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JP4173893B2 - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents
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JP4173893B2 - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類磁石及びその製造方法に関する。
希土類元素を含む希土類磁石は、優れた磁力を有するものの、主成分として酸化されやすい希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石は、希土類元素を含む磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層が設けられた構成とされることが多い。
ところで、近年では、磁石素体そのものの耐食性が改善されていることや、希土類磁石の用途によっては従来ほどの耐食性が要求されないこと等の理由によって、ある程度の耐食性を付与できる保護層を従来よりも低コストで形成することが求められる場合が増えている。
そこで、比較的低コストで磁石素体表面に保護層を形成し得る方法として、アルカリ性ケイ酸塩溶液からなる処理液を磁石素体の表面に塗布し、これによりガラス状保護層を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような方法によれば、磁石素体を処理液に浸漬した後、乾燥させるという簡便な方法で保護層を形成できることから、比較的低コストで保護層を形成することが可能となる。
特開平9−007867号公報
しかしながら、上述した方法により形成されたガラス状保護層は、水分が付着すると保護層中の成分が溶出して劣化し易い傾向にあり、この保護層を備える希土類磁石は、最低限必要とされる耐水性を有していない場合が少なくなかった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で形成可能であり、優れた耐水性を有し、且つ、十分な耐食性を有する保護層を備える希土類磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の希土類磁石は、少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体と、この磁石素体の表面上に形成された保護層とを備え、保護層は、ケイ素、酸素及び磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含み、保護層に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種は、当該保護層における表面側から磁石素体側に向かって濃度が大きくなっていることを特徴とする。このような保護層は、後述するように、ケイ酸イオン等を含む酸性の水溶液に浸漬するだけの簡便な方法で形成可能である。
本発明の希土類磁石における保護層は、ケイ素、酸素に加えて磁石素体に含まれている金属元素を含有している。この保護層に含まれる金属元素は、ケイ素や酸素に対する親和性が高い。したがって、保護層においては、ケイ素や酸素が金属元素によって結合されたような状態となり、これにより保護層は緻密な層となり得る。このため、本発明における希土類磁石は、上記従来のガラス状保護層を備えるものに比して、当該層中の成分が水中に溶出すること等が少なく、優れた耐水性を有するものとなる。
また、本発明の希土類磁石においては、保護層と磁石素体とが同じ金属元素を含むことから、これらの密着性が良好である。特に、保護層中の金属元素の少なくとも一種は、磁石素体に近いほどその濃度が大きいことから、保護層は、磁石素体との界面近傍で磁石素体との組成が近くなっており、これによって磁石素体と極めて良好に密着されている。したがって、本発明の希土類磁石は、保護層の剥離等を生じ難く、かかる観点からも優れた耐食性を有している。
さらに、上記本発明の希土類磁石において、保護層に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種は、当該保護層の厚さ方向の中央よりも表面側にまで少なくとも含まれており、表面側から磁石素体側に向かって濃度が大きくなっているとより好ましい。こうすれば、より優れた耐水性及び耐食性が得られるようになる。
また、保護層は、これに含まれる金属元素のうちの少なくとも一種の濃度が、磁石素体中の当該金属元素の濃度よりも高い部分を含んでいると好ましい。これにより、保護層の緻密性や磁石素体に対する密着性が更に良好となり、希土類磁石の耐食性が一層向上する。
また、磁石素体及び保護層は、鉄を含んでおり、保護層中の鉄は、当該保護層における表面側から磁石素体側に向かって濃度が大きくなっていると好ましい。鉄は、イオンの電界強度が高いため、ケイ素や酸素に対する親和性が特に高い傾向にある。したがって、保護層が鉄を含むことで、希土類磁石の耐水性が更に向上する。さらに、鉄は、嫌気性接着剤の硬化触媒としても機能することから、鉄を含む保護層を有する本発明の希土類磁石は、嫌気性接着剤を用いて他の部材等に接着される際の接着性に優れるといった特性も有するものとなる。
上記本発明の希土類磁石において、保護層は、磁石素体に含まれる希土類元素のうちの少なくとも一種と同一の希土類元素を含み、この希土類元素は、当該保護層における表面側から磁石素体側に向かって濃度が大きくなっていることがより好ましい。こうすれば、保護層の磁石素体に対する密着性が良好となって耐食性が更に向上する。特に、保護層が、磁石素体よりも希土類元素の濃度が高い部分を有していると、保護層の磁石素体に対する密着性が極めて良好となる。
さらに、磁石素体及び保護層は、アルミニウムを含み、保護層中のアルミニウムは、当該保護層における表面側から磁石素体側に向かって濃度が大きくなっているとより好ましい。保護層がアルミニウムを含有すると、そのSiやO等に対する親和性の高さによって、更に優れた耐水性が得られるようになる。特に、保護層が、磁石素体よりもアルミニウムの濃度が高い部分を有していると、保護層の磁石素体に対する密着性が一層良好となる。
さらにまた、磁石素体及び保護層は、銅を含むことが更に好ましい。銅は、鉄と同様に嫌気性接着剤の硬化触媒として機能し得ることから、希土類磁石の接着性を更に向上させ得る。
また、保護層は、アルカリ金属元素の含有量が2質量%以下であるとより好ましい。上記特許文献1に記載の方法においては、ケイ酸塩としてケイ酸アルカリ金属塩を用いることが多いが、この場合、形成される保護層中にはアルカリ金属元素が多く含まれることになる。しかし、このアルカリ金属元素は、水中に容易に溶出する成分であるため、保護層の耐水性を低下させる要因となり易い。そこで、上述のように保護層中のアルカリ金属元素の含有量を2質量%以下とすることによって、このアルカリ金属元素による耐水性の低下を大幅に抑制することが可能となる。
さらにまた、本発明の希土類磁石は、保護層がチタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含むとより好ましい。これにより、希土類磁石の耐食性が更に向上する。
また、本発明の希土類磁石の製造方法は、上記本発明の希土類磁石を好適に製造し得る方法であって、少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体の表面に、ケイ酸アルカリ金属塩又はケイ酸アンモニウム塩を含み且つ酸性を有する水溶液(以下、「処理液」という)を接触させて、かかる表面上に、ケイ素、酸素及び磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含む保護層を析出させる工程を有することを特徴とする。


上記本発明の製造方法においては、処理液を磁石素体に接触させることによって、磁石素体の表面を溶解するとともに、この表面上に保護層の構成材料を析出させて保護層を形成する。このような製造方法によれば、磁石素体に処理液を接触させるという簡便な方法で、上述したような耐水性及び耐食性の高い保護層を形成することができる。
また、従来のように処理液中に磁石素体を浸漬して塗布を行う方法では、処理液の流動等が生じて均一な厚さの保護層を形成し難かったのに対し、本発明の製造方法では、磁石素体の表面上に保護層の構成成分を析出させているため、磁石素体の全面にほぼ均一な厚さの保護層を形成することができる。これによって、優れた耐食性及び耐水性を有する希土類磁石が得られるほか、良好な寸法精度が得られるようにもなる。
上記本発明の製造方法においては、処理液を接触させた後、処理液が付着した状態の保護層を洗浄する工程を更に実施することが好ましい。これにより、保護層に付着した余分な処理液を除去することができ、より均一な厚さの保護層を形成することができる。また、酸性の処理液が付着したままであると、希土類磁石(磁石素体)の劣化が早まる場合がある。したがって、保護層形成後に処理液を除去することで、このような劣化のおそれを低減することもできる。
上記本発明の希土類磁石の製造方法において、処理液として、ケイ酸イオン以外の金属イオンを更に含むものを用い、これにより、この金属イオンに由来する金属元素を更に含む保護層を形成させることがより好ましい。こうすれば、希土類磁石の耐食性が更に向上するようになる。
ここで、本発明の希土類磁石の製造方法に用いる処理液は、酸化剤を含むとより好適である。処理液が酸化剤を含むものであると、磁石素体の表面をより均一に溶解することができ、保護層をより良好に形成することができる。また、保護層形成時において酸に由来する水素の発生を抑制することができ、磁石素体に水素が吸蔵されることによる耐食性の低下を防ぐことが可能となる。
特に、処理液は、硝酸又は硝酸の塩を含むと更に好ましい。硝酸又は硝酸の塩は、処理液中の酸化剤として特に良好に機能する。なかでも、硝酸は、それ自体が酸及び酸化剤の両方として働くことができるため特に好適である。
本発明によれば、簡便な方法で形成可能であり、優れた耐水性を有し、しかも優れた耐食性を有する保護層を備える希土類磁石及びその製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石を示す図である。また、図2は、図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、希土類磁石1は、磁石素体2と、その表面上に形成された保護層4とから構成されるものである。
磁石素体2は、希土類元素(R)及び鉄(Fe)を含有する永久磁石であると好ましい。ここで、希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。なお、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
なかでも、希土類元素としては、Nd、Sm、Dy、Pr、Ho及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、これらの元素に加え、La、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有するとより好適である。磁石素体2に主として含まれる希土類元素としては、特にNdが、優れた磁気特性等を発揮し得るため好ましい。
また、磁石素体2は、鉄以外の遷移元素、例えば、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含んでいてもよい。
より具体的には、磁石素体2の構成材料としては、R及びFeに加えてホウ素(B)を含む、R−Fe−B系のものが好ましい。このような材料は実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有しており、また、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及び、ホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有している。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相であり、このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
このようなR−Fe−B系の構成材料においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保磁力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
また、Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であると残留磁束密度が小さくなり、また、90原子%を超えると保磁力が小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成されやすく、これにより保磁力が小さくなる傾向にあり、28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これにより残留磁束密度が小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−B系におけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体2の磁気特性が小さくなる傾向にある。
また上記構成材料におけるBの一部は、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)又は銅(Cu)等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、保磁力の向上や製造コストの低減等を図る観点から、上記構成に加え、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等の元素を更に含んでいてもよい。なかでも、磁石素体2がAl及び/又はCuを更に含むと好ましい。これらの含有量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、構成原子の総量に対して10原子%以下とすることが好ましい。
また、その他、不可避的に混入する成分としては、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、カルシウム(Ca)等が考えられる。これらは構成原子の総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
保護層4は、ケイ素(Si)、酸素(O)及び磁石素体2に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同種の金属元素を含む組成を有する層である。かかる保護層4は、例えば、以下のような構造を有している。すなわち、保護層4は、一般式MO・nSiO(Mは、磁石素体2と同種の金属元素)で表されるケイ酸塩を含むものである。これらのケイ酸塩は、SiOの正四面体が規則的に連鎖して配列し、その隙間に上記Mで表される金属のイオンが入った構造のイオン結晶であると考えられる。なお、保護層4は、これらのケイ酸塩のほかに、二酸化ケイ素や、磁石素体2中の金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩等を更に含有していてもよい。
保護層4に含まれるケイ酸塩は、特に、Mとしてアルカリ金属以外の金属元素を含む場合に水に対する溶解性が極めて低いものである。したがって、このようなケイ酸塩を含む保護層4は、希土類磁石1に対して優れた耐水性を付与し得る。また、このケイ酸塩を含む保護層4は、磁石素体2と同じ金属元素を含むことから、磁石素体2に対する密着性が良好である。
保護層4においては、磁石素体2と同種の金属元素のうちの少なくとも一種は、この保護層4の表面側(磁石素体2と反対の表面側)から磁石素体2側に向かって濃度が大きくなっている。このような構成の保護層4は、全ての金属元素が略均一に含まれている場合に比して、磁石素体2との界面近傍で磁石素体2との組成が近くなるため、磁石素体2に対する密着性が極めて良好である。また、このようにして金属元素を含む保護層4は、応力が発生し難いためクラック等を生じ難い。したがって、かかる保護層4を備える希土類磁石1は、保護層4にクラック等が生じることによる劣化も少ないものとなる。なお、保護層4中の金属元素の濃度は、例えば、オージェ電子分光法によって測定することができる。この場合の濃度とは、かかる測定法によって測定された金属元素の総量に対する、該当金属元素の割合をいう。
また、保護層4は、磁石素体2と同種の金属元素の濃度が、磁石素体中の当該金属元素の濃度よりも高い部分を含んでいると好ましい。これにより、保護層4の緻密性や磁石素体2に対する密着性が更に良好となり、希土類磁石1の耐食性が一層向上する。このような金属元素は、保護層4中において、上述したような磁石素体に近づくにつれて濃度が大きくなるものであると更に好ましい。さらに、保護層4に含まれる磁石素体2と同種の金属元素は、磁石素体2との界面部分から当該保護層4の厚さ方向の中央よりも表面側までの領域に少なくとも含まれていると好ましく、保護層4の表面部分まで含まれているとより好ましい。
保護層4において、Siの含有量は、保護層4の総量に対してSiOに換算して20〜95質量%であると好ましい。また、保護層4に含まれる磁石素体2と同種の金属元素の総含有量は、Siの100質量部に対して10〜200質量部であると好ましい。
また、保護層4は、磁石素体2が鉄を含む場合、磁石素体2と同種の金属元素として鉄を含むことが好ましい。この場合、鉄は、保護層4の表面側から磁石素体2側に向かって濃度が大きくなっているとより好ましい。保護層4中の鉄は、上述したケイ酸塩中のMで表される金属元素として含まれるほか、酸化物や水酸化物の状態で分散して含まれていてもよい。保護層4及び磁石素体2が鉄を含むことで、両者の密着性が更に向上する。
また、鉄は、イオンの電界強度が高いことから、保護層4中のケイ素や酸素との親和性が高く、保護層4の構造をより緻密にでき、保護層4による耐水性を一層向上させ得る。さらに、鉄は、嫌気性接着剤の硬化触媒としても機能することから、鉄を含む保護層4は、接着剤等による接着の際に優れた接着性を発揮し得る。保護層4における鉄の含有量は、Siの100質量部に対して100質量部以下であると好ましい。
保護層4は、磁石素体2と同種の金属元素として、磁石素体2に含まれるものと同じ希土類元素を含有していると好ましい。例えば、磁石素体2が希土類元素として主にNdを含む場合、保護層4もNdを含むことが好ましい。磁石素体2に複数種の希土類元素が含まれる場合は、これらのうちの1種又は複数種を含んでいてもよい。
保護層4中の希土類元素は、鉄と同様にケイ酸塩のMで表される金属元素として、または、酸化物や水酸化物の化合物として、保護層4中に分散した状態で含まれる。このように、保護層4が磁石素体2と同じ希土類元素を含むことで、磁石素体2と保護層4との密着性が良好となる。その結果、保護層4が磁石素体2から剥離し難くなる等、希土類磁石1の耐食性が更に向上する。保護層4における希土類元素の含有量は、Siの100質量部に対して100質量部以下であると好ましい。
また、磁石素体2がAlを含む場合、保護層4はAlを含むことが好ましく、Alは保護層4における表面側から磁石素体2側に向かって濃度が大きくなっているとより好ましい。Alは、上記のケイ酸塩のMで表される金属元素として含まれるほか、このケイ酸塩のSiの一部を置換してアルミノケイ酸塩として含まれる場合や、酸化物や水酸化物等の化合物として含まれる場合がある。Alイオンは、Feと同様に電界強度が高く、ケイ酸イオン等とのイオン結合を強く生じることから、保護層4がAlを含有すると、この保護層4による耐食性が一層向上する傾向にある。保護層4において、Alの含有量は、Siの100質量部に対して100質量部以下であると好ましい。
さらに、磁石素体2がCuを含む場合、保護層4はCuを含むことが好ましい。Cuは、Feと同様に嫌気性接着剤の硬化触媒として機能し得ることから、Cuを更に含む保護層4を備える希土類磁石1は、他の部材等に嫌気性接着剤を用いて接着する場合に、優れた接着性を発揮し得るようになる。保護層4におけるCuの含有量は、Siの100質量部に対して30質量部以下であると好ましい。
さらにまた、保護層4は、磁石素体2に含まれる金属元素以外であって、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びマンガン(Mn)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含むと一層好ましい。保護層4がこれらの元素を含むことで、更に優れた耐食性が得られるようになる。
上述した構成を有する保護層4は、アルカリ金属元素の含有量が2質量%以下であると好ましく、1質量%以下であるとより好ましく、実質的にアルカリ金属元素を含有しないことが更に好ましい。アルカリ金属元素は、水中に溶出しやすい等、保護層4の耐水性を低下させる成分であることから、アルカリ金属元素の含有量を上述のようにすることで、保護層4は一層優れた耐水性を発揮し得るものとなる。また、アルカリ金属元素は、嫌気性接着剤による接着性を低下させる傾向にもある。したがって、希土類磁石1の接着性を良好にする観点からも、アルカリ金属元素の含有量を上述した条件を満たすようにすることが望ましい。
ここで、アルカリ金属元素の含有量とは、保護層4の構成元素を蛍光X線分析、オージェ電子分光法等で分析したときに検出される元素の総量中のアルカリ金属元素の質量%で表すことができる。また、「実質的にアルカリ金属元素を含有しない」とは、これらの分析でアルカリ金属元素が検出されない態様をいうものとする。
次に、上記構成を有する希土類磁石1の好適な製造方法について説明する。
まず、磁石素体2は、粉末冶金法により製造することができる。この方法においては、まず、鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕する。その後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるようにする。こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場のなかで、0.5〜5t/cmの圧力で成形する。
その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空下中、1000〜1200℃で0.5〜10時間焼結させた後に急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施し、必要に応じて焼結体を所望の形状(実用形状)に加工することにより、磁石素体2が得られる。
このようにして磁石素体2を得た後、後述の保護層4を形成する工程を実施する前に、磁石素体2に対して酸洗浄を施すことが好ましい。酸洗浄で使用する酸としては、硝酸が好ましい。通常、鋼材等にメッキ処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いられることが多い。しかし、本実施形態での磁石素体2のように希土類元素を含む場合には、これらの酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が磁石素体2の表面に吸蔵され易く、吸蔵部位が脆化して多量の粉状未溶解物が発生する場合がある。この粉状未溶解物は、表面処理後の面粗れ、欠陥および密着不良を引き起こすおそれがある。このため、上述したような非酸化性の酸は、本実施形態においては酸洗浄処理液に含有させないことが好ましい。したがって、酸洗浄においては、水素の発生が少ない酸化性の酸、例えば硝酸を用いることが好ましい。
このような酸洗浄による磁石素体2の表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。こうすれば、磁石素体2の表面の加工による変質層や酸化層をほぼ完全に除去することができ、後述する保護層4を良好に形成することができる。
酸洗浄に用いられる硝酸の濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。硝酸濃度が高すぎると、磁石素体2の溶解速度が極めて速く、溶解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量処理でばらつきが大きくなって、製品の寸法精度の維持が困難となる傾向がある。また、硝酸濃度が低すぎると、溶解量が不足する傾向がある。このため、硝酸濃度は1規定以下とすることが好ましく、特に0.5〜0.05規定とすることが好ましい。また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/l程度とする。
酸洗浄後、磁石素体2の表面に付着した未溶解物や残留酸成分を除去するため、磁石素体2に対して更に洗浄、好ましくは超音波を使用した洗浄を行うことが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体2の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中で行うのが好ましい。さらに、かかる洗浄の前後及び上記処理液による処理の各過程において、必要に応じて水洗を行ってもよい。
その後、磁石素体2を、ケイ酸イオンを含み且つ酸性を有する水溶液(処理液)に接触させて、磁石素体の表面上に上記構成を有する保護層4を析出させる工程を実施する。かかる工程に用いる処理液のpHは、0〜5であると好ましく、1〜4であるとより好ましい。処理液のpHが低すぎると、磁石素体2が過度に溶解されて所望の形状の希土類磁石が得られ難くなるおそれがある。一方、pHが5を超えると、処理液の安定性が低い状態となり、均一な厚さの保護層4が形成され難くなる傾向にある。
ケイ酸イオンを含む処理液は、例えば、処理液中にケイ酸塩が溶解することで得られるものである。このケイ酸塩としては、nAO・mSiO(Aはアルカリ金属元素)で表されるアルカリ金属塩や、ケイ酸アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。なかでも、ケイ酸アルカリ金属塩は、容易に保護層を形成し得ることから好ましい。ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸セシウム等が挙げられる。処理液中のケイ酸イオンの濃度は、SiOに換算して0.01〜4mol/Lであると好ましい。
また、保護層4を形成するための処理液は、シリカ粒子を含み酸性を有する水溶液であってもよい。このような処理液としては、シリカ粒子を含む水性ゾル等に酸を添加したもの等が挙げられる。水性ゾルとしては、例えば、スノーテックス(日産化学工業株式会社製)、クォートロン(扶桑化学工業株式会社製)等が例示できる。なお、処理液は、ケイ酸イオンとシリカ粒子との両方を含むものであってもよい。
処理液は、ケイ酸イオンやシリカ粒子を含む水溶液中に酸を含有させることで酸性とすることができる。酸性とするための酸は、特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、リンゴ酸、マロン酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸を適用することができる。この酸の濃度を調整することによって、処理液のpHを上述したような好適な範囲に調整することができる。
処理液に用いる酸としては、酸化性を有する酸が好ましい。酸化性を有する酸としては、上述したような酸に加え、酸化剤を更に含有するものが挙げられる。酸化剤としては、硝酸又は硝酸塩、亜硝酸又は亜硝酸塩、過酸化水素、過マンガン酸塩等が例示できる。処理液が酸化性を有する酸を含むことで、磁石素体2の主相が良好に溶解され、均一な厚さを有する保護層4が形成されるようになる。また、酸性の処理液による処理中には、上記の酸洗浄時と同様に水素による磁石素体2の脆化の問題が生じる場合があるが、酸化性を有する酸を含むことによって、このような問題を低減することが可能となる。
特に、処理液は、酸化性を有する酸として、硝酸、過塩素酸又はクロム酸を含むことが好ましい。これらは、単独で酸及び酸化剤の両方として機能し得る。そのため、これらを含むことによって、処理液は酸化剤を含まなくとも良好な酸性及び酸化性を有するものとなる。なかでも、酸化性を有する酸としては、硝酸が、酸及び酸化剤の両方の特性を良好に具備することから特に好ましい。なお、処理液は、このような単独で酸及び酸化剤として機能する酸を含む場合であっても、更に酸化剤を含んでいてもよい。
また、処理液中には、保護層4中に磁石素体2に由来する金属元素以外の金属元素を含有させるために、これらの金属元素の化合物を更に添加してもよい。このような金属元素としては、Fe、希土類元素、Al、Cu、Ti、Zr、V、Mo、W及びMnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素が挙げられる。またこれら以外の磁石素体2に含まれる金属元素の化合物を別途添加してもよい。
このような金属化合物としては、例えば金属塩が挙げられる。かかる金属塩としては、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄、硝酸ネオジム、硫酸ネオジム、硫酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸カリウム、硝酸銅、硫酸銅、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム、硫酸マンガン、硝酸マンガン、ぎ酸マンガン、過マンガン酸カリウム等が例示できる。これらの金属塩の配合量は、処理液中、0.01mol/L〜0.5mol/Lであると好ましい。
磁石素体2に処理液を接触させる方法としては、磁石素体2を処理液中に浸漬する浸漬法や、磁石素体2に処理液を噴霧するスプレー法が挙げられる。なかでも、磁石素体2の全面に処理液を簡便に付着させ得る浸漬法が好適である。処理中の処理液の温度は、0〜90℃であると好ましく、10〜60℃であるとより好ましい。また、浸漬法による場合、磁石素体2を処理液に浸漬する時間は10秒〜30分が好ましい。なお、これらの条件は、所望とする保護層4の厚さ等に応じて適宜変更できる。
このような工程により磁石素体2の表面上に保護層4が形成される。保護層4は、必ずしも限定されないが、例えば、まず、ケイ酸イオンを含む処理液を用いた場合、以下のようなメカニズムに基づいて生成すると推測される。すなわち、まず、処理液は、酸性(pH0〜4付近)の状態ではケイ酸イオンがほぼ安定に分散されているものの、pHが高くなり中性付近になると不安定となり、ケイ酸イオンの重縮合に伴うゲル化が進行し易くなるという特性を有している。
磁石素体2に、酸性状態にある処理液を接触させると、磁石素体2の表面が酸によって溶解され、この反応により磁石素体2の表面近傍の処理液のpHが高くなる。このため、磁石素体2の表面近傍領域では、処理液が局所的に上述したような不安定な状態となる。その結果、この表面近傍領域において、ケイ酸イオンの重縮合反応が進行して重合物が析出する。また、ケイ酸イオンと磁石素体から溶出した金属(例えば鉄)イオンとが反応して不溶性の塩が析出する。そして、これらの析出物によって、本実施形態における保護層4が形成されると考えられる。なお、従来のようなケイ酸アルカリ金属塩を水に溶解させただけの水溶液は、塩基性を示す安定な溶液となるが、このような水溶液では、上述したような保護層4の析出は生じ得ない。
また、シリカ粒子を含む処理液を用いた場合、下記の(1)及び(2)のようなメカニズムによって保護層4が形成されると推測される。すなわち、まず、酸性を有する水溶液(処理液)の接触により、その部分の磁石素体2が溶解する。(1)このように磁石素体2の溶解が生じると、かかる反応によってその部分における処理液の酸性が弱まる(pHが上昇する)。こうなると、処理液中の酸性が弱まった部分でシリカ粒子の分散性が低下し、これにより磁石素体2の表面にシリカ粒子が付着する。この際、磁石素体2から溶出した金属元素は、処理液中の成分と反応等して上述したような水酸化物等の化合物を形成し、シリカ粒子とともに磁石素体の表面上に析出する。
また、(2)処理液の接触により磁石素体2が溶解すると、磁石素体近傍の処理液中に磁石素体2を構成する金属元素に由来する金属イオン等が分散する。この金属イオン等は、処理液中においてシリカ粒子の表面に吸着等によって付着し、ケイ酸塩を形成すると考えられる。この金属イオンが付着したシリカ粒子は、その表面のゼータ電位が変化するため凝集し易くなる。したがって、磁石素体2表面の近傍においてはシリカ粒子が凝集し、この凝集したシリカ粒子が磁石素体2の表面に付着する。この際、シリカ粒子に付着した金属イオン等は、ケイ酸塩として磁石素体2の表面上に析出する。ただし、保護層4の形成メカニズムは必ずしもこれらに限定されない。
保護層4の形成後には、この保護層4の表面に付着した処理液やその反応後の副生物、磁石素体2から溶解した成分等を除去するために、保護層4の表面を水洗することが好ましい。特に、処理液は酸性を有しているため希土類磁石1を腐食させる要因となり易いほか、処理液に含まれるアルカリ金属元素が残存していると耐水性や接着性の低下を引き起こし易いため、保護層4表面に残存した処理液は確実に除去することが好ましい。保護層4の水洗後には、温風乾燥や自然乾燥により保護層4を乾燥させる処理を行うと更に好ましい。
また、保護層4には、更に熱処理を施してもよい。熱処理によって、保護層4を構成するケイ酸イオンからなる重合物の重縮合反応が更に進行し、保護層4の耐水性が更に向上する傾向にある。熱処理は、保護層4形成後の希土類磁石1を加熱することで行うことができ、加熱温度は、例えば、50〜450℃とすることができる。
このような製造方法によって、磁石素体2の表面に保護層4を備える希土類磁石1が得られる。保護層4は、上述した析出反応によって形成されるものであるが、この反応は、磁石素体2表面の処理液と接触した全ての部分で均一に生じ得る。したがって、従来、塗布によって形成させた保護層は、塗布液の流動等による付着量のばらつきに起因して厚さが不均一となり易かったのに対し、本実施形態の方法では、たとえ磁石素体2が表面に凹凸を有しているとしても、この凹凸面を覆うような均一な厚さを有する保護層4を形成し得る。また、上述の如く、析出はケイ酸イオンの反応によって生じることから、ケイ酸イオンの原料であるケイ酸塩としてケイ酸アルカリ金属塩を用いた場合であっても、保護層4中に耐水性を低下させるアルカリ金属元素が残存することが極めて少なくなる。
したがって、このような製造方法によれば、保護層4の厚さを均一にできるため、良好な寸法精度が得られるほか、保護層4の厚さを必要最小限とすることができ、低コストで希土類磁石1を製造することが可能となる。そして、このようにして製造された希土類磁石1は、ケイ素及び酸素を含み、且つ、アルカリ金属元素の含有量が少ない均一な厚さの保護層を備えることから、優れた耐食性及び耐水性を発揮し得るものとなる。
なお、本発明の希土類磁石及びその製造方法は、必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、希土類磁石1は、保護層4の表面上に、希土類磁石1を保護するための耐食性層を更に備えるものであってもよい。このような耐食性層としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものを特に制限なく適用でき、樹脂層、無機化合物層、金属層等が挙げられる。これにより、希土類磁石1の耐食性等を更に向上させることが可能となる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の製造]
(実施例1〜7)
まず、粉末冶金法により、組成が27.6Nd−4.9Dy−0.5Co−0.4Al−0.07Cu−1.0B−残部Fe(数字は重量百分率を表す。)である鋳塊を作製し、これを粗粉砕した。その後、不活性ガスによるジェットミル粉砕を行って、平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。得られた微粉末を金型内に充填し、磁場中で成形した。次いで、真空中で焼結後、熱処理を施して焼結体を得た。得られた焼結体を20mm×10mm×2mmの寸法に切り出し加工し、磁石素体を得た。次に、得られた磁石素体に対し、2%HNO水溶液中に2分間浸漬する酸洗浄を行った後、超音波洗浄を行った。
その後、磁石素体を、ケイ酸イオン又はシリカ粒子を含み酸性を有する水溶液(処理液)中に浸漬させることにより、磁石素体の表面上に保護層を析出させた。これにより、磁石素体の表面に保護層を備える希土類磁石を得た。なお、実施例1〜においては、ケイ酸イオンの原料であるケイ酸塩又はシリカ粒子、pH及び浸漬時間をそれぞれ表1に示すように変化させて、各種の希土類磁石を得た。この際、処理液のpHは、処理液中に酸として硝酸を添加することにより調整した。また、表中、3号水ガラス(富士化学(株)製)は、ケイ酸塩ガラスであり、スノーテックスC(日産化学工業(株)製)はシリカ微粒子が分散した水性ゾルである。
Figure 0004173893
各実施例で得られた希土類磁石の保護層の膜厚を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−5400;日本電子(株)製)により測定した。得られた結果は表1に併せて示した。また、一例として、実施例1の希土類磁石で得られた走査型電子顕微鏡写真を図3に示した。この図3は、実施例1の希土類磁石10の角部を拡大して示したSEM画像である。同図に示すように、希土類磁石10は、磁石素体12の表面上に均一な厚さの保護層14を備える構造を有している。
さらに、実施例1で得られた希土類磁石の表面の組成(保護層14の組成)を、蛍光X線分析装置(ZSX−100e、(株)リガク製)により分析した。その結果、表面にはSi、Al、Cuが確認された。また、かかる分析ではNaは検出されなかった。
また、実施例1の希土類磁石について、オージェ電子分光法(アルバック・ファイ(株)製SAM680)により保護層に含まれる元素の深さ方向のプロファイルを分析した。その結果、保護層14にはFe、Nd及びOが更に含まれていることが確認された。このオージェ分光法による分析結果を図4に示す。図4中、横軸は、Arイオンによる希土類磁石のスパッタ時間であり、表面からの深さに比例している。また、縦軸は、該当するスパッタ時間において測定された各元素の強度を示している。かかる分析においては、スパッタ時間0〜7分では保護層を、スパッタ時間12分以上では磁石素体を分析していると考えられる。また、これらの間の時間は、表面粗さの影響により、場所によって保護層又は磁石素体のいずれかを測定していると考えられる。
図4中、L11はFe、L12はSi、L13はNd、L14はOの強度をそれぞれ示している。図4より、保護層の表面から磁石素体との界面に向かって、Ndの濃度が徐々に大きくなっていることが確認された。また、保護層は、磁石素体内部よりもNd濃度が大きくなっている部分を含んでおり、保護層中のNd濃度は、特に磁石素体との界面近傍部分で大きくなっていることが確認された。
さらに、実施例7で得られた希土類磁石の表面の組成(保護層の組成)を、上記と同様にして蛍光X線分析装置により分析した結果、表面にはSi、Al、Cuが確認され、Naは1%以下であった。また、実施例7の希土類磁石について、上記と同様にオージェ電子分光法による分析を行った結果、保護層中にFe及びOが更に含まれていることが確認された。このオージェ分光法による分析結果を図5に示す。かかる分析においては、スパッタ時間0〜11分では保護層を、スパッタ時間20分以上では磁石素体を分析していると考えられる。また、これらの間の時間は、表面粗さの影響により、場所によって保護層又は磁石素体のいずれかを測定していると考えられる。
図5中、L21はFe、L22はSi、L23はAl、L24はOの強度をそれぞれ示す。図5より、保護層の表面から磁石素体との界面に向かって、Fe及びAlの濃度が徐々に大きくなっていることが確認された。また、保護層は、磁石素体内部よりもAl濃度が大きくなっている部分を含んでおり、このAl濃度は、特に磁石素体との界面近傍部分で大きくなっていることが確認された。
また、実施例2〜6の希土類磁石の表面組成を上記と同様に分析したところ、全ての希土類磁石において、Si、Fe、Nd、O、Al及びCuが保護層に含まれていることが確認された。さらに、実施例5の希土類磁石ではMnが、実施例6の希土類磁石ではVが、保護層に含まれていることがそれぞれ確認された。
(比較例1)
実施例1〜7と同様にして得られた磁石素体をそのまま希土類磁石とした。
(比較例2)
実施例1〜7と同様にして得られた磁石素体を、10%水ガラス水溶液(pH約11.5)に浸漬した後に引き上げた。この水ガラスが付着した磁石素体を水洗せずに150℃で20分乾燥させて、磁石素体の表面にケイ酸ナトリウム被膜を備える希土類磁石を得た。ケイ酸ナトリウム被膜の膜厚は、0.3μmであった。
そして、実施例1と同様にして希土類磁石の表面組成を分析したところ、Si及びNaがケイ酸ナトリウム被膜中に含まれていることが確認された。また、オージェ電子分光法による分析結果より、ケイ酸ナトリウム被膜中にはNd及びFeは含まれていないことが確認された。
[特性評価]
(PCT試験による永久減磁率の測定)
実施例1〜7及び比較例1〜2の希土類磁石をそれぞれ用い、以下に示すようにしてこれらの永久減磁率を測定した。すなわち、まず、製造後の希土類磁石の磁束を測定した。次いで、この希土類磁石に対し、120℃、0.2MPa、100%RH、100時間の条件でプレッシャー・クッカー・テスト(PCT試験)を行った。それから、PCT試験後の希土類磁石を再度着磁した後、この希土類磁石の磁束を測定した。そして、試験前に得られた磁束の値に対して試験後に得られた磁束の値が減少した割合(%)を算出し、これを永久減磁率とした。得られた結果を表2に示す。
(耐水性試験)
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた希土類磁石を、それぞれ50gの蒸留水中に1個浸漬し、25℃で24時間放置した。そして、各希土類磁石を浸漬させた蒸留水それぞれについてICP分析を行い、希土類磁石から蒸留水中に溶出したSiの量を測定した。蒸留水中へのSiの溶出が多かった希土類磁石ほど、保護層中の成分が溶出し易く、耐水性が低いことを示す。得られた結果を表2に示す。
Figure 0004173893
表1より、実施例1〜7の希土類磁石は、比較例1〜2の希土類磁石に比して、永久減磁率が小さく、また、蒸留水への浸漬による保護層からのSi溶出量も少ないことが確認された。これより、実施例の希土類磁石は、比較例のものに比して、耐食性及び耐水性が優れていることが判明した。
(接着性試験)
実施例1及び比較例2で得られた希土類磁石に、それぞれ嫌気性アクリル接着剤(ロックタイト392)を塗布し、この接着剤が塗布された面を表面が洗浄された鉄板に圧着した後、150℃で30分乾燥した。各希土類磁石の鉄板に対する接着性を、圧縮せん断試験により測定した。この圧縮せん断試験は、室温で5mm/分の条件で行った。この圧縮せん断試験により得られた接着力の値は、実施例1の希土類磁石では323kg/cmであり、比較例2の希土類磁石では41kg/cmであった。これより、実施例1の希土類磁石によれば、比較例2の希土類磁石に比して、接着剤を介して他の部材に接着する際に、高い接着性が得られることが確認された。
好適な実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石を示す図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。 実施例1の希土類磁石における角部の表面近傍の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例1の希土類磁石のオージェ電子分光法による分析結果を示す図である。 実施例7の希土類磁石のオージェ電子分光法による分析結果を示す図である。
符号の説明
1…希土類磁石、2…磁石素体、4…保護層。

Claims (13)

  1. 少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体と、この磁石素体の表面上に形成された保護層と、を備え、
    前記保護層は、ケイ素、酸素及び前記磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含み、
    前記保護層に含まれる前記金属元素のうちの少なくとも一種は、当該保護層における表面側から前記磁石素体側に向かって濃度が大きくなっている、
    ことを特徴とする希土類磁石。
  2. 前記保護層に含まれる前記金属元素のうちの少なくとも一種は、当該保護層の厚さ方向の中央よりも表面側にまで少なくとも含まれており、前記表面側から前記磁石素体側に向かって濃度が大きくなっている、ことを特徴とする請求項1記載の希土類磁石。
  3. 前記保護層は、前記金属元素のうちの少なくとも一種の濃度が、前記磁石素体中の当該金属元素の濃度よりも高い部分を含む、ことを特徴とする請求項1又は2記載の希土類磁石。
  4. 前記磁石素体及び前記保護層は、鉄を含み、前記保護層中の鉄は、当該保護層における表面側から前記磁石素体側に向かって濃度が大きくなっている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 前記保護層は、前記磁石素体に含まれる希土類元素のうちの少なくとも一種と同じ希土類元素を含み、該希土類元素は、当該保護層における表面側から前記磁石素体側に向かって濃度が大きくなっている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  6. 前記磁石素体及び前記保護層は、アルミニウムを含み、前記保護層中のアルミニウムは、当該保護層における表面側から前記磁石素体側に向かって濃度が大きくなっている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  7. 前記磁石素体及び前記保護層は、銅を含む、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  8. 前記保護層は、アルカリ金属元素の含有量が2質量%以下である、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  9. 前記保護層は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含む、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  10. 少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体の表面に、ケイ酸アルカリ金属塩又はケイ酸アンモニウム塩を含み且つ酸性を有する水溶液を接触させて、前記表面上に、ケイ素、酸素及び前記磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含む保護層を析出させる工程を有する、ことを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  11. 前記水溶液を接触させた後、該水溶液が付着した状態の前記保護層を洗浄する工程を更に有する、ことを特徴とする請求項10記載の希土類磁石の製造方法。
  12. 前記水溶液として、ケイ酸イオン以外の金属イオンを更に含むものを用い、該金属イオンに由来する金属元素を更に含む前記保護層を析出させる、ことを特徴とする請求項10又は11記載の希土類磁石の製造方法。
  13. 前記水溶液は、酸化剤を含む、ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
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