(🎲・オリ主)宵星ベルは養われたい。Part.1

夢を見た。あの日のことを。偶然聞いてしまった真実のことを。

宵星ベルという少女が崩れ去った日。

上辺だけの関係だったということを知ってしまったあの日。周りの優しそうな瞳も、親しく話しかけてくる同級生も。全部敵にしか見えなくなった宵星ベルという少女。

全てに耐え兼ねて、なにもできなくなって、全部が嫌になって。

確実に来るはずだった絶対的な立場も。

今まで気づいていて確立していた地位も。

その身に宿していた名声や財産も。

全て捨てて地の底へと沈んだ日。

……

…

「…っ、はぁはぁ……。」

薄い光が窓から差し込む光と思い出したくなかったことに怯え、目を覚ます。

ヒビだらけのコンクリートの天井、チカチカと点滅する常夜灯。ツンと来る嫌なカビの匂いと、壁越しから聞こえてくる騒音。

最悪な環境が今日もdice1d5=5 (5) (1.私 2.ウチ 3.あたし 4.ボク 5.名前呼び)を迎える。

冷や汗のせいか肌にベットリと付いている服を脱ぎたくて、それでベッドから降りて、冷たい灰色の床に足の裏をつける。

頭がとにかく痛い。嫌な記憶を思い出したから？

いや、さすがにやる気がないからとずっと寝てたのがダメだったのかも。

寝すぎってことなのかも…ね。とにかく水を飲もう。

なんてぼんやり思いながら身を起こして、オンボロの小型冷蔵庫の取っ手を掴む。

ろくに冷やしてくれない冷蔵庫からほのかに冷たいペットボトルの水を取り出して口につけ喉を潤す。

ふぅ…と一息着けば、ふと壁に大事に飾ってあるかつて着ていた純白の制服が視界に入る。

己を己たらめていた忌まわしき服。舌打ちが零れる。はあ、実に嫌な夢を見た。

その記憶を忘れようと頭を振れども何も変わらない。…気分でも変えようか。

でもどうしよう。どうやって気分を…。

あ、身だしなみを整えると気分転換になるって聞いたかな。汗で服が肌がべっとりしちゃってるし何日かお風呂入ってなかったからちょうどいい。

正直、水代が勿体ないけどお風呂に入ろうかな。うん、そうしよう。普段はめんどくさいし、湯船に浸かることをせずにろくに威力の出ないぬるいシャワーを浴びるだけだったけど。

脱衣所に向かえば、立てかけられているヒビの入った全身鏡が自分自身を映す。

〜容姿ダイス〜

身長：dice1d30=22 (22) (+135cm)

髪の長さ：dice1d100=76 (76)

(数値が大きければ大きいほど長い。参考：100でアスナ、アリス級)

髪の色：dice3d256=125 27 135 (287) -1

瞳の色：dice3d256=222 253 134 (609) -1

胸の大きさ：dice1d5=5 (5)

(1.絶壁とも呼ぶに相応しい 2.微かな膨らみ 3.平均的

4.人よりちょっとだけ大きめ 5.そこそこ大きめと呼ばれる程)

腹+太もも：dice1d4=1 (1)

(1.細身 2.平均的 3.ちょぴり引き締まってるお腹+少しだけ筋肉がついてる脚

4.ちょっとだけお肉が乗ってる+ちょっぴりむちっと)

ケモ耳or羽の有無：dice1d4=2 (2)

1.なにもなし 2.ケモ耳あり(dice1d2=1 (1) (1.猫耳 2.狐耳)

3.羽あり(dice1d3=2 (2) (1.純白 2.黒色 3.その他 dice1d256=109 (109) -1)

4.混血。両方の性質を併せ持つ稀なタイプ(dice1d2=2 (2) (1.猫天使or2.狐天使)

(上記の羽の有無で3以降引いた時に有効↓)

羽の大きさ：dice1d100=26 (26)

(数字が1に近いほどコハル並の小ささ、50を平均とし、90だとハスミ級。

100を引いた場合は飛行機能を獲得する)

肌の色：dice1d3=3 (3)

(1.穢れのない澄んだ白 2.ごくごく普通の肌の色 3.ちょっぴりだけ、薄くだけだけど焼けた色)

「(あのころと比べると随分変わってしまったかな。)」

切らずに伸ばしている髪に、少しヨレただっさい文字Tの部屋服。学校にいた時はちゃんと身だしなみをしていて、もっといい服着てたけど。
お金に困り始めてからはいい服売っては安物に変えていたし。ろくに手入れはしていないからか鮮やかな紫色の髪はちょっとくすんでいる。
それに、妙に育ったそこそこ豊満な胸。使う場面なんて限られているケド。
にしても本当に全身薄汚れているなぁ。シャワーだけじゃ足りなかったってことなのは明白なんだけど、さ。

「(……ちょっと綺麗にしよ。)」

なんて服を脱いではお湯を出して少しずつ貯めていく。
待っている間にろくに閉まらない化粧棚から安物のシャンブーとか色々取り出す。ん、軽い。中身全然ない…。買わなきゃいけないけど…。
財布の中身ないからなぁ。さて、どうするべきか。…一旦今日は捻り出すなり水で薄めるなりして何とかして乗り切ろう。そうしよう。

「(身寄りを捨てた人間の末路、ね。)」

ベル自身が捨てたから文句は何も言えないけどここまで落ちぶれるとは。それ以前にどうやってお金を稼ごうか。
色々生きていくためにはお金が必要、だけど、ここでの生活は限られているし。

「(ブラックマーケットならなんとかなると思ってた自分が浅はかだった。)」

空になっている財布を放り投げ、浴槽に溜めきったお湯で身を清めながら考える。
学籍がない生徒が辿り着く終着点、と思っているブラックマーケット。ベルが住んでいるのはそのブラックマーケットにある格安のアパート。
身分証要らずで住める場所はベルにとっては好都合。
何も問わられず、変な目で見られることもなく自由に過ごせるから。
なんて……はあ…。あの頃のベルをぶん殴りたい。

「(また傭兵でもするかな。)」

腕っ節が必要なところはいくらでもある。少しでもお金さえ貰えれば…。
身体を綺麗にしたのち、動きやすい格好に着替えていく。…さて、と。身体の調子はっと。

〜スペックダイス〜

戦闘：dice1d100=8 (8)

指揮：dice1d100=60 (60)

事務：dice1d100=36 (36)

医療：dice1d100=20 (20)

学力：dice1d100=83 (83) (保証70)

知性：dice1d100=10 (10) (保証70)

運動：dice1d100=2 (2)

倫理：dice1d100=16 (16) (保証50)

慈悲：dice1d100=96 (96)

神秘：dice1d100=81 (81)

使用武器：dice1d8=8 (8)

1.HG

2.SG

3.AR

4.SMG

5.MG

6.SR

7.GL

8.RL

戦闘と運動の致命的な低さの理由：dice1d4=4 (4)

1.元々運動も戦闘もこなせる方だったが、ブラックマーケットに来て間もない頃。慣れない傭兵でミスを犯してしまい、後遺症の残る大怪我をしたから。

(本来の戦闘：dice1d100=99 (99) 運動：dice1d100=1 (1) )

2.…人に銃を向けるのは苦手だし、傭兵ってもなんだろう。こう、元々頭はいい方だし。それ故後方担当というか。不良たちを取りまとめる立場…、作戦指揮みたいな？うん。

これでも最初色々苦労したんだけどね。全くできなくて。

3.…撃つのがヘッタクソで悪かったね。だからベルは雑に打ってもいいロケラン持ってんの。運動も元から苦手だけど？だって、できれば動きたくないし。

4.+だから普段の稼ぎはもっと別の……、自分の身体だからできることをしてるだけ。これ以上は言いたくない。

コンディションは……悪くないけど。傭兵顧問というか。

そっち方面での都合のいい仕事はないのかな。

そうでなきゃまた嫌な思いすることになるけど…、それはいやかなぁ。

「はぁ、そんなわがままいっても拾ってくれるやつなんていないしねー。」

戦闘に混ざったって銀行の入口をロケランで吹き飛ばして、それを開始の合図に派手に盛り上げることしか取り柄ないし。

それなら最初から戦闘指揮とか、顧問として雇われた方が数百倍マシというか。

はあ…、今まででそれで稼いできたけど取り分少なめだしなあ。

実行犯と違って裏でいるということは常に安全な場所にいるということ。

だから少なくていいでしょってよく言われる。

いや、成功するようにどれだけいい作戦練ってるの誰だっていいたいけど。

それもあって傭兵すらするのも正直めんどくさい。

とはいっても生きるためには嫌とは言ってられないし、もうひとつの方法は取りたくないし。商売人とかそんな柄でもないし。

「誰かしら連絡きてないかなー。」

画面の割れたスマホを片手にモモトークを開いてみる。

都合よくお仕事を紹介してくれる心優しい人がいればいいんだけど。

dice1d3=3 (3)

1.ま、あるわけないか。はあ、今日一日何も食わなくたって生きていけるでしょ。

2.はっ、都合よく連絡が…っ！どれどれなになに…。

3.……あれ、全く知らないとこから連絡が来てる。

「……コレ、誰から？」

真っ黒いアイコンで素性は分からないし、送り込んできたのはなんかの意味ありげな数字の並びだし。
『誰ですかあんたは。』と送ってみても既読すらつかないし。
なにこれ。解けってこと？めんどくさー……。
ってかこれ送ってくるってことは少なからずベルのこと知ってるってことじゃ？
ブラックマーケットでは全然有名でもなんでもない変哲なモブなんだけど。
怪しい…、怪しすぎるけど…。ううん、美味しい仕事の可能性あるし。
やってみる価値はあるかな…。にしても、この数字はなんだろうか。
いやでも…、見たことあるような並び。…あっこれ、わかった。座標だ。

「ベルがよくやるヤツだ。」

ブラックマーケットのやつらって頭悪いやつばっかだから。
例え作戦概要が漏洩しても暗号化していれば気づかれないことが多い。
座標もそうしているし。故に考える時に愛用しているけど、これを送ってくるってことはやっぱりわかってるのかな。ベルのこと。

「……ここに来いって事？」

指定されている場所はブラックマーケットから離れて…、D.U.地区じゃない？
あそこら辺なんかあったっけ。まあいいや。
呼ばれているのならば行かない道理はない。お金になるならなんだっていい。
しっかし、動きやすい格好とはいえどジャージじゃさすがに…。
もうちょっと溶け込めるような普通で良い服残ってたっけな。
…あった。女の子らしい服。ベルが普通の子として見て貰えるような私服。
上下が流行りもので固めたから、これが女の子としての普通…のはず。
それに着替えてっと、護身用にロケランも背負ってっと…。じゃあ行こー。

〜D.U.地区〜

「さて、と。指定された場所はここだっけかな。」

見れば何の変哲もない飲食店だなぁ。人はそんな入っているようには見えない。
入ったとてお金ないし、水ぐらいしか頼まないんだけど…。
まあいいや、ここなんだからきっと誰か来る。猫としての勘がそういってる。

「でも、こういった飲食店に入るのも初めてかな。」

学校にいた頃はスイーツをよく食べにお店に行ってたとはいえど。
ジャンキーなファストフード店自体は全く立ち寄ったことがない。
学校にいた時の友人のひとりが挑戦したっていうのは覚えている。
その時の感想が私たちにとっては到底食べられたもんじゃないみたいなこと、言ってたっけ。
人混みのない、疎らに学生らしき人達がちょこちょこといる中で、お店の人に自由な席にどうぞと言われてテーブルにちょこんと座れば店員さんが水を置いてくれる。
それに感謝しつつ、頼まないけど、興味が湧いてきてはメニュー表を開いてはなにがあるのか見ていた。

「ジャンクフード…。 」

はんばーぐに、ぱすたに…。ううん、写真だけ見ると美味しそうなのがいっぱい。
本当に食べられたもんじゃないのかな？少なくとも今のベルには美味しそうに見える。
……うう、ろくに食べてこなかったからかお腹が鳴る…。

「お好きなの、頼みになられてどうぞ。」

そんな声が聞こえて、はっとメニュー表を下ろすと狐耳の麗人がそこに座っていた。到底この店には合わなそうな美貌をしている。
見ただけでわかる。いい所のお嬢様だ。しかも、かなり品の高い。いいところ。
"かつてのベルがそうだった"から、そういうのはもう見てわかる。
出身は…、どこだろう。和装みを感じる制服だから百鬼夜行？
ただ、ベルはいい所のお嬢様はあまり………。
でも、わざわざここに座ったということは。

「…あなたがベルのモモトークに送ってきた人？」
「うふふ…。そうとでもいいましょうか。」
「こんなただのモブを呼ぶなんてとんだ物好きじゃない？」
「そうでしょうか？少なくとも、私は正当に評価した上でここに呼んだのですが。」
「…別に。言ってることは顧問のことなんだろうけど。ベルは戦えないからそうしてるだけだし。…それで、好きなの頼んでいいって、ほんと？」
「ええ、嘘はつきませんわ。ここは私の奢りということで。」
「じゃ、おなかいっぱい食べるから。」

そう言っては注文を頼んでいく。奢りなのなら別に沢山頼んだっていいでしょう。
ここ一週間以上はちゃんとした食事にありつけていなくて、常に空腹だったんだ。
せっかくだからデザートも頼もう。甘いものなんて数ヶ月も食べてなかったし。

「これで全部っと…。」
「…それで、ベルに頼み事ってなに？」
「ええ、ちょっとした騒ぎを起こそうと思いまして。」

そう言うと意味ありげな笑みを浮かべる。
悪意に満ちている瞳。こーゆーのは金目当てというより…。
気に入らないものをぶっ飛ばしたいだけの瞳。何回か見たことある。

「私のお供として着いてきてもらおうと思いまして。できれば、私が用意した不良たちを取りまとめる役も、ですわ。」
「騒ぎ、取り纏め…ねぇ。やろうとしてること、もしかしてだけど結構大きい？」
「そうでしょうか？私はただ、連邦生徒会の所有物を壊そうと思いまして。」
「げげっ、だいぶ大きく出たねぇ。あそこに手をつけようなんて普通は考えないと思うけど？なんか連邦生徒会に恨みでも抱いているの？」
「ええ、ちょっとした"御礼参り"といったところでしょうか。」
「ガッツリ恨み抱いてんねぇ。まあ、今の連邦生徒会は確かにろくなことしてないし。」
「それで？いくら？」
「その前にお食事としましょうか。」

なんて言われた直後、頼んだ料理が運ばれて目の前に置かれる。
いい匂いを漂わせている…。うん、はんばーぐとライスを頼んだけど美味しそう。
空腹のお腹にはさぞこの匂いは響くだろうなあ…。

「では、いただきます、と。」

近くに備え付けられている箱らしきものからフォークとナイフを取り出して。
一口はんばーぐを食べてみる。…ん、美味しい。不味くないじゃん。
不味いって言ってたのなんでだろ。味が庶民すぎるから？
ベルの舌が普通になっているのかもしれないけど。

「…実に丁寧なナイフ捌き。上品さが見て窺えます。」
「ん？そー？ま、こう見えてもブラマに住んでるヤツらよりはでき…。」
「宵星ベルさん、でしたっけ。」
「…ベルはともかく姓はブラックマーケットに居着いてから喋ってないはずだけど。なんで知ってんのかな。呼ばれることすら嫌なんだけど。」
「……あんた、誰？」
「失礼しました、私は……。」

懐から紙とペンを取り出してはササッと書いて目の前に出される。
わざわざ言葉に発することをせずに遠回しにする必要が？なんて思って見てみるとそこに書かれていたのは『狐坂ワカモ』の文字。
狐坂ワカモといえば、破壊と略奪の限りを尽くすキヴォトスの中でも大悪人の名前。
……かの七囚人と呼ばれているひとりの名前だった。
なるほど。うん、そりゃ言えないわけだうん。そういえば、最近聞いた噂話。
連邦生徒会…というか、失踪した生徒会長が設立していたSRT特殊学園の生徒に取り押さえられ、矯正局にぶち込まれていたこと。んで、矯正局から脱獄したみたいなことも。だけど、群れたり誰かに頼みこむような性格だっけ。
なんでもひとりでこなすじゃん。少なくともベルが知ってるワカモはそう。
だからこそ、次の問いが出るわけで。

「……なんでわざわざベルに？」
「噂はかねがね、ですわ。それで調べて…少しだけ、気になって。」
「…からかう為だけに呼んだりした？生憎、ベルはあんたと違うよ。」
「今は学籍のないブラックマーケットにいるだけの不良。それ今のベル。」
「後、利用するためとかならもっとやだ。ご飯を奢ってくれるのは嬉しいけど、利用するってんならお願い事は断るよ？」

姓を知ってるってことは事前の情報収集はバッチリ、か。
問題はなぜベルがブラマに住んでいることがバレて…、いや普段から自分のことベルって呼んでるし名前だけでも調べられるやつは調べられるか。
でも、なんだろうね。元が一緒だったから変な仲間意識とかあるんかな。
ベルとしては捨てたくて捨てたヤツだし。それ持たれたとて困るんだけど。

「もちろん。強要はしませんわ。ですが……。」
「一緒に壊してみたくはありませんか？」

なるほど。そういうこと…。…ふーん。
ワカモがベルのことを知っているのなら、ベルが抱いている"あの学校"に対する嫌悪感や恨みも知らないはずがない。
つまりこれは利用じゃなくてれっきとしたお誘いと言ったわけかな。
だけどベルは…、可能であれば"なにもしたくない人生"を送りたい。
確かにそっちに堕ちきるのも悪くは無いと思ってる。それでも、ね。
でも、断るには相手が悪すぎるってのも正直……。
ならばお試し参加と言った感じで一回ついてってみようかな。

「もしかしたら此度の襲撃で望みが少し得られるかもしれない。なので、参加してみる価値はあると思いますが。」
「そりゃどーも。っというよりベルに最初から拒否権なんてないでしょ。」
「逃げられるわけもなし、勝てるわけもなし、最初から飲み込むしかないと思うけど？」
「でも、興味が無いわけじゃない。とりあえず一回だけ。…ご飯のお礼として。」
「ふふ、わかりましたわ。では、正式に連絡を…っと。あら、壊れかけですね。」
「修理費高いし、まあ、スマホ自体かなり格安だから。ネット自体は使えるんだけど、さ。」
「でも本当になんでベルなわけー？戦えるわけもなし、逃げれるわけもなし、確かに率いたりとか考えたりするけどそれは今日明日を生きるため。」
「ベルとしては本当に"なにもしたくない人生"、"誰にも利用されることのないただの女の子としての人生"送りたいだけなの。」
「結果がただの女の子とは程遠いブラマ生活なんだけどさ。」
「ふふっ…、普通を手に取るために動かなければ何も変わらないですわ。」
「理屈はわからなくはないけど、さ。宵星ベルは死んだの。」
「ここにいるベルは如何に楽して普通を手に入れるか。できたらずっと養ってくれる人とかいれば……。」
「それはまた随分と。」
「もう疲れたの。周りからの視線から、利用する悪意から。だから自ら去ったの。」
「……ちょっと喋りすぎたかな。それで何でベルを？」
「同感、でしょうか。自ら捨てたと聞いてから少しだけ気になったとも。」
「…そっ。でもまあ、これっきりの関係である事を祈るよ。」
「それで、色々決めよっか。ベルにして欲しいこと、言ってみて。」

〜後日〜

「…一週間も経たずにやるとは思わなかったよ。」

「早ければ早い方がいいので。」

「それにやることが連邦生徒会の所有物の建物を狙うついでにD.U.外郭地区の焼け野原？」

「暴れられるのなら暴れた方がすっきりするので。」

「いやまあ…、ワカモに言われた通りに不安煽って元々あった不満を増幅させて不良たちかき集めてきたけどさ。」

「後、ツテ使って色々武器やら戦車やら仕入れてきたけど……。」

「十二分の仕事をしてくださいましたね。」

「報酬は弾んでよね。期限短すぎてとにかく大変だったんだから。」

…っていうか、ベルの立場的に首謀者と言われても文句ないよねぇ。これ。

名前が売れてないけど、特殊な立場が故の人脈が形成されているから何とかなったとはいえ。

やりたくないことのひとつをしてしまった…はぁ、ああ、あの学校にいた時にやたらベルの人脈を聞いてきたヤツらを思い出すよ。

「んで、ベルはどうすればいい？いっておくけど、ワカモのスピードについて行くのは無理だよ。運動音痴でちょっと走っただけでも疲れるし。なにより…。」dice1d3=3 (3)

1.……ほら。見て。過去に負った大怪我で走ったら痛みが走る。障害ってやつかな。

2.走ったら胸が苦しくなっちゃうから。それも、命に関わるぐらいには、ね。

3.元々身体の反応が鈍いんだ。反応がちょっとだけ遅れる、みたいな。

「ってなわけだから、よろしく。」

強いて言うならバイクはあるから色々先回りするか。

進行ルートの先読みで上からロケランぶっぱなすか。

そのロケランすらあさっての方向に飛ぶことがしばしばだからなあ……。

ロケランの反動に耐えきれなくて身体も吹っ飛ぶし。

かと言ってショットガンは反動で肩持ってかれるし、アサルトライフルは反動の制御ができなくて弾ばら撒くだけだし、スナイパーはなんか狙った場所とは違う場所に着弾するし。

まだ使えるのはグレランかなあ。でもあれ弾代だいぶ高くつくし…。

護身用に一応ハンドガンも持ってるとはいえど使う場面はほぼないし。

「……見た感じ、そもそも脆弱体質だったりしそうですが。」

「おっ。あったりー。それもあるね。銃がろくに使えないのも半分そのせい。ちなみにもう半分は単純にちょーへったくそなだけ。」

「戦うこととは無縁に生きてきたから。物騒なことはここに来てから。」

「そうですか。…さて、そろそろ始めましょうか。」

「あなたはシャーレ…と呼ばれる建物の付近に。私は半グレ達を率いて色んなものの破壊を。」

「はーい。近くの建物の上にいるよ。無線での合図があったら入口吹き飛ばす？」

「いえ、その必要は。ただ見張りをしていただければ。怪しい人影があれば報告を。」

「了解。じゃ、先に行ってるねー。」

そう言っては手を振ってその場を後にする。

しっかし、シャーレ…か。事前情報によると連邦生徒会が所有する建物のひとつらしい。ただ、それには失踪前の連邦生徒会長が関わってたんだとか。

ただそれ以外、詳しい内容は全く分からなかった。まあ、人伝だし。

でも噂によると"キヴォトスの外から大人"がやってくるらしい。

「(初耳。直前まで秘匿されていたのかも。)」

大人…か。正直大人にもろくな印象はない。

"そういうコト"でもお金を稼いできた身からすると…。

でもまあ、コッテコテに悪巧みを考えて見てくる同級生より自らの欲望を明確に、しっかり具現化してくる大人の方がまだマシ、なのかな。

中には特殊なヤツもいたからホント苦労させられるけど。

とはいえど、ベルにできることは先回りしてただの見張り。強いて言うなら足止め。

「ロケランの弾、あんま持ってきてないけどなぁ。」

dice1d10=4 (4) 発しか持ってきてない。

高いし。グレランよりマシだけど。

使用しているロケラン：dice1d3=1 (1)

1.RPG-7 2.M202RL 3.LAW-80(連続して使えるよう改造済み)

「…アレがシャーレ。」

あんなでっかい建物が。よっぽどお金かけてるのかなぁ。

近くに待機してよ。ベルは積極的に破壊活動に来たわけじゃないし。

見学と勉強。後は不良の扇動に…、準備の方をやってきただけ。

お駄賃はご飯の奢りとちょっとの生活費くれたからヨシ。

「…ん。ここにも。」

なんて歩いてったら不良たちが集まってた。道に迷ったのか。

近寄ってみるとベルに気づいたんだかこっちに来る。

'お前、あの災厄の狐といっしょにいたヤツか？'

「そーだよー。どったの、迷子？」

'そうなんだよ。いつの間にか仲間とはぐれて。'

「そーなんだ。あっちの方向だったと思うけど。」

'ありがと。お前も気をつけろよ。いくら会長がいないとはいえど生徒会は生徒会だ。一筋縄じゃ行かないと思うからな。'

「心配ありがと。大丈夫だよ。捕まらないようにするから。」

見送ってから入口近くに座る。近くには誰もいない。

ワカモは捗ってるだろうか。ここに来るまでの間に既にどれだけ壊してるだろうか。機嫌さえ損なうことをしたければいいだけだし。にしても、暇。ううん…。dice1d3=1 (1)

1.……鍵は空いているみたいだし、中見てみるかな。

2.…ありゃ？不良たちがなんか逃げ帰ってきた。

3.それにワカモの姿？はやいなぁ。でも、なんだか追い込まれてるよう？

「ちょっと散策するぐらいならいいよね。壊すわけじゃないし。」

ちょっと…、ちょ〜っと見るだけ。そう、見るだけ。
決して壊すわけでもないし、どんな仕組みなのか気になるだけだから。
それぐらいならいいよね…？別に監視カメラに写ったって特定できるような、そんなのはあんま無いだろうし…。
っというわけで失礼しまーす。

「どこから見ようかな。」

電気はまだ付いてないからか、建物の中自体は薄暗いけど。
にしても、だ。結構お金がかけてるっていうのがわかるぐらい広い。
下の階には…、にゃるほど。図書館、教室、体育館。挙句の果てには射撃室完備。

「これ、色んな学籍を持つ生徒が交流できるように作られている？」

まあ、連邦生徒会だし。中立の立場ならそんな建物作ったって。
いやそれよりももっと別のことを…。あ、元々連邦生徒会長が作ったんだっけ。
何か考えがあってなんだろうかなぁ。まあいいや、別の階。

「さてさてさぁて、他にはなにがあるかなぁ。」

次に進んで散策したら…、あ、まだ開いてないけどコンビニある。
建物の中にコンビニなんて珍しい。なんでもあるじゃん。
自堕落な生活するには持ってこいかもしれないねえ。うんうん。ベルの理想。
…にゃにっ、ゲームセンターみたいなのもある！どれだけ凄いんだろ、このシャーレって建物…。食堂もあるし。
それと…、ん、これ、休憩スペース？ひとつの部屋として成り立ってるぐらい、普通に住めそうなぐらい一個部屋として…。……はっ。

「いいこと思いついたぁ。」

ここに来る大人が誰なのか、ちっともわからないけど…。

もしここに転がることができたら……。

にししっ♪ベルにとっての理想の生活が手に入るかもしれない♪

「ここに来る大人はさぞいい待遇なのは間違いなし…♪」

「一番はいい人であることだけど、この際多少変態でも構わない。」

「ブラマでの生活から脱却する最短の道が…にしし〜♪」

でも、大人がいつくるかわからない。その前に壊されると……。

ううん、でも、あのワカモ相手にしたらベルなんて秒でボコされるだろうから。

裏切るなんてこと、一切できないし。

なんて思ってるとイヤホンから何かが聞こえてくる。

「…ん、無線。」

集中すればどうやら連邦生徒会の差し金だかなんだかがやってきたみたいな。

まあ、そりゃくるか。ここを狙われる可能性を考慮したら鎮圧しなきゃ。

相手は誰なのかなあ。ヴァルキューレの警備局？それともSRTの部隊？

でも警備局のやつら、現場到着には遅いって噂だし風の噂だかなんだかでSRT特殊学園も閉校したって聞いたけど。っとなると第三者かな？

なんて思ってると更なる情報が。

ミレミアム、ゲヘナ、トリニティの三校の生徒がひとりの大人を護衛しながら向かってる、との事。…マージか。

マジかぁ……。緊急招集されたとかかなあ。トリニティ、トリニティ……。

いやだなあ、接触は避けたい。一度この場から逃げるか。dice1d3=3 (3)

1.「ふぅ…。あら、いつの間にかここにいらしていたのですね。」

2.＋「あ、ワカモ。逃げてきたの？」

3.そぉっと抜け出して…、ちょっと離れた位置に隠れてよう。

「まだこっちまで到達してないはずだし。」

今のうちに脱出して隠れちゃえば問題ないっと。荒事はヤダだし。

無線から聞く限りまだ戦闘中…、なんならワカモが接敵してるっぽい。

逃げ出すなら今。入口に移動して、と。うん、周りに人影はなし。

今のうちに飛び出してっと、どっかの建物の影に……。

「念の為無線…っと。ワカモ、状況は？」

「まあまあと言ったところ、ですわね。ですけど、所詮は子犬。」

「少しお遊びをしたらすぐにそちらへと向かいます。」

「はーい。建物の中見たけど一箇所ちょっと見てないところあって。移動ルート教えるから見に行ったら？なにかいいのあるかもよ。」

無線を入れた後にワカモ宛に移動ルートの共有を。

念の為にロケランを手に取って…。えーっと、リュックから弾頭取り出して。

入れて…っと。よし、おっけー。さてさて、壁からひょっこりと顔を。

っと、ちょうどワカモがやってきたみたい。スマホを見てるに確認してるのだろう。颯爽と建物の中に入ってくのが見える。

不良たちも後退しているみたい。じゃあ、ベルはカバーをっと。

標的はどこかなぁ……、ん。制服の違う複数の生徒。アレだね。

んで、真ん中にいるのが…。dice1d5=2 (2)

1.例の大人、かな。…ふーん。守られなければいけないほどか弱い存在ってトコかな？(初期好感度20)

2.ふむふむ。なるほど。見た目の印象は極普通…ってところかな。(初期好感度40)

3.ほーへー。悪くない。ベルの中ではティアが高いってトコかな。(初期好感度60)

4.見た目はすごく好み。だけど優しい見た目でえぐい性格してる人を見たことがあるからなぁ。(後に先生の優しさに触れて堕ちる)(初期好感度80)

5.………はわ、はわわわわわっ！！！(一目惚れ)(初期好感度100)

「…ま、いっか。ちょっとだけ足止めできればいいぐらい。」

膝を着いて、しっかりと構えて、標準を捉えてっと…。
…うーん。ちょっと先を狙って驚かすぐらいでいっかな。
最低限仕事すれば文句は言われないでしょう。じゃあ……。

「せーの……。」

引き金をカチッと引けば音を立てて飛んでいく弾。
反動に耐えきれずに尻もちはつく。でもしっかりと飛んでくのは見えた。
途端聞こえてくる爆発音。ま、驚かすつもりであえて離して撃ったから…。
だって、あの大人に撃っちゃうとベルの計画がパァになるもん。
ちょっと痛む腰を擦りながら様子を見れば…っと。うん。当たって…。
…当たって………。アレ、なんで戦車から炎が上がって…？あ、やっばァい、味方撃ってた。
すっごい慌てふためいてるし、なんならその隙に撃沈されたし。
…まあまあまあ、犯人がベルってことに気づいてないからヨシ。

「とりあえず、最低限仕事はしたから…うん。」

ここは素直に撤退…っというか。暫くここにいよう。
タイミングを見てあの大人に話しかければいい。
なら座って落ち着いてよっか。ロケラン一発撃つだけでも疲れたし。
建物の中に大人が入っていくのが見える。それを見て警戒を解いた護衛たち。
さてさて、いるのはー？えーと？ミレミアムの生徒がひとり、風紀委員のゲヘナがひとり。
そして…、げぇ、トリニティの正実の副委員長がいる。もうひとりもトリニティなのは分かるけど、見たことない。
こりゃ顔出さなくて正解だなぁ。一番バレたくないのがひとりいるし。
トリニティにいた時よりと遥かにかけ離れてる格好なんて見られたら…。
変に報告されるのもヤダだし。
あの四人が立ち去るところを見てからもう1回建物に侵入しよう。

「しかし、何も聞こえなくなったなぁ。」

無線からワカモの声が一切聞こえない。

なにかあったんだろうか。もしかすると大人と接触した、とか？

…ん、ヘリの音。アレ…、連邦生徒会所有のヤツだ。

まあ当然降りてくるのは連邦生徒会の人…だね。うん。

四人の生徒となにか話したら…、あ、皆が皆、解散してった。

んでもってあの人も中にっと…。人の気配なくなったし、近寄りますか。

「ふんふふん。」

できればあの連邦生徒会の人間がいなくなって、大人がひとりになった時に－。

…って、アレ。ううん。えーと、ひとりになったところを狙うのはいいけど…。

どうやって？一応襲撃犯のひとりではあるけど…。

顔は割れてないから問題ないとして。

ううん？えーっと…、アレかな？嘘も方便って的な感じで嘘一目惚れしましたって押しかけ女房でもする？

ほら、男の人って押されるの苦手でしょ？ワンチャンあり？

ううん、でも弾かれた時がなぁ。素直に居場所がないっていえばいいのかな。

そうすれば入れさせてもらったりできるかもしれないけど。

取っておきの手段といえば………、ふむ。やっぱり身体？それが手っ取り早い。

弱みを作ってしまえば大抵のことはどうにかなるが…、相手方の信頼は一切得られなくなる諸刃の剣。

居候っというより養ってもらうにあたって信頼を得られなくなるのはしんどい。

目の前の理想の生活を手にするには相応の信頼関係を築くことから始まる。

一番いい方法は…、徐々に落としていくこと。だけど時間がかかる。だからナシ。

一刻も早くブラマからいなくなりたいからね。うん。さて、どうするべきか……。

dice1d3=3 (3)

1.馬鹿正直に言ってみよう。相手が慈悲深き人物であることに賭けるとしよう。

2.んんん、押しかけ女房作戦、でやってみるかなぁ…？効果はあるか分からないけど。

3.……やっぱり色仕掛けが最適だと思ってきた。いやでも、雰囲気どうするか…。作戦はなくはないけど……。

……ううん。やはり色仕掛け…かな。
手っ取り早い、弱み握れる。気持ちよくなれる。やはりこれに勝るのはない。
そーゆーことは嫌いじゃないけど積極的にやらないだけ。
めんどくさい、客が特殊なのばっかだからね。うん。
しっかしどうするか…、仕掛けるにも"きっかけ"を作らないといけない。
正攻法があるとしたら…、あの大人を尾行して家を特定する。
まさかこの建物が家ってわけじゃないだろうから。さすがに家あるだろうから。
家まで尾行して家なき子を名乗っていれてもらう。無防備を晒しておけば勝手に狙ってくれるだろうから。
朝チュンで『責任取ってもらわないとねー？』みたいなこと言って弱みを握ってかんぺきーってやつ。
狙わなかったら…、いやうん、うまくやる方法ならある。ベルならできる。

「理想の生活のため。がんばるぞいっ。」

これまで苦労してきたんだ。報われたっていい。
もう一度建物の影に隠れてあの大人が出てくるのを待とう。にししっ♪
どれぐらいかかるかわからないけど…、ってあれ？ワカモ？
なんか慌てて飛び出してってる。声かける前にいっちゃった。
仮面してる上にさらに手を覆いながら、とは…、まあいいや。

「いつ頃出てくるかなぁ。」

早く尾行を……。日が暮れた後のブラマは危険だからね。
ベルみたいな子は変なのに襲われちゃうかもしれないしぃ。
…っと、連邦生徒会の人と一緒にでてきた。よし。離れたら尾行開始だ。

〜その後〜

アレから数十分…。あの連邦生徒会の人が帰ってから様子を伺っているものの。
あの大人が一向に帰る気配はなし…。
何だか黄昏ているような、考えているような気がしてならない。
ってか、もしかしてだけどバレてる？ベルが出てくるの待ってる？
いやでも姿なんて1回も晒してないし。

「……あ、動き出した。」

やっと、やっと動き始めた。帰るのかな？こっから慎重に動こう。
ベルの尾行力を侮ることなかれ。情報収集のためにブラマで培った実力があるんだから。
まあ、バレたら逃げられないのあるけど。バレかけたことは何回かあるけど失敗と呼べるものはない。
にししっ、だからバレることはにゃいはず。それにしても、あの大人。
なんだろうか。連邦生徒会が大切にしているようだったし、わざわざキヴォトスの外から呼んであの建物に連れ込んだということは外部から雇った職員かなにかなのだろうか。
見た感じただの男性の大人、のようにしかみえないんだけど。

「ふむふむ……。」

典型的なスーツ姿…。清潔感があって顔は整っているからか刺さる人には刺さる。
ワカモ…、恥ずかしそうに逃げ出した感じを見るにもしかすると刺さったな？
とはいえワカモよ。顔は良くても性格が終わってるならその夢は崩れるのだ。
それを今からベルが暴くのである。

「じぃー………。」

にしても何回も曲がり角を曲がっているような気がしてならない。
そんな入り組んだところに家があるの？確かにD.U.地区はビル群だったりとか、色々施設が整っていてどの学園の人たちも寄るところではあるけど…。
まあまあ、いずれ辿り着くだろうから辛抱強く歩いていこう。
バレてる様子はないならね。うん。多分。きっと。

〜数十分後〜

「……同じところ回ってない？」

気のせい？なんだろ、気のせいであって欲しいんだけど。
なんだか同じところをぐるぐる回っているような気がする。
ほらあれ、見たことある看板があるんだもの。
あの建物も見たことあるし、あのビルもさっき見た気がする。
アレ？これもしかしてバレてる？嘘だよね？ずっと影から移動してるんだけど。
それにベル、疲れてきたんだけど。

「あ、移動が変わった…？」

さっきとは違う角を曲がった。シビれを切らした？
なにがともあれ、とにかく追いかけよう。体力は限界だが走れ走れ。
そう思って、さっきの大人が曲がった角を曲がって－－－

「あふっ！！！」

なにかにぶつかって尻もちをつく。誰だ誰だと前を向けば。
あの大人が目の前に立っていた。それをみてベルはついきょとんとしてしまう。

"…君、さっきからずっと着いてきてない？"
「え、ぁ…ぅえ……？ば、バレ…？」
"私がシャーレに入る時からずっと見てたよね？"
「っ〜〜〜！？」

バレてる、最初からバレてるぅ！？とにかくにげ、逃げな…。
あうぅ！こんなはずじゃなかったのにぃっ！っ、あふ、腰が抜けて動け…。
まずい、柄に合わずずっと動いてたから疲れが溜まって足も動かな…。

"大丈夫？ほら、手を出して。"
「え…ぁ……はひ…。」

動けないのを見かねた…？のかな。
すっと手を差し出されて、その手を受け取っては起こしてもらう。
まだ腰が抜けてたりちょっとバクバクしてるから足もガクガクするけれど…。土埃をどうにか払って壁に手をかけ身体を支える。

"ここら辺の人じゃなさそうだけど…。"
"君、どこの学校？なんで私についてきたの？"
「え、あ、えっと……。その…。」
「べ、ベルは学校には通ってなくて…。っというか、途中で辞めちゃって…。」
"制服じゃないところを見るに嘘じゃなさそうだね。"
「えっと、その、風の噂でキヴォトスの外から大人が来るって聞いたから気になったというか…。」
「えっと、その、ここら辺全く来たことなくて、ずっと彷徨っててようやく見つけたものですから…、その一目見たくて追いかけてたんです…。」
"でももうだいぶ暗いよ？帰らなくていいの？親御さん心配しているかもしれないよ。"
「その…、ベル、捨て子なんです。それで、帰る場所がないから、その…えっと。いや、今はあるんだけど…、無いに等しいというか…。」
"なにか深い事情を抱えていそうだね。大丈夫？でも帰る場所がない…か。"
「できたらどこか屋根のある場所に…。先生のお家に連れてってくれたら嬉しーなぁ…って。」
"うーん、まだ片付けてないしこっちにきて早々年頃の女の子を家に連れ込むのは……。"
「つめたいところ、いやなんです……。」
"……わかった。じゃあ私の家に行こう。"
「あ、ありがとうございます。」

…っぶなーーーー。いやあっぶなー。バレたけど即興の演技でどうにかなったぁ。いやほんと、あっぶなかったぁ。こんなの思いつかなかったら今頃ヴァルキューレに突き出されていたかもしれない。
いやもう、ほんと…。嘘をつくには真実を織り交ぜて話した方が都合がいいって聞いたことあるけど、効果あるもんだねぇ。
捨て子…っていうかただただ家から勘当されただけ。ブラマに家はある。だけど退学したとか。そーゆーのは本当。

"そういえば、君の名前は？"
「ベル…っとだけ覚えてください。…姓は名乗りたくないので。」
"わかった。ベルは元々何処に？"
「トリニティ、です。トリニティの元2年生。所属してた部活は……。今は聞かないでください。」
"トリニティってことは…、ハスミとスズミと同じ学園なんだね。"

…なるほど、見かけたあの銀髪の子はスズミって言うんだ。
トリニティの校章が見えてたけど、見たことの無い子だなとは思ってた。
ハスミ…、もとい正義実現委員会の副委員長は何回かお会いしたことある。
所属してたところもあってか、色々交流もあったものだ。ベルが窓口になってたこともあったし。

"深い事情があるのは何となく察したけど…、退学した理由を聞いても？"
「言えないです。言いたくもない。」
"そっか。ごめん、安直だったね。"
「あなたはどう言った人なんです？わざわざ連邦生徒会の人が傍に居るということは何か余程……。」
"私？私は今日からシャーレの先生になった大人だよ。"
「せんせい…？」
"そう。連邦捜査部、シャーレ。そこに所属している先生だよ。"
「連邦捜査部……？」

先生…から、シャーレについて色々説明をもらう。
一種の超法規的機関、連邦組織故の中立を担った立場であり、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒を制限なく加入させることができる、と。
加入するメリットのひとつ、各学園の自治区で制限無しにシャーレの名の元に戦闘を行うことが可能、なんだとか。
確かに、他校生が関係の無い学園で戦闘を起こすことは政治的に問題になりかねないから…。それをシャーレが公的な物もして扱うことで最小限に…。
つまりはなにかしらの理由で暴徒化した生徒の鎮圧とかも担ってたりするのかも。
でも言ってしまえばそれは連邦生徒会の武器にもなりうることで…。
後、先生は連邦生徒会長から直接指名されてやってきた、とのこと。
先生曰く理由は覚えていないらしい。

「…ふぅん。」
"ん？どうかしたの？"
「いえ、なにも。」

つまりは先生は利用されるだけに呼ばれたってコトなのかもしれない。
かの連邦生徒会長が行方不明となって、混乱しているキヴォトスを納めるための抑止力としての道具。
…ベルがかつて都合のいい道具として利用されてたように。かわいそうに。

"さ、ついたよ。引っ越したばかりで中は散らかってるけど…。"
「いえ、問題ないです。お邪魔します。」

とりあえず家の中に入ることができたし…。作戦はまだ続けられる。
にしても本当に引っ越し初日みたいな散らかり具合だなぁ。
ダンボールがそこら辺に積み重なっているのと…。

"座れるように片付けるからちょっとまってて。"
"その後で…、うん。落ち着いたらでいいからなにか話せるところがあれば話して欲しいな。"
「そう、ですか？」
"何か困っているのなら手を差し伸べるのが大人、だからね。"
「わかりました、落ち着いたら…ですね。」
「…口ではなんとでも言える。」ﾎﾞｿｯ
"ん？なにか言った？"
「いえなにも。…せっかく入れて下さりましたし、手伝えることがあれば。」
"ううん。いいよ。手をわずわらせるわけにはいかないからね。"
「……では、せめて座るところの周りだけ。」

荷物を邪魔にならないところに退けて、空気が横から抜けるような音を鳴らしながら座り込む。
疲れたからか座った直後に眠気が…、ソファーが心地いいから転がって寝たい。
しかし、上がって早々…。ここは我慢我慢。…したいけどなぁ。
なんて思ってると、コトっと目の前にマグカップが。

"何がいいのか分からなかったから、紅茶を。"
「ありがとうございます。」

しっかし、演技するってのも大変だなぁ。何回かやったことがあるとはいえど。
表面上は良くしないと…。純粋そうな乙女を演じるんだ。
…いや、これが本来のベルの一部ではあるか。一人称も性格もトリニティを去ってから作り出した"別の人格"。今までの自分が嫌になって作り出した"正反対"の自分。
それを素だと思い込んで、思い込んで、思い込んでようやく成った姿。
自覚はしている。だけど、そうでないと……。
ん、アチッ。結構熱めだなぁ…。ひと口…、うん。安物のヤツかな。そこら辺のスーパーにあるやつ。

"私は片付けしているから。なにかあったら言ってね。"

頷いて落ち着いていく。周囲を見渡してみれば…。
成人男性ひとりが住むにはリビングの時点でかなり広い。テーブルを跨いで真正面にあるのは80インチぐらいのテレビだし…。
外見の時点で二階建ての一戸建て。賃貸ではなさそうなところをみるに…。
ここに来るまでにもかなりの収入はあったかもしくは連邦生徒会が用意したか。
前者だとしたら…うん、余計に居座りたくなってきた。
人ひとり養うぐらいならかなーり余裕そうに思える。にししっ♪

「(後はどうやって…。)」

初めて交わした会話から感じるかなりのお人好し感。
ベルを入れる時点で年頃の女の子を入れるのを躊躇するあたり、境界線はしっかりとしているには間違いない。
ただそれが表面上だけなのか、それとも内面もそうなのか。
化けの皮が剥がれるのはベルが無防備な姿を晒してから。
先生も見る限りまだ若い。"そういうこと"には敏感でもあるはず。

「(問題はどう会話を切り抜けるか。)」

ただ向こうはベルの内面を知りたがっている。
ベルとしてはあまりバラしたくない闇の部分。
お人好しであればそれを漏らしたとてなにか解決策を出すだろう。
とはいえど、他校へ転入なんざしたくはない。ミレミアムに入るほど科学熱心なわけじゃないし、ゲヘナは以ての外。死んだ方がマシ。
百鬼夜行ならと思えるけど、嫌なことに巻き込まれそうな気配しかしないからパス。あそこの生徒会みたいなところ、黒い噂聞くし。
閉鎖的な環境で言うなら山海経がベストなのかもしれないけど…、そもそも外部の人間を受け入れるとは到底思えない。
つまり、ベルはどこにでも馴染めないからブラマを彷徨ってたわけで。

「(最善があるとしたら……。)」

先生次第ではあるけど、シャーレに居座ることが一番じゃないかと思える。
ただ、加入するには学籍がない。ベルは生徒でもなんでもないただの子供。
…やはり篭絡が一番。上手く会話を交わさなきゃ。

"大丈夫？居心地悪くない？"
「いえ、問題ないですよ。見ず知らずのベルを受け入れてくださってありがとうございます。」
"私にできることは少ないけど、困っている子供を見過ごす訳にはいかないからね。可能な限り手を伸ばさないと。"
「そうですか。立派な志を持っているのですね。羨ましい限りです。」
"それで…どう？なにか話せるようなことはある？無理にとは言わないよ。少しでも話してくれたら嬉しいだけだから。"
「……すみません。やはり話すにはまだ関係が浅すぎます故に。話せることがない、ですね。ただ、質問でしたら答えられるかと。」
"じゃあ質問するね。捨てられたあとずっとひとりでいたの？"
「…そうですね。身寄りのない子供が辿り着く終着点で、ひとり。」
「野宿…ってわけでもなくて一応帰る場所は作ってたんですけど、ろくに住めるような場所ではなくて。だけど、生きるには最低限の生活を守らないといけないから。」
「頑張って、生きてきたんですけど。それもつらくなってきて。」
"でも、どうしてそれが私に繋がるの？"

「風の噂で外から大人が来ること自体は知っていたんです。ベルはそれがどんな人か本当にただ気になっただけ…。」

「ですが、その…心の中で外から来た大人ならなにかを変える力があるのかと思って。それで無意識にきたのかもしれません。」

「現に連邦生徒会長から直々に指名をいただいていたのでしょう？」

"まあ、そうだね。"

"でも、捨てられたっていうのは…それってもしかして退学が絡んで？"

「そうですね。…話したくないとはいいましたが、ひとつだけ言えることが。」

「全部に疲れたから。トリニティで手に入れた全てを捨てて逃げた。それを親が許さなかっただけ。だから捨てられた。それだけです。」

そう言い切ると少しだけ気まずい空気が流れる。簡単に表すとしたらこれしかない。納得させるためのひとこと。

チラりと見ればさすがにマズイと思ったのか目線が暗く、下を向いている。それ以上は聞こうとはしなかった。聞く訳にはいかないも思ったのだろう。篭絡…、思ったけど言葉のキャッチボールをミスったかも。でも、先生の目線が少し怒っているようにみえる。

"支えてあげるべき親が、それを放棄して捨てるなんて……。"

「…いいんですよ。訪れるハズだった栄光の道を自ら捨てたんですからね。」

「親としてみれば不孝者。…一族の恥。そんな奴に価値なんてないと思うでしょう。」

"つまり、君はトリニティの中では…。いや、そもそも－－－"

「聞かないでください。」

"……ごめん。"

確実にミスった。自分をさらけ出しすぎた。なんだろう。妙に話したくなるような雰囲気を醸し出すせいで。話したくなかったのに。なんで上手くやれなかったんだろ、ベル…。

"…今日はここでゆっくり休んで。"

「…ありがとうございます。」

しくじったな。誘ったりとか篭絡する予定が潰れたと言っても過言でない。気まずい空気が流れてしまった…から。うん。どうしよう。考えなきゃ。ううん…、だめ、思いつかない。こんなミスを仕出かすなんて、ほんとおばか。

なにがともあれ、ひたすら考えないと…。dice1d4=3 (3)

1.思いつかないや…。非情にも時間が流れちゃうよ。

2."可能かはどうかは分からないけど…。"

3.+(翌日、真剣な顔で提案があると先生がやって来る。)

4.えぇい！！こうなったら既成事実だ！お礼やらなんやらでとりま丸め込みじゃい！！！

"リンちゃんにちょっとかけ合ってみようかなって。"
「それはつまり、どういう？」
"シャーレに身を置くことを許してくれるかどうか…、だね。"
「学籍がない子供、ですよ？ベルは。シャーレに加入する条件は揃ってないですが。」
"説明するとなると…。シャーレはひとつの学園に過剰に肩入れしてはいけない。中立な立場だからね。それは生徒も同じ。"
"だけど、君は学校に通ってない子供。言ってはいけないだろうけど、世間一般では生徒でもない。"
"でも、私は君を生徒のひとりとして見てる。それよりも子供だから助けてあげたい気持ちがある。"
「でも、それは結局贔屓に近いのでは？」
"そうだね。贔屓になるかも。できたら困っている子供全てに手を差し伸べたい。だけど、それが叶うわけもないことも知ってる。だからこそ、目の前で助けを求めている生徒に手を伸ばしてあげたいんだ。"
"それに、ただ身寄りがないからシャーレに居候しているだけの子供という扱いにできないかなってさ。"
「はあ、なるほど。先生はお人好しなんですね。それも馬鹿がつくぐらいの。」
"急に毒舌になるね！？"
「いえ、ちょっと流石にと思ったので。」
"まあ…それでちょっとリンちゃんにかけ合ってみようかなって。"
「分かりました。最初はお気持ちだけでもとも思いましたが…。そうですね。今の生活には疲弊していたところなので。」
"結果が出るまではこの家にいていいよ。その方がいいだろうから、ね。"
「では、お言葉に甘えて…。ですが、翌日。荷物だけ取りに行ってもいいですか？」
「その…、今日は諦めますかほら、これでも女の子なので生活品とか色々…。」
"もちろん構わないよ。じゃあ…これ、家の合鍵渡しておくね。無くした時のためだったけど。預かってて。"
「ありがとうございます。」

おや？おやや？おやややや？これはもしかしてぇ？

色仕掛けせずに済みそうだねぇ。ラッキーだねぇ。

ただまあ、話しててわかった。先生は本当にお人好しだね。

そこに悪性は全く持ってない極めて純粋な善意。

善意過ぎて一周まわっておばかなのでは？と感じさせるほど。

とはいえど…、なんだろうか。過去のベルみたいにならなきゃいいんだけど。

"さて、今日はもう遅いから。えっと、そこの部屋使っていいよ。"

"私の寝室で先に片付けてあるから。"

「でも、それだと先生は…。」

"私はソファーがあるからいいよ。"

ってはいってるものの、さすがに…その。罪悪感はあるよ。ベルにも。

なんというか、本当に見ず知らずの相手に対していたり尽くせり、だし。

かといって、ちょっと会話しただけでもわかるほど先生は…。

ここでいいですと退いても自分のことはいいからって言うタイプ。

全力で首を振れば折れてくれるだろうけど…、ううん、時間はかかるよねぇ。

さすがにベルも疲れているから寝たい気持ちもある。

それに……、薄っぺらいベッドではなくてしっかりともふもふなベッドに寝れることを考えると…。にしし…♪

あぁ、いけないいけない。顔が解けるところだった。

まあとりあえず…、ベルとしては－－－dice1d3=3 (3)

1.じゃあ、お言葉に甘えて。こんばんはお借りします。

2.＋ですが猫は甘えん坊なので、噛まれないようにしてくださいね？(もしかすると…？)

3.さすがに…、ここまでしてくださったことですし"いっしょ"にどうでしょう？

"い、いや、別に構わないよ。私がしたくてしてるだけだから。"

「そうですか…。」

まあ、これとしては仕方の無いといいますか。

先生からしたらだもんね。来て早々変なことに巻き込まれた上に、行き場のない女の子を家に入れてくれて。それで交渉まで頼んで。

そこから一緒に寝ましょうなんてまあ相手方の正気を疑うところではあるよね。うん。ベルもそう思う。

でもやっぱ先生は純粋たる善性を持っているねぇ。よきかなよきかな。

じゃあ素直に諦めると…でも思ったかー！！

こちとらまともな人の肌に触れずに生きてきたんじゃい！

猫は優しい人間の温もりを欲しているんだよーだ！

「人の温もりを感じたかったのですが…、仕方ないですよね。」

"えっ。"

「ベルは先生とお話をして信頼できるからこそ、だったのですが…。先生からはまだ得体の知れない女の子…に等しいですもんね。」

"あ、いや、そういうわけじゃ…！"

「お先に失礼します、とほほ……。」

"わ、わかった。わかったからっ！温もりが欲しかったんだよね！いっしょに寝るよ！"

「！わぁっ、ほんとですか！ありがとうございます♪」

むっふー。先生がお人好しだからこそ成せる泣き落としの技！おばかめ、猫を見くびるからこうなる。こちとら裏の世界では演技派の女の子よ。

ここまでする理由？別に下心はないよ。本当に暖かい肌に触れたかっただけ。途中から忘れていたからね。思い出すには丁度いいから。

"じ、じゃあ、私はやることがあるから。先に行ってて。"

「むー、逃げないでくださいねー？」

"だ、大丈夫だから。ほら。"

言われてニコニコしながら言われた部屋に行く。

結果はまだ分からないけど、いい方向に転がると願いながら今日はゆっくり、寝よう。

好感度ダイス：先生からベルへの好感度 dice1d100=83 (83) (最低50の保証向き)

んんんん、先生からの好感度がなんか非常に高い。

私のやり方では基本90超えたら親友関係か恋愛感情が確定で芽生えることになっているけど…。

とりあえず、理由を決めてみようかな。今後に役立てるかもしれないし。

ワンチャンね。ワンチャン。恋愛感情もあるかもしれないから。dice1d4=1 (1)

1.ベルの過去をほんの少しでも聞いたが故の保護欲から？

2.先生もキヴォトスに来る前になにかあったタイプ。故の…。

3.気づいた時からほぼ一目惚れに近い状態だった。だからこそ引き止めてみた。

4.＋パッシブ：薄く焼けていることによる褐色肌(ちょっと劣情有り)

"まさかこんなことになるとは。"

こっちに来て早々、ひとりの女の子を保護…。しかも捨て子と。
学園都市キヴォトス…、故に学籍を無くした子供は身寄りがなくなる。
ベルみたいに親から捨てられた子もいるのかもしれない…。

"目の前の助けて欲しい子を見捨てる訳にはいかないから、ね。"

全てを見れる訳では無いから、見える範囲のものに手を差し伸べる。
羽が折れた鳥を保護するように、親を亡くした子猫を保護するように。
再び羽ばたけるようになるまで、前を向いて外を走れるようにするまで補助してあげて、見送るのが先生としての役目。

"できれば、どこかとも思ったけど……。"

雰囲気だけでわかる。彼女は学校に行くことすら拒否するタイプ。
恐らく、トリニティにいた頃のなにかしらのトラウマからなのだろう。
治っても羽ばたけない鳥に等しいほとまで、その内面は暗く落ちている。
私にできることは優しく包んであげることだけ…。
でも、それだけじゃダメだと思っている。彼女を知らなくちゃなにも始まらない。
故に私はシッテムの箱に呼びかける。画面の中に出てくるのはひとりの幼き少女。

『お呼びですか？先生！』

"やあ、アロナ。ひとつお願い事をしても構わないかな？"

『もちろんです！このスーパーAIのアロナちゃんにおまかせください！』

"じゃあトリニティにいた、今は退学しているベルって子を調べて欲しいんだ。"

『先程までいっしょにいらした生徒さんですか？どうやらなにか深い事情を抱えているようですが…。』

"うん。それを知りたくて。表面上だけの情報でもいい。彼女は深いところを知られるのが嫌みたいだからね。"

『わかりました！でも、いいのですか？ベルさんのためにも深いところを知っておいた方が…。』

"彼女が自分で言えるようになるまで、見守るつもりだよ。そのためにリンちゃんにかけ合って傍に置いておこうと思うんだ、"

"だから、お願いね。アロナ。"

『先生がそう仰るのなら…。』

さて、アロナにお願いしたことだし。次に私ができることといえば。

アロナにリンちゃんに電話を繋げるようにお願いし、その間に自分の飲み物を取ってくる。

リンちゃんにはどんな言い訳をしようかな。もし断られても、ダメの言われても方法ならいくらでもある。

それに………。

"妙に感じる痛みのような胸の違和感はなんだろう、ね。"

その後……。dice1d4=2 (2)

1.なにもないよ。

2.なにもないって。無事に朝を迎えたよ。

3.もしこれで4引いたらダイス神はスケベってコトだよ。

4.先生視点：寝ている姿は飼い猫のよう(微量程度のしけぇ)