※本稿は、内藤貴皓『採用大全』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
「いかに厳しい会社か」を語る面接官
「最近の若い営業は根性がない。すぐに辞めてしまう」
都内のマーケティング会社で営業部長を務めるK氏(42歳)は、憤慨しながらそう語りました。彼の会社では、毎年15名の営業職を採用する計画を立てていますが、入社1年以内の離職率が50%を超えています。
「面接では『御社で成長したい』と言っていたのに、少し厳しく指導すると『パワハラだ』と言い出す。ゆとり世代は本当に困る」とも言っていました。
そこで私はK氏に聞きました。「面接では、どんなことを聞いていますか?」
「当然、営業経験と実績です。あとは、うちの厳しい環境に耐えられるかどうか。プレッシャーに強いか、数字に執着できるか。営業は結果がすべてですから」
「候補者からの質問には、どう答えていますか?」
「キャリアの可能性とか昇給率など、そんな質問ばかりです。『まずは結果を出してから言え』と思いますけどね」
さらに聞き進めると、驚くべき実態が明らかになりました。面接では、候補者の話を聞く時間はわずか15分。残りの45分は、K氏が「営業とは何か」「うちの会社がいかに厳しいか」を延々と語っていたのです。
「根性があるか」という時代遅れな考え方
「最初に厳しさを伝えておかないと、後でギャップが生まれますから」とK氏は自信満々でしたが、私には別の光景が見えました。これはまるで、砂漠で貴重な水を見つけながら、「この水は純度が低い」「ミネラルバランスが悪い」と文句を言って、次々と捨てているようなものです。
しかも、その判断基準は「自分の若い頃と比べて根性があるかどうか」という、極めて主観的で時代遅れなものでした。
残酷な事実をお伝えしましょう。あなたの会社は「水(求職者)を選ぶ側」ではありません。「水(求職者)に選ばれる側」です。多くの採用担当者や経営者は、この根本的な構造変化を理解していません。いや、認めたくないのかもしれません。
事例1「上から目線の質問に“逆質問”」
あるメディア企業の営業職採用で起きた出来事です。最終面接で、役員が候補者に対して「君、うちで本当にやっていけるの?」と上から目線で質問しました。
