定の場合には、ランド比L(%)が小さいほどライフ性能がより向上することが分かった。
2.タイヤ赤道面を挟む2つの領域におけるランド比L(%)
車両に装着されたタイヤは、直進走行時にはトレッド部の内側部分が路面と接地する一方、旋回時にはトレッド部の外側が路面と接地する傾向があり、一般的に、トレッド部の内側部分と外側部分とでは、ゴムの経時変化が異なる。
このため、本開示に係るタイヤにおいては、トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる1本以上の周方向溝を、タイヤ赤道面を挟む2つの領域の各々に有しており、一方の領域におけるランド比をLa(%)、他方の領域におけるランド比をLb(%)としたとき、LaとLbとが互いに異なっていることが好ましい。これにより、トレッド部の2つの領域におけるゴムの経時変化を均一化させることが可能となるため、ライフ性能をより向上させることができると考えられる。
具体的には、各領域におけるランド比La(%)、Lb(%)は、|La-Lb|>20の関係を満足していることが好ましい。
[3]実施の形態
以下、実施の形態に基づいて、本開示を具体的に説明する。
1.トレッド部を形成するゴム組成物(トレッドゴム組成物)
本開示において、トレッドゴム組成物は、以下に記載する各種配合材料、具体的には、ゴム成分、充填剤、軟化剤、加硫剤および加硫促進剤などについて、その種類や量を、適宜、調整することにより得ることができる。
(1)配合材料
(a)ゴム成分
トレッドゴム組成物において、ゴム成分としては特に限定されず、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ブチルゴムなどのブチル系ゴムなど、タイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を用いることができるが、良好な耐摩耗性能を得るという観点から、イソプレン系ゴムである天然ゴム(NR)に、スチレンブタジエンゴム(SBR)および/またはブタジエンゴム(BR)を混合して使用することが好ましい。
(イ)イソプレン系ゴム
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられるが、耐摩耗性能の観点からNRが好ましい。
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分100質量部中の天然ゴムの含有量は、25質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であるとより好ましく、75質量部以上であるとより好ましい。一方、上限は特に限定されないが85質量部以下であることが好ましい。このような含有量とすることにより、良好な耐摩耗性能を得ることができる。
(ロ)SBR
SBRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。そして、SBRのスチレン含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であるとより好ましく、30質量%以上であるとさらに好ましい。一方、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であるとより好ましく、40質量%以下であるとさらに好ましい。また、SBRのビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、5モル%超、70モル%未満であることが好ましい。
このようなスチレン含有量、ビニル結合量のSBRを使用することにより、良好な耐摩耗性能を得ることができる。なお、SBRの構造同定(スチレン含有量、ビニル結合量の測定)は、例えば、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて行うことができる。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
また、変性SBRとして、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRを使用できる。
なお、式中、R、RおよびRは、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR)等を挙げることができる。
、RおよびRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。RおよびRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、RおよびRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基および/または置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基および/または置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドン;N-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類の他、N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
なお、ゴム成分100質量部中のSBRの含有量は、BRと合計して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であるとより好ましく、20質量部以上であるとさらに好ましい。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。なお、SBRは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ハ)BR
BRの重量平均分子量は、10万超、200万未満である。そして、BRのビニル結合量は、1質量%超、30質量%未満、シス含量は、1質量%超、98質量%未満、トランス含量は、1質量%超、60質量%未満である。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRとしては特に限定されず、高シス含量(シス含量が90%以上)のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
変性BRとしては、例えば、スズ変性BRを使用することもできる。スズ変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該スズ変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているものが好ましい。
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウム、有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物や、リチウム金属などが挙げられる。前記リチウム開始剤をスズ変性BRの開始剤とすることで、高ビニル、低シス含有量のスズ変性BRを作製できる。
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p-トリブチルスズスチレンなどが挙げられる。
そして、スズ変性BR中のスズ原子の含有率は、50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。一方、3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下が更に好ましい。
また、スズ変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
また、スズ変性BR中のビニル結合量は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。一方、スズ変性BRのビニル結合量は、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
なお、上記したS変性BRやスズ変性BRは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分100質量部中のBRの含有量は、前記したように、SBRと合計して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であるとより好ましく、20質量部以上であるとさらに好ましい。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているBRを使用できる。なお、BRは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ニ)その他のゴム成分
また、その他のゴム成分として、必要に応じて、ニトリルゴム(NBR)などのタイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を含んでもよい。
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)充填剤
本実施の形態において、トレッドゴム組成物は、充填剤を含有することが好ましい。具体的な充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどを挙げることができる。
(i)カーボンブラック
トレッドゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの粒子径(平均一次粒子径)は、耐摩耗性能の観点から、20nm以下であることが好ましく、17nm以下であるとより好ましく、15nm以下であるとさらに好ましい。一方、下限は特に限定されないが、分散性等の観点から、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であるとより好ましい。
上記した平均一次粒子径は、タイヤから切り出したゴム組成物から取り出したカーボンブラックを電子顕微鏡(TEM)などを用いて直接観察し、得られたカーボンブラックの粒子の面積から、等断面積径を算出し、平均値を求めることにより算出することができる。
カーボンブラックのCTAB(Cetyl Tri-methyl Ammonium Bromide)比表面積は、耐摩耗性能の観点から、130m/g以上であることが好ましく、140m/g以上であるとより好ましく、150m/g以上であるとさらに好ましい。一方、上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、250m/g以下であることが好ましく、200m/g以下であるとより好ましく、180m/g以下であるとさらに好ましい。なお、CTAB比表面積は、JIS K6217-3:2001に準拠して測定される値である。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、耐摩耗性能の観点から、125m/g以上であることが好ましく、145m/g以上であるとより好ましく、155m/g以上であるとさらに好ましい。一方、上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、250m/g以下であることが好ましく、200m/g以下であるとより好ましく、180m/g以下であるとさらに好ましい。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、耐摩耗性能の観点から、120m/g以上であることが好ましく、130m/g以上であるとより好ましく、140m/g以上であるとさらに好ましい。一方、上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、200m/g以下であることが好ましく、180m/g以下であるとより好ましく、160m/g以下であるとさらに好ましい。なお、カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、JIS K6217-1:2001に準拠して測定される値である。
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FTおよびMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPCおよびCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック)などを挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
具体的なカーボンブラックとしては特に限定されず、N110、N115、N120、N121、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N335、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等が挙げられる。
市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できるが、独自に合成したカーボンブラックなどを使用することもできる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの含有量は、耐摩耗性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であるとより好ましく、30質量部以上であるとさらに好ましい。一方、分散性等の観点から、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であるとより好ましく、60質量部以下であるとさらに好ましい。
(ii)シリカ
トレッドゴム組成物は、必要に応じて、さらに、シリカを含有していてもよい。シリカのBET比表面積は、良好な耐久性能が得られる観点から140m/g超が好ましく、160m/g超がより好ましい。一方、良好な低転がり抵抗性が得られる観点からは250m/g未満が好ましく、220m/g未満であることがより好ましい。
また、ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量は、シランカップリング剤と併用しない場合においては、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。一方、25質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。また、シランカップリング剤との併用を行う場合には、25質量部以上が好ましい。一方、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。なお、上記したBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定されるNSAの値である。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。また、含水ガラスなどを原料としたシリカや、もみ殻などのバイオマス材用を原料としたシリカなどを用いてもよい。
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
(iii)シランカップリング剤
シリカの使用に際しては、シランカップリング剤を併用することも可能である。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、3質量部超、15質量部未満である。
(iv)その他の充填剤
サイドウォールゴム組成物には、上記したカーボンブラック、シリカの他に、タイヤ工業において一般的に用いられている、例えば、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤をさらに含有してもよい。これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
(ロ)樹脂成分
トレッドゴム組成物は、必要に応じて、粘着性付与剤および可塑剤として機能する樹脂成分を、含有していることが好ましい。樹脂成分は、常温で固体であっても、液体であってもよく、具体的な樹脂成分としては、例えば、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂が挙げられ、これらの内でも、テルペン系樹脂が好ましい。なお、2種以上を併用しても良い。樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であるとより好ましく、15質量部以上であるとさらに好ましい。一方、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であるとより好ましく、35質量部以下であるとさらに好ましい。
ロジン系樹脂は、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とする樹脂である。このロジン系樹脂(ロジン類)は、変性の有無によって分類可能であり、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(ロジン誘導体)に分類できる。無変性ロジンとしては、トールロジン(別名トール油ロジン)、ガムロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、その他の化学的に修飾されたロジンなどが挙げられる。ロジン変性体は無変性ロジンの変性体であって、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩などが挙げられる。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体およびこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物等が例示できる。
クマロン系樹脂の中でも、クマロンインデン樹脂が好ましい。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロンおよびインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1.0質量部超、50.0質量部未満である。
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、例えば、15mgKOH/g超、150mgKOH/g未満である。なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
クマロンインデン樹脂の軟化点は、例えば、30℃超、160℃未満である。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂およびそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素およびその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。テルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物およびホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
「C5樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂としては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
「C9樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
「C5C9樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、無溶剤型アクリル系樹脂を使用できる。
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本開示において、(メタ)アクリルは、メタクリルおよびアクリルを意味する。
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していても良い。
樹脂成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
(ハ)可塑剤成分
トレッドゴム組成物は、必要に応じて、ゴムを軟化させる成分として、オイル(伸展油を含む)や液状ゴムなどを可塑剤成分として含んでもよい。なお、可塑剤成分は、加硫ゴム中からアセトンにより抽出可能な成分である。可塑剤成分の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して5質量部超が好ましく、10質量部超がより好ましい。一方、70質量部未満が好ましく、50質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
(i)オイル
オイルとしては、例えば、鉱物油(一般にプロセスオイルと言われる)、植物油脂、またはその混合物が挙げられる。鉱物油(プロセスオイル)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的なプロセスオイル(鉱物油)としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
(ii)液状ゴム
可塑剤として挙げた液状ゴムとは、常温(25℃)で液体状態の重合体であり、加硫後のタイヤからアセトン抽出により抽出可能なゴム成分である。液状ゴムとしては、ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体及びそれらの水素添加物等が挙げられる。
ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在する。
ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば、1.0×10超、2.0×10未満である。なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ゴムの含有量(液状ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体等の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超、100質量部未満である。
液状ゴムとしては、例えば、クラレ(株)、クレイバレー社等の製品を使用できる。
(ニ)老化防止剤
トレッドゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超、10質量部未満である。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
(ホ)ステアリン酸
トレッドゴム組成物は、必要に応じて、ステアリン酸を含んでもよい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、10.0質量部未満である。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
(ヘ)酸化亜鉛
トレッドゴムゴム組成物は、必要に応じて、酸化亜鉛を含んでもよい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、15質量部未満である。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
(ト)架橋剤および加硫促進剤
トレッドゴムゴム組成物は、硫黄等の架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、10.0質量部未満である。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄以外の架橋剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のデュラリンク HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
トレッドゴムゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.3質量部超、10.0質量部未満である。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(チ)その他
トレッドゴムゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、脂肪酸金属塩、カルボン酸金属塩、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
(2)トレッドゴム組成物の製造およびトレッド部材の作製
トレッドゴム組成物は、一般的な方法、例えば、ゴム成分とカーボンブラック等のフィラーとを混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とを混練する仕上げ練り工程とを含む製造方法により製造することができる。
混練は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの公知の(密閉式)混練機を用いて行うことができる。
ベース練り工程の混練温度は、例えば、50℃超、200℃未満であり、混練時間は、例えば、30秒超、30分未満である。ベース練り工程では、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の可塑剤成分、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤などを必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
仕上げ練り工程では、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とが混練される。仕上げ練り工程の混練温度は、例えば、室温超、80℃未満であり、混練時間は、例えば、1分超、15分未満である。仕上げ練り工程では、上記成分以外にも、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
そして、得られたトレッドゴム組成物を、押出成形機を用いて、所定の形状に押し出し加工することにより、トレッド部材を作製することができる。
2.空気入りタイヤの製造
本実施の形態の空気入りタイヤは、上記で得られたトレッド部材を、他のタイヤ部材と共に、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとして作製することができる。
具体的には、成形ドラム上に、タイヤの気密保持性を確保するための部材としてのインナーライナー、タイヤの受ける荷重、衝撃、充填空気圧に耐える部材としてのカーカス、カーカスを強く締付けトレッドの剛性を高める部材としてのベルト部材などを巻回し、両側縁部にカーカスの両端を固定すると共に、タイヤをリムに固定させるための部材としてのビード部を配置して、トロイド状に成形した後、外周の中央部にトレッド部材、径方向外側にサイドウォール部材を貼り合せてサイドウォール部を構成させることにより、未加硫タイヤを作製する。
その後、作製された未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、例えば、120℃超、200℃未満であり、加硫時間は、例えば、5分超、15分未満である。このとき、加硫金型の表面は、所定のランド比のトレッド部が形成されるように加工されている。
本開示のタイヤの適用範囲は、特に限定されず、乗用車用、トラック・バス用、二輪車用等何れのタイヤにも適用可能であるが、特に美観が重要視される乗用車用空気入りタイヤ、即ち、四輪で走行する自動車に装着されて最大負荷能力が1000Kg以下のタイヤに適用することが好ましい。
なお、上記した最大負荷能力は1000Kg以下であれば、特に限定されないが、一般的に最大負荷能力の増加に伴い、タイヤ重量が増加しやすく、それに伴い、タイヤの発熱性が高くなりやすいことから、900Kg以下であることが好ましく、800Kg以下であるとより好ましく、700Kg以下であるとさらに好ましい。
また、上記したタイヤ重量は、タイヤの発熱性を低下させる観点から、20Kg以下であることが好ましく、15Kg以下であるとより好ましく、さらに、12Kg以下、10Kg以下、8Kg以下であるとさらに好ましい。なお、ここでいうタイヤ重量とは、タイヤ全体の重量であり、タイヤ内腔面にシーラント、スポンジ、立体網目構造体、電子部品等を備える場合にはそれらを含む重量である。
以下、実施例により、本開示について、さらに具体的に説明する。なお、この実施例においては、タイヤサイズ205/55R16のタイヤを作製して、評価した。
1.トレッドゴム組成物の製造
最初に、トレッドゴム組成物の製造を行った。
(1)配合材料
まず、以下に示す各配合材料を準備した。
(a)ゴム成分
(イ)NR:TSR20
(ロ)BR:宇部興産(株)製のUBEPOL-BR150B(ハイシスBR)
(シス含量97質量%、トランス含量2質量%、ビニル含量1質量%)
(ハ)SBR:JSR(株)製のHPR850(溶液重合SBR)
(スチレン含量:27.5質量%、ビニル結合量:58.5質量%)
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
(NSA:115m/g、CTAB比表面積:111m/g)
(ロ)シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3
(NSA:175m/g、平均一次粒子径:17nm)
(ハ)シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266
(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
(ニ)樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT160
(テルペンフェノール樹脂、軟化点:160℃)
(ホ)老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(6PPD)
(N-フェニル-N‘-(1,3ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
(ヘ)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
(ト)ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
(チ)硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
(リ)加硫促進剤-1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(CBS)
(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
(ヌ)加硫促進剤-2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM-P(DM)
(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)
(ル)加硫促進剤-3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーZTC
(ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛)
(2)トレッドゴム組成物の製造
表1および表2に示す各配合内容に従い、3Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た。なお、各配合量は質量部である。
次に、得られた混練物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、トレッドゴム組成物を得た。
次に、得られたトレッドゴム組成物を用いてトレッド部材を作製した。
2.タイヤの製造
上記で得られたトレッド部材を他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、140℃の条件下で50分間プレス加硫して、各試験用タイヤを製造した。このとき、トレッド部は、表1および表2に示すランド比となるように成形した。なお、実施例7では、トレッド部の赤道面を挟む領域で、ランド比を変更させた。
3.各種パラメータの測定
次に、各試験用タイヤを用いて、以下のパラメータの測定を行った。
(1)モノスルフィド結合の比率V(%)
各試験用タイヤのトレッド部から切り出したサンプル試験片(2cm×2cm、厚み1mm)を用いて、特開2019-45196号公報に記載された方法に準拠して、モノスルフィド結合の比率V(%)を算出した。結果を、表1および表2に示す。
(2)ランド比L(%)
各試験用タイヤを用いて、前記した「[1]本開示に係るタイヤの特徴」の「1.概要」に記載した方法に基づいて、ランド比L(%)を測定した。結果を、表1および表2に示す。
(3)V/L(%)
上記で得られたV(%)、およびL(%)に基づいて、各試験用タイヤにおけるV/L(%)を算出した。結果を、表1および表2に示す。
4.評価
(1)ゴムの経時変化
車両に装着前の各試験用タイヤのトレッド部から採取して作製した3号ダンベル型試験片を用い、島津製作所製オートグラフにて、JIS K6251(2010)に準拠して引張試験を行い(試験温度:23℃)、老化前の300%伸張時応力(M300A)を求めた。
次に、各試験用タイヤを、温度80℃、酸素濃度20%の条件下のオーブン中に168時間静置して、老化させた後、同様にして、老化後の300%伸張時応力(M300B)を求めた。
次に、老化前後におけるM300の変化率(%)を下式に基づいて、経時変化率として算出し、ゴムの経時変化の指標とした。結果を、表1および表2に示す。数値が小さいほど、ゴムの経時変化が抑制されていることを示している。
経時変化率=[(M300B―M300A)/M300A]×100(%)
(2)ライフ末期の摩耗性能
各試験用タイヤを、車輌(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて、内圧が250kPa(乗用車の正規内圧)となるように空気を充填した後、乾燥路面のテストコース上を、50km/hで走行し、新品タイヤに交換するまでの走行距離を測定した。
次いで、比較例1における結果を100として、下式に基づいて指数化し、ライフ末期の摩耗性能の評価とした。結果を、表1および表2に示す。数値が大きいほど、ライフ末期の摩耗性能が優れていることを示している。
ライフ末期の摩耗性能=[(試験用タイヤの結果)/(比較例1の結果)]×100
表1、表2から、トレッド部におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上であり、トレッド部におけるランド比L(%)が70%以下であるタイヤは、ゴムの経時変化を十分に抑制して、高いライフ性能のタイヤを提供できることが分かる。
また、トレッドゴム組成物の配合や、V/L(%)などを適切に制御したり、トレッド部の領域でランド比を変化させるなどすることにより、さらに大きな効果が得られることが分かる。
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではない。本開示と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
本開示(1)は、
トレッド部の表面に溝を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、50質量部以上の天然ゴムを含有しており、スルフィド結合による全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上であり、平均一次粒子径が5nm以上、20nm以下のカーボンブラックを、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上含有しているゴム組成物であり、
さらに、正規リムに組み込み、正規内圧としたタイヤの前記トレッド部におけるランド比L(%)が、70%以下であり、
前記モノスルフィド結合の比率V(%)と、前記ランド比L(%)との比率V/L(%)が、140%以上であり、
また、前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる1本以上の周方向溝を、タイヤ赤道面を挟む2つの領域の各々に有しており、
一方の領域におけるランド比をLa(%)、他方の領域におけるランド比をLb(%)としたとき、LaとLbとが互いに異なっており、前記La(%)とLb(%)とが、下記式を満足することを特徴とする空気入りタイヤである。
|La-Lb|>20
本開示()は、
前記モノスルフィド結合の比率V(%)が、60%以上であることを特徴とし、本開示(1)に記載の空気入りタイヤである。
本開示()は、
前記モノスルフィド結合の比率V(%)が、70%以上であることを特徴とし、本開示()に記載の空気入りタイヤである。
本開示()は、
前記ランド比L(%)が、60%以下であることを特徴とし、本開示(1)から()のいずれかとの任意の組み合わせの空気入りタイヤである。
本開示()は、
前記ランド比L(%)が、50%以下であることを特徴とし、本開示()に記載の空気入りタイヤである。
本開示()は、
前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムを合計して、20質量部以上含有していることを特徴とし、本開示(1)から()のいずれかとの任意の組み合わせの空気入りタイヤである。
開示()は、
前記トレッド部を構成するゴム組成物が、前記カーボンブラックに加えて、さらに、ゴム成分100質量部に対して25質量部以上のシリカを、シランカップリング剤と共に含有していることを特徴とし、本開示(1)から(6)のいずれかとの任意の組み合わせの空気入りタイヤである。
本開示()は、
前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上の樹脂成分を含有していることを特徴とし、本開示(1)から()のいずれかとの任意の組み合わせの空気入りタイヤである。
本開示()は、
前記樹脂成分が、テルペン系樹脂であることを特徴とし、本開示()に記載の空気入りタイヤである。
本開示(10)は、
乗用車用タイヤであることを特徴とし、本開示(1)から()のいずれかとの任意の組み合わせの空気入りタイヤである。

Claims (10)

  1. トレッド部の表面に溝を有する空気入りタイヤであって、
    前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、50質量部以上の天然ゴムを含有しており、スルフィド結合による全架橋形態におけるモノスルフィド結合の比率V(%)が50%以上であり、平均一次粒子径が5nm以上、20nm以下のカーボンブラックを、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上含有しているゴム組成物であり、
    さらに、正規リムに組み込み、正規内圧としたタイヤの前記トレッド部におけるランド比L(%)が、70%以下であり、
    前記モノスルフィド結合の比率V(%)と、前記ランド比L(%)との比率V/L(%)が、140%以上であり、
    また、前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる1本以上の周方向溝を、タイヤ赤道面を挟む2つの領域の各々に有しており、
    一方の領域におけるランド比をLa(%)、他方の領域におけるランド比をLb(%)としたとき、LaとLbとが互いに異なっており、前記La(%)とLb(%)とが、下記式を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。
    |La-Lb|>20
  2. 前記モノスルフィド結合の比率V(%)が、60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記モノスルフィド結合の比率V(%)が、70%以上であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記ランド比L(%)が、60%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ランド比L(%)が、50%以下であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムを合計して、20質量部以上含有していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記トレッド部を構成するゴム組成物が、前記カーボンブラックに加えて、さらに、ゴム成分100質量部に対して25質量部以上のシリカを、シランカップリング剤と共に含有していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記トレッド部を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上の樹脂成分を含有していることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記樹脂成分が、テルペン系樹脂であることを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
  10. 乗用車用タイヤであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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