JP5965667B2 - ポリエステル樹脂組成物成形体 - Google Patents
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Description
特に、電気電子機器分野では、火災に対する安全を確保するため難燃性が極めて重要であり、また電気的負荷による発火に対する安全性の確保のため、電気的特性の一つである耐トラッキング性に優れていることが必要である。
そして、近年、電気電子機器部品や電装部品は、機器自体の小型化傾向から薄肉小型化されてきており、その結果、絶縁距離が小さくなり、これら部品(成形品)の耐トラッキング性等への要求スペックは、高度化してきている。絶縁材料は、通電中に装置から発生した熱により乾燥し帯電するため、絶縁材料の表面には埃が付着しやすい傾向がある。そのため、その絶縁材料から形成される部品は、装置停止中にその表面に埃が付着しやすく、その埃が空気中の水分を吸収し、吸収された水分により材料の表面抵抗が低下し、漏洩電流が増加する。一般に、電気部品は多かれ少なかれこのような状況にさらされており、絶縁材料の耐トラッキング特性が重要視されている。
また、特許文献3には、熱可塑性ポリエステル樹脂、圧縮微粉タルク、ハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤からなる樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、繊維状強化剤を添加してもよいことが記載されている。
しかしながら、これらの樹脂組成物は、いずれも、難燃性、耐トラッキング性、機械的強度の点で必ずしも充分に満足できるものではなかった。
すなわち、本発明によれば、以下のポリエステル樹脂組成物成形体が提供される。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)が連続相を形成し、臭素化ポリスチレン(B)相、ポリカーボネート樹脂(C)相及びアンチモン化合物(D)相は熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の連続相に分散して存在し、
成形体の表層部においては、臭素化ポリスチレン(B)相が樹脂の流れ方向に配向しているモルフォロジーを有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物成形体。
[2]ポリカーボネート樹脂(C)相は、臭素化ポリスチレン(B)相に隣接して存在している上記[1]に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[3]成形体コア部における臭素化ポリスチレン(B)分散相の平均径が5μm以下である上記[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[4]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の主成分が、ポリブチレンテレフタレートである上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[5]アンチモン化合物(D)が、三酸化アンチモンである上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[6]引張破断伸度(ASTM D638に準拠し、厚さ1mm(Type IV)の試験片にて測定)が、10%以上である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
[7]比較トラッキング指数(CTI、UL746A試験に準拠し、厚さ3mmの試験片にて測定)が、250V以上である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
このため、本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、電気電子機器用の絶縁部品として、例えば、電子電気機器部品の筐体、コネクター、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ等に好適に使用することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリスチレン(B)を3〜60質量部、ポリカーボネート樹脂(C)を0.5〜20質量部及びアンチモン化合物(D)を0.5〜20質量部含有し、樹脂組成物中の遊離の臭素含有量が500質量ppm以下であるポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)が連続相を形成し、臭素化ポリスチレン(B)相、ポリカーボネート樹脂(C)相及びアンチモン化合物(D)相は熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の連続相に分散して存在し、
成形体の表層部においては、臭素化ポリスチレン(B)相が樹脂の流れ方向に配向しているモルフォロジーを有することを特徴とする。
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、このようなモルフォロジーを形成することで、靱性等の機械的強度に優れ、電気特性と難燃性にも優れるものと推察される。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体の主成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、その主成分がポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
また、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合されているものも好ましい。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。
本発明のポリエステル樹脂組成物が含有する臭素化ポリスチレン(B)としては、好ましくは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
なお、前記一般式(1)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレン(B)は、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレン(B)は単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合は、質量平均分子量(Mw)は50,000〜70,000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合は、質量平均分子量(Mw)は10,000〜30,000程度であることが好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
不純物である塩素化合物の主成分は、塩素化スチレンであるが、塩素化合物が上記量以上存在すると、本発明のモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる。なお、塩素化合物含有量は、270℃×10分間の加熱により発生したガスを、ガスクロマトグラフィー法により分析し、デカン換算の値として定量することができる。
ポリエステル樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(C)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂(C)の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、難燃助剤であるアンチモン化合物(D)を含有する。
アンチモン化合物(D)としては、三酸化アンチモン(Sb2O3)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、三酸化アンチモンが好ましい。
アンチモン化合物(D)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部であり、より好ましくは0.7〜18質量部、さらに好ましくは1〜15質量部、特には2〜13質量部、最も好ましくは3〜10質量部である。
本発明で使用するポリエステル樹脂組成物は、樹脂組成物中の遊離臭素の含有量が500質量ppm以下であることを特徴とする。樹脂組成物中の遊離臭素の含有量が500質量ppmを上回ると、耐トラッキング性、靭性、耐金属腐食性、耐金型汚染性が悪くなり、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる。遊離臭素含有量の好ましい上限は、350質量ppm、より好ましくは200質量ppm、さらに好ましくは150質量ppm、特に好ましくは100質量ppmである。
なお、樹脂組成物中の遊離臭素含有量は、臭素がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。臭素は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気、樹脂の冷却水等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、500質量ppm以下と制御することが好ましい。
臭素化ポリスチレン(B)が含有する遊離の塩素が、樹脂組成物の処理時や成形時等の高温になる際に脱離すると考えられ、樹脂組成物中の遊離の塩素の含有量が500質量ppmを超えると、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)に悪影響を与え、樹脂組成物の耐熱変色性、色調及び耐光変色性を悪化させやすく、耐金属腐食性及び耐金型汚染性の低下を引き起こしやすい。また、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる傾向にある。
遊離塩素含有量の好ましい上限は、350質量ppm、より好ましくは200質量ppmであり、さらに好ましくは150質量ppmであり、特に好ましくは100質量ppmである。また、含有量を0質量ppmまでに除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、その下限量は、通常1質量ppmであり、好ましくは5質量ppmであり、より好ましくは10質量ppmである。
なお、樹脂組成物中の硫黄含有量は、硫黄がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。硫黄は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、250質量ppm以下と制御することが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)が連続相を形成し、臭素化ポリスチレン(B)相、ポリカーボネート樹脂(C)相及びアンチモン化合物(D)相は熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の連続相に分散して存在し、成形体の表層部においては臭素化ポリスチレン(B)相が樹脂の流れ方向に配向しているモルフォロジーを有することを特徴とする。
本発明のポリエステル樹脂組成物成形体のモルフォロジーの観察は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)などにより成形体断面を観察することで測定でき、好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される。
具体的には、SEM/EDX分析装置を用い、成形体断面のコア部(深さ0.2mm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に垂直な断面。)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000〜10,000倍の反射電子像により観察される。
また、成形体コア部のアンチモン化合物(D)の分散平均径は、4μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下、特には2μm以下である。
臭素化ポリスチレン(B)分散相やアンチモン化合物(D)相の粒径は、分散相の50個以上の粒子径を測定し、算術平均して算出される。分散相が円状でない場合は、長径と短径を測定し、平均値をその粒子の粒径とする。
この特徴的な表層のモルフォロジーは、例えば、図2に示される。図2は、本発明の実施例1で得られた成形体の表層部のSEM/EDX分析による反射電子像の写真(倍率10,000倍)である。
図2において、成形時の樹脂の流れ方向は図2の左から右への方向であり、連続相(マトリックス相)を構成しているのは熱可塑性ポリエステル樹脂(A)であり、その中にそれより白い、流れ方向に長い島状のものが臭素化ポリスチレン(B)の分散相である。臭素化ポリスチレン(B)分散相が樹脂の流れ方向に延び、配向していることが確認される。また、図2において、最も白い部分(丸又は四角等)はアンチモン化合物(D)相であり表層部においても独立して分散していることが分かる。
このように、本発明の成形体は特異なモルフォロジーを有する。
本発明の成形体は、このようなモルフォロジー構造を有することによって、靱性(引張強度、引張破断伸度)に優れ、難燃性と耐トラッキング性等の電気特性に優れた成形体となる。
本発明の樹脂組成物成形体の製造に用いるポリエステル樹脂組成物は、押出機等の溶融混練機を用いた溶融混練法により製造することが好ましいが、ポリエステル樹脂組成物の原料各成分を混合して、単に混錬するだけでは、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成することは難しく、特別の方法により混錬することが推奨される。以下に、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成するための好ましい製造方法について、説明する。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、10<(L/D)<100の関係を満足することが好ましく、15<(L/D)<70を満足することがより好ましい。かかる比が10以下では、臭素化ポリスチレン(B)が表層で配向しにくく、逆に100を超えても、臭素化ポリスチレン(B)の熱劣化が著しく、表層で配向しにくい傾向にあり好ましくない。
ダイノズルの形状も特に限定されないが、ペレット形状の点で、直径1〜10mmの円形ノズルが好ましく、直径2〜7mmの円形ノズルがより好ましい。
5×102<(γ・T)<9.9×105
の関係を満足することにより、臭素化ポリスチレン(B)が表層において配向しやしく、電気絶縁性、靱性、難燃性が向上する傾向にあり好ましい。(γ・T)の値が5×102以下の場合は、臭素化ポリスチレン(B)が表層で配向しにくく、また、樹脂組成物の各成分の分散不良により成形品表面が肌荒れ現象を起こしやすく、機械的特性、難燃性、絶縁特性等が安定しない傾向がある。また、逆に9.9×105を超える場合は、臭素化ポリスチレン(B)が表層で配向しにくく、アンチモン化合物(D)が凝集する傾向があり、靱性が低下する場合があるので好ましくない。(γ・T)の下限は1.2×103であることがより好ましく、上限は8.5×105であることがより好ましい。
(γ・T)の値を上記の範囲に調整するためには、上記のせん断速度とストランドの表面温度を調整すればよい。
1)臭素化ポリスチレン(B)中の不純物である塩素化合物の含有量を、通常0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらには0.08質量%以下、特には0.03質量%以下とすることが好ましい。このように制御することで、本発明で規定のモルフォロジー構造を安定して形成しやすくなる。
不純物である塩素化合物の主成分は、塩素化スチレンであるが、塩素化合物が上記量以上存在すると、本発明のモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる。なお、塩素化合物含有量は、70℃×10分間の加熱により発生したガスを、ガスクロマトグラフィー法により分析し、デカン換算の値として定量することができる。
遊離の臭素の量は、0.5質量%以下とすることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以下であることがさらに好ましい。遊離臭素の含有量が0.5質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の遊離臭素量が多くなり、樹脂組成物の処理時や成形時等の高温になる際に脱離し、樹脂組成物の耐熱変色性、色調及び耐光変色性を悪化させたり、成形時に金型等の金属腐食や金型汚染を引き起こす場合があり、さらには、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して製造しにくくなる傾向にある。また、遊離臭素の含有量を0質量%まで除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、含有量の下限は、通常0.001質量%であり、0.005質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%である。
遊離の塩素の量は、0.2質量%以下とすることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以下であることがさらに好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。臭素化ポリスチレン(B)中の塩素の含有量が0.2質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の塩素含有量が多くなりすぎ、耐トラッキング性、靭性、耐金属腐食性、耐金型汚染性が悪くなる傾向にあり、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して製造しにくくなる傾向にある。
また、遊離の硫黄の量は、0.1質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以下であることがさらに好ましい。臭素化ポリスチレン(B)中の硫黄の含有量が0.1質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の硫黄含有量が多くなりすぎ、耐トラッキング性、耐金属腐食性、耐金型汚染性が悪くなる傾向にあり、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して製造しにくくなる傾向にある。
遊離の塩素の量は、500ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、特に好ましくは150ppm以下である。なお、樹脂組成物中の遊離塩素含有量は、塩素がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。塩素は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気、樹脂の冷却水等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、500ppm以下と制御することが好ましい。
また、遊離の硫黄の量は、250ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましく、50ppm以下が最も好ましい。なお、樹脂組成物中の遊離硫黄含有量は、硫黄がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。硫黄は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、250ppm以下と制御することが好ましい。
ポリエステル樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
特にリン系安定剤を含有すると、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と臭素化ポリスチレン(B)及びポリカーボネート樹脂(C)との相互の相溶性を格段に向上させることができ、かつ表層部で臭素化ポリスチレンが配向する傾向にあり、薄肉成形体においても優れた伸び性を発現することができる。
(R1O)3−nP(=O)OHn
(式中、R1は、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)で表される化合物である。
より好ましくは、R1が炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA(株)の商品名「アデカスタブ AX−71」として、市販されている。
R2O−P(OR3)(OR4)
(式中、R2、R3及びR4は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基であり、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは炭素数6〜30のアリール基である。)で表される化合物が挙げられる。
R5−P(OR6)(OR7)
(式中、R5、R6及びR7は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、R5、R6及びR7のうちの少なくとも1つは炭素数6〜30のアリール基である。)で表される化合物が挙げられる。
リン系安定剤としては、前述したように、優れた相溶性を発揮し、伸びや薄肉靭性を飛躍的に向上させるオクタデシルアシッドホスフェートが特に好ましい。
ポリエステル樹脂組成物は、臭素化ポリスチレン(B)以外の他の難燃剤を含有することもできる。他の難燃剤としては、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等があげられ、リン系難燃剤が好ましい。
ポリエステル樹脂組成物には、無機充填材を含有させてその機械的特性を向上させることができる。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等の繊維状無機充填材が挙げられるが、中でもガラス繊維を用いることが好ましい。本発明においては、無機充填材は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、100質量部以下、中でも20〜80質量部を含有させることが好ましい。
ポリエステル樹脂組成物は、滴下防止剤を含有することも好ましい。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものである。ポリテトラフルオロエチレンの具体例としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)より市販されている商品名「テフロン(登録商標)6J」又は「テフロン(登録商標)30J」、ダイキン化学工業(株)より市販されている商品名「ポリフロン」あるいは旭硝子(株)より市販されている商品名「フルオン」等が挙げられる。
滴下防止剤の含有割合は、好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1〜20質量部である。滴下防止剤が0.1質量部未満では難燃性が不十分になりやすく、20質量部を超えると外観が悪くなりやすい。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.3〜5質量部である。
ポリエステル樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、金属膜密着性を阻害しにくいという点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体として用いる。この成形体の形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の成形方法自体は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられるが、特には射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法等の射出成形による方法が好ましく適用される。
また、ポリエステル樹脂組成物成形体は、好ましくは、250V以上の比較トラッキング指数を有することを特徴とする。ここで比較トラッキング指数は、CTI UL746Aに準拠し、厚さ3mmの試験片にて測定される。
絶縁性部品としては、金属接点、銅版等と組み合わせることにより、リレー、スイッチ、コネクター、ターミナルスイッチ、センサー、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサーおよびマイクロアクチュエーター等の有接点電気電子機器部品や電気電子機器の筐体として好ましく用いることができる。
以下の表1に記載の各成分を表2に記載の配合割合(質量部)になるように、噛み合い型同方向2軸スクリュー式押出機(日本製鋼所(株)製「TEX30α」、スクリュー径32mm、L/D=54.2)に50kg/hrにて供給した。押出機のバレル設定温度をC1〜C15、ダイを250℃、スクリュー回転数を210rpmとし、ノズル数5穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)265sec−1の条件下でストランドとして押出した。押出した直後のストランド温度は275℃であった。
押出されたストランドを、温度を30〜50℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で70℃まで冷却され(γ・T=1.9×104)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットを、120℃で7時間加熱乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製「J85AD」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度100℃、射出圧150MPa、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、射出速度100mm/sec、背圧10MPa、スクリュー回転数100rpmの条件で、モルフォロジー観察用の60mm×60mm×厚さ3mmの平板状の試験片と、難燃性、絶縁特性及び薄肉靱性評価用の試験片を射出成形した。
以下の表1に記載の各成分を表2に記載の配合割合(質量部)になるように、噛み合い型同方向2軸スクリュー式押出機(日本製鋼所(株)製「TEX44αII」、スクリュー径47mm、L/D=55.2)に250kg/hrにて供給した。押出機のバレル設定温度をC1〜C15、ダイを250℃、スクリュー回転数を230rpmとし、ノズル数10穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)844sec−1の条件下でストランドとして押出した。押出した直後のストランド温度は290℃であった。
押出されたストランドを、温度を30〜50℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で120℃まで冷却され(γ・T=1.0×105)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットを、120℃で7時間加熱乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製「J85AD」)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧150MPa、射出保圧時間10sec、冷却時間14sec、射出速度110mm/sec、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpmの条件で、モルフォロジー観察用の60mm×60mm×厚さ3mmの平板状の試験片と、難燃性、絶縁特性及び薄肉靱性評価用の試験片を射出成形した。
SEM/EDX分析装置を用い、得られた試験片断面のコア部(深さ0.2mm未満の表層部以外の部分で、断面の中心部の、樹脂組成物流動方向に垂直な断面)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000〜10,000倍の反射電子像により観察し、臭素化ポリスチレン(B)、ポリカーボネート樹脂(C)、アンチモン化合物(D)がそれぞれ独立して分散相を形成しているかどうかを観察した。また、臭素化ポリスチレン(B)分散相の径は、各相の50個の粒子径を測定し、算術平均して算出した。なお、分散相が円状でない場合は、長径と短径を測定し、平均値をその径とした。
また、試験片表面から深さが0.2mmまでの表層部分について、加速電圧20kV、倍率3,000〜10,000倍の反射電子像により、臭素化ポリスチレン(B)分散相が樹脂流れ方向に配向しているかどうかを観察した。また、臭素化ポリスチレン(B)の配向分散相の長さは、各相の50個の分散相の樹脂流れ方向の長さを測定し、算術平均して算出した。
また、前述したように、ポリカーボネート樹脂を配合すると靱性が非常によくなり、また容易に破断点を形成することがないことが観察されることからも、ポリカーボネート樹脂(C)相は臭素化ポリスチレン(B)相に隣接して存在していると判断された。
さらに、前述のとおり、表層部では、図2から、臭素化ポリスチレン(B)分散相が樹脂の流れ方向に延び、配向していることが確認され、また、アンチモン化合物(D)相は表層部においても独立して分散していることが確認できた。
(2)難燃性(UL94):
アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み:0.75mm)を用いて難燃性を試験した。難燃性は、UL94記載の評価方法に従って、V−0、V−1及びV−2に分類した。V−0が最も難燃性が高い。
厚さ3.0mm、50φの円板の試験片を用い、試験法UL946A 23項で規定されている耐トラッキング性試験方法は、ASTM D3638に準拠して測定した。装置のノズルから電解液(塩化アンモニウム0.1%水溶液、23℃で抵抗率385Ω・cm)を30秒間隔で滴下させ、両白金電極間に600V以下(25Vステップ)の電圧を印加し、トラッキングが発生するまでの電解液滴下数を測定し、5回の平均値が50滴未満となる電圧を求めた。なお、数値が高いほど耐トラッキング性が良好であることを意味する。
なお、PLCの判定基準は、PLC2が、250V≦CTI<400V、PLC3が、175V≦CTI<250Vである。
ASTM D638に準拠して、厚さ1mmの試験片について、引張強度、引張破断伸度を測定した。引張破断伸度が大きいほど靭性が高いことを意味する。
燃焼イオンクロマトグラフィー法により定量した。三菱化学アナリテック(株)製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で臭素化ポリスチレン又はポリエステル樹脂組成物を加熱し、発生した臭素、塩素、硫黄の量を、日本ダイオネクス(株)製「ICS−90」を用いて測定した。
臭素化ポリスチレンを約0.02g秤量し、サンプル管に入れ、島津製作所社製のTD−20、カラムUA1701を使用し、ヘリウム30ml/minの気流下、270℃で10分間熱処理し、−20℃に冷却したクライオトラップで発生ガス総量を捕集した。
条件としては、カラムUA1701(50℃×2分保持後、260℃まで10℃/10minで昇温後、さらに300℃まで5℃/10minで昇温)を使用し、注入口温度270℃で捕集したガスをGCに導入し、発生ガスのトータルイオンクロマトグラムを測定し、n−デカンを内部標準として検出量を作成し、塩素化合物含有量を定量した。
以上の評価結果を、表2に示す。
Claims (7)
- 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリスチレン(B)を15〜30質量部、ポリカーボネート樹脂(C)を3〜13質量部、アンチモン化合物(D)を0.5〜20質量部、並びに有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物及び有機ホスホナイト化合物からなる群から選ばれるリン系安定剤を0.001〜0.5質量部含有し、樹脂組成物中の遊離の臭素含有量が100質量ppm以下であるポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)が連続相を形成し、臭素化ポリスチレン(B)相、ポリカーボネート樹脂(C)相及びアンチモン化合物(D)相は熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の連続相に分散して存在し、
成形体の表層部においては、臭素化ポリスチレン(B)相が樹脂の流れ方向に配向しているモルフォロジーを有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物成形体。 - ポリカーボネート樹脂(C)相は、臭素化ポリスチレン(B)相に隣接して存在している請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
- 成形体コア部における臭素化ポリスチレン(B)分散相の平均径が5μm以下である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
- 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の主成分が、ポリブチレンテレフタレートである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
- アンチモン化合物(D)が、三酸化アンチモンである請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
- 引張破断伸度(ASTM D638に準拠し、厚さ1mm(Type IV)の試験片にて測定)が、10%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
- 比較トラッキング指数(CTI、UL746A試験に準拠し、厚さ3mmの試験片にて測定)が、250V以上である請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物成形体。
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