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JP7636723B2 - 酸化セルロース、ナノセルロース及びそれらの分散液 - Google Patents
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JP7636723B2 - 酸化セルロース、ナノセルロース及びそれらの分散液 - Google Patents

酸化セルロース、ナノセルロース及びそれらの分散液 Download PDF

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Description

本発明は、酸化セルロース、ナノセルロース及びそれらの分散液に関する。詳しくは、セルロース系原料が酸化剤で酸化された酸化セルロース及びこれを含む酸化セルロース分散液、並びに当該酸化セルロースが解繊されたナノセルロース及びこれを含むナノセルロース分散液に関する。
各種セルロース系原料を酸化剤で酸化し、得られた酸化セルロースを微細化することにより、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)等のナノセルロース材料を製造する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
特許文献1には、酸化剤として次亜塩素酸又はその塩を用い、反応系内の有効塩素濃度が14~43質量%の高濃度条件においてセルロース系原料を酸化して酸化セルロースを得ることが開示されている。特許文献2には、酸化剤として次亜塩素酸又はその塩を用い、反応系内の有効塩素濃度を6~14質量%として、pHを5.0~14.0に調整しながらセルロース系原料を酸化して酸化セルロースを得ることが開示されている。これらの技術では、触媒として2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(TEMPO)等のN-オキシル化合物を用いずに酸化処理を行うため、N-オキシル化合物がセルロース繊維中に残存しておらず、よって、環境等に及ぼす影響の低減を図りながらナノセルロース材料を製造することが可能である。
国際公開第2018/230354号 国際公開第2020/027307号
特許文献1及び特許文献2には、酸化セルロースを微細化処理してナノセルロース材料を製造する具体例として、超音波ホモジナイザーを用いた機械的処理による解繊工程を経てナノセルロース材料を得た例が開示されている。しかしながら、上記の処理は、解繊に必要なエネルギーの点で更なる改善の余地がある。ナノセルロース材料の製造においては、生産コストの観点から、温和な処理条件でも解繊が可能な易解繊性を有する酸化セルロースが求められている。また、微細化されたセルロース繊維を安定して製造するため、あるいは分散媒中での光散乱等が少なく透明性の高いナノセルロース材料を得るためには、ナノセルロース材料を解繊する前の状態である酸化セルロースの解繊性が良好であることが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、解繊性に優れた酸化セルロースを提供することを主たる目的とする。
上記課題を解決するべく、本発明によれば、以下の手段が提供される。
〔1〕 次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物である酸化セルロースであって、N-オキシル化合物を実質的に含まず、重合度が600以下である、酸化セルロース。
〔2〕 カルボキシ基量が0.30~2.0mmol/gである、〔1〕の酸化セルロース。
〔3〕 前記酸化セルロースの濃度0.1質量%水分散液を自転公転撹拌機にて公転速度2000rpm、自転速度800rpmで10分間の条件にて解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が60%以上である、〔1〕又は〔2〕の酸化セルロース。
〔4〕 セルロース系原料の酸化物である酸化セルロースであって、前記酸化セルロースの濃度0.1質量%水分散液を自転公転撹拌機にて公転速度2000rpm、自転速度800rpmで10分間の条件にて解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が60%以上である、酸化セルロース。
〔5〕 前記酸化セルロースが、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物である、〔4〕の酸化セルロース。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかの酸化セルロースが分散媒に分散された酸化セルロース分散液。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかの酸化セルロースが解繊されてなり、平均繊維幅が1~200nmである、ナノセルロース。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれかの酸化セルロースを、自転公転撹拌機にて公転速度1200~2500rpm、自転速度600~1000rpmで3~15分間の条件で解繊処理することにより得られる、ナノセルロース。
〔9〕 〔7〕又は〔8〕のナノセルロースが分散媒に分散されたナノセルロース分散液。
本発明によれば、解繊性に優れた酸化セルロースを得ることができる。特に、本発明の酸化セルロースは、温和な条件で解繊処理を行った場合にも均一に微細化させることができ、易解繊性に優れている。
《酸化セルロース》
本開示の酸化セルロース(以下、「本酸化セルロース」ともいう)は、セルロース系原料が次亜塩素酸又はその塩で酸化された繊維状セルロースであり、解繊処理前のものである。本酸化セルロースは、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物ともいうことができる。なお、植物の主成分はセルロースであり、セルロース分子が束になったものがセルロースミクロフィブリルと称される。セルロース系原料中のセルロースもまた、セルロースミクロフィブリルの形態で含まれている。
なお、「酸化セルロース」は、上記のとおり酸化された繊維状セルロースであるため、「酸化セルロース繊維」とも称する。
酸化セルロースは、セルロース系原料が次亜塩素酸又はその塩で酸化されているため、N-オキシル化合物を実質的に含まない。ここで、本明細書において、「N-オキシル化合物を実質的に含まない」とは、酸化セルロース中にN-オキシル化合物を全く含まないか、又はN-オキシル化合物の含有量が酸化セルロースの総量に対して、2.0質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1.0質量ppm以下である。また、N-オキシル化合物の含有量が、セルロース系原料からの増加分として、好ましくは2.0質量ppm以下、より好ましくは1.0質量ppm以下である場合も、「N-オキシル化合物を実質的に含まない」ことを意味する。
N-オキシル化合物を実質的に含んでいないことにより、環境や人体への影響が懸念されているN-オキシル化合物を、酸化セルロースに残留させることを抑制できる。N-オキシル化合物の含有量は、公知の手段で測定することができる。公知の手段としては、微量全窒素分析装置を用いる方法が挙げられる。具体的には、酸化セルロース中のN-オキシル化合物由来の窒素成分は、微量全窒素分析装置(例えば、三菱ケミカルアナリテック社製、装置名:TN-2100H等)を用いて窒素量として測定することができる。
以下、本酸化セルロースについて詳しく説明する。
[重合度]
本開示の好適な実施の一形態において、本酸化セルロースの重合度は600以下である。本酸化セルロースの重合度が600を超えると、解繊に大きなエネルギーを要する傾向にあり、十分な易解繊性を発現することができない傾向がある。また、本酸化セルロースの重合度が600を超えると、解繊が不十分な酸化セルロースが多くなるため、これを微細化したナノセルロースを分散媒中に分散させた場合に光散乱等が多くなり、透明度が低下することがある。また更に、得られるナノセルロースの大きさにばらつきが生じ、品質が不均一となる傾向がある。このため、ナノセルロースを固体粒子と共に含むスラリー(以下、「ナノセルロース含有スラリー」ともいう)の粘度が不安定になり、またスラリーのハンドリング性及び塗工性が低下する場合がある。易解繊性の観点からは、本酸化セルロースの重合度の下限は特に設定されない。ただし、本酸化セルロースの重合度が50未満であると、繊維状というより粒子状のセルロースの割合が多くなり、スラリーの品質が不均一になり粘度が不安定になる上に、ナノセルロースの特徴の一つであるチクソ性が得られにくくなる。上記の観点から、本酸化セルロースの重合度は、50~600であることが好ましい。
本酸化セルロースの重合度は、より好ましくは580以下であり、更に好ましくは560以下であり、より更に好ましくは550以下であり、一層好ましくは500以下であり、より一層好ましくは450以下、更に一層好ましくは400以下である。重合度の下限については、スラリーの粘度安定性及び塗工性を良好にする観点から、より好ましくは60以上であり、更に好ましくは70以上であり、より更に好ましくは80以上であり、一層好ましくは90以上であり、より一層好ましくは100以上であり、更に一層好ましくは110以上であり、特に好ましくは120以上である。重合度の好ましい範囲は、既述の上限及び下限を適宜組み合わせることにより定めることができる。本酸化セルロースの重合度は、より好ましくは60~600であり、更に好ましくは70~600であり、より更に好ましくは80~600であり、更により好ましくは80~550であり、一層好ましくは80~500であり、より一層好ましくは80~450であり、特に好ましくは80~400である。
なお、酸化セルロースの重合度は、酸化反応の際の反応時間、反応温度、pH、及び次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度等を変更することにより調整することができる。具体的には、酸化度を高めると重合度が低下する傾向があることから、重合度を小さくするには、例えば酸化の反応時間及び/又は反応温度を大きくする方法が挙げられる。他の方法として、酸化セルロースの重合度は、酸化反応時の反応系の攪拌条件によって調整することができる。例えば、攪拌翼等を用いて反応系を十分に均一化した条件下であれば、酸化反応が円滑に進行し、重合度が低下する傾向がある。一方、スターラーによる攪拌等のように反応系の攪拌が不十分となりやすい条件下では、反応が不均一になりやすく、本セルロース繊維の重合度を十分に低減することが難しい。また、酸化セルロースの重合度は、原料セルロースの選択によっても変動する傾向がある。このため、セルロース系原料の選択によって酸化セルロースの重合度を調整することもできる。なお、本明細書において、酸化セルロースの重合度は、粘度法により測定された平均重合度(粘度平均重合度)である。詳細は、後述する実施例に記載の方法に従う。
[カルボキシ基量]
本酸化セルロースのカルボキシ基量は、0.30~2.0mmol/gであることが好ましい。当該カルボキシ基量が0.30mmol/g以上であると、酸化セルロースに十分な易解繊性を付与することができる。これにより、温和な条件によって解繊処理を行った場合にも、品質が均一化されたナノセルロース含有スラリーを得ることができ、スラリーの粘度安定性、ハンドリング性及び塗工性を向上させることができる。一方、カルボキシ基量が2.0mmol/g以下であると、解繊処理時にセルロースが過度に分解することを抑制でき、粒子状のセルロースの比率が少なく品質が均一なナノセルロースを得ることができる。こうした観点から、本酸化セルロースのカルボキシ基量は、より好ましくは0.35mmol/g以上であり、更に好ましくは0.40mmol/g以上であり、より更に好ましくは0.42mmol/g以上であり、更により好ましくは0.50mmol/g以上であり、一層好ましくは0.50mmol/g超過であり、より一層好ましくは0.55mmol/g以上である。カルボキシ基量の上限については、より好ましくは1.5mmol/g以下であり、更に好ましくは1.2mmol/gであり、より更に好ましくは1.0mmol/g以下であり、更により好ましくは0.9mmol/gである。カルボキシ基量の好ましい範囲は、既述の上限及び下限を適宜組み合わせることにより定めることができる。本酸化セルロースのカルボキシ基量は、より好ましくは0.35~2.0mmol/gであり、更に好ましくは0.35~1.5mmol/gであり、より更に好ましくは0.40~1.5mmol/gであり、更により好ましくは0.50~1.2mmol/gであり、一層好ましくは0.50超過~1.2mmol/gであり、より一層好ましくは0.55~1.0mmol/gである。
なお、酸化セルロース中のカルボキシ基量(mmol/g)は、酸化セルロースを水と混合した水溶液に0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11.0になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から下記式を用いて算出した値である。詳細は、後述する実施例に記載の方法に従う。酸化セルロースのカルボキシ基量は、酸化反応の反応時間、反応温度、反応液のpH等を変更することにより調整することができる。
カルボキシ基量=a(ml)×0.05/酸化セルロース質量(g)
本酸化セルロースは、例えば、反応系内における次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度を比較的高濃度(例えば、14質量%~43質量%)とした条件でセルロース系原料を酸化することにより得ることができる。
本酸化セルロースは、好適には、セルロースを構成するグルコピラノース環の水酸基のうち少なくとも2個が酸化された構造を有し、より具体的には、グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有する。また、本酸化セルロースにおけるグルコピラノース環の第6位の水酸基は酸化されず、水酸基のままであることが好ましい。なお、酸化セルロースが有するグルコピラノース環におけるカルボキシ基の位置は、固体13C-NMRスペクトルにより解析することができる。
上記固体13C-NMRスペクトルにおいて、グルコピラノース環の第2位及び第3位のカルボキシ基に対応するピークが観測されることによって、酸化された構造を有すると判断することができる。このとき、第2位及び第3位のカルボキシ基に対応するピークは、165ppm~185ppmの範囲にブロードなピークとして観測されうる。ここでいうブロードなピークは、ピークの面積比率により決めることができる。
すなわち、NMRスペクトルにおける165ppm~185ppmの範囲のピークにベースラインを引いて、全体の面積値を求めた後、ピークトップで面積値を垂直分割して得られる2つのピーク面積値の比率(大きな面積値/小さな面積値)を求め、該ピーク面積値の比率が1.2以上であればブロードなピークであるといえる。
また、上記ブロードなピークの有無は、165ppm~185ppmの範囲のベースラインの長さLと、上記ピークトップからベースラインへの垂線の長さL’との比によって判断することができる。すなわち、比L’/Lが0.1以上であれば、ブロードなピークが存在すると判断できる。上記比L’/Lは、0.2以上であってもよく、0.3以上であってもよく、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよい。比L’/Lの上限値は特に制限されないが、通常3.0以下あればよく、2.0以下であってもよく、1.0以下であってもよい。
また、本ナノセルロースの上述したグルコピラノース環の構造は、Sustainable Chem. Eng. 2020, 8, 48, 17800-17806に記載の方法に準じて解析することにより決定することもできる。
こうした本開示の酸化セルロースは解繊性に優れている。特に、本酸化セルロースは、温和な条件で解繊処理を行った場合にも均一に微細化することができ、易解繊性に優れている。また、微細化した酸化セルロースを顔料等の無機粒子と混合してスラリー状態とした場合に、スラリー粘度が経時的に安定であり、かつハンドリング性及び塗工性に優れている。また、N-オキシル化合物を含まないため、環境等への影響を低減することができる。
[酸化セルロースの製造方法]
次に、本酸化セルロースの製造方法について説明する。本酸化セルロースは、セルロース系原料を次亜塩素酸又はその塩で酸化する工程を含む方法により製造することができる。
セルロース系原料は、セルロースを主体とする材料であれば特に限定されず、例えば、パルプ、天然セルロース、再生セルロース、及びセルロースを機械的処理することにより解重合した微細セルロース等が挙げられる。セルロース系原料としては、パルプを原料とする結晶セルロース等の市販品をそのまま使用することができる。その他、おからや大豆皮等、セルロース成分を多量に含む未利用バイオマスを原料としてもよい。また、使用する酸化剤を原料パルプの中に浸透しやすくする目的で、予めセルロース系原料を適度な濃度のアルカリで処理してもよい。
セルロース系原料の酸化に使用される次亜塩素酸又はその塩としては、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、及び次亜塩素酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさの点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
セルロース系原料の酸化により本酸化セルロースを製造する方法としては、セルロース系原料と、次亜塩素酸又はその塩を含む反応液とを混合する方法が挙げられる。反応液は、取り扱いやすい点や副反応が生じにくい点で、溶媒として水を含むことが好ましい。反応液における次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度は、6~43質量%であることが好ましく、7~43質量%であることがより好ましく、10~43質量%であることが更に好ましく、14~43質量%であることがより更に好ましい。反応液の有効塩素濃度が上記範囲であると、酸化セルロース中のカルボキシ基量を十分に多くでき、ナノセルロースを得る際に酸化セルロースの解繊を容易に行うことができる。
酸化セルロースのカルボキシ基量を効率的に十分に多くする観点から、反応液の有効塩素濃度は、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは18質量%以上であり、より更に好ましくは20質量%以上である。また、解繊時にセルロースが過度に分解することを抑制する観点から、反応液の有効塩素濃度は、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは38質量%以下である。反応液の有効塩素濃度の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができる。当該有効塩素濃度の範囲は、より好ましくは16~43質量%であり、更に好ましくは18~40質量%である。
なお、次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度は、以下のように定義される。次亜塩素酸は水溶液として存在する弱酸であり、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸の水素が他の陽イオンに置換された化合物である。例えば、次亜塩素酸塩である次亜塩素酸ナトリウムは溶媒中(好ましくは水溶液中)に存在するため、次亜塩素酸ナトリウムの濃度ではなく、溶液中の有効塩素量として濃度が測定される。ここで、次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素について、次亜塩素酸ナトリウムの分解により生成する2価の酸素原子の酸化力が1価の塩素の2原子当量に相当するため、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の結合塩素原子は、非結合塩素(Cl2)の2原子と同じ酸化力を持ち、有効塩素=2×(NaClO中の塩素)となる。測定の具体的な手順としては、まず試料を精秤し、水、ヨウ化カリウム及び酢酸を加えて放置し、遊離したヨウ素についてデンプン水溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し有効塩素濃度を測定する。
次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化反応は、pHを5.0~14.0の範囲に調整しながら行うとよい。この範囲であると、セルロース系原料の酸化反応を十分に進行させることができ、酸化セルロース中のカルボキシ基量を十分に多くすることができる。これにより、酸化セルロースの解繊を容易に行うことができる。反応系のpHは、より好ましくは6.0以上であり、更に好ましくは7.0以上であり、より更に好ましくは8.0以上である。反応系のpHの上限については、より好ましくは13.5以下であり、更に好ましくは13.0以下である。また、反応系のpHの範囲は、より好ましくは7.0~14.0であり、更に好ましくは8.0~13.5である。
以下、次亜塩素酸又はその塩として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合を例にして、本酸化セルロースを製造する方法について更に説明する。
次亜塩素酸ナトリウムを用いてセルロース系原料の酸化を行う場合、反応液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度を目的とする濃度(例えば、目的濃度:6質量%~43質量%)に調整する方法としては、目的濃度よりも有効塩素濃度の低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を濃縮する方法、目標濃度よりも有効塩素濃度の高い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する方法、及び次亜塩素酸ナトリウムの結晶(例えば、次亜塩素酸ナトリウム5水和物)を溶媒に溶解する方法等が挙げられる。これらの中でも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する方法、又は次亜塩素酸ナトリウムの結晶を溶媒に溶解する方法により酸化剤としての有効塩素濃度に調整することが、自己分解が少なく(すなわち、有効塩素濃度の低下が少なく)、有効塩素濃度の調整が簡便であるため好ましい。
セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを混合する方法は特に限定されないが、操作の容易性の観点から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にセルロース系原料を加えて混合することが好ましい。
セルロース系原料の酸化反応を効率良く進行させるために、酸化反応中は、セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との混合液を撹拌しながら行うことが好ましい。撹拌の方法としては、例えば、マグネチックスターラー、撹拌棒、撹拌翼付き撹拌機(スリーワンモータ)、ホモミキサー、ディスパー型ミキサー、ホモジナイザー、外部循環撹拌等が挙げられる。これらのうち、セルロース系原料の酸化反応が円滑に進行し、酸化セルロースの重合度を所定値以下に調整しやすい点で、ホモミキサー及びホモジナイザー等のせん断式撹拌機、撹拌翼付き撹拌機、並びにディスパー型ミキサーのうち1種又は2種以上を用いる方法が好ましく、攪拌翼付き撹拌機を用いる方法が特に好ましい。撹拌翼付き撹拌機を用いる場合、撹拌機としては、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼等の公知の撹拌翼を備える装置を使用することができる。また、撹拌翼付き撹拌機を用いる場合、回転速度50~300rpmにて撹拌を行うことが好ましい。
酸化反応における反応温度は、15℃~100℃であることが好ましく、20℃~90℃であることがより好ましい。反応中は、酸化反応によりセルロース系原料にカルボキシ基が生成することに伴い反応系のpHが低下する。このため、酸化反応を効率良く進行させる観点から、アルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム等)又は酸(例えば、塩酸等)を反応系中に添加し、反応系のpHを調整しながら酸化反応を行うことが好ましい。酸化反応の反応時間は、酸化の進行の程度に従って設定することができるが、15分~50時間程度とすることが好ましい。反応系のpHを10以上とする場合には、反応温度を30℃以上及び/又は反応時間を30分以上に設定することが好ましい。
上記反応により得られた酸化セルロースを含む溶液を用いて、ろ過等の公知の単離処理を行い、更に必要に応じて精製することにより、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物として酸化セルロースを得ることができる。また、ろ過等の単離処理の前に、単離処理のろ過性や収率を向上させる観点から、酸化セルロースを含む溶液に酸を添加し、例えばpHを4.0以下とし、酸化によって生成したカルボキシ基の少なくとも一部の塩型(-COO-+:X+はナトリウム、リチウム等の陽イオンを指す)からプロトン型(-COO-+)とすることができる。
なお、赤外吸収スペクトルにおいて、プロトン型は1720cm-1付近に、塩型は1600cm-1付近にピークが見られることから、それらを区別することができる。
なお、上記反応により得られた酸化セルロースを含む溶液をそのまま解繊処理に供してもよい。
酸化セルロースを含む溶液において、単離処理のためにpHを4.0以下としていた場合には、その後の解繊処理の用に供する際の取り扱い性を向上させるために、例えば塩基を添加してpHを6.0以上とし、カルボキシ基の少なくとも一部を塩型(-COO-+:X+はナトリウム、リチウム等の陽イオンを指す)とすることができる。また、酸化セルロースを含む溶液は、その溶媒を置換等することによって、酸化セルロースを含む組成物としてもよい。酸化セルロースを含む組成物においても、例えばpHを10以上のアルカリ条件とし、カルボキシ基の少なくとも一部を塩型(-COO-+:X+はナトリウム、リチウム等の陽イオンを指す)とすることができる。
本酸化セルロースの製造方法は、酸化セルロースの物性を制御するため、得られた酸化セルロースと、修飾基を有する化合物とを混合する工程をさらに含んでもよい。修飾基を有する化合物としては、酸化セルロースが有するカルボキシ基や水酸基とイオン結合又は共有結合を形成し得る修飾基を有する化合物であれば、特に限定されない。イオン結合を形成し得る修飾基を有する化合物として、例えば第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、及びホスホニウム化合物が挙げられる。共有結合を形成し得る修飾基を有する化合物として、例えばアルコール、イソシアネート化合物、及びエポキシ化合物が挙げられる。
以上のとおり、本酸化セルロースは、塩型、プロトン型、及び修飾基による変性型の態様を包含する。また、本酸化セルロースより得られるナノセルロースもまた塩型、プロトン型、及び修飾基による変性型の態様を包含する。
本酸化セルロースは、分散媒との混合物の態様としてもよい。すなわち、本発明の一つは、本酸化セルロースが分散媒に分散された酸化セルロース分散液である。分散媒としては、例えば、後述する分散媒と同様のものが挙げられる。
《ナノセルロース》
本開示のナノセルロース(以下、「本ナノセルロース」ともいう)は、セルロース系原料が酸化剤で酸化された酸化セルロースを解繊してナノ化することにより得ることができる。すなわち、本ナノセルロースは、セルロース系原料を次亜塩素酸又はその塩で酸化する工程と、当該工程により得られた酸化セルロースを解繊する工程とを含む方法により製造することができる。酸化工程については上述した通りである。
なお、「ナノセルロース」は、酸化された繊維状セルロースを微細化した繊維状セルロースであるため、「微細セルロース繊維」とも称する。
酸化セルロースを解繊する方法としては、例えば、機械的解繊による方法等が挙げられる。ここで、ナノセルロース(以下、ナノセルロースともいう)は、セルロースをナノ化したものの総称を表し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等を含む。
機械的解繊の方法としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、二重円筒型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、水流対抗衝突型分散機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー、一軸又は多軸混錬機、自転公転撹拌機、振動型撹拌機等の各種混合・撹拌装置による方法が挙げられる。これらの装置を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用し、好ましくは分散媒中で酸化セルロースを処理することにより、酸化セルロースをナノ化してナノセルロースを製造することができる。
本酸化セルロースの解繊は、解繊がより進んだナノセルロースを効率的に製造できる点で、例えば、超高圧ホモジナイザーによる方法を用いてもよい。超高圧ホモジナイザーにより解繊を行う場合、解繊処理時の圧力は、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは120MPa以上であり、更に好ましくは150MPa以上である。解繊処理回数は特に限定されないが、解繊を十分に進行させる観点から、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上である。
本酸化セルロースは易解繊性に優れるため、解繊方法として、例えば自転公転撹拌機及び振動型撹拌機等による温和な撹拌を適用した場合にも十分に解繊でき、均一化されたナノセルロースを得ることができる点で好適である。
自転公転撹拌機は、材料を投入する容器を自転及び公転させることにより容器内の材料を混合する装置である。自転公転撹拌機によれば、撹拌翼を用いずに撹拌が行われるため、より温和な撹拌を実現できる。自転公転撹拌機による撹拌時の公転速度及び自転速度は適宜設定し得るが、例えば、公転速度を400~3000rpmとし、自転速度を200~1500rpmとすることができる。自転公転撹拌機による場合、温和な撹拌を実現しつつ、品質の均一性を担保する観点から、公転速度1200~2500rpm、自転速度600~1000rpmで3~15分間撹拌する条件により解繊処理を行うことが好ましい。公転速度は、より好ましくは1500~2300rpmであり、自転速度は、より好ましくは700~950rpmである。自転公転撹拌機により本酸化セルロースの解繊を行う場合、材料とする酸化セルロース水分散体の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.1~0.5質量%である。
振動型撹拌機としては、例えば、ボルテックスミキサー(タッチミキサー)が挙げられる。ボルテックスミキサーでは、容器内の液体材料に渦を形成することによって撹拌が行われる。ボルテックスミキサー等の振動型撹拌機によれば、撹拌翼を用いずに撹拌が行われるため、より温和な撹拌を実現できる。また、ボルテックスミキサー等の振動型撹拌機によれば、簡易な設備によって温和な撹拌を実現できるため、生産設備及び生産コストの観点において優れている。ボルテックスミキサーの回転数は、例えば600~3000rpmであり、3~15分間撹拌する条件により解繊処理を行うことが好ましい。ボルテックスミキサーにより本酸化セルロースの解繊を行う場合、材料とする酸化セルロース水分散体の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.1~0.5質量%である。
解繊処理は、好ましくは本酸化セルロースを分散媒と混合した状態で行われる。当該分散媒としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。分散媒の具体例としては、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキサイド等が挙げられる。溶媒としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記分散媒のうち、アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
解繊処理の際に分散媒として有機溶剤を使用することにより、酸化セルロース及びこれを解繊して得られるナノセルロースの単離が容易となる。また、有機溶剤中に分散したナノセルロースが得られるため、有機溶剤に溶解する樹脂やその樹脂原料モノマー等との混合が容易となる。解繊して得られたナノセルロースを、水及び/又は有機溶剤の分散媒に分散させたナノセルロース分散液は、樹脂やゴム、固体粒子等の各種成分と混合するために使用することができる。
[平均繊維幅]
本ナノセルロースの平均繊維幅は、1~200nmであることが好ましい。特に、本酸化セルロースによれば、解繊処理により平均繊維幅が1~20nm、好ましくは1~10nm、より好ましくは1~5nmと十分にナノ化されたナノセルロースを得ることができる点で好適である。また、本ナノセルロースの平均繊維幅が1~5nmと十分に小さい場合、このナノセルロースを含むスラリーは、粘度が安定化しており、ハンドリング性及び塗工性が良好である。本ナノセルロースの平均繊維幅は、より好ましくは4.8nm以下であり、更に好ましくは4.5nm以下であり、より更に好ましくは4.2nm以下である。易解繊性の観点からは、平均繊維幅の下限は特に設定されない。ただし、平均繊維幅が1nm未満であるとセルロース単分子の態様に近くなり、ナノセルロースとしての品質が不均一になりやすい。このため、平均繊維幅は、1nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましい。
[平均繊維長]
本ナノセルロースの平均繊維長は、100~2000nmであることが好ましい。平均繊維長は、より好ましくは100~1000nmであり、更に好ましくは100~500nmであり、より更に好ましくは100~400nmである。
[アスペクト比]
本ナノセルロースにおいて、平均繊維幅と平均繊維長との比で表されるアスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)は、20~200であることが好ましい。当該アスペクト比は、より好ましくは30以上であり、更に好ましくは40以上である。また、アスペクト比は、より好ましくは180以下であり、更に好ましくは150以下である。
なお、平均繊維幅及び平均繊維長は、ナノセルロースの濃度が概ね1~10ppmとなるようにナノセルロースと水とを混合し、十分希釈したセルロース水分散体をマイカ基材上で自然乾燥させ、走査型プローブ顕微鏡を用いてナノセルロースの形状観察を行い、得られた像より任意の本数の繊維を無作為に選択し、形状像の断面高さ=繊維幅とし、周囲長÷2=繊維長とすることにより算出した値である。このような平均繊維幅及び平均繊維長の算出には、画像処理のソフトウェアを用いることができる。このとき画像処理の条件は任意であるが、画像処理の条件によって同一画像であっても算出される値に差が生じる場合がある。画像処理の条件による値の差の範囲は、平均繊維長については±100nmの範囲内であることが好ましい。条件による値の差の範囲は、平均繊維幅については±10nmの範囲内であることが好ましい。より詳細な測定方法は、後述の実施例に記載の方法に従う。
[光透過率]
本酸化セルロースによれば、温和な解繊条件によっても解繊を十分に進行させることができ、繊維幅が十分に小さいナノセルロースを得ることができる。また、得られたナノセルロースは繊維幅が十分に小さいため、分散媒中に分散した場合にセルロース繊維の光散乱等が少なく、高い光透過率を示す。したがって、本ナノセルロースは、透明性が要求される用途において有効に利用することができる。
具体的には、本酸化セルロースは、当該酸化セルロースの濃度0.1質量%水分散液を自転公転撹拌機にて公転速度2000rpm、自転速度800rpmで10分間の条件で解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が、60%以上の値を示すことが好ましい。このナノセルロース水分散液の光透過率は、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは75%以上であり、より更に好ましくは80%以上である。なお、光透過率は、分光光度計により測定した波長660nmでの値である。
また、本酸化セルロースは、当該酸化セルロースの濃度0.1質量%水分散液をボルテックスミキサーにて回転数3000rpmで10分間の条件で解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が、60%以上の値を示すことが好ましい。このナノセルロース水分散液の光透過率は、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは75%以上であり、より更に好ましくは80%以上である。
なお、本開示の酸化セルロースが解繊性(特に、易解繊性)に優れ、また高品質なスラリーを与える理由は定かではないが、概ね以下のことが考えられる。解繊は、セルロースミクロフィブリル同士の水素結合が切断されることにより進行する。次亜塩素酸又はその塩を用いた酸化処理では、酸化の進行に伴いミクロフィブリルの重合度の低下(すなわち、セルロース分子鎖の短鎖化)が起こる。この重合度の低下は、比較的高濃度の次亜塩素酸又はその塩で酸化した場合には、例えばTEMPO酸化法による場合に比べて、酸化度の増大に伴い重合度の低下が進行しやすい。このため、本実施の形態では、酸化処理によりミクロフィブリル1本1本において解繊によって切断すべき水素結合数が少なく、更には酸化の進行に伴いカルボキシ基量が増加することにより、ミクロフィブリル同士の反発力が強まり、酸化セルロースの解繊性が向上したものと考えられる。また、酸化セルロースの解繊性が向上したことにより、スラリーの粘度安定性、ハンドリング性及び塗工性を向上できるナノセルロースを得ることができたものと考えられる。
(他の実施形態)
本開示の好適な実施の他の一形態において、セルロース系原料が酸化剤で酸化された酸化セルロースが提供される。この酸化セルロースは、セルロース系原料の酸化物である酸化セルロースともいうことができる。本実施形態の酸化セルロースは、当該酸化セルロースの0.1質量%濃度水分散液を自転公転撹拌機にて公転速度2000rpm、自転速度800rpmで10分間の条件で解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が、60%以上である。
また、本開示の好適な実施の他の一形態において、本酸化セルロースは、当該酸化セルロースの0.1質量%濃度水分散液をボルテックスミキサーにて回転数3000rpmで10分間の条件で解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が、60%以上である。
すなわち、これらの他の形態の酸化セルロースによれば、温和な解繊条件によっても解繊が十分に進行し、繊維幅が1~5nm程度と十分に小さいナノセルロースを得ることができる。得られたナノセルロースは繊維幅が十分に小さいため、分散媒中に分散した場合にセルロース繊維の光散乱等が少なく、高い光透過率を示す。したがって、透明性が要求される用途において有効に利用することができる。また、上記他の形態の酸化セルロースを解繊することにより得られたナノセルロースは、解繊処理を温和な条件で行っても、ナノセルロース含有スラリーとした場合にスラリーの粘度の安定化を図ることができるとともに、スラリーのハンドリング性及び塗工性を良好にできる。
上記酸化剤としては、ハロゲン、次亜塩素酸又はその塩、過酸化物等が挙げられる。これらのうち、均一化されたナノセルロースを得ることができる点、及び環境負荷が少なくかつ安価である点で、好ましくは次亜塩素酸又はその塩である。次亜塩素酸又はその塩については既述のとおりである。
以上説明したナノセルロース及びこれを含むナノセルロース分散液は、種々の用途に適用することができる。具体的には、例えば、補強材として各種材料(例えば、樹脂、繊維、ゴム等)と混合されて使用されてもよいし、増粘剤又は分散剤等として各種用途(例えば、食品、化粧品、医療品、塗料、インク等)において使用されてもよい。また、ナノセルロース分散液を成膜し、各種シート又はフィルムとして使用することもできる。本ナノセルロース及びこれを含むナノセルロース分散液を適用する分野も特に限定されず、例えば自動車用部材、機械部品、電化製品、電子機器、化粧品、医療品、建築材、日用品、文具等といった各種分野の製品の製造において使用することができる。また、例えば、顔料等の無機粒子を含むスラリーへの添加剤としてナノセルロース及びこれを含むナノセルロース分散液を使用した場合には、スラリーの粘度安定性やハンドリング性、塗工性能を向上させることができる点で好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
(1)酸化セルロース及びナノセルロースの製造
〔製造例1〕
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495,bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル社製「ワンダーブレンダー WB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して、綿状に機械解繊した。
ビーカーに、有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を350g入れ、純水を加えて撹拌し、有効塩素濃度が21質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH11.0の水溶液とした。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にて、プロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴により30℃に加温した後、上記機械解繊した針葉樹クラフトパルプ(カルボキシ基量:0.05mmol/g)を50g加えた。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温した状態で、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを11.0に調整して、30分間、上記撹拌機にて、プロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌し、酸化反応を行った。反応終了後、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、酸化セルロースAを得た。得られた酸化セルロースAを純水で洗浄し、洗浄後のろ過上物(酸化セルロースA)につき、カルボキシ基量を測定したところ、0.45mmol/gであった。
続いて、酸化セルロースAに純水を加えて0.1%分散液を作製し、シンキー社製の自転公転ミキサー「あわとり練太郎 ARE-310」を使用して、ミックスモードにて公転速度2000rpm、自転速度800rpmの条件で10分間処理し、ナノセルロース分散液としてCNF水分散体Aを得た。
また、酸化セルロースA中のN-オキシル化合物由来の窒素成分を、微量全窒素分析装置(三菱ケミカルアナリテック社製、装置名:TN-2100H)を用いて窒素量として測定し、原料パルプからの増加分を算出した結果、1ppm以下であった。
なお、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は以下の方法により測定した。
(次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度の測定)
次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を純水に加えた水溶液0.582gを精密に量り、純水50mlを加え、ヨウ化カリウム2g及び酢酸10mlを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置した。15分間の放置後、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果(指示薬 デンプン試液)、滴定量は34.55mlであった。別に空試験を行い補正し、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mlが3.545mgClに相当するので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は21質量%である。
酸化セルロースのカルボキシ基量は以下の方法により測定した。
(カルボキシ基量の測定)
酸化セルロースの濃度を0.5質量%に調整した酸化セルロース水分散体60mlに、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11.0になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記式を用いてカルボキシ基量(mmol/g)を算出した。
カルボキシ基量=a(ml)×0.05/酸化セルロースの質量(g)
〔製造例2〕
酸化反応における反応時間を120分とした以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースB及びCNF水分散体Bを得た。
〔製造例3〕
酸化反応における反応時間を120分とし、セルロース系原料をティーディーアイ社製の粉末セルロース(VP-1)に変更した以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースC及びCNF水分散体Cを得た。
〔製造例4〕
酸化反応時間を120分とし、セルロース系原料を日本製紙社製の粉末セルロース(KCフロックW-100GK)に変更した以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースD及びCNF水分散体Dを得た。
〔製造例5〕
酸化反応時間を240分とした以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースE及びCNF水分散体Eを得た。
〔製造例6〕
酸化反応時間を360分とした以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースF及びCNF水分散体Fを得た。
〔製造例7〕
酸化反応温度を50℃とした以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースG及びCNF水分散体Gを得た。
〔製造例8〕
酸化反応時間を480分とした以外は製造例1と同条件にて処理することにより酸化セルロースH及びCNF水分散体Hを得た。
各製造例で得られた酸化セルロースを凍結乾燥させた後、23℃、50%RHで24時間以上放置した試料の固体13C-NMRを測定した結果、いずれもグルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有することが確認された。固体13C-NMRの測定条件を以下に示す。
(1)試料管:ジルコニア製管(4mm径)
(2)磁場強度:9.4T(1H共鳴周波数:400MHz)
(3)MAS回転数:15kHz
(4)パルスシーケンス:CPMAS法
(5)コンタクトタイム:3ms
(6)待ち時間:5秒
(7)積算回数:10000~15000回
(8)測定装置:JNM ECA-400(日本電子社製)
また、各製造例で得られた酸化セルロースが、グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有することは、当該酸化セルロースのモデル分子を試料とし、二次元NMRを測定した結果からも確認された。
また、第6位に係る、セルロース系原料の固体13C-NMRと、酸化セルロースの固体13C-NMRとのスペクトルデータの変化が見られなかったことから、第6位の水酸基は酸化されず、酸化セルロースにおいて水酸基のままであると判断した。
〔比較製造例1〕
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495,bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル社製「ワンダーブレンダー WB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して、綿状に機械解繊した。
100mlのビーカーに、有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を30.0g入れ、純水と35質量%の塩酸を加えて撹拌し、有効塩素濃度21質量%、pH11.0の水溶液とした。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスターラーで撹拌しながら恒温水槽にて30℃に加温した後、上記機械解繊した針葉樹クラフトパルプを0.35g加えた。
セルロース系原料を供給した後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、pH11.0を維持するために48質量%の水酸化ナトリウムを添加して、30分間スターラーで撹拌した。次に、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、酸化セルロースPを得た。得られたろ過上物(酸化セルロースP)を純水で洗浄した後にカルボキシ基量を測定したところ、0.42mmol/gであり、ろ過上物量は0.31gであった。
得られた酸化セルロースPを純水に分散させて0.1%分散液を作製し、シンキー社製の自転公転ミキサー「あわとり練太郎 ARE-310」を使用し、ミックスモードにて公転速度2000rpm、自転速度800rpmの条件で10分間解繊処理を行い、CNF水分散体Pを得た。
〔比較製造例2〕
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495,bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル社製「ワンダーブレンダー WB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して、綿状に機械解繊した。
ビーカーに、有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を30.3g入れ、純水を加えて撹拌し有効塩素濃度を14質量%とした。そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH9.0の水溶液とした。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスターラーで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、上記機械解繊した針葉樹クラフトパルプを0.35g加えた。
セルロース系原料を供給した後、同じ恒温水槽で30℃に保温した状態で、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを9.0に調整して、30分間スターラーで撹拌して酸化反応を行った。反応終了後、目開き0.1μmのPTFE製メッシュフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、酸化セルロースQを得た。得られたろ過上物0.12gを純水で洗浄した。洗浄後のろ過上物(酸化セルロースQ)につき、カルボキシ基量を測定したところ、1.12mmol/gであった。
続いて、酸化セルロースQに純水を加えて0.1%分散液を作製し、比較製造例1と同様の条件で解繊処理を行い、CNF水分散体Qを得た。
〔比較製造例3〕
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495,bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル社製「ワンダーブレンダー WB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して綿状に機械解繊した。機械解繊後のセルロース繊維を十分な水に分散し、目開き0.1μmのPTFE製メッシュフィルターを使用して吸引ろ過することにより湿粉を得た。
上記湿粉(水分80質量%、乾粉換算で20g)を容器内に入れ、続いて、オゾン濃度200g/m3のオゾン・酸素混合気体60Lを加え、25℃で2分間振とうした。6時間静置後、容器内のオゾン等を除去してから酸化セルロース(酸化セルロースR)を取り出し、目開き0.1μmのPTFE製メッシュフィルターを使用して吸引ろ過にて純水で洗浄した。得られた酸化セルロースRに純水を加えて2質量%分散液を作製し、水酸化ナトリウムを加えて水酸化ナトリウム0.3質量%液とした。5分間攪拌した後、25℃で30分間静置した。続いて、目開き0.1μmのPTFE製メッシュフィルターを使用して吸引ろ過にて純水で洗浄した。その酸化セルロースRに純水を加え0.1%分散液を作製し、比較製造例1と同様の条件で解繊処理し、CNF水分散体Rを得た。
〔比較製造例4〕
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495,bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル社製「ワンダーブレンダー WB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して、綿状に機械解繊した。
ビーカーに、過ヨウ素酸ナトリウム4.92gを入れ、純水を加えて水溶液(総量600ml)とした。この過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にて、プロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて55℃に加温した後、上記機械解繊した針葉樹クラフトパルプを6g加えた。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で55℃に保温しながら、3時間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。反応終了後、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、酸化セルロースSを得た後、純水で洗浄した。
次いで、亜塩素酸ナトリウムを含む1M酢酸水溶液に、上記で得られた生成物を加え、25℃で48時間、上記と同じ撹拌条件にて撹拌を行った。反応終了後、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、純水で洗浄した。得られた酸化セルロースSに純水を加えて0.1%分散液を作製し、比較製造例1と同様の条件で解繊処理し、CNF水分散体Sを得た。
〔比較製造例5〕
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495,bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル社製「ワンダーブレンダー WB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して、綿状に機械解繊した。
TEMPOを0.016g及び臭化ナトリウムを0.1gビーカーに入れ、純水を加えて撹拌して水溶液とし、上記機械解繊した針葉樹クラフトパルプを1.0g加えた。
上記水溶液をスターラーで撹拌しながら恒温水浴にて25℃に加温した後、0.1M水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、pH10.0の水溶液とした。そこへ、有効塩素濃度13.2質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液2.58gを加え、同じ恒温水槽で25℃に保温した状態で、0.1M水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを10.0に調整して、120分間スターラーで撹拌を行った。
反応終了後、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、酸化セルロースTを得た。得られたろ過上物(酸化セルロースT)を純水で洗浄した後に、カルボキシ基量を測定した。カルボキシ基量は1.55mmol/gで、ろ過上物量は約1.0gであった。得られた酸化セルロースTに純水を加えて0.1%分散液を作製し、比較製造例1と同様の条件で解繊処理し、CNF水分散体Tを得た。酸化セルロースT中のN-オキシル化合物由来の窒素成分を、製造例1と同様の条件で窒素量として測定し、原料パルプからの増加分を算出した結果、5ppmであった。
(2)評価1
〔実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-5〕
製造例1~8及び比較製造例1~5の各例で得られた酸化セルロース及びCNF水分散体を用いて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔粘度平均重合度の測定〕
pH10に調整した水素化ホウ素ナトリウム水溶液に酸化セルロースを加え、25℃で5時間、還元処理を行った。水素化ホウ素ナトリウム量は、酸化セルロース1gに対して0.1gとした。還元処理後、吸引ろ過にて固液分離、水洗を行い、得られた酸化セルロースを凍結乾燥させた。純水10mlに乾燥させた酸化セルロース0.04gを加えて2分間撹拌した後、1M銅エチレンジアミン溶液10mlを加えて溶解させた。その後、キャピラリー型粘度計にて25℃でブランク溶液の流下時間とセルロース溶液の流下時間測定した。ブランク溶液の流下時間(t0)とセルロース溶液の流下時間(t)、酸化セルロースの濃度(c[g/ml])から次式のように相対粘度(ηr)、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を順次求め、粘度測の式から酸化セルロースの重合度(DP)を計算した。
ηr=η/η0=t/t0
ηsp=ηr-1
[η]=ηsp/(100×c(1+0.28ηsp))
DP=175×[η]
〔平均繊維幅の測定〕
上記で得られた各CNF水分散体A~H,P~Tに純水を加え、CNF水分散体中のナノセルロースの濃度が5ppmになるように調整した。濃度調整後のCNF水分散体をマイカ基材上で自然乾燥させ、オックスフォード・アサイラム社製 走査型プローブ顕微鏡「MFP-3D infinity」を用いて、ACモードでナノセルロースの形状観察を行った。平均繊維幅については、「MFP-3D infinity」に付属されているソフトウェアを用いて、繊維50本以上について、形状像の断面高さ=繊維幅として数平均繊維幅[nm]を求めた。
〔易解繊性〕
○解繊方法A
上記で得られた各CNF水分散体A~H,P~Tを10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により波長660nmの光透過率を測定した。各CNF水分散体の固形分濃度は、いずれも0.1質量%であった。なお、光透過率が高いほど、温和な条件であっても十分に微細な繊維にまで解繊でき、易解繊性が良好であると判断できる。評価判定基準は以下のとおりである(解繊方法Bについても同じ)。
◎:光透過率が80%以上
○:光透過率が70%以上80%未満
△:光透過率が60%以上70%未満
×:光透過率が60%未満
○解繊方法B
上記で得られた各酸化セルロースA~H,P~Tを水と混合して、固形分濃度を0.1%に調整した酸化セルロース水分散体を作製した。この酸化セルロース水分散体を容量13.5mlのガラス製容器に採り、LMS社製のボルテックスミキサー(VTX-3000L)を使用して10分間処理し、CNF水分散体を得た。各CNF水分散体の固形分濃度は、いずれも0.1質量%であった。各CNF水分散体を10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により波長660nmの光透過率を測定した。各測定値について、解繊方法Aと同様に4段階で評価した。
〔スラリー粘度安定性〕
酸化チタン(石原産業社製、R-820)30質量%、及び各CNF水分散体A~H,P~Tを含む水系スラリー(50g)を、スラリーの作製直後の粘度である初期粘度が各例で同じ(300mPa・s)になるように、ナノセルロースの添加量を変えて作製した。水系スラリーを作製するための混合では、シンキー社のミキサー「あわとり練太郎ARE-310」(ミックスモード、公転:2000rpm、自転:800rpm、20分間)を使用した。
そして、作製直後(初期粘度)と1週間静置後の粘度を測定し、下記式より粘度変化率を算出すると共に、以下の評価判定基準に従って水系スラリーの粘度安定性を判定した。
粘度変化率(%)=(N2/N1)×100
(式中、N1はスラリーの初期粘度であり、N2は試料作製後1週間静置した後のスラリーの粘度である。)
◎:粘度変化率が105%未満
○:粘度変化率が105%以上110%未満
△:粘度変化率が110%以上115%未満
×:粘度変化率が115%以上
なお、静置は室内(23±2℃)とした。
スラリーの初期粘度及び1週間静置後の粘度は、スパチュラで泡が入らない程度の速さで撹拌した後、東機産業社のE型粘度計(TV-22)にて25℃、100rpm(せん断速度200s-1)の条件で測定した。
〔スラリーハンドリング性〕
各CNF水分散体A~H,P~Tに、ケイ酸アルミニウム粉が5質量%、ナノセルロースが0.5質量%となるようにケイ酸アルミニウム粉及び水を加えて配合・撹拌し、加工液を調製した。この加工液をスパチュラで軽く撹拌した後にすくい上げて、スパチュラを傾けた際の液だれを目視にて観察し、以下の基準に従ってスラリーハンドリング性を評価した。
◎:傾けて直ぐに液だれが生じた。
○:傾けて5秒以降に液だれが生じた。
△:傾けて10秒以降に液だれが生じた。
×:15秒以降でも液だれが生じなかった。
〔スラリー塗工後の表面状態(塗工性)〕
各CNF水分散体A~H,P~Tに、ケイ酸アルミニウム粉が5質量%、ナノセルロースが0.5質量%となるようにケイ酸アルミニウム粉及び水を加えて配合・撹拌し、加工液を調製した。ケイ酸アルミニウム粉加工量が5g/m2となるように織布(ポリエステル100%、100mm×100mm)に加工液を塗布し、乾燥した。塗布済み織布10枚について、塗布の不均一な箇所(加工ムラ)を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
◎:10枚全てで加工ムラが見えなかった。
○:8~9枚で加工ムラが見えなかった。
△:4~7枚で加工ムラが見えなかった。
×:1~3枚で加工ムラが見えなかったか、10枚全てで加工ムラが見えた。
なお、表1では、セルロース系原料の酸化処理の際にN-オキシル化合物を使用しなかった場合(すなわち、CNF分散体中にN-オキシル化合物を実質的に含まない場合)を「×」、N-オキシル化合物を使用した場合(すなわち、CNF分散体中にN-オキシル化合物を含む場合)を「○」で表した(表2についても同じ)。
実施例1-1~1-8の酸化セルロースは、自転公転ミキサー又はボルテックスミキサーによる温和な撹拌によってもセルロースミクロフィブリル同士が解れやすく、CNF水分散体とした場合に高い光透過率を示した。また、自転公転ミキサーによる解繊処理により、平均繊維幅が5nm以下の細いセルロース繊維を得ることができた。さらに、実施例1-1~1-8のスラリーは、粘度安定性、ハンドリング性及び塗工性のバランスが取れていた。特に、重合度が3桁のオーダーであった実施例1-1~1-7は、粘度安定性、ハンドリング性及び塗工性の全ての評価が「◎」又は「○」であり、スラリー特性に優れていた。
これに対し、重合度が730、650である比較例1-1,1-2は、自転公転ミキサー又はボルテックスミキサーによる温和な撹拌ではセルロースミクロフィブリル同士が解れにくく、易解繊性が「×」の評価であった。また、スラリー特性については全て「△」の評価であり、実施例1-1~1-8よりも劣っていた。酸化方法が異なる比較例1-3~1-5についても、易解繊性及びスラリー特性の評価が実施例よりも劣っていた。
(3)評価2
〔実施例2-1~2-11、比較例2-1~2-5〕
〔易解繊性〕
製造例1~8及び比較製造例1~5の各例で得られた酸化セルロースA~H,P~Tを用いて、酸化セルロースの濃度が0.1%(実施例2-1,2-2,2-4,2-6,2-8~2-11、比較例2-1~2-5)又は0.5%(実施例2-3,2-5,2-7)の酸化セルロース水分散体を調製した。この酸化セルロース水分散体を撹拌機で処理し、得られたCNF水分散体を10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により波長660nmの光透過率を測定した。なお、0.5%酸化セルロース水分散体の解繊により得られたCNF水分散体については、CNF水分散体を純水で0.1%に希釈して光透過率を測定した。撹拌機には、シンキー社製の自転公転ミキサー「あわとり練太郎 ARE-310」を使用し、ミックスモードにて公転速度2000rpm、自転速度800rpmの条件で10分間処理した。評価判定基準は以下のとおりである。
◎:光透過率が80%以上
○:光透過率が70%以上80%未満
△:光透過率が60%以上70%未満
×:光透過率が60%未満
上記の易解繊性評価において解繊処理により得られた各CNF水分散体を用いて、平均繊維幅、スラリー粘度安定性、スラリーハンドリング性及びスラリー塗工後の表面状態の測定及び評価を行った。解繊処理に用いた酸化セルロースのカルボキシ基量とともに、評価結果を表2に示す。なお、平均繊維幅、スラリー粘度安定性、スラリーハンドリング性及びスラリー塗工後の表面状態の測定及び評価は上記(2)と同様にして行った。
実施例2-1~2-11の酸化セルロースは、自転公転ミキサーによる温和な撹拌によってもセルロースミクロフィブリル同士が解れやすく、CNF水分散体とした場合に高い光透過率を示した。また、解繊処理を行う際の酸化セルロース濃度を0.1%から0.5%に高くした場合にも、CNF水分散体の光透過率は十分に高く、さらに水系スラリーの粘度安定性、ハンドリング性及び塗工性のバランスも取れていた。
これに対し、比較例2-1~2-5はいずれも、自転公転ミキサーによる温和な撹拌により解繊を行った場合には、CNF水分散体の光透過率が50%台と低い値を示した。また、比較例2-1~2-5は、スラリー特性についても実施例2-1~2-11より劣っていた。

Claims (8)

  1. グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を含む酸化セルロース(ただし、酸化再生セルロースを除く)であって、
    前記酸化セルロースの重合度が600以下であり、
    前記酸化セルロースの濃度0.1質量%水分散液を自転公転撹拌機にて公転速度2000rpm、自転速度800rpmで10分間の条件にて解繊処理することにより得られるナノセルロース水分散液の光透過率が60%以上であ
    前記酸化セルロースのカルボキシ基量が、0.30mmol/g以上である、
    酸化セルロース。
  2. 前記酸化セルロースが、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物である、請求項に記載の酸化セルロース。
  3. 前記酸化セルロースのカルボキシ基量が、0.45mmol/g以上である、請求項1又は2に記載の酸化セルロース。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化セルロースが分散媒に分散された酸化セルロース分散液。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化セルロースが解繊されてなり、平均繊維幅が1~200nmである、ナノセルロース。
  6. 請求項4に記載の酸化セルロース分散液中の酸化セルロースが解繊されてなり、平均繊維幅が1~200nmである、ナノセルロース分散液。
  7. 請求項5に記載のナノセルロースが分散媒に分散されたナノセルロース分散液。
  8. 請求項5に記載のナノセルロース又は請求項6若しくは7に記載のナノセルロース分散液が使用された化粧品。
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