- 1125/06/21(土) 18:45:25
- 2125/06/21(土) 18:47:20
前スレ(第七章)
【クロス注意】幼馴染inNRC Part18|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼プロローグ
【クロス注意】ここだけ|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>個性は dice1d3=@2 (2)@1. 二人とも使えない2. かっち…bbs.animanch.com▼第一章
【クロス注意】幼馴染みinNRC|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第二章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part3|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第三章
幼馴染inNRC Part5|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第四章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part8|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第五章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part11|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第六章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part14|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com - 3125/06/21(土) 18:48:57
- 4125/06/21(土) 18:51:28
素敵な支援SS様
……ノーコメントで | Writeningパソスト風じゃなく普通のSSです。お目汚し失礼。 登場人物:出久+勝己+グリム+エース+デュース+ジャック+エペル+セベク ふわっと頭に浮かんだワンシーンを書きたいなと思ったらなんか長くなってしまいました…writening.netなんてことない普通の日 | WriteningパソストではなくSSです、ご注意を。 登場人物 トレイ・クローバー 尾白猿夫 砂藤力道(名前のみ) 個人的に尾白くんとトレイ先輩は仲良しであってほしいなぁと思う今日この頃。 アリアーブ・ナーリヤとかいっ…writening.netマスターシェフ〜地獄のニラ〜 | Writening登場人物:轟、リリア、砂藤、トレイ、エペル、デュース、エース、麗日、峰田、青山、学園長 ちょっと体調不良表現あるので苦手な方要注意、なんでも許せる人向け 「食」それは生命の礎。 清き海。強き山。優…writening.netもぎもぎパニック!ドアと化したフロイド | Writening登場人物:フロイド、峰田、緑谷、エース、デュース、ラギー、カリム、ジャミル、ルーク、リドル、セベク、飯田、イデア、オルト キャラエミュ間違い、キャラ崩壊あるかも なんでも許せる人向け 「おーいエ…writening.netドキッ!漢だらけの新メニュー決定戦〜飯テロもあるよ〜 | Writening登場人物:アズール、ジェイド、フロイド、ラギー、青山、飯田、上鳴、切島、瀬呂、砂藤(回想のみ) キャラエミュ間違いあったらスマソ、後半キャラ崩壊あるかも 何でも許せる人向け 「……皆さんが集まっていた…writening.net - 5125/06/21(土) 18:52:30
- 6125/06/21(土) 18:57:55
- 7125/06/21(土) 19:00:51
現在好感度まとめ
【出久→相手/相手→出久、 爆豪→相手/相手→爆豪】
*😺グリム 100/100、 93/91
*❤エース 100/100、 42/88
*♠デュース 100/100、 100/93
*🌹リドル 91/93、 79/100
*🔶ケイト 99/100、 85/87
*☘トレイ 30/27、 60/40
*🦁レオナ 26/74、 53/44
*🍩ラギー 14/59、 72/21
*🐺ジャック 84/100、 52/91
*🐙アズール 75/100、 94/31
*🐬ジェイド 26/65、 21/43
*🦈フロイド 8/33、 28/69
*🦦カリム 77/100、 49/86
*🐍ジャミル 95/84、 69/63
*👑ヴィル 100/100、 80/100
*🏹ルーク 100/100、 95/100
*🍎エペル 100/100、 100/100
*💀イデア 100/82、 71/64
*🔥オルト 84/46、 25/36
*🐲マレウス 95/70、 27/22
*🦇リリア 73/53、 100/31
*🐶クルーウェル 56/-、 13/-
*📚トレイン 78/-、 36/-
*🦾バルガス 16/-、 6/ - 8125/06/21(土) 19:04:24
前回までのざっくりあらすじ
『嘆きの島』の騒動が完全に収束した後、シュラウド兄弟から『S.T.Y.X.』製の魔導アーマーもといヒーロースーツと最新のゲーム機を受け取った出久と勝己。
みんなでゲーム大会で楽しんだその夜、出久はオンボロ寮の大鏡越しにミッキーと会ったが、その姿は勝己には見えないということが判明する。頭がおかしくなったという勝己からの誤解を解くために、出久はミッキーの姿をゴーストカメラに収めることを決意するのだった。
また、出久は久しぶりに不思議な夢をみたが、その夢に出てくる人物が銅像のグレートセブンの姿にそっくりであることに気付き、混乱するのであった。 - 9二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 19:07:19
このレスは削除されています
- 10二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 19:11:37
立ておつ!!
- 11125/06/21(土) 19:42:23
🐊「こちらにおわすお方は、茨の谷の時期当主であり、高尚たるディアソムニアの寮長……そして気高き夜の眷族の長となるお方、マレウス・ドラコニア様であるぞ!!無礼を伏して詫びよ!!魔獣!!!」
薄緑髪の生徒は雷のような大声でグリムを怒鳴りつけた。その声量と剣幕は、出久の肩が反射的に跳ねてしまった程だ。
🥦「君は、マジフト大会のときに協力してくれた……」
🐊「若様の忠実なる臣下、セベク・ジグボルトだ!!ええい、そんなことよりまずは若様に無礼を詫びろ!」
セベクは勝己と良い勝負になる瞬間湯沸かし器っぷりだ。
🐲「いい、セベク。そのヒトの子に『ツノ太郎』というあだ名を許したのは僕だ。この魔獣はそれに倣っているだけのこと」
🐊「なっ、なんと……そうでしたか。さすがは若様、お心が海よりも広くていらっしゃいます!!」
セベクはマレウスの言葉を聞くや否やコロリと笑顔になってマレウスを讃え始めた。それを見かねたもう一人の生徒がため息を吐く。
⚔「……ハァ、セベク。まずは先走って一方的に怒鳴ったことを謝罪するべきじゃないのか。マレウス様のご友人に突然無礼を働いたのはお前のほうだぞ」
🐊「ぐ…………ボーッと突っ立っているだけの貴様に言われたくはないぞ、シルバー!」
🧨「そいつの言う通りだわ、誠実に謝罪しろや謝罪。」
🐊「貴様は黙っていろ、人間!!!」
瞬間湯沸かし器同士の相性が良いはずもなく、勝己とセベクは出会って2秒で険悪な状態だ。
どう仲裁したものか、と出久が慌てる一方で、マレウスは横で繰り広げられている大声量罵倒バトルを全く気に介さずに出久に話しかけてきた。
🐲「イズク、茨の魔女の伝説に興味があるのか?僕が知っていることであれば、教えてやろう」
実のところ、出久が気になっているのはグレートセブンの伝説そのものではなく、自分が見る不思議な夢との関係性の方だ。夢に出てくる彼ら彼女らは、伝説で語られている人物像と乖離があった。
夢の中の彼女は、祝いの席に招待されなかったことにひどく腹を立てていた。でもそれは、寂しさや悲しさや、自分も呼んで欲しかったという気持ちの裏返しではないのかと、出久は感じたのだ。
🥦「……茨の魔女は、本当に孤高を愛していたんでしょうか」
🐲「……というと?」
🥦「孤独って、寂しくて悲しいものです。彼女はみんなに混ざりたいって気持ちはなかったんでしょうか」 - 12125/06/21(土) 20:13:30
🐊「貴様ッ!?誉れ高きグレート・セブンになんということを!」
セベクが噛みつく対象が出久に移った。なんでも、高尚な精神の持ち主である茨の魔女を見くびるような発言が気に食わなかったらしい。
🐲「どうだろうな。彼女があまりにも優れた人物“だからこそ”恐れられ遠ざけられることもあっただろう。“尊敬”は“畏敬”になり、やがて“畏怖”となる。世の常だ」
マレウスは出久の言葉に思うところがあるようで、腕を組みながら思案に耽るようにどこか遠い目をした。
🐊「そのような理由で茨の魔女を恐れる愚か者など、道端の小石も同然です。気に留める価値もありません!若様にくだらない質問をするな、人間!」
🥦「うぅ……」
大声で怒鳴られてまたも出久の肩が跳ねた。ひとたびヒーローとして敵と戦うことになれば舌戦だってなんのそのだが、一人の人間としては出久は穏やかで争いを好まない気質だ。喧嘩腰の人間に対する苦手意識がどうしてもある。
🧨「オイ、テメェ。さっきから聞いてりゃ随分と偉そうじゃねェか。何様のつもりだ、ア?」
😺「そうなんだゾ!オマエは茨の魔女じゃねーだろ」
🥦「う~ん、正直かっちゃんは人のことを言えたもんじゃないぞ」ボソッ
再びセベクを諫めようとシルバーが口を開くのと同時に、メインストリートの石畳の上をバタバタと走る足音が近づいてきた。肩にかけた独特の着こなしのブレザーが蝙蝠の皮膜のように揺れている。向こうからやってきたのはリリアだった。
🦇「まずい、遅刻じゃ~!」
🐲「……リリア?どうした、そんなに慌てて」
🦇「はぁ、はぁ……昨夜ネトゲ友だちとゲームで盛り上がりすぎてな。おかげで寝坊してしもうた。シルバー、なんで起こしてくれんかったんじゃ~」
⚔「俺は起こしましたよ、3回も。そもそも、俺に期待しないでください。寝起きには不安があるのを知ってるでしょう」
シルバーは同じ寮の先輩後輩同士というよりももっと砕けた雰囲気で、呆れたようにかぶりをふった - 13125/06/21(土) 20:27:59
🦇「おお、そこにいるのはオンボロ寮の者たちじゃな。緑谷、腕の予後はどうじゃ?」
🥦「その節は本当にありがとうございました。おかげさまで、すっかり元通りになりました!」
🦇「それは何よりじゃ!バクゴーも、血を吐いておったがもう障りはないのか?」
🧨「ああ。もう何ともねぇわ、ジジイ」
🐊「ジっ……!?貴様ァ、不敬だぞ!!!」
🦇「よいよい、わしがジジイなのは本当のことじゃ」
リリアの容姿は幼い子どものようで、見た目からは実年齢が分かりにくい。よく自身を年寄りのように言うが、本当に高齢なのか冗談で言っているのかは分からずじまいだ。
ただ、事実として纏う雰囲気が老獪なので、出久はなんとなく年長ものだと思っているし、勝己はジジイと呼んでいる。
勝己のジジイ発言にまたしてもセベクが沸騰したが、リリアがマレウスに「今日の1限目は3年生が講堂に集合だが、忘れておらんだろうな」と確認したことで、遅刻ギリギリだという事実が再び迫って来た。
ナイトレイブンカレッジは4年生になると学外の提携機関に研修に行くプログラムになっており、今日はその説明会があるらしいが、マレウスはそれを把握していなかったらしい。
予鈴が鳴ったのでこの場を立ち去る前に、マレウスは出久に「茨の魔女について知りたいなら、ディアソムニアを訪ねてくるといい」と耳打ちしていった。
🐊「おい、人間!マレウス様が優しくしてくださるからといって調子に乗るなよ。本来ならば、貴様のように平々凡々な民草が軽々しく声をかけてよい御方ではないのだからな!」
🧨「話しかけてきたのは糸車の方だろォが!!」
🐊「フン!!!」
セベクと勝己が怒鳴り合った後、ディアソムニアの一行は校舎へと去っていった。
🧨「チッ。俺らも早く教室行くぞ」
😺「おう。遅刻してクルーウェルに鞭で叩かれちゃたまんねーんだゾ」
出久たちも教室へと向かう。そのとき、周囲にいた生徒たちの様子が妙に目についた。彼らは、マレウスたちがその場から立ち去るまで息を潜めてそこにいたようだった。
*第一印象ロール
出久→シルバー dice1d100=91 (91) (最低保証50)
シルバー→出久 dice1d100=24 (24) (最低保証50)
爆豪→シルバー dice1d100=55 (55)
シルバー→爆豪 dice1d100=3 (3)
- 14125/06/21(土) 20:30:03
3年生のオリエンテーションはカットします!
この辺のエピソードは魔法の世界とは思えないほど進路の話が生々しくて世知辛い気分になりますね - 15125/06/21(土) 20:36:40
その日は、出久たちは金銭的な事情で月に数度までと決めている食堂で昼食をとる日だった。
食堂へいけば、クラスメイトのエースとデュースの他に、異世界生活で親しくなったジャックとエペルとオルトも同じテーブルへやってきて、賑やかな食事となった。
*ミッキーの話題を出すのは dice1d2=2 (2)
1.出久
2.爆豪
- 16125/06/21(土) 20:48:14
🧨「……なあ。お前ら“ミッキー”って知らねェか?」
「「ミッキー?」」
昼食の途中、勝己はふと夜中の出久の奇行を思い出して、“ミッキー”のことを話題に出した。この世界では元々見られる現象ならば心配いらない、と思ったのだが、その場にいた面々はオルトを含めて全員首を傾げた。
🐺「誰だ?それ」
🥦「夜中になると、オンボロ寮の鏡の向こうに現れる不思議なネズミだよ!」
😺「ふなっ!?オレ様たちの部屋にそんなのがいたのか!?」
🧨「俺には何も見えねぇがな。コイツに言われて鏡を覗いたが、何も映ってなかった」
♥「えぇ~、コワッ!!ホラーじゃん!!」
♠「うーん。夢じゃないなら、ゴーストの仕業……とか?」
🥦「でも、この学園にいるゴーストは違う気がするんだ。えっとね、ミッキーはこんな感じの姿で……」
紙とペンを取り出して、出久は“ミッキー”がどんな姿をしているか他のメンバーに説明しようとした。
*出久の絵心 dice1d100=97 (97)
- 17125/06/21(土) 20:52:40
原作の監督生はここまでにゴーストカメラでミッキーの撮影に成功しているのですが、デクはイベントスキップの影響で撮影できてません
でもここで1年ズにミッキーのことを信じてもらえないと話が進まないのでゴリ押しします
デクの画力が高くて助かった - 18125/06/21(土) 21:08:35
ヒーローノートをまとめる癖の影響で、出久は対象の特徴を掴んで絵を描くことには長けている。
大きな丸い耳と、愛嬌のある笑顔。体毛は黒。洋服は赤い半ズボンと、黄色の靴と、白い手袋。寝ぼけて見ただけだと一蹴するにはあまりにも具体的な似顔絵が描き上がると、周囲の面々はますます困惑した表情になった。
♥「獣人属……いや、グリムの仲間か?」
♠「なんか想像より愛嬌のある顔してるな」
🍎「確かに、これなら夜中に鏡に映っても怖くはない……かな?」
🧨「校長と比べると随分耳がデケェな」
🐺「……お前らのとこの校長ってネズミだったのか?」
🔥「うーん、興味深いね」
オルトはミッキーの似顔絵とツイステッドワンダーランドに生息する陸生成物のデータベースを照合したが、一致する種族はヒットしなかったと告げた。
🔥「とはいえ、僕のアクセスできるデータベースは全ての妖精や魔獣まではカバーできてないし、夢で見ただけの生き物をここまで具体的に描写できるとは考えにくい……」
♥「マジでミドリヤが寝ぼけてるだけってことはなさそーね」
🧨「夜中とはいえ、受け答えはしっかりしとったからな。だからこそコイツの頭を疑っとるわけだが」
🥦「ちょっと!人のことをおかしいみたいに言わないでよ!僕は本当にミッキーを見たんだから!」
ミッキーの件に関してずっと疑ってくる勝己に対して出久はプンプンと怒ったが、信憑性としては「トト○いるもん!」と同レベルなのでまともに相手されずに受けながらされた。
🐺「ミドリヤ、もっと他に分かってることはねぇのか?」
とはいえ、出久が嘘をつくような人間はないことはこの場の全員が把握しており、似顔絵の件もある。不思議な現象への興味と好奇心もあり、出久は質問攻めにされたことに順番に答えていった。 - 19二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 21:17:30
リリアのあだ名何になるかな~と思ってたらまさかのジジイだったw
- 20125/06/21(土) 22:32:21
🔥「なるほど……ミドリヤさんの話をまとめると……」
その1・ミッキーはツイステッドワンダーランドではない別の世界にいる。
その2・ミッキーの世界でも時間は進んでいる。
その3・出久と会話できるのはミッキーが眠っているときのみ。
オルトが出久の話を要約して、分かりやすく項目毎にまとめてくれた。
🔥「もしかするとオンボロ寮の寝室の部屋の鏡は、“銀歯”になってるんじゃないかな」
「「銀歯ァ?」」
🧨「……鉱石ラジオか」
🥦「偶発的に条件が整って、あの鏡がミッキーの世界と干渉してるってこと?」
♥「ちょっと待てって!お前らだけで話進めんなっつーの!」
😺「何のことが全然分かんねーんだゾ!」
🔥「あ、ごめん。話が飛躍しすぎたね」
オルトは改めて自分の仮説について説明した。
そもそも“鉱石ラジオ”とは、鉱石と金属を用いて電波を拾う無電源のラジオ受信器のことだ。鉱石ラジオでは“特定の条件”を故意に揃えることで特定の周波数の電波を受信するものだが、ごく稀に虫歯治療に使われた銀歯が鉱石ラジオに必要な“特定の条件”を満たしてしまい、ラジオの電波を拾ってしまうことがある。
要するに、偶然に“特定の条件”が揃って鉱石ラジオになってしまった銀歯のように、オンボロ寮の鏡もなにかの偶然でミッキーの世界の魔力を受信しているのではないか、というのがオルトの説だ。出久と勝己も一応魔法学の授業を受けているので知識としては知っているのだが、鏡は様々な移動や通信の魔法の媒体として用いられている。オルトの説は十分ありえる話だった。
🥦(おお……!かっちゃんの説とは別の切り口の新説だ!)
出久が不思議な現象に遭遇するという事象について、出久自身に要因があるとする勝己の説を“ウロ仮説”、オンボロ寮の鏡周辺に要因があるとするオルトの説を“銀歯仮説”と出久は胸の中で命名した。 - 21125/06/21(土) 22:49:05
♥「オルトの言うことも一理あるかもな。闇の鏡だって偶然ミドリヤとバクゴーを別の世界からこの学園に紹介したわけだし……。――あっ!それって、もしかして……」
🥦🧨「「…………!!」」
🔥「そう。ミッキーは僕らと別の世界にいる。そして、ミドリヤさんとバクゴーさんは別の世界からきた。だからミッキーと確実にコネクトできる方法を特定できれば……」
🧨「俺らが元の世界に戻る手がかりになるかもしれねぇってことか!」
🔥「可能性は十分にあるよ。ねぇ、みんなで調査をしてみない?」
オルトの新説の登場により、いくら文献調査をしても一向に見つかる気配がなかった元の世界に戻る手がかりを得るための一筋の光明が差したようだった。
そうこうして、ミッキーが現れるための特殊な条件を特定してオルトの“銀歯仮説”を立証し、出久と勝己が帰る方法を探るばく、この場にいるメンバーによって『ミッキー交信調査隊』が結成された。
今いるメンバーだけでも、異世界人で無個性の出久と個性もちの勝己に加え、ヒト属、獣人属、ヒューマノイド、魔獣と多様性はかなりのものであり、様々な条件を試すことができる。
毎日オンボロ寮生以外のメンバーが交代で一人ずつオンボロ寮に泊まることで、徐々に条件を絞りこんでいく方向で話がまとまった。
🥦「みんな、協力してくれてありがとう!」
😺「調査のふりしてバカンスばっかりしてる学園長より……オルトのほうがよっぽど頼りになるんだゾ」
♥「別にィ?ちょっと面白そうって思っただけだし」
♠「僕たちで二人が元の世界に帰るための手がかり、掴んでやろうぜ!」
*出久の涙腺 dice1d100=36 (36)
(51以上で涙が出ます)
*かっちゃん dice1d2=1 (1)
1.素直にお礼を言う
2.照れくさくてお礼を言わない
- 22125/06/21(土) 23:05:59
🥦「エースくん、デュースくん……!」
🧨「…………ありがとう」
仮説が本当に正しいのか分からない。無駄足になってしまうかもしれない。それでも一番に快く協力を申し出てくれたエースとデュースに、出久の目はウルウルと潤み、勝己も素直に頭を下げた。
♠「バクゴーが素直!?明日は槍でも降るのか!?」
♥「これはこれでなんか気持ち悪ぃな」
🧨「ンだとテメェコラ爆破すンぞ」
♥「あー、こっちの方が落ち着くわ」
🍎「それもどうなのかな」
🐺「毒されてるな」
🔥「ん~。こうなると妖精族の人にも調査に参加してほしいなぁ……。誰か、妖精族の知り合いはいる?」
🥦「妖精族かぁ……」
出久がこの世界に来てから親交がある妖精族といえば、廃墟マニアのツノ太郎、改め妖精族の時期当主であるマレウス・ドラコニアだ。それか、寮長会議で彼の代理でやってくるリリアか。
🧨「ジジイか糸車かくらいしか思いつかねーけど」
🥦「僕もだ。二人とも協力してくれるかな……?」
🧨「とはいえ、今ンとこ帰れる方法に繋がりそうなのはこれしかねぇ。調査進めても進展がねぇようなら――」
🐊「断固反対します!!!」
「「!!?」」
そのとき、食堂中に響き渡るようなセベクの大声が聞こえてきた。
🧨「チッ。この声、朝の騒音野郎かよ」
🥦「なにか揉めてるみたいだけど、どうしたんだろう?」
*行動ロール dice1d2=2 (2)
ディアソムニアの会話に聞き耳を
1.立てる
2.立てない
- 23125/06/21(土) 23:18:11
大声につられて思わずセベクがいる方のテーブルを見たが、セベクはマレウスに大声をたしなめられたようで、それきり声はこちらまで届かなくなった。
会話の内容は分からないが、会話している者の中でリリアだけが笑顔で、マレウスは表情が曇っており、シルバーは悲しそうな顔をしていた。セベクに至っては今にも泣きそうだった。
内容が気にならないと言えば嘘になるが、盗み聞きは良いことではない。
出久たちの話題は『ミッキー交信調査』の打ち合わせに戻った。
――ゴロゴロ……ピシャン!!
昼休みが終わりに差し掛かる頃、突然雷とともに叩きつけるような雨が窓を打った。
♠「うわっ、なんだ?さっきまで晴れてたのに、急に酷い雨だな」
♥「げー。次の授業、本校舎じゃなくて魔法薬学室なのに!」
🔥「ミッキー交信調査については、また放課後に話そう」
それぞれ次の授業に向けて席を立ち、今のところはいったんお開きとなった。
🥦(天気予報は一日快晴だったのに……)
*出久 目星ロール dice1d2=2 (2)
1.成功
2.失敗
- 24125/06/21(土) 23:22:24
🧨「オイ、ボサッとすんな出久。傘取りに戻ンねーと魔法薬学室に行くまでにビショビショだぞ」
😺「遅刻したらクルーウェルにシバかれるんだゾ!」
🥦「――あ、待って!すぐ行く!」
どこか違和感を感じながらも原因は分からず、出久は勝己たちを追って食堂を出た。 - 25125/06/21(土) 23:27:29
ディアソムニアの情報を取りこぼしまくってますが、7章は回想シーンが多いため後から巻き返せると信じてザクザク先に行きます
- 26125/06/22(日) 00:35:16
オンボロ寮の鏡の寝室にベッドを追加で運びこみ、その夜から早速『ミッキー交信調査』が始まった。初日に泊まることに決まったのはエースとデュースだ。
😺「眠気覚ましの薬草茶も用意したゾ」
♠「ゴーストカメラも、スマホのボイスメモも準備万端だ!」
😺♠「「さあいつでも来い、ミッキー!!!!」」
♥「そう気合入れて来るもんでもないでしょ。ミッキーが現れたのって5、6回なんだろ?」
🥦「僕が会ったのは、そうだね。留守中に来た時もあったみたいだけど……。大体月に1、2回ってところかな」
♥「長期戦の可能性高いし、ゆるくいこうぜ」
初っ端から気合マックスのデュースとグリムに対し、エースは気負い過ぎない軽い態度で問題集を広げた。問題集は異様に分厚いが、リドルに持たされたものらしく、「お前らの分もあるから」と出久たち3人の分も渡された。
♠「サマーホリデーの前の学年末試験は、進級がかかった重要な試験だ。今から真面目に勉強しておかないと、本当に留年するぞ」
♥「ま、成績優秀なミドリヤとバクゴーは心配いらないだろうけど」
🥦「進級、か……」
学年末テスト。出久たちがこの世界に来た入学式の日から、もうすぐ一年が経とうとしている。
*ホームシックレベル
出久 dice1d100=54 (54)
爆豪 dice1d100=90 (90)
- 27二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 00:39:43
デクくん、ちょくちょく入院したり黒デクになったりしてたからちょっと慣れっこなのかな
- 28二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 00:39:56
爆豪がやばい
- 29125/06/22(日) 00:50:17
🧨「ハァ~~~~~~~~~……………」
🥦「長いため息だね」
🧨「帰りてェ~~~~。自分の布団で寝てェ~~~~。ババァの婆豆腐食いてェ~~~~~」
🥦「ホームシックって感じのかっちゃんだ!」
🧨「ア?テメェは違ェとは言わせねーぞ」
🥦「僕だって帰りたいよ!……お母さん、きっと心配で毎日泣いてる。早く帰って安心させてあげたい」
♠「ミドリヤ、バクゴー……」
この世界で出会った人と親交を深めて馴染んでいく一方で、元の世界への恋しさも募っていく。出久は早く帰って自分を心配してくれる人を安心させてあげたい気持ちでいっぱいだったし、勝己も思わず本音が垂れ流しになってしまう程度には気持ちに限界が来ているらしい。
😺「……もし。もし二人が進級前に元の世界に帰っていまったら……オレ様、ひとりでこの学校に残れるのか?」
🧨「それはテメェ次第だな。ここに残りたきゃ勉強しろ」
🥦「僕たちは三人で一人の生徒扱いだけど、元々魔法の力があるのはグリムだけで、僕たちはそのお目付け役ってことになってるだけだから……。僕たちがいなくてもグリムがきちんとやっていけるってところを先生方に見せれば、グリムの学籍はちゃんと残してもらえるはずだよ」
😺「ふな……。それにお前らがいなくなったら……オンボロ寮にはオレ様ひとりぼっちになっちまうんだゾ」
🥦「グリム……」
*出久 行動ロール dice1d3=2 (2)
1.グリムを抱きしめる
2.グリムの頭を撫でる
3.グリムの手を握る
- 30125/06/22(日) 01:07:02
小さな子どものように寂しそうな顔をするグリムの頭を、出久はそっと撫でた。
♥「あのさー、なんでそこで急に湿っぽくなるわけ?」
♠「二人が早く元の世界に帰れたらいいと思ってる。思ってるけど……そうなったらもう二度と……こんな風に一緒に勉強をすることもなくなるんだよな……」
🥦「……仮に僕たちがこのまま帰れなくても、学園を卒業したら魔法が使えない僕たちと、大魔法士を目指すグリムは別々の道を行くことになる。それがほんの少し早くなるだけだよ」
😺「うぅ……」
🥦「それが分かってても……会えなくなっちゃうのは寂しいね」
😺「ふなぁ~~」
グリムは小さな額をしわでくちゃくちゃにして、目を潤ませた。
♥「ミドリヤまで暗くなるなよ。ミッキーが手がかりになるかどうかだって、正直まだ眉唾モンじゃん」
🥦「……それもそうだね」
♠「……だな、悪い」
♥「だろ?はい、湿っぽいの終わり!」
エースがパンパンと手を叩き、沈みかけていた空気を霧散させた。こうした気遣いを自然にできるのがエースの良いところだ。
『ミッキー交信調査』よりも、ツイステッドワンダーランドに生きるグリムやエースたちには目下の学年末テストの方が重要項目であることは事実。
3人は問題集に向き合い、出久と勝己はそれに加えて日課の文献調査と鍛錬もこなしながら、鏡に異変が現れる夜中までの時間を過ごした。
結局、この日は12時近くなっても鏡に変化は起きず、初日から無理をしてもしょうがないという結論になり、就寝して調査終了となった。 - 31125/06/22(日) 01:21:00
その夜、出久は妙に目が冴えて眠れなかった。
他のメンバーの寝息が聞こえる中、一旦眠ることを諦めてまぶたを開くと、蛍のような光が舞っているのが目に飛び込んできた。
🥦(この光は……マレウス先輩?)
今までの経験からオンボロ寮にマレウスが来ているとアタリをつけると、出久は寝室をそろりと抜け出してオンボロ寮の庭園に出た。
🥦「雪が降ってる……?」
ツイステッドワンダーランドはもう春で、このところはずっと暖かかった。賢者の島で一年と過ごしていない出久でも、これが異常気象であることはすぐに分かった。花冷えどころの騒ぎではない。頬の傷がヒリヒリ痛むほどの冷気はまるで真冬のようだった。
しんしんと雪が降る中、マレウスはオンボロ寮の庭園で立ち尽くしていた。
🥦「マレウス先輩、こんばんは」
🐲「…………ん?その声はヒトの子か」
🥦「雪が降ってますけど、寒くないですか?よければオンボロ寮で温かいお茶でも……」
🐲「雪……?ああ、気付かなかった。これでは庭の木に霜がおりて枯れてしまうな。僕のよくない癖だ」
パチン、とマレウスが指を鳴らす。すると、冷気が去るとともに雪がピタリと止んだ。
🥦「今の雪はマレウス先輩の魔法だったんですね」
🐲「……幼い頃にも、城を氷漬けにしてリリアに怒られたことがある。僕がようやく2本足で歩き始めた頃の話だ」
🥦「ということは、マレウス先輩とリリア先輩は幼馴染だったんですね」
🐲「幼馴染と言われると違うような気もするが……そうだな。僕が幼い頃から、リリアは傍にいてくれた」
マレウスはどこか遠い目をしながら幼い日の思い出について語るのを、出久は静かに聞いていた。 - 32125/06/22(日) 01:35:15
幼い頃、マレウスは一緒に晩餐を取る予定だった祖母に急用が入ったことで、どうしても我慢できずに癇癪を起こしたことがあったのだという。気づけば机も椅子も、給仕の人間も凍り付いていた。それに怯えて近づけない周囲にも苛立ち、氷は城中を包み込むところだった。
そんなとき、近衛兵に呼ばれたリリアがやってきて、大量の器とシロップを用意させ、そこらじゅうの氷を砕いてかき氷を作り、城の者たちに配って一緒に食べはじめたのだという。
🐲「今思うと、家臣たちはいい迷惑だっただろう。凍えるほど寒い城の中で無理やり氷菓を食べさせられて……ふふ。大きなテーブルを囲んで『うまい、うまい』と氷菓を食べる者たちを見て、僕はひどく羨ましくなってな。その頃には少し頭も冷えて、僕は後悔しはじめていた。感情に任せてとんでもないことをしてしまったと……」
ときに、年齢にそぐなわい強すぎる力をもった子どもは、意図せずに周りを傷つけてしまうことがある。出久が元いた世界でも度々起こる事件だ。出久はマレウスの話のいきさつが気になって、じっと耳を傾けた。
🐲「リリアは僕の周りの氷を打ち砕いて山盛り器によそうと、たっぷりとシロップを掛けた。それから怯える僕の手を引き、席に招いて……こう言ったんだ。『美味いから食べてみろ』とな。怒られると思っていたから、拍子抜けした。城の者たちと一緒に氷菓を食べているうちに、いつの間にか僕の苛立ちは収まって……氷漬けになっていた城も、元に戻った」 - 33125/06/22(日) 01:48:35
🐲「落ち着きを取り戻した僕に向かって、リリアは言った。『お前は大きな力を持っている。みだりにその力を振りかざしてはならない。この席に座っているのは、今日お前が失いかけた者たちだ』……と」
ただ過ちを叱責するよりも、相手の心を傷つけずに諭すことの方がよほど難しい。真に相手を思いやる気持ちがなければできないことだ。
🥦「……リリア先輩は、マレウス先輩のことが本当に心配だったんですね」
🐲「心配?なぜ?」
🥦「これは僕の勝手な想像ですけど、おばあさんと一緒に食事ができなかったことを、寂しがっていると思ったんじゃないでしょうか」
🐲「寂しい?僕が?」
出久が思ったままの感想を述べると、マレウスは思ってもみなかったというように目を丸くした。
🐲「どうだろうな……1人で過ごすことには慣れている。それこそ、まだ卵の殻を破る前から僕は1人だったからな。でも……確かに、生まれてからはずっとリリアが近くにいた。……だが、これから先はもう、あいつに叱られることもなくなる」
🥦「え……?」
🐲「くだらないことを話しすぎた。忘れてくれ」
マレウスは遠くを見ていた目の焦点を出久に合わせると、話を打ち切った。
*出久の勘 dice1d100=54 (54)
(51以上で成功)
- 34二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 03:18:52
ここぞという勘は外さない
これぞヒーロー - 35二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 11:05:53
制御出来ない強い力は、危ないんだよなあ……本人にその気がなくても
- 36二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 18:07:17
ほしゅ
- 37125/06/22(日) 19:23:16
どこか曇ったマレウスの表情を見ていると、出久の胸のうちがざわめいた。
🥦「……マレウス先輩、何かあったんですか?」
🐲「なぜそんなことを聞く?」
🥦「それは……マレウス先輩が、寂しそうな顔をしているように見えたので」
🐲「ふふ。言うに事を欠いて、この僕に“寂しそう”とは。お前は本当に恐れを知らないな、ヒトの子よ」
マレウスは上から出久を見下ろして目を細めた。どこか高貴な笑みは内心を読みにくい。
🐲「イズク。もし……、……いや、止めておこう。ところで、お前がこんな時間に庭に出て来るとは珍しい」
マレウスは何かを言いかけて、結局出久の問いには答えなかった。代わりに出久に別の話題を寄こした。口ぶりからすると、出久がマレウスの来訪に気づいて外に出たとき以外にもマレウスはオンボロ寮を訪れていたらしい。
🥦「今日はなんだか寝付けなくて。いつもと違うことをしたからかもしれないです」
🐲「いつもと違うこと?」
出久はマレウスの疑問に答える形で、『ミッキー交信調査』のことを話した。
🐲「元の世界に……?お前の部屋の鏡が別の世界に繋がっている……。ふむ。ありえなくはない話だ」
マレウスはオルトの“銀歯仮説”について肯定的な反応を示した。魔法に造詣の深いマレウスに「ありえなくはない」と言われたことは出久にとって喜ばしいことだったが、マレウスは再び視線をどこかへ遠くやって眉根を寄せた。
🐲「そうか。お前もこの場所を去るのだな。本当に、なにもかもが瞬きの間だ」
🥦「元の世界に帰る方法が見つかったら嬉しいですけど……この世界で出会った人とお別れすることになると思うと、寂しいです」
🐲「寂しい、か」
マレウスは出久の言葉を聞くと、いつも薄く浮かべている笑みを消し、真っすぐ出久の目を見た。そして、「もし」から始まる、先ほど言いかけて止めた言葉を、今度こそ口にした。
🐲「もし――。もし……家族や、友、なにもかもを失わずに済む方法があったとしたら……お前はそれを願うか?」 - 38125/06/22(日) 19:40:05
🥦「――はい。もしもそんな方法があるなら、きっと僕は願います」
家族や、友、なにもかもを失わずに済む方法。
かつて人々の暮らしが巨悪によって脅かされたとき、出久が願い求めてやまなかったものだ。守れずに失ってしまったものは数えきれない。それでも、出久はそれ以上誰にも何も失ってほしくない一心で足掻いていた。今も、心の底で同じことを願い続けている。
🐲「ならばあいつは何故……いや、よそう」
🥦「マレウス先輩……?」
🐲「少し考えさせてくれ。僕に良い方法が思いつくかもしれない」
🥦「良い方法って……」
🐲「……ああ、もうあんなに月が高いな。部屋に戻って休むといい。体が冷えてしまっているぞ。ヒトの子は脆いからな」
マレウスはマイペースに会話を打ち切ると、雪に当たって冷えてしまった出久の背をそっと押した。
🥦「ご心配ありがとうございます。おやすみなさい、マレウス先輩」
🐲「ああ、おやすみ。イズク」
挨拶を交わし、出久はオンボロ寮に戻った。扉を閉める直前に振り返るが、マレウスはまだそこで佇んだままだった。
🐲「……大きな力を持っていても、僕は何も得られない。失うばかりだ。誰もが僕を置いて、席を立っていく。…………僕を招く者は………もう、誰もいない」
マレウスの小さな独り言は、誰の耳にも届かずに消えていった。 - 39125/06/22(日) 19:47:00
🥦(マレウス先輩、何も話してくれなかったけど、思いつめてるみたいだった……)
こっそりと戻ったベッドの上で、出久は先ほどの出来事を思い返した。
寂しそうなマレウスの表情が、脳裏に焼き付いて離れないでいる。原因は分からない。考えるだけでは知り得ようのないことだ。
――その原因は、数日後に明らかになった。
その日、オンボロ寮に一通の手紙が届いていた。
封筒の中には、オンボロ寮の3人宛ての招待状が入っていた。
3人が招待されたのは、『リリア・ヴァンルージュのお別れ会』。
同封されていた手紙には、リリアが魔力を失い、この学校を中退して去るという旨が記されていた。 - 40125/06/22(日) 20:11:59
🦇「皆のもの、今日は『リリア・ヴァンルージュお別れ会』によくぞ集まってくれた」
招待状に記された日時、出久たちはお別れ会に参加するためにディアソムニア寮の談話室へとやってきた。
リリアには要所要所で手助けしてもらった恩がある。出久も勝己も、ここで招待をふいにする選択肢はなかった。
🦇「ナイトレイブンカレッジに入学してから2年半、ここで過ごした時間は、まさに若さ溢れる青春の日々であった。今日はわしの奢りじゃ。存分に食べ、語らい、騒いでくれ!」
乾杯の合図とともに、照度が低く暗いディアソムニア寮の雰囲気が賑やかな声で一気に明るくなった。
主催者であるリリアとの別れを惜しむ者たちが、代わる代わる挨拶に訪れる。沢山の人に囲まれて思い出話に花を咲かせるリリアの姿は、彼がこの学園で充実した日々を過ごしたことを裏付けていた。
*アイデアロール (1.成功、2.失敗)
出久 dice1d2=2 (2)
爆豪 dice1d2=1 (1)
- 41125/06/22(日) 20:22:06
🧨「…………?」
🥦「かっちゃん、どうしたの?キョロキョロして」
🧨「……糸車がいねェ」
🥦「本当だ、マレウス先輩がどこにもいないね」
😺「腹でも壊したんじゃねーのか?」
🥦「それならいいんだけど……」
マレウスはリリアが所属するディアソムニア寮の寮長であり、それ以前に親交が深い。この場にいないのは不自然だった。
会場を注意深く見守っていると、リリアの傍にシルバーがやってきた。シルバーは険しい顔でリリアに何かを告げると、会場から走って去っていった。
🥦「…………シルバーくん?」
*出久 行動ロール dice1d2=1 (1)
1.シルバーを追いかける
2.いったん様子見
- 42二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 20:26:08
さすかっちゃん
- 43125/06/22(日) 20:35:25
🥦「かっちゃん、ちょっと僕外に出てくる!」
🧨「ハァ?何しに行くンだよ」
🥦「シルバーくん、きっとマレウス先輩を探しに行ったんだ。僕も探してくる!」
会話の内容は聞こえなかったけれど、シルバーの必死な表情からして、リリアとマレウスが最後にきちんと話せるようにマレウスを探しにいったのだろう、と出久は推測した。
リリアはお別れ会が終わればすぐに隠居先の『赤竜の国』へ発つのだと聞いている。ナイトレイブンカレッジがある『黎明の国』と『赤竜の国』はこの星の真反対に位置する。この機会を逃せば、リリアと会うことは非常に難しくなる。
セベクほどあからさまではないが、シルバーも言動の節々からリリアとマレウスを敬い大切に思う気持ちが滲んでいる。彼らを大事に想うなら、この機会を絶対に逃してほしくないと思うのが道理だ。
🧨「絶対ェ時間までに戻って来いよ!!」
🥦「もちろん!僕もリリア先輩にお礼を言いたいことが沢山あるんだ!でも、シルバーくんとマレウス先輩は僕よりも沢山リリア先輩と話すことがあると思うから!!」
この学園は広い。シルバー一人でマレウスを探しても、すぐに見つけられるとは限らない。出久も探しに出てマレウスが少しでも早く見つかれば、彼らがリリアとともに過ごせる時間を長くできる。
思い立って会場を出ていく出久を、勝己は無理には引きとめなかった。代わりに、鬼のような舌打ちをよこされたが。
😺「行っちまった……。イズクのヤツ、本当にお人好しなんだゾ。昔からああなのか?」
🧨「ああ。チビのガキの頃からずっとあんなんだわ」 - 44125/06/22(日) 20:45:35
シルバーと出久が会場を出て行ってからも、お別れ会は続いていく。
オンボロ寮の3人はミッキー交信調査隊のメンバーでテーブルを囲んでいたのだが、出久と入れ違いで遅れていたオルトが会場に到着した。
♥「あっ、オルト!こっちこっち」
😺「もぐもぐ……おせーんだゾ、オルト!このうんまい肉料理、もう無くなっちまったんじゃねーか?」
♠「随分来るのが遅かったな。何かあったのか?」
🔥「兄さんをこのパーティに連れ出す、高難易度クエストにトライしてたんだよ」
オルトは引きこもりの兄をお別れ会に連れてこようと悪戦苦闘したそうだが、肝心のイデアは仲がよかったゲーム仲間の当然の引退で傷心しておりお別れ会どころではなく、結局連れてこられなかったらしい。
🧨「あのクソモヤシ引きこもりなンかよ」
🔥「兄さんのこと悪く言わないで!……って言いたいけど、こればっかりは反論できないや」 - 45125/06/22(日) 20:53:22
オルトが来て出久以外のメンバーが揃ったところで一旦リリアのもとに挨拶に行こうかどうか、という雰囲気になったところで、向こうの方が突然勝己たちのいるテーブルに絡みに来た。
🦇「おぅおぅ、1年生ども飲んどるか?今日はわしのおごりじゃ~、飲め飲め!これは茨の谷の名産品のベリージュースじゃ!うまいか?うまいじゃろ!」
🐺「ウ、ウッス。ジュース、いただいてます」
🧨「急に何だ!酔ってンのかクソジジイ!!」
🦇「くふふ、生意気言いよるわい。おや、バクゴー!お主もうグラスが空ではないか」
🧨「ア?甘い飲み物なんざ1杯で十分だわ」
🦇「なにぃ~?わしのジュースが飲めないと抜かすか~!?セベク!もう1ダースベリージュースを持て~~~い!」
🧨「ジュースでアルハラすンな!!!やめろ無理やり飲ますな!!」
🦇「ほれ~~、飲め飲め~~~!!」
*対抗ロール
爆豪 dice1d100=27 (27)
リリア dice1d100=54 (54)
- 46二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 20:55:34
さすがっすリリア様
- 47125/06/22(日) 21:09:20
🧨「ぐぼぼぼぼ!!ゴキュッ!」
🍎「リリア先輩、すごい早業でバクゴーくんの口にジュースを流し込んでる……!」
😺「バクゴーのヤツ、口に入れられた分はちゃんと全部飲み込んでるんだゾ」
♠「食べ物を粗末にするのは良くないからな」
♥「いや、ジュースだけでそんなに盛り上がれる!?」
リリアの登場により、それまでほのぼのとしていた1年生卓が一気にカオスなことになった。勝己に至っては鼻からジュースが出そうな有様である。
🐺「はっ……いけねぇ。俺はリリア先輩に礼を言うために送別会に来たんだ」
カオスからいちはやく正気に戻ったのはジャックだった。
ジャックはマジフト大会でレオナたちの策を止めることに協力してくれた件について、丁重にリリアに礼を述べた。
他のメンバーもそれに続き、一人ずつリリアに別れの挨拶を送った。勝己はジュースに溺れてそれどころじゃなかったが。
🧨「ゲホッ、ゲホッ。ハァ……」
🦇「そういえば、緑谷の姿が見えんようじゃが、あやつはどうしたんじゃ?」
🧨「アイツは糸車を捜しに外に出とる。送別会が終わる前には戻ってくるはずだ」
🦇「そうじゃったか。まったく、マレウスのやつ。顔も出さず、どこにいったのやら。入れ違いになっとらんと良いが。緑谷には、マレウスに他の学友と変わらぬ態度で接したことに礼を言いたいと思っていたのじゃが……」
🧨「……そういや、アイツ夜中にオンボロ寮に入り込んで出久と話してたクソ不審者だったな」
♥「お前さぁ、もっとオブラートに包めよ!!」 - 48125/06/22(日) 21:23:10
🦇「もう知っていると思うが、あやつは妖精であり、茨の谷の時期当主であり……世界屈指の強大な魔法士じゃ。大きな力を持つがゆえ、人々に遠ざけられることも多い。だが……あやつには、もっと外の世界と触れ合いが……友と呼べる存在が必要なのだ」
🧨「……それが出久だと?」
🦇「願うなら、お主にもじゃ。わしはこの学園を去るが……どうかこれからも、あやつと仲良くしてやってくれ」
🧨「……悪いが、俺もアイツもここには長居しねェつもりだから、アンタの頼みは受けらンねェ。そういうことはコイツらに頼め」
できない頼みを承諾するのは不誠実だ。早く元の世界に帰ることを願っている勝己は、リリアの願いに応えることはできない。
代わりに、勝己はグリムとエースとデュースを指さした。
🦇「お主らはハーツラビュルの新米トランプ兵ではないか」
♠「マジフト大会の時はお礼参りの助太刀、あざっした!借りを返さねえうちに、お別れで……残念です」
🦇「くふふ。ケイトたちといい、義理堅いことよ」
♥「ハートの女王の法律では、盗んだり借りたものは絶対返さないといけない決まりらしーんで」
🦇「では……借りを返すと思って、わしの頼みをひとつ聞いてくれるか?」 - 49125/06/22(日) 21:36:09
リリアからの頼みというのは、彼の後輩であるセベク・ジグボルトについてのことだった。セベクは入学して半年以上経つにも関わらず、親しい友人ができたという話を聞かないらしい。いくつか選択授業が被っているエースが言うには、セベクは周囲から浮いているらしい。
基本他人を見下す物言いで、どんな話題もマレウスに結びつけて彼を讃える話を初めてしまうのだとか。
🦇「すまんのぅ。悪いヤツではないんじゃが、セベクはマレウスのこととなるとちょっとばかり……。いや、だいぶ視野が狭くなりがちなヤツでな」
♥「まさか頼み事って……セベクと仲良くしろとか?」
🦇「いいや。ただ……もしあやつが学園生活で袋小路にはまり、立ち尽くしているのを見かけたら……迷宮住まいのトランプ兵どもよ。ちょいと背を小突いてやってほしい」
♠「そこは『手助けしてやってくれ』じゃないんですか?」
🦇「差し伸べられた手を素直に取れるのであれば、闇の鏡に選ばれておらんじゃろ?」
♠「うーん、確かに……」
ナイトレイブンカレッジには尖った性格の生徒が多い。精神的に成長する前の、上鳴曰く「クソを下水で煮込んだような」状態だった昔の勝己でさえ、ナイトレイブンカレッジならいたって普通とみなされただろう。
あの頃の勝己のように、きっとセベクも素直に人の手を取ることはできない。リリアはそうした難儀な性格まで見越した上で、後輩を案じているようだった。
♥「つーか、この学園で『困ってるなら手を貸すよ!』って優しく声かけてくるヤツなんて、ミドリヤくらいでしょ。それ以外は何かしら下心があるに決まってんだから、素直に手を取るほうがバカ」
♠「うーん!!確かにッ!!」
🧨「闇の鏡ってクソの下水煮込みを選んで集めとンか……?」 - 50125/06/22(日) 21:41:53
🐊「リリア様~!ベリージュースの追加を持って参りました!」
そのとき、話題の人物だったセベクが、アルハラ中のリリアの言いつけに従ってベリージュースをもってやって来た。
🦇「待ちわびたぞ。せっかくだ、セベクも共に乾杯しようではないか。お主が卒業まで共に切磋琢磨するライバルじゃ。これを機に、他寮の生徒とも親交を深めるがよい」
勝己たちがいるテーブルは全員1年生。リリアの言う通り、卒業まで共に競い合う相手ばかりだ。
🐊「――リリア様。お心遣いか感謝しますが、僕は浅薄な者どもと慣れ合うつもりはありません」
*かっちゃん イライラ dice1d100=30 (30)
- 51125/06/22(日) 22:04:09
セベクの言葉に、短気な者が多いその場の空気が氷ついた。
勝己は苛立ちもあったが、どちらかというとセベクの傲慢な言動が精神的に幼かった時代の自分を見ているようで、穴を掘ってコイツを埋めてやりたいという気持ちの方が強かった。
🐊「僕がナイトレイブンカレッジに籍を置く目的はただ1つ。マレウス様の護衛として必要な知識と技術を身に着けるため!!!鍛錬の相手ならシルバーとディアソムニア寮生で事足りる。脆弱な人間など、むしろ足手まといだ!!!親しくする必要などない!」
🦇「…………はぁー。セベク、お主なぁ……」
♥「……あっそ。ま、オレらだってお前みたいなヤツとは絶対仲良くしたかないけどね」
♠「お前、先輩の顔に泥塗ってんのに気づいてないのか?」
先ほどまで和気藹々していた空気は、いまや完全に刺々しいものに変わってしまっている。
🧨「周り見下してばっかじゃ成長しねェぞ。いつの間にか追いつかれンのがオチだ」
🐊「フン。不必要なものを不必要といってなにが悪い。リリア様はお優しいから、お前たちのような下々の者にも礼を尽くしてくださっているだけだ。ありがたく思え。そして思い上がるなよ、人間!」
🦇「これ!いい加減にせんか、セベク!せっかく自分とは違う考えを持つ若者たちと触れ合う機会を得たのだ。それを無駄にするな」
リリアに叱られたセベクは、先ほどまでの威勢が嘘のようにしょんぼりと勢いが無くなった。
🦇「お前が考えるより世界は広く、学ぶべきものは多くある。自ら世界を狭めるでない。よいか?」
🐊「リリア様……はい、申し訳ありません。そのお言葉、しかと胸に刻みます」
セベクは殊勝な態度を見せたが、顔を上げて勝己たちが視界に入った途端に「フン!」と強情な態度に戻ってしまった。
♥「駄目だこりゃ。リリア様のお言葉を全然心に刻めてねーじゃん」ヒソヒソ
🧨「ほつれを正す矯正が必要だな」ヒソヒソ
♥「お前たまにデニム用語出るの何なの?」ヒソヒソ - 52二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 22:18:27
この頃のクソ無礼セベク懐かしい……今でも割と無礼かも………
- 53二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 22:24:40
自分が穴に埋まるんじゃなくて、相手を穴に埋めるのか……
- 54125/06/22(日) 22:59:09
🎩「ヴァンルージュくん。お話中失礼しますよ」
🦇「学園長」
🎩「……迎えの馬車が来ました。出発の時間です」
🦇「もうそんな時間か。楽しい時間はあっという間じゃな」
🐊「お、お待ち下さいリリア様!まだ若様とシルバーが戻っておりません!出発の前に、せめてひと目だけでも!」
🦇「よいのじゃ、セベク。馬車を待たせるわけにはいかぬ。あの2人にはお前からよろしく伝えてくれ」
別れの時間を告げる学園長に、勝己は少なからず焦った。まだ出久は戻っていない。
🧨(出久の奴、どこで何しとンだ……!!)
ここで出久を待っていては挨拶の機を逃してしまう。不遜に思われることも多い勝己だが、最低限の礼節は弁えている。
🧨「…………ジジイ。マジフト大会と、出久の腕の件は世話ンなった。アイツの分まで言っとく……ありがとう」
🦇「爆豪。わしからも、マジフト大会でマレウスを守るべく動いてくれたお主らに礼を言わせてくれ。ありがとう。異世界よりやってきたというお主たちと、もっと話してみたかったぞ」
🦇「そしてディア・クロウリーよ。老齢のわしの入学を許可してくれたこと、礼を言う」
🎩「学びたいという気持ちと入学許可証さえあれば、どんな問題児でも受け入れる。それが我がナイトレイブンカレッジのポリシーですから」
🦇「あらゆる種族が共に過ごし、切磋琢磨する学び舎での3年弱……。まさに夢のような時間であった。名残惜しいが……みなのもの、さらばじゃ!」 - 55125/06/22(日) 23:05:50
リリアが来賓たちに手を振り、会場を去ろうとしたそのとき、雷が目前に落ちたかのような緑色の閃光が走り、轟音が鳴り響いた。
🐲「これはこれは……随分華やかなパーティーだ。生徒も教員も……みなお揃いで。ふふふ……!」
閃光が走った場所にマレウスが立っていた。続けて、彼の両脇に先ほどよりも小規模な閃光が走り、二人の学生が転移されてきた。
一人は、最初に彼を捜しにいったシルバー。
もう一人は、その後に二人を捜しにいった出久。
マレウスの傍に魔法で召喚された出久は、dice1d2=1 (1)
1.焦ったような表情を浮かべていた。
2.顔色が悪く今にも気を失いそうだった。
- 56125/06/22(日) 23:08:11
というわけで、ちょっと時間を巻き戻して出久パートに行きます
- 57125/06/22(日) 23:29:24
🥦「……また雪が降ってる!」
マレウスとシルバーを捜しに出久が外に出ると、真冬のように冷え込んで雪が降っていた。
🥦(マレウス先輩、またオンボロ寮に来てるのかもしれない)
先日の夜をなぞるような異常気象に、出久の足はオンボロ寮の方へ向いた。本校舎からオンボロ寮へ向かうには、メインストリートを通っていく必要がある。
果たして、その道中にある茨の魔女の像の前に、マレウスとシルバーはいた。
🥦(どうしよう……話し込んでるみたいだ)
二人の会話からただならぬ雰囲気を感じて、部外者である出久はいったん物陰に隠れた。時間を確認すれば、お別れ会が終わるまでにはまだ時間に余裕がある。話がひと段落するか、時間が差し迫ってきた頃に話しかければいい。
⚔「どうかお別れの前にひと目だけでも、父に会って言葉をかけてやっていただけませんか」
🐲「……祝いの席はもう始まっているのか。僕も招待状を受け取った。旅立つリリアに祝福を贈らなくてはならないな」
🥦(今の話って……。シルバーくんのお父さん……が、リリア先輩……?)
*出久 困惑度 dice1d100=90 (90)
- 58125/06/22(日) 23:34:16
二人の会話の内容に、出久は少なからず混乱した。確かにリリアは老獪な雰囲気だが、シルバーと親と子ほど年齢が離れているようにはとても見えない。
🐲「かつて茨の魔女は応急のパーティーで、みなが驚く素晴らしい贈り物をしたという。ディアソムニアの長として、僕も茨の魔女に恥じぬ贈りものをしなくては」
⚔「そんな……マレウス様がご参列くださるだけで、父にとっては十分かと」
🐲「ずっと考えていた。あいつにどんな贈り物をするべきか……」
吹雪が一層強くなる。寒くて震えたシルバーを見て、マレウスは自分が無意識に雪を降らせていたことに気づき、指を鳴らして雪を止めた。
*出久 アイデアロール dice1d2=1 (1)
1.成功
2.失敗
- 59125/06/22(日) 23:58:41
🥦(もしかして、この雪はマレウス先輩の気持ちと連動して降ってる……?)
今日も天気予報は一日晴れだった。それなのに真冬のような寒さで雪が降って、その雪はマレウスの指先一つで止んでしまう。
なんの根拠もない推察だが、この寒さはマレウスが感じている寂しさの具現化なのかもしれない、と出久は感じた。
現に、マレウスの表情に覇気がなく、先日オンボロ寮にやってきたときのように寂しさが滲んだ表情をしている。
🐲「ふむ……ここで悩んでいてもキリがないな。送別会に向かおう」
⚔「…………先に……戻っていて、くださいますか」
🐲「シルバー?」
⚔「俺も、すぐに、追いかけます……グスッ」
🐲「どうした?……泣いているのか?」
出久が気づいたことに、マレウスと過ごした時間が長いシルバーが気づけないはずがない。シルバーはリリアがいなくなることに悲しんでいるマレウスの心の内を察し、涙を流した。
⚔「も、申し訳、ありません。グスッ……情けない姿をお見せして」
🐲「別に情けなくなどない。子どもは泣くものだ」
⚔「俺はもう17です。来年成人します。マレウス様や親父殿から見れば、子ども同然でしょうが……」
嗚咽に耐えながら、シルバーは自分の胸の内をマレウスに打ち明けた。
17年前、リリアが茨の谷の奥深くで赤子だったシルバーを見つけ、血のつながりも育てる義務もないのにも関わらず拾って養い子にした。
妖精と人間では脆さも成長スピードも違い、人間の育児を知るものがほとんどいない茨の谷で、独り身のリリアが頼れる相手もいないなか手探りで人間の赤子を育てるのがどれほど大変だったのか分からない。
それにも関わらず、リリアはシルバーを我が子同然に育て上げた。
⚔「親父殿には、感謝してもしきれません。一生かけて、恩を返していくつもりでしたッ……!なのに……まだ俺は、あの人になにひとつ返せていないのに!あの人は独り、遠い国で最期を迎えようとしている」
🥦(“最期”…………) - 60125/06/23(月) 00:09:57
リリアの実年齢は分からないし、出久は妖精の寿命に関する知識もない。
だが、ボロボロと悲しみの涙を流すシルバーを見ていれば、リリアとシルバーの間には本当に親子のような絆があって、魔力を失ったリリアは寿命が近かったのだということは察せられた。
🥦(そうか。それで、マレウス先輩もずっと悲しそうだったんだ……)
出久は、オールマイトに予知のことを打ち明けられたときのことを思い出した。ずっと憧れの人だったとはいえ、当時はまだオールマイトと出会ってからわずか一年と少しの関係だった。それなのに、オールマイトがもうすぐ死んでしまうと告げられて、出久はひどく不安になって、胸が潰れるほどに悲しかった。それでも頑張れたのは、オールマイトが「生きなければ」と言ってくれたからだ。
それが、生まれてからずっと一緒だった家族が、一人静かに死を受け入れていたとなれば、どれほど悲しいことなのか、出久には想像することしかできなかった。
⚔「俺はっ……親父殿が魔法を使えなくなり、体が衰えて……もしすべてを忘れてしまう日がきても、ずっと側で支えていけたらと……!」
🐲「……リリアは良い息子を持ったな」
⚔「全然良い息子なんかじゃありません。父親の願いひとつ、叶えてやることができない。あの人の望み通り、笑顔で送り出してあげたいのに……、うっ、うう……!」
悲しみのあまり、シルバーは泣き崩れた。 - 61二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 06:27:14
このシーン声優さんの演技もあいまってマジで泣けるんよな…
- 62二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 13:54:57
笑って送れるはずがないから当たり前だよ……って思った
- 63二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 20:49:43
寂しいも生きて欲しいも、それ自体は当たり前の感情で想いなんだよな
- 64二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:17:38
7章の発端は人生経験豊富で達観したリリアの価値観とまだ若輩者で庇護される側なマレウスとシルバーのが情緒が起こした事故なとこあるので
- 65二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:08:15
今ここでこんだけ感情揺さぶられるのに、まだまだ序盤に過ぎないと言う…ハンカチが足らんぞ
- 66二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:11:36
リリアの気持ちもわかるんよ…
衰えた自分の姿を見せたくないし、面倒見てきた三人に介護みたいな真似をされるのはプライド的にも、そして彼らの貴重な時間を奪ってしまうという点でも受け入れがたいってことも
(マレウスなんてNRC卒業したら基本茨の国から出られなさそうだし、友達と思い出づくりしてもらいたいだろうしね)
でもさ……だから、家族同然の存在が一人で最期を迎えようとしているのを笑って見送れっていうのは……酷ってもんよ…… - 67125/06/23(月) 22:29:00
🐲「お前は、自分がリリアにとって『血のつながりも、育てる義務もなにもない』存在だと言ったが……きっと、リリアも同じように考えているのだろう」
⚔「え……?」
🐲「ヒトの一生は、僕たちのように長命な妖精に比べて驚くほどに儚く、短い。衰えた自分のためにヒトのお前が時間を費やすこと。そんな義務はないと思ったのかもしれん」
⚔「親父殿……どうして……」
シルバーの目からとめどなく涙が溢れ続ける。マレウスはシルバーの涙を止めることができなくて、「力を持っていても、僕は無力だ」と沈んだ呟いて眉尻を下げた。
悲しみにくれる二人の会話を聞きながら、出久は先ほどまで自分がいた華やかなお別れ会のことを思い出した。
リリアはきっと、二人が来てくれるのを待っている。別れが悲しいものだと知った上で、二人の未来の幸福を願う言葉をかけたいと思っているはず。
🥦(……そろそろ行かないと、お別れ会が終わるまでに間に合わない……)
スマホの時計を確認して、出久は多少気まずくはあったが、二人に声をかけようとして立ち上がった。
その瞬間、強い立ち眩みが出久を襲った。
*対抗ロール
出久 dice1d100=77 (77)
?? dice1d100=54 (54)
- 68125/06/23(月) 22:43:56
その一瞬、出久は白昼夢を見た。邪悪な妖精が、招かれざるパーティで恐ろしい贈り物を授ける夢だ。
🥦「――…………!!」
意識を刈り取るような強い眠気にも似ためまいがして出久は倒れそうになったが、すんでのところで踏ん張って耐えた。
ザリ、と出久の靴と石畳が擦れた音を出す。
⚔「……ッ、そこにいるのは誰だ!!」
🐲「おや?イズクではないか。今はリリアの送別会ではなかったのか」
マレウスの護衛でもあるシルバーは警棒のような形のマジカルペンを咄嗟に構えて警戒したが、マレウスは夜目が効くようで、暗い物陰から出てきた出久にすぐに気づいた。
⚔「一体なぜここにミドリヤが……。ひどい顔色だ、俺の肩につかまって、立てるか?」
🥦「うん……大丈夫。それよりも、お別れ会が」
――PiPiPi!PiPiPi!
そのとき、緊張した場にふさわしくない気の抜けた電子音が響いて、出久の言葉を遮った。
⚔「マレウス様。スマホが鳴っておられます」
🐲「電話ではない。これはリリアにもらった玩具の『がおがおドラコーンくん』だ」
仕方ないな、という表情でマレウスが懐から取り出したのは、掌に収まるような円形の、白黒の液晶画面の玩具だった。出久の感覚でいうと、『たま○っち』に似ている。
🐲「ドラコーンがまた、卵を残して旅立ったようだ」
マレウスは残念そうな目で画面を見た。どうやら『がおがおドラコーンくん』は育成ゲームの一種であり、育てたドラコーンは一定の日数が経つと寿命を迎え、卵を残して去ってしまうシステムになっているらしい。
⚔「寂しい、ですね……」
🐲「寂しくなどないさ。こいつは何度でもこの小さな箱庭の中で、絵空事の命の営みを繰り返す。だから悲しむ必要はない」
*出久の勘 dice1d100=52 (52)
(51以上で何かに気づく)
- 69二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:46:09
流石ヒーローだ 良い出目をしてる
- 70二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:51:59
このレスは削除されています
- 71125/06/23(月) 23:13:00
🥦「―――………!!」
再び出久を強い眠気が襲い、視界がジャックされたように、再びハッキリと白昼夢が映った。邪悪な妖精と、パーティと、贈り物。
🥦(こういう白昼夢は前にも見た。確かあれは『VDC』の日で――)
あのときは、老婆の魔女が毒林檎を手に笑っている夢だった。その後に、ヴィルは。
嫌な予感が出久の背筋を駆け上がっていく。
マレウスは、小さな玩具を手にしながら、天啓を得たように目を見開いた。
――もし……家族や、友、なにもかもを失わずに済む方法があったとしたら……お前はそれを願うか?
オンボロ寮での問いかけがフラッシュバックする。
🐲「――――ああ、そうか。ああ、そうか!そういうことか!はは……ははははははは!僕は何故今まで、こんな簡単なことに気づかなかったんだろう!」
マレウスは吹っ切れたように笑った。その両目は妖しく細められている。突然高笑いを始めたマレウスに、シルバーは涙をひっこめて困惑の表情を浮かべた。
🐲「わかったぞ。僕がリリアになにを贈るべきか」
🥦「マレウス先輩、何をする気ですか!?」
🐲「イズクよ、お前は僕に言ったな。なにもかもを失わずに済む方法があるなら、それを願うと」
マレウスはゆっくりと、しかし有無を言わせない仕草でシルバーに手を差し伸べた。
🐲「行こう、シルバー。リリアの元に」
⚔「えっ……?」
🐲「お前もだ、イズク。外つ世界から来たヒトの子よ」
🥦「僕はっ……!」
🐲「お前とカツキの傷だらけの姿を見て、考えていた。お前たちの国はきっと、とても辛く恐ろしいところなのではないかと。だが、安心すると良い。もうお前たちが傷つくこともなくなる」
違う、と否定したかったが、出久が口を開くよりも先に、マレウスの手が出久に触れた。
次の瞬間、シルバーと出久を緑の炎が包み込んだ。熱くはない。マレウスの魔力が具現化した炎は、凍えるように冷たかった。
🥦⚔「「うわっ!!?」」
視界が緑の光に包まれて眩んだ視界の中、出久とシルバーは世界がひっくり返るような浮遊感に悲鳴を上げた。 - 72125/06/23(月) 23:27:09
🐲「これはこれは……随分華やかなパーティーだ。生徒も教員も……みなお揃いで。ふふふ……!」
マレウスの声と、ざわめきが聞こえる。目を開けるとそこは、ディアソムニア寮の談話室だった。
🦇「マレウス、シルバー!?それに緑谷まで!?どうしたんじゃ、そんなに雪まみれになって」
リリアは突然現れた3人に驚きつつも、「鼻の頭が真っ赤だぞ」と真っ先にシルバーに駆け寄って雪をはらい、腫れた目元を見て「泣いておったのか?」と心配を滲ませた。愛情深いやりとりは、確かにリリアがシルバーの親なのだと感じさせた。
🐲「リリア。今日は招待状をありがとう。来るのが遅くなってすまない。すっと考えていたんだ。僕からお前に……いや、お前たちにどんな贈り物をするべきか」
🐲「そしてようやく答えが出た。どうか受け取ってほしい……僕の心からの贈り物を」
🦇「贈り物?マレウス……お前、何を考えている?」
妖しく微笑むマレウスに、リリアが訝し気な視線を向ける。異様な雰囲気に、周囲のざわめく声が大きくなる。
🥦(――…この贈り物を成立させちゃダメだ!!)
何の根拠もない、ただの勘だ。白昼夢が予知夢なのか、単なる幻覚なのかも分からない。しかし、出久の勘が告げるのだ。
あの夢のように、今から恐ろしいことが起きるのだと。
🥦「マレウス先輩ッ!!考え直してください!!!」
パーティの雰囲気を壊してしまうことにも、今は構っていられない。出久は声を張り上げて、マレウスを止めようと飛び出した。
*対抗ロール
出久 dice1d1000=440 (440)
マレウス dice1d9999=2586 (2586)
- 73二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:43:37
このレスは削除されています
- 74二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:49:37
🐲「お前とカツキの傷だらけの姿を見て、考えていた。お前たちの国はきっと、とても辛く恐ろしいところなのではないかと。」
魔王の誕生と暗躍、魔王の影響の無い障子くんやトガちゃんなどの過去を鑑みるとこの台詞には頷くしかないけども…
それでも善意を、希望を、笑顔あふれる未来を信じて繋いできた人達たちがいたからこそ表向きは平和な国になったし
二人はそんな国で産まれて、色々な経験を重ねて強くなり繋いでいく人(ヒーロー)になったからこそ傷だらけになったんだっていうのを
説明するには時間が足りなすぎたし、説明してもマレウス先輩はまだ解らなかったろうな
- 75二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 07:11:11
1000の割には出久頑張ったし、9999の割にはマレウス先輩低いけどその差は覆せねえわ
恐ろしい所ではあったかもしれないけど、みんなで繋いだ未来を今歩いていこうとしてるんですよ…… - 76二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:11:39
ほしゅ
- 77二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 19:10:51
ほしゅ
- 78125/06/24(火) 21:57:18
🐲「クク……勇ましいな。だが、所詮はか弱いヒトの子の戯れだ」
🥦「…………ぅッ!!」
鋭い蹴りを放とうとした出久に向けて、マレウスが糸車の機巧がついた魔法の杖をかざした。その途端、出久はチクリと針で刺されたような小さな痛みを感じ、全身から力が抜けてその場に倒れ伏した。
🧨「出久っ!!」
😺「イズクッ!!」
♥♠「「ミドリヤ!!」」
*爆豪 行動ロール dice1d2=1 (1)
1.出久の救助を優先する
2.マレウスの鎮圧を優先する
- 79125/06/24(火) 21:58:53
ちょっとダイス
*倒れている出久の状態 dice1d2=2 (2)
1.ぐっすりと眠っている
2.体に茨が生えている
- 80二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 22:00:51
まーたプリンセス発揮しやがってお前は!
- 81125/06/24(火) 22:06:45
出久が成すすべなくやられるなど、只事ではない。ヴィルの呪いのように毒に冒されていることも考慮にいれて、勝己は気を失った出久のもとに素早く駆けだした。
🧨「オイ、しっかりしやがれ!!」
🥦「………………」
出久は固く目を閉じており、勝己の呼びかけには答えなかった。一度出久を戦線から引き離すべき、と考えて出久を俵抱きにしようとしたとき、チクリとした痛みとともに勝己は異変に気付いた。
🧨「ンだこれ、いばら……?」
出久の体から、小さな黒い茨が生えている。勝己をチクリと刺したのは、茨の棘だった。
その瞬間、勝己の体からもガクンと力が抜ける。
🧨「…………ッ!?……眠ィ、……ッ!!」
*対抗ロール
爆豪 dice1d100=25 (25)
眠気 dice1d100=17 (17)
- 82125/06/24(火) 22:32:53
🧨「こンの……敗けるかああああ!!!!」
意識が持って行かれそうになる強烈な眠気で倒れそうになる寸でのところで、勝己は足に力を込めて踏ん張った。
😺♥♠「「バクゴーッ!!」」
🐲「ほう……耐えるのか。まあいい、今に全て生まれ変わるのだから」
眠気に抗う勝己を見下ろしながら、マレウスが薄く笑みを浮かべた。
🐲「よく聞くがいい、皆の者!」
マレウスの声は、張り上げずとも王たる風格でディアソムニア寮に凛と響いた。
🐲「お前たちに素晴らしい贈り物を授けよう。もう別れを惜しんで涙を流す必要はない。今日祝うべきは別れ(おわり)ではなく、誕生(はじまり)だ!」
マレウスは杖をもったまま、両腕を大きく広げた。
⚔「はじ……まり……?」
🐲「クク……そう。お前たちは今日、新しく生まれなおす。家族、友……何もかもを失わずに済む、悲しみのない世界に!」
マレウスの魔法の糸車が、ガラガラと音を立てて回り始めた。
😺「ふなっ!?全身の毛がゾワゾワするんだゾ!」
🧨「テメー……、何しやがるつもりだ!!!」
🔥「『半径10m圏内にブロット濃度の急速な上昇を感知。緊急魔法災害警報を発令。早期避難、および予防措置を推奨します』」
この場の異変を察知して、オルトが自身に組み込まれたプログラムに従って警報鳴らしはじめた。無機質な警報音声が、その場にいるものの焦りを駆り立てる。
🎩「魔法災害、ですって!?くっ……総員、攻撃魔法の使用を許可!ドラコニアくんを止めなさい!」
学園長の一声で、その場にいた各寮の寮長たちが杖を構えてマレウス鎮圧のために飛び出した。
🧨(ここにいっと魔法戦の邪魔ンなる……!!)
勝己は眠気に抗うことにほとんど全ての気力をつぎ込んでいる状態で、左腕が出久を抱えて塞がったまま戦える状態ではない。素早く戦況を見渡すと、体を引きずってマレウスの傍から一時撤退した。 - 83125/06/24(火) 22:38:26
勝己が移動した次の瞬間、各寮の実力者たちの魔法がマレウスに向かって乱れ撃ちになった。
リドルの魔法封じ、レオナの渇きの魔法、アズールの雷の魔法、ジャミルの催眠、ヴィルの呪い。勝己と出久が対峙したとき、決して易々とは攻略できなかった強力な魔法が束になってマレウスに向かったが、マレウスは杖を一振りしただけでそれら全てをはじき返した。
緑色の炎がパーティ会場を取り囲むように燃え上がる。もはや戦況はマレウスの独壇場だった。
🐲「下がれ、愚か者が」
🦇「やめよ、マレウス!!これ以上はならぬ!!」
リリアがマレウスの前に飛び出してマジカルペンを構えたが、魔法は不発に終わった。リリアの表情が悔しそうに歪む。
🦇「くっ……この体はもう攻撃魔法ひとつ撃てぬというのか!」
🐲「ああ、リリア……あんなに強かったお前が、なんていたわしい」
🦇「馬鹿者!お前は自分が何をしているか、わかっておるのか!?こんなことをして何になるッ!」
年長者の風格で、リリアがマレウスを叱りつけた。
🐲「お前を失わずに済む!」
マレウスの返事はある種純粋でひたむきで、リリアは息を呑んだ。 - 84125/06/24(火) 22:51:52
⚔「親父殿!下がってください。マレウス様は冷静さを失っておられる!」
🐊「わ、若様……どうか、どうかお心をお鎮めください!」
シルバーは騎士然とした口調で語り掛けつつもその表情は固く、セベクは今にも泣きそうな顔でマレウスに訴えた。
🐲「なぜ怯える?素晴らしい未来が待っているというのに。さあ、その手をこちらへ。ふ、ふふふ……ははははは!」
⚔🐊「……ッ!」
ガラガラ、と糸車が不吉な音を奏で、禍々しい魔力を集め始めた。
🦇「よせ……やめろッ!」
🐲「運命の糸車よ、災いの糸を紡げ。深淵の王たる我が授けよう。『祝福(フェイ・オブ・マレフィセンス)』」
🦇「マレウスーーーーーーー!!」
マレウスの詠唱とともに、彼の魔力がその場を支配した。魔力は黒い茨の形をとり、リリアを、シルバーとセベクを、寮長たちを、全てを飲み込みながら地を壁を這っていく。洪水のような圧倒的な魔力を前に、抵抗は意味をなさずに押し流されていく。
😺「ふなぁ……」
🧨「……く、そ、……がァ……ッ!」
茨は人の足を超える速度で伸び続け、勝己と出久と、二人のもとに駆け寄ってきたグリムをも飲み込んだ。
勝己の視界が黒い茨によって閉ざされ、引きずり込まれるように眠りへと落ちていく。
🐲「大丈夫……恐れることなどなにもない。眠りに身を委ねれば、1000年など瞬きのうちだ」
茨に囚われて眠りに落ちた者たちに、マレウスが寝かしつけるような口調で語り掛けた。
🐲「お前たちは――御伽噺の主人公になる」
🐲「――――♩、♩、♩」
すっかり黒い茨に覆われてしまったディアソムニア寮内には、安らかな寝息と、子守歌のような旋律で紡がれるマレウスのハミングだけが響いていた。 - 85二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 01:03:09
ギリギリで耐えた!さすがかっちゃん!
- 86二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 07:21:09
かっちゃん頑張ったよ……退避だけでも十分よ……
- 87二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 10:35:14
ここ初見めっちゃ鳥肌たった
- 88二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 13:39:06
わかる…
「これがツイステッドワンダーランドですよ」って叩きつけられたようで衝撃的だった
近々本編読破キャンペーンも始まるから未プレイの人もぜひアプリ版ダウンロードして体験して欲しい(ダイレクトマーケティング)
- 89二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 16:53:43
怖いけどめっちゃ上手いんだよなこの鼻歌
- 90二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 18:14:09
最近ディズニー+入ったからツイステの元ネタになった作品見とくかって何作品か流し見したらものすごい量のオマージュがこの作品に織り込まれてたことに気づいて戦慄したんだよね
10月からツイステアニメも独占配信されるのでオススメですよ(大っぴらな宣伝) - 91二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 19:07:51
- 92125/06/25(水) 20:09:53
10月から資格試験ラッシュで忙しいというのに、ヒロアカ8期にツイステアニメ化にグノーシアアニメ化で誘惑が多くて参りますな
忙しくて書き込みできなくてエタるのはいやなので、なんとか9月中に感想させたいのだ - 93125/06/25(水) 22:23:12
揺り籠の中であやされるような眠りの中、出久は夢を見た。
邪悪な妖精から贈り物を授かった王女が成長してからの光景だ。
あの日、邪悪な魔女が授けた贈り物という名の呪いが発動しないよう、王は国中の糸車を燃やし、3人の妖精たちは王女の身分を隠して仮の名を与えて森の奥で匿いながら育て上げた。
邪悪な妖精は王女の命を諦めておらず、その手下たちは実に16年もの間、国中の揺り籠を探し回っていた。
とっくに成長して揺り籠を抜け出している王女は邪悪な妖精の目を逃れて成長し、やがて森の中で出会った白馬に乗った青年と恋に落ちる。
――そんなこと無理よ。どうして私が王子様と?
愛しい青年と再び会う約束を交わした王女だが、16歳の誕生日を迎えるその日に本当の名前と王女の身分を明かされ、隣国の王子との結婚が既に決まっていることを知らされて失恋の悲しみに涙を流した。
王女は抗えず王都の城に戻されたが、悲しみは癒えない。
その心の隙間につけこむように、ついに王女の居場所を突き止めた邪悪な妖精の魔の手が伸ばされる。
――その針に触ってごらん。触るんだ。
緑の鬼火の姿になった邪悪な妖精に導かれるまま、王女は城の最奥に隠されていた糸車の針に触れてしまう。
――勝てると思ったのかい。私は全ての悪の支配者だ
しかし、王女は死ななかった。あの日、まだ王女に贈り物を授けていなかった、青い衣の妖精の魔法で、“死”の呪いは“永遠の眠り”の呪いにすり替えられていた。
王女の呪いが発現したことを知った人々が悲しむことのないように、3人の妖精は呪いが解ける方法が分かるまで、国中の人々に眠りの魔法をかけてまわった。
こうして、王女と運命をともにして、一つの国が丸ごと眠りについた。 - 94125/06/25(水) 22:31:20
🥦「ここは……?」
後味の悪い夢から覚めると、知っているようで知らない部屋が出久の視界に飛び込んできた。
部屋の間取りも、丁度品も、オンボロ寮の鏡の寝室にそっくりだが、何かが違う。
🥦「……全部が左右反転してる?」
壁掛け時計や日めくりカレンダーの数字をみて、出久は違和感の正体に思い至った。この部屋は、オンボロ寮の寝室を鏡で映したような内装になっているのだ。
🥦「どうして僕はここに……。そうだ、マレウス先輩の魔法にかかって……!すぐに戻らないと、お別れ会にいた他のみんなはどこに……!?」
他の人間がいないか確かめようと出久が部屋の中を見渡すと、足元にグリムと勝己が倒れていた。
どうしたものかと慌てて駆け寄り、脈や呼吸を確認したが、とくに体調に異常はみられなかった。
🥦「よかった、寝てるだけみたいだ……」
- 95二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:35:31
すすめ…バクゴー事務所のメンメン…
- 96二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:37:27
ナン…ンヒーローのオレに…てぅとおも…
- 97二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:38:08
きゅうりでもそうなんのか⁈姉ちゃん泣くぞ!
- 98二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:38:38
…れに…おいこされてんじゃ…ずく……
- 99125/06/25(水) 22:39:32
- 100二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:40:56
危なかった…きゅうりの寝言投下しちゃったけど選ばれたら雰囲気が台無しになるところだった…
- 101125/06/25(水) 22:41:46
- 102125/06/25(水) 22:55:53
😺「ぐ~……すぴゃぴゃ……」
🧨「………………スー、スー」
二人とも緊急事態の直後とは思えない安らかな寝息を立てており、ぐっすり眠っている。起こしてしまうのが申し訳なるような眠りっぷりだが、緊急事態なので起きてもらわなければならない。
問題が同時に複数起きた場合、緊急性に差がないのならばすぐに解決できるものから一つずつ解決していくのがセオリーだ。出久は寝起きが良い勝己を先に起こすことにした。
🥦「かっちゃん、起きて」
🧨「すすめ…バクゴー事務所のメンメン……」
出久が体を揺すってみても、勝己は目覚めなかった。返事の代わりにむにゃむにゃと寝言が返ってきた。
どこかで聞いたことがあるような歌だ。歌詞からして、小さい頃に勝己が作った歌だったような気がする。勝己はうんと小さな頃からヒーロー志望で、しかも事務所云々と妙に現実的なところまで考えていた賢い子どもだった。
🥦「なんか聞いたことある歌だし……って、かっちゃん、気持ちよく歌なんか歌ってる場合じゃないぞ!!」
*出久 行動ロール dice1d3=3 (3)
1.勝己をぶん殴る
2.勝己の鼻をつまむ
3.勝己の胸倉をつかんでシェイクする
- 103二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:58:45
ちょっぴり切なくなってしまった
- 104125/06/25(水) 23:37:33
🥦「寝てる場合じゃないだろ!起きろよ!!」
出久は寝起きの悪い勝己の胸倉をつかみ、激しくシェイクしてみた。勝己の頭が3回ほどぐわんぐわんと揺れたところで、ホラー映画の怪物のように勝己の目がギン!とかっぴらいた。
🧨「……何しとンだテメェ!!!」
🥦「やった、起きた!かっちゃん、眠る前のことは覚えてる?僕が眠らされた後何が起きたの?どうして僕たちはこの部屋に?」
🧨「寝起きに質問浴びせかけンなクソが!……お前が倒れた後、糸車が魔法であの場にいた全員眠らせて……気配からして、多分アイツは魔法の使い過ぎでオーバーブロットした」
🥦「そんな……!」
茨に視界が閉ざされる直前、勝己は黒くドロドロと溢れるブロットと、禍々しく変貌したマレウスの姿を見た。
🧨「ここがどこかは俺も知らねェ。俺たちは間違いなくディアソムニア寮の送別会の場で眠らされたはずだ」
依然として状況の把握はできていないが、とにかくここを離れるにも留まるにもグリムを起こさなければならない。
😺「ふな……空からツナ缶が降ってくる~。オレ様、ツナ缶富豪……むにゃ……」
🥦「グリム、起きて」ユサユサ
😺「むにゃ……もう食べ切れないんだゾ~……。幸せぇ……ずっとこのまま……ぐー……」
🧨「そんなンじゃ起きねェだろ、貸せ。――起きろやクソ狸!!!」
出久が揺さぶっても起きないので、勝己が耳元で怒鳴りつけた。グリムは獣らしく出久と勝己よりも耳が良いので、勝己の爆音ボイスを聞いてビクッと飛び起きた。
😺「ふなぁっ!!何すんだ、バクゴー!?……オレ様のツナ缶の山は?あれ?あれっ?」
🧨「全部夢だわ。諦めろ」
どうやら幸せな夢を見ていたらしいグリムは、目が覚めてしまって露骨に残念そうに肩を落とした。
🥦「グリム、眠る前のことは覚えてる?他のみんながどうなったのか知らない?」
😺「オレ様たち、リリアのお別れ会をしてて……たしかツノ太郎が急に現れて……。うう、ダメだ。よく思い出せねぇんだゾ」
🧨「新しい情報はナシか。チッ、ここにいても埒が明かねェ。とりあえず部屋の外も探索するぞ」
*かっちゃんの状態 dice1d3=3 (3)
1.右腕は動かないが個性は使える
2.右腕は動くが個性は使えない
3.どっちも使える
- 105二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 00:46:08
かっちゃんだけ夢に囚われて、アーマードデク(小2センス)とヒーロー活動している夢見たかったけど、流石に労力大変か…
- 106二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 01:40:44
- 107二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 06:24:53
かっちゃん右腕動かせて個性も自由って事ですかね?
万全じゃないか…これは勝つる - 108二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 11:18:57
- 109二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 11:31:31
- 110二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 12:35:11
本人後悔はないって言ってるから、今の自分を受け入れている可能性が…いやでも最終戦ならダークマイト戦や死柄木戦で見せたOFA万全状態見れる可能性あるのか…
- 111二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 19:32:49
イマジネーションの強さならデクは強そうだしOFA使えそうだよね
- 112二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 19:35:11
かっちゃんの右腕は動かす、治す、戻る、っていうのが意識の根幹にあるだろうけど、デクは自分から撃ち込んでもう無い物、って認識強そうだからどうだろうな……
- 113125/06/26(木) 21:44:30
部屋を出ようと勝己がのしのしとドアまで歩き、ノブを握った。ごく自然に、利き手の右手で。
🥦「えっ!?かっちゃん、右手!?」
🧨「…………ッ!?う、ごく……!?!?」
勝己は右手をグーパーと握ったり閉じたりを繰り返した。関節は滑らかに動き、握力も問題ない。
🧨「なんの魔法だか知ンねェが好都合だ。とっとと外行くぞ」
――ガチャガチャ!!
久しぶりに自由に動くようになった右手で意気揚々とノブを握った勝己だったが、固い抵抗感があってノブを回すことができなかった。ノブをねじり切るつもりで握力を込めてもびくともしない。
苛立った勝己がBOOMと爆破してみても、ドアには傷一つつかなかった。
🥦「……これって、ひょっとして」
🧨「……閉じ込められとンな」
😺「なにィっ!?他に出口はねぇのか!?」
出久たちはオンボロ寮に似た不思議な部屋の中を探索してみた。
窓にはヘンテコなオバケの絵が描いてあり、犬のように動き回るオットマンが床を走り回っており、机の上では生きたくるみ割り人形がひたすらくるみを割ってボリボリと食べていた。
壁際では手袋と帽子が仲良く踊り、角のほうではインクがかかって汚れたトランプがぐったりと倒れている。さらに、ミュージックボックスがぴょんぴょんと飛び跳ねているときた。
😺「なんなんだゾ、この部屋?」
🧨「あ”あ”あ”、頭ァおかしくなるわ!!」
🥦「待てよ……犬みたいなオットマンに、机の上のくるみ割り人形……?」
夢でも見ているかのような荒唐無稽な光景だが、出久は記憶にひっかかるものがあった。
🥦「……もしかして、ミッキーがいる鏡の向こうの部屋?」 - 114二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 21:50:27
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- 115125/06/26(木) 21:55:30
ミキ御大のスクショを貼るのはなんとなく日和ってできなかったです
ちなみに、ツイステのミッキーは顔が白黒のクラシックミッキーの造形です - 116二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:00:55
白黒のクラシック…
てことはウィリー号のミッキーかな? - 117二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:07:28
このレスは削除されています
- 118125/06/26(木) 22:12:04
ちょっとデカめの描写ミスに気づいてしまったので、一部TAKE2します
- 119125/06/26(木) 22:13:27
ぐにゃり。出久が呟いた瞬間、周囲の景色が捻じれて歪んだ。
🥦「うわぁっ!!」
😺「ふなぁっ!?」
🧨「敵襲か!?」
驚き警戒した3人だったが、空間のねじれは一瞬で収まった。
😺「い、今のはなんだったんだ?」
「……そこに、誰かいるの?」
そのとき、部屋の外から甲高い声が呼びかけてきた。
😺「!!誰かきたんだゾ!」
「――あっ、君は!!」
ドアも窓も固く閉じられていたはずだが、いつの間にか部屋の中にグリムと同じくらいの身長の生き物が立っていた。赤いズボン、黄色い靴、白い手袋。なにより、丸くて大きな耳!
🥦「ミッキー!!」
果たして、部屋に入ってきたのは、出久がいつも鏡越しに会話していた、可愛らしいネズミのミッキーだった。
🐭「わぁっ!本当に?本物のミドリヤなの?すごいや。やっと鏡越しじゃないキミに会えた!ハイタッチしよう!」
🥦「うん!君に会えて嬉しいよ、ミッキー!」
🐭「イェーイ!ハハッ!」
パチン!ミッキーの人好きする笑顔の求心力はすさまじく、出久はノリノリでミッキーとハイタッチを交わした。 - 120125/06/26(木) 22:21:26
😺「あ!コイツ、イズクの似顔絵のミッキーってヤツだ!」
🧨「デフォルメだと思っとったが、マジでこの顔なンか。つーかマジでおったンだな」
出久の似顔絵とほぼ同じ立ち姿のミッキーを、グリムと勝己がジロジロと眺めた。
🐭「わっ!驚いた。ミドリヤの他にもお客さんがいたんだ」
🥦「紹介するね!僕の幼馴染のかっちゃんと、学園で出会った寮生のグリムだよ!」
🐭「彼らがそうなんだね!夢の中で会える友だちが増えて嬉しいよ。僕はミッキー。ミッキーマウスだ。よろしく、カッチャン!グリム!」
😺「おう!」
🧨「かっちゃんじゃなくて、爆豪勝己だ!!出久テメー、マジで俺のフルネーム言えねンか?」
🐭「わわっ!気を悪くさせちゃったらごめんね、バクゴー!」
語気の強い勝己に、ミッキーが慌てたように手を振った。その無邪気な姿は勝己の方がバツが悪くなるほどだ。
😺「にゃははっ!結局『ミッキー交信調査』に成功したのはオレ様たちってことだな!」
🐭「『ミッキー交信調査』?なんだい、それ」
🥦「話すと長くなっちゃうんだけど……」
ここで会えたのも何かの縁。出久はミッキーにオルトの“銀歯仮説”について話した。そして、鏡を通じて異なる世界にいるミッキーと交信できることこそが、出久たちが元の世界に帰る方法を見つけるヒントになるかもしれないということも。
話を聞いたミッキーは、自分の話がトモダチの助けになるならいくらでも質問して、と快く言ってくれた。
それから、ミッキーにこの部屋についても聞いてみた。
この部屋の不思議なものたちは、ミッキーの魔法で動いているわけではないらしい。そもそも、ミッキーは魔法が使えないようで、この不思議な部屋も出久も、自分の夢の中だけの存在だと思っていたようだ。
🥦「そういえば、ミッキーはどうやってこの部屋に入ってきたの?僕たち、気づいたらここにいたんだけど、ドアも窓も塞がってて。どうやってここに来たのか分からないんだ」
🐭「ここに来るときはいつも、ベッドで寝ている僕からすぅっと“もう1人の僕”が抜け出すんだよ」
🧨「遊☆○☆王か?」
🐭「ユー○オー?は分からないけど……。それで、僕の部屋の暖炉の上にある大きな鏡を通り抜けると、この部屋に来ることができるんだよ」
😺「鏡から出入りするなんて、ナイトレイブンカレッジの寮みてーだな」