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JP2626496B2 - 線状加熱による金属板の曲げ加工方法 - Google Patents
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JP2626496B2 - 線状加熱による金属板の曲げ加工方法 - Google Patents

線状加熱による金属板の曲げ加工方法

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JP2626496B2
JP2626496B2 JP23216893A JP23216893A JP2626496B2 JP 2626496 B2 JP2626496 B2 JP 2626496B2 JP 23216893 A JP23216893 A JP 23216893A JP 23216893 A JP23216893 A JP 23216893A JP 2626496 B2 JP2626496 B2 JP 2626496B2
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bending
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亮一 神近
隆庸 石山
宏 藤野
幸雄 上田
英一 村川
ラシュワン・アーメド・モハメド
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石川島播磨重工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は船舶、橋梁、その他の金
属製構造物の曲面状部材を平板状の素材あるいはプレス
等の一次加工を施された初期形状から目的曲面形状へ仕
上げるために用いる線状加熱による金属板の曲げ加工方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に船舶、橋梁等に用いられる金属板
の曲げ加工を行う場合は、線状加熱により行われている
場合が多い。この線状加熱による曲げ加工は、平板状素
材あるいはプレスで一次加工された形状の金属板の所定
の位置に線状加熱を施し、生じた塑性歪による板の面内
収縮や角変形を利用して目的とする三次元形状を作り出
すものである。
【0003】上記線状加熱による曲げ加工では、面内収
縮量や角変形量が線状加熱の加熱位置、方向、加熱条件
によって決定されるため、これらの加熱位置、方向、加
熱条件が重要である。
【0004】現状の加工現場では、初期形状から目的形
状へ強制変形させる計算によって得られる目的固有歪分
布に着目した理論的なアプローチに基づく技術は存在せ
ず、複数個の曲げ型板を金属板上に仮配置することで目
的形状とのずれを検知しながら熟練者の勘や技能によっ
て加熱位置、方向、加熱条件を決めているのが実状であ
る。
【0005】しかしながら、近年では、これら熟練者の
高齢化とこれに伴う作業従事者の減少等の問題が顕著に
なって来ている。
【0006】そのため、最近、かかる状況に鑑み、熟練
を要する線状加熱作業を特別な技能を要せずに実施でき
て処理能力を向上させることができるような線状加熱に
よる板の曲げ加工方法が提案され且つ特許出願されてい
る(特願平3−237948号)。
【0007】上記最近提案された方法は、有限要素法
(FEM)の弾性解析に基づいて線状加熱線の位置、方
向及び生成固有歪(集中的な歪分布)を決定するように
したもので、図22に示す如く、先ず、初期形状と最終
成形形状に関する幾何学情報のインプット(ステップ
I)をした後、初期形状に対応したFEMのメッシュ分
割を行う(ステップII)。次いで、初期形状から最終形
状まで強制的に弾性変形させ、その過程で生じる歪を計
算した後、計算された歪を面内成分と、曲げ成分に分離
し、それぞれの主歪分布をグラフィック画面に表示する
(ステップIII )。次に、面内の歪分布に注目し、圧縮
の主歪が大きい領域を加熱領域に選び、加熱の方向は主
歪の方向に直角の方向とし(ステップIV)、又、曲げ歪
の分布に注目し、曲げ歪の絶対値が大きい領域を加熱領
域に加え、加熱の方向は歪の絶対値が最大である主方向
に直角の方向とする(ステップV)。
【0008】次に、生成すべき固有歪の大きさを決める
ために、加熱領域に属する要素の剛性を残りの部分より
も小さくした強制変形FEM弾性解析を再度実施し、加
熱領域に集中した歪の値から生成固有歪の値を算定する
(ステップVI)。しかる後に、これらの計算に基づき線
状加熱を施して固有歪を発生させることによって所定の
最終形状に加工する(ステップVII )ものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記最近提案され且つ
出願されている方法の場合、線状加熱による板の曲げ加
工が容易に行えるため、熟練者の勘に頼らなくても実施
可能という利点があるが、 図23の(イ)から(ロ)のように強制変形FEM
弾性解析を行う場合には、一般に、目的固有歪の面内成
分は、図23(ハ)に示すように収縮歪(圧縮歪)だけ
でなく、伸び歪も現われることがある。又、固有歪の大
きさを決めるための加熱部の剛性を低くした強制変形F
EM弾性解析においても同様に伸び歪が表われることが
ある。線状加熱による曲げ加工は、加熱部に生ずる圧縮
塑性歪を利用して加工する方法であり、図23(ハ)の
下部に見られる伸び歪(←→印)を付与することができ
ない。よって、目的形状に線状加熱だけによって加工す
ることができるためには、上記のFEM計算結果がすべ
て収縮歪(→←印)となっていなければならない。同図
23(ハ)において少なくとも伸び歪の部分に限定し
て、あるいは、全体として一様な収縮歪を加える必要が
ある。このことは、目的形状を縮めること、あるいは初
期形状を大きくすることに対応している。同様に、ある
量の曲げ歪を片側からの加熱によって達成するために
は、ある程度の面内縮みが伴うことは避けられない。こ
れらの余分の収縮によって、仕上った目的形状は面内の
寸法不足となる。このことは定性的には従来から知られ
ているが、これらを定量的に補償することが出来ないの
で、現状では予め経験則に基づいた十分な余裕をとって
おいた上で、最終的な切り揃えの余分の作業や、場合に
よっては寸法不足を生じるおそれが考えられる。 線状加熱を行った場合には、加熱線と直角方向の収
縮歪だけでなく、加熱線方向の収縮歪も割合は少ないが
必ず伴うことがよく知られており、両方向の生成固有歪
を考慮した上で目的固有歪分布を正確に実現させること
が難しいと考えられる。 又、加熱条件と生成固有歪との定量的関係について
は、最近提案され出願された方法では言及されていない
ので、現状の現場技術である、曲げ型板と初期形状から
経験と勘で推測される各部必要変形量を発生させるであ
ろう加熱条件を、経験をベースに選択し実施する方法が
採用されているが、多段の推測を経験と勘をベースに積
み重ねる結果として、難しいこと、誤差、バラツキが大
きいこと、出来る人が限られること、習得に時間がかか
ること、等の問題がある。 平板から曲面を成形するためには、何等かの方法で
所定の曲げ歪と面内歪を与える必要があるが、曲げ歪に
注目すると、曲げ歪分布は、図4に示す如く比較的単純
であり、主方向はほぼ一定の方向になっているため、曲
げ歪を付与するための作業手順作成については特に問題
はなく、又、実際の曲げ加工も加工のかなりの部分をベ
ンディングローラ等による機械曲げによって行うことが
でき、部分的に線状加熱による曲げを施せばよいことが
わかる。しかし、面内歪については、これを機械的手段
で板に与えることは非常に難しく、このような作業には
線状加熱が理想的な手段となるが、面内歪分布は、図5
にも示されるように複雑であり、方向も一定していな
い。更に、前述したように、線状加熱では引張の歪(伸
び歪)を与えることができず、又、線状加熱では剪断歪
が作れないので、図6の歪を付与するためには、主歪の
方向に加熱しなければならず、加熱線が種々の方向を向
くことになり、作業が大変となり、又、設備も複雑とな
る。
【0010】そこで、本発明は、上述した最近提案され
且つ出願されている線状加熱による板の曲げ加工方法を
更に進めて上述した問題点をなくし、目的形状が与えら
れると素人でも実施でき、且つ、希望する加熱条件だけ
で目的固有歪を実現できるようにすると共に、作業の容
易さ、設備の単純化を図るようにしようとするものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、金属板を初期形状から最終の目的形状に
曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何
学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法
のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上
に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に
変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有
歪分布を複数の互いに直交する格子状の加熱線によって
生成される生成固有歪で表現し、このとき加熱装置と被
加工材の組合わせに対する加熱条件と生成固有歪との定
量的関係を用い、次に、金属板の曲げ加工を行う方法と
する。又、上記加熱条件が与えられたときに求められた
生成固有歪を初期形状に付与することによって曲り形状
の確認のための弾性シミュレーションを行った上で、金
属板の曲げ加工を行う方法としてもよい。
【0012】
【作用】金属板を初期形状から目的形状に強制的に弾性
変形させて各要素内の目的固有歪分布を求めてから、こ
の目的固有歪分布を複数の互いに直交する格子状の加熱
線による生成固有歪として表現させ、又、定量的関係に
基づいて生成固有歪が与えられると、それに対応した加
熱条件を求めるようにすることから、求められた加熱条
件での複数の加熱線による加熱を行えばよく、熟練技術
者に頼らなくてもよくなる。又、上記生成固有歪を初期
形状に付与させることにより目的形状の達成具合を事前
に予測することも可能となる。更に、格子状の加熱で曲
げ加工することから、作業が容易となり、これに伴い装
置を単純化できることになる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。
【0014】図1は任意の周辺形状をした平板あるいは
任意曲面を初期形状とする鋼板あるいは鋼以外の金属板
を、目的形状(別の任意の周辺形状及び曲面形状)に曲
げ加工する本発明の方法を示すフローチャートで、初期
形状と目的形状に関する幾何学情報のインプット(ステ
ップ1)をした後、金属板Pの初期形状に基づいて図2
(イ)の如く、有限要素法(FEM)のメッシュ分割を
行い(ステップ2)、その分割形状を、初期形状を目的
形状に写像する適切な写像方法によって図2(ロ)に示
すように金属板Pの目的形状の上に写像(ステップ3)
する。次いで、初期形状における各要素節点位置を目的
形状における対応する各要素節点位置にFEM計算によ
って強制的に弾性変形させ、各要素内での歪分布(目的
固有歪分布)を計算する。続いて、求められた歪分布を
出発点とし、面内歪に注目して伸び歪と剪断歪を排除す
ることによって、直交ししかも圧縮の面内固有歪に収束
するような反復計算のアルゴリズムにより目的固有歪分
布が得られ、写像法と加工法に付随した縮み代を定める
ことが可能となる(ステップ4)。
【0015】次に、加熱方法の策定として、上記ステッ
プ4で求められた要素内での目的固有歪分布を複数の互
いに直交する格子状の加熱線によって生成される集中的
な歪分布(生成固有歪)で近似的に表現する(ステップ
5)ようにする。この場合、上記ステップ5で目的固有
歪分布を生成固有歪で実現する際に、与えられた加熱器
(ガス炎、高周波誘導加熱器、レーザ光等)と被加工材
の組合わせに対して、加熱条件(単位時間当りの入熱
量、移動速度等)と生成固有歪との定量的関係が必要と
なるので、この関係を求めておくようにする(ステップ
6)。この加熱条件と生成固有歪との定量的関係は、一
般には実験データを蓄積するか、あるいは熱弾塑性FE
M解析により入熱条件(入熱分布又は時系列的に変化す
る温度分布)を与えたときの金属板上の生成固有歪を計
算することによって得られる。すなわち、実証実験によ
りその妥当性が確認された熱弾塑性FEMプログラムを
用いて上記加熱条件と生成固有歪との関係を計算するに
際して、後述するように、線状加熱による熱弾塑性変形
問題について成立する相似則とそれから導かれる支配パ
ラメータを用いた効率的な計算方法を開発し、計算され
た結果あるいは実測データをそれらのパラメータで一般
化した形で整理することにより加熱条件が与えられたと
きの生成固有歪を効率よく求めることができる手段を考
案した。
【0016】次に、ステップ5とステップ6で求められ
た加熱条件が与えられたときの生成固有歪を初期形状に
付与することによって、曲り形状の弾性シミュレーショ
ンを行い確認を行う(ステップ7)。しかる後、ステッ
プ6で定められた加熱方法に従って手動あるいはNC制
御の加熱器を用いた線状加熱を行う(ステップ8)。
【0017】上記ステップ1からステップ8までの手順
で求められた加熱方法で金属板に生成固有歪を与えるこ
とによって目的形状に曲げ加工することができるように
する。
【0018】以下、詳述する。
【0019】ステップ1〜ステップ3は、図22のステ
ップI、IIに相当するものである。
【0020】ステップ4では強制的に変形させるときの
写像法の適切な選択と新しく考えた反復収束計算のアル
ゴリズムの採用により面内の伸び歪と剪断歪成分を排除
した直交面内圧縮歪と曲げ歪とで構成される目的固有歪
分布が得られ、写像法と加工法に付随した縮み代を定め
ることができるが、この目的固有歪を求める方法につい
て最も簡単な例を示す。すなわち、線状加熱は、前述し
たように伸び歪を与えることができず、又、剪断歪が作
れないので、図5に示す如き複雑で且つ方向が一定して
いない面内歪を付与するためには、加熱方向が複数の異
なる方向となり、作業が大変となることから、直交する
εx とεy の2成分で、しかも圧縮歪だけで構成される
面内歪により曲面を実現させるようにする。そのため
に、以下に、直交し、しかも圧縮成分からのみ構成され
る固有歪分布を計算するためのアルゴリズムを採用す
る。鞍型曲面の実例を対象に数値例を示しながら、面内
歪を直交化した目的固有歪分布を算出する方法について
説明する。
【0021】伸び歪と剪断歪成分を排除し、直交ししか
も圧縮の固有歪を求めるため、次のようなアルゴリズム
を考えた。 目的の形状に対応した撓みWを平板に強制的に与え
たときの曲げ歪εb と面内歪εm を弾性大撓み問題とし
て計算する。 面内歪に注目し、 εmx<0であればε mx=εmx εmx>0であればε mx=0 εmy<0であればε my=εmx εmy>0であればε my=0 ただし γ mxy =0 とする。ここで、ε mx、ε my、γ mxy は、求める
べき固有歪の第1近似である。 平板に現段階での固有歪ε mx、ε myを初期歪と
して与えると同時に撓みWを強制的に与えたときの弾性
歪εb とΔεm (Δεm は固有歪を与えることにより絶
対値が小さくなる)を計算する。 面内歪に注目し、 Δεmx<0であればΔε mx=Δεmx Δεmx>0であればΔε my=0 Δεmy<0であればΔε my=Δεmx Δεmy>0であればΔε my=0 ただし、 Δγ mxy =0 とし、新しい固有歪を次式に従い計算する。
【0022】ε mx=ε mx+Δε mx ε my=ε my+Δε my ただし、γ mxy =0 上記〜の計算を、修正量Δε mx、Δε my
十分に小さくなるまで3〜4回繰り返して伸び歪を零に
し、圧縮歪はそのまま残すようにして直交成分と圧縮成
分だけとし、最終的に得られたε mx、ε myが直交圧
縮固有歪である。 正しい目的固有歪分布が得られているかどうかの確
認として、段階で求めた曲げ歪εb と面内歪ε mx
ε myを固有歪として平板に与え自由に変形させ、その
形状が目的とする撓みWと一致し、しかも、板には応力
が生じないことを確認する。
【0023】上記の手順に従い図3の曲面を対象に求め
た直交圧縮歪を図6(イ)に示す。なお、図3は、長辺
の長さLが2000mm、短辺の長さBが1000mmの金
属板Pを曲げ加工して鞍型曲面とした形状を示すもので
ある。図6(イ)において、Y軸方向の歪に注目する
と、板の中央部でその絶対値が大きくなっており、造船
所の現場で実施されている加熱要領とよく対応してい
る。又、X軸方向の歪に注目すると、板のY軸に平行な
辺上に大きな圧縮歪が特徴として認められる。一方、こ
こで求められた固有歪が、曲面を作り出すという目的に
かなったものであることを確認するため、段階に示さ
れた手順に従い検証を行った。この検証では、曲げの固
有歪は曲面の曲率から唯一に決るので、段階で求めら
れた曲げ歪εb を直接固有歪として与え、面内の固有歪
として図6(イ)に示された直交圧縮固有歪ε mx、ε
myを平板に与え自由に変形させたときの撓みと応力分
布を計算した。撓みについては、表1に示すように目的
とする曲面からの相対的誤差は約1%である。
【0024】
【表1】 又、図7(イ)には、Misesの相対応力分布が示さ
れている。応力の大きさは10-1(kgf/mm2 )のオーダ
ーであり、表1に示された各応力成分の絶対値の大きさ
も小さく、ほとんど無応力の状態とみなして差し支えな
い。これらの撓みW及び残留応力が示すように、上記の
手順で求めた直交圧縮固有歪(ε mx、ε my)は、目
的の形状を作り出すために板に与えるべき面内の固有歪
であることがわかる。図8は反復計算の後に得られた図
6(イ)の面内歪と図4の曲げ歪に基づき形状確認をし
た際の変形形状の等高線図であり、図3に示す初期の目
的形状によく一致していることがわかる。
【0025】次に、表1に示した格子状又は平行線状に
集約した直交圧縮固有歪を与える場合について説明する
と、線状加熱で固有歪を与える場合は、固有歪は間隔を
置いて線状に与えられる。したがって、より実際的な固
有歪分布は、加熱線に集中した分布であり、そのような
分布は次のような手法で計算することができる。すなわ
ち、基本的には、前記したのと同じ手順で計算を行う
が、単に、加熱線に相当する部分の要素の弾性係数を他
の部分の1/1000程度に小さく設定し、弾性歪が加
熱線に集中するようにする。このようにして求めた固有
歪分布は、図6(ロ)及び図6(ハ)に示すとおりであ
る。すなわち、図6(ロ)に示す固有歪分布は、格子状
に集約した直交圧縮固有歪を与えた場合、つまり、格子
状の加熱線に固有歪を集中させた場合であり、図6
(ハ)に示す固有歪分布は、平行線状に集約した直交圧
縮固有歪を与えた場合、つまり、一方向のみの加熱線に
固有歪を集中させた場合である。このように固有歪を加
熱線に集中させた場合は、図6(イ)に認められた板の
縁に沿って分布する直交圧縮固有歪(ε mx)は消え、
熟練工による線状加熱とよく対応した結果が得られてい
る。更に、これらの固有歪を逆に平板に与えたときの撓
みに生じる誤差は、表1に示されるように小さい。した
がって、格子状あるいは平行線状に集約された固有歪か
らも曲面が作れることがわかる。図9は図6(ロ)に基
づき形状確認をした際の変形形状の等高線図である。
【0026】一方、応力に注目すると、表1あるいは格
子状加熱線に固有歪を集中させた場合の応力分布を示す
図7(ロ)に示す如く、格子状加熱ではほぼ無応力状態
となっているが、一方向平行加熱の場合は、表1あるい
は図7(ハ)に示す如く剪断応力の値のみが4.1kgf/
mm2 と大きくなっている。これは、一方向のみの加熱で
は、曲げに必要な面内歪を完全には与えることができな
いことを示している。
【0027】次に、ステップ5の加熱方法の策定につい
て説明する。図6(イ)(ロ)(ハ)のような形で得ら
れた固有歪分布に基づいて線状加熱の作業要領を作成す
るためには、いくつかの方法が考えられる。まず、加熱
装置や加熱条件の適切な選択により、曲げ歪が支配的な
小入熱の加熱条件と面内収縮歪が支配的な大入熱の加熱
条件を想定し、曲げ歪分布は小入熱の組合せ又はプレス
加工によって付与するものとし、面内歪を付与する方法
について説明する。たとえば、第1番目の方法は、絞り
を目的とした基準の加熱条件を1個選択し、1本の加熱
線当りの収縮量を基にして各位置での実際の加熱線の密
度あるいは本数を決める方法であり、第2の方法として
は図6(ロ)のように溝aを設けることによって加熱線
の位置を決め、各加熱線上での加熱条件を連続的あるい
は段階的に変化させることによって収縮量を変化させる
方法である。
【0028】又、絞りで与えるべき歪の大きさと分布が
図6(イ)(ロ)(ハ)のように事前に明らかである
と、線状加熱のために見込んでおかなければならない縮
み代の計算が可能となる。この場合、曲げ歪を与えるた
めに生ずる縮み代の付加分は無視できる程度のものであ
るが、必要となれば考慮することもできる。
【0029】以上に基づき、格子状加熱あるいは平行加
熱による板曲げが可能となり、図6(イ)(ロ)(ハ)
に示す固有歪分布に基づき決められたところを収縮量の
大きさに合わせて加熱温度、加熱時間、加熱速度、入熱
量などの加熱条件を選んで加熱すれば、目的とする曲面
形状に成形させられることが表示される。
【0030】次に、ステップ6の加熱条件と生成固有歪
との定量的関係を求める具体的な実施例を説明する。 (A) 加熱条件を与えて生成固有歪を求める場合 投入熱量Q=985.6cal/sec のガス炎を想定し、加
熱を板表面からの強制熱流束qとして与えるものとし、
qを次のような軸対称ガウス分布
【0031】
【数1】 と考え、κ=7.75×10-4mm-2なる広がりをもつも
のとする。熱源移動速度v=1mm/secで板厚h=16mm
の板を線状加熱した際の横収縮δm と角変形φを求める
例を示す。この場合、鋼の材料物性値として下記のもの
を用いるようにする。
【0032】λ=0.0160cal/mm・sec ・℃ Cp=0.098cal/g ・℃ ρ=0.00782g/mm3 熱侵入係数p、熱拡散係数kを求めると、 p=(λCpρ)1/2 =0.0035cal/mm2 ・℃ k=λ/Cpρ=20.9mm2 /sec 但し、λ:金属板の熱伝導率 Cp:金属板の比熱 ρ:金属板の比重 よって、相似則を支配するパラメータβ、ζは、 β=Q/(p2 vh3 1/2 =4.4×103 ζ=(vh/k)1/2 =0.88 である。βは熱源により加熱された板の表面の最高温度
に比例するパラメータ、ζは熱源移動速度に対応するパ
ラメータである。
【0033】パラメータβ、ζによる角変形量の変化を
示す図15、パラメータβ、ζによる面内横収縮量の変
化を示す図16から、これらのパラメータβ、ζに対す
る角変形φと横収縮δm を読みとると、 φ=0.006 rad δm =0.025mm となることがわかる。
【0034】移動熱源による熱弾塑性変形の相似則を導
入すると、対象となる板の形状と熱源の幅が幾何学的相
似で、且つ金属板の材質は同一で熱的、力学的性質も同
じであることを前提にしたとき、上記パラメータβ、ζ
が同じであれば、相似化された時間と位置における温度
分布が一致し、相似の変形が起ることになる。
【0035】相似則の適用例として、図10(イ)
(ロ)に示す2種類のモデルについて具体的な数値を設
定した結果を表2に示す。
【0036】
【表2】 なお、この例では、図にみるとおり軸対称の熱源が示し
てあるが、加熱源としてはさまざまな方法が考えられ
る。ここで提案する方法は、それらの熱源形状にも対応
して活用することができる。
【0037】ここでは、図10(イ)の板厚8mm、幅3
00mm、長さ300mmのモデルをM8、図10(ロ)の
板厚16mm、幅600mm、長さ600mmのモデルをM1
6と呼ぶ。
【0038】表2からわかるように、幾何学的形状が2
倍の場合、相似の変形を発生させるためには、入熱量Q
は2倍、熱源移動速度vは 1/2倍でなくてはならないこ
とがわかる。
【0039】図11、図12はM8、M16の各板の加
熱線上、板長さ方向の中央での横断面位置、板表面及び
裏面で起る熱源移動に伴う温度履歴を示している。
【0040】グラフの縦軸は該部温度を示す。グラフの
横軸は標準化された相対時間であるが、同時に板長さ方
向の位置に対応しており、τ=0.5は板長さ方向(図
10のY方向)の中央、τ=1.0は終端に当る。β、
ζが等しいM8、M16では対応する位置での温度が一
致していることがわかる。
【0041】図13はM8、M16の加熱線上板長さ方
向の中央での横断面における熱源移動に伴う角変形の履
歴を示すものである。縦軸は角度変形量(ラジアン)、
横軸は図11、図12の場合と同じである。
【0042】図14はM8、M16の加熱線上板長さ方
向中央での横断面における板幅方向の収縮変形の履歴を
示すものである。
【0043】図13、図14において、熱源移動速度が
速い場合(ζ=4.4)と遅い場合(ζ=1.9)の時
間に伴う変化の様子及び変形量そのものの違いが明確に
よみとれる。
【0044】図15はβ及びζを変えて行ったシリーズ
計算結果を整理したグラフである。
【0045】βを3.2×103 (板表面での最高温度
約445℃に相当) 4.4×103 (板表面での最高温度約615℃に相
当) 5.7×103 (板表面での最高温度約785℃に相
当) に選んでいる。
【0046】縦軸は角度変形量(ラジアン)、横軸はζ
(熱源移動速度に対応)、βが大きいほど(表面温度が
高いほど)角変形量が大きいことがわかる。
【0047】図16は板の加熱線上長さ方向中央での横
断面における横方向の縮み量とパラメータの関係を表わ
している。
【0048】縦軸は縮み量、横軸は図15と同じであ
る。
【0049】図17は図16と同一横断面上の幅方向中
心位置における幅方向収縮歪とパラメータの関係を表わ
している。曲げ歪量については、板表面と板厚中央にお
ける塑性歪の差によって表現してある。図17は図14
と図15に示された傾向を統一して読みとれる図と考え
てよい。
【0050】図18は前述の実施例(A) と同じく図10
のような軸対称の加熱源を考え、その分布の集中度合い
κを変化させたときの角度変形量(ラジアン)と横収縮
(mm)の関係を表わしたものである。加熱を板表面から
の強制熱流束qとして与えると想定し、qを次のような
軸対称ガウス分布
【0051】
【数2】 但し、r:熱源中心からの距離 qmax :熱源中心での熱流束 とした場合のκを横軸としてとっている。この場合は、
κはq(r)のひろがり加減を表わしκが大きいほど集
中し、小さいほど散漫となる。
【0052】なお、qとQの関係は、 Q=πqmax /κ である。
【0053】このグラフより入熱量も加熱速度も同じ場
合でも熱源の入熱分布パターンが異なると変形のおき方
が異なる。すなわち、曲げ加工の効率が大幅に変るとい
う重要な知見が与えられる。 (B) 生成固有歪から加熱条件を求める場合 ステップ4で求められた目的固有歪から加熱方法を策定
する例を示す。図6(ロ)に示したような面内の目的固
有歪が計算され、それに要素幅を掛けることによって与
えるべきY方向収縮量が求まる。この場合に、どのよう
な加熱条件(Q、v)で加熱したらよいかを知ることが
できる。板厚が16mmの場合に生成固有歪の特性値が、
Y方向収縮量δm =0.05mmに指定されたとする。
【0054】図15、図16において、角変形がなるべ
く小さく、収縮量が0.05mmとなるような位置を探
す。
【0055】図16を再掲した図21において、横収縮
量が0.05mmとなるような横軸に平行な線を引き、β
=5.7×103 とすればζ=0.9程度となる。図1
5を再掲した図20において、β=5.7×103 、ζ
=0.9の位置での角変形を見ると、0.001rad 程
度で十分に小さくなっており、ほぼ面内歪だけを与える
ことができることがわかる。
【0056】
【数3】 よって、1339cal/sec の強さのガス炎で1.1mm/
sec の移動速度で線状加熱すれば、所要のδm =0.0
5mmが達成され、角変形φも十分小さくなっている。
【0057】上記のようにしてステップ5、ステップ6
で求められた加熱方法により金属板を曲げ加工すると、
所要の生成固有歪が与えられることになって目的形状に
曲げ加工することができる。又、必要に応じて上記ステ
ップ5、ステップ6で求められた加熱方法での加熱によ
る生成固有歪を、ステップ7で初期形状に付与させ、曲
り形状の弾性シミュレーションを行い確認を行うように
することができる。
【0058】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明の線状加熱によ
る金属板の曲げ加工方法によれば、次のような優れた効
果を奏し得る。 (i) 各要素内での目的固有歪分布を計算して面内成分と
曲げ成分とに分離し、面内の目的固有歪分布のみに着目
し、それらを複数の互いに直交する格子状の加熱線によ
って生成される生成固有歪で表現するようにしているの
で、曲げ成分がプレス又は小入熱の線状加熱によって付
与されたならば、残る面内成分は図1に示すフローに従
って曲げ加工方法を素人でも見つけ出せると共に、加熱
方向が直交する一定の2方向ですむため、作業が容易で
装置を単純化できるという効果を有し、又、要素内で与
えるべき生成固有歪の特性値が規定された場合には、図
15、図16で与えられたような加熱条件と生成固有歪
の関係を与えるデータバンクを用いて加熱条件を決定す
ることが可能になった。 (ii)上記(i) により、従来試行錯誤の要素を多く含んだ
複雑な現象であるために熟練した技術者に頼らざるを得
なかった線状加熱曲げ加工法について、装置化あるいは
最適加工法の選択が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の実施例を示すフローチャートで
ある。
【図2】初期形状から目的形状への写像と強制変形を示
すもので、(イ)はFEMメッシュ分割の図、(ロ)は
目的形状の上に写像した状態図である。
【図3】実際の板を対象に実験を行う際に目的とした曲
面の形状を示す図である。
【図4】平板から曲面を成形するときに与えられる曲げ
歪分布を示すベクトル図である。
【図5】平板から曲面を成形するときに与えられる面内
歪分布を示すベクトル図である。
【図6】面内の固有歪を示すもので、(イ)は分布した
直交圧縮固有歪を与えた場合の図、(ロ)は格子状に集
約した直交圧縮固有歪を与えた場合の図、(ハ)は平行
線状に集約した直交圧縮固有歪を与えた場合の図であ
る。
【図7】応力分布を示すもので、(イ)は分布した直交
圧縮固有歪を与えたときに計算した応力分布の図、
(ロ)は格子状に集約した直交圧縮固有歪を与えたとき
に計算した応力分布の図、(ハ)は平行線状に集約した
直交圧縮固有歪を与えたときに計算した応力分布の図で
ある。
【図8】図6(イ)に示される面内歪と図5に示される
曲げ歪による確認形状を示す変形形状の等高線図であ
る。
【図9】図6(ロ)による確認形状を示す変形形状の等
高線図である。
【図10】相似則の適用例を示すもので、(イ)はモデ
ルM8の斜視図、(ロ)はモデルM16の斜視図であ
る。
【図11】パラメータζ=4.4の場合のモデルM8と
M16の対応する位置での温度履歴の比較を示す図であ
る。
【図12】パラメータζ=1.9の場合のモデルM8と
M16の対応する位置での温度履歴の比較を示す図であ
る。
【図13】モデルM8とM16の対応する位置での角変
形の時間的変化の比較を示す図である。
【図14】モデルM8とM16の対応する断面での面内
横収縮量の時間的変化を示す図である。
【図15】パラメータβ、ζによる角変形量の変化を示
す図である。
【図16】パラメータβ、ζによる面内横収縮量の変化
を示す図である。
【図17】中央断面における塑性歪のパラメータβ、ζ
による変化を示す図である。
【図18】熱源の広がりが変形に及ぼす影響を示す図で
ある。
【図19】最高温度のパラメータβ、ζによる変化を示
す図である。
【図20】角変形とパラメータζからのβの読みとりを
示す図である。
【図21】熱収縮とパラメータζからのβの読みとりを
示す図である。
【図22】最近出願されている線状加熱による板の曲げ
加工方法の実施例を示すフローチャートである。
【図23】初期形状から目的形状に強制変形させたとき
の面内歪成分を示すもので、(イ)は初期形状を示す
図、(ロ)は目的形状を示す図、(ハ)は面内主歪ベク
トル図である。
【符号の説明】
1 ステップ1 2 ステップ2 3 ステップ3 4 ステップ4 5 ステップ5 6 ステップ6 7 ステップ7 8 ステップ8 P 金属板
フロントページの続き (72)発明者 上田 幸雄 大阪府茨木市美穂ケ丘11−1 大阪大学 溶接工学研究所内 (72)発明者 村川 英一 大阪府茨木市美穂ケ丘11−1 大阪大学 溶接工学研究所内 (72)発明者 ラシュワン・アーメド・モハメド 大阪府茨木市美穂ケ丘11−1 大阪大学 溶接工学研究所内 (56)参考文献 特開 平5−76947(JP,A) 特開 平6−226360(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板を初期形状から最終の目的形状に
    曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何
    学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法
    のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上
    に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に
    変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有
    歪分布を複数の互いに直交する格子状の加熱線によって
    生成される生成固有歪で表現し、このとき加熱装置と被
    加工材の組合わせに対する加熱条件と生成固有歪との定
    量的関係を用い、次に、金属板の曲げ加工を行うことを
    特徴とする線状加熱による金属板の曲げ加工方法。
  2. 【請求項2】 金属板を初期形状から最終の目的形状に
    曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何
    学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法
    のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上
    に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に
    変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有
    歪分布を複数の互いに直交する格子状の加熱線によって
    生成される生成固有歪で表現し、このとき加熱装置と被
    加工材の組合わせに対する加熱条件と生成固有歪との定
    量的関係を用い、次に、加熱条件が与えられたときに求
    められた生成固有歪を初期形状に付与することによって
    曲り形状の確認のための弾性シミュレーションを行った
    上で、金属板の曲げ加工を行うことを特徴とする線状加
    熱による金属板の曲げ加工方法。
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