「自分は大丈夫」と思える人と、思えない人の違いは何か。心理学者のシュテファニー・シュタールさんは「生後2年間の親との交流で、基本的信頼感を得た子どもは『安定型愛着スタイル』を持つ一方、そうでなかった子どもは『不安定型愛着スタイル』を持つようになる」という――。

※本稿は、シュテファニー・シュタール著、繁田香織翻訳『「本当の自分」を愛する心理学 自分の弱さを受け入れる』(大和書房)の一部を再編集したものです。

抱っこしている赤ちゃんはごきげんな様子
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親との交流で「喜怒哀楽」を学ぶ

人間は、生まれてから少し経つと、快感と不快感を区別できるようになります。しかし、さまざまな感情はその時点ではまだなく、後の成長過程で親との相互作用によって発達していきます。私たちの感情をつかさどる脳領域は「大脳辺縁系」と呼ばれ、生後3カ月ごろから発達し始め、生後8~10カ月から本格的に活動するようになります。私たちは、大脳辺縁系の活動によって「気分」や「感情」を経験するのです。

そして、その気分や感情によって、他者との交流が「意味」を持つようになり、さらに「私はこの感情を示すと、相手からこう反応されるから、相手に好かれるためには、この感情を抑えたほうがいいだろう」、あるいは「この感情を表してもいいだろう」といった「予想」が生まれます。

ですから、さまざまな感情を持ったり、感じ取ったりする能力を培えるかどうかは、親との交流(小児期と青年期では他者との交流)を通じて何を学んだかによるのです。

生後2年間で「安心感」を与えられるか

通常、乳児と親との間で「情動調律」という交流が行われます。情動調律とは、大人が乳児に同調すること、すなわち大人が自分の感情と表情を乳児の感情に合わせていくことを言います。このとき、親の「察知力」が非常に重要な役割を果たします。察知力は、子どもの精神的な成長のために親が持つべきもっとも大切な能力の一つです。このことは、子育てに関する数多くの研究で証明されています。

もちろん、察知力だけでなく、適切な対応も重要です。子どもが生後2年間でもっとも必要とするものは「安心感」であり、「安心感」は、親が子どもに対して敏感かつ適切な反応と対応をして心身の欲求を満たしてあげることで生まれるからです。

人は、強い結びつき欲求を持って生まれてきます。より美しい言葉で言うと、愛に対する大きな期待を抱いて生まれてくるのです。それゆえに乳児は本能的に周囲を見回し、周囲の人の行動をできるかぎり目で追います。そして、乳児の全生命は親のケアにかかっているため、乳児は親に対して積極的に親密さを求め、親に同調しようとします。

乳児は、生後3カ月ころから自分の意志で微笑むことができるようになり、次第に、母親の微笑みに対して「嬉しい」「自分は歓迎されている」というような感覚を抱いて微笑み返すようになります。こうして、喜び以外にも悲しみや期待、怒りなどの感情を周囲に示せるようになっていくのです。