JP7392927B2 - 含ケイ素鉄-白金ナノ微粒子触媒の製造方法 - Google Patents
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また、非特許文献1には、鉄錯体の存在下でアルケン類とトリアルコキシシラン類とを反応させ、アルキルトリアルコキシシラン類を得る方法が開示されている。しかしながら、前記鉄錯体は、空気中で不安定であるため、取り扱いが困難である。また、Karstedt’s触媒と同様、反応後に回収することが難しい。
に加熱することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子及び第1のヒドロシラン類を含有する混合物を加熱する加熱工程を含む、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
[2]
前記第1のヒドロシラン類が、式(A)で表される化合物である、[1]に記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
[3]
前記混合物が、さらに第1のアルケン類を含む、[1]又は[2]に記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
[4]
前記第1のアルケン類が、式(B)で表される化合物である、[3]記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
[5]
前記第1の配位性有機溶媒及び前記第2の配位性有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である、[1]~[4]の何れかに記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
[6]
前記混合物において、前記表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子に対する前記表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の金属換算での混合比(モル比)が、0.1以上10.0以下である、[1]~[5]の何れかに記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
[7]
[1]~[6]の何れかに記載の製造方法により含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を製造する触媒製造工程と、
前記含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程と、
を含む、有機ケイ素化合物の製造方法。
[8]
[1]~[6]の何れかに記載の製造方法により得られる含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触
媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む、有機ケイ素化合物の製造方法。
[9]
前記第2のアルケン類が、式(C)で表される化合物である、[7]又は[8]に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
[10]
前記第2のヒドロシラン類が、式(D)で表される化合物である、[7]~[9]の何れかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
[11]
前記ヒドロシリル化反応が、不活性雰囲気下で行われる、[7]~[10]の何れかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
[12]
前記ヒドロシリル化工程において、前記第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量が、1.0モル当量以上6.0モル当量未満である、[7]~[11]の何れかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
ない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
本発明の第1の実施形態は、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法であり、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子及び第1のヒドロシラン類を含有する混合物を加熱する加熱工程を含む。
[表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子]
本明細書において、「鉄ナノ粒子」とは、鉄元素を構成元素として含む粒子を意味する。従って、鉄を含むものであれば具体的な組成は特に限定されず、鉄単体のナノ粒子の他、鉄合金のナノ粒子;鉄単体のナノ粒子に酸素原子、炭素原子等のその他の原子がドープされているナノ粒子;酸化鉄等の無機鉄化合物のナノ粒子;等も含まれる。
鉄ナノ粒子に配位する第1の配位性有機溶媒は、目的の触媒反応に応じて適宜選択することができる。また、第1の配位性有機溶媒が鉄ナノ粒子に配位しているか否かについては、分散剤等による表面処理を施すことなく、鉄ナノ粒子触媒が第1の配位性有機溶媒中に安定的に分散するか否かで判断することができる。即ち、例えば第1配位性有機溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が配位した鉄ナノ粒子触媒は、DMFと親和性のある配位性有機溶媒に安定的に分散させることができる。
開2015-129103、国際公開第2018/131430号等に記載されているように、鉄元素を含んだ前駆体を第1の配位性有機溶媒中で加熱還流する方法が挙げられる。
本明細書において、「白金ナノ粒子」とは、白金元素を構成元素として含む粒子を意味する。従って、白金を含むものであれば具体的な組成は特に限定されず、白金単体のナノ粒子の他、白金合金のナノ粒子;白金単体のナノ粒子に酸素原子、炭素原子等のその他の原子がドープされているナノ粒子;酸化白金等の無機白金化合物のナノ粒子;等も含まれる。
白金ナノ粒子に配位する第2の配位性有機溶媒は、目的の触媒反応に応じて適宜選択することができる。また、第2の配位性有機溶媒が白金ナノ粒子に配位しているか否かは、第1の配位性有機溶媒が鉄ナノ粒子に配位しているか否かの判断と同様の手法により判断することができる。
第1のヒドロシラン類の具体的種類は、特に限定されず、例えば下記式(A)で表される化合物(以下、「ヒドロシラン類(A)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第1のヒドロシラン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
式(A)中、R1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3~20の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基を表す。
が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。
これらのうち、脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基である。また、脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
これらのうち、アルコキシ基は、好ましくは直鎖アルキル基である。また、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
キシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、カルバゾリル基等の炭素数3~12の芳香族複素環基;等が挙げられる。
なお、R1で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、炭素数3~20の芳香族複素環基又は炭素数1~20のアルコキシ基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はアルコキシ基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
式(A)中、nは、1~3の整数を表す。nは、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。
従って、具体的なヒドロシラン類(A)としては、例えば本発明の第2の実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法の説明において例示する第2のヒドロシラン類と同様の化合物が挙げられる。
本工程では、混合物は、さらに第1のアルケン類を含有していてもよい。例えば、アルケン類のヒドロシリル化反応に用いる含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を製造する場合には、触媒活性の向上、反応中の触媒の安定化等の観点から、混合物に第1のアルケン類を含有させることが好ましい。
第1のアルケン類の具体的種類は、特に限定されず、例えば下記式(B)で表される化合物(以下、「アルケン類(B)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第1のアルケン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
式(B)中、R2~R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~20の芳香族複素環基を表す。
は2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、また、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。
R2~R5が炭素数6~20の芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
R2~R5が炭素数3~20の芳香族複素環基である場合、その炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
なお、R2~R5で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基又は炭素数3~20の芳香族複素環基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
従って、具体的なアルケン類(B)としては、例えば本発明の第2の実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法の説明において例示する第2のアルケン類と同様の化合物が挙げられる。
本工程では、混合物は、さらに有機溶媒を含有していてもよい。ここで、有機溶媒とは、加熱工程における加熱温度において液体の状態で存在する有機化合物であって、第1のヒドロシラン類及び第1のアルケン類を含まないものとする。
第1のヒドロシラン類及び第1のアルケン類が、何れも加熱工程において液体の状態で存在しない場合は、混合物に有機溶媒を含有させることが好ましい。
不活性溶媒としては、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒が挙げられる。
第3の配位性有機溶媒としては、第1の配位性有機溶媒又は第2の配位性有機溶媒と同様の有機溶媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。第3の配位性有機溶媒は、第1の配位性有機溶媒又は第2の配位性有機溶媒と同一であってもよく、異なっていてもよいが、各ナノ粒子の分散性の観点から、第1~第3の配位性有機溶媒が全て同一の配位性有機溶媒であることが好ましい。
なお、これらの有機溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子と表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子との混合比は、特に限定されないが、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子に対する表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の金属換算での混合比(モル比)は、通常0.1以上10.0以下である。混合比は、前記範囲内において、目的の触媒反応、基質等に応じて適宜選択すればよい。例えば0.2以上、0.5以上又は1.0以上であってよく、5.0以下、3.0以下又は2.0以下であっ
てもよい。
加熱温度は、混合物の組成、加熱時間等に応じて適宜選択すればよく、通常70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、また、通常150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
加熱時間は、混合物の組成、加熱温度等に応じて適宜選択すればよく、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上、さらに好ましくは15時間以上、また、通常48時間以下、好ましくは42時間以下、より好ましくは36時間以下、さらに好ましくは30時間以下である。
加熱温度及び加熱時間を上記範囲内とすることにより、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子と表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子との混合物とは異なる触媒活性種を効率よく生じさせることができる。
本工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。
また、本実施形態においては、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子だけでなく、製造される含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒もまた、酸素及び湿気に対する安定性が高いため、本工程は、空気雰囲気下で行うことができる。本工程は、空気雰囲気以外にも、酸素又は湿気を含む雰囲気下で行ってもよく、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行ってもよい。
本実施態様に係る含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法においては、上記触媒加熱工程の他、精製工程等の任意の工程を含んでいてもよい。具体的な精製方法としては、ろ過、洗浄、減圧乾燥等により有機溶媒、未反応の第1のヒドロシラン類、第1のヒドロシ
ラン類の不均化物等を除去する方法が挙げられる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法について説明する。本実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により得られるケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む。
本実施形態に係る製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法によりケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を得る触媒製造工程を含んでいてもよい。
本実施形態に係る製造方法により製造される有機ケイ素化合物は、アルケン類とヒドロシラン類とを反応させて得られる化合物であって、分子中の少なくとも1つのケイ素原子に少なくとも1つのアルキル基が結合した化合物であれば、具体的な構造は特に限定されず、幅広い有機ケイ素化合物であってよい。具体的には、式(E1)又は(E2)で表される有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(E1)」又は「有機ケイ素化合物(E2)」と称することがある。)が挙げられる。
式(E1)及び(E2)中、R6~R9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~20の芳香族複素環基を表す。
これらのうち、脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基である。また、脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、また、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。
、ペリレニル基等が挙げられる。なお、芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
なお、R6~R9で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基又は炭素数3~20の芳香族複素環基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
また、R6~R9の特に好適な態様としては、R7~R9が何れも水素原子である態様;及びR6が炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、かつ、R7~R9が何れも水素原子である態様;が挙げられる。
式(E1)及び(E2)中、R10は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3~20の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基を表す。
0以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
R10が炭素数6~20の芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
R10が炭素数3~20の芳香族複素環基である場合、その炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
これらのうち、アルコキシ基は、好ましくは直鎖アルキル基である。また、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
なお、R10で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、炭素数3~20の芳香族複素環基又は炭素数1~20のアルコキシ基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はアルコキシ基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
また、式(E1)及び(E2)中にR10が複数ある場合、R10は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(E1)及び(E2)中、mは、1~3の整数を表す。mは、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。
触媒製造工程は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を製造する工程である。
本工程において、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造に用いる第1のアルケン類又は第1のヒドロシラン類は、それぞれ、後述する第2のアルケン類又は第2のヒドロシラン類と同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ヒドロシリル化工程は、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の存在下、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させることにより、有機ケイ素化合物を得る工程である。
以下に、本工程におけるヒドロシリル化反応の基質及び反応条件について詳細に述べる。
含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により得られるものであり、その詳細な説明は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法の説明及び本実施形態における触媒製造工程の説明を援用する。
基質として用いられるアルケン類の具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択することができる。第2のアルケン類としては、例えば下記式(C)で表される化合物(以下、「アルケン類(C)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第2のアルケン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
なお、上述のアリルグリシジルエーテル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル等のように、一分子中に複数のアルケニル基を有するアルケン類(C)に関しては、何れのアルケニル基においてもヒドロシリル化は進行し得るが、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の高い触媒活性に起因して、相当程度の収率で目的のヒドロシリル化生成物(アリル基のみがヒドロシリル化された化合物)が得られる。
基質として用いられる第2のヒドロシラン類の具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択することができる。第2のヒドロシラン類としては、例えば下記式(D)で表される化合物(以下、「ヒドロシラン類(D)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第2のヒドロシラン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
ヒドロシリル化反応に用いる含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の量は、特に限定されないが、アルケン類に対して総金属換算(鉄換算及び白金換算の合計)で通常0.01mol%以上、好ましくは0.03mol%以上、より好ましくは0.05mol%以上、さら
に好ましくは0.1mol%以上、また、通常5.0mol%以下、好ましくは2.0mol%以下、より好ましくは1.0mol%以下、さらに好ましくは0.5mol%以下で
ある。触媒量を上記範囲内とすることにより、基質の転化率、有機ケイ素化合物の収率、有機ケイ素化合物精製の容易性等を向上させることができる。
ヒドロシリル化工程において、第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量は、特に制限されないが、通常1.0モル当量以上6.0モル当量未満である。シランガスの生成量抑制の観点からは、第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量は、好ましくは5.0モル当量以下、より好ましくは4.0モル当量以下、さらに好ましくは3.0モル当量以下である。また、有機ケイ素化合物の収率向上の観点からは、第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量は、好ましくは1.5モル当量以上、より好ましくは2.0モル当量以上である。
本実施形態においては、ヒドロシリル化反応の触媒として含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を用いることにより、従来触媒を用いる場合よりもヒドロシラン類の量(仕込み量)が少なくても円滑にヒドロシリル化反応を進行させることができ、効率よく有機ケイ素化合物を製造することができる。
ヒドロシリル化工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。
また、ヒドロシリル化反応の従来触媒(特許文献1に記載の触媒)は、活性化に酸素を要し、不活性雰囲気下では十分な触媒活性が得られないところ、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒は、不活性雰囲気下でも高い触媒活性を示す。従って、本実施形態に係る製造方法では、ヒドロシリル化反応は、酸素、空気等の酸素含有雰囲気下で行うことができるのは勿論のこと、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下でも行うことができる。
本実施形態においては、ヒドロシリル化反応は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気下でヒドロシリル化反応を行うことにより、ヒドロシラン類の不均化が抑制される結果、シランガスの発生が抑制されるという利点がある。
ヒドロシリル化工程は、無溶媒で行ってもよく、反応溶媒中で行ってもよいが、無溶媒で行うことが好ましい。なお、本明細書において「無溶媒」とは、反応溶媒を意図的に反応系内に加えないことを意味し、反応系内に一切の溶媒が存在しないことを意味するものではない。
反応溶媒としては、特に限定されず、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジグリム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;酢酸、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒;アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;等が挙げられる。これらの反応溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。また、反応溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
反応温度は、触媒の種類、基質の反応性、反応溶媒の種類、反応時間等の反応条件に応
じて適宜選択すればよく、通常70℃以上150℃以下である。反応温度の下限は、反応速度の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。また、反応温度の上限は、ヒドロシラン類の不均化抑制の観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
反応時間は、触媒の種類、基質の反応性、反応溶媒の種類、反応温度等の反応条件に応じて適宜選択すればよく、通常1時間以上48時間以下である。有機ケイ素化合物の収率向上の観点から、反応時間の下限は、好ましくは4時間以上、より好ましくは10時間以上、さらに好ましくは15時間以上である。また、精製が容易となる点で、反応時間の上限は、好ましくは42時間以下、より好ましくは36時間以下、さらに好ましくは30時間以下である。
本実施態様に係る有機ケイ素化合物の製造方法においては、上記触媒製造工程及びヒドロシリル化工程の他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、有機ケイ素化合物の純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程においては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
なお、実施例におけるガスクロマトグラフィー(GC)の測定方法は、以下の通りである。
装置名:GC-2025(株式会社島津製作所)
カラム:BP-5(Trajan Scientific and Medical)
キャリアガス:窒素
(合成例1:表面にDMFが配位した鉄ナノ粒子の分散液の調製)
スクリュー管にFe(OAc)2 0.1mmol及びエタノール1mLを加え、Fe
(OAc)2が高分散状態になるまで静置することで、Fe(OAc)2分散液を得た。次いで、DMFで共洗いした三ツ口丸底フラスコに、空気雰囲気下で量り取ったDMF50mLを加え、1500rpmで攪拌しながらDMFを140℃で10分間予備加熱した。続いて、この三ツ口丸底フラスコにFe(OAc)2分散液500μLを加え、8時間加熱還流することにより、表面にDMFが配位した鉄ナノ粒子(以下、「FeNPs」と称することがある。)の分散液を得た。
Fe(OAc)2が全て酸化鉄ナノ粒子に変換されたと仮定すると、得られた分散液の鉄元素の濃度は、1.0mmol/Lとなる。
スクリュー管にH2PtCl6・6H2O 0.1mmol及びDMF1mLを加え、
H2PtCl6・6H2Oが高分散状態になるまで静置することで、H2PtCl6・6H2O分散液を得た。次いで、DMFで共洗いした三ツ口丸底フラスコに、空気雰囲気下で量り取ったDMF50mLを加え、1500rpmで攪拌しながらDMFを140℃で
10分間予備加熱した。続いて、この三ツ口丸底フラスコにH2PtCl6・6H2O分散液500μLを加え、10時間加熱還流することにより、表面にDMFが配位した白金ナノ粒子(以下、「PtNPs」と称することがある。)の分散液を得た。
H2PtCl6が全て金属白金ナノ粒子に変換されたと仮定すると、得られた分散液の白金元素の濃度は、1.0mmol/Lとなる。
シュレンク管に合成例1で得た分散液250μL(Fe換算で0.25μmol)及び合成例2で得た分散液250μL(Pt換算で0.25μmol)を加え、真空下でDMFを留去した。次いで、シュレンク管に1-ドデセン0.5mmol及びトリエトキシシラン3.0mmolを入れ、空気雰囲気下、100℃で24時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した。続いて、シュレンク管にヘキサン8mL及びDMF2mLを加えて撹拌し、静置した後に上澄み液をパスツールピペットで取り除いた。さらにシュレンク管にヘキサン8mLを加えて撹拌し、静置した後に上澄み液をパスツールピペットで取り除いた。沈殿物を真空下で乾燥することにより、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒(以下、「Fe-Pt-Si」と称することがある。)を得た。
シュレンク管に合成例1で得た分散液500μL(Fe換算で0.5μmol)及び合成例2で得た分散液500μL(Pt換算で0.5μmol)を加え、真空下でDMFを留去した。次いで、シュレンク管にトリエトキシシラン3.0mmolを加え、空気雰囲気下、100℃で10時間撹拌した。その後、真空下で、反応液から未反応のトリエトキシシラン等の揮発性成分を留去することにより、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒(以下、「Fe-Pt-[Si]」と称することがある。)を得た。
合成例3で得た含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒(Fe換算で0.25μmol、Pt換算で0.25μmol)が入ったシュレンク管内をアルゴンで置換した。シュレンク管に1-ドデセン1.0mmol(0.168g)及びトリエトキシシラン1.0mmol(0.164g)を加え、100℃に設定したオイルバスで加熱しながら、24時間攪拌した。反応液を氷浴にて冷却した後、反応液にヘキサン約10mL及び内部基準物質としてノナンを加え、GC測定を行った。GC測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
反応条件を表1の通りとした以外は、実施例1と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC-MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
シュレンク管に合成例1で得た分散液250μL(Fe換算で0.25μmol)及び合成例2で得た分散液250μL(Pt換算で0.25μmol)を加え、真空下で攪拌しながら分散媒を留去することで、FeNPs-PtNPs混合触媒を得た。
触媒をFeNPs-PtNPs混合触媒(Fe換算で0.25μmol、Pt換算で0.25μmol)に代えた以外は実施例1と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC-MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
反応条件を表1の通りとした以外は、比較例1と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC-MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
なお、表1には、参考のため、国際公開第2018/131430号の実施例18の結果を併せて示す。
また、触媒として含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を用いることで、不活性雰囲気下でもヒドロシリル化は円滑に進行することも示された。
さらに、実施例1、2では、GC測定においてシランガスは検出されなかった。
合成例4で得た含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒(Fe換算で0.25μmol、Pt換算で0.25μmol)が入ったシュレンク管内をアルゴンで置換した。シュレンク管に1-ドデセン0.5mmol(0.084g)及びトリエトキシシラン3.0mmol(0.493g)を加え、100℃に設定したオイルバスで加熱しながら、14時間攪拌した。反応液を氷浴にて冷却した後、反応液にヘキサン約10mL及び内部基準物質としてノナンを加え、GC測定を行った。GC測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表2に示す。
トリエトキシシランの量を表2の通りとした以外は、実施例3と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC-MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表2に示す。
また、当該含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を用いることで、アルケン類に対するヒドロシラン類の量を6.0モル当量とした場合(実施例3)は勿論のこと、5.0モル当量に低減した場合(実施例4)であっても、高収率で目的の有機ケイ素化合物が得られることが示された。
また、本発明によれば、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を利用することにより、過剰量のヒドロシラン類を要することなく、不活性雰囲気下でもアルケン類とヒドロシラン類との反応が進行し、効率的に所望の有機ケイ素化合物を製造することができる。この触媒反応では、多量のヒドロシラン類を使用しないため、反応の原子効率が高く、ヒドロシラン類の不均化物であるシランガスの発生も少ないため、工業的実施に有用である。さらには、当該触媒反応は、ヒドロシラン類としてトリアルコキシシラン類を用いた場合にも反応が円滑に進行するため、トリアルコキシ型のシランカップリング剤、その原料又はその中
間体の製造に特に有効に利用し得る。
Claims (10)
- 表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子及び第1のヒドロシラン類を含有する混合物を加熱する加熱工程(ただし、アルケンの存在下で行われるものを除く。)を含む、含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
- 前記第1の配位性有機溶媒及び前記第2の配位性有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である、請求項1又は2に記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
- 前記混合物において、前記表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子に対する前記表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の金属換算での混合比(モル比)が、0.1以上10.0以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の製造方法。
- 請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法により含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒を製造する触媒製造工程と、
前記含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程と、
を含む、有機ケイ素化合物の製造方法。 - 請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法により得られる含ケイ素鉄-白金ナノ粒子触媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む、有機ケイ素化合物の製造方法。
- 前記ヒドロシリル化工程が、不活性雰囲気下で行われる、請求項5~8の何れか1項に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
- 前記ヒドロシリル化工程において、前記第2のアルケン類に対する前記第2のヒドロシラン類の量が、1.0モル当量以上6.0モル当量未満である、請求項5~9の何れか1項に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
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