国際収支におけるデジタル関連サービスの赤字である「デジタル赤字」という言葉がメディアで頻繁に報じられるようになった。近年急速に赤字幅が拡大した項目であること、日本のデジタル競争力の弱さを象徴していると考えられることなどが注目される要因だが、そもそもデジタル赤字は日本経済にとって「悪」なのだろうか。本コラムでは、国際収支統計や輸出競争力指標の詳細な分析を基に、デジタル赤字が意味する真の課題と日本が進むべき進路を明らかにする。カギとなるのは「日本の強み」と「デジタル」の融合だ。 日本の国際収支における「デジタル赤字」が拡大している(図表1)。日本銀行のレポートを参考に、デジタル関連収支※1を集計すると、2023年のデジタル関連収支は、▲5.5兆円の赤字となった。現在の統計基準を基にデータをさかのぼることができる、2014年(▲2.1兆円)と比較すると、10年間で赤字額は2倍以上に拡大している。