第5回「山上君が悪魔になるはずがない」苦しんで落ちていった同級生を見て

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聞き手・阿部峻介
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 安倍晋三元首相銃撃事件で殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判が28日、奈良地裁で始まります。高校時代の同級生はかつての等身大の山上被告を思い浮かべ、背景に踏み込んでほしいと語ります。

起きてはならない事件はどこかで止められたのか、何が必要だったのか。それを考えていくため、まもなく始まる裁判を前に、事件を見つめる人たちに聞きました。

 ――接点を教えてください。

 同じクラスになったときに席が近くて、話すようになりました。彼は一匹おおかみのタイプ。ぱっと浮かぶのは、休み時間に教室の机に伏してよく寝ていた姿です。履物は当時スリッパで、歩き方のくせか、ベタベタと歩いていたのも思い出します。

 でも話しかけるとニコッとしてくれる。自分にだけじゃなくて、誰にでも優しくて、しゃべり方も敬語。校舎の外でばったり会うとはにかみながら「おお、○○じゃないっすか」という感じでした。

 ――打ち込んでいたことは。

 応援団の部活動には打ち込んでいました。グラウンドに入ってすぐのところで練習していて、一年中、学校の外まで叫び声が聞こえていた。人が上に乗った状態で腹筋とかして、すごい気合が入ってました。

 シャイで目立つのが嫌いで、クラスではあまり発言もせえへん。卒業アルバムの集合写真では絶対に端っこのほう。顔が認識できるギリギリのところにいる。そんな山上君がなんで応援団をやってるんだろうと、当時から疑問でした。

 「なんで?」と聞いたら、照…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年10月25日6時0分 投稿
    【視点】

    子どもとはいえ家庭の事情がわかりはじめる。自分の家庭の事情を見せないようにするとともに、他者の家庭の事情に触れないようにする。そして、大人になる。そのことがもたらす事態への気づきもまた、「個人の問題として(誰かが)我慢してきたことが、社会の

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    雨宮処凛
    (作家・反貧困活動家)
    2025年10月26日16時42分 投稿
    【視点】

    彼のバックグラウンドを見てほしいという最後の部分、まさに私もこの裁判に期待するところです。 同時に、「宗教のことだから触れちゃいけない、見ないようにしようとしていました」という同級生の言葉に、「自分も同じだった」と思いました。 20代の頃、

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安倍晋三元首相銃撃事件

安倍晋三元首相銃撃事件

2022年7月8日、奈良市で選挙演説中の安倍晋三元首相が銃撃され、死亡しました。殺人や銃刀法違反などの罪で起訴された山上徹也被告の裁判員裁判の初公判が、10月28日に開かれます。山上被告の母親らが証人として出廷します。関連ニュースをまとめてお伝えします。[もっと見る]