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「仕様通り」を作るだけのベテランはいらない。50代でも評価され続けるエンジニアの特徴とは? - エンジニアtype | 転職type
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「仕様通り」を作るだけのベテランはいらない。50代でも評価され続けるエンジニアの特徴とは?

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上場企業、特に大手メーカーで「早期・希望退職募集」が相次いでいる。年齢層の適正化、中長期的な競争力強化など、企業の構造改革が進んでいく中で、この流れは今後も強まっていくことが予想される。

ベテランエンジニアにとっては、まさに苦難の時代だ。そんな中、40~50代の人材が多数在籍し、その多くが開発現場で手を動かすキャリアを選択している企業がある。

オムロングループの一員で、製造業関連のプロジェクトに強みを持つオムロン エキスパートエンジニアリングだ。「生涯、エンジニア。」をモットーに掲げる同社では、キャリアを重ねても現場で働き続けたい「スペシャリスト志向」の人材が多数活躍している。

オムロン エキスパートエンジニアリングでエンジニアの採用・育成に携わる安田浩仁さんは「ベテランが持つ暗黙知を欲している企業は数多くいる」と語る。

企業から評価されるベテランと、必要とされないベテランの違いとは一体何か。「生涯、エンジニア。」として活躍し続けるためにベテランが大事にしたいスキルとマインドセットについて、安田さんに話を聞いた。

プロフィール画像

オムロン エキスパートエンジニアリング
エンジニアソリューション部 営業採用課
安田浩二さん

大学卒業後、LSI設計者としてキャリアをスタート。営業技術、営業職を経て2014年オムロンパーソネル(現オムロンエキスパートエンジニアリング)にエンジニア採用職として入社。現在は、同社で営業とエンジニア採用部門のマネジメントを担当

ハードウエア人材の不足は依然として深刻

ーー貴社は製造業関連のプロジェクトに強みを持っていると伺いました。製造業の開発プロジェクトにおける、エンジニアの需給状況について教えてください。

当社は「ものづくり」に関するエンジニアリングを主軸としていますが、近年特にニーズが高いと感じるのは、組み込みエンジニア、そしてハードウエア系のエレキ(電気電子)関連を扱える人材です。

IoT化やスマートファクトリーの進展により、製造現場ではソフトウエアだけで完結しない「ハードを動かす開発」の重要性が一段と高まっています。

ところが実際には、若手エンジニアの多くがAI・クラウド・データサイエンスといった花形のソフトウエア領域に進む傾向が強く、ハード系・組み込み系の技術者が慢性的に不足しています。

ーーそうした人材不足の中で、ベテラン層のニーズも増えていると?

そうですね。製造業では、AIやIoTを活用した品質検査の自動化や予知保全など、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが加速しています。この影響で、ベテラン人材の価値が再評価されているというのが現状ですね。

というのも、AI技術を現場で実用化するには、AI自身が「ベテランの判断基準」を学習する必要があるからです。

例えば、熟練工が「この音は危険信号だ」と即座に察知する感覚や、品質検査で「微妙なズレ」を見抜く勘といった暗黙知。こうした経験値を、いかにデータ化・体系化してAIに「食わせる」かが、DX成功の分かれ目です。

日本の製造業は、もともと現場力と職人技を強みとして発展してきました。そのノウハウをデジタル化して次世代につなぐために、40〜50代以上のベテラン人材の存在価値が再び高まっています。

オムロン エキスパートエンジニアリング 安田浩二さん インタビューに答える様子

評価されるベテランは「提案」と「チューニング」ができる

ーーそうした市場のニーズがある中で、クライアント企業から特に「評価が高い」ベテランエンジニアには、どのような共通点がありますか?

一言でいえば「提案できるエンジニア」ですね。

もちろん、依頼された案件を仕様通りに完遂させることは大前提です。ですが、ベテランに真に期待されているのは、その先のプラスアルファ。

例えば「このままだと、仕様通りの性能を満たさないのでは?」「過去の経験上、この進め方だと品質上の問題が起きるかもしれない」といった、経験に基づく「潜在リスクの指摘」や「改善提案」です。

大きな改革でなくても構いません。こうした小さな提案こそ、ベテランだからこそ提供できる価値として非常に重宝されます。経験を「提案」という形でアウトプットできることが重要ですね。

ーーなるほど。そういった提案ができるベテランは、どういったマインドセットを持っているものでしょうか。

さまざまな技術やニュースに対して「興味を持ち続けられる人かどうか」だと思います。特に今回のケースでは、「ものづくりが好き」という純粋な気持ちをベースに、いろいろなことに興味を持てる人です。

当社で今まさに活躍している50代のベテランも、「自分の案件で直接使うかは分からないけど、興味がある技術を独学している」といった人が多い。やらされ仕事ではなく、「好きだから勝手にやっている」という状態が一番強いですよね。

ーー「好き」という好奇心が、学び続ける原動力になっていると。

そして、そういう人ほど「謙虚さ」も併せ持っているんですよね。これも非常に大事なポイントです。ベテランであっても「できないこと」は必ずありますから、そこを素直に認められるかどうかは重要。

経験を重ねるほど「自分のやり方」に固執しがちですが、活躍する人は違います。「自分の知識が不足していて分からないのですが、●●といった方向性であってますか?」と、クライアント先の識者に謙虚に聞きに行ける。

ベテランになればなるほど、「自分を大きく見せない」というマインドセットが、結果として周囲の信頼を得て、プロジェクトを円滑に進めることにつながります。

オムロン エキスパートエンジニアリング 安田浩二さん インタビューに答える様子

ーーなるほど。その他に、現場で求められ続けるベテランの特徴はありますか?

「適応力」、つまり自分の経験を「チューニング」できることですね。

技術は常にバージョンアップしますし、何よりクライアントごとに開発文化やローカルルールは異なります。いくら素晴らしい経験・経歴を持っていても、そのまま新たな環境に持ち込むだけでは機能しません。

活躍する人は、まず「違い」に興味を持ち、その会社のやり方に合わせて「自分の経験を最適化(チューニング)する」ことができます。それができるからこそ、どんな現場に行っても自然と評価を得られるのだと思います。

そしてもう一つが、「設計者目線で物事を捉える」ことです。たとえ担当が評価やテストであっても、そこに「設計者としての知見」を持ち込むことで、業務の質は劇的に変わります。

表面的な動作確認に終始するのではなく、『この仕様なら、裏側の実装やデータ構造はこうなっているはずだ』という仮説を持って検証に臨むこと。そうすることで、単なるバグ出しではなく、設計段階で潜在していた構造的なリスクや矛盾を鋭く突き止めることが可能になります。

そして、先ほどの「提案」の話にもつながりますが、気付いた課題を自分の中だけで終わらせず、最終的な改善提案まで見据えて「発信」できること。この視座の高さが、活躍するベテランに共通する点だと思います。

ベテランにとって現状維持こそ最大のリスク

ーーここまで「活躍できるベテラン像」を伺いましたが、一方で「こういったベテランは危ない」といった特徴があれば教えてください。

最も意識すべきは、「現状維持」のリスクですね。

ベテランになればなるほど、昔の経験がそのまま活かせる現場は減っていきます。にも関わらず、「同じことを同じようにやり続けたい」という希望が強いと、残念ながら現在の市況感ではマッチングが難しくなります。

ただし、決してこれまでの経験を捨てる必要はありません。むしろ、その豊富な経験は、他の人にはない確固たる「土台」になります。

重要なのは、その土台を活かして「新しいチャレンジをする」という意識です。「これまでのAという経験を土台にして、今度はBという領域を新たに学んでみよう」という前向きな姿勢が大切だと思います。

オムロン エキスパートエンジニアリング 安田浩二さん インタビューに答える様子

ーーとはいえ、新しいチャレンジには不安も伴います。そうした「学び直し」や「挑戦」を、オムロン エキスパートエンジニアリングではどのようにサポートされているのでしょうか?

階層別研修やE-ラーニングといった研修制度は大前提として、オムロングループの一員というメリットを活かした研修ラインナップとなっています。

代表的なもので言えば「オムロングループの品質研修」です。FMEA、FTA、DRBFM、信頼性工学、品質工学など、解析・分析手法、理論からフレームワークまで幅広く学び直すことができます。

またキャリア面談については、ベテランであろうと四半期に一度実施しています。市場の動向や本人の志向の変化に合わせて、「土台」である経験をどう活かし、次に何を「チャレンジ」するべきか、キャリアプランの再構築や軌道修正を適宜行っていくためです。

ーーまさに「生涯、エンジニア。」を実現するための制度が整っていると。

多くのエンジニアが「ずっと現場で手を動かし続けたい」と願っても、現実にはキャリアの壁にぶつかります。

例えば、大手のメーカーさんだと、シニア層には「持っている技術を後輩に伝達する」といった教育・管理側の役割を期待されることが多く、現場の第一線から離れざるを得ないケースも少なくありませんよね。

しかし、私たちのようなアウトソーシングビジネスでは、エンジニア個人の「現場での活躍度合い」が、そのまま会社の価値に直結する。「定年まで生涯現役でいたい」「手を動かし続けたい」というエンジニアほど、われわれのような企業を選択肢として選んでいただくのは、希望するキャリアを描いていただけるのではないかと思います。

「もうベテランだから」とキャリアを諦める必要はまったくありません。好奇心を持って学び、経験を武器に新しい挑戦をする意欲さえあれば、40代、50代からでも活躍の場は確実に広がっていきます。

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取材・文/今中康達(編集部)

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