運動不足が続くと体はどうなるのか。トレーナーの澤木一貴さんは「中高年になると、『健康の借金』が一気に降りかかってくる。風邪が長引くようなものから、将来的には、病院に通い続けたり、薬を飲み続けたりしなければいけない体になってしまう」という――。

※本稿は、澤木一貴『体力おばけへの道 頭も体も疲れにくくなるスゴイ運動』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

階段を上がる高齢女性
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

いまは「運動しなくても暮らせてしまう時代」

私たちは今、「運動しなくても暮らせてしまう時代」に生きています。

電車もエスカレーターも車もあります。食べ物はネット注文で届き、家事の多くは家電が代行してくれます。スマホ一つで何でもできるこの便利な社会は、裏を返せば「動かなくても生きていける環境」でもあるのです。

けれど、体は便利に進化してくれません。むしろ、使わない機能はどんどん衰えるようにできているのが人間の身体です。意識して動かなければヤバいのです。

年齢とともに体力は徐々に落ちていきます。

これは避けられない自然の摂理ですが、問題は、「加齢+運動不足」が重なると、その衰えのスピードが何倍にも加速するということです。

筋肉は使わなければ年1〜2%ずつ減り、60代以降では3%以上減少するというデータもあります。特に太ももやお尻の筋肉は減りやすく、階段がつらい・長く歩けない・ふらつく・転びやすい……といった日常の変化につながります。

ある日突然「健康」を奪われる

さらに深刻なのは、“見えない体力”である防衛体力の低下です。

運動不足は血流を悪くし、自律神経のバランスを崩し、免疫力やホルモン分泌の質も落ちていきます。その結果は……

●血糖値や血圧が上がる(糖尿病・高血圧のリスク)
●コレステロール値が乱れる(動脈硬化や心臓病のリスク)
●睡眠の質が低下する(疲れが取れず、メンタルも不安定に)
●骨密度が低下する(骨粗しょう症・転倒骨折リスク)

つまり運動不足は、「病気になりやすい体」を自分で育ててしまっている状態です。それに気づかないまま年を重ねると、ある日突然、健康を奪われることも珍しくありません。