以下、本発明の一実施の形態であるギア対10と、該ギア対10を適用したギア伝達機構を備えたレーザプリンタ1について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明を適用したレーザプリンタ1の中央断面図であり、図2は、プロセスカートリッジ17の縦断面図であり、図3は、筐体2の左側から見た時の、左のフレーム200に設けられたギア伝達機構のギア列の配置を平面的に示した図であり、図4は、ギア対10の斜視図であり、図5は、第1ギア13の歯31近傍を示した部分拡大図であり、図6は、動力吸収式歯車動的試験機500の構成図である。
なお、本実施形態のレーザプリンタ1は、図3に示すように、駆動モータ205の駆動を各場所に伝達するギア伝達機構を備え、該ギア伝達機構を構成するギア列に、摩擦摩耗が少なく、異音等が発生しにくいギア対10(図4参照)を適用した点に特徴を有するものである。
はじめに、レーザプリンタ1の概略構造について説明する。図1に示すように、レーザプリンタ1は、筐体2を備える。そして、筐体2内には、被記録媒体としての用紙3を給紙するためのフィーダ部4、給紙された用紙3に画像を形成する画像形成手段としての画像形成部5を構成するスキャナユニット9、プロセスカートリッジ17および定着器18が設けられている。さらに、これらは、筐体2の左右(図中紙面表裏方向)に設けられた2つのフレーム200,210の間の位置に固定もしくは支持されている。
また、用紙3は、筐体2の底部に着脱される給紙カセット6に設けられた用紙押圧板7上にて積層状に保持され、その用紙押圧板7によって、筐体2の前面側で給紙カセット6の上方に設けられた給紙ローラ8に向かって押圧されている。そして、給紙ローラ8の回転にともなって、用紙3は、搬送ローラ11を介するUターン状の搬送パスを通って、レジストローラ12から、筐体2内の略中央に設けられた画像形成部5に向かって搬送されるようになっている。
次に、スキャナユニット9について説明する。図1に示すように、スキャナユニット9は、筐体2内において排紙トレイ46の直下に配置されている。そして、スキャナユニット9は、レーザ光を出射するレーザ発光部(図示外)、レーザ発光部より出射されたレーザ光を回転駆動して主走査方向に走査するポリゴンミラー19、ポリゴンミラー19に走査されたレーザ光の走査速度を一定にするfθレンズ20、走査されたレーザ光を反射する反射ミラー21a,21b、反射ミラー21aで反射されたレーザ光を反射ミラー21bを介して感光体ドラム27(図2参照)上で結像する際の副走査方向における面倒れを補正するシリンダーレンズ22などで構成されている。このスキャナユニット9は、印刷データに基づいてレーザ発光部から出射されるレーザ光を、図中一点鎖線Lで示すように、ポリゴンミラー19、fθレンズ20、反射ミラー21a、シリンダーレンズ22、反射ミラー21bの順に通過あるいは反射させて、プロセスカートリッジ17の感光体ドラム27の表面上に露光走査するものである。
次に、プロセスカートリッジ17について説明する。図1,図2に示すように、プロセスカートリッジ17は、ドラムカートリッジ23と、当該ドラムカートリッジ23に着脱可能な現像カートリッジ24とから構成されている。そして、ドラムカートリッジ23は、感光体ドラム27、帯電器29などを備えている。一方、現像カートリッジ24は、現像ローラ28、供給ローラ33、トナーホッパー34などを備えている。また、図1に示すように、筐体2の前面の上寄り部位には、プロセスカートリッジ17の挿入のための一部開放状の空間があり、プロセスカートリッジ17は、筐体2の前面側(図1の右側)のカバー53を下向きに回動させて大きく開いた状態で着脱される。
そして、図2に示すように、供給ローラ33は、現像ローラ28の側方位置で、現像ローラ28を挟んで感光体ドラム27の反対側の位置に回転可能に配設されており、現像ローラ28に対して圧縮するような状態で当接されている。この供給ローラ33は、金属製のローラ軸に、導電性の発泡材料からなるローラが被覆されており、現像ローラ28に供給するトナーを摩擦帯電するようになっている。このため、供給ローラ33は、現像ローラ28と同方向となる矢印方向(図2中反時計方向)に回転可能に配設されている。
また、トナーホッパー34は、供給ローラ33の側方位置に設けられており、その内部に供給ローラ33を介して現像ローラ28に供給される現像剤を充填している。本実施の形態では、現像剤として正帯電性の非磁性1成分のトナーが使用されている。
さらに、感光体ドラム27の回転方向の現像ローラ28の下流で、感光体ドラム27の下方位置には、転写ローラ30が配設されており、矢印方向(図1中反時計方向)に回転可能に支持されている。
次に、定着器18について説明する。図1に示すように、定着器18は、プロセスカートリッジ17の側方下流側に配設された定着ローラ41、この定着ローラ41を押圧する加圧ローラ42などを備えている。定着ローラ41は、中空のアルミニウム製の軸にフッ素樹脂がコーティングされ焼成されたローラであり、筒状のローラの内部に加熱のためのハロゲンランプ41aを備えている。加圧ローラ42は、低硬度シリコンゴムからなる軸にフッ素樹脂のチューブが被膜されたローラであり、スプリング(図示外)によってその軸が定着ローラ41の方向に付勢されることで、定着ローラ41に対して押圧されている。定着器18では、プロセスカートリッジ17において用紙3上に転写されたトナーが、用紙3が定着ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する間に用紙3に加圧加熱定着され、その後、用紙3を排紙パス44に搬送するようにしている。
また、排紙トレイ46は、筐体2の上部中央より前側にかけての位置に、印刷された用紙3を積層保持できるように、筐体2の前側ほど傾斜が小さくなるように凹部形成されている。画像形成部5で画像が形成された用紙3は、半弧を描くように設けられた排紙パス44に導かれて排紙トレイ46上に排出される。
次に、駆動モータ205からの駆動力を伝達するギア伝達機構について、図1,図3を参照して説明する。なお、図中、各ギアの歯丈に基づく円周半径の描写については省略する。
まず、ギア伝達機構を構成する各種ギアについて説明する。図3に示すように、略長方形状をなす左のフレーム200の外側の面には、駆動モータ205からの駆動力を、レーザプリンタ1の各部に伝達する複数のギアが並んで構成されたギア伝達機構が設けられている。そして、駆動モータ205の駆動軸206には、直接ギア歯が形成されており、その駆動軸206の上方の位置で、駆動軸206のギアにアイドルギア208が噛合されている。さらに、このアイドルギア208は二段ギアとなっており、その小径ギア209には、フィーダ部4(図1参照)の給紙ローラ8や、搬送ローラ11等へ駆動力を伝達するためのアイドルギア211と、画像形成部5の感光体ドラム27(図1参照)を回転駆動させるためのドラムギア250とが各々噛合されている。そして、アイドルギア211は、アイドルギア208の前方の位置に、ドラムギア250はアイドルギア208の上方斜め後方の位置に、それぞれ配置されている。
また、ドラムギア250の上方の位置には、アイドルギア260が噛合されている。アイドルギア260には二段ギアとして構成されたアイドルギア263が、その前方の位置より噛合されており、そのアイドルギア263の小径ギア264に、さらに前方の位置より噛合された現像ギア266によって、現像カートリッジ24の現像ローラ28等(図1参照)へ駆動力が伝達されるようになっている。アイドルギア260もまた二段ギアとなっており、その小径ギア261に噛合されたアイドルギア271から後方斜め上方へ向かって、アイドルギア273,275,277,279が順に噛合されている。そして、末端のアイドルギア279に噛合された排紙ギア281によって、排紙ローラ45(図1参照)へ駆動力が伝達されるようになっている。
また、ドラムギア250の後方の位置には二段ギアであるアイドルギア253が噛合され、アイドルギア253の小径ギア254には、その後方斜め下方の位置にて定着ギア256が噛合されている。この定着ギア256に伝達される駆動力によって、定着器18の定着ローラ41および加圧ローラ42(図1参照)が回転駆動されるようになっている。
一方、フィーダ部4(図1参照)へ駆動力を伝達するためのアイドルギア211には、図示外の第2の給紙ユニットを装着した場合に、その第2の給紙ユニットが収容する用紙を搬送するために必要な駆動力を伝達するためのオプションギア213が、下方の位置で噛合されている。また、アイドルギア211は二段ギアとなっており、その小径ギア212の前方斜め上方の位置で、二段ギアとして構成されている太陽ギア218の小径ギア217が噛合されている。
太陽ギア218には、下側のレジストローラ12(図1参照)を駆動するためのレジストギア222が、その上方の位置にて噛合されている。小径ギア217には、前方斜め下方の位置にて、給紙ローラ8へ駆動力を伝達するための給紙ギア220が噛合されている。
そして、レジストギア222と給紙ギア220との間の位置にて、太陽ギア218の小径ギア217には、後述する遊星ギア224が噛合されている。遊星ギア224にはアイドルギア227が噛合されており、さらに、アイドルギア227に、二段ギアである搬送ギア229の小径ギア230が噛合されている。搬送ギア229は、搬送ローラ11(図1参照)を駆動するための駆動力を伝達するギアであり、レジストギア222よりも前方に配置されている。また、搬送ローラ11に連動して、紙粉を回収するオーガ(図示外)が回転駆動されるように、搬送ギア229にはオーガギア232が噛合されている。これら上記した各ギアの軸は、一部のギアを除き、フレーム200に取り付けられるギア軸支持板290と、フレーム200の面との間で軸支されている。
このように、本実施形態のレーザプリンタ1のギア伝達機構は、各種ギアが互いに噛合してなるギア列から構成され、このギア列が複数並んで配置されることによって、駆動モータ205からの駆動を筐体2内の各装置に伝達する仕組みとなっている。そして、本実施形態では、このギア列に、本発明の特徴であるギア対10を適用することによって、摩擦摩耗が少なく、かつ異音等が発生しにくいギア伝達機構を形成することができる。以下、このギア対10について説明する。
次に、本発明の特徴の一具体例であるギア対10について説明する。図4に示すように、ギア対10は、第1ギア13と、該第1ギア13と噛合するとともに、第1ギア13よりも小さい第2ギア14とから構成されている。なお、第2ギア14は、第1ギア13と同じ大きさ、もしくはそれより大きくてもよい。そして、このようなギア対10は、例えば、平行軸15と平行軸16との間に動力を伝達するために設けられる。
次に、第1ギア13及び第2ギア14の形状について説明する。図4に示すように、第1ギア13及び第2ギア14ともに平歯車である。第1ギア13は、平行軸15の径方向周囲にフランジ状に設けられ、第2ギア14は、平行軸16の径方向周囲に設けられている。さらに、第1ギア13及び第2ギア14の各外周縁に各々設けられた歯31,32は直歯状に各々形成され、該歯31,32は、平行軸15,16の各軸線に対して平行に各々延設されている。そして、歯31と歯32とが互いに噛合する際、互いに当接する各当接面が、歯31の当接面部31aと、歯32の当接面部32aとなっている。
次に、第1ギア13及び第2ギア14における各寸法について説明する。なお、ここでは、第1ギア13を例にして説明する。図5に示すように、ギアの寸法を示すピッチ円直径36は、第1ギア13の測定の基準となるものである。また、円ピッチ37は、ピッチ円38の回りで測定された、1つの歯31の中心から次の歯31の中心までの距離である。さらに、第1ギア13の直径ピッチは、ピッチ直径の1インチに対する歯の数である。さらに、第1ギア13において、第1ギア13の中心から歯31の先までを歯先円直径といい、第1ギア13の中心から歯31の底部までを歯底円直径という。
次に、第1ギア13及び第2ギア14の構成成分について説明する。図4に示す第1ギア13及び第2ギア14は、ともにポリアセタール樹脂を母材とする合成樹脂ギアである。さらに、このポリアセタール樹脂には、潤滑剤としてのシリコンオイルと、充填剤としての非晶質シリカとがともに添加されており、第1ギア13及び第2ギア14の機械的強度と、各ギアの歯31の当接面部31aと、歯32の当接面部32aとの摺動性等を向上させている。なお、本実施形態で使用したポリアセタール樹脂は、「ジュラコンM90」(ポリプラスチック株式会社製)である。
一方、シリコンオイルは、当接面部31a及び32aの摺動特性を向上させるために添加されるものである。なお、本実施形態で使用したシリコンオイル(ポリジメチルシロキサン)は、「KF−96−1000000CS」(信越シリコーン社製)である。
さらに、非晶質シリカは、図4に示す第1ギア13及び第2ギア14の機械的強度を向上させるために添加されるものである。この非晶質シリカは、平均粒径が0.1〜2μmのSiO2からなる球状微粒子である。なお、本実施形態で使用した非晶質シリカは、「球状シリカSFP−30M」(電気化学工業株式会社製)を使用した。なお、この非晶質シリカの特性は以下の通りである。
・d50=0.72、d100=3.2
※なお、d50とは、累積重量が50%となる粒子径(=平均粒径)のことをいい、d100とは、累積重量が100%となる粒子径(=平均粒径)のことをいう。
次に、シリコンオイル及び非晶質シリカの配合割合について説明する。上記したように、図4に示す第1ギア13、第2ギア14はともにポリアセタール樹脂を母材とする。そして、本実施形態のギア対10では、第1ギア13及び第2ギア14における各添加成分の配合割合を互いに異ならせることによって、各ギアの歯31,歯32の摩擦摩耗を低減させ、当接面部31a,32aが互いに刷れることによって生じるきしみ音等の異音の発生を防止することができる。具体的に言うと、シリコンオイルは、母材に対して1重量%〜5重量%の範囲内で配合し、例えば、第1ギア13のシリコンオイルの配合量を、第2ギア14のシリコンオイルの配合量に対して2倍以上に調整する。なお、この配合割合は、第1ギア13と第2ギア14とで反対になっていてもよい。
一方、非晶質シリカは、母材に対して5重量%〜20重量%の範囲内で配合し、例えば、第1ギア13の非晶質シリカの配合量を、第2ギア14の非晶質シリカの配合量に対して2倍以上に調整する。
したがって、例えば、母材(ポリアセタール樹脂)に対して、シリコンオイル2%、非晶質シリカ1%となるように調整する。これにより、ギア対10の静摩擦係数、動摩擦係数を低くすることができ、図4に示す第1ギア13及び第2ギア14の歯31,32における摩擦摩耗を低減し、当接面部31a,32aが互いに刷れることによって生じる異音等の発生を防止できる。
上記説明した本発明により限定された数値の効果を確認するために各種試験を以下のようにして行った。次に、試験1から試験5の結果について、図7乃至図20に示す結果を参照して順次説明する。図7は、試験1−1の結果を示す表であり、図8は、試験1−2の結果を示す表であり、図9は、試験2−1の結果を示す表であり、図10は、試験2−2の結果を示す表であり、図11は、試験2−3の結果を示す表であり、図12は、試験2−4の結果を示す表であり、図13は、試験3−1の結果を示す表であり、図14は、試験3−2の結果を示す表であり、図15は、試験4−1の結果を示す表であり、図16は、試験4−2の結果を示す表であり、図17は、試験4−3の結果を示す表であり、図18は、試験4−4結果を示す表であり、図19は、試験5−1の結果を示す表であり、図20は、試験5−2の結果を示す表である。
(試験1)
はじめに、試験1として、シリコンオイルの配合割合を調整して得られた複数の試験片を互いに組み合わせ、各組合せにおける摩擦係数(静摩擦係数と動摩擦係数)の測定を行った。ここで、摩擦係数とは、2つの物体が接している時、接触面に作用する摩擦力と、この面に直角に作用する圧力の比をこの2物体間の摩擦係数という。そして、運動の開始を妨げるものを静摩擦といい、運動中に生ずる抵抗を動摩擦という。
試験片の作成方法と測定条件は以下の通りである。
◎試験片の作成方法
・ポリアセタール樹脂に、シリコンオイルと非晶質シリカとを加えてミキサーで混合した。その後、二軸押出機を使用して溶融混練してペレットを得た。次いで、このペレットを射出成形機を使用することによって複数の試験片を成形した。なお、以下説明において、単位の「重量%」を「wt%」と示す。
◎測定条件
・JIS K7125に準拠。
・試験温度23℃、荷重200g、試験速度150mm/min
・試験片を70℃の恒温室にて1時間乾燥した。そして、室温23℃、湿度40%の室内で1週間保存した後に測定した。
次に、試験1の試験片について説明する。ここでは、シリコンオイルの配合割合を変えた4つの試験片A、B、C、Dを用意した。
・試験片A:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル1wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片B:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル1.5wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片C:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片D:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル5wt%+非晶質シリカ10wt%
※なお、ポリアセタール樹脂(評価用)のみで作成した試験片を評価用として用意した。そして、その評価用試験片にグリスを塗布し、その場合の各摩擦係数を基準値とした。なお、本試験で使用したグリスは、「マルテンプPS No2」(協同油脂株式会社製)である。
そして、試験1では、試験1−1,1−2の2つの試験を設定した。
・試験1−1:静摩擦係数の測定
・試験1−2:動摩擦係数の測定
試験1−1の結果について説明する。図7に示すように、シリコンオイルの配合を変えた場合の組合せにおける試験片の静摩擦係数は、試験片A同士では0.45、試験片Aと試験片Bとの組合せでは0.44、試験片Aと試験片Cとの組合せでは0.25、試験片Aと試験片Dとの組合せでは0.23、試験片B同士では0.46、試験片Bと試験片Cとの組合せでは0.44、試験片Bと試験片Dとの組合せでは0.23、試験片C同士では0.46、試験片Cと試験片Dとの組合せでは0.24、試験片D同士では0.47であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験片同士の静摩擦係数は0.30であった。
試験1−2の結果について説明する。図8に示すように、シリコンオイルの配合割合を変えた場合の組合せにおける試験片の動摩擦係数は、試験片A同士では0.4、試験片Aと試験片Bとの組合せでは0.36、試験片Aと試験片Cとの組合せでは0.22、試験片Aと試験片Dとの組合せでは0.2、試験片B同士では0.38、試験片Bと試験片Cとの組合せでは0.36、試験片Bと試験片Dとの組合せでは0.2、試験片C同士では0.36、試験片Cと試験片Dとの組合せでは0.22、試験片D同士では0.33であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験片同士の動摩擦係数は0.26であった。
以上の結果から、基準値よりも低い静摩擦係数であった各種試験片の組合せは、試験片Aと試験片C、試験片Aと試験片D、試験片Bと試験片D、試験片Cと試験片Dの4つであった。また、基準値よりも低い動摩擦係数であった各種試験片の組合せは、試験片Aと試験片C、試験片Aと試験片D、試験片Bと試験片D、試験片Cと試験片Dの4つであり、静摩擦係数と同様の結果が得られた。
このように、グリス塗布時の各基準値よりも低い上記した4つの組合せにおける静摩擦係数と動摩擦係数との差は、グリス潤滑時の静摩擦係数と動摩擦係数との差と同程度に小さくすることができた。これにより、スティックスリップ現象を抑えることができるので、試験片と試験片とが刷れて生じるきしみ音などの異音を防止できると推測された。
なお、スティックスリップ現象とは、一般的に、固体面間の摩擦による減衰が負である場合に機械的振動系に間欠的に生じる自励振動の一種である。このような自励振動は、非振動的なエネルギーにより振動が発生し、その振動が振動系の振動状態に依存しているような振動をいう。例えば、楽器ではバイオリンの弦の振動、工作機械ではびびり振動が、スティックスリップ現象にあたり、異音発生の原因の1つとなっている。
したがって、上記試験片の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対してシリコンオイルの配合量を1wt%〜5wt%の範囲内に調整した場合に、一方の試験片のシリコンオイルの配合量を、他方の試験片のシリコンオイルの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、試験片の組合せによる静摩擦係数及び動摩擦係数を、グリス潤滑時の静摩擦係数及び動摩擦係数と同程度に抑えられることが推測された。
(試験2)
次に、試験2として、シリコンオイルの配合割合を調整して得られた試験用の歯車51,52(図6参照)を互いに組み合わせ、各組合せにおける回転摩耗量、歯車騒音、歯面温度、きしみ音発生の各種測定を行った。なお、評価に使用した歯車51,52の形状は、以下の通りである。
◎使用した歯車51,52の形状(ともに同じ形状)
・平歯車
・モジュールM=0.5
・ピッチ円直径=20mm
・歯数 40
・歯幅 5mm
・圧力角 20°
・歯車回転数 300rpm
・駆動トルク 0.5N・m
※試験用の歯車51,52の作成方法は、上記した試験1で作成した試験片と同じ作成方法である。
◎測定条件
・測定装置:動力吸収式歯車動的試験機
・室温23℃、湿度40%の室内で実施。
ここで、動力吸収式歯車動的試験機500について説明する。図6に示すように、動力吸収式歯車動的試験機500は、歯車駆動部50と、該歯車駆動部50によって駆動する一対の歯車51,52と、該歯車51,52から生ずるきしみ音を検出するマイクロホン54と、該マイクロホン54に配線を介して接続された騒音計55と、該騒音計55に配線を介して接続されたFFT周波数分析装置56とで構成されている。なお、歯車駆動部50は、歯車51の平行軸51aを回転させ、歯車51を駆動させる駆動用モータ57と、歯車52の平行軸52aに連結され、歯車52に負荷トルクを与える負荷トルク用電磁クラッチ58とから構成されている。そして、マイクロホン54は、歯車51,52から10cm離れた位置に設けられ、その周囲は、防音箱59によって覆われている。なお、FFT周波数分析装置56では、騒音計55からの出力信号によって周波数領域での分析を行うことができる。
次に、試験2の試験用の歯車51,52について説明する。ここでは、シリコンオイルの配合割合を変えて、各歯車51,52につき各4枚の歯車A、B、C、Dをそれぞれ用意した。
・歯車A:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル1wt%+非晶質シリカ10wt%
・歯車B:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル1.5wt%+非晶質シリカ10wt%
・歯車C:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ10wt%
・歯車D:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル5wt%+非晶質シリカ10wt%
※なお、ポリアセタール樹脂(評価用)のみで作成した歯車51,52を評価用として用意した。そして、その評価用の歯車51,52にグリスを塗布し、その場合の各摩擦係数を基準値とした。なお、本試験で使用したグリスは、「マルテンプPS No2」(協同油脂株式会社製)である。
そして、試験2では、試験2−1,2−2,2−3,2−4の4つの試験を設定し、以下のような各種試験をおこなった。
・試験2−1:歯車回転摩耗量試験
・試験2−2:歯車騒音レベル試験
・試験2−3:歯面温度測定試験
・試験2−4:きしみ音発生試験
※なお、試験2−3の歯面温度(℃)は、赤外線放射温度計で計測し、試験2−4のきしみ音は聴覚にてきしみ音の有無を判断した。
試験2−1の結果について説明する。図9に示すように、シリコンオイルの配合を変えた場合の歯車51,52における50万回転の歯車回転摩耗量(mg)は、歯車A同士では37mg、歯車Aと歯車Bとの組合せでは32mg、歯車Aと歯車Cとの組合せでは20mg、歯車Aと歯車Dとの組合せでは17mg、歯車B同士では37mg、歯車Bと歯車Cとの組合せでは37mg、歯車Bと歯車Dとの組合せでは19mg、歯車C同士では38mg、歯車Cと歯車Dとの組合せでは19mg、歯車D同士では42mgであった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験歯車同士の静摩擦係数は22mgであった。
以上の結果から、基準値よりも低い回転摩耗量であった各種歯車の組合せは、歯車Aと歯車C、歯車Aと歯車D、歯車Bと歯車D、歯車Cと歯車Dの4つであった。したがって、上記4つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対してシリコンオイルの配合量を1wt%〜5wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車のシリコンオイルの配合量を、他方の歯車のシリコンオイルの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる回転摩耗量を、グリス潤滑時と同程度に抑えられることが推測された。
試験2−2の結果について説明する。図10に示すように、シリコンオイルの配合を変えた歯車51,52の組合せにおける歯車騒音レベル(dB)は、歯車A同士では57(dB)、歯車Aと歯車Bとの組合せでは53(dB)、歯車Aと歯車Cとの組合せでは44(dB)、歯車Aと歯車Dとの組合せでは42(dB)、歯車B同士では53(dB)、歯車Bと歯車Cとの組合せでは51(dB)、歯車Bと歯車Dとの組合せでは42(dB)、歯車C同士では53(dB)、歯車Cと歯車Dとの組合せでは43(dB)、歯車D同士では50(dB)であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験歯車同士の歯車騒音レベルは44(dB)であった。
以上の結果から、基準値よりも低い歯車騒音レベル(dB)であった各種歯車の組合せは、歯車Aと歯車C、歯車Aと歯車D、歯車Bと歯車D、歯車Cと歯車Dの4つであった。したがって、上記4つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対してシリコンオイルの配合量を1wt%〜5wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車のシリコンオイルの配合量を、他方の歯車のシリコンオイルの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる歯車騒音レベル(dB)を、グリス潤滑時と同程度に抑えられることが推測された。
試験2−3の結果について説明する。図11に示すように、シリコンオイルの配合を変えた歯車51,52の組合せにおける歯面温度(℃)は、歯車A同士では95(℃)、歯車Aと歯車Bとの組合せでは88(℃)、歯車Aと歯車Cとの組合せでは76(℃)、歯車Aと歯車Dとの組合せでは73(℃)、歯車B同士では92(℃)、歯車Bと歯車Cとの組合せでは87(℃)、歯車Bと歯車Dとの組合せでは73(℃)、歯車C同士では91(℃)、歯車Cと歯車Dとの組合せでは74(℃)、歯車D同士では89(℃)であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験歯車同士の歯面温度(℃)は76(℃)であった。
以上の結果から、基準値よりも低い歯面温度(℃)であった各種歯車の組合せは、歯車Aと歯車C、歯車Aと歯車D、歯車Bと歯車D、歯車Cと歯車Dの4つであった。したがって、上記4つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対してシリコンオイルの配合量を1wt%〜5wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車のシリコンオイルの配合量を、他方の歯車のシリコンオイルの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる歯面温度(℃)を、グリス潤滑時と同程度に抑えられることが推測された。
試験2−4の結果について説明する。なお、図12では、きしみ音が発生しなかった場合は「○」、発生した場合は「×」とした。図12に示すように、シリコンオイルの配合を変えた歯車51,52の組合せにおけるきしみ音の発生は、歯車A同士では「×」、歯車Aと歯車Bとの組合せでは「×」、歯車Aと歯車Cとの組合せでは「○」、歯車Aと歯車Dとの組合せでは「○」、歯車B同士では「×」、歯車Bと歯車Cとの組合せでは「×」、歯車Bと歯車Dとの組合せでは「○」、歯車C同士では「×」、歯車Cと歯車Dとの組合せでは「○」、歯車D同士では「×」であった。
以上の結果から、きしみ音が発生しなかった各種歯車の組合せは、歯車Aと歯車C、歯車Aと歯車D、歯車Bと歯車D、歯車Cと歯車Dの4つであった。したがって、上記4つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対してシリコンオイルの配合量を1wt%〜5wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車のシリコンオイルの配合量を、他方の歯車のシリコンオイルの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、きしみ音の発生を防止できることが推測された。
(試験3)
次に、試験3として、非晶質シリカの配合割合を調整して得られた試験片を互いに組み合わせ、各組合せにおける摩擦係数(静摩擦係数と動摩擦係数)の測定を行った。なお、試験片の作成方法と測定条件については、上記した試験1と同じである。
次に、試験3の試験片について説明する。ここでは、非晶質シリカの配合割合を変えた3つの試験片を用意した。
◎試験区2に用いた試験片
・試験片F.ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ5wt%
・試験片G.ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片H.ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ20wt%
※なお、ポリアセタール樹脂(評価用)のみで作成した試験片を評価用として用意した。そして、その評価用試験片にグリスを塗布し、その場合の各摩擦係数を基準値とした。なお、本試験で使用したグリスは、「マルテンプPS No2」(協同油脂社製)である。
そして、試験3でも、試験1と同様に試験3−1,3−2の2つの試験を設定した。
・試験3−1:静摩擦係数の測定
・試験3−2:動摩擦係数の測定
試験3−1の結果について説明する。図13に示すように、非晶質シリカの配合を変えた場合の組合せにおける試験片の静摩擦係数は、試験片F同士では0.5、試験片Fと試験片Gとの組合せでは0.28、試験片Fと試験片Hとの組合せでは0.27、試験片G同士では0.46、試験片Gと試験片Hとの組合せでは0.27、試験片H同士では0.45であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験片同士の静摩擦係数は0.30であった。
試験3−2の結果について説明する。図14に示すように、非晶質シリカの配合を変えた場合の組合せにおける試験片の動摩擦係数は、試験片F同士では0.38、試験片Fと試験片Gとの組合せでは0.25、試験片Fと試験片Hとの組合せでは0.25、試験片G同士では0.36、試験片Gと試験片Hとの組合せでは0.25、試験片H同士では0.36であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験片同士の動摩擦係数は0.26であった。
以上の結果から、基準値よりも低い静摩擦係数であった各種試験片の組合せは、試験片Fと試験片G、試験片Fと試験片H、試験片Gと試験片Hの3つであった。また、基準値よりも低い動摩擦係数であった各種試験片の組合せも、試験片Fと試験片G、試験片Fと試験片H、試験片Gと試験片Hの3つであり、静摩擦係数と同様の結果が得られた。
このように、グリス塗布時の各基準値よりも低い上記した3つの組合せにおける静摩擦係数と動摩擦係数との差は、グリス潤滑時の静摩擦係数と動摩擦係数との差と同程度に小さくすることができた。これにより、スティックスリップ現象を抑えることができるので、試験片と試験片とが刷れて生じるきしみ音などの異音を防止できると推測された。
したがって、上記試験片の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対して非晶質シリカの配合量を5wt%〜20wt%の範囲内に調整した場合に、一方の試験片の非晶質シリカの配合量を、他方の試験片の非晶質シリカの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、試験片の組合せによる静摩擦係数及び動摩擦係数を、グリス潤滑時の静摩擦係数及び動摩擦係数と同程度に抑えられることが推測された。
(試験4)
次に、試験4として、非晶質シリカの配合割合を調整して得られた試験用の歯車51,52(図6参照)を互いに組み合わせ、各組合せにおける回転摩耗量、歯車騒音、歯面温度、きしみ音発生の各種測定を行った。なお、評価に使用した歯車51,52の形状、測定条件については上記した試験2と同じである。
次に、試験4の試験用の歯車51,52について説明する。ここでは、非晶質シリカの配合割合を5〜20wt%まで変えて、各歯車51,52につき3枚の歯車をそれぞれ用意した。
・歯車F:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ5wt%
・歯車G:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ10wt%
・歯車H:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ20wt%
※なお、ポリアセタール樹脂(評価用)のみで作成した歯車51,52を評価用として用意した。そして、その評価用の歯車51,52にグリスを塗布し、その場合の各摩擦係数を基準値とした。なお、本試験で使用したグリスは、「マルテンプPS No2」(協同油脂社製)である。
そして、試験4でも、試験2と同様に、試験4−1,4−2,4−3,4−4の4つの試験を設定し、以下のような各種試験をおこなった。
・試験4−1:歯車回転摩耗量試験
・試験4−2:歯車騒音レベル試験
・試験4−3:歯面温度測定試験
・試験4−4:きしみ音発生試験
試験4−1の結果について説明する。図15に示すように、非晶質シリカの配合を変えた場合の歯車51,52における50万回転の歯車回転摩耗量(mg)は、歯車F同士では43mg、歯車Fと歯車Gとの組合せでは19mg、歯車Fと歯車Hとの組合せでは21mg、歯車G同士では38mg、歯車Gと歯車Hとの組合せでは19mg、歯車H同士では35mgであった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験歯車同士の歯車回転摩耗量は22mgであった。
以上の結果から、基準値よりも低い回転摩耗量であった各種歯車の組合せは、歯車Fと歯車G、歯車Fと歯車H、歯車Gと歯車Hの3つであった。したがって、上記3つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対して非晶質シリカの配合量を5wt%〜20wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車の非晶質シリカの配合量を、他方の歯車の非晶質シリカの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる回転摩耗量を、グリス潤滑時と同程度に抑えられることが推測された。
試験4−2の結果について説明する。図16に示すように、非晶質シリカの配合を変えた場合の歯車51,52における歯車騒音レベル(dB)は、歯車F同士では52(dB)、歯車Fと歯車Gとの組合せでは42(dB)、歯車Fと歯車Hとの組合せでは42(dB)、歯車G同士では53(dB)、歯車Gと歯車Hとの組合せでは44(dB)、歯車H同士では57(dB)であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験歯車同士の歯車騒音レベルは44(dB)であった。
以上の結果から、基準値よりも低い歯車騒音レベル(dB)であった各種歯車の組合せは、歯車Fと歯車G、歯車Fと歯車H、歯車Gと歯車Hの3つであった。したがって、上記3つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対して非晶質シリカの配合量を5wt%〜20wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車の非晶質シリカの配合量を、他方の歯車の非晶質シリカの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる歯車騒音レベル(dB)を、グリス潤滑時と同程度に抑えられることが推測された。
試験4−3の結果について説明する。図17に示すように、非晶質シリカの配合を変えた場合の歯車51,52における歯面温度(℃)は、歯車F同士では97(℃)、歯車Fと歯車Gとの組合せでは75(℃)、歯車Fと歯車Hとの組合せでは75(℃)、歯車G同士では91(℃)、歯車Gと歯車Hとの組合せでは72(℃)、歯車H同士では88(℃)であった。なお、グリスを塗布した場合の評価用試験歯車同士の歯面温度は76(℃)であった。
以上の結果から、基準値よりも低い歯面温度(℃)であった各種歯車の組合せは、歯車Fと歯車G、歯車Fと歯車H、歯車Gと歯車Hの3つであった。したがって、上記3つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対して非晶質シリカの配合量を5wt%〜20wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車の非晶質シリカの配合量を、他方の歯車の非晶質シリカの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる歯面温度(℃)を、グリス潤滑時と同程度に抑えられることが推測された。
試験4−4の結果について説明する。なお、図18では、きしみ音が発生しなかった場合は「○」、発生した場合は「×」とした。図18に示すように、非晶質シリカの配合を変えた場合の歯車51,52におけるきしみ音の発生は、歯車F同士では「×」、歯車Fと歯車Gとの組合せでは「○」、歯車Fと歯車Hとの組合せでは「○」、歯車G同士では「×」、歯車Gと歯車Hとの組合せでは「○」、歯車H同士では「×」であった。
以上の結果から、きしみ音が発生しなかった各種歯車の組合せは、歯車Fと歯車G、歯車Fと歯車H、歯車Gと歯車Hの3つであった。したがって、上記3つの歯車の組合せのように、ポリアセタール樹脂に対して非晶質シリカの配合量を5wt%〜20wt%の範囲内に調整した場合に、一方の歯車の非晶質シリカの配合量を、他方の歯車の非晶質シリカの配合量に対して2倍以上に調整すれば、グリスを使わなくても、歯車の組合せによる歯面温度(℃)を、きしみ音の発生を防止できることが推測された。
(試験5)
次に、試験5として、シリコンオイルの配合割合又は非晶質シリカの配合割合を調整して得られた試験片A、B、C、Dと、試験片F、G、Hとをそれぞれ作成し、それぞれの曲げ弾性率(MPa)を求めた。なお、曲げ弾性率の測定は、ISO 178に準拠しておこなった。ISO 178の試験条件を以下に示す。
◎測定条件
・試験片寸法(mm):厚さ×巾×長さ=4×10×80
・支点間距離:64mm
・試験速度:2mm/min
・単位:MPa
そして、試験5では、試験5−1,5−2の2つの試験を設定した。
・試験5−1:シリコンオイルの配合割合を変えた場合における試験片の曲げ弾性率の測定
・試験5−2:非晶質シリカの配合割合を変えた場合における試験片の曲げ弾性率の測定
まず、試験5−1の試験片について説明する。ここでは、シリコンオイルの配合割合を変えて、4本の試験片A、B、C、Dをそれぞれ用意した。
・試験片A:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル1wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片B:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル1.5wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片C:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片D:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル5wt%+非晶質シリカ10wt%
次に、試験5−2の試験片について説明する。ここでは、非晶質シリカの配合割合を変えて、3本の試験片F、G、Hをそれぞれ用意した。
・試験片F:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ5wt%
・試験片G:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ10wt%
・試験片H:ポリアセタール樹脂+シリコンオイル2wt%+非晶質シリカ20wt%
試験5−1の結果について説明する。図19に示すように、試験片Aの曲げ弾性率は3500(MPa)、試験片Bの曲げ弾性率は3300(MPa)、試験片Cの曲げ弾性率は3200(MPa)、試験片Dの曲げ弾性率は2500(MPa)であった。このように、シリコンオイルの配合割合が高ければ高いほど、曲げ弾性率は低下する傾向にあることがわかった。これにより、例えば、曲げ弾性率が互いに異なる歯車同士が互いに噛合して回転する場合、一方の歯車の歯と他方の歯車の歯とが互いにぶつかる時に生じる反発エネルギーは、この曲げ弾性率の差によって吸収される。したがって、図10に示す試験2−2の結果のように、歯車騒音レベルを低減できたように推測される。
試験5−2の結果について説明する。図20に示すように、試験片Fの曲げ弾性率は2700(MPa)、試験片Gの曲げ弾性率は3200(MPa)、試験片Hの曲げ弾性率は4100(MPa)であった。このように、非晶質シリカの配合割合が高ければ高いほど、曲げ弾性率は上昇する傾向にあることがわかった。これにより、例えば、曲げ弾性率が互いに異なる歯車同士が互いに噛合して回転する場合、一方の歯車の歯と他方の歯車の歯とが互いにぶつかる時に生じる反発エネルギーは、この曲げ弾性率の差によって吸収される。したがって、図16に示す試験4−2の結果に示したように、歯車騒音レベルを低減できたように推測される。
以上説明したように、本実施形態のレーザプリンタ1では、駆動モータ205の駆動を伝達するギア伝達機構を備え、該ギア伝達機構を構成するギア列に、摩擦摩耗が少なく、異音等を発生しない複数のギア対10を適用した点に特徴を有するものである。これによって、ギア同士の摩擦発熱による伝達トルクの低下や熱変形、摩擦によって削れた摩擦粉によるギア伝達機構の系内の汚染、ギア伝達機構の誤動作の誘発、異音の発生等を防止できる。したがって、レーザプリンタ1の画像品質を向上できるとともに、静音設計のレーザプリンタ1を提供することができる。
なお、本発明の歯車列及び該歯車列を備えた画像形成装置は、上記実施形態のレーザプリンタ1に限らず、各種変形が可能である。例えば、本実施形態では、摺動性のよいギア対10を、レーザプリンタ1の駆動モータ205の駆動を伝達するギア伝達機構に適用したが、それ以外のギア伝達機構に適用してもよい。
また、上記説明では、第1ギア13と、第2ギア14とに分けて説明したが、2枚からなるギア列において何れのギアが、第1ギア13又は第2ギア14になってもよい。