高市首相が「多様なコメの増産を進める」と発言し、注目が集まっている。コメ価格は下がるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「これは増産に見せかけた減反強化策だ。コメの価格はますます上がっていくだろう」という――。
まやかしの「増産」報道
毎日新聞は12月8日、次のように報道した。
高市早苗首相は8日の衆院本会議で、今後のコメ政策について「国内主食用、輸出用、米粉用など『多様なコメの増産』を進める」と明言した。高市政権になって増産にかじを切った石破政権からの方針転換を指摘する声も出ていたが、「増産」に言及することで懸念を払拭する狙いがあるとみられる。
確かに、「増産」とは言っているが、これは鈴木農水大臣や農林族議員が言う「需要に応じた生産」=現在の減反政策の推進そのものなのである。減反を廃止して生産量を増やし価格を下げて輸出も増やすというものではない。
農水省が国民を欺く時に使う、「需要に応じた生産」という名前の減反政策なのだ。どういうことか、具体的に解説していこう。
主食用のコメは減産方針
現在の減反政策は1000万トン作れるコメを300万トン減産して主食用のコメ生産を700万トンすることで、米価を主食用のコメを1000万トン生産するときの水準から大幅に上昇させることを目的としている。鈴木農水大臣は来年産の主食用のコメを30万トン以上減産することを表明している。主食用のコメの値段は下がらない。
高市総理の発言は、輸出用、米粉用など主食用以外のコメの生産を増やして、これらを含めたトータルのコメの生産を増やすというものだろう。鈴木農水大臣や農林族議員は「需要に応じた生産」=減反を法律に書き込もうとしている。コメ券の発給も、需要を増やして市場での過剰供給を緩和することによる米価維持の狙いがある。主食用のコメ生産を増やして米価を下げようとするはずがない。
農政に疎い高市総理が農水省や農林族議員に騙されている可能性がある。答弁を用意したのは農水省である。本来なら財政負担の増大につながりかねない答弁の作成に待ったをかける財務省が、新政権に疎まれていることも背景にあるのだろう。

