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JP4224072B2 - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents
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JP4224072B2 - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類磁石及びその製造方法に関する。
希土類元素を含む希土類磁石は、優れた磁力を有するものの、主成分として酸化されやすい希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石は、希土類元素を含む磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層が設けられた構成とされることが多い。
ところで、近年では、磁石素体そのものの耐食性が改善されていることや、希土類磁石の用途によっては従来ほどの耐食性が要求されないこと等の理由によって、ある程度の耐食性を付与できる保護層を従来よりも低コストで形成することが求められる場合が増えている。
そこで、比較的低コストで形成し得る保護層としては、アルミニウムを含む保護層が挙げられる。アルミニウムを含む保護層は、従来、例えば、磁石素体に有機アルミニウムを付着させた後、熱処理する方法(特許文献1参照)や、ゾルゲル法によりアルミニウム酸化物被膜を形成する方法(特許文献2参照)等によって形成されている。
特開昭63−252405号公報 特開2001−76914号公報
しかしながら、上述した方法により形成されたアルミニウムを含む保護層は、膜が十分に緻密でない場合があった。そのため、このような保護層を備える希土類磁石は、高温・高湿環境に晒された場合に磁気特性が低下してしまうなど、希土類磁石に必要とされる耐食性を十分に有していないことも少なくなかった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で形成可能であり、しかも十分な耐食性を有する保護層を備える希土類磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の希土類磁石は、少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体と、この磁石素体の表面上に形成された保護層とを備え、保護層は、アルミニウム元素及び磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含み、且つ、この保護層は、アルミニウム元素及び/又は上記金属元素を、水酸基を有する化合物として含有しており、磁石素体は、金属元素として鉄を含み、保護層は、金属元素として鉄を含むことを特徴とする。
本発明の希土類磁石における保護層は、アルミニウム元素及び磁石素体と同種の金属元素を含み、しかも、これらの少なくとも一方を水酸基を有する化合物の状態で含む。このような保護層においては、水酸基を有する化合物が、その水酸基によって他の金属元素と相互作用し易くなっている。そのため、保護層は、金属元素と水酸基を有する化合物との結合力により、緻密な膜となっている。その結果、本発明の希土類磁石は、上記従来のような水酸基を含まないアルミニウムを含む保護層を備えるものに比して、錆等の発生が少なく優れた耐食性を有するものとなる。
また、本発明の希土類磁石において、保護層は、上述の如く、磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同一の金属元素を含有している。希土類磁石においては、このように保護層と磁石素体とが同一の金属元素を含むことから、これらの密着性が良好となっており、これによっても耐食性が高められている。
上記本発明の希土類磁石において、保護層は、磁石素体に含まれる希土類元素のうちの少なくとも一種と同一の希土類元素を含むことが好ましい。これにより、保護層と磁石素体との密着性がより良好となる。
また、磁石素体は、金属元素として鉄を更に含むと好ましく、この場合、保護層は、鉄を含有するとより好ましい。鉄は、イオンの電界強度が高いためアルミニウム化合物等に対する親和性が高い傾向にある。そのため、鉄を含むことで、保護層においてアルミニウム化合物同士も良好に結合されるようになり、希土類磁石の耐食性が更に向上する。
さらに、磁石素体は、金属元素として銅を更に含むと好ましい。この場合、保護層は、銅を含有するとより好ましい。これにより、希土類磁石の耐食性が一層向上する。
また、本発明の希土類磁石は、上述した保護層の表面上に、この保護層とは異なる耐食性層を更に備えるとより好ましい。保護層は、水酸基を有する化合物を含むことから、上記耐食性層との密着性が極めて良好なものである。したがって、このような耐食性層を備える希土類磁石は、保護層及び耐食性層の両層の保護によって磁石素体の劣化が極めて低減されるほか、耐食性層の剥離等による希土類磁石の劣化も極めて少ないものとなる。
また、本発明による希土類磁石の製造方法は、上記本発明の希土類磁石を好適に製造する方法であって、少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体の表面に、アルミニウムイオンを含み酸性を有する水溶液(以下、「処理液」という)を接触させて、この表面上に、アルミニウム元素及び磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含み、且つ、アルミニウム元素及び/又は金属元素を水酸基を有する化合物として含む保護層を形成する工程を有しており、磁石素体は、金属元素として鉄を含み、保護層は、金属元素として鉄を含むことを特徴とする。

上記本発明の製造方法においては、酸性を有する処理液の接触によって、磁石素体の表面が溶解された後、処理液中のアルミニウムイオンに由来するアルミニウム化合物、及び、処理液に溶解した磁石素体の成分由来の金属元素又はその化合物が、磁石素体の表面で同時に析出し、これによって保護層が形成される。したがって、このような製造方法によれば、磁石素体に処理液を付着させるだけで保護層が形成されることから、保護層を有する希土類磁石を簡便に得ることができる。このようして形成された保護層は、アルミニウム及び磁石素体と同種の金属元素を含有し、しかもこれらの少なくとも一方を水酸基を有する化合物として含むものであるため、上述の如く、希土類磁石に良好な耐食性を付与でき、磁気特性の劣化を低減する効果に優れるものとなる。
また、上述したアルミニウム及び金属元素等の析出による保護層の形成は、処理液が付着した磁石素体表面で均一に生じ得る。したがって、本発明の製造方法によれば、処理液が付着した全ての領域に均一な厚さで保護層を形成することができる。その結果、良好な寸法精度が得られるようになる。また、保護層の厚さを必要最小限とすることができ、低コストで希土類磁石を製造することができる。
上記本発明の製造方法においては、処理液を接触させた後、処理液が付着した状態の保護層を洗浄する工程を更に実施することが好ましい。これにより、保護層に付着した余分な処理液を除去することができ、より均一な厚さの保護層を形成することができる。また、酸性の処理液が付着したままであると、希土類磁石(磁石素体)の劣化が早まる場合がある。したがって、保護層形成後に処理液を除去することで、このような劣化のおそれを低減することもできる。
また、処理液は、酸化剤を更に含むものであるとより好ましい。処理液が酸化剤を含むものであると、磁石素体の表面をより均一に溶解することができ、保護層をより良好に形成することができる。
より具体的には、処理液は、硝酸又は硝酸の塩を含むと更に好ましい。硝酸又は硝酸の塩は、処理液中の酸化剤として特に良好に機能する。なかでも、硝酸は、それ自体が酸及び酸化剤の両方として働くことができるため特に好適である。
本発明によれば、簡便な方法で形成可能であり、しかも十分な耐食性を有する保護層を備える希土類磁石及びその製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石を示す図である。また、図2は、図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、希土類磁石1は、磁石素体2と、その表面上に形成された保護層4とから構成されるものである。
磁石素体2は、希土類元素を含有する永久磁石である。この場合、希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。なお、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
磁石素体2の構成材料としては、上記希土類元素と、希土類元素以外の遷移元素とを組み合わせて含有させたものが例示できる。この場合、希土類元素としては、Nd、Sm、Dy、Pr、Ho及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、これらの元素にLa、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有したものであるとより好適である。
また、希土類元素以外の遷移元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、Fe及び/又はCoがより好ましい。
磁石素体2の構成材料としては、特に、R−Fe−B系の構成材料が好ましい。磁石素体2がR−Fe−B系のものであると、優れた磁石特性が得られるほか、保護層4の形成による耐食性向上効果がより良好に得られるようになる。
R−Fe−B系の磁石素体2は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有し、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及びホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有する構造となっている。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相である。このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
このようなR−Fe−B系の構成材料においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保磁力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
また、Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であると残留磁束密度が小さくなり、また、90原子%を超えると保磁力が小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成されやすく、これにより保磁力が小さくなる傾向にある。また、28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これにより残留磁束密度が小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−B系におけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体2の磁気特性が低下する傾向にある。
また上記構成材料におけるBの一部は、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)又は銅(Cu)等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、保磁力の向上や製造コストの低減等を図る観点から、磁石素体2は、上記元素に加え、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等を更に含有していてもよい。なかでも、磁石素体2は、Cuを更に含むと好適である。これらの含有量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、構成原子総量に対して10原子%以下とすることが好ましい。また、その他、不可避的に混入する成分としては、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、カルシウム(Ca)等が考えられ、これらは構成原子総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
保護層4は、アルミニウム元素、及び、磁石素体2に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含む層である。この保護層4において、アルミニウム元素及び金属元素は、これらのうちの少なくとも一方が水酸基を有する化合物として含まれており、特に、水酸基を有するアルミニウム化合物が含まれると好ましい。水酸基を有する化合物としては、水酸化物やオキシ水酸化物等が挙げられる。アルミニウムの水酸化物やオキシ水酸化物としては、ベーマイト、ダイアスポア、ギブサイト、バイヤライト、無定形水酸化アルミニウム、擬ベーマイト等が例示できる。これらは中性付近の水に対する溶解性が低いものである。そのため、保護層4がこれらのアルミニウム化合物を含むことで、希土類磁石1は、湿潤環境下でも腐食し難いものとなる。保護層4中のAlの含有量は、保護層4の総質量に対してAlに換算して30質量%以上であると好ましい。これにより、保護層4は特に緻密な膜となり、希土類磁石1の耐食性が更に向上する傾向にある。
また、保護層4において、磁石素体2に含まれるものと同種の金属元素は、上記水酸化物としてのほか、金属元素単体や水酸化物以外の金属元素の化合物(金属化合物)としても含まれ得る。金属化合物としては、金属元素及び酸素を含む化合物が好適であり、具体的には金属酸化物等が挙げられる。好適な磁石素体2は、上述の如く、希土類元素及びこれ以外の遷移元素といった複数種類の金属元素を含むが、この場合、保護層4は、磁石素体2に含まれる金属元素又はその化合物として1種類のみを含んでいてもよく、複数種類を含んでいてもよい。
保護層4に含まれる金属又は金属化合物としては、まず、磁石素体2に含まれるのと同じ希土類元素を有するものが好ましい。例えば、磁石素体2がNdを含む場合、保護層4はNd又はNd化合物を含むと好ましい。このように保護層4が磁石素体2と同じ希土類元素を含むことで、磁石素体2と保護層4との密着性が良好となる。その結果、保護層4が磁石素体2から剥離し難くなる等、希土類磁石1の耐食性が更に向上する。
また、磁石素体2がFeを含む場合は、保護層4は、Fe又はFe化合物を含有することが好ましい。このように保護層4がFe又はFe化合物を含む場合、Feの親和性の高さからアルミニウム化合物等との結合力が更に良好となり、希土類磁石1の耐食性が一層向上する。また、Feは、嫌気性接着剤の硬化触媒としても機能し得ることから、保護層4がFe又はFe化合物を含むことで、希土類磁石1を他の部材に嫌気性接着剤を用いて接着する場合等に優れた接着性が得られる傾向にある。
さらに、磁石素体2がCuを含む場合、保護層4はCu又はCu化合物を含むことが好ましい。Cuは、Feと同様に嫌気性接着剤の硬化触媒として機能し得ることから、Cuを更に含む保護層4を備える希土類磁石1は、他の部材等に嫌気性接着剤を用いて接着する場合に、優れた接着性を発揮し得るようになる。
また、磁石素体2が上記の金属元素以外の金属元素を更に含有する場合は、保護層4は、これらの金属元素やその化合物を更に含有していてもよい。なお、保護層4に含まれる上記金属元素又は金属化合物は、保護層4の表面側から磁石素体2との界面側に向かって、その濃度が大きくなっていると好ましい。保護層4がこのような構成を有していると、保護層4の磁石素体2に対する密着性が一層良好となる傾向にある。
さらに、保護層4は、磁石素体2に含まれるもの以外の金属元素を更に含有していてもよい。このような金属元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)又はマンガン(Mn)が挙げられる。保護層4がこれらの元素を含むと、希土類磁石1の耐食性が一層向上する傾向にある。
保護層4は、上述したアルミニウム化合物及び金属や金属化合物が均一に含まれる層である。この保護層4においては、アルミニウム化合物と金属や金属化合物は別々に含まれていてもよく、所定の結合を生じた状態で含まれていてもよい。また、保護層4には、これらが反応して生じた他の化合物が更に含まれていてもよい。
次に、上記構成を有する希土類磁石1の好適な製造方法について説明する。
まず、磁石素体2は、粉末冶金法により製造することができる。この方法においては、まず、鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕する。その後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるようにする。こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場のなかで、0.5〜5t/cmの圧力で成形する。
その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空下中、1000〜1200℃で0.5〜10時間焼結させた後に急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施し、必要に応じて焼結体を所望の形状(実用形状)に加工することにより、磁石素体2が得られる。
このようにして磁石素体2を得た後、後述の保護層4を形成する工程を実施する前に、磁石素体2に対して酸洗浄を施すことが好ましい。酸洗浄で使用する酸としては、硝酸が好ましい。通常、鋼材等にメッキ処理を施す場合、塩酸、硫酸等の酸化性を有しない非酸化性の酸が用いられることが多い。しかし、本実施形態での磁石素体2のように希土類元素を含む場合には、これらの酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が磁石素体2の表面に吸蔵され易く、吸蔵部位が脆化して多量の粉状未溶解物が発生する場合がある。この粉状未溶解物は、表面処理後の面粗れ、欠陥および密着不良を引き起こすおそれがある。このため、上述したような非酸化性の酸は、本実施形態においては酸洗浄処理液に含有させないことが好ましい。したがって、酸洗浄においては、水素の発生が少ない酸化性を有する酸、例えば硝酸を用いることが好ましい。
このような酸洗浄による磁石素体2の表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。こうすれば、磁石素体2の表面の加工による変質層や酸化層をほぼ完全に除去することができ、後述する保護層4を良好に形成することができる。
酸洗浄に用いられる硝酸の濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。硝酸濃度が高すぎると、磁石素体2の溶解速度が極めて速く、溶解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量処理でばらつきが大きくなって、製品の寸法精度の維持が困難となる傾向がある。また、硝酸濃度が低すぎると、溶解量が不足する傾向がある。このため、硝酸濃度は1規定以下とすることが好ましく、特に0.5〜0.05規定とすることが好ましい。また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/l程度とする。
酸洗浄後、磁石素体2の表面に付着した未溶解物や残留酸成分を除去するため、磁石素体2に対して更に洗浄、好ましくは超音波を使用した洗浄を行うことが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体2の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中で行うのが好ましい。さらに、かかる洗浄の前後及び上記処理液による処理の各過程において、必要に応じて水洗を行ってもよい。
その後、磁石素体2の表面に、アルミニウムイオンを含み酸性を有する水溶液(処理液)を接触させて、かかる表面上に、アルミニウム元素、及び、磁石素体2に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含む保護層を形成する。
アルミニウムイオンは、処理液中において、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、アルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物等のアルミニウム化合物が溶解して形成されたものである。なお、処理液中においては、これらのアルミニウム化合物の全てがアルミニウムイオンを形成していなくてもよく、一部が化合物のまま又は処理液中の他の成分と塩を形成した状態で含まれていてもよい。処理液中のアルミニウムイオンの濃度は、0.001〜2mol/Lであると好ましく、0.01〜0.5mol/Lであるとより好ましい。
アルミニウムイオンを形成するアルミニウム化合物としては、上述したなかでも、硝酸アルミニウムが好ましい。硝酸アルミニウムは、処理液中で酸化剤としても機能することができるため、これを含むことで、後述するような酸化剤を含むことによる種々の効果が得られるようになる。
処理液は、上述の如く、酸性を有している。処理液のpHは、具体的には、0〜6であると好ましく、1〜5であるとより好ましい。処理液のpHが低すぎると、磁石素体2が過度に溶解されて所望の形状の希土類磁石が得られ難くなるおそれがある。一方、pHが5を超えると、磁石素体2に接触する時の処理液の安定性が低い状態となり、均一な厚さの保護層4が形成され難くなる傾向にある。
処理液の酸性は、処理液中に酸を含有させることで調整することができる。酸としては、特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、リンゴ酸、マロン酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸を適用することができる。この酸の濃度を調整することによって、処理液のpHを上述したような好適範囲に調整することができる。
処理液は、酸として酸化性を有する酸を含むことがより好ましい。酸化性を有する酸としては、上述したような酸に加え、酸化剤を更に含有するものが挙げられる。酸化剤としては、硝酸又は硝酸塩、亜硝酸又は亜硝酸塩、過酸化水素、過マンガン酸塩等が例示できる。処理液が酸化性を有する酸を含むことで、磁石素体2の主相が良好に溶解され、均一な厚さを有する保護層4が形成されるようになる。また、酸性の処理液による処理中には、上記の酸洗浄時と同様に水素による磁石素体2の脆化の問題が生じる場合があるが、酸化性を有する酸を含むことによって、このような問題を低減することが可能となる。
特に、処理液は、酸化性を有する酸として、硝酸、過塩素酸又はクロム酸を含むことが好ましい。これらは、単独で酸及び酸化剤の両方として機能し得る。そのため、これらを含むことによって、処理液は酸化剤を含まなくとも良好な酸性及び酸化性を有するものとなる。なかでも、酸化性を有する酸としては、硝酸が、酸及び酸化剤の両方の特性を良好に具備することから特に好ましい。なお、処理液は、このような単独で酸及び酸化剤として機能する酸を含む場合であっても、更に酸化剤を含んでいてもよい。
また、処理液中には、保護層4中に上述したような磁石素体2に含まれるもの以外の金属元素を含有させるために、これらの金属元素の化合物を更に添加することができる。金属化合物としては、金属塩が挙げられる。かかる金属塩としては、例えば、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム、硫酸マンガン、硝酸マンガン、ぎ酸マンガン、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。これらの金属塩の配合量は、処理液中、0.01mol/L〜0.5mol/Lであると好ましい。
上述した処理液は、例えば、酸を水に溶解させた水溶液中に、上述したアルミニウム化合物を溶解させる方法や、アルミニウム化合物を水に溶解させた水溶液中に、酸を添加する方法によって調製することができる。
磁石素体2に処理液を接触させる方法としては、磁石素体2を処理液中に浸漬する浸漬法や、磁石素体2に処理液を噴霧するスプレー法が挙げられる。なかでも、磁石素体2の全面に処理液を簡便に付着させ得る浸漬法が好適である。処理中の処理液の温度は、0〜90℃であると好ましく、10〜60℃であるとより好ましい。また、浸漬法による場合、磁石素体2を処理液に浸漬する時間は10秒〜30分が好ましい。なお、これらの条件は、所望とする保護層4の厚さ等に応じて適宜変更できる。
このように、磁石素体2に上述した処理液を接触させることで、保護層4が形成される。このメカニズムについては必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、まず、磁石素体2に酸性状態にある処理液を接触させると、この磁石素体2の表面が酸によって溶解され、この反応により磁石素体2の表面近傍の処理液のpHが高くなる。そして、磁石素体2の表面近傍の処理液のpHが3〜5よりも高くなると、処理液中のアルミニウムイオンが水酸基を有するアルミニウム化合物として析出する。この際、処理液中に溶出した磁石素体2の金属元素(金属イオン等)は、金属単体や金属化合物(特に水酸基を有する化合物)としてアルミニウムとともに共析する。このようにして、上述した構成を有する保護層4が形成されると考えられる。
保護層4の形成後には、この保護層4の表面に付着した処理液やその反応後の副生物、磁石素体2から溶解した成分等を除去するために、保護層4の表面を水洗することが好ましい。特に、処理液は酸性を有していることから希土類磁石1を腐食させる要因となり易いため、保護層4表面に残存した処理液は確実に除去することが好ましい。保護層4の水洗後には、温風乾燥や自然乾燥により保護層4を乾燥させる処理を行うと更に好ましい。
また、保護層4には、更に熱処理を施してもよい。熱処理によって、保護層4中の化合物に吸着している吸着水が脱離し、これにより保護層4の安定性が更に向上する傾向にある。熱処理は、保護層4形成後の希土類磁石1を加熱することで行うことができ、加熱温度は、例えば、50〜450℃とすることができる。ただし、過度に高温の処理を行うと、保護層4中の水酸基を有する化合物が脱水されて緻密な膜が形成され難くなるおそれがあることから、加熱温度は450℃を超えないようにすることが望ましい。
このような製造方法によって、磁石素体2の表面に保護層4を備える希土類磁石1が得られる。保護層4は、上述した析出反応によって形成されるものであるが、この反応は、磁石素体2表面の処理液と接触した全ての部分で均一に生じ得る。したがって、本実施形態の方法では、たとえ磁石素体2が表面に凹凸を有しているとしても、この凹凸面を覆うような均一な厚さを有する保護層4を形成し得る。
このような製造方法によれば、保護層4の厚さを均一にできるため、良好な寸法精度が得られるほか、保護層4の厚さを必要最小限とすることができ、低コストで希土類磁石1を製造することが可能となる。そして、このようにして製造された希土類磁石1は、アルミニウム化合物及び金属元素を含む均一な厚さの保護層4を備えることから、優れた耐食性を発揮し得るものとなり、高温高湿試験後でも錆の発生が少ないものとなる。
なお、本発明の希土類磁石及びその製造方法は、必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、希土類磁石1は、保護層4の表面上に、希土類磁石1を保護するための層(耐食性層)を更に備えるものであってもよい。このような層としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものを特に制限なく適用でき、樹脂層、無機化合物層、金属層等が挙げられる。これにより、希土類磁石1の耐食性等を更に向上させることが可能となる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の製造]
(実施例1)
まず、粉末冶金法により、組成が27.6Nd−4.9Dy−0.5Co−0.4Al−0.07Cu−1.0B−残部Fe(数字は重量百分率を表す)である鋳塊を作製し、これを粗粉砕した。その後、不活性ガスによるジェットミル粉砕を行って、平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。得られた微粉末を金型内に充填し、磁場中で成形した。次いで、真空中で焼結後、熱処理を施して焼結体を得た。得られた焼結体を20mm×10mm×2mmの寸法に切り出し加工し、磁石素体を得た。次に、得られた磁石素体に対し、2%HNO水溶液中に2分間浸漬する酸洗浄を行った後、超音波洗浄を行った。
その後、磁石素体を、アルミニウム化合物として硝酸アルミニウム9水和物を5重量%含みpHが3.2である水溶液(処理液)中に1分間浸漬させ、磁石素体の表面上に保護層を析出させて、希土類磁石を得た。なお、処理液のpHは、硝酸を加えることによって調整した。この希土類磁石を処理液から引き上げた後、処理液が乾燥する前に十分に水洗し、更に、180℃で20分間の熱処理を施した。これにより、磁石素体の表面に保護層を備える希土類磁石を完成させた。得られた希土類磁石における保護層の膜厚を測定した結果、0.5μmであった。
得られた希土類磁石の表面の組成(保護層の組成)を、蛍光X線分析装置(ZSX−100e、(株)リガク製)により分析した。その結果、表面にはAl及びCuが析出していることが確認された。さらに、保護層の組成をオージェ電子分光法(SAM680、アルバック・ファイ(株)製)により分析した。その結果、保護層中にはNd及びFeが含まれていることが確認された。さらにまた、保護層をフーリエ変換赤外分光法(NEXUS670、Thermo社製)の反射モードで測定した結果、保護層には水酸基が含まれていることが確認された。
(実施例2)
処理液として、硝酸アルミニウム9水和物を0.5重量%含みpHが3.6であるものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。得られた希土類磁石における保護層の膜厚は、0.2μmであった。
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた磁石素体をそのまま希土類磁石とした。
(比較例2)
実施例1と同様にして磁石素体の作製、酸洗浄及び超音波洗浄を行った。この磁石素体を、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドを3重量%含むトルエン溶液に5分間浸漬させた。その後、トルエン溶液が付着した磁石素体を、窒素雰囲気中、120℃で30分間乾燥させた。その後、この磁石素体に対し、アルゴン雰囲気中、900℃で1時間の熱処理を施し、磁石素体の表面にアルミニウムを含む保護層を備える希土類磁石を得た。なお、得られた希土類磁石における保護層からは、水酸基は検出されなかった。
(実施例3〜4及び比較例3〜4)
実施例1〜2及び比較例1〜2の希土類磁石の表面に、それぞれスプレー塗装によりエポキシ樹脂塗料を塗布した後、180℃、30分の硬化を行い、希土類磁石の表面上に更に厚さ10μmの樹脂層(耐食性層)を形成させた。実施例1〜2及び比較例1〜2の希土類磁石を用いた場合が、それぞれ実施例3〜4及び比較例3〜4に該当する。
[特性評価]
(PCT試験による永久減磁率の測定)
実施例1〜2及び比較例1〜2の希土類磁石をそれぞれ用い、以下に示すようにしてこれらの永久減磁率を測定した。すなわち、まず、製造後の希土類磁石の磁束を測定した。次いで、この希土類磁石に対し、120℃、0.2MPa、100%RH、100時間の条件でプレッシャー・クッカー・テスト(PCT試験)を行った。それから、PCT試験後の希土類磁石を再度着磁した後、この希土類磁石の磁束を測定した。そして、試験前に得られた磁束の値に対して試験後に得られた磁束の値が減少した割合(%)を算出し、これを永久減磁率とした。得られた結果を表1に示す。
Figure 0004224072
表1より、実施例1〜2の希土類磁石は、比較例1〜2に比して永久減磁率が小さく、PCT試験後でも良好に磁気特性を維持できることが確認された。これより、実施例1〜2の希土類磁石は、優れた耐食性を有していることが判明した。
(PCT試験後の外観の評価及び樹脂層の密着性の評価)
まず、実施例3〜4及び比較例3〜4の希土類磁石に対し、120℃、0.2MPa、100%RH、100時間の条件でPCT試験を行った。この試験後の各希土類磁石の外観を観察し、樹脂層の剥離が生じているか否かを評価した。得られた結果を表2に示す。表2中、樹脂層の剥離の評価は、A:剥離なし、B:角部のみで一部剥離、C:角部以外の部分でも剥離、に従って記載した。
また、上記PCT試験後の各希土類磁石について、JIS K5600(1999年)に規定される碁盤面テープ試験に準拠し、樹脂層に当該層を貫通する切り傷を碁盤目状につけ、この上に粘着テープを張った後に剥離したときの、樹脂層の剥離の有無を評価する試験を行った。得られた結果をまとめて表2に示す。
表2中、テープ試験の評価は、JISK5600に準拠する分類に従って行った。当該評価においては、剥離が全く見られなかった分類0から、大部分が剥離を生じていた分類5までの6段階の評価がなされ、数字が小さいほど剥離が少ないことを表している。したがって、この数字が小さい希土類磁石ほど、樹脂層の保護層に対する密着性が優れている。
Figure 0004224072
表2より、実施例3〜4の希土類磁石は、PCT試験後の保護層の剥離がなかったことから、比較例3〜4の希土類磁石と比べて優れた耐食性を有していることが確認された。また、実施例3〜4の希土類磁石は、碁盤目テープ試験でも良好な結果が得られていることから、樹脂層の密着性が良好であることが判明した。
(接着性試験)
実施例1及び比較例2で得られた希土類磁石に、それぞれ嫌気性アクリル接着剤(ロックタイト392)を塗布し、この接着剤が塗布された面を表面が洗浄された鉄板に圧着した後、150℃で30分乾燥した。各希土類磁石の鉄板に対する接着性を、圧縮せん断試験により測定した。この圧縮せん断試験は、室温で5mm/分の条件で行った。この圧縮せん断試験により得られた接着力の値は、実施例1の希土類磁石では242kg/cmであり、比較例2の希土類磁石では154kg/cmであった。
これより、実施例1の希土類磁石によれば、比較例2の希土類磁石に比して、接着剤を介して他の部材に接着する際に、高い接着性が得られることが確認された。
好適な実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石を示す図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。
符号の説明
1…希土類磁石、2…磁石素体、4…保護層。

Claims (8)

  1. 少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体と、この磁石素体の表面上に形成された保護層と、を備え、
    前記保護層は、アルミニウム元素及び前記磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含み、且つ、
    前記保護層は、アルミニウム元素及び/又は前記金属元素を、水酸基を有する化合物として含有しており、
    前記磁石素体は、前記金属元素として鉄を含み、前記保護層は、前記金属元素として鉄を含む、
    ことを特徴とする希土類磁石。
  2. 前記保護層は、アルミニウム元素を、水酸基を有する化合物として含有している、ことを特徴とする請求項1記載の希土類磁石。
  3. 前記保護層は、前記磁石素体に含まれる希土類元素のうちの少なくとも一種と同じ希土類元素を含む、ことを特徴とする請求項1又は2記載の希土類磁石。
  4. 前記磁石素体は、前記金属元素として銅を含み、前記保護層は、銅を含む、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 前記保護層の表面上に、該保護層とは異なる耐食性層を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  6. 少なくとも希土類元素を含む金属元素を含有する磁石素体の表面に、アルミニウムイオンを含み酸性を有する水溶液を接触させて、前記表面上に、アルミニウム元素及び前記磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種と同じ金属元素を含み、且つ、アルミニウム元素及び/又は前記金属元素を水酸基を有する化合物として含む保護層を形成する工程を有しており、前記磁石素体は、前記金属元素として鉄を含み、前記保護層は、前記金属元素として鉄を含む、ことを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  7. 前記水溶液を接触させた後、該水溶液が付着した状態の前記保護層を洗浄する工程を更に有する、ことを特徴とする請求項記載の希土類磁石の製造方法。
  8. 前記水溶液は、酸化剤を含む、ことを特徴とする請求項6又は7記載の希土類磁石の製造方法。
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