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“電話”が鳴ったらすぐに出る

前回は生理的な要求に応えるという話でしたが、一見すると生理的な要求に見えて実はもっと込み入った事情が隠れている場合があります。

「今日は疲れているから早く帰ろう」という意志決定に至るプロセスには2つのルートがあると考えられます。

 1.これ以上続けるとオーバートレーニングになって、継続に差し支える
 2.仕事に対してイヤだなーというネガティブな気持ちが生まれつつある

1は身体が意識に向けて発したシグナルですが、2はシグナルに似ていますが1よりも“ワケあり”だと言えます。「イヤだなー」という慢性的な感情を「今日は疲れている」にすり替えて自分をだましている可能性があるわけです。

『メンタル・タフネス』ではこの“ワケあり”のシグナルは「身体からの電話」と呼ばれています。

ネガティブな感情は、身体のなかで電話が鳴っているようなものだ。電話を切ってはいけない。その代わり、脳にきちんと電話線をつなぐことだ。

先に挙げた「身体が発するシグナル」は、生理的な要求です。これに応えることなく身体に負荷をかけ続けると、今度は感情にダメージが及びます。このダメージの通報が「身体からの電話」で、生理的な要求よりも複雑度が増します。

その対応手順として以下の5つのステップが紹介されています。

 ●1.電話が鳴り始めたら、電話に出て「私は何を感じているのか?」と問いかけてみる。
 ●2.満たされていない必要性とは何かを書き出してみる。
 ●3.自分自身に「電話をありがとう」と言う。
 ●4.自分の感情をポジティブな状態に戻す。
 ●5.満たされていない必要性のうち最も差し迫ったものを満たす。

例えば、何か大きな不安をかかえており、仕事に手が付かないような場合を考えてみます。まず、何が自分を不安な気分に陥れているのかを探ります。すると、

 ・今月は物入りで、給料日までにキャッシュがショートしそう
 ・クレジットカードの支払いが銀行残高を上回るかも

という要因が浮かび上がってきたとします。そこで、どうすればこれらの懸念が解消できるかを考えてみます。

 ・残りのキャッシュを数えて、1日に使えるお金がいくらかを計算する
 ・カード会社に問い合わせて、引き落とし予定の金額を確認する
 ・銀行の残高を確認する
 ・引き落としできなかった場合にどうなるかを調べる(ペナルティー他)

などなど、今の自分にできる対策を書き出します。その上で、今回の「電話」がこういったことを考えるきっかけになったということで、今後に活かすべく気持ちを前向きに切り替えます(例えば、「ツイてる!」とつぶやくとか)。

その上で、書き出した対策のうち差し迫ったものに取りかかります。

実は、この話は10年ほど前に実際に僕自身が体験したことで、その時の不安な気持ちを思い出しながら書きました。手持ちの現金を給料日までの日数で割り、1日あたり1600円しか使えないことが判明。でもその日からは「1日に1600円までは安心して使えるのだ」ということで不安な気持ちがかなり軽くなったのを覚えています。

しかも、「今日は1400円しか使わなかったから明日は1800円使える!」という小さな幸せを感じたこともありました。そこからはほとんどゲーム感覚で、Excelで管理シートを作って、日々使ったお金を入力すると、翌日以降の一日に使える金額が再計算されるようにするなど、むしろ楽しんでいた記憶があります。

『メンタル・タフネス』にも以下のようなくだりがあります。

楽しさは回復の有効性を測る最も単純なバロメーターで、回復そのものといえる。楽しさは、一般的にストレスと回復の健康的な関係を表す。楽しいときは、感情のエネルギーを回復しているのである。

私たちの大半は、ハードワークと規律の価値を理解しているが、仕事を楽しくするという価値も理解しなければならない。ハードに仕事をする場合でも、楽しい状態を維持できれば、感情と精神のストレスの量と、オーバートレーニングのリスクを減らすことができる。

まさに「シゴタノ!」だな、と思いました。