中学受験の合否を分けるのは算数だと言われる。中でも図形問題で点数が取れるかどうか。『小学算数の図形問題に1冊でしっかり強くなる本』などの著書を持ち、大手進学塾で長年、多くの児童を指導してきた森圭示さんは「図形問題はセンスがなくても解けるし空間認識力は鍛えることができる」という――。(前編/全2回)
算数が「差がつきやすい科目」である理由
中学受験において、算数は他教科と比べて「差がつきやすい科目」と言われています。
たとえば、直近過去5年分の合格者平均と受験者平均の得点差を見てみると、
開成中(85点満点) 算数10.5点/国語8.0点
灘中(200点満点) 算数27.7点/国語11.1点
渋谷幕張中(1回入試/100点満点) 算数12.7点/国語7.2点
灘中(200点満点) 算数27.7点/国語11.1点
渋谷幕張中(1回入試/100点満点) 算数12.7点/国語7.2点
というように、特に難関校では国語やほかの教科に比べて算数で大きな差が生まれています。
それはなぜか。理由は大きく3つあると考えます。
一つ目は、「出題形式」。
多くの学校では、大問1は(1)、(2)、(3)とそれぞれ独立した小問集が出題されますが、大問2以降は「速さ」や「図形」などひとつのテーマに関する問題の小問集となっています。
そして、それらの小問は関連することが多く、(1)を落としてしまうと(2)、(3)と連鎖で落としてしまい、大きな失点につながることが多々あります。
二つ目は、「一問あたりの配点が高い」こと。
一般的に、算数以外の教科が1問あたり2点~4点程度の配点なのに対し、算数では1問あたり5点~7点であることが多い傾向にあります。そのため、1問のミスで大きく差がついてしまいやすい教科と言えます。
三つめは、あくまで「小学校の算数の範囲内」であること。
中学受験の算数では、中学校以降の数学で習う負の数や、ルートなどを使った問題を作ることができません。その限られた範囲で得点に差が出るような問題を作るにはどうするか? 答えは内容を深めることです。
中学受験の算数では、いくつものステップと思考を重ねることではじめて、奥深くに埋まった答えまでたどり着けるような複雑な問題が作られているのです。
そういった点が、中学受験の算数が他教科と比べて「差がつきやすい科目」と言われるゆえんだと思います。

