カッティングエンジニア:“豊かな音楽文化を絶やしたくない”という想いが技術の研鑽につながる
2026.01.23
2025.12.25
さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。
第24回は、ソニーミュージックグループ全体のネットワークやシステムのインフラを担うITエンジニア、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)の服部皓太に話を聞いた。
目次
服部皓太
Hattori Kota
ソニー・ミュージックエンタテインメント
──服部さんはSMEのITサービス推進部という部署に在籍していますが、どのような業務に携わっているのでしょうか。
ソニーミュージックグループ全社のネットワーク環境を整備するネットワークチームと、全社の認証基盤の提供や脆弱性対応などを行なうモダナイズチームを兼務しています。
ネットワークチームは、ソニーミュージックグループのオフィスビルから、全国各地にあるライブホール・Zeppやミュージアムまで、全国数十以上の拠点のネットワークインフラを整備する部署です。
モダナイズチームでは、会社からスタッフに貸与するパソコンのOSやツールのアップグレード、セキュリティに対する脆弱性の管理などを行なっています。最近では、グループ各社のスタッフが使用している約6,000台のPCのOSをアップグレードしました。
──約1年前にキャリア採用で入社したということですが、前職ではどのような仕事をしていたのでしょうか。また、ソニーミュージックグループに転職しようと思ったきっかけを教えてください。
大学では、法学部に在籍していました。新卒でデジタルサービス企業に入社し、法人向けにネットワーク構築を行なう外販IT部門で7年ほど働いたのち、通信会社でクラウドエンジニアを約6年務め、ソニーミュージックグループに転職しました。
転職を考えたのは、自社のネットワーク構築に携わりたいと思ったことがきっかけです。そういったなかで転職先を探していたところ、ソニーミュージックグループの求人を見つけ、応募しました。
──前職と比較して業務内容に大きな違いはありましたか?
ほとんどありませんでした。前職では、小売業や銀行、鉄道会社など約50社のネットワーク構築を担当してきましたが、インフラはどの企業でも基本的な仕組みは同じなんです。なので、エンタメ会社のソニーミュージックグループであっても、大きくは変わらないだろうなと思っていましたが、実際その通りでしたね。
ネットワークエンジニアを経験してきた方であれば、エンタメ業界であっても、これまでに身につけたプロジェクトマネジメントの知識、ネットワークやクラウドのスキルはそのまま通用します。
──ITエンジニアのなかで、ネットワークエンジニアを志望する人は少ないと聞きますが、なぜでしょうか。
独学が難しい分野だからだと思います。アプリ系と比べて、インフラ系は法人向けビジネスが中心なので、ひとりで学ぶことが難しいです。また、数百、数千人規模で使用されるネットワークの構築を学ぶ環境を個人で整えるのは、経済的なハードルも高いので、結果としてネットワークエンジニアそのものの母数が少なくなるのだと思います。
──服部さんは、ネットワークエンジニアとしてどんな資格を持っていますか。
私は、PMP(Project Management Professional:プロジェクトマネジメントに関する国際資格)と、CCNP(Cisco Certified Network Professional)、クラウドではAWSソリューションアーキテクトの資格を取得しています。
CCNPは、ネットワークの実務経験が5年あれば十分目指せる中級レベルで、AWSソリューションアーキテクトも比較的ベーシックな資格です。それに比べて、PMPは試験時間が4時間ほどある難度の高い資格ですが、ないからどうということではなく、取得は必須ではありません。
──服部さんは、IT業界で10年以上のキャリアを積んでいますが、前職までの経験は、現在、どのようにいきていますか。
エンジニアはコーディング担当、提案担当というように職域が明確に分かれているケースが一般的なんですが、前職の通信会社では自分で提案から納品まで担当する“一気通貫”のスタイルが基本でした。そのなかで、案件の受注から構築、プロジェクトマネジメントまですべての経験を積めていたことは良かったと思いますし、現職でも役に立っていると感じます。
もちろん一気通貫でやってきた分、構築専業の人に比べて技術が至らない部分や提案専門の人より提案力が劣る部分はあるかもしれません。ですが、私は最終的に“受注できる”“納品できる”“決定力がある”など、明確な結果を出せることに価値があると考えています。そこを意識しながらキャリアを積んできたので、結果的に幅広いスキルが身についたのだと思います。
──エンジニアというと専門性を尖らせていくイメージがありますが、服部さんは一気通貫でプロジェクトを動かせることが強みなのですね。
以前の仕事では、企業として求められていることに対して割けるリソースが少なく、ひとりがさまざまな役割を兼務しなければならないという状況でした。結果として、自然と総合力が身についたように思います。
そのなかでも特に鍛えられたのは、人を巻き込み、物事を前へ進める力。言ってみれば、制作現場のプロデューサーの役割に近いかもしれません。管理しているだけではプロジェクトは1ミリも動かず、前に進める推進力が重要です。
──インフラの構築や運用において、“前に進める”というのはどのような仕事を指すのでしょう。
基本的に、私たちの仕事はIT知識のクイズ大会ではなく、ビジネス上の課題ベースで動いています。“この問題が解決できれば、こんなことができる”“ここを変えれば、これだけコストを抑えられる”といった思考で課題を見つけ、解決し、価値を生む。この繰り返しです。
課題は自分たちの視点だけでは見えないこともあるので、利用者から困っていることをヒアリングし、それを改善するときもあります。SMEの場合、やりたいことを気軽に発言できる環境が整っているので、その点はありがたいですね。
──昨今はITエンジニアが不足しており、各業界で人材の獲得競争が続いています。転職を検討しているエンジニアの方に、ソニーミュージックグループで働く魅力を伝えるとしたらどんな点が挙げられますか?
常に学べる環境やサポート体制が整っているという点でしょうか。エンジニアとして働く上で最も重要なのは“学んでいく姿勢”だと思います。技術は常に変化し続けますし、入社してからもさまざまなことを学ぶ意識を持つことを大切にしてほしいです。
あるオーディション番組の審査員が重視していたのは、歌やダンスの技術よりも立ち居振る舞いや成長したいという姿勢でした。それはエンジニアでも同じなのかなと。
多くの知識を持っていても“自分はこれだけしかやりたくない”という姿勢では、エンジニアとして上を目指すのは難しい。“今はこの領域が専門ですが、この分野にも興味があります。ですが、まだ知識はありません”という状態を、自分のなかで常態化できるのが理想ではないかと思っています。そういう視点で言えば、ソニーミュージックグループには学ぶための環境もリソースも十分にあるので、意欲があれば足りないスキルはいくらでも伸ばせます。
実際に、ソニーミュージックグループでは“こういうことに挑戦したい”“こんなことを学びたい”と申し出ることも可能ですし、基本的にOKをもらえる環境です。ただし、ITの専門企業のように、資格取得のための研修や勉強会などがたくさんあるわけではありません。会社が学習プログラムを用意するわけではなく、必要なものを自分で探してきて、それを会社が後押ししてくれる。そういう、自主性を尊重する文化があります。
──新卒採用の場合、プロジェクトマネジメントの経験を積むのは難しいと思います。代わりに学んでおいた方がいいことはありますか?
明確に、これをやっておくべきだというものはないですね。個人的には、なんでもいいので興味を持てたところから学び、就職後に知識を広げていくというイメージでいいと思います。
最近は、ソニーミュージックグループもIT部門だけのインターンを実施していますので、ぜひ、こうした機会も利用して、ネットワークエンジニアについて知っていただけるとうれしいです。
──ソニーミュージックグループのエンジニアには、どんな人が向いていると思いますか。
素直で、地味な作業を淡々とできる人です。これはネットワークエンジニア全般に共通していることで、エンタメ会社だから何かが特別ということはありません。ひょっとしたら“エンタメ業界=明るくないといけない”とか陽キャの集まりみたいなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、そんなことは一切ないです(笑)。業務をするうえで必要なコミュニケーションが取れれば大丈夫です。
実際、僕らのシステム部門は落ち着いた雰囲気ですし、IT業界を経験した人なら、“ITエンジニアが集まるとこういう空気になるよね”とわかってもらえると思います。
──ネットワークエンジニアを目指す人が少ないなか、服部さんが若手への指導やコミュニケーションで心がけていることはありますか。
“やりたいことにどんどん挑戦できるようなサポートをしたい”という想いが一番強いですね。この会社でも、キャリア面談などで「3年後、どうなりたいですか?」と問われることがありますが、正直答えにくい質問だと思っています。
もう少し細かくかみ砕いて「何ができるようになりたいか」と聞いたほうがイメージしやすいですし、それを教えてもらえれば、こちらとしても必要な環境やプロジェクトを用意することもできます。その積み重ねで、エンジニアとしてのスキルが身についていくのだと思います。
エンジニアの成果は、その人の強みから生まれると思っています。それぞれが得意なことに最大限取り組み、それを積み重ねることでプロジェクトを成功に導く。そこを調整するのがプロジェクトマネージャーの役割なので、若手にも自分の強みややりたいことに全力で取り組んでほしいと考えています。
──服部さんが今後ソニーミュージックグループで実現したいことはありますか?
社内でネットワークやシステム関連のトラブルに関する問い合わせ窓口はありますが、“なぜこれはできないのか”といった要望を受ける専用の窓口はありません。
なぜかというと、ソニーミュージックグループでIT系の困りごとを抱える人たちの多くは、エンタテインメントを生み出すプロフェッショナルであって、ITの専門家ではありません。つまり、ITテクノロジーで“こんなことはできないか?”とか“ここをサポートしてほしい”という具体的なニーズが声として現われづらいんです。
だからこそ、我々のようなエンジニアが抽象的な要望を吸い上げ、課題として具現化し、解決できるようにしていきたい。社内のスタッフから困っていることをもっと聞き出したいですね。また、実際に業務が行なわれている現場を見ることで課題が見つかることもあります。各社のことを知るためにも、そういった機会をもっと増やしていきたいです。
──エンジニアとして、今後どのような力をつけていきたいですか?
もっと新しい技術を試したり、資格に挑戦したりすることで、自分自身のスキルを伸ばす必要があると感じています。
来年以降に携わるプロジェクトでは、個人としても会社としても初めて経験するものになる予定です。ただ、そこで新しいスキルが身につくかどうかは、実際にやってみないとわかりません。ですが、やり切ったあと自分や会社がどう変わっているのか、不安もありつつ楽しみでもありますね。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
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