行列も広告もない。にもかかわらず、年商1億5000万円を稼ぎ出すケーキ店が、東京・大田区の住宅街にある。店名は「スイーツスタンダード」。一見ごく普通の“街のケーキ屋さん”だが、厨房の奥では“意外なスイーツ”が毎日2000個以上も焼き上げられている。店頭の売り上げは年間2000万円にすぎない。では、残る1億3000万円はどこから生まれているのか。その答えに、フリーライターの山本ヨウコさんが迫る――。
小澤幹さん
筆者撮影
スイーツスタンダードの小澤幹さん

行列がないのに年商1.5億円のケーキ店

ケーキ店の倒産件数が過去最多となるなか、行列もない。派手な広告もない。それでも年商1億5000万円を稼ぐ、異色のケーキ店がある。東京都大田区の閑静な住宅街にあるパティスリー「スイーツスタンダード」だ。

ガラス張りの明るい店内に足を踏み入れた瞬間、スイーツを焼く香ばしさと甘さの混じり合った香りがふわりと鼻をくすぐる。ちょうど居合わせたひとりの女性はショーケースを真剣な表情でのぞき込み、どのケーキを買うか悩んでいた。

筆者撮影
明るく、開放的な店内

見たところ、オシャレな“街のケーキ屋さん”。店頭で販売しているのはショートケーキやプリン、焼き菓子などごく普通の商品ばかりだが、売り上げ成長率も毎年160~180%で右肩上がり。創業8年で年商は1億5000万円にのぼるという。

なによりも不思議なのは、行列がまったく見当たらないこと。

行列はない。商品も普通。なのに、なぜそれほど稼げるのかーー。

その答えは、厨房の奥にある“影の工場”にあった。

ショーケースの奥にある影の工場
筆者撮影
ショーケースの奥にある"影の工場"