老後を健康に過ごすには、どうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「中高年の多くは栄養が足りていない。免疫力が落ちれば、一気に老化が進んでしまうだろう。ヨボヨボな老人にならないために、ぜひ毎日飲んでほしい飲み物がある」という――。(第1回)

※本稿は、和田秀樹『医師が教える長生きする牛乳の飲み方』(アスコム)の一部を再編集したものです。

中高年はたんぱく質と脂質が不足している

高齢者専門の精神科医の私から見て、中高年の多くは圧倒的に栄養が不足しています。それには2つの理由があって、1つは年齢とともに消化力が落ちて食事量が減ること。もう1つは「健康のために」「病気になりにくいから」と、「これは食べる」「これは食べない」という偏食です。こうした食習慣が招いてしまうのが低栄養。そして、これがどれだけ中高年にとって危険なことか……。

特に中高年以降に不足しがちな栄養素は、たんぱく質と脂質。多くの人にとって、たんぱく質が多く含まれる肉などが消化に負担がかかるため摂取量が減り、野菜などを中心にした食生活にシフトする傾向にあるようです。

たんぱく質は筋肉をつくる大切な栄養なので、不足すると足腰が真っ先に弱くなります。そして、ここから畳みかけるように老化が始まります。歩くのがしんどくなって外出や人に会う機会、会話が減って認知機能が落ちる、内臓も弱くなる、肌も衰えるなどヨボヨボまっしぐらです。

膝を痛めたシニア男性
写真=iStock.com/byryo
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高齢者がヨボヨボになるのは理由がある

脂質については、コレステロール値を気にして摂取量を抑えることを意識する人が増えます。しかし、コレステロール値が低く基準値に近ければ近いほうが安心というのは大きな勘違い。コレステロール値は高齢になれば基準値より高いくらいが病気になりにくいのですから。

また、コレステロールは免疫細胞の材料であるにもかかわらず、避けてしまうことで免疫機能を低下させてしまいます。すると、感染症や病気のリスクが高まり、イキイキから遠ざかってしまうのです。

こうした低栄養や免疫機能の低下に加えて、ボケること、病気や死ぬことなど、高齢になると健康が失われていくことに過剰な恐怖心を抱き、病院通いが始まって薬が増えていくことも、ヨボヨボを加速している場合があります。

薬は病気を治すためのものだから悪いわけではないけれど、薬頼みは副作用の危険性もあるので考えものです。例えば、骨粗しょう症の薬に頼りすぎて胃腸障害を起こす、認知症の薬で失禁症になる。それに気づかず、胃腸や失禁症を改善する薬を出してしまう医者もいます。薬ループにはまり、薬漬けから抜けられません。

このように、高齢者にはヨボヨボになる理由がそろっているのです。